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処女作リメイク投稿4-2(最終) |
by RIDE |
小説投稿 | 2018年 1月27日(土)22時40分 |
どうも、RIDEです。
処女作リメイクもこれでラスト。 最終章、楽しんでください
ダイとニールは尚も戦い続けていた。
お互い白熱しており、攻撃を喰らっても負けたくない一心で立ち上がり中々決着がつかない。二人の実力は、それぐらい伯仲していてそれでいて高かった。
「ただ騒がしかった奴が、これほどまで戦えるようになるとはな」 「俺だって、強くなろうとしてきたんだ!」
タイムネット世界に来たばかりの頃は喧しく、皆からは厄介者としか見てもらえなかった。トールのおまけとして有無を言わさず連れてこられたのだから同情は出来るが、中々好意的に接してはもらえなかった。そんな彼でも、数々の戦いを経験し、トールたちと肩を並べるほどまで成長したのだ。
その事実を、ニールは認めたくなかった。
「ただ騒がしいやつでいればよかったのに…」
ニールは、ダイに自分の思いの丈をぶつけずにはいられなかった。
「ミハンより、勇者より、おまえが一番目障りだ!」 「な、なんだと!?」
ダイは絶句した。一体自分が彼にどんな恨みを買ったというのか。ただ騒がしかったかもしれないが、ここまで怒りをぶつけられることは無いはずだ。
ニールは、今まで自身の中に溜めていた心を打ち明けた。
「初めて会った時、おまえは口だけの奴だと思った。勇者としての実力はそれほどでもないくせに、大きなことを言って、みんなを呆れさせた。」 「俺は一言言わずにはいられなかったが、そんな俺におまえは張り合ってきた。おまえに何ができる、何もできないくせに。食って掛かるおまえに対して、俺は軽んじていた」
ここまでの言葉に、ダイは納得していた。気に入らないことばかり口にはしているが、すべて自分に当てはまっていると痛感している。
ああ、ニールはやっぱりそう思っていたんだな、と。 だが、とニールは続けた。
「俺の中での評価が変わったのはマーズタワーでの戦いだ。あの時おまえは俺が倒せなかったミハンを倒すどころか、改心させた。そればかりか、タイムパラドクス砲から火星を守ったという、まさに勇者がやることをしてのけたんだ」 「俺にはない力、強さ。いままで勇者の端くれだったおまえがそれを見せつけたことで、俺は脅威を抱いた。自分が追い求めた強さが偽りであることを突き付けられる気がしたからだ…」
嫉妬と羨望、そして恨み。ニールからそんな思いをぶつけられたことのないダイは困惑するしかなかった。
いや、誰が相手でもそうなっただろう。ニールがこのように内心を明かすことなんて、自分たちの知っている限りでは無かったはずだ。
「だから、ここでおまえを倒す!そうしなければ、俺が強いということが証明できない!」
ニールは、これ以上ないほどダイへの敵対心を燃やしていた。
「決着をつけるぞ!そうでなければ、先に行った勇者たちへの加勢には行けないぞ!」
だが、ダイは迷っていた。確かに急がなければならない。この先に居るジンジャーは強敵に違いない。たとえ微力であったとしても、トールたちが只やられているのを待っているということはしたくない。でも、どうしてもここでニールと戦うのは渋ってしまう。
何故戦う気がすすまないのか。それは、ニールが続けた言葉で思い出す。
「おまえだって、俺と戦ってみたかったのだろう?」
それでダイは、どうしてニールと戦いたかったのか気付いた。同時に、自分が何を望んでいるのかも。
はっきりした以上、ダイの行動は早かった。彼は突如モンスターを纏うのをやめた。
「…なんのつもりだ?」
戦闘態勢を解いたことに、今度はニールが困惑する。そんな彼に、ダイはきっぱりといった。
「俺は、おまえと戦わない」 「…なんだと?」
その言葉は、ニールには信じられないものだった。
ダイ目がけて、ニールは剣を振り下ろした。
刀身は、ダイの傍らで空を裂いた。
「ジンジャーのもとへたどり着くことなく、ここで立ち止まるつもりか?」
脅しのように思えるが、確認でもあった。ダイが動くかどうかの。
ダイは動こうとはしなかった。こちらを見ているだけだ。その目が、まるで自分の心を見通しているかのように思えて、ニールは苛立った。
