| 小説投稿 | 2017年10月13日(金)22時17分 | 
| どうも、RIDEです。 
 昨日の続きを載せます
 
 マーズタワーが見える位置まで、ステルドの軍は宇宙戦艦を近づけていた。
 
 「ステルド様、如何がしますか?」
 
 ステルドは、すぐさま命令を下した。
 
 「全員、降下しマーズタワーへ向かいなさい。それからG-2の発進準備を」
 
 そして、ステルドは格納庫へと向かった。
 
 格納庫には、3体のロボットが立っていた。10メートル近くはある、人型のロボットが。
 
 ステルドは、その内の1体に乗り込む。コクピットに座り、計器に灯を入れる。
 
 「まずは自分が、その後続いて2機とも発進してください」
 
 格納庫のハッチが開き、ロボットが外に出れる。
 
 「G-2、発進します!」
 
 
 
 
 ステルドの軍のモンスターや兵士たちが、こちらへと攻めてくる。
 
 マーズタワーの戦力が、それらを迎え撃っている。
 
 「まったく、いきなり攻撃してくるなんて!」
 
 エールとレイが、自分たちのモンスターに技を指令しながら毒づく。大勢で仕掛けてきたのだ。自分たちで守り切れるかわからない。
 
 「本腰を入れてきた、ってことでしょうか」
 
 こんな時でもおっとりと、しかし割と真剣に戦っているレイが返す。
 
 「なんだっていいさ!やるというならこっちだって!」
 
 トールが意気込む。ダイや、そしてニールも戦っている。
 
 そして、彼らは見た。
 
 3体のロボットが、こちらへ向かっていくのも。
 
 「あ、あれも向こうの戦力…?」
 
 ロボットが出てくるなんて予想外なので少し呆気にとられてしまうが、動揺はしない。
 
 「特訓の成果、見せてやる!」
 
 トールはエール、ダイ、レイと頷き合う。
 
 そして彼は、自分のモンスターたちに光を浴びせる。すると、それらのモンスターが宙に浮かんだ。
 
 ヒューポの最終進化系、エンゼルトッポ。
 
 ピカポチの最終進化系、ドーベスター。
 
 ウンチンボーヤの最終進化系、ウンチンセンム。
 
 これら3体が合わさり、次の瞬間1体の巨大モンスターが姿を現していた。
 
 「融合進化、ベスタートッポ!」
 
 名前まで合わさっているのは、多分センスだろう。
 
 エール、ダイ、レイの3人も、それぞれ融合モンスターを誕生させていた。
 
 「中央のロボットは俺がやる!他は任せた!」
 
 そう言い、ベスタートッポは中央にいるロボットと組みあった。他の2体も、エールとレイのモンスターが迎え撃つ。
 
 「おい!俺の相手はいないのか!」
 「おまえは他のモンスターを相手にしろ」
 
 ニールに言われ、反感しながらも渋々従うダイ。
 
 一方で、トールはベスタートッポと共に、ロボットとの戦いに集中している。
 
 すると、向こうの方から会話を吹きかけてきた。
 
 [そんな力があったなんて、予想外でしたね]
 
 その声に、トールは聞き覚えがあった。
 
 「おまえ、ミハンの屋敷であいつと戦っていたステルドって奴か!」
 [覚えていましたか。勇者に覚えてもらえるなんて光栄ですね]
 
 戦闘中だというのに会話しているなんて信じられない。これも余裕なのだろうか。
 
 しかし、それなら色々と聞くことができる。
 
 「一つ聞きてえ。おまえは、何のためにタイムネットマスターを目指すんだ?」
 
 リナは敵の大将はそれぞれの目的があるかもと言っていた。ならば、それを確認しておいて損はない。
 
 これに、ステルドはこう答えた。
 
 「僕の目的は、タイムネット世界に統治国家を建設することです」
 「統治国家…?」
 
 いきなり難しいことを聞かれても、トールはピンとこなかった。そんな彼にステルドは更に言う。
 
 「いくら創造主の想像があっても、この世界はほぼ無秩序状態です。国がなければ、秩序たる法もなく、それを執行する組織もない。それで平和が保たれていると言えるのですか?」
 
 そう言われると、頷くことはできない。考えてみればこの世界を旅してきたが、国というものを聞いたことはないし、警察や役所やらそういうのも見かけなかった。
 
 「だから僕は、この世界の皆が安心して暮らせるような国を建てたいのです。そのためにはタイムネットマスターの影響力というのが、どうしても必要なのです」
 「そのためなら、こんな戦争みたいな真似をしてもいいっていうのか!」
 
