【SS読者としてのバックボーン】
前ページでは「2周年総括文で書かなかった側面が2つある」と書きつつ1番目しか説明しませんでした。もうひとつは他の方のSSを読みまくってた頃に培った「読者としての視点」です。
案外平凡だなと思われるかもしれません。確かにこれまでの総括文では、運営方針を検討する際に「想定読者像」というものを何度か設定していました。読者が何を期待しているかをアクセス解析や新コンテンツの書き込み数などから推測して今後の指針に生かすやり方で、おおむねシビアで割切りの早い行動をとる読者像になりがちです。しかしここで言いたいことは、それとは別のことです。
1.自分より上手な人、人気のある人でも、読者からの反応なんて滅多にもらえない
Webサイトを開設した当初、ほとんどの人は万客御礼の超人気サイトになることを夢みます。そして現実の壁にぶち当たった時、傷ついて閉鎖したり放置したり目標を下方修正したり、逆に「ふん、別に見てくれる人のためにやってるんじゃないし! 自分が楽しむためだし!」と強がったりして自己防衛を図ります。あるいは超人気サイトとは言わぬまでも、サイトを持っていなかったころには無かった新しい出会いや他サイトとのつながりが“サイトを作って早々に”手に入るものと期待しがちです。サイトを持つってことは名刺を用意するくらいの意味でしかなく、客観的には成功保証どころか入場券にも値しないものだということを、サイト作りたての時期には忘れてしまいがちなのです。
私の場合はネット接続してからサイトを開設するまでに5ヶ月の猶予がありました。その間に好きなジャンルのSSサイトに通いまくり読みまくりました。当時はコメント欄やトラックバックなどなく、第三者から見える交流手段としては掲示板だけです。何万何十万というヒット数を稼いでいる人気SSサイトなのに掲示板が空っぽだったり、なんとか読者からの手ごたえを得ようとメールフォームとか5段階選択肢などを並べて努力してる管理人さんの姿をじっくりと見てきました。
当時はまだ常時接続環境などなく、小説やエッセイなど読み終えるのに時間のかかるコンテンツはいったん自分のパソコンにダウンロードして電話回線を切ってからじっくり読むのが当然の時代でした。読み終えたときには回線が切れているのですから、コメントや拍手を送ろうと思ってもその前に「再接続→元のサイトに再訪問」というプロセスが必要となるわけで、よほどのファンでない限り二の足を踏むのが普通です(そういう意味では本当に良い時代になりました)。
こういう身も蓋もない状況を、サイトを作る前に知っておけたのは幸運でした。自分自身もダウンロード中心の巡回スタイルをとっていましたので、それがサイト運営者にとって悲しいことでも読者にとっては当たり前、悪意だなんだと深読みする以前の行動だってことを身をもって学ぶことができました。
あらかじめ期待レベルを低くしておけたこと、そうなる理由を理不尽と思わずにいられたこと。これが最初にあったからこそ当サイトは長続きしたんだと思うし、わずか1行のコメントが数ヶ月に1通ペースで舞い込んでくる程度のことでも躍り上がるくらいに喜ぶことができるんだと思うのです。
2.読者にとって一番悲しいことは、かつて好きだったものが見られなくなること
これを当然だと捉えられる作者さんがどれだけ居るでしょう? 小説に限らず、創作者というのはちっちゃなプライドの塊です。満足できない作品や批判を受けた作品は丸ごと消して痕跡すら残さなくしてしまいたい、そういう衝動に駆られることは少なくありません。そういうときに
今の読者に不評でも、明日の読者、来月の読者はどう思うか。何年かして同ジャンルのサイトの多くが閉鎖した頃に、遅れてジャンル参入してきた人はどうだろうか。そりゃ名作だったり更新が早いのに越したことはないけれど、そうでないから楽しくないとか無価値だとかゴミ以下だと決めつけるのは、これから現れるかもしれないファン予備軍の方々に対して扉を閉ざす行為なんじゃないか。こういう視点から削除ボタンを押す指を止められる人はどのくらいいるでしょうか。