「本当に戦わないつもりか」
ニールも合身を解き、ダイと手が届くところまで距離を詰める。
そして、ニールはダイを思い切り殴った。
「この場で俺に殴り殺されても構わないのか?」
その答えと言わんばかりに、ダイはニールを睨む。その目は、意思の固まった目であった。
目を見て分かる。ダイの決意は変わらない。そのことが、ニールの神経を逆なでさせる。
「…ふざけるな」
とうとうニールは、その拳を抑えようとはしなくなった。
「戦え!」
次々と鉄拳をお見舞いするニール。
「何故戦わない!?」
怒りのまま、ニールはダイを殴り続ける。しかし、ダイは抵抗する素振りも見せない。倒れこそしないが、ただ黙って殴られるだけである。だからこそ、戦いを望むニールは止めようとはしなかった。
「俺は戦うにも値しないということか!俺は、俺は…!」
その声が嗚咽混じりになったところで、ニールの手が止んだ。そんな彼の顔を見て、ダイは目を見張った。
「おまえにとっては、その程度の相手でしかないということなのか…!」
涙を流すニール。感情の高ぶりの証である金色では無く、普段の目となっている。
ニールが涙を流すところも、ダイは見たことが無い。それほどまでに、彼は自分との戦いに思い入れがあったのだ。
だからこそ、ダイは答えなければならなかった。
「…何度も言わせるなよ。俺は戦えない」
それを聞き、ニールは追い詰められたようであった。彼は遂にはこう告げた。
「…こうなったら、呪いの力で暴走して、暴れ回ってやろうか」
そうなれば、ダイも無視はできないはず。正しくニールの最後の手段であった。
ところが、ダイはそれを聞いて嬉しそうな顔をした。
「…なんだ。やっぱりおまえ、呪いの力をコントロールできるようになっていたんだ」
それを聞き、ニールははっとして気付いた。どうやら彼は、無意識のうちにそれを行っていたらしい。
「なんとなく、そんな気はしていたんだよな。あれだけ気持ちを爆発させて、今までのおまえならとっくに暴走していてもおかしくなかったからな」
ダイは満面の笑みを浮かべていた。何がそんなに嬉しいのか、ニールにはわからなかった。
「そんな強いおまえだからこそ、ここでは戦えない」
ダイは、真っ直ぐにニールを見る。
「俺は、この世界の平和の為とか、誰かの為じゃなくて自分の為におまえと戦いたいんだ。俺は、おまえと競い合ってもっと強くなりたいから戦いたいんだ」
そこでダイは気恥かしそうにしながらも、再び口を開いた。
「俺はおまえのこと、その…ライバルだと思っているからよ」 「ライバル…?」
今まで考えたこともなかった言葉や戦いの捉え方に、ニールはただ呆然とするしかなかった。
「と、とにかくだ!俺がおまえを倒したいんじゃなくて、超えたいんだ。おまえと思い切り戦うためにも、ジンジャーの奴を早く止めたいんだ」
ニールはもうすっかり毒気を抜かれていた。ダイが自分をライバルとしていたこと、自分の知らない戦いがあったこと。彼にとっては新鮮過ぎて、言葉がうまく出てこない。
その時だった。闘技場の方向から黒いオーラが発している。二人とも、それをはっきりと感じていた。
「これは…!」 「あいつか!」
それがジンジャーのものであることは、容易に察せられた。
「トールたちはどうしたんだ?早く行かなきゃ!」
ダイは闘技場の方へと走って行った。
「ま、待て!」
ニールは止めようとしたが、ダイはそれを振り切って行った。いや、彼自身止める気持ちが弱かったため、どの道ダイは行っていただろう。
自分はどうしたいのか。もう、先程のような気持ちでは戦えない。
「こんな時、自分の正直な気持ちが出てくるおまえがうらやましい…」
ニールはただ、ダイの背中を見ているだけであった。
ジンジャーの出現に、トールたちは身構えた。
「よくぞ全てのモンスターを回収したな。誉めてやるぞ」
ジンジャーは、まるで子供でも相手にするかのような態度である。
「だがわかるぞ。この私を前にして震えているな。恐怖によって」
トールは強がって見せようとしたが、それは去勢であることも見透かされていた。ジンジャーを前にして、彼が放つオーラを受け身体が竦んでしまっているのだ。
「もう好きにはさせないぞジンジャー。いや時空間生物!おまえの目的は何なんだ!?」
するとジンジャーは、まるで歌劇の場で歌う様に語り始めた。