 トールは反論する。ステルドの言うことは納得できる。タイムネットマスターという称号があれば人々は認めるだろうし、彼が口にする統治国家にも賛成するだろう。
 
 だが、軍隊を作り、この火星をはじめ力で侵攻する。そんなやり方で、果たして皆が求める理想の国ができるのか。そんな国が欲しいというのか。
 
 「国には軍隊も必要です。そして、時にはその力を誇示することも」
 「ふざけるな!」
 
 トールの怒りに応答する様に、ベスタートッポが力を増しロボットを押し返す。これにはステルドも驚いた。
 
 [G-2相手にここまでやるとは…]
 
 更に、それだけではなかった。
 
 「おまえは、ここで倒す!」
 
 次の瞬間、トールはベスタートッポへと吸収されていった。
 
 「な、なんだ?」
 
 気づいた時、トールは自分の目線が高く、G-2と真正面から向き合っていることに気づく。自分の腕も、ベスタートッポのものとなっている。
 
 「まさか俺、モンスターに…?」
 
 そう、トールは今ベスタートッポと一体となっていたのだ。
 
 「纏うって、こういう意味だったんだ…」
 
 まさか自分自身がモンスターになるなんて想像しなかっただけに、複雑な気分となった。
 
 見ると、エールとレイの融合モンスターの様子もおかしい。恐らく彼女たちもモンスターを纏ったのだろう。
 
 「ええい、こうなりゃやってやる!」
 
 トールはG-2へと向かっていく。ステルドは最初こそ戸惑ったものの、すぐに気を取り直して戦いへと切り返す。
 
 だがその時、横から砲撃が襲ってきた。
 
 「なんだ!?」
 
 味方の誤射ではない。ステルドの軍でもない。
 
 「あれは…」
 
 突如現れた別の戦艦。
 
 ステルドは、それに心当たりがあった。
 
 [ミハンの勢力の戦艦?彼らも来たというのですか!]
 
 
 
 「ミハン…奴が来たのか」
 
 彼らの勢力を見た途端、ニールは目を金色に変える。
 
 ミハンの勢力も、大群で攻めてくるのか。ところがその予想を裏切り、戦艦から出てきたのはミハン一人である。
 
 「久しぶりですね、勇者たち。それとニール」
 「その首を、俺に捧げに来たのか」
 
 ニールは挑発してみせるが、ミハンはそれを軽く受け流す。
 
 「そうですね、あなたがこれらを倒すことができたら、考えてもいいでしょう」
 
 そう言った時、ミハンの戦艦から2つの影が飛び出していった。
 
 「あれは…!」
 
 その姿を見た時、リナは絶句した。
 
 「伝説の超人タイムサーファーと同様時空の力を持ち、ここタイムネット世界にたどり着いた太古の昔から存在する存在」
 
 二つの巨大な影は、ミハンの後方へと着地する。
 
 「機神、レジェンドトッポ」
 
 一つは、人型のロボット。
 
 「機龍、レジェンドドラゴン」
 
 もう一つの龍型のロボットは、雄叫びを上げた。
 
 どちらも、大きさはG-2を一回り上回っていた。
 
 「その力、見せつけてやりなさい」
 
 レジェンドトッポとレジェンドドラゴンがそれぞれ砲撃する。それだけで、エールとレイの融合モンスター、彼女たちと戦っていた2体のG-2を吹っ飛ばした。
 
 その威力に、トールとステルドも慄く。
 
 「あいつ…ここでケリを着けるつもりか」
 
 思わぬ強敵を前に、トールとステルドは共通の認識を持った。
 
 ここは、共闘しなければならない。
 
 「あの2体をなんとかしないとな」
 [ですね]
 
