「支天輪の彼方で」4周年総括文  RSS2.0

4.好循環への憧れと失敗の理由


Since : 2002.10.12
written by 双剣士
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はじめにサイト理想像との決別なぜ書けない、とは考えまい好循環への憧れと失敗の理由おわりにご意見専用掲示板

 当サイトのコンテンツは、小説やリンク集のように『双剣士が頑張ることで成長していく』ものと、掲示板や物語投票所のように『読者の皆さんの協力によって成長していく』ものとに大別されます。ここでは後者、いわゆる“読者参加コンテンツ”に着目してみましょう。

 この種のコンテンツは、良質な読者に恵まれることが肝心です。良質な読者の方々によってコンテンツの魅力が増し、それに惹かれて読者が増えて一層発展していく……こういう好循環を生み出せれば成功といえます。逆に、こうした好循環に出会えなかったコンテンツは読者が離れていってますます閑古鳥が鳴くという残酷な一面も持っています。こうなると運営者自身が孤軍奮闘してもどうにもなりません。
 こうした観点から振り返ると、当サイトの掲示板や投票所は残念ながら成功しているとは言えません。熱心に書き込んでくれる読者はいらっしゃいます。見にきてくれる読者も確実に存在します……ですが書き込んでくれる人はほぼ固定メンバー。つまり上述の好循環が働いていないのです。コンテンツの中身は少しずつ充実しているのですが、連鎖反応による膨張が起こっていないのです。
 サイトの知名度が低いせいかと最初は考えました。書き込む内容に制約が多いせいか、月天/セイバー/ぴたテン混在サイトゆえに共通の話題を見つけにくいせいか、書き込みに対する双剣士の返答が素っ気ないせいか……いろいろと原因を想像し対策を打ちました。掲示板の形式も5回に渡って変更したりしました。しかし変化はほとんどありませんでした。
 そして現在。読者参加コンテンツに好循環が発生しない理由として、私は当サイトに流れている雰囲気に真の原因があるという推測を持っています。発信者から不特定多数に対する情報提供のみを是とする雰囲気があり、それが読者同士の親睦を妨げて好循環への発展を阻害しているのではないかと。
 この雰囲気の背景について、ここでは考えてみようと思います。

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 いきなり核心に触れますが、きっと私は自分自身を“ちっぽけな存在”だと信じ込んでいるのです。そこに存在するだけでは何の価値もない、単なる資源と酸素を無駄遣いする有機物の塊だって言う認識が根底にあるんだと思うのです。
 こうした認識はネット界に限りません。生身の世界においても『自分にはこれがあるから食べていけるんだ』という気持ちはありますし、再起不能な怪我でも負ったら家族以外との絆は永遠に絶えてしまうだろうと思っています。『あなたはあなた自身であれば良い』という癒し系サイトの決まり文句を見ると『そういう言葉をわざわざ文字にするってことは、自分のような悩みを持っている人はきっと多いんだろうな』と変な意味で安堵感をもったりしてしまいます。

 まぁ私の生い立ちにまで話を広げると収拾がつかなくなりますから、ネット界での振る舞いに話題を絞りましょう。2周年総括文に書いたとおり、私のネット参入のきっかけは『SS収集』でした。膨大な数のサイトを渡り歩き、そこにあるSSを丸ごとハードディスクに取り込んで回線を切り、休日に読みふける……そんな利用の仕方をしていました。常時接続もテレホーダイも使ってなかった頃でしたから接続料節約のためには止むを得なかったのです。
 しかしこういう利用法をしていると、オンラインで訪問する価値のあるサイトとは『新作SSを置いているサイト』だけということになります。新作をめったに出さないサイトは、そこにあるSSがどんなに良質なものであろうとも、一度全文を取り込んでしまえば頻繁に見にいく価値は無いことになります。回線を繋いだままで長文を読み書きするのは勿体無いと思っていましたから、感想を送る際には掲示板でなくメールを使うのが当たり前となりました。チャットやICQなどは最初から問題外でした。
 こういう“節約第一を旨とする読者としての経験”を半年間積んでから、自分のサイトを開設したのです。新作SSがないのに足しげく見にきてくれる読者というのを想像するのはきわめて困難でした。読者の全員が自分と同じ行動を取るわけがないということが頭では分かっていても、都合のいい想像に逃げることは“自分のサイトだけは別格だ”という自己中心的な意識に繋がると考え、固く戒めていたのです。
 この辺の意識については例年の総括文でも触れていますし、前ページの小説執筆プランでも根強く染み付いています。常時接続が当たり前になりつつある現在では古臭い考え方なのでしょうが、三つ子の魂百まで、と諺にある通り簡単に振り払うことはできそうにありません。

