サイトを盛り上げること“自体”を目的や課題にしていた袋小路状態からようやく脱出できた私は、とりあえず更新再開宣言はしたものの迷走状態がしばらく続きました。とりあえずはぴたテン連載SS「キュートな天使の作り方」を書き始めて見ましたが、どうもしっくり来ません。しばらくSSを書いていなかったブランクもあるし、いったん身についてしまった受動的なネット生活のペースを振り払うのが容易でなかったという面もあります(皆さんも想像がつくでしょう?)。おりしも本業の方がやたらと忙しくなり始めた時期で(家族の不幸で休みまくった分を取り戻す意味もありまして)あまり深く考える暇も無いまま半年ほどの時間が過ぎていきました。
『ハヤテのごとく!』のSSを書き始めようとした決め手がなんだったのか、正直なところ私自身にも判然としません。コミックやアニメに対して『好きだ』という作品と『SSの原作に使いやすい』という作品が一致しないことは過去の運営経験で痛感しています。単発エピソード・不幸キャラあり・アニメ化未達・最終回まで明かされない謎や裏設定あり……という条件を満たす作品は他にも沢山ありました。今だから書きますがお正月の挨拶で『今年は新ジャンルに挑戦します!』と宣言した時点での最有力候補は、ガンガンWING所載の『dear(Wiki紹介)』だったんです。転居した土地での最寄り本屋がガンガンWINGを袋とじにしてさえいなければ(気楽に立ち読みできる環境を失わずに済んでいたら)、当サイト5本目の柱になった作品はこちらだったかもしれません。
ともかくも『ハヤテのごとく!』をひとつの軸と定め、私は関連サイトをチェックしたり毎週の連載がネット上でどのように評されているかなどを見て回るようになりました。そしてまもなく、ある感慨に行き当たります。
『そっか、今やってることって……インターネットを始めた頃、ToHeartや守護月天に対してやってたのと同じだ』
忘れかけてた初心を取り戻したってところでしょうか。
考えてみれば2周年総括文(該当箇所)で述べたとおり、私がネットを始めた頃はToHeart関連SSの全盛期でした。また『支天輪の彼方で』を開設したのは『まもって守護月天!』『セイバーマリオネットJtoX』のTVアニメ版が放映を開始した直後でした。前者に関しては先輩方の書いた秀作SSが読みきれないほど溢れかえっていましたし、後の2者についても毎週のように感想系サイトやチャットルームなどで議論や感嘆の声が交わされていました。そういう熱い雰囲気の中にいたから自分は自作SSサイトなど作ろうと考えたわけだし、同様のことを考えた友人たちの手から新しいSSやCGや各種コンテンツが生み出される好循環がそこにはあったのです。
こうした循環はアニメ放映や連載が終わったあともしばらくは続きました。時間が経つにつれて閉鎖したり趣旨変更していく同好サイトたちを横目で見ながら『月天の灯は消さないぞ〜!』と結束を固めあったこともあります。しかしそれも所詮は夢の残り香、やがてそのジャンル最大手のサイトが閉鎖したり更新停止してしまうと元々集客力の低い当サイトを訪れる読者もがっくりと減ってしまい、最盛期を知る数少ない友人たちと旧交を温めあうだけになってしまったのです。
せっかく来てくださってる昔からの読者の皆さまには失礼かもしれませんけど、この際はっきり言ってしまいましょう。夢の跡地を維持し続けるなんて私の性には合わないみたいです。私が好きだったのは原作そのものというより、その原作から定期的に提供される新作やネタを味わうことと、同好の人たちとの交流や情報収集をすること自体だったのではないでしょうか。原作が好きだから没頭したのではなくて、話題の合う人たちがいてくれたからこそSSを書こうという気分にもなれたし原作をいっそう好きにもなれたのではないでしょうか。
そう割り切ってみると、当サイトの目指す方向性と限界も見えてきます。
該当ジャンルNo.1の大手サイトを目指して集客にいそしみ豊富な投稿イラストなどを揃えるような偉業は、もとより私の器量では不可能です。当サイトにできることは関連ファンサイトのひとつとして、その中でも小説やらifストーリーに興味を持つ一部の読者を対象として自分の力の及ぶ範囲で楽しんでもらうこと、それが無理なら喜んでくれそうな別サイトのコンテンツを紹介すること。コバンザメ商法なのですから来客数を自分でコントロールしようなんておこがましいし、来客が減ったからといって一喜一憂する必要もありません。
読者の声援が励みになり成長の糧になっているのは確かですし、読者を楽しませることを目指して執筆すること自体は間違いではないけれど、それはあくまで『双剣士自身が原作の雰囲気を楽しむための方法のひとつ』に留めておかなければいけないんですね。原作のブームが去り同好者のコミュニティが寂れつつあるときに、自分の2次小説だけは以前のように読者に読みに来てもらいたいだなんて傲慢にも程がある。もちろん原作ブーム終了後も来てくださる読者はいらっしゃるから連載継続を否定するわけではないですけど、それが自己目的化してしまうのは多分ちがうんです。そこらへんで上手に立ち回ることが出来ないから、約束を果たせない果たせないと毎年のように悩み続けてしまうのではなかったかと。