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キュートな会社の作り方

巻末クイズと制作秘話

初出 2003.02.25
written by 双剣士 (WebSite)
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登場人物紹介入社初出勤小さな魔法美少年の事情才女の憂鬱せつない想い天誅の行方悪魔の計略幸せの広め方巻末クイズ


 ご愛読どうもありがとうございました。
 連載終了記念として、『キュートな会社の作り方』の各エピソードについて2問ずつ、計18問のクイズを作ってみました。正解と思われる選択肢に印をつけて、画面末尾にあるボタンを押してください。正解すると、その項目にまつわる制作秘話を読むことができます。



1.このお話の舞台となる会社の名前は?
てひひ商事
ぴたテン商事
ゲーマーズ
聖英御崎学園
       → 正解は『てひひ商事』

 この作品は当初、2002年の10月頃からぴたテンFCにて連載するつもりでした。そして当時の計画では『ぴたテン商事』を社名とし、愛憎渦巻く陰謀劇を6〜10回くらいで描き上げるつもりだったのです。ところが掲示板に書き込んだ予告編に対する読者からの反応が皆無だったためボツとして2ヶ月ほど放置し、それから路線変更をして今の姿になりました。
 『ぴたテン』を社名にしなかったのはラストシーンを効果的にするためであり、つまりはハートウォーミング路線を貫くことを執筆開始時点で覚悟した証なのです。

2.会社の社員と従業員は全部で何人いますか?
5人
15人
666人
60000人
       → 正解は『5人』

 美紗、早紗、紫亜、天、湖太郎の5人ですね。
 ちなみに去年10月の当初案では50〜150人くらいの、ビルのワンフロアに居を構えた中堅の会社を想定していました。そこで繰り広げられる派閥抗争と主導権争い、もちろん一方の主役は脳天気な美紗社長でクーデター側の首魁は会社の将来を本気で憂いた専務の早紗。そして綾小路天は早紗の子飼いの部下として働くも、秘書の紫亜のことを裏切るのは気が重いという立場……いろいろとドラマチックな展開を用意していたんですが、今にして思えば生粋のぴたテンファンには馴染まない物語だったかも知れません。

3.初出勤の日に早紗たちが訪れたのは?
ゲーマーズ秋葉原店
コンサートホール
スキー場
アンナミラーズ
       → 正解は『ゲーマーズ秋葉原店』

 いきなりデ・ジ・キャラットのキャラたちが登場したことに戸惑われた方も多かったでしょう。
 ブロッコリー直営店であるはずのゲーマーズに美紗たちが商品を納入できる背景には、実は宝くじで巨万の富を手にした美紗がブロッコリーの大株主になって商品を置くよう迫ったという裏設定があります。人物紹介で『並外れた強運の持ち主』と書いてあるのはそのためなんですが、SS本編では触れられませんでした。

4.会社の主力商品は?
コタロー君グッズ
テンちゃんグッズ
美紗ちゃんグッズ
紫亜ちゃんグッズ
       → 正解は『コタロー君グッズ』

 実はこれ、このシーンを執筆する直前になって場当たり的に考えたものなんです。元々会社内部の権力闘争がメインになるはずだったので販売する商品については深く考えてなかったところがありまして、ウケ狙いも込めて『男性オタク向け商品が多いゲーマーズにとって明らかに異色な商品』を挙げてみたのですが……これが後半いろいろと役に立っていくのですから物語とは不思議なもの。うれしい誤算でしたね。

5.紫乃の正体は?
幽霊
妖精
ゲーマーズのお客さん
湖太郎の親戚
       → 正解は『幽霊』

 このSSの主役はテンちゃんなので、ゲーマーズを舞台とする場面は湖太郎くんを目立たせる数少ないチャンスです。当初の計画では紫乃ちゃんはゲーマーズを訪れた普通のお客さんで、こんな話になるはずでした。
 ゲーマーズで駄々をこねる紫乃、気に入ったグッズをレジに差し出すのを嫌がる。「○○が大好きなのは紫乃ちゃんだけじゃないんだよ。○○を紫乃ちゃんにあげるには、お店の人たちにお別れをさせてあげなきゃいけないんだ。ね?」と湖太郎が諭し、紫乃も納得。湖太郎はゲーマーズで株急上昇。

6.紫乃の姿が見えないのは誰?

