【第1話】桂ヒナギク ( No.1 ) |
- 日時: 2014/05/23 22:32
- 名前: ロッキー・ラックーン
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
ようやくようやく新スレッドの1話をお届けします。
第1話はもちろん、主役の二人の話です。 勢い任せで書いたのでセリフばっかだと書き終わって気付く…。 お楽しみ頂ければ幸いです。
それではどーぞ!
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しあわせの花 Cuties 第1話【 桂ヒナギク 】
「そろそろ生徒会会長選挙の時期ですよね?」
「ん?あぁ〜、そう言えばそうね…」
2年の3学期も後半を迎えたとある冬の日。僕はいつも通り、大好きな恋人――桂ヒナギクとの帰り道を楽しんでいた。僕の質問に、気の無い返事をする彼女の姿が少し新鮮に見えた。 ちなみにヒナはこれまでの2年間をずっと生徒会長として過ごしていて、僕にとってもそれは誇らしい事に思っていた。
「今回もヒナは立候補するんですよね?」
「はぁ!?何を言ってるの!するワケないじゃない!」
「え゙ぇっ!!?」
呆れ顔で答えるヒナの返事に僕は驚いた。先にも述べた通り、彼女が生徒会長として働く凛々しい姿が僕の誇りだったのに、それを「何言ってるの」で済まされるだなんて思ってもみなかったのだ。
「ヒナ…なんで…?」
「だって生徒会長なんてやってたらハヤテとの時間が取れないじゃない!放課後のほとんどの時間が生徒会に取られちゃうし、学校行事だって企画する側になるからハヤテと一緒に楽しめないし…。ハヤテと一緒に色んな事をして、たくさん思い出を作りたいなって、私は考えているんだけど…」
「!!」
先程の返事以上に驚いた。僕と過ごす時間のある無しがヒナにとっての満足の基準だというのなら、僕にとってこれほど嬉しい事は無い。この人に愛されている僕は、本当に幸せ者だ。
「ヒナ…ありがとう」
「なんで『ありがとう』なのよ?」
「なんとなく。僕の事を本当に大事に想っててくれてるんだなぁ…って」
「んもう、今さらなによ…」
憎まれ口を叩きながらも、繋いだ手をまた強く握り返してくれるヒナ。これは「嬉しい」のサインだというのを最近知った。
「でも、ちょっと残念というのもあるんですよね〜」
「ん?」
「大勢の人の前で堂々と話すヒナ、凄くカッコイイですし。『アレが僕の恋人なんだぞ!』って、いつも自慢に思ってたんですよね〜」
「ふ、ふぅ〜ん。そーなんだ…でもダメよ!今回は絶対に立候補しないんだから!」
あ、今ちょっと満更でも無いような顔をしてたぞ。僕がお願いすればまた立候補してくれたりするのかな?…まあヒナの決めた事だし、僕も嬉しいから野暮な事はやめておこうかな。 茜色に染まる空とヒナの顔は、僕の帰り道を幸せで満たしてくれたのだった。
◆
ルールル♪ルルルルールル♪ルルルルールールールールーー♪
「ごきげんよう。月に一度のお楽しみ、アテネの部屋の時間でございますわ。本日のゲストはこの方、2年1組の副委員長ブルー・花菱美希さんです」
「お招き頂き、どうもありがとう」
「では早速本題に入りましょう。あーたの今回のお話は何についてでしょうか?」
「何を隠そう、次期生徒会長についてだ!」
「ほほーう。そう言えば、そろそろ生徒会会長選挙の時期になりますわね。で、どういった内容でしょう?」
「ああ、聞いてくれたまえ。理事長殿はご存知だと思うが、これまで2期連続で会長を務めているヒナが立候補しないと言うのだ!」
「そうですね、今回は辞退するとおっしゃってましたわね」
「君はいいのかそれで!?」
「良いも悪いも、本人のやる気の問題ですからね。私の方からはなんとも…」
「私は、君からそんな優等生の言葉を聞きに来たのではない。…コレを見てくれ!」
「こ、これは!…なんでしょうか?」
「次期生徒会長をヒナに希望する旨の署名だ。ヒナ以外の全校生徒…もちろん、ハヤ太君の分まである」
「そうですか。…コレを私に見せて、どうしろとおっしゃるのですか?」
「決まっておろう。ゴニョゴニョゴニョだ!」
「なるほど。ですがそれだと、ゴニョゴニョニョが問題ですわね」
「その点は、ゴニョゴニョニョニョでなんとかなるさ。ヒナにとって問題はゴニョゴニョだしな」
「分かりました、私も微力ながらご協力しますわ。これ以上は、放送事故になりそうですので今週はこれまでですわ。皆様、ごきげんよう〜」
「ヒナもいいが、この私の応援も頼むぞ、視聴者諸君!」
◆数日後◆
「ちょっ…何よコレーーーー!!?」
朝もはよから、ヒナの悲鳴が校舎入口のロビーに響き渡った。 それもそのはず。生徒会長には立候補する気の無かった所に、
--次期生徒会長選挙候補者--
2-1 桂 雛菊(理事長特別推薦) 1-9 日比野 文
なんてホワイトボードの掲示を見させられたら悲鳴の一つだってあげてしまうだろう。それにしてもアーたん、たまにしか元に戻れないというのに凄い行動力だなぁ…。
「ハヤテ、コレは一体どーゆー事なの!?」
「え゙…僕に聞かれてもそんな…理事長ってあるからアーたんなんじゃ…?」
「じゃあ帰ってアリスに聞けばいいのね!?」
「私ではありませんわよ?」
「「えっ!?」」
急に現れたアーたん(小)、神出鬼没度合いは新スレッドでも健在だ。お嬢様と仲良く手を繋いで掲示を誇らしげに見ている。
「これは天王州アテネの仕業ですわよ。月に一度、元に戻る日がありますでしょう?その時にこの件をナーちゃんに伝えてるらしいですわ。私に聞かれてもちんぷんかんぷんですわよ♪」
「そーゆー事だ、ヒナギク。みんなお前の生徒会長を心待ちにしてるのに立候補しないから、大きいアーちゃんが頑張ってくれたんだぞ!」
「まあ、私の『ママ』を名乗るなら、銀時計くらい3期連続で取って欲しいものですわね」
「そんな勝手な…」
「私はヒナギクに投票してやるから頑張れ!じゃあな!」
「あばよ!ですわ♪」
「ちょっ、待ち…」
ヒナの言葉を待たずして、一瞬で二人はいなくなってしまった。ていうかお嬢様、せっかく学校来たのに朝から帰っちゃうんですか…。
「んもーう…アテネったら、余計な事を…」
「まあまあ、まだ生徒会長になると決まった訳じゃありませんし…」
「!!」
思えば、僕のこの一言がいけなかったのかもしれない。いや、結果的には悪くないんだけど。 僕の言葉に、ヒナの表情の曇りがにわかに晴れだした。
「そうよ!まだ決まった訳じゃない…そうよね、ハヤテ!」
「え、ええまあ…」
選挙の対抗馬の人の名前を見てみると…アーたん(小)と仲の良い犬の飼い主の娘だよな。あのポンコツさんがどうやったらヒナに選挙で勝てるのかが分からないけど…とりあえず何かをやる気になってるヒナに水を差したくなかったから言葉を濁した。 これが生徒総会キス事件(前スレの出来事です)に続く、生徒会長桂ヒナギクのトンデモ騒ぎその2の始まりだった。
◆さらに数日後◆
「あの…ヒナ?」
「ん、なぁにハヤテ?」
「選挙活動とか…しなくていいんですか?演説のイベントなんかも全部キャンセルして…」
選挙まで残り5日。ポンコツ…じゃなくて日比野さんが校舎前で演説しているのを横目に終礼直後にパッパと帰る僕たち。 1週間の選挙活動解禁期間になってからというもの、ヒナは演説の一つもやっていなかった。なんだかんだ言っても何事にも真面目に取り組むはずのヒナの今回の事態には、流石の僕も不安が募った。
「別に候補者は必ず選挙活動をしなきゃいけないだなんて決まりは無いわよ。実際の政治家だってシビアなコストの中でやってるわ。要は効率の問題よ。最終演説会はサボったりしないから、安心して。私を信じてね♪」
「は、ハイ…」
まあ、現職で2期連続務めているヒナに今さら選挙活動もとは思うけど…。とりあえずはヒナを信じればいいか。 ヒナの一番近くにいるはずの僕が、実はヒナの考えてる事を一番分かってない事に、この時は気付こうともしなかったのだった。
◆投票当日◆
あっという間に選挙の日。今日は投票前に講堂で最終演説会が行われる。候補者が出席を強要されるイベントは、これが最初で最後のものだ。 ヒナは選挙活動を本当に何もしなかった。去年の選挙ではチラシ配りやポスター貼りなんかを手伝わせてもらったけど、それすら無かった。しいてした事を挙げるとすれば、今日の演説の内容を考えるヒナにお茶を出したくらいだ。 ヒナは本当に生徒会長になる気は無かったのだと気付き、それに対して配慮を出来なかった自分に悔しくなった。今日は帰ったらヒナに謝って、とびっきり腕を奮ったハンバーグをご馳走しようと思う。
『それではこれより生徒会長選挙の最終演説会を始めます。最初の候補者は、現職の桂ヒナギクさん。お願いします』
ワーワーワーワー ざわ… ざわ… パチパチパチパチ
選管の進行役の人がアナウンスするやいなや、会場は大歓声に包まれた。僕との恋人関連の騒ぎがあっても人気が一切揺らがないのは、ひとえにヒナの人望のなせる業なのだと痛感した。壇上に上がったヒナの一礼を機に、大歓声の講堂はにわかに静まり返った。
「次期生徒会会長候補の桂ヒナギクです。まずはこの度のご推薦、ありがとうございました。この2年間の自分の仕事を認めて貰えたのだと、大変光栄に思っております。が、来年度の活動に対するマニフェストは、これまでとはコンセプトを大幅に変更しようと考えています。これまで選挙活動を行わなかったのも、そのマニフェストを練り上げる時間が必要だったからです。
そのテーマはズバリ…『生徒会を私の私物にします!』というものです!」
ざわ… ざわ…
生徒会をヒナの私物に!? かなりとんでもない事を言ってるように聞こえるのは僕だけではないらしく、周りの生徒たちもざわついてしまう。
「お静かに!このテーマに関して具体的な取り組みを説明します。3つあります。 まず第一に、『生徒会長秘書』を設置します。生徒会役員とは別に、私専用のお手伝いさんを選任するというものです。書類のコピー・カギの開け閉め・お茶出し…私の仕事に関わる雑用を全てやってもらいます!この役割には、私の恋人でもあるクラスメイトの綾崎ハヤテを任命する予定です」
ざわ… ざわ…
全校生徒の視線が一気に僕に集まる。あの生徒総会の時以来だ。 ヒナぁ〜こんなの聞いてないよぉ〜!