「そう、私が望むのは恐怖がはびこる世界。私のような時空間に生きるものは人間の感情とそこに含まれるエネルギーを餌としている。世界が消えようとしていく中で追い詰められた人間の恐怖は、正に極上。特に世界が消える瞬間のそれはいい」
やはりこちらが予想した通り、奴はこの世界が消滅しても構わないようだ。
「自分の餌の為に、この世界を混乱させたっていうのか?」 「最初は時の柱の崩壊によって生じた人々の負の心でよかったのだが、思いのほか早く修復されたのでな。だからこうして人々を扇動したというわけだ」
ジンジャーの喋り方は、こちらを煽るような物言いだ。まるで遊び半分といった調子なので、当然トールたちは怒りを募らせていく。
「だがもうそれも終わりだ。おまえを倒して、な!」 「出来るかな、おまえたちのような人間に」
ジンジャーの姿が変わっていく。子供のような身体から、巨大な筋骨隆々とした化け物となる。頭には角が、口には牙が、背には翼が生える。それはまるで、悪魔のようであった。
トールたちの周囲にいた人たちは、その姿形に恐れ慄いていた。トールたちも、恐怖に震えそうになるところを何とか抑えていた。
本当に、こいつを倒せるのか。
「そうだ、もっと恐れるがいい。それが私の力となるんだ!」
恐れればそれだけ、奴は強くなってしまう。これ以上厄介になる前に倒さなければならない。
震える体に鞭打って、ブレイジングペンタグルが攻撃を仕掛けた。しかし、それは難なくかわされてしまう。
「私の力、見てみるがいい!」
ジンジャーが指先から二条の光線が放たれ、G-2T-MaxとN-3の片腕を破壊した。
「ステルド!ミハン!」 [大丈夫、片腕だけですがまだ戦えます!]
そうは言うが、相手の力の底が知れない。自分たち五人だけじゃなくせめてもう一人、いや二人いればまだましに戦えるはずなのだが。
「待て待て待て!」
ちょうどそこに、ダイがやってきた。
「ダイ!ニールはどうした?」 「知らねえ!それよりも、あれはジンジャーなんだな?」
目の前にいる悪魔のような化け物がジンジャーであることを確認する。それを取った後は、ダイも融合モンスターを纏って戦う構えをとる。
「これが最後の戦いなんだ、全力で行くぜ!」
そして、火星でなったように金色へと変わり、ジンジャーへと挑みかかった。ブレイジングペンタグルらもダイに続いていく。
彼らはジンジャーに攻撃を加えていく。タイムネット世界で現在誇る最大戦力による一斉攻撃、威力は凄まじいものである。
その攻撃を、ジンジャーは耐えきったのだ。
「貴様らの攻撃など、この私には効かん。だが…」
ジンジャーは、ダイに目を向ける。
「貴様は何をしでかすかわからないからな。ここで始末する!」
そして、エネルギー球を形成する。
「これはタイムパラドクス砲と同質の力をもっている。それでいて、マーズタワーの時よりも威力が大きい」
つまり、あの時のように止められはしないということだ。
「これで消えるがいい!」
そのエネルギー球を、ダイに向けて投げつけた。
「ダイ!逃げるんだ!」
しかし、ダイは逃げようとはしない。マーズタワーとは状況が違い、逃げることができるのに、だ。
何故しないかはわからない。だが、このままではダイが危ない。
そんな彼の前に、割って入った影が一つ。
その影が、エネルギー球を切り裂いた。
「俺の剣は、時空さえも切り裂く剣だ」
それにより、二つに分かれたエネルギー球は完全に消滅した。
自分を救った相手に、ダイは驚きを隠せなかった。
「ニール!」 「何故逃げない?まあ、なんとなく理由はわかるが」
先程戦っていた時とは違い、ニールは落ち着いていた。
「逃げてはいけない。これが最後の戦い、逃げ場なんてない。だから恐怖に震えても、逃げてはいけない。それだけはやってはいけないということだろ?」
ニールの話に、トールたちははっとする。
自分たちは、何のためにここに来たのか。しなければならないことは何なのか。
「恐くてもいい。ただ、戦うこととこの世界を救うことは忘れてはいけない。そのために、俺も力を貸そう。」 「ニール…」 「俺たちだってそうだ!」
トールたちも、気を入れ直していた。
「例えあいつがどれだけ強くても、この世界を守りたい!」 「みんな…」
トールたちが立ち上がったのを見て、ダイは感銘を受ける。自分にはまだ、一緒に戦う仲間たちがいたことに感動したのだ。 最後にニールがダイに声をかけた。