湖太郎
美紗
紫亜
       → 正解は『天』

 霊感を持つ湖太郎くんと、人間以外の存在である美紗・早紗・紫亜には見えると言うことですね。言い換えれば普通の人間はテンちゃんしか居ないわけです、この会社。
 このSSでは他にも、早紗が天使であることを匂わせたり紫亜が悪魔であることを告白したりと重要なシーンが多くあるわけですが、主人公のテンちゃんは最後までそれを本気で信じようとしません。アニメ版とはちがって、信じがたい話を平然と受け容れたりはしないのです。私個人としては、こっちのほうが無理のない展開のように思えます。

7.御手洗大の秘密の趣味は?
戦隊もの
コスプレ
ギャルゲー
SS書き
       → 正解は『戦隊もの』

 ダイちゃんには今回、分かりやすい悪役に徹してもらったわけですが……ダイレンジャーの暴走ぶりを書いているときが、長い連載の中で一番スラスラと筆が進みました。ダサダサな行為にのめり込んで自己陶酔に陥る、そんなシーンが彼には本当によく似合います。もうこのために彼は生まれてきたと言っても過言でない!
 道理で、紫亜さんとキスするシーンが書きづらいわけです。

8.クリスマスパーティでの紫亜の格好は?
サンタクロース
ウェイトレス
猫パジャマ
カボチャの被り物
       → 正解は『サンタクロース』

 紫亜さんは別のSSではクリスマスパーティに参加できなかったので、このSSでは仲良くみんなで楽しんだ、という設定にしました。そうであればウェイトレスや猫パジャマのような、ふだん見慣れた服装にしない方が良いと思ったのです。残念ながらテンちゃん中心のエピソードなのでパーティの様子を実況中継することは出来ませんでしたが。
 なおこのエピソードのクライマックスはコミック原作版からそのまま引用した台詞が多く、“盗作?”との指摘を受ければ返す言葉がありません。もし権利者からの異議申し立てがあった場合は、謝罪のうえ修正しようと思います。

9.早紗の愛車は?
フェラーリ
ポルシェ
リムジン
ヴィッツ
       → 正解は『フェラーリ』

 プライドの高い彼女がストレス解消のため夜の路上を吹っ飛ばすとすれば、マシンはこれしか考えられないでしょう。私自身はこんな高級車は見たことも触ったこともないので、いくばくかの憧れも込めて登場させてみました。
 子供のころ、パトカーや救急車は赤信号でも止まらなくていいうえに周囲の車が道を空けてくれると聞いて、大人になったら絶対乗るぞと熱く誓ったことがありました。このSSに出てきた魔法のステッキ付きフェラーリには、その辺りの願望がこもっています……あ、ちなみにパトカーと救急車にはまだ乗ったことないです、幸か不幸か。

10.早紗の望みは?
エリートとして天界に復帰すること
妹の会社を乗っ取ること
部下を誘惑すること
世界を革命すること
       → 正解は『エリートとして天界に復帰すること』

 これが最後のチャンスという天使試験にすら落ちてしまった美紗に対し、アニメ版では粋な結末が用意されていました。原作コミック版ではまだその段階に達していません。しかし小説版1巻に従うなら、天使になれなかった美紗は『天界の水』として消えてしまうはずなのです。
 そうなったとき、早紗が妹のことを見捨てられるとは思えません。そこで今回のSSでは、過去にそういう出来事のあった早紗は妹ともども天界を追放されてしまっていて、それでいて人間界では妹のほうが上手に世渡りしているのを見て複雑な気分に陥っている、という裏設定になっています。エリート意識が強い彼女だからこそ、なかなか現状を割り切ることが出来ずに今に至っていて、テンちゃんに愚痴ってしまったりしているわけですね。

11.小星の職業は?
ピアニスト
バレリーナ
ゲーマーズ店員
相撲取り
       → 正解は『ピアニスト』

 連載直前の予定とは全然違う話になってしまった、という点でもっとも苦労したのが小星エピソードでした。そもそも当初の予定では、再会した小星ちゃんが湖太郎くんとつきあうようになるまでの過程は4話程度の短いエピソードで済ませるはずだったんです。そしてその直後に美紗さんと恋の鞘当てを始めた小星ちゃんが『でも、あの人形のモデルは美紗さんの昔の友達であって、湖太郎ちゃんはその身代わりでしかないんでしょ?』と爆弾発言をしてしまい、それを機に美紗さんと湖太郎くんの仲がぎくしゃくする、そんな展開を考えていました。
 ところが1月27日発売のGAO最新号において、まさにこの後半部分とそっくりな展開がコミック原作版で始まってしまったのです。原作と同じことを2次小説でやっても仕方ないので後半部は削除決定。そのため余ったエネルギーが、簡単に済ませるはずだった前半部を根深い苦悩物語へと変貌させてしまったのでした。

12.小星が湖太郎への告白をためらったのは何故?
長いあいだ連絡もしなかったという負い目があるから
要所要所で美紗の邪魔が入るから
仲のいい友達という関係を壊したくなかったから
実はテンちゃんが好きだったから
       → 正解は『長いあいだ連絡もしなかったという負い目があるから』