 ベスタ―トッポとG-2は、ミハンへと向かっていく。
 
 「ドラゴン、相手をしなさい」
 
 レジェンドドラゴンが舞い上がり、トールたちを迎え撃つ。その間にミハンはレジェンドトッポとともにマーズタワーへ侵攻しようとする。
 
 その行く手に、ニールが立ちふさがった。
 
 「ミハン…貴様を倒す!」
 
 すでに目を金色に輝かせているニールは、剣先をミハンに向ける。
 
 「いいでしょう。余興にはちょうどいいでしょうしね」
 
 その物言いが怒りに触れ、ニールは素早く剣を振るう。ミハンはそれを危なげなくかわす。
 
 しばらく両者の攻防が続いていく。その中で、ニールの様子が段々と変わっていった。
 
 「ミハン…貴様ヲ、倒ス…」
 
 ニールの目がおかしい。金色になっているのは当然だが普段のそれとは違う。息も荒々しくなっている。
 
 「俺ガ、勝ツ!」
 
 唸り声を上げながら、ミハンへと襲い掛かっていく。それはまるで獣のように。
 
 しかしミハンは、それを軽くさばいていく。先程よりも容易に。
 
 「…やはり、この程度ですか」
 
 戦うと言うよりは暴れているという方がしっくりくる今のニールは、呪いに振り回されている。そんな彼を見て、ミハンは落胆した。
 
 ミハンは彼を殴りつけ、続けざまに銃を発砲。肩、腹部、足と的確に狙い撃つ。
 
 「結局は呪いに負けてしまったようですね。少々期待はずれですね」
 
 かろうじて立っているが、もはや理性の無いニールに向けてとどめとなる弾丸を撃ち込んだ。
 
 「あぶねえ!」
 
 だがその瞬間、ダイが横から割って入り、ニールを押し倒した。おかげでニールは、銃弾を受けずに済んだ。
 
 「このバカ、目ぇ覚ましやがれ!」
 
 そして、ニールを思い切り殴った。
 
 殴られた衝撃からか、ニールは正気に戻ったようだ。
 
 「俺は…」
 
 暴走していた時の記憶はないが、状況を見て何が起こったかは瞬時に理解できたようだ。
 
 「なぜおれを助けた?」
 
 いつものように突っかかるような言動はしないが、プライドが傷つけられたのか感謝の気持ちはない。
 
 そんなニールに、ダイはこう答えた。
 
 「理由なんて、特にねえよ」
 
 ただ、助けなきゃいけないと思った。それだけであった。
 
 それだけ答えると、ダイはミハンと向き合う。
 
 「今度は俺が相手だ」
 「君は…あの時の少年ですか」
 
 どうやら、ミハンはダイのことをすっかり忘れていたようだ。連れてこられた当人がこのような態度であることに、ダイは腹を立てる。
 
 「俺がここにいるのも、そもそもはあんたがきっかけだ。だから、俺があんたを止めてやる!」
 
 そう言い、自身のお供たちを融合モンスターへと進化させる。
 
 
 「レジェンドトッポを頼む!」
 
 ダイの融合モンスターと、レジェンドトッポがぶつかり合う。
 
 そして、その主たちも。
 
 「あんたは、一発ぶん殴んねえと気が済まねえ!」
 
 ダイはまっすぐにミハンへと走り出す。
 
 「命を奪う程ではありませんが、痛い目見させないといけませんね」
 
 ミハンは、銃をダイに向け、一発発砲した。
 
 銃弾を受け、ダイはその場で倒れてしまう。
 
 これで終わりだ。銃弾が一つ無駄になってしまったが、仮にも勇者、一つで解決したなら安いもの。
 
 ミハンはダイの敗北だと決めきっていた。だが…。
 
 「まだだ…」
 
 なんと、深いダメージを負っているというのにダイは立ち上がってきた。
 
 「俺にも意地ってもんがある…それにかけて、なんとしても一発殴ってやる」
 
 そして、ミハンを正面から睨む。
 
 「あんたはどうなんだ?あんたはタイムネットマスターになることを、この世界を平和にさせることを、意地にもかけてやろうっていうのか!?」
 
 ダイから放たれる気迫。少々力があるだけの、なんていうこともないと捉えていた少年に、ミハンは少々圧倒されてしまう。
 
 それが、ミハンに隙を生じさせた。
 
 再び駆け出すダイ。ミハンは慌てて銃を構えようとするが、すぐにそれが役に立たないことに気づいた。
 
 彼の銃は、弾は5発まで込められる。ニールに4発使い、先程1発。銃はもう、弾切れだった。
 
 それでもミハンの手が止まったのは、ほんの一瞬だった。彼は銃底での格闘に切り替えようとしたが、遅かった。
 
 「この野郎!」
 
 ダイはミハンを思い切り殴った。その勢いのまま、ミハンは倒れてしまう。
 
