「支天輪の彼方で」4周年総括文  RSS2.0

3.なぜ書けない、とは考えまい


Since : 2002.10.12
written by 双剣士
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 続いては総括文恒例の遅筆反省コーナーです(笑)。成長がないですね私も。

 これまで4年間、私はいろいろな執筆促進プランを試みてきました。書き癖をつけるべく毎日更新の企画を練ったり、SSとは異なる執筆分野への進出を試みたり、次回作の予告をすることで自らにプレッシャーを与えたり、早寝して早朝に起きることで執筆時間を確保しようとしたり……そのいずれも実を結ばなかったことは、読者の皆さんもご存知だと思います。またここで新しいプランを宣言したところで信憑性はゼロでしょう。
 そこで今回の総括文では、例年繰り返してきた自爆パターンをやめてみようと思います。執筆間隔が壊滅的なまでに開いてしまったのは事実ですが、それを解消するためにこういう作戦を取る、という宣言を今年はしません。

 あ、引退する準備に入ったとか、そういうんじゃないんですよ。

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 現在『支天輪の彼方で』には寄贈品を除いて30本のSSがありますが、その半分は1999年春〜2000年春に書き始めたものです。あのころは1ヶ月に最低1本書くことを目標にしていましたし、1ヶ月に2本以上書くこともありました(それでも同時期の月天/セイバー系SSサイトの中では遅いほうでしたが)。
 どうしてあのころのように書けないのか……2000年夏以降の私は、そういう自責の念に駆られていました。最初は自分にサボり癖がついたんだと思いました。ある程度の読者が付いたことで下手なSSは見せられないと思い込み自分で敷居を高くしてしまったのだと考えたこともありました。生活形態や趣味の変化によって小説の読み書きに以前ほどの情熱を注げなくなったせいだと考えもしました。
 これは換言すると、2000年春までの自分が本来の自分であって、それ以降は何らかの阻害要因が加わったためだ、それを克服し本来の自分に戻るにはどうすればいいのか、というスタンスだったのだと言えます。あるいは障害を克服できないなら過去には無かった習慣……早起きや毎日更新など……を取り入れることで収穫を増やそうと。こちらも『〜さえあれば以前のように書けるはずだ』という前提あっての作戦ですね。

 しかし……以前のペースを取り戻せないまま4周年を迎えた今日となっては、アプローチを間違えていたのかなと考えるようになったのですよ。2周年総括文にも書いたように、時間が経つごとにネットに対する関わり方は変わっています。3周年総括文や前のページにも書いたように、サイト運営に関する考え方も変わっています。職場における立場や業務の内容も変わっているし、なにより月天/セイバーJ/ぴたテンなどを取り巻くメディア環境やファンの心理も2年前とは様変わりしています。こうした変化があったにもかかわらず、2年前に比べて現在の自分を『堕落した』と認識していたのが、失敗の根本原因にあったのかもしれないと。
 開き直ったように聞こえると申し訳ないんですが、おそらく今の私は時間をたっぷりと手に入れたとしても、以前のようには書けないんじゃないかって思うんですよ。量だけでなく質としても、以前と同じことは出来ない……以前とは別の切り口で考えてしまうのではないか。同じキャラクターを同じ設定の中に放り込んでも、別の展開を思い浮かべてしまうんじゃないかって。結成10年とか20年を迎えたロックバンドがデビュー当時のテイストを持ち続けられないように、いくらファンから最盛期の姿を期待されてもどこか不似合いに見られてしまうように……中高生のころ、テレビに映るロックバンドのことを他人事ながら心配していた時期がありましたが、自分がそういう境遇になるとは思いもしませんでした。
 いずれにしろ、自分が変わったことを現実として受け止めなければならないと思うんです。読者の方々が以前と同じテイストの作品を以前以上のクオリティで量産することを希望していることは分かるし、自分だって読者の立場なら同じ望みを持つでしょう。それは分かるんですが、だからといって現在の自分に鞭打っても仕方ないような気がしてきました。そのことを率直に認めることが、今年の総括文の意義ではないかと。

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 自分への甘え、だとおっしゃる方もおられるでしょうね。実はこうして振り返ってる私自身も、現状追認・責任放棄だという思いが拭えないんです。誰にも見せずに自分のために書いてるなら好きなペースで書いててもいい。しかし自前の小説サイトを持ち、自作小説をメインとして多くの方に見てもらい、『ご意見歓迎』と公言しているからには……読者に対する責任があるだろうと。以前に書いた小説を誰でも閲覧できるように維持し続ける、というだけでは責任を果たしたことにならないだろうと。結果として目標を達成できない場合があるのは一歩譲って止むなしとしても、目標そのものを放棄しそのことを読者に向かって正当化するのは醜悪と呼ばれても返す言葉が無いだろうと。
 昔のように『新作を出し続けないと読者に飽きられる』という強迫観念は、4年経ってだいぶ和らぎました。前ページで述べたように読者の興味が小説分野に限ったものでないことも分かりました。ですが、ですが……くどくなるので繰り返しませんが、今のままじゃいけないという思いは根強く残っているのです。

 とりあえず、読者に予告なり約束なりをして自分にプレッシャーを掛ける方法は止めようと思います。失敗したときに自己嫌悪に陥るようなマイナスの執筆動機づけはこれまで散々失敗しているし、読者からの信頼も低下するし、なにより趣味として楽しむというスタンスが危うくなりかねないから。
 しかし現状を『良し』と認めるわけには参りません。以前のペースを取り戻すというのは断念するとしても、現状から上向きの成長を目指すことは必要でしょう。書かないと何かを失うというのではなくて、頑張って書くことでプラスの効果を得ればいいわけです。思うに『書くこと自体の楽しさ』と『読者からの応援』がプラス効果の双璧でしょう。後者については良い作品を書き上げた結果として付いてくるものですから、手を打つとすれば前者。

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 こういう思考経緯を元に、5年目もいろいろとやってみようと思います。2年前に比べて何が足りないというアプローチではなく、新しい挑戦と原点回帰を織り混ぜながら……まだはっきりとは言えないのですが、どちらかといえば旧連載の続編よりは新作のほうに重点を置くようになる気がしています。続編に期待票を入れてくれてる読者には誠に申し訳ないのですが。

 御託はいいからさっさと書け? そうですねぇ、こんなことは悩むことじゃなくて、一心不乱に書き続けることで追い払うべき邪念なのかも。それにこうやって迷っていられるってことは、まだどん底まで落ちてないって証だろうし。


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