 『小娘とは年期が違うわいっ!』という強気で元気者な側面が目立つのがアニメ版の小星ちゃんでしたが、私はむしろ最近のコミック版に出てくる『湖太郎ちゃん、美紗さんたちと出会って明るくなってきたと思うし……だったら、私はそれでもいいかなって……』とつぶやくような優しくも哀しい小星ちゃんの側面に注目しているのです。
 ですから今回の小星エピソードではそうした面を最前面に押し出して、読者が思わず勇気づけてあげたくなるような健気でせつない植松小星の姿を描いてみました。あんまり悲劇のヒロインを気取らせても彼女らしくないので、ラストシーンでは現金なところも見せていますけど……皆さんの心に何かが届いてくれたのなら幸いです。

13.生意気な御手洗薫の言葉に怒り出したのは誰?
紫亜
早紗

湖太郎
       → 正解は『紫亜』

 いやぁ実は紫亜さんが切れちゃって、一番驚いてるのは私なんです。
 当初の予定では薫ちゃんが紫亜さんたちをボロボロにけなして、思わず紫亜の肩を持とうとしたテンちゃんを見て薫ちゃんが嫉妬の炎を燃やし、次の日に兄たちを連れて襲いかかってくる……という筋書きでした。ダイちゃんが美紗さんに会った途端に改心するというラストシーンは当初からの予定でしたが、もののけ屋敷疑惑とかテンちゃん洗脳プロジェクトとかは全く考えてなかったんです。
 そうした予定を全て吹き飛ばしたのが、この紫亜さんの暴走。おかげでその後の展開がすっかり変わってしまいました。このエピソードの中盤以降は、その日その日のアドリブで書いたようなものです。普段こういう書き方はしてなかったので貴重な経験になりました。

14.綾小路天が御手洗大に差し出したお金は?
早紗の車の売却代金
てひひ商事の金庫の中身
自分のへそくり
御手洗家の金蔵から盗み出したお金
       → 正解は『早紗の車の売却代金』

 前半部分を書いてる時点での計画では、早紗のフェラーリを売却するつもりなんてありませんでした。会社の金庫からお金を持ち出そうとするテンちゃんを早紗が見つけ、『あの小娘との手切れ金なんでしょ、もって行きなさい』と見逃してやる……そんな展開を、執筆直前まで考えていたのです。
 ところがこういう展開だと金庫のお金が無くなってることに美紗たちがいずれ気づきますし、ダイちゃんたちが襲いかかってきたときに事情を知ってる人材が誰も居ないのでラストシーンの舵取りが出来なくなります。そのことに思い当たってぎりぎりのタイミングで方針変更したのが現在の姿です。ほら、直前に執筆を1日お休みしてるでしょう?

15.雪の山頂からスキーで降りるのを一番怖がっていたのは?
早紗
美紗
小星
紫乃
       → 正解は『早紗』

 紫亜さん以外の登場人物全員が顔をそろえる数少ないシーン。各キャラの個性を書き分ける試練の場ということで、ここでの行動と台詞についてはいろいろと考えました。
   『美紗さん、湖太郎ちゃんにくっつかないでください!』
 小星ちゃんに『美紗さん!』と呼ばせるのはSSの流れからすれば不自然なのですが、ここが『社長さん!』だと気分が出ないんですよ(笑)。他にも紫乃ちゃんが湖太郎くんと美紗さんを追いかけないのは変だとか、スキーに誘った張本人であるダイちゃんが雪玉になって転がっていくのは妙だとか、今にして思えば突っ込みどころ満載のシーンです。きっと原作版ぴたテンのイメージがSSの設定を凌駕してしまったのでしょう。未熟未熟。

16.紫亜が秘密裏に進めていた悪行とは?
ぬいぐるみに悪の種を埋め込む
ぬいぐるみを壊して売り物にならなくする
黒猫のぬいぐるみを作る
会社のお金を盗みだす
       → 正解は『ぬいぐるみに悪の種を埋め込む』

 当初の予定では『黒猫のぬいぐるみを作る』を採用するつもりでした。コタロー君ぬいぐるみを分解していたのはヒット商品のノウハウを盗むためで、でも当の黒猫が『オレはこんなに不細工じゃない!』と駄々をこねて紫亜さんに何度もリテイクをかける……そんなユーモラスな悪魔の計略にするつもりで、途中まで書いてたんです。
 何がどう変わってあんなサスペンス含みの展開になったんだか、我ながら不思議であります。きっとテンちゃんの告白シーンに気合を入れすぎて、紫亜さんの秘密とやらを軽く扱うことが出来なくなってしまったんでしょう。もしあそこで当初の予定を貫いたら……今頃は黒猫も、てひひ商事の一員になってたかもしれません。