「皆さん、こちらを向いてください!この件はハヤテには一切言っていなかった事なので、彼を責めないでください。第二の取り組みを説明します。 第二点は、無駄な会議の時間を徹底的に削減します。基本的に、会議の制限時間を私が決め、その時間内で決まらなかった事に関しても全て私の一存で決定します。例えば、年間で最大の会議時間を要する各部活動の予算の会議を、どんなに長くても90分以内に抑えます。その時間で決まらなかった部は、私の言い値の予算で活動して頂きます!」
オォーーーー
今度は歓声が上がった。基本的に予算の概念が希薄な白皇だけど、部の予算編成についてだけは時間がかかり過ぎているともっぱらの評判だった。これは特に部活をやってない僕の耳にも入るくらい有名な話だ。 多分ヒナは僕といる時間を潰されたくない一心で言ってるのだと思うけど、これは一般の生徒――特に部活の部長や会計係にも利のある話に聞こえたようだった。言い値で活動という条件にも文句ひとつあがって来ないのは、それもこれもひとえにヒナへの信頼から来るものだと分かった。
「そして第三に、会議・会合の無い時間の生徒会室の出入りを制限します。具体的には生徒会長と会長秘書、つまりは私とハヤテだけしか入れない事にします。私の生徒会室であり、私の秘書なので、他の人が出入りする際は私の許可が必要な制度を作ります。 以上3点、生徒会長になった暁にはこれらを必ず実施する事をお約束いたします。 最後に、もう少しだけ聞いて欲しい事があります…。
私は、綾崎ハヤテを愛しています!生徒会活動をする事で私たちの時間が削られるのは絶対に許しません。彼と一緒に過ごす時間を作るために、私は生徒会を私のものにすると断言します。誰にも邪魔をさせる気はありません。こんな人間が生徒会長になっても良いという方がいたら、どうぞ私に投票してください!ご清聴ありがとうございました!」
ざわ…
ざわ…
長い喧騒が続く。あまりにも意外な内容の演説に、聴衆は明らかに戸惑っていた。 僕はというと、ヒナのとんでもない演説と周りからの注目の視線に愛想笑いを浮かべるのが精一杯だった。当のヒナはというと…うわぁ、すっごく満足そうな顔してるよ…。
「諸君、喜べ!つまりは、ハヤ太君が人身御供になってくれればヒナがまた会長をやってくれるって事なのだぞ!」
「そうなのだ〜!ハヤ太君一人でヒナちゃんも私たちも大満足!」
「さぁ皆の衆、ヒナに大きな拍手と歓声を!!」
この異様な空気を破ったのはやっぱりあの3バ…じゃなくてお三方だった。 でも、確かに僕一人がヒナに付きっ切りになる事でヒナが生徒会長をやってくれるだなんて、皆がみんな嬉しい事態じゃないか。たまにはいい事を言うんだなぁ、たまには…。
ウオオオオオオオオ! 「そーゆー事か!会長、来年度もお願いしまーす!」「桂さんステキー!私もあんな告白してみたい!」「綾崎ー!お前どんだけ幸せ者なんだよー!」 パチパチパチパチ
大歓声。今まで色んな場面で歓声がヒナに向けられたが、今回はその中でも一番の盛り上がりだった。 この盛り上がりにただ一人困っていたのはヒナだった。多分、全校生徒からのドン引きを期待してたんじゃないだろうか…。
「ちょっ、なんでそーなるの!?こんな勝手な事を言う人に生徒会長なんて出来るワケ…」
「「「か・つ・ら!!か・つ・ら!!か・つ・ら!!」」」
「んも〜!ちょっとぉ〜!やめ『ハイ、桂さんは制限時間終了なのでお席にお戻りください』
「「「か・つ・ら!!か・つ・ら!!か・つ・ら!!」」」
進行役の絶妙なアナウンスでこの場が区切られた。さっきまであんなに晴れ晴れとしていたヒナは、打って変わって冷や汗だらだら。とぼとぼと自分の席に戻っていった。
『では演説会を続けます。次の候補者は、1年9組の日比野文さん。どうぞ!』
「えーっと、日比野文です。皆さん街頭演説でのお約束どおり、会長さんがやる気になってくれたので、私もあの人に票を入れます。てなワケで時間が余ったので歌を歌います!シャルナちゃーん、ミュージックカモン! イェーイ ドゥッドゥッドゥッドゥワッドゥワッドゥ ドゥッドゥッドゥッドゥワッドゥワッドゥ シャンラーラーラー ララランランランラーーン」
ポンコツさんの歌声については省略。無事に投票も終わり…
--来年度生徒会長選挙結果--
2-1 桂 雛菊 334票 1-9 日比野 文 1票(←言わずもがな、ヒナギクさんの入れた票です)
晴れて来年度もヒナの生徒会長姿が見られる事になりました。
「まさかあんな演説でなってしまうなんて…みんなおふざけが過ぎてるわ…」
「まあまあ、それだけヒナが皆から愛されてるというワケですよ」
「私がハヤテ以外からの愛に意味を感じると思って?」
「まあまあ…」
「そうですわ、ヒナ。そんな難しい顔してないで…なると決まったからには楽しまないと損ですわよ?」
「そうそう、生徒会で僕たちの青春の思い出をこれから作っていきましょう!」
「…そうね。じゃあハヤテ、いっぱいコキ使ってあげるから覚悟してね♪」
「ハイ、なんでも言ってください!」
「これにて一件落着!ですわ♪」
そう、要は僕とヒナが一緒にいられれば、場所や立場なんてものはどうでも良いのだと思う。生徒会長だからって自分のやりたい事が何も出来ないという訳でもないし、逆に一般生徒では味わえない1年間を楽しめばいいんだ。(ヒナが3期連続という事についてはここでは触れないでおこうかな… ところで、日比野さんはアーたんから入れ知恵されて立候補したらしい。残念だけど当然か。これをきっかけに彼女が生徒会の活動に興味を持って、来年度には「あんな事」になるというのは別のお話。
◆春休み◆
「んもう、なんで新学期が始まる前からこんなに仕事があるのよ…」
「そりゃあ、ヒナと僕以外は生徒会室使えないんですし…」
桜が綺麗に舞い踊る春休み。桜の木よりも遥か高くにある時計塔の生徒会室にヒナの溜め息が漏れた。 春はイベントの季節。入学式・各部活の勧誘会・遠足・スポーツ交流会…それら全てが生徒会主導のもと行われるのだった。去年もヒナは同じ仕事をこなしたのだが、今年は例のマニフェストが足枷となり、下準備を僕たち二人でやらなければならなかったのだ。(別に頼めば愛歌さんも千桜さんも手伝ってくれるけど…そこは僕たちの二人きりの時間が良いという欲求には耐えられず。自業自得。)
「あ〜!ハヤテ疲れた〜。肩揉んで〜!」
「はい、かしこまりました♪」
ひとつも凝ってないヒナの柔らかい肩を揉む。気持ち良さそうにする彼女の姿に、僕も嬉しさに顔が緩みきってしまう。この一年間はこうやって生徒会室で二人きりの時間が取れそうだ。思いっきり充実した3年生を過ごすぞー!