 まさか自分が、こんな少年に殴られるなんて思わなかった。呆然としてしまうミハン。
 
 「どうだ、一発殴ったぜ」
 
 苦しそうに息しながらも、ダイは勝ち誇った笑みを見せた。
 
 それがどこかおかしくて、ミハンは笑ってしまった。
 
 「お、おい!なんだよ急に」
 「いえ、すみません」
 
 謝りながらも、笑いは止まらない。自分は今心の底から笑っている。
 
 そういえば、とミハンは思う。このように自分が心から笑ったり、圧倒されたりしたことなんてあっただろうか。
 
 普段は人に接するときは自然に見えるような表情をしていた。いや、自然に見えるように取り繕っていた。
 
 今のように、なんていうか気分が軽くなるような、なんと言ったらいいかわからないが、そのようなことになった覚えはない。
 
 「そうか、こういう時のことをなんて言うか、それすら僕はわからなくなってしまったというわけですか」
 
 ミハンは、今度は悲嘆に暮れていた。
 
 恐れたり、笑ったり、悲しんだり。ころころ変わるのは特に変ではないが、それにしては少し情緒がおかしい気がする。
 
 「君の言うとおり、僕は心の底から感情を出すことはなかった。いや、出来なかったのでしょうね」
 
 ダイは黙って彼の言うことを聞く。
 
 「だから、皆が思うことを自分の思うことのようにしていたんだと思います。平和云々の言葉も、そこから来たのだと」
 
 彼の言葉に熱意が感じられなかったのは、そういうことなのかもしれない。
 
 「…難しいことはよくわからねえ。あんたが今までどのように生きてきて、何があったかも知らないし、聞きたいとも思わない」
 
 けど、とダイは付け加えた。
 
 「とりあえず、あんたが今何をやったらいいのかわからないというのはわかった。なら、俺たちの仲間にならないか?」
 「え、ですが…」
 
 突然の勧誘に、ミハンは戸惑う。無理もない。即決できない要因がいくつもあるからだ。
 
 ダイは少し悩む。元々頭を使うことが苦手な彼だ、論理的な説得なんて不可能に近い。何を話せばいいのか、うまく言葉にできないながらも彼なりに努力する。
 
 「とりあえずあんた、俺に殴られてどう思う?」
 「え、それはどういう…」
 「悔しいか?だったら俺にリベンジすればいい。敵として、あるいは競争相手として。それとも、他に何かあるか?」
 「僕は…」
 
 彼に殴られ、思ったことは…。
 
 「君を知りたい。共に戦って、君のことをもっと知りたい。そうすれば、僕は更に何か見つけられる気がするのです」
 「なら、決まりだな。一緒に戦おうぜ」
 
 ダイは、ミハンに手を差し伸べた。が、ミハンはその手を無視して立ち上がる。
 
 「…一人で立てますよ」
 「あ、そう」
 
 彼といいニールといい、どうも意地を張る奴が多いな、とダイは自分の事を棚に上げて思わず感心してしまうのであった。
 
 ともかくこれでミハンの勢力は戦いを止めるであろう。後はステルドの軍だ。
 
 もうひと頑張りで戦いが終わる。そう思っていた時であった。
 
 「あれは…」
 
 ミハンが上空で何かに気付いた。ダイも彼に倣って見上げる。
 
 見ると、空間のゆがみが生じていた。戦闘による影響とは思えない。
 
 さらにそこから、巨大な大砲が出現した。ステルドの軍のイメージからで塗装されたものだ。
 
 それを見て、ミハンは目の色を変えた。
 
 
 
 トールとステルドが巨大砲に気が付いたのは、レジェンドトッポとの戦いが終わった矢先であった。ミハンの戦意喪失を受け、レジェンドトッポも停止し、さてお互いはどうするかと考えていた時に、大砲の出現によってステルドはそれどころではなくなってしまった。
 
 「タイムパラドクス砲…なぜあれが!」
 「ステルド!」
 
 そこへ、ミハンとダイが駆け寄ってきた。
 
 「どういうことですか!?タイムパラドクス砲なんて持ち出すなんて!」
 「いえ、あれを持ってきた覚えはこちらにも…」
 「なあ、タイムパラドクス砲って一体何だ?」
 
 事情がわからないトールとダイは、説明を求めた。
 
 「タイムパラドクス砲は、標的を消滅させることのできるエネルギーを放つ大砲です。標的を破壊ではなく、標的そのものをその時間軸から存在しなかったことにして消し去る、防ぐことすらできない砲撃なのです」
 「以前、試験としてあの大砲を使ったのですが、あまりの威力の大きさに僕たちはあれを凍結させ、以後使わないようにしたのですが…」
 
