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没小説をさらしてみよう

by ピーすけ
つぶやき | 2014年 5月21日(水)19時45分
 タイトルまんまです(笑)
 今度の合同本ネタを「エンドレスエンド」として使ってしまったので、それ以来迷走の一途をたどっております。

 どう考えても没な小説を、ストレス発散がてらこちらで紹介しようかなあと思いまして(笑)没なんで、落ちとかないですハイ。



 没その一 ただガンカタ描きたかっただけ。何で戦っているのかとか、全く設定していません。

  うぞ高い摩天楼の隙間から差し込む月明り。闇夜に慣れた瞳には眩いほどに、掌の中の真鍮が光芒を反射する。
 それを見つめる瞳は影よりなお昏く、息も白む夜気よりなお冷徹だった。
 男は四五四カスール弾を、するりとマテバ・セイ・ウニカの腹へと押し込む。計六発の凶器。弾頭重量260グレイン、初活力一七○○フィート・ポンド。熊撃ち用の四四マグナムのおよそ倍の威力。拳銃として扱えるギリギリの規格である。対人にしては行き過ぎた暴力の権化。
 ならば、その暴力が馴染む己は何なのか。

 全神経を研ぎ澄まし、夜気と体を一体にする。音、光、臭気、五感すべてを指先の延長に……
 ――夜気が、蕭然と震えた。
 脳が作業を指示するより早く、脊髄が的確に、無謬に動作を遂行させた。
 雷が落ちたような光が二度閃き、絶望に満ちた二つの顔が、写真に撮られた時のように一瞬だけ闇に浮かぶ。
 マテバ・セイ・ウニカの特徴は、リボルバーでありながらオートマチックに準ずる機能を備えている点である。まず一発目、指で撃鉄を起こした状態からのシングルアクション、もしくは引き金が重く鈍るダブルアクションのいずれかで発砲すると、その反動で遊底が後退。撃鉄を起こし、同時にリボルバーを回転させる。つまり、オートマチック拳銃のように二撃目をシングルアクションの手軽さで行えるのである。超威力のマグナム弾を高速でニ連射できたのは、そういうカラクリだった。
 この距離では、防弾衣如きでは用を成しはしない、ケブラー繊維は破壊され、仮にそうならなかったとしても衝撃に内臓が破裂した筈だ。死んだかどうかは定かではないが、無力化したなら放っておいて構うまい。ならば、残りにだけ気を遣うべきだ。
 しかし、流石に三人目ともなれば相手は慎重で、数の嵩に懸って、無策に攻めてくるような愚行は期待できない。円陣を組む、その中心に踏み込まねば、こちらも虎子を得ることも出来ないのだ。三対一。我慢比べで不利なのは、こちらだった。相手も、それが解っているからこそ隊列を維持し続けている。
 そう、相手に囲まれて、初めて真価を発揮する戦い方があるとも知らずに。

 綾崎ハヤテは、いっそ馬鹿馬鹿しいほどの無防備さで陣の中心へと歩み入る。
 ここぞとばかりに火を噴くサブマシンガン、ショットガン、突撃銃の銃口。
 だが、中心を取られたことで同士討ちを恐れた狙いは、闇も手伝って曖昧になる。
 大道芸のやらせのように弾丸はハヤテに当たらず、そのくせハヤテが発砲すると一人、また一人と倒れていく。攻防という一切が成立していなかった。混沌を極める銃撃戦の中、ハヤテだけが淡々と舞う。それ以外は全て木偶人形、予め用意された舞台装置にすぎない。
 全てが、ハヤテを中心に構成されていて、ハヤテの描いたシナリオ通りに進んでいるかのような戦い……いや、ここまで一方的に過ぎるものを、果たしてそう呼んでいいのか。
「ヒ、ヒィッ!?」
 ついに、最後の一人が見っともない悲鳴を上げてしりもちをついた。その股ぐらから、強烈な臭気を放つ液体が広がっていく。必死に後じさりして悪夢から逃れようとするその男の腕に、金属の塊をプレゼントする。着弾と同時にバナナ・ピールを起こした弾丸は、運動エネルギーを速やかに破壊に変換――
「イ゛アアァァァッ!!」
――絶叫が、木霊する。
「二度と来るな」
 地面に転がされたシグSG五五〇を、ハヤテは遠くに蹴り飛ばす。
「う、うわあああああ!!」
 それがだめ押しになって、男は這う這うの体で逃げ出した。
 ハヤテは最早、その背を見てすらいない。空薬莢を愛銃から取り出すと、コートのポケットにぞんざいにそれを突っ込んだ。
 明日も、お嬢様の生活が平穏なら、僕はどんな汚れ役だってやってやる。