「あぁ〜そこそこ、気持ちいいわ〜!しあわせぇ〜」
「フフ…僕も幸せですよ!」
あぁ…しあわせの花はここに咲いている。
【つづく】
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【あとがき】
キューティーズ第1話はやっぱり主役からだと思い、ヒナの生徒会長選挙編でお送りしました。 実は新編はハヤヒナ以外のキャラの出番を重視しているので、主役二人のイチャイチャっぷりはそんなに無かったり…ちょこちょこ挟むつもりではあります。
ヒナのトンデモ演説がやりたくて書き始めた話。 彼女の頭の中では「辞退が出来ない→他の候補者に票を集めよう→とんでもない内容の演説をすればみんなドン引きで生徒会長もやらずに済む!」というシナリオがあったらしいですが、アーたん(大・小)にはお見通しのようで…。 話は変わりますが1年生から生徒会長やるとなるとどういった経緯なんですかね?入学早々に新入生にやらせなきゃならないほどの新設校でもあるまいに。(野暮
アリスちゃんとの絡みでフーミンがヒナの当て馬になる→それがきっかけに次期生徒会長へといった感じで、原作のフラグも回収出来たのが個人的には良かった所です。思い付きが上手い方向へ流れただけですが…笑
あと、肩もみを何の躊躇いも無くハヤテにお願いするヒナが書けて良かった。 ヒナの肩は一切凝ってないので、ただのスキンシップです。お熱い事ですね。
ちなみに、途中のアテネの部屋は平日昼間の某タマネギ頭系の番組風に読んで頂ければと…。
次回は、サブキャラがメインのお話を予定しています(書いてるとは言ってない ご感想・ご質問等お待ちしております。 どうぞ、気長にお付き合いください。では、ここまでありがとうございました!
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Re: しあわせの花 Cuties(ハヤヒナ) ( No.2 ) |
- 日時: 2014/05/24 14:47
- 名前: ささ
- ささです。前スレ含めこの小説ではお初にお目にかかります。
生徒会室にヒナギク・ハヤテだけしか入れないならば、理論上前スレのアホみたいなことや xxxなこととか堂々とやれるということですね。(やるやらないについては証言拒否します。) アリスちゃんの特訓が身になっているヒナギクですね。 最初の感想はこれにて。ありがとうございます。
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【感謝】レス返し ( No.3 ) |
- 日時: 2014/05/25 02:33
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >さささん
はじめまして、ご感想ありがとうございます。
前スレからお読み頂けているようで、本当にありがとうございます。 細々とではありますが続けていきますのでどうぞお付き合いください。
二人きりの生徒会室…若さゆえ、勢い余って色々と思い出(意味深)を作る事うけ合いですな(笑 前スレでは二人きりの時間・空間をあまりにも取ってなかったのでかわいそうになってしまっての措置です。なお、アリスちゃんは謎ワープで生徒会室もフリーパスの模様。
それではありがとうございました。 次回もお楽しみに!
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【第2話】アリス ( No.4 ) |
- 日時: 2014/06/19 04:51
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
今回は、チャットルーム企画「小説のネタ出し合って誰かに掲示板で投稿してみらおうぜ」の作品となります。(「みらおうぜ」は誤字ではありません。多分。 そこで決まったテーマが「アリスが怖い話を聞いて怖くて眠れなくなって夜中に色々な人の部屋に行くお話+アリスちゃんが一人でおトイレ出来なかった話」です。 先にお詫び申し上げます。「色々な人の部屋に行く」という要素が詰められませんでした。今後なんらかの形でこの要素を使う予定でありますので…(小声
なんやかんや言いましたが、皆様大好きちっちゃいアリスちゃんのお話です。 それではどーぞ!
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「「「きゃぁああああ!!」」」
「んもう、うるさいわねぇ…」
「だいぶ盛り上がっているようですね」
春休み中のとある夜。アパートに黄色い声が響き渡る。ハヤテが勉強中だというのにお構いなしという様子。 事のいきさつを話すと、ナギがいきなり「季節を先取りして怪談大会をやらなイカ?」などと言ってきて、私とハヤテを除く住人全員がナギの部屋に集合していたのだった。ちなみに私とハヤテは不参加。これはハヤテの勉強を見るためであって、決して怪談に怖じ気づいたという訳ではない事をここでは強調したい。 …本当はナギに誘われて躊躇ってる私の様子を見て、ハヤテが「勉強を見てもらう約束があるからパス」と助け舟を出してくれたというお話よ。仕方無いじゃない、嫌なものは嫌なんだし。 ハヤテの部屋はナギの部屋の隣で、話し声が聞こえて集中出来ないので私の部屋にハヤテを呼んでいるというシチュエーション。私の部屋の押入れの住人――アリスは怪談大会に参加している。普段はこういった集まりには参加しないのが彼女のスタンスだけど…気を利かせてくれたのかな?
「ヒナ、この問題なんですけど…」
「ハヤテも真面目よねぇ。勉強なんて建前でいいのに…」
「まあ、春休み中に少しでもレベルアップしなきゃならないのも事実ですしね」
勉強の件はてっきり私をかばうための方便だと思っていたので、ハヤテが私の部屋に入るやいなや教科書と問題集を開き始めたのには心底がっかりした。 ハヤテの言う事も正論ではあるけど…せっかく二人きりになれたんだから、もうちょっと私の事を求めてくれてもいいんじゃないかしら?…って、こんな考え方じゃいけないわ。チャンスは自分で作るものよね!
「じゃあ、この問題が出来たら休憩にしましょ?」
「え?でも始めたばかりですけど…」
この人はこんなシチュエーションで本当に勉強の事しか頭に無かったの?本当にくそ真面目というか、お人よしというか…。 …分かってるわよ。そこが好きなんだけど!
「んもう、鈍いわねえ!ハヤテとイチャイチャしたいって言ってるのよ!!勉強なんて二人きりじゃない時にいくらでも見てあげるわよ」
「…スミマセン」
「謝らないの。こーゆー時は?」
「僕もヒナとイチャイチャしたいです」
「うん、それでよし。じゃあこんな問題、サクッと片付けちゃうわよ〜!」
「お願いします!」
この問題を片付けた後は…それは秘密よ?あぁ〜、なんだかんだでストレス溜まってるし、思いっきり甘えさせてもらうわよぉ!
