読者の皆さんの中で、ご自分でWebサイトを運営してらっしゃる方にお尋ねします。あなたは現在、何を目的としてサイト運営を行っていますか? サイトを運営することで、あなたは何を得ていますか?
なぜサイトを作ろうと思ったかという問いなら、答えることは比較的容易でしょう。雑誌の記事を見て面白そうだと思ったから、他の人の作ったサイトを見て自分にも出来そうに思えたから、ネット上で友人関係を築くにあたって自分自身を紹介するための「拠点」が欲しいと思ったから……などの回答がすぐ頭に浮かびます。そして開設してから数カ月、いや1年くらいのうちは、サイト内容の充実や新しい友人たちとの交流、検索エンジンへの登録やリンク集の整備などの作業がまだまだ山積みであり、忙しくも楽しい日々を送れることと存じます。
しかし、やがてサイトの内容がそれなりに充実してくると、訪れるお客様の層も固まってきます。HTMLを駆使してサイトを作るという作業には一通りの区切りがつきました。サイトを作ったらこんな世界が開けるはず、と言う当初の期待にも一応は答えが出ました(満足できるかどうかはともかく)。そしてサイトを運営するという作業を日常生活に組み込んだとき、自分が何処まで出来るかと言う問いにもほぼ答えが出てきました。サイト運営者になる、と言う目的はどうにか達成できたわけです。
ではこれから先、サイト運営者であり続けるための目的を、何に求めたらいいのでしょう? これまでに作り上げたサイトを維持し続けることが今後の課題でしょうか? しかし読者に飽きられたらそれまでのWebサイト運営においては、『かつてそこにあったものが、今も残っていてくれる』ことに価値を見いだす読者はきわめて少数です。とりわけ私のサイトのように、若年層をターゲットにしたコミック・アニメ系のサイトにおいては……【現状維持】とは【退嬰】と紙一重なのではないでしょうか。
1年前までの私であれば、この問いに対する返答は単純明快でした。
「読者のハートを鷲掴みにする小説を提供する! それがそもそもサイトの
設立目的でもあることだし、読者がこのサイトに求めていることでも
あるはずだから」
そう考えて、新作小説を量産するために怠惰な自分にどうやって鞭を入れるか、という作戦案を毎年の総括文にて表明してきました。しかしご存じのように、その計画のほとんどは挫折。むしろ年を追うごとに執筆ペースが落ちていく、というのが冷徹なる現実です。
去年の総括文で表明した『週刊小説』も、誕生する前に消えていってしまいました。ここに至って私も悟ったのです。同じ落とし穴に飛び込み続けている自分に。
では、これからどうするべきか。サイト運営を2年続けて得たものは『思い通りには筆を進められない半端な自分』だけでしょうか。社会人としての責務も年々重くなり、年齢的にも独身生活を謳歌しては居られない世代に入った自分にとって、惰性のみでサイト運営を続けることが良いことなのでしょうか。
もちろんこの2年間に沢山の人と知り合えましたし、小説の読み書きを通じて悟ったものもありました。しかしそれらはサイト運営を続ける理由になるでしょうか? 自前のサイトを持たなくても、他サイトに小説を投稿することで地歩を固めてらっしゃる方は少なくありません。メールアドレスさえあれば読者との交流にも不都合はないのです。『小説書きとしての自分』にこだわり、プロフィールもゲストブックも設置せずに来た私にとっては、そうした形態の方が性に合っているのではないでしょうか?
こうした問いに答えを出せたのは、激動の20世紀が終わろうとする去年の12月中盤でした。新しい運営方針を端的に言うと、こうなります。