 語られているような威力を想像して、トールとダイは絶句してしまう。その間にも、ステルドは味方に確認を取る。
 
 「誰があんなものを寄越したのですか!?」
 
 答えは、意外なところからやって来た。
 
 「僕だよ」
 
 その場に現れた者に、トールとダイは驚愕する。
 
 「ジンジャー!?」
 
 ステルドやミハンも目を丸くする。というのも、彼は空中で立っていたからだ。とても人であるとは思えない。
 
 「君が…ということは、君がスパイなのか?」
 
 ジンジャーはステルドの方を向き、彼をあざ笑うかのように応じた。
 
 「スパイ?黙ってあれを持ち出した僕を…いや、地の言葉使いに戻そう。この私を、まだ味方だと思っているのか?おめでたい奴だ」
 
 次にジンジャーはミハンを見やる。
 
 「貴様なら使いこなせると見込んであの2体が手に入れるように仕向けたのだが、飛んだ期待はずれであったな」
 「あなたがあれを…!」
 
 なんと、ミハンの勢力にまで手を加えていたとは。
 
 「おまえは一体何者だ?」
 「おやおや、そんな問答をしている場合か?」
 
 ジンジャーがタイムパラドクス砲を見やる。砲口にエネルギーが充電し始めている。もう発射準備に入っているのだ。
 
 それを見るや、対応は早かった。
 
 「この場にいる全員に告ぐ!ただちに戦闘を停止し、速やかにこの場から退避せよ!」
 
 マーズタワー、ミハンの勢力、ステルドの軍が戦いをやめ、脱出の準備に協力し合う。下手をしたら火星そのものが消滅するかもしれないのだが、ただ消えるのを待つなんて御免である。
 
 「兵士たちは住民を誘導しろ!戦艦に出来るだけ乗せるんだ!」
 
 命の危機に直面してか、今まで戦いあっていた相手でも率先して手を取り合っている。
 
 「創造主のあなたの想像で何とかならないのか?」
 
 時の老人がリナに尋ねてみるが、彼女は首を横に振るだけ。
 
 「あの大砲は、私の想像を全く受け付けないのです」
 
 リナはジンジャーのことを思い返す。火星の住人だと言っていたが、詳しいことは全く知らないし、聞かされてもいない。
 
 「まさか彼が、外の世界から来たもの…?」
 
 
 
 「俺たちも手伝わないと!」
 
 トールとステルドも、住民たちの誘導に参加する。
 
 ダイも手伝おうとしたが、ミハンが動かない事に気付いて足を止める。
 
 「おいあんた、どうしたんだ?」
 
 ミハンは、まっすぐにタイムパラドクス砲を見上げている。
 
 「あれを、止めます」
 「と、止める!?あれを防ぐことは出来ないってさっき…」
 「レジェンドトッポとレジェンドドラゴンは、同じ時の力を擁しています。あれならば、少しでも威力を抑える事が出来るはずです」
 
 そうは言うが、彼の表情からそれがどんなに期待が薄いことか良く分かる。ジンジャーも言っていた。ミハンでは、あの2体のすべての力を出し切れないと。
 
 「けどよ…」
 「君が言っていたことですよ」
 
 ダイは気付く。ミハンから、今まで感じた事の無い熱意があることを。
 
 「心の底から、あれを止めたい。そうしなければ気が済みませんから」
 
 そしてミハンは、レジェンドトッポとレジェンドドラゴンを向かわす。
 
 ダイは考える。自分はどうしたいのか。
 
 ふと、彼は火星の町の方を見やる。タイムパラドクス砲がこの火星を消滅させれば、町も消える。いや、無かったことにされる。
 
 街を作ってきた人々の努力も、人々の笑顔も、みんな…。
 
 「やらせるかよ…」
 
 ダイもまた、心の底から感情が湧きあがっていた。
 
 「ここを、守るんだ!」
 
 その感情に呼応してか、ダイは自身の融合モンスターとなり、ドラゴンたちの後を追った。
 
 
 