◆
「やーっとイチャつき出しましたわよ、ハヤテ君とヒナギクさん」
「やっとか!本当に勉強し始めた時はビックリしたな…」
「あぁ。それにしてもヒナがこんな事を言うようになるなんて…本当にお姫様の教育が効いてるんだな…」
「流石はアリス大先生ってトコじゃないかな!」
「エッヘン!ですわ♪」
こんばんは、マリアでございます。今は、ナギの部屋からヒナギクさんの部屋の様子をモニターで覗き見させて頂いております。(メンバーはセリフ順に、私・ナギ・春風さん・西沢さん・アリスさんです) そう。怪談大会というのはただの建前で、ハヤテ君とヒナギクさんに二人きりの時間をあげようというナギからの「はからい」という訳なのでした。こうやって、他人の幸せのために何かをしようとするナギの姿に、私は深く感動しているのでありまして…
とか語っている間にお二方のじゃれあいがだんだん大人のアレになりつつあります。コレはナギの教育上よろしくないですわね。
プチン ←モニターを切りました
「はいはーい、ココからは二人だけの秘密にしてあげましょう?せっかくの怪談大会なんですし、私の自慢の百物語の一部を披露しますわね♪」
「え゙?なんだマリア!?ホントに怪談をやるなんて聞いてないぞ!なあアーちゃん!?」
「別にいいじゃないですか、ナーちゃん」
「ファッ!?」
「そうそう。ヒマだし、面白そうだし、別にいいじゃないか」
「あれえナギちゃん…もしかして怖いの?」
「…そんなワケあるかあ!マリア、さっさと話すのだ!!」
「あらあらうふふ、時間はたっぷりあるのでまずは小手調べですわ。では…」
はっきり言いましょう。私の怪談の戦闘力は530000です。 ここにいる全員、夜一人でトイレに行けなくさせてあげますわよ♪
しあわせの花 Cuties 第2話【 アリス 】
「ヒナ…ヒナ…」
ハヤテとのお楽しみタイムを終えて、満足感と心地良い倦怠感の中で眠りにつく私を何者かが邪魔をした。
「う、うーん…なに…アリス…?」
声の主はアリス。なにやら切羽詰った表情をしているけど、強い眠気に苛まれる私の知ったところではなかった。
「すみません、ちょっと付いて来て欲しいのですが…」
「んん…?トイレ…?」
「そうですわ、早く!」
「ん…わかった…わかったから引っ張らないで…」
まだ目覚め切れない私の袖を力いっぱい引っ張るアリス。睡眠を妨げられた事による鬱陶しさがアリスへの愛情を上回りながらも、なんとかそれを振り切って彼女について行った。小さな手が私の手を力いっぱい握っている様子に、相当我慢していたであろう事が推測できた。 そういえば、怪談大会とか言ってたわね。この子をこんな風にしてしまうだなんて、よっぽど怖い話が出てきたのね。…行かなくて良かったわ(小声
『ヒナ、ちゃんといますか?』 ←『』はトイレのドア越しのセリフです
「大丈夫だから、安心してしなさい」
『ヒナ、いますか?』
「はいはい、いるわよー」
ジャパー
「ふぅ…なんとか間に合いましたわ」
「それは良かったわね」
用を済ませ、ほっと一息つくアリスの頭を優しく撫でる。緊急事態を抜け出してよほど気が抜けているのか、いつもであれば撫でる私の手を取って頬に寄せるという仕草をするはずなのに、反応が無い。 こんな姿のアリスはあんまり見られないわ。ちょっとイジワルしたくなっちゃうわね♪
「でも…アリスにもこんな子供っぽいところがあるのね」
「し、仕方無いのですわ!マリアさんが変な話を聞かせるから…ブツブツ…」
「はいはい、分かった分かった♪」
「ムムム…」
不機嫌そうにうつむくアリスを私は笑顔で見守った。いつもいいように振り回されてるから、ちょっとしたお返しのつもり。 自室に帰り、眠り直そうと電灯のヒモに手をかけてアリスが押入れに戻るのを待ったが、彼女は押入れに入る事無くふすまを閉めてしまった。
「もうこの際、恥の上塗りですわ。ねえヒナ…」
「ん?」
「ヒナのお布団で一緒に寝ても…よろしいでしょうか?」
意外な申し出。恥ずかしそうに視線を逸らすアリスに、また悪戯心が働いてしまう。
「いいわよ、寂しがり屋のアリスちゃんにママが添い寝してあげまちゅわねー♪」
「ムムム…ありがとうございます…」
「あ、ちょっと怒った?」
「そんな事ありませんわ、私が悪いのですからね!」
ちょっとおふざけが過ぎたみたい。自分のせいだと言うアリスの頭を強めに撫でていさめる。
「冗談よ。私だって貴女くらいの時はお姉ちゃんに付いて貰ってたものよ。恥ずかしくなんてないわ」
「ヒナ…そーゆーフォローはもう少し早くして欲しいものですわ」
「ゴメンゴメン、アリスが困ってるのを見るのが珍しくて、ちょっとイジワルしちゃったわ。ほら、おいで…」
「ホントにもう…ブツブツ…」
口を尖らせながらも私の布団に入ってくるアリス。いつもあんなに元気にはしゃいでるから意識しないけど、やっぱり可愛くて…頼りなさを感じてしまうほどに小さい身体だった。
「寒くないかしら?」
「ええ、温かくて…ヒナの匂いがして安心しますわ」
「よかったわね」
アリスの屈託の無い笑顔に、私もお姉ちゃんにこんな風に添い寝してもらってたのを思い出して心が温かくなった。 が、その笑顔の瞳が潤んできて、雫となって零れ落ちた。
「あれ…なんで…」
自分の感情とは裏腹の涙に戸惑うアリス。私はその涙の意味をすぐに理解できた。 寂しい時や辛い時が終わった瞬間。心が安らぐと同時に、それまでの自分がどうしようもなく哀れに思えて感情が爆発してしまう事が私にもあった。そんな時、何度お姉ちゃんの温かい腕の中で泣かせてもらった事だろう…。 私はアリスの小さな肩を寄せて優しく、そして力強く抱き締めた。
「泣いても、良いのよ。私は貴女のママなんだから…もっと私に甘えて…ね?」
「う…ゔわぁぁ…ヒナ…ヒナ…」
「よしよし…大丈夫だから…」
普段の気丈な姿からは想像出来ない弱々しい嗚咽を漏らすアリス。私はその小さな小さな身体を抱き締めて、頭を撫で続けた。 彼女はずっと寂しかったんだ。愛された記憶を持たない子供がどうやって自分の力で立つ事が出来ようか。お姉ちゃんの存在に頼ってばかりだった自分には想像もつかない孤独を、彼女は背負っている。せめて私だけでも…その孤独をかき消す力になりたい。
「Zzz…」
泣き疲れて眠ってしまったアリス。溜め込んでいたものを爆発させたからか、その寝顔はとても安らかだった。 きっと、良い夢を見ているんだと思う。私が同じように泣き喚いて眠っていた時も、お姉ちゃんはこんな気持ちだったのかな?
「私は、何があってもアリスの味方よ」
改めて誓う。お姉ちゃんや今の両親、そしてハヤテ。私の大切な人達から受け取った全ての愛情をそのまま、この子に注ぐ。 鮮やかな金髪がかかる頬をそっと撫でながら、私は呟いた。
【つづく】
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【あとがき】
キューティーズ2発目の主役はやっぱりアリスちゃんです。アリスちゃんと言いつつ、半分くらいしか出てないからまた出てくるかもしれません。 充電池さんから頂いたテーマは「アリスちゃんが一人でおトイレ出来なかった話」であり、「アリスちゃんがお漏らししちゃった話」ではないので、今回の展開で必要十分ですね。(フンス
ガンガン素直にハヤテにアプローチするヒナ、ヒナの母性、珍しく攻められるアリスちゃんと、やりたい事が色々と出来て満足しています。その中でも、アリスちゃんが普段は意識させない孤独を感じてしまうところがやりたくて仕方なかったんです。
前スレでも何度も言っていますが、私の中では「アリス」と「アテネ」は全くの別人です。記憶が無いのでヒナの部屋の居候として過ごしてきたのが人生の大半であり、ヒナが母親同然という扱いで書いております。 原作でのこの母子の部屋での会話が皆無であり、「ヒナ」と呼ばれるようになった経緯も謎。「子連れ生徒会長爆誕の瞬間」以外があんまりにも薄すぎてもどかしいというのが個人的な思いであります。 そんなフラストレーションを発散させる意味としての、このSSでのアリスちゃんの活躍とも言い換えられますね。長いから以下省略。
そんなこんなでアリスちゃんの心に抱える寂しさを、(姉以外の)肉親以外からの愛情で育ってきたヒナだからこそ察知できて、さらには解消できるのではないかという思いがこのSSの前提となっております。 今後も、ハヤテ・ヒナ義母を含めた擬似家族の絡みは続いていきますので、どうぞよろしくです。
さてさて次回は、ヒナの親友の恋模様について出来ればと思っています。 では、ここまでありがとうございました。ご感想・ご質問等お待ちしております。
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【2014/6/7茶会ネタ投稿】しあわせの花 Cuties ( No.5 ) |
- 日時: 2014/06/19 14:55
- 名前: タッキー
- 参照: http://hayate/nbalk.butler
- どうも、タッキーです。
いやぁ〜ロッキーさんの更新待ってたんですよ〜
それにしてもマリアさんの怪談の戦闘力、530000ですか・・・なんだか変身とかしそうですね。 ハヤテ君は相変わらず鈍感ですけど、ヒナさん凄い素直、というか大胆ですね。大人のアレって!大人のアレって!!!ちょっと赤飯を買ってき・・・げふっ!!! す、すいません、まだ早いですね。 それにアリスの子供っぽさはたまらないです。なんというかギャップ萌え?普段なんだか大人びているのでヒナギクさんに甘えてくるとそれだけでキュンとしちゃいますね。しかもヒナさんのそれに対する反応がすっかりお母さん!一緒の布団で寝るところなんかもぉ素晴らしいです。のちのちハヤテがその中に入っていくかと思うと・・・ やっぱり赤飯か・・・がはっ!!! こ、これからもずっとアリスの、そしてハヤテの味方であり続けて欲しいですね。
ナギの成長してる姿とかもあってよかったです。さらに次回はヒナさん以外の人の恋話ですか・・・ハヤテのことを乗り越えて彼女たちは誰に向かって行くんでしょう?とても気になります。
次の更新も楽しみに待ってます。頑張って下さい。
それでは
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【感謝】レス返し ( No.6 ) |
- 日時: 2014/06/20 04:00
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >タッキーさん
ご感想ありがとうございます。
ヒナが大胆なのはアリスちゃんの教育のおかげです。前スレでやってきたような特訓は今でも絶賛継続中という設定であります。 ハヤテもヒナもお互いに異性への接し方を6歳児から教わって成長していくのが「しあわせの花」クオリティでございます。仮にケンカをしたとしても、仲を取り持つのはきっとアリスちゃんです。ホントに可愛くて便利なキャラなんです。すきすきしたああ〜〜〜〜い〜〜いぃ〜(誤爆 …とまあ、大胆に見えるヒナではありますが、私自身はこれが自然体だと捉えています。アリスちゃんはトレーニングを課してはいますが、あくまできっかけに過ぎません。それだけ、ヒナの中で「ハヤテが好きだ」という気持ちと「ハヤテとあんな事やこんな事がしたい」という欲求が存在して、それを自覚出来ているという状態を表現したいと常々思っております。 ちなみに二人がイチャコラする描写はほとんど書かないと思います。既にこの二人には身体的接触への心の抵抗が無く、書いてて面白く出来ませんので。…精進します。
アリスちゃんに対してギャップ萌えを覚えて頂けたのならこんなに嬉しい事はありません。まさにそれを狙って書きましたので。 ハヤテを含めての親子ネタはこのスレでもやりたいと思っていますのでご期待ください。
また次回更新はいつになるか分かりませんが、気長にお付き合いください。 ありがとうございました。
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【第3話】西沢歩 ( No.7 ) |
- 日時: 2014/08/17 08:20
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
まただいぶ時間が開きましたが、なんとか更新です。
今回の主役は西沢歩さん。 実は3年以上寝かしていた(筆が進まなかった)ものとなります。 それではどーぞ!