 案その二。双剣士さんがリクスレで投げていた紫色のクオリアの設定を間違えて読み取ってしまったために作られた小説。のちに読んで全然違い過ぎて……w沙耶の唄。火の鳥は禁句ですw



 いっそ僕もブリキになってしまえたら。


 ドラム缶の胴体にお菓子の空き箱。手足なんかはジュースの空き缶を連結したようなやっつけぶり。ハリボテもいいところのロボットたちは、がしゃがしゃと音を鳴らして二本の足で立ち、針金の指先で物を持ち、ぴこぴこと聞き取りにくい声で喋り、空っぽのはずの頭で考える。
 一方の僕は、ちゃんと人間の姿なのに、真っ白いベッドに寝っころがって、何をするでもなく窓の外の青を眺めていた。
 たまに、ひょっとしたら僕は一世紀先の未来に来たんじゃないかと思うことがある。だったらよかったのに。とも。こういうの、あったよなー。アレ、オチどんなんだったっけ。

 ぴこ
……アノ。

 お菓子の空き箱にマジックかなんかで描かれた黒い丸が、こちらを伺う。
 
ぴこ、ゴキゲン、ぴこ、イカガデスカ?

 はい。大丈夫です。と答えると、ソレハヨカッタ。ピコピコ。と子供が手作りしたようなロボットは、カルテに何やらボールペンを走らせる。

 キョウハ、オトモダチガ、ぴこ。キテイマスヨ。

 嬉しいな。と僕は作り笑い。ずらりと五人ほどドラム缶が僕を取り囲んでいたのは、どうやら昔の友人たちだったようだ。皆がまともに僕を心配してくれるのが、少し辛い。

 ぴぴコ。ハヤテクン、ヒサシブリネ。

 みんな同じみたいだけど、よく聞くとそれぞれ少しだけ音が違う。音の高さや、途切れる癖。見た目だってそうだ。微妙に頭の角がへこんでいたり、背が小さかったり……元から顔のパーツがミリ単位で醜美が決定するのが人の世である。わずかの差でも慣れてしまえばそれが誰だかは解る。生き物の飼い主が自分のペットと同種の他の動物を区別できるのと同じだ。
「ヒナギクさん。お元気でしたか?」

 ぴぴコ。ソレ、アナタガイウノ?

 ……まったくもって正論だった。交通事故に会ったのがついひと月ほど前。頭からアスファルトにダイブ・アンド・ヘッドスライディング。ごりごりとアスファルトに頭を摩り下ろされながら、僕は一度意識を手放した。そのあとはもう、気が付けば白い天井を見上げていた。よくもまあ、あそこからこちらに帰ってこられたものだ。我ながら頑丈にできているなと呆れてしまう。
兎にも角にも、一つ人として生きるのに重要なことを落としてしまったことを除けば、まったくの五体満足。医者からは安静を言いつけられているが、その気になればそんじょそこらの人より元気に駆け回る自身すらある。
 そう、体だけは大丈夫だ。
 ただ、そう、一つ。一つだけ狂っている。最初は、三途の川の向こう側にたどり着いたのかと思った。もしかしたら、本当にそうなのかもしれない。
 だとしたら、閻魔様も大そう趣味が悪い。いっそ灼熱の地獄に耐える方が、まだ悩まずに済む分楽だろう。よりにもよってこんな――

