「支天輪の彼方で」4周年総括文
2.サイト理想像との決別
Since : 2002.10.12
written by
双剣士
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はじめに/
サイト理想像との決別/
なぜ書けない、とは考えまい/
好循環への憧れと失敗の理由/
おわりに/
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さて前ページで当サイトの4年間の足跡を『失敗の経験』と呼びましたが、読者の皆様の中には何が失敗なのか理解できない方もおられるでしょう。せっかく自分たちが楽しみに見に来ている『支天輪の彼方で』のことを作者本人が悪し様に言うとは何事か、と不愉快に感じる方もおられるかもしれません。
そこでまず、私が問題だと思っている箇所を箇条書きにしておきます。今回の総括文で取り上げる話題は、以下の3つです。
- 4年間経ったサイトの姿が、作者が意図したとおりに進んでいない
- 新作小説を書く書くと言っていながら、約束をぜんぜん守れていない
- 小説ノウハウ講座やぴたテン感想掲示板など、読者の参加を意図していたコンテンツの多くが期待を大きく下回る結果に終わってしまった
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ではまず最初の話題から。
2周年総括文でも書いたことですが、私にとっての『支天輪の彼方で』の理想像とは『小説好きな読者が楽しめるサイト』なんです。ネットを徘徊して2次小説の魅力にはまった運営者が作ったサイトなのですから、読者に提供できるものは当然2次小説関連の情報になります。双剣士の書いた自作小説だけでは質・量ともに読者のニーズには追いつかないでしょうから、他の方が書いた名作小説に触れるための窓口としてお勧めリンク集や物語投票所も作りましたし、寄贈品コーナーも作りました。
『新作、新作』と日頃から口を酸っぱくしているのも、それが当サイトの存在意義に直結するものであると信じていたからです。トップページに『最近の更新』を載せて直接リンクを張っているのも、寄贈CGをいただいた時にトップページに展示しないのも、1つのページに多くのリンクを詰め込むことでサイト階層を浅くしているのも、『小説目当ての読者が目的の小説にアクセスするまでの手間や時間を最小限にすること』を最優先事項においているからです。こうした配慮はブロードバンド時代になっても普遍的に通用するものですし。
ただし言い方を変えるなら、当サイトは『双剣士の趣味を表現するサイト』じゃないんです。『守護月天/セイバーJ/ぴたテンなどを応援するサイト』でもないし、これらの作品のファンが雑談に花を咲かせるためのサイトでもありません。だから当サイトには作者プロフィールやゲストブックがないし、原作について紹介したり論じたりするコンテンツがないし、チャットルームもないわけです(SS感想用掲示板がない理由は1周年総括文を参照)。
これは目的を明確にすることでエネルギーを集中するという意味もありましたが、皮肉な言い方をすれば『2次小説以外の分野に手を出したところで他のサイトに勝てるわけない、Number OneにもOnly Oneにもなれっこない』という意識が根強くあったのだと思います。趣味の世界において勝ち負けを論じることの愚は客観的には分かっていたつもりなのですが、Web運営という見返りのない作業に貴重な時間を費やしておきながらそれが自己満足以上の意味を持たずに終わる、ということに対して恐怖を感じずには居られませんでした。ネット界随一なんて虚像は求めないにしても、読者にとって『あろうが無かろうが関心のないサイト』と呼ばれるようでは作る意味がない。当サイトならではと言われるコンテンツを揃えなければならないし、そのためには手を広げている余裕など無い……『支天輪の彼方で』はそういう思いに常に背中を押されていました。
個性的という言葉で不安をごまかしたくは無かったんです。だってこの言葉を使ってしまうと自分で作り出した文章やページ全てが“他には無い価値”を持つことになってしまい、捨てることを惜しむようになってしまって自己を律することが出来なくなりそうでしたから。