「足を引っ張るなよ、ダイ。俺のライバルならな」
ニールがダイの名を呼び、ライバルとまで言った。
彼が初めてダイを認めたということだ。そのことが、何よりも嬉しかった。
それだけじゃない。トール、エール、レイ、ステルド、ミハン。勢力を、世界を超えて集い、今同じ思いをもって戦おうとしているのだ。それが、ダイを震え立つ源となった。
「そうさ…俺たちは、負けない!この世界を守るんだ!」
その瞬間、融合モンスターを纏い、黄金に輝くダイが更にその輝きを増した。
ダイだけではない。トールたちも体から光を発し、ダイへと向かっていった。
そして、ダイが纏う融合モンスターの姿が更に変わっていく。
それは、神々しい龍であった。
「ライジング・ホープ・ドラゴン、ここに推参!」
ライジング・ホープ・ドラゴン。それを纏うダイは先頭に立ってジンジャーと対峙する。
「ライジング・ホープ(希望は夜明けと共に)、だと…」
その姿を見たジンジャーは、苦々しく睨んでいた。
「やはりそうか。始めて会った時からまさかとは思っていたが、おまえがダイなのだな…」 「は、何言っているんだ?当たり前だろ」
ジンジャーが何を言いたいのかわからず首を傾げるが、ジンジャーはダイのことなど構っていられない様子であった。
「いくつもの時空間にそれぞれ別の者が存在するが、魂だけは同じくする者。ダイはその一人であり、それぞれの世界でその世界の命運に関わってきたという」
ジンジャーは、怒りを込めてダイを指差した。
「おまえもまた、そうだというのか!」 「知るか!難しいことをべらべらと喋ってんじゃねえ!」
ダイは、ジンジャーを思い切り殴った。ジンジャーはそれだけで倒れてしまう。
これはいける。ダイはそう実感した。恐らく皆の思いが集まり、力となってこの形態となったのだろう。
ライジング・ホープなんて自然と頭の中で思い浮かんだが、これは正に、暗闇から希望をもたらし、夜明けのごとく光をもたらすことができる。
「許せん…!」
対して、起き上がってきたジンジャーは憎しみをぶつけるかのようにダイを睨んだ。
「ダイ、貴様だけは恐怖を与えるなんて生ぬるいことはしない。魂ごと消してやる。その忌々しい運命も、この世界と、下等生物ごと消え去るがいい!」
ジンジャーは、全力のエネルギー波を放った。見るからにして、ここら辺一帯、いや下手したらこの世界ごと消し飛ばされるかもしれない。自分たちがいるのは時空間から切り離されたタイムネット世界なのだ。時間が不安定なこの世界に、時空間に少しの衝撃でも与えればそれだけで崩壊するかもしれない。
「させるか!」
ライジング・ホープ。ドラゴンもその口から光を吐いた。エネルギーと光がぶつかり合った時、両方とも霧散した。ドラゴンの光の効力だろう。
その隙を狙って、ブレイジングペンタグルをはじめとした勇者たち3人がジンジャーに一撃を入れた。
そこへさらに、モンスターと合身したニールが剣を手に迫っていく。彼の援護をするため、G-2T-MaxとN-3が砲撃を行う。
ニールはジンジャーの攻撃をかいくぐり、その翼を剣で切り裂いた。するとジンジャーは、痛みにたまらず叫び出した。どうやら、翼が弱点だったようだ。
そして、ライジング・ホープ・ドラゴンがその爪を突き立てんとジンジャーへと飛んでいく。
「おまえの恐怖も、これで終わりだ!」
ジンジャーの胸に、ドラゴンの爪が深く刺さった。いくら時空間生物でも、これだけ深手を負えばたまらないだろう。
「バカな…この私が、ダイがいるとはいえ、下等生物ごときに…」
ジンジャーの最後の言葉を、ダイは聞くつもりはなかった。
「下等生物だろうが、俺たちは生きている。黙って餌になるわけにはいかないんだ」
とどめとして、ドラゴンがまたその口から光を放とうとする。
「シャインロアー!」
その光を受け、ジンジャーは光となって霧散した。
残ったのは、ダイをはじめとした仲間たちだ。
「やったのか…?」
呆然とするダイ。ライジング・ホープ・ドラゴンを纏うのを止め、いつもの姿へと戻っている。
「ああ、やったんだ。おまえが」
同様に合身を解いたニールがその肩に手をかける。
その時、地面が激しく揺れ出した。
「こ、これは一体…?」 「まさか…」
