「支天輪の彼方で」3周年記念総括文(期間限定企画)  RSS2.0

2.Web運営の目的


Since : 2001.10.12
written by 双剣士
正門へSite Mapへ総括文の目次へ
はじめにWeb運営の目的3年目の改造内容読者アンケートの結果と考察今後に向けてサイト移転のノウハウあとがきご意見専用掲示板

 読者の皆さんの中で、ご自分でWebサイトを運営してらっしゃる方にお尋ねします。あなたは現在、何を目的としてサイト運営を行っていますか? サイトを運営することで、あなたは何を得ていますか?

 なぜサイトを作ろうと思ったかという問いなら、答えることは比較的容易でしょう。雑誌の記事を見て面白そうだと思ったから、他の人の作ったサイトを見て自分にも出来そうに思えたから、ネット上で友人関係を築くにあたって自分自身を紹介するための「拠点」が欲しいと思ったから……などの回答がすぐ頭に浮かびます。そして開設してから数カ月、いや1年くらいのうちは、サイト内容の充実や新しい友人たちとの交流、検索エンジンへの登録やリンク集の整備などの作業がまだまだ山積みであり、忙しくも楽しい日々を送れることと存じます。

 しかし、やがてサイトの内容がそれなりに充実してくると、訪れるお客様の層も固まってきます。HTMLを駆使してサイトを作るという作業には一通りの区切りがつきました。サイトを作ったらこんな世界が開けるはず、と言う当初の期待にも一応は答えが出ました(満足できるかどうかはともかく)。そしてサイトを運営するという作業を日常生活に組み込んだとき、自分が何処まで出来るかと言う問いにもほぼ答えが出てきました。サイト運営者になる、と言う目的はどうにか達成できたわけです。

 ではこれから先、サイト運営者であり続けるための目的を、何に求めたらいいのでしょう? これまでに作り上げたサイトを維持し続けることが今後の課題でしょうか? しかし読者に飽きられたらそれまでのWebサイト運営においては、『かつてそこにあったものが、今も残っていてくれる』ことに価値を見いだす読者はきわめて少数です。とりわけ私のサイトのように、若年層をターゲットにしたコミック・アニメ系のサイトにおいては……【現状維持】とは【退嬰】と紙一重なのではないでしょうか。

 1年前までの私であれば、この問いに対する返答は単純明快でした。
   「読者のハートを鷲掴みにする小説を提供する! それがそもそもサイトの
    設立目的でもあることだし、読者がこのサイトに求めていることでも
    あるはずだから」
 そう考えて、新作小説を量産するために怠惰な自分にどうやって鞭を入れるか、という作戦案を毎年の総括文にて表明してきました。しかしご存じのように、その計画のほとんどは挫折。むしろ年を追うごとに執筆ペースが落ちていく、というのが冷徹なる現実です。
 去年の総括文で表明した『週刊小説』も、誕生する前に消えていってしまいました。ここに至って私も悟ったのです。同じ落とし穴に飛び込み続けている自分に。

 では、これからどうするべきか。サイト運営を2年続けて得たものは『思い通りには筆を進められない半端な自分』だけでしょうか。社会人としての責務も年々重くなり、年齢的にも独身生活を謳歌しては居られない世代に入った自分にとって、惰性のみでサイト運営を続けることが良いことなのでしょうか。
 もちろんこの2年間に沢山の人と知り合えましたし、小説の読み書きを通じて悟ったものもありました。しかしそれらはサイト運営を続ける理由になるでしょうか? 自前のサイトを持たなくても、他サイトに小説を投稿することで地歩を固めてらっしゃる方は少なくありません。メールアドレスさえあれば読者との交流にも不都合はないのです。『小説書きとしての自分』にこだわり、プロフィールもゲストブックも設置せずに来た私にとっては、そうした形態の方が性に合っているのではないでしょうか?

 こうした問いに答えを出せたのは、激動の20世紀が終わろうとする去年の12月中盤でした。新しい運営方針を端的に言うと、こうなります。

来てくれた読者に楽しさを提供する、エンターティナーとしてのサイト運営

 それまでの『支天輪の彼方で』は、双剣士の趣味の範囲内で作ったものを公開する、という立場でした。コンテンツ追加も廃止も双剣士の自由、読みたくなければ読まないで……極端に言えばこういう方針だったのです。すなわち小説書きにおいては『読者に楽しんでもらえるものを』と指向していながら、サイトそのものは単なる窓口、書き上げた小説を置いておくための場所として認識していたわけです。
 インターネットの世界は『個人の自主性と自己責任に基づく自由』が不文律ですから、上記のような方針で運営しているサイトは沢山あります。特に創作系のサイトにおいては大半がそうだと言えるでしょう。「公に向かって何かを提供する」などとおこがましいことを公言するより、「自分が好きなことをやっています、興味がある人だけ見てください」と言う立場の方が気楽だし、おそらく正直なんだと思います。私もそのつもりで、先輩サイトを真似する形で自分の考えをまとめ、著作権のページなどで表明してきました。
 ですが……この考え方だと、あくまでメインは当人の趣味の方であって、サイトはその窓口でしかないわけです。ですから趣味の方が行き詰まればサイトも共倒れしてしまうし、読者からの要望やプレッシャーにさらされる分だけ余計な苦労を背負うことにもなります(読者からの期待をエネルギーに変えられるタイプの方なら良いのでしょうが)。そしてなにより、サイト運営を通じて得たテクニック・知識・経験などが『貴重だけど、しょせんは余技』という位置しか占めることが出来ません。だから私のように悩んだり、人気サイトが突然に閉鎖したりという事件が起こるのではないでしょうか。

 新しい方針によれば、サイト運営そのものに価値を見いだすことが出来ます。これまで余技であった経験などが【成果】として評価の対象になります。読者の動向を見ながら、自分の価値を高めるよう軌道修正をし自分を変えてゆく……これは人間社会において決して無駄にはならない技能であり、かつ親しい仲間内や親戚間においては(多少のミスをしても見捨てられない環境においては)なかなか蓄積されにくい経験になるでしょう。
 ただしこれは読者への迎合を必ずしも意味しません。要望を全て取り入れて最大公約数的なサイトを作ることは、かえって読者を飽きさせてしまうでしょう。自分の個性を壊さぬよう留意しつつ、読者に見に来て良かったと思わせるサイト。少なくとも自分が読者だったら見に来たいと感じるサイトに近づけていく作業……どうです、やり残したことはまだまだ沢山あるように思いませんか?

 次の章では、上記の新方針に基づいて実施した具体的な内容について述べます。

正門へSite Mapへ総括文の目次へ
はじめにWeb運営の目的3年目の改造内容読者アンケートの結果と考察今後に向けてサイト移転のノウハウあとがきご意見専用掲示板