 ドウシタノハヤテクン。ぴぴコ。
 ぴこ。ゴキブンスグレマセンカ

 そう、僕の目玉は、ヒトをヒトとして映さなくなっていた。見た目だけじゃない。声も、肌触りもブリキ細工。人肌の暖かさなんてありはしない。
 狂ってしまった世界。
 冷静でいられるのは、まだこれが夢だと信じているのか、それとも諦めたからなのか……それとも僕もまた適応して狂ってしまったからなのか。
 でも正直それは、良い。構わない。こうして生きているのなら、お嬢様を守れるのなら、他の全ては些事だ。
 些事の筈だった。
 
ピこ、ヤッホー。キタヨー。ハヤタクン。ピこ。
 アイカワラズ、サチウスソウダナ。ピコ。ハヤタクン。
 ニワリマシデ、ぴこぴ。フコウソウダゾ。ハヤタクン。

 泉さん、朝風さん、花菱さんのスリーマンセル。
 なら残りのドラム缶はナギお嬢様かなとあたりを付ける。

 ぴ。オモッタヨリ、ぴ。ゲンキソウジャナイ。

 知らない声。背丈もお嬢様より高い。誰だろう。
 怪訝に思ったのが顔に出たのだろう。見知らぬブリキは、ぴぴぴと笑った。

 ドウモ、マキムラデス。ぴ。オボエテル?

「あ、ハイ。お久しぶりです」
 マキムラ……ああ、牧村先生か。これは珍しい客人もあったものだ。
 しばらく見ない間に随分とエイトに似られて……今なら本当に恋人になれるんじゃないだろうか。なんて、馬鹿なことを考えてみる。
 
キョウハネ、ぴ。キミニプレゼントヲモッテキタヨ。

 どうせロクなモノじゃないんだろうな。とりあえず自爆スイッチはついてそう。うん、間違いない。
 ドラム缶の背から、その姿が現れる。

「初めまして。ナインと申します、綾崎さん……え、え!? どうされたのですか」
「……え?」

 驚かれるのも無理はないと思う。僕だって驚いていた。
 僕は泣いていた。みっともなくみんなの前で。ぐっちゃぐちゃになった感情を、どうにも制御できなくて……代わりに顔をくしゃくしゃにして――今にしてようやく、僕は、僕がどれだけ寂しかったのかを思い知った。
 もう、僕にはただ一人だけしか見えていない。
 ナインという……そう、この世に僕の他にたった一人だけ、僕と同じヒトの姿をした少女しか。
「いえ……大丈夫です。こちらこそ、よろしくお願いします」
 僕は手を差し出す。彼女が恐る恐るといった様子で手を取ってくれた。
 柔らかかった。暖かかった。
 ――僕はもう、この狂った世界に一人きりじゃなかった。
 彼女がいる限り、僕は狂わずにいられるのだと、そう思って安堵した。
 僕は正直勘付いていた。ナインという名前の意味も、僕の体質から鑑みて得られる彼女の正体にも。それでも、構わなかった。真偽の程に関わらず、重要なのは人が傍にいてくれる、暖かさがそこにあるという、ただそれだけだったのだ。




 ちなみに、今日になってようやく投稿できそうな作品が出来てきました。
 もう少し書いたら、一度管理人様に行けるか聞いてみないとなあ。怒られるかなあ。
 夏向きのお話。の、予定。
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コメント
1 | 双剣士 | 2014年 5月21日(水)22時56分

没作品公開そのものに異議はありませんが、ラスト2行に誤解を招く表現がありましたのでフォローさせてください。

合同本や掲示板に投稿された作品に対して、管理人がOK/NGの判断をすることはありません(明らかな盗作やパクリは別として)。
怒ったり拒絶したりすることもありません。私はそんなに偉くないですし、自分好みの作品ばかりを集めたくてサイトやってるわけじゃないですから。

ですから皆さん、そんなに警戒しないで気軽に投稿してくれて良いんですよ、怖くな~い、怖くな~い、ねっ♪
2 | ピーすけ | 2014年 5月22日(木) 2時24分

 >双剣士さんへ
 ご進言ありがとうございます。私は特に思い切った構成で書くことも多いので、委縮してしまっていました。
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