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 今にして思えば、こういうスタンスを小説コンテンツだけでなく読者参加コンテンツにまで敷衍してしまったことが、失敗の根源だったのではないでしょうか。
 皆さんも経験があると思いますが、親しい者同士の会話というのは他愛のない話題であることが多いのです。真剣な話題を突き詰めることもありますが話題が収束してしまえば会話は途切れてしまう。それよりは深い意味のない話題を次々と切り替えながら話しているほうが長続きするし楽しいし、他の人も途中参加しやすい。読者によって盛り上がる掲示板やチャットルームというのは、実は軽い話題を取りとめなく話せる場なのでしょうし、そこを運営している本人にとって『なぜ成功してるか分からない』というのが真相なのかもしれません。
 ですが当サイトではそういう方向には進みませんでした。新作SSを出さない自分に価値はない、と思い込んでる私は“自分自身のプロフィールや日々の思い”を語るのは邪道だと思ってましたし、読者がそんなことに興味を持つとも思いませんでした。2年目を過ぎた頃から『双剣士のざれごと』を始めましたが、それも私の文章ではなく紹介しているサイトの内容に読者は価値を見出してくれるだろうと考えたためでした。
 そんな私でしたから、掲示板に書く内容も気楽に考えることが出来なかったんです。読んだ人に『それがどうした?』と思われるような内容なら書く意味がない。相手を納得させるか有益だと思わせられるような内容でないといけない。日々の雑感を面白く読ませるテキストを書ける人は存在するが、自分にはそんな才能はないんだから……●じ○ぴ事件の後遺症もあって、強固な枠を自分にはめていたことは否定できないと思います。
 そんなわけで、掲示板はプチ戯言欄のような性格を自然と持つようになりました。どうでもいいと思われそうな話題を意識的に避けてきたのですから、毎日のように話題が出てくるはずもありません。運営者である私がそういう書き込み方をすれば、読者のほうにも話題に制約のあることが薄々伝わってしまいます。そして不特定多数に向かって何かを提供できる能力を持つ読者が、そうそう沢山いるはずもありません……書き込んでくれる方がなかなか増えず、書き込み間隔も空き気味なのはこうした背景があるせいではないかと考えるようになったのです。

 それでもお薦め物語投票所はまだ割り切ることが出来ます。設立の目的がはっきりしているので『無意味な書き込みは勘弁ください』という雰囲気が残ってしまうのも仕方ないでしょう。
 問題は小説ノウハウ講座と、アニメ版ぴたテンの感想掲示板。いずれも読者参加コンテンツという意味では失敗に終わりました。読者からの書き込みは前者ではゼロ、後者では放映終了直前と直後に1件ずつあっただけで好循環には程遠い結果でした。私自身が途中までしか書き込めなかったということもありますが、理由の筆頭は私自身が書く内容を定型化させてしまったために、読者を“読む立場”に専念させてしまったことです(事実、『面白い』『頑張って書いてください』という感想メールは何通かいただきました)。ぴたテン感想掲示板のほうは途中でそのことに気づいて、放映の当日や翌日にレビューを書くのを意識的に遅らせて誰かが書き込んでくれるのを待っていた時期もあったのですが……一度根付いた流れを押し戻すことは出来ませんでした。

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 さて、分析はここまでにして今後のことを考えましょう。
 2ページ目にて、このサイトはこうあるべきだという理想像とは決別して予想外の結果を受け入れることを表明しました。その方針に従い、物語投票所と第5.1期掲示板については現在の流れを継承したいと思います。どちらも読者参加コンテンツ本来の成功とは言えないもののコンテンツそのものに罪はなさそうだからです。むしろ読者の流れを見る限り、『支天輪の彼方で』という重い雰囲気の中で精一杯の役割を果たしていると推察して良いでしょう。
 今年1月の連載テキスト企画の予想外の成功によって、私自身を縛る強固な枠も幾分和らぎました。総括文とテキスト企画を恒久化したことで読者層も変わっていくでしょう。この変化が掲示板にとって吉と出るか凶と出るか、しばらく静観してみたいと思っています。

 そして私自身について。読者の役に立つ話題でないと書く意味がない、という信念はまだまだ強固に残っています。連載テキスト企画の成功で『もしや?』と思い、軽い雑談を書くための簡易伝言板をトップページに設置してみましたが、その程度で読者の興味を引くことは出来ませんでした。自戒を込めて本日より撤去します。
 読者参加コンテンツの成功を目指す必要があるのか、という根源的な問題もあります。好循環に挑戦してみたい気持ちはあるのですが、『支天輪の彼方で』の雰囲気を舞台とする限りそれは無理なのかもしれません。アニメ感想掲示板に類することを再びやるにしても当サイトではレビュー公開に留め、読者の書き込みを募るのは全然別のサイトを作ってやるべきなのかも。ここらへんはまだ次の方針を決めかねている最中です。


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