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「はいアユ、あ〜んして…」
「あ〜ん…」パクリ
ハヤテ君の差し出すフォークに刺さったケーキを頬張る。う〜ん…しあわせっ! あ、読者の皆さんこんにちは。西沢歩です。なんと!今回の主役はこの私なのですよ!!ヒナさんを差し置いて!!!
…ってコラコラ、「戻る」ボタンをクリックするには早すぎるんじゃないかな?誕生日くらい、私にも夢を見させてくれてもいいん
じゃないかな? というワケで、最初で最後の私とハヤテ君のラブラブっぷりを、とくと目に焼き付けてください!!
しあわせの花 Cuties 第3話【 西沢歩 】
「ところで歩、来週誕生日よね?」
「ん?…あ、はい。さすがヒナさん、覚えててくれたんだ!」
「そりゃあね…」
それは5月8日の事、月に2・3回は必ずやっている喫茶店でのヒナさんと二人きりでのおしゃべりの中でのやり取り。 言葉数少なく照れているヒナさんの表情を見てると、自分が彼女にどれだけ大切に想われているかが分かって嬉しくなった。
「でさ、何がいいかしら?プレゼント…」
「ん、そうですねぇ〜…」
もったいぶった言い方をしていても、私の心の中ではひとつの答えが既に出ている。 目の前でミルクティを口に運ぶ彼女、桂ヒナギクから譲って欲しいものと言えば…
「まあ、ワガママ言うならやっぱり…ハヤテ君…ですけど」
「そう…」
『ハヤテのごとく!』を知る人なら誰でもご存知、原作でもこの二次創作でも私の叶わぬ恋の相手、綾崎ハヤテ君。 特に驚いた様子を見せないあたり、私の返答はヒナさんの想定内だったようだ。
「いいわよ」
「…………はぁ!??」
ニコリと笑って答えるヒナさんの言葉は幻聴に違いないと思った。
「まさかまさか、天下の桂ヒナギク様ともあろうお方がそんなご冗談を!」
「話は最後まで聞きなさい。一日だけの話よ」
「一日?」
「そう。誕生日に、ハヤテと二人で好きな所に行ってらっしゃい…ってコトよ!」
「あぁ、なーる…」
そーゆー事ですか。誕生日プレゼントに、ハヤテ君とデートする権利というワケですね。 でも一日限りだとしても、ハヤテ君もヒナさんもそんな事、お互いに許せるのかな?
「えと…私としてはすごく嬉しいんだけど。本気…なのかな?」
「ええ、歩がまだハヤテに恋しているのなら…私は本気よ。むしろ誕生日だけで申し訳無いくらい…」
私の問いかけの意図を酌んでくれたのか、ヒナさんの顔はいつになく真剣だった。
ところで、私がハヤテ君に片想いをし始めて約2年、ハヤテ君とヒナさんが付き合い始めてから半年以上が経過するけど、私は未だに恋の終わりを見定められないままだった。 これまでヒナさんに対して嫉妬した事が無かったかと問われたら…「無い」とは言えない。ぶっちゃけ。ヒナさんからハヤテ君の話を聞く度に、実るはずもない恋心ばかりが膨れ上がって胸を締め付けた。 その一方で、あの二人は最高にお似合いのカップルだとも思う。それは周りの人間…特に恋敵だった女の子たちの行動が饒舌に物語っている。奥手な二人の関係がトントン拍子に深まって行くのは、間違いなく周囲のマンパワーに押されてるからだと思う。ナギちゃん、アリスちゃん、アテネちゃん、マリアさん、白皇学院の皆々様…もちろん私もその中に入っていて、みんながみんな二人の幸せを願っている。
…とまあそんなこんなで、二人を応援しつつも、自分のハヤテ君への想いにケリをつけられない今日この頃。ヒナさんからの提案は、そんな自分を変えるきっかけになるかもしれないと思った。
「…じゃあ、お言葉に甘えたいです!!」
「そう…分かったわ」
ヒナさんのホッとしたかのような笑顔。本当に、本気で、私の事を想っていてくれているのが伝わってくる。 だけど、その笑顔は次第に少しずつ曇っていき…私が「桂ヒナギク」というワードを聞いた時に思い浮かぶ顔とはかけ離れた不安げな表情を見せた。
「歩…コレで本当に…大丈夫なの?」
「…へ?」
あまりに変化球な質問に、我ながら間抜けな声が出た。
「だって、自分の彼氏をまだ好きだっていう女の子に、見せびらかすかのようにデートさせてあげるだなんて言ってるのよ?」
「……」
「実を言うと私…歩になんて思われてるのか不安で仕方ないの。もしハヤテが選んだのが歩だったら…自分が歩をどう思うのか想像出来ないから…」
「…なるほど」
「今回の事ね、ハヤテももう知ってるの。ひと月くらい前から話し合って…でも結局、歩にどうしたいかを聞くしかないって結論にしかならなかった」
「はぁ!?ひと月ですか!!?」
「ん、そうだけど…何かおかしいかしら?」
そりゃあ大声上げてしまうくらいおかしいですよ!まったくこの人達は、気ぃ遣いというかお人好しというか…。 二人で幸せになってくれればそれで誰も文句なんて言わないのに、私のワガママを叶えようと四苦八苦するだなんて、なんというか…ホントにバカなのかもしれない。幸せバカ。
「…いえ、何もおかしくないですよ。うん、なんらおかしいトコなんて無い」
「なんか言い方が引っかかるけど…まあ、歩が大丈夫ならいいわ。じゃあ、色々と詳しい話なんだけど…」
「はい、よろしくです!」
でも、そんな幸せバカな二人が私は大好き。今回はそんな二人のご厚意に存分に甘えちゃおうと思います。
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というわけで、今回のハヤテ君とのデートの事前情報↓
・デートは5/14(日)。朝から晩まで丸一日ハヤテ君と一緒。 15日は平日で学校があるのと、夜にナギちゃんがアパートでパーティーを開いてくれるため。 ハヤテ君のスケジュールはヒナさんが既に調整済み。
・約束、行き先、待ち合わせ等の約束は私とハヤテ君とで直接する。ヒナさんは一切口を挟まない。
・二人でどんな事をしたのかも、ヒナさんに情報は行かない。私が話さない限り。
---------------------------------------
「こんなところかしら…?」
「そうですね。それにしてもヒナさん…」
「?」
「コレはちょっと…あまりにも条件が良すぎというか…」
誕生日である月曜の放課後に、ちょっと二人で会えればイイなって思っていたのが上のような条件に。 なんか…申し訳無くなるくらいの優遇じゃないかな。
「それだけ、私が『歩を応援する』って言ったのが本気だったっていう事よ」
「…そうですか。じゃあ、お言葉に甘えます!」
苦笑いで昔の事を話すヒナさん。 結局ハヤテ君は正々堂々の勝負(?)の結果、ヒナさんのものになったんだから私は全く気にしてないけど。 まあ、ココはヒナさんの心意気に思いっきり甘えるとしよう。
「フフッ、楽しみだな〜!!」
「歩はハヤテと行きたい所はあるの?」
「う〜ん、挙げていけばキリが無いけど…ハヤテ君と一緒ならどこでもいいかな」
「やっぱり、そう言うと思ったわ」
笑い合う私達。 やっぱり同じ人を好きになった同士、気が合うんだな〜。
◆
「じゃあ、日曜の事はハヤテと決めてね。夜の10時以降は電話に出られるはずだから…」
「ハイ!ヒナさんありがとう〜!!またね〜!」
「うん、またね!」
ヒナさんと別れた後の帰り道。(今日は実家に帰る予定です) 普段あまり使わない脳みそがフル稼働して日曜の予定を何パターンも考え出す。 (あそこもイイなぁ〜。あ、でもあっちも捨てがたいかな…。いやいや、後にも先にも一度きりのデートなんだから思い切って…!) その時の私は「恋しちゃってます」オーラ全開で、傍から見たらとても気持ち悪かったと思う。まあこれも、恋はフリーダムというラブマイスター的な持論通りなので、どうかお目こぼしを…。 とかなんとか考えてる内に、自宅に到着。
「たっだいま〜!!」
扉を開ける動作ひとつ取っても、ノリノリなリズムを刻む私なのでした。
◆
♪〜♪〜
「!?」
同じ日の夜10時半。私はベッドで枕を抱きながら日曜日の事を妄想していた。 そんな中、あまり遅い時間に鳴る事が無い、通話用の着信音が部屋中に響いたので驚いたのだった。 こんな時間に誰かな…?ケータイのサブ画面で発信先を見てみると…【ハヤテ君】の表示が。
ヤバイ!! 約束の電話入れるのを完全に忘れてた!!!