17.湖太郎が内緒で書いてる書類の中身について、早紗たちの想像に挙がらなかったものは?
童話
ラブレター
転居書類
辞表
       → 正解は『童話』

 最終話で湖太郎くんが物語を書くというのは割と早い段階で決まっていました。『幸せの広め方』というサブタイトルを見た時点でピーンと来た読者の方もおられることでしょう。
 ただし当初の予定では湖太郎くんは書き上げた童話を美紗たちに見せるのを恥ずかしがって自分の手でブロッコリー編集部に持ち込み、そんなことを知らない美紗たちは彼がヘッドハンティングされたと思い込んで『コタロー君に見捨てられたっス』と落ち込む、となるはずでした。冗長な描写が多くなりすぎると思って執筆直前に変えましたけれども。

18.この作品世界における、ぴたテンの原作者は?
湖太郎
美紗
コゲどんぼ
双剣士
       → 正解は『湖太郎』

 こういうラストって、著作権者を詐称したことになるんでしょうか?
 本作『キュートな会社の作り方』は言うまでもなく『ぴたテン』の2次創作な訳ですが、さすがに2ヵ月半も書き続けていますと本当の美紗さんたちがどういう性格だったかが曖昧になってきて、SSの中での性格や人間関係が本来のものだったかのように勘違いしそうになります。原作コミックの方がとうていハートウォーミングといえないシリアス展開を続けていると尚更です。読者の皆さんの中にも、ちょびっと位はそういう印象を持った方がおられるのではないでしょうか。
 そこで本作のラストシーンでは、『キュートな会社の……』の登場人物が『ぴたテン』の原案を書いたというパラドックスを登場させてみました。つまり湖太郎くんたちは本当は皆で仲良く会社経営をやっていて、小学校に通って過去やら前世やらで苦しんでるのは仮の姿なのです(笑)。もちろん大嘘ではありますが、このSSを読んでいる間くらいはそんな楽しい夢想にふけってもらえると、作者としても嬉しいです。



あとがきに代えて

 2ヵ月半にもわたった長期連載SSがついに完結しました。毎日更新の約束はとうとう果たせませんでしたが、遅筆と約束破りが代名詞であった私が、とにかく最後まで辿りつけたわけです。ご愛読くださった皆様、どうもありがとうございました。

 半年前までの自分なら、今の自分は想像も出来なかったでしょう。小説を毎日書き続けるなんて自分には無理、出来るとしたらスーパー超人に違いない……長い間そう思い続けてきましたが、認識を改める必要がありそうです。想像していたよりも体力的には厳しくありませんでしたし、プロット未完成のまま執筆に入っても困ることは多くありませんでした。精神的なプレッシャーも乗り越えてみればさほどの高さではありませんでした。無理せず地道にというのも大切ですが、たまには自分の限界に挑んでみるのも良いものですね。

 ただし、これからは大変です。体力や性格ゆえに小説を量産できないのではない、ということが自他共に知れ渡ってしまいました。プロットをじっくり練らないと執筆に着手できない、というのも単なる言い訳に過ぎないことが白日の下に晒されてしまったのです。今後SSの執筆に滞ることがあれば、それは私が自分の意思によって小説以外に時間を割くことを選んだのだ、ということになります。もう自分に甘い選択は許されません。

 それともう1つ。小説サイトであるからには新作小説を執筆し公開し続けることがサイト運営者としての本分である、という認識を過去4年間は持っていましたが、その真偽は検証せず終いでした。それが本当に双剣士のやりたいことだったのか、当サイトの読者の期待することだったのか、ということを確認する機会はこれまでなかったのです。しかし今回の企画によって『小説サイト本来の姿』が短い期間とはいえ現実のものとなりました。この2ヵ月半に得たもの失ったもの、そしてこの期間に起こった読者の反応の変化について、これから冷静に分析しなければなりません。その結果によっては、自作小説をメインコンテンツの座から降ろさざるを得ないかも。

 あはは、ちょっと暗い話をしてしまいましたね。
 ご心配なく。分析は必要ですが、それはしばらく先の話です。せっかく書き癖がついて気分がハイになってる今、こんな分析をしてわざわざ鬱になるのは勿体ないというものでしょう。当面は勢いが残ってるうちに、書きかけになってる他のSSに着手したいと思っています。現時点での候補筆頭は続編要望投票の第1位である、みずいろSSの続きですかね。

 では、また次回作でお会いいたしましょう。

2003年2月25日 双剣士

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