 「消えてしまえ!」
 
 ジンジャーの叫びとともに、タイムパラドクス砲が発射された。
 
 その前にレジェンドトッポとレジェンドドラゴンが立ちはだかり、エネルギーで迎え撃とうとする。
 
 エネルギーがぶつかり合い、タイムパラドクス砲を押しとどめた。余波で時空の歪みが生じ、異空間への入り口がいくつも出来る。
 
 止められる。最初はそう思った。
 
 しかし、段々とタイムパラドクス砲が押していき、2体のエネルギーを弾き飛ばし、爆散させた。
 
 衝撃でレジェンドトッポとレジェンドドラゴンは吹っ飛び、それぞれ別の異空間の彼方へと飛ばされてしまった。
 
 2体はもう、人間の手では回収不可能だろう。
 
 しかしそれよりもタイムパラドクス砲だ。これで完全に火星へ難なく到達してしまう。
 
 いや…。
 
 「やめろー!」
 
 まだ、この男がいた。
 
 ダイはレジェンドトッポらと同じようにエネルギー波でタイムパラドクス砲を押し返そうとする。しかし、レジェンドトッポでも無理だったものをダイが何とかできるわけがない。実際、ダイは押し負けている。
 
 そう、思っていた。
 
 「守るんだ!ここを!」
 
 叫びとともに力のすべてを出し切るダイ。
 
 次の瞬間、ダイの体が金色に発光しだした。それに合わせて彼が放つエネルギー波も巨大になり、タイムパラドクス砲のエネルギーを、そして砲塔そのものを呑みこんでいく。
 
 ダイのエネルギー波が消失する。
 
 火星は無事だった。ダイによってタイムパラドクス砲のエネルギーは霧散し、砲塔も完全に沈黙していた。
 
 「た、助かったのか…?」
 
 火星にいた人々は、無事であることに大きく喜ぶ。
 
 一方、ジンジャーは愕然としていた。
 
 「バカな…あんな小僧が…?」
 
 そのまま依然と変わらぬ火星をただただ見つめていたが、襲い掛かってくる気配を感じ、咄嗟に回避する。
 
 [逃がしません!]
 
 ステルドのG-2だ。比較的住民誘導の場から近い場所にいたことと、G-2のスペックだから戻ってこれたのだ。
 
 「仕方がない。ここは退くとするか」
 
 去る前に、ジンジャーはダイを見やる。
 
 「ダイ…まさか奴が、本当に…」
 
 そして、ジンジャーの姿は火星から消えたのだった。
 
 
 
 一難去ったマーズタワーでは、歓声で響き渡っていた。
 
 その中心にいたのは、もちろん一人の少年だ。
 
 「いやあ、ありがとう!ありがとう!」
 
 得意気になって人々に向って手を振るダイ。そんな彼を、エールは呆れて見ていた。
 
 「まったく、ちょっと活躍したからって…」
 「けどよ、すごかったぜ!金色になるなんて信じられるか!?」
 「あれが、私たちに与えられた力の真価なのでしょうか」
 
 トールは素直に称賛し、レイはダイが発現した力について考える。
 
 「それで、お主たちは本当にワシらに協力するのじゃな?」
 
 時の老人の言葉で、一同はそちらに目を向ける。
 
 その先には、ミハンとステルドがいた。
 
 「ダイ君と、約束しましたからね」
 
 ミハンが笑顔でダイの方を向く。
 
 彼がダイの名前を言ったのはこれが初めてである。認められたということなのだろう。ダイはくすぐったい気分でいた。
 
 一方のステルドの笑みは、自嘲気味であった。
 
 「統治国家を作りたい。その気は変わりませんが、僕は少し急ぎ過ぎていたかもしれません。見聞を広めるために、君たちと共にいさせてください」
 「どうして皆難しい言葉を使いたがるのかな?」
 
 ダイはうんざりしていた。ミハンと言い、なんかめんどくさい。トールも同じ気分だった。
 
 「そうだぜ、素直に仲間に入れてくれって言えないのか?」
 
 そんな二人を見て、ミハンは言った。
 
 「そんな何も考えていなさそうな態度が、奇跡を起こした一因になったのですね」
 
 その一言で、この場に爆笑が広がった。
 
 トールは憤慨する。ダイもそうだが、ふとおもしろくなさそうにこちらを見ているニールに気がつく。
 
 特に何も言えなかった。彼の目が、憎しみを持っていたからだ。
 
 残っているのはジンジャーだけでない。ニールのことも解決しなきゃいけない問題だとダイは察する。
 
 だが、ニールが何を考えていたのかは、わからなかったのであった。
 
 
 
 
 第2部はこれで終了です。
 ゲーム大会とリンクできる部分までは何とか大会前日までに書けて良かったです。
 
 続きはまた、近日中に上げます
 
 では。
 
 
 
 
 
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