私は慌ててケータイを開き、乱暴に通話ボタンを押した。
「はっ、はい!もしもし!西沢ですっ!!」
『夜分遅くにスミマセン、綾崎です。今、お電話して大丈夫でしょうか?』 (←『』囲みは電話越しとして読んでください。)
「うん、大丈夫!ごっ、ゴメンね。電話するの忘れてた…」
『いえいえ、僕もつい今仕事が終わった所なんで、僕からかけられてちょうど良かったです。通話料もかかりますし…』
「そんなそんな、わざわざありがとう」
ハヤテ君、仕事終わったばかりで疲れてるはずなのに私を気遣って… やっぱりすごいな。
「ハヤテ君、日曜日は…ヨロシクね!」
『ハイ!西沢さんのお誕生日のために、頑張ります!では、詳しい話なんですが…』
「うん」
◆
「じゃあハヤテ君、楽しみにしてるねっ!」
『ええ、喜んでもらえるよう頑張ります!では失礼します…』
「またね〜」プツン
なんだかんだで、1時間以上も電話してしまった。毎日こんな風に出来るヒナさんは、やっぱり羨ましいなぁ〜。(←出来ないわよ!理由は…皆様お察しの通りね byヒナギク) それにしても、日曜日が待ちきれないや〜。
(「歩さん、今日貴女とデートをして気づきました。僕は貴女が好きです!」
「え!?でもヒナさんは…」
「以前、貴女から教わりました。『恋は想いを解き放って叫ぶもの』だと…。だから僕は…貴女への想いを叫びます。…好きです!!」
「本気なんだね、嬉しいな…。じゃあ、このまま逃げちゃおっか?」
「ハイ。どこまででもついて行きます!」)
キャー!!「歩さん」だなんてハヤテ君ったらダ・イ・タ・ン!!な〜んて事が…無いかな?(←ありません) 分かってるよ!ただの妄想だよ〜! って、私ったら誰に向かって言い訳してるんだろ…?
◆
さてさて、時は流れていよいよデート当日!待ち合わせの約束は朝9時、私の地元の駅前で。そして現在の時刻は…7時50分。日曜の朝の駅前はひどく閑散としていた。
…いいじゃんいいじゃん!早く来たって!だって私が先に来てれば、ハヤテ君が来た瞬間にデートスタート。もし早めに来てくれれば一緒にいれる時間が長くなるんだよ!?そりゃあ、ちょっとは早すぎるかなとも思ったけど…「待ってる時間もデートのうち」なんだから問題ナシだよ!! …って、私は誰に向かってこんな熱く語ってるのかな?
とりあえずコンビニでファイト一発!なドリンクを買って気合を入れようかな…。
◆
コンビニに行った後は、ひたすら人間観察をして暇つぶし。それにしても日曜日の朝の駅というのは、色んな人がいるものなんだな〜。 まず目に入ったのは、パパとママに挟まれて手を繋いでいる子供。遊びに行くのかな?次に、いかにも「山登りです」という格好のご年配の方々。お気をつけて。そして大きなエナメルバッグを背負っている高校生。野球部みたいだね。…なにやら大掛かりな撮影道具を構えている白皇の制服の女子3人組と、レポーター風の金髪美少女2人組(片方は幼女)。…見なかった事にしよう。
そしてセンス良さげな私服に身を包み、デートの相手を待っているであろうカッコイイ男の子。って、アレは…
「お〜い、ハヤテ君!!」
「あ!西沢さん、おはようございます!!」
「おはよ〜!!」
ついに登場。私の待ち人、綾崎ハヤテ君。 ヒナさんと付き合い始めてから私服のセンスがますます良くなったなぁ〜。(←どんな格好かは、皆様のご想像にお任せします)
「ハヤテ君、早いね〜。まだ8時半だよ?」
「そういう西沢さんもお早いですね!…もしかして、待ってましたか?」
「ううん、私もつい今さっき来たところだよ!」
「そうですか、タイミング良かったですね」
「うん」
ハヤテ君が約束の30分も前に来てくれた事に大興奮の私。勢いに任せて言った事だけど、たかだか40分しか待ってないから今来たも同然。ウソを言ったつもりは無い。 ホラ、早く来たおかげで予定より30分長くハヤテ君といれるでしょ?仮に私が約束の5分前に来てたら、ハヤテ君の待つ25分が勿体無い事になっていたよね。
「…西沢さん、今日はいつもに増して可愛らしいですね!」
「そ、そうかな…?えへへ…ありがと」
「髪型が違ったから、最初誰だか分かりませんでしたよ〜」
「そう。この髪型…どう、かな?」
「ハイ、大人っぽくてとっても素敵ですよ!」
「ありがと…ハヤテ君にそう言ってもらえると嬉しいな…」
今日の私の格好は、自分の最高の本気を出したオシャレ。(←どんな格好かは 略) いつもは結っている髪も下ろして、ハヤテ君の言った通り、いつもよりは大人っぽく見えると思う。それにしてもハヤテ君、こういうトコにコメントを入れられるようになっただなんて、ホントにヒナさんに鍛えられてるんだなぁ〜。(←鍛えているのは私ですわよ! byアリス)
「では西沢さん、お手をどうぞ!」
「…うん!」
差し出された右手に、自分の左手を乗せる。執事らしい、きめ細やかなエスコートに嬉しくなっちゃうけど…ちょっと違うんだよなぁ〜。
「ハヤテ君、お願いがあるんだけど…いいかな?」
「ハイ!なんなりとお申し付け下さい!」
満面の笑みのハヤテ君。 その表情は、どんなお願いでも聞いてもらえるような…そんな気を起こさせるくらい眩しかった。
「今日は、私の事…ヒナさんみたいに扱ってもらいたいの!」
「…ヒナみたいに、ですか?」
「うん。話し方とか、呼び方とか…。ダメ、かな?」
そう。今日は「ヒナさんの幸せを体験する事」を脳内での目標の一つに掲げている。 ヒナさんだけに対してのハヤテ君の接し方を今日だけで良いから味わいたい。
「え…構いませんが、いきなり馴れ馴れしくなって気分を悪くさせてしまうかもしれないですよ?」
「そんな事無い!…お願いっ!!」
いささか困惑気味のハヤテ君に手を合わせてお願いする私。ココだけは今日はどうしてもやって欲しいの!