あの地面の揺れは、タイムネット世界が元の時空へ戻ろうとしている衝撃であった。
トールたちは、無事に帰ってこれたのである。
リナたちが迎えに来たのを確認したことで、戦いが終わったことを実感した。
再び、タイムネット世界は平和となったのだ。そのことに、トールたちは心の底から安堵し、喜んだ。
それから数日後、トールがタイムネットマスターになったことを祝う式典が開かれていた。
先頭に立つトールは照れ臭そうにしながらも皆に手を振っていた。傍らにいるエール、レイも惜しみない拍手をしていた。
ステルドとミハンも同様であった。ちなみにステルドは統治国家の建設は諦めてないらしく、今はまだ時の老人たちの手伝いをしながらゆっくりと夢へと向かっていくみたいだ。ミハンも、贖罪の為でもあるがこれが自分が望んで進む道だと言っていた。
華やかな式典。それを後にしニールは去ろうとする。
「出ていくのか?」
そんな彼の行動を呼んでいたのだろう、ダイが離れたところで待ちかまえていた。ニールは彼の近くで止まる。
「ああ、俺は旅に出る。本当の強さがどういうものか知るためにな」 「旅から帰って来た後、おまえは更に強くなっているかもな」
楽しみと言わんばかりな様子のダイ。そんな彼を見てニールはふっと笑う。
「その時になって吠え面かくなよ」 「返り討ちにしてやるぜ」
今までのような単なるいがみ合いではなく、素直になれない為の激励代わりである。互いにそれが伝わっていることは言わなくてもわかっている。
「あ。それからさ、おまえの呪いのことなんだけど…」
話が呪いのこととなり、ニールは表情に真剣さを増した。実のところ、呪いについては自分でもよくわかっていないのだ。戦いが終わった今、尚更それを知らなければならない。
「呪いの正体は、ナノマシンっていう奴らしい。おまえの感情に呼応して、その肉体を強化すると同時に、闘争本能も刺激するらしい」 「ナノマシンか…。それなら体外に除去することはできるが」
ニールは考え込む。敗北の証だと捉え、忌々しく思っていた呪いだが今ではつきものが取れたように感じている。
「…今はまだ、このままでいい。自分がこの先どうするのか、どうしたいのかを決めるためにはこいつとも向き合っていかなきゃいけないからな」
そう言って、ニールは出発した。次に出会う時、彼はたくましくなっているだろう。そんな期待を込めて、ダイはその背中が見えなくなるまで見送っているのだった。
そして、別れの時が来た。
「ジジイ、今度はちゃんとお別れを言わせてくれよ」 「湿っぽいのは嫌いとか言うのは、ナシよ」
トールとエールは、時の老人を睨みつけている。
「わかっておる。こうしてまた会えたのじゃ、きっとまた会える」
時の老人は、涙を浮かべている。ヒューポたちお供のモンスターも、別れに名残をはせているようだ。
「けど本当に、いつか世界を超えて誰でも自由に行き来できる時が来るのかもしれません」
創造主であるリナが言うのだから、納得できるかもしれない。何しろここは空想でできた世界。願えば、叶うのだから。
「人はいつか、時さえも自由に渡れるのかもしれませんね」
レイがその先を馳せ、思い浮かべる。トールたちも同様である。
「その時が来るように、俺は努力するぜ!」
突然、ダイは皆の前で宣言する。
「俺は、色んな世界へと渡って世界と世界が繋がれるように架け橋となる!」
この戦いを通じて、ダイはタイムネットだけではなく他にも世界があるのか、それを探して世界同士が交流できる。そんな世界を実現したい。
それまでダイは自分の将来について全く考えていなかった。だが、この戦いで変わった。自分の心のままに戦ったため、自分の本当の願いができたのだ。
夢や希望を取り戻したタイムネット世界。それらを守ったダイもまた、自分の夢を見つけたのだった。
その後の彼らの物語については知らない。だがきっと、彼らはまたタイムネット世界に行き、自分の夢の為に努力していくだろう。
終わり
ということで、処女作リメイク終わりました。 タイムネットを題材にして子供のころ想像していた作品、思い出しながら今の自分風に書いてみました。 まあ、思いつきで始めたのでまとめなんてものがなかったのですが… それでは、見てくれた皆様ありがとうございました。
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