かくして、当サイトでは様々な企画が浮かんでは消えていきました。アニメ版セイバーJ感想企画をはじめとして、オリジナルゲーム、小説ノウハウ講座、テキスト企画、そして年1回の総括文……小説サイトを目指すと言っておきながら小説以外のコンテンツが時々現れるのが当サイトの歴史なのですが、いずれも期間限定公開にとどまっています。小説系コンテンツだって安泰ではなく、公開した小説をある日突然公開停止にするということも何度かありました。
これらはいずれも、良い小説サイトであるためにはどういう姿が望ましいか、と考えた末の判断です。それには良作の増産はもちろんのこと、失敗作の抹消も欠かせないと思いました。また同時に、当サイトの性格を変えてしまいかねないコンテンツが長期にわたって大きな顔をする事態も避けたいと思っていました。来客者数は増えたけれどもその大半は小説に目を通しておらず、当サイトのことを『一個人が愚痴をこぼしているエッセイ系サイト』だと思っている……これは悪夢以外の何者でもなかったからです。
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ところが、今年1月に公開した連載テキスト企画に対する反響は私の予想を超えていました。『良かった』といってくれる人が多いんです。もちろん公開した以上は読者に楽しんでもらうのが目的だったので、好意的な反響が来てくれるのは嬉しいことです。ですがその数が小説1本分の感想平均本数の2倍を超え、しかも以前から当サイトを見に来てくれてた方々が多く名を連ねているというのは正直いって驚きでした。
『読者が求めているコンテンツって、これ?』
3周年総括文での読者アンケートにて、やはり小説執筆が最優先だと結論付けた私にとってこれは驚愕の結果でした。むろん小説かテキスト企画かの二者択一ではないので、テキスト企画が人気を博したからといって小説をないがしろにして良いわけではないのですが……「読者は、何に期待してあなたのページに来るんだと思う?」という問いに対する2つ目の答えが、しかも旧来の読者の方々からも出たということは、双剣士が長年にわたって思い違いをしていたことを意味します。
読者の望むものの片鱗が見えてきたのなら、それに反する既成観念は邪魔なだけです。有力な集客系サイトに置かないと意義が無いと思っていたアニメ感想掲示板を、当サイトのコンテンツとして設置してみることにしました。また双剣士が失敗作だと思っている作品でも好きな人はいるのかもしれないと考えたので、4月末の戯言欄にて『一度公開したコンテンツはみんなのものでは?』と問題提起をし、その感触を受けて7月に旧作/未完成SSの再公開を実施しました。それとともに、感想の書きようがない未完成作/未完結連載作に対する読者の感触を探るため、投票フォームを設置しました。
そして、その結果は……予想を覆すものでした。良い意味で。
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かくしてサイト開設4周年をもって、私はサイト運営方針を変更することにします。
当サイトが小説サイトであることは今後も変わりませんし、小説書きに割く時間を去年までよりも減らすというつもりもありません。小説サイトとしてどうあるべきか、という問いかけは今後も続けます。ですが『小説サイトとしてふさわしくない』という観点から人気コンテンツを削除したり導入をためらったりする行為は、これからはやめようと思います。過去の総括文や連載テキスト企画を正規コンテンツに昇格させ、戯言欄に書いたサイト紹介文を独立のコンテンツにしたのはその証です。
これは言い方を変えれば、当初想定していたサイト理想像に固執しなくなるということです。『支天輪の彼方で』は小説メインのサイトとは今後呼ばれなくなるかもしれません。ですが小説があるにもかかわらず他の部分を評価してくれる読者の存在を、これからは肯定的に捉えましょう。余計なものを排除することで純血化を図るのではなく、予想もしなかった自分の長所が見つかることを楽しみにすることにしましょう。別に難しいことではありません。これまで『小説執筆こそが本道!』と唱えつつも寄り道をしてきた成果に対して、恥じる気持ちを捨てるだけです。このサイトの将来に対する恐れを捨てるだけです。
もちろん“何でもあり状態”に180°旋回するわけではありません。読者に不人気だと判明したコンテンツは今後も排除するつもりです。今回の方針変更が自分自身に対する甘えにならないよう、ご注視いただけると幸いです。
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