「…分かりました、出来る限りやってみます!ではそうですねぇ…。今日は『アユ』とお呼びしても良いですか?」
「えっ!?」
いきなりの提案に面食らう私。顔を赤らめるハヤテ君は勇気を出して言ってくれたに違いない。 そんな…アユだなんて…なんか大物歌手にでもなった気分。笑
「すっ、スミマセン!『ヒナ』みたいな呼び方をと思ってたんですが…馴れ馴れしかったですよね…?」
「う、ううん!ビックリしただけ。嬉しいよ!!話し方も…」
「ハイ、では…ゴホン! …行こうか、アユ」
「うん…ハヤテ!!」
雰囲気に便乗して私からの呼び方も変える。 なにとなしに私の手を取るハヤテ君、執事モードの時とは違った頼もしさを感じた。
◆
それからのデートは、本当にあっという間。食べるものはいつもよりも美味しいし、飲むものもいつもより喉越しさわやか。目に入るもの全てが私たちを祝福してくれてるかのようだった。 中でも一番に感じた事は、ハヤテ君との距離感。手を繋いでいるのもあるけど、本当に近い!顔が近づいてくる時は本気でキスしそうになっちゃうほど。(そこは毎回ギリギリのところで我慢出来たけど) あぁもう、幸せすぎて頭がフットーしそうだよぉっっ。
「ん、どうしたのアユ?」
「えへへー、ちょっと嬉しいだけだよ!」
ヒナさん、こんな幸せな時間をありがとう!
◆
楽しい時間が過ぎるのは本当に早い。たっぷり遊んだけどまだまだ遊び足りないと感じた頃にはもう日が沈みそうになっていた。 私たちはいつもヒナさんと行く喫茶店でお茶をしばいてた。
「ハヤテ、今日は本当にありがとう!すっごくすっごく楽しかった!!」
「それは、良かった。僕も嬉しいです。では少し早いけど…誕生日おめでとう、アユ」
そう言って手渡してくれたのは、手に収まる位の大きさの可愛らしい紙袋。…もしかして、プレゼントかな?
「うわ〜ありがとう!…早速だけど開けちゃっても良いかな?」
「はい、もちろん」
丁寧に包装を開けていく。 袋の中には、リボンをあしらった可愛らしいヘアゴムがたくさん入っていた。どのリボンも作りが細やかで、市販品では見かけられないようなものばかりだった。
「わぁ〜、可愛いのがたくさん入ってる〜!」
「アユといえばやっぱりリボンだからね。みんなに協力してもらって作ったんだ」
「へぇ〜、ホントにたくさんあるね〜」
たくさんあるリボンの中でも一際目立つのが、2種類の花のモチーフのついたリボン。 片方はヒマワリで、もう片方は…なんの花だったかな?
「ねえハヤテ、このお花ってなんていったかな?」
「ああ、それはデイジー…雛菊だよ。ヒナとアユの仲が良いからって、お嬢様が作ってくれたものだね」
「へぇ〜…って事は、このヒマワリは私なの?」
「みたいだね。僕も、いつも明るいアユにはピッタリだと思うよ」(←「ハムスターだからヒマワリだぞっ」と私から聞いておいて、このキザっぷり。もう恥ずかしくて見てられんぞ! byナギ)
「えへへ…そうかなぁ〜」
ハヤテ君ってば、嬉しい事を言ってくれるじゃないの。そんな事言われたら、ちょっと先のテーブルの子供がとっとこハ●太郎のテーマを歌ってるのなんて聞こえないぞ〜!
「ありがとう、ハヤテ!早速だけど…つけて貰ってもいいかな?」
「え?いいけど、せっかくの今日の髪型が…」
「いいの。皆が私のために作ってくれたものなんだし、私も早くつけてみたいの。お願いっ!」
「分かった。じゃあ、失礼して…」
どこからか取り出したブラシで私の髪を丁寧に梳くハヤテ君。その馴れた手つきに、いつもヒナさんのあの長くて綺麗な髪を梳かしている事が簡単に推測出来た。 ホントに上手…好きな人に髪をいじってもらうのって、こんなに気持ち良いんだ…。
「ハイ、できたよ!」
「で、どう?どう!?」
「うん、とっても似合ってるね!可愛いよ♪」
「やったぁ〜、ありがとうハヤテ!」
自分でも鏡でどんな感じか確認すると…ホントに可愛いんじゃないかな!いや、ヘアゴムがだよ? あの不器用の権化のナギちゃんが…本当に成長したんだなぁ。 それにしても、コレってはたから見たら間違いなく恋人同士だよね。ヤバイ、幸せすぎて本当に勘違いしちゃいそうになっちゃうよぉ…。
「では、せっかく可愛らしくなったんだから街のみんなに見せびらかしに行こうか?」
「うん、これからどうするの?」
「アユが良ければ僕に任せて欲しいんだけど…いいかな?」
「ハヤテが連れてってくれるならドコでもOKだよ!」
ハヤテ君は喫茶店を出るよう促す。 そう、考え方を変えてみよう。「もう日が沈んだ」んじゃなくて「まだ帰るまでは時間はたっぷりある」んだ。もっともっとたくさん楽しんじゃうぞ〜!
◆
喫茶店を出てからも色んな所に行って、結局自宅に着いたのは夜も10時になろうという時間だった。 こんな時間になったのもあって、ハヤテ君は家の玄関先まで送ってくれた。お別れの言葉を言おうとしたその時…
「「あっ…」」
ポツリポツリと雨が落ちて来る。あっという間に雨足は強まり、カサ無しでは出歩けないほどの本降りに。 デート中に降らなくて本当に良かった。
「うわ〜タイミング良かったね。アユが濡れないで良かったよ。…申し訳無いんだけどカサを貸してもらっても良いかな?」
「うん、もちろん!取ってくるから待っててね♪」
「お願いしまーす」
玄関の扉を開けてカサ立てを物色する。お父さんの大きめのイイやつを取って戻る。 ビニールガサをそのままあげちゃっても良かったけど、家のものを貸しておけば、また返してもらう時に会うチャンスが出てくるよね。こんな雨でも私は恵みの雨にしてしまうんだよ!
「お待たせハヤテ!はい、カサだよ」
「ありがとう!今度また返しに行きますので…ではまた。明日も楽しみにしててね」
「うん!気をつけて帰ってね。またね!!」
と、お別れの挨拶を交わしてハヤテ君との幸せな一日が無事に終わった。
…はずだった。 「はず」というのは、まだハヤテ君との一日が終わってないという意味だから。
だんだんと遠くなっていくハヤテ君の背中にいてもたってもいられなくて、私は気付いたら追いかけてしまったいた。
「ハヤテ君!!」
「アユ!?」
急に肩を掴まれたハヤテ君は驚きながらも、呼び方を変えずに応えてくれた。
「ゴメンねいきなり…。最後に一つだけ、聞いて欲しい話があるんだけど…いいかな?」
「ハイ、なんでしょう?なんでも言ってくださいね!」
雨に濡れる私をすかさずカサの中に入れてくれるハヤテ君。図らずも憧れ続けた「あいあい傘」の形になった。この優しさが嬉しい。もっと溺れていたい…。 ところでいきなり話は変わるけど「なんでも」という言葉を人はよく使う。でも実際に「なんでも良い」という事なんてあり得ない。絶対に。 なぜこんな事を言うのかって? 「なんでも」という言葉が本当なら、今から私がハヤテ君にするお願いも聞き入れてくれるだろうから…。
「私は、ハヤテ君が好き。ハヤテ君がヒナさんと恋人になっても、ずっとずっと好きなままだった。前に告白した時よりももっともっと好きになった。だから、聞いてください!」
「……」
私の言葉に、笑顔だったハヤテ君の表情がにわかに変わった。私の言いたい事を察知してくれたのか、とても真剣な眼差しを向けてくれた。 これだけでここからどんな展開になるか、ハヤテ君も分かっていたと思う。それでも私の言葉を制する事無くハヤテ君は優しく聞き続けてくれた。
「今日の最後のお願いです。…私と付き合ってください!」
言ってしまった。ハヤテ君への通算三度目の告白。 言わずにはいられなかった。ハヤテ君の優しさを、温もりを、もっともっと直に感じてみたいと思ってしまったから。 …桂ヒナギクという存在を、忘れて欲しかった。むしろ、私が忘れてしまいたかった。
私の告白にハヤテ君は真剣な表情を崩さない。一生懸命に言葉を探している様子だった。その仕草に、胸の中にあった幾ばくかの期待がどんどんどんどん風船のように膨らんでいくのが自分で分かった。 しばらくして言葉がまとまったのか、肩に乗っていた私の手を乱暴にならないように私の胸の前まで持ってきて、口を開いた。
「……それは出来ません。いや、『出来ない』んじゃない。ヒナを愛してるから、僕が貴女とお付き合いする事はありません。これは僕が僕の意思で決めている事です。だから…ごめんなさい」
「……そっか」
ハヤテ君の断り方は本当にハッキリとしていて、今の彼の心にはヒナさんしかいないのだと誰が聞いても分かる答えだった。 その返答に、私の緊張の糸が一気に緩んだ。
「ゴメンねハヤテ君…せっかくお祝いしてくれてたのに、雰囲気ぶち壊しにしちゃって…」
「いえ…僕は…」
「せっかくもらったチャンスで、人の彼氏奪おうとするなんて…我ながらカッコ悪いなぁ」
「……」
ハヤテ君は口を開かない。ハッキリ言って最低な今の私にかける言葉なんて、責められるようなものしかないはずだった。沈黙を続けてくれているのはハヤテ君の優しさの表れなんだと感じた。
「でも、ありがとう」
「えっ?」
「ちゃんとハッキリと断ってくれて、ってコト。いつだったかみたいに誤魔化されたらどうしようかと思っちゃった」
「スミマセン…」
「あっ、冗談だよ?ハヤテ君がハッキリ断ってくれると思ったから、私も告白したんだし…」
きっとヒナさんなら許してくれる。きっとハヤテ君ならキッパリと断る言葉を選んでくれる。 二人の事を信頼してなければ、こんなバカげた告白なんて最初からしなかった。 ハヤテ君と付き合う事は出来なかったけど、最高の親友と知り合えた。そして、最高の失恋経験を記憶に刻む事が出来た。この二つが私の人生の大きな大きな糧になってくれるに違いない。いや、きっとそうしてみせてあげる!
「今なら分かるよ…『ありがとう』だったんだって…ハヤテ君に出会えた事、ヒナさんに出会えた事、全部が手放した私の恋よりも大きく残ってる。…だから、ありがとう!」
「西沢さん…」
呼び方が戻っているハヤテ君。 今日限りの魔法の時間も、とうとう終わりが来てしまったんだ。
「そんな悲しそうな顔されちゃうと、私また期待しちゃうよ?ヒナさんじゃなくて、私を選んでくれるかもって…」
「……」
「ね。だから、今日は笑ってお別れだよ!また明日、パーティー楽しみにしてるからね!!」
「はい。楽しみにしてて下さい。では…おやすみなさい」
「おやすみ、またね〜!」
手を振った。 彼の姿が見えなくなってからも振り続けた。
「……」
手を振り始めてから5分、ようやく私は手を止め、雨が降りしきる路上へ歩を進めた。 5月中旬とはいえ、夜の雨。冷たい雫は、容赦無く私の身体を打ちつけてくる。 手を思い切り広げ、顔を空に向ける。こうすれば、涙も雨も見分けが付かない。 お気に入りのよそ行きがずぶ濡れになるのも気にならなかった。
「ゔっ…ううぅ…」
泣いた。子供のような嗚咽と共に。 泣いてどうにかなる訳でもない。そんな事は分かってる。 でも泣かずにいられる程、自分がオトナではない事も分かってた。
「ハヤテ君…大好きだったよ…」
…私の長い長い片想いの恋は、ようやく終わりを迎えたのだった。
◆
「ヒナさん、昨日も今日も…楽しい時間を本当にありがとう」
「いいえ、楽しんで貰えたならそれが一番嬉しいわ…おめでとう、歩」
翌日、ナギちゃんが開いてくれたパーティーも終わり、アパートの庭でヒナさんと二人きりで話していた。 昨日の事を…洗いざらいヒナさんに話してしまおうと思う。責められるのは覚悟の上で。
「一つ、ヒナさんに謝る事があるんだけど…」
「昨日、告白して私からハヤテを奪っちゃおうとした。とかかしら?」
申し訳無さげに切り出す私の言葉を遮って、ヒナさんはやけに得意げな表情。
「えっ!?なんでソレを…?ひょっとして、ハヤテ君から?」
「そんな訳無いでしょ!昨日の事は歩とハヤテだけの秘密なんだから」
「そ、そですよね。と、とりあえずゴメンなさい。ヒナさんの優しさを利用して自分勝手に…」
「ううん、私も覚悟はしてた。歩の事だから、チャンスは逃さないだろうなと思ってね。正直、ハヤテと歩があのまま帰ってこなかったらどうしようって、本当に気が気じゃなかったわ」
「そこまで分かってて、私にハヤテ君を…」
「だから、『私も本気だ』って言ったでしょう?」
花壇に咲く雛菊を愛でながら話すヒナさん。 ほどこしだとか、同情だとか…そういうものじゃない。私の事をハヤテ君に恋してる女の一人として、自分と対等に見てくれている…ような気がする。難しくてよく分からないけど。
「ハイ。でも、あっさり撃沈しちゃいました。『ヒナさんを愛してるから、自分の意思で私を選ばないんだ』って」
「そ、そう…」
照れている様子がまた可愛いなぁ、ちくしょー。私もあんな風に言われてみたいな…。 だけどそれは…ハヤテ君じゃなくて、別の人に求める事にしよう。昨日、初めてそう思えた。やっと、ちゃんと失恋できた。
「さすがに泣きまくっちゃったんですけど、あれだけハッキリ言ってくれたんでようやく吹っ切れられました!」
「吹っ切れた?」
「ハイ。ハヤテ君に片思いの西沢歩は昨日で終わり。今日からは新たな恋を探すラブ・ハンター、西沢歩だよ!」
ラブ・ハンター…我ながらちょっとカッコいいんじゃないかな!? 運命の人と出逢って、恋をして、想いを伝え合って…こんなステキな事がまた最初から出来る。そう思うようにしようと決めたんだ。
「歩…」
「だから、ハヤテ君よりももっともっとステキな男の子をゲットしてみせるんで、応援ヨロシクです!」
「そんな男の子…いるわけないじゃない」
「「ハハハハハ!!」」
笑いあった。大声で、お腹の底から。 悲しんでる時間なんて無いもん。人生は短いんだし、楽しい時間を増やさないと!
失恋を経験してちょっぴり大人になった私の今後の展開に、乞うご期待です!
【つづく】
------------------------
【あとがき】
歩さんの失恋話でした。 3年以上前から書いていたんですが、なかなか思うように筆が進まず。結局は誕生日のタイミングを逃しての投稿となりました。まあ、失恋しちゃうし誕生日記念にするのもかわいそうですしね。
ヒナ役の伊藤静さんの「Happy Ending」という曲の歌詞をイメージしています。 失恋はしたけど、それ以上に得たものがある――それは親友だったり、人生の糧となる経験だったりという前向きな雰囲気を出したかったのです。が、それだけじゃ物足りなかったので、歩には本気の告白をしてもらった上でしっかりと悲しんでもらいました。 キューティーズ編はこんな感じで進めていきたいと思っています。(筆が進んでるとは言ってない
ハヤヒナ側としては、歩は大恩人です。下手をすれば失恋した心を逆撫でするかもしれないけど、本当に歩を大事に想っているが故に、思い切ったプレゼントで吹っ切れるきっかけを作ろうと決心したという形になります。難しい…。
前スレでのハヤテ君の片想いと対比して頂けると、より楽しめるのではないかと思います。片想いの主人公という事で、ハヤテと色々と似たような発想をしてもらいました。 後はハヤテがヒナとのデートに臨む時との姿勢の違いなんかも…。
さてさてこの辺にしておきましょう。 次回は…お楽しみです。(=まだ主役も話の流れもry ご感想・ご質問などお待ちしております。 ありがとうございました。
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Re: 【第3話更新】しあわせの花 Cuties ( No.8 ) |
- 日時: 2014/08/17 10:32
- 名前: タッキー
- 参照: http://hayate/nbalk.butler
- どうも、タッキーです。
まず、あのコーヒーが欲しくなるくらい甘いSSにシリアスな展開がでてきたのが意外でした。まぁ、自分はそういうの好物で、現に自分の作品はシリアスの真っ只中ですけど・・・。
なんというか、ハヤテとヒナさんが友達想いすぎて尊敬しますね。それに素直にのっかれる西沢さんもすごいですけど。でも、付き合いだしたハヤテとヒナさんが西沢さんと一悶着(?)ある話は自分もやりたいと考えていたので、一つネタを取られてしまいましたね。 まぁ、そのネタであるデートは相変わらずアマアマでコーヒーがないのを後悔しましたよ。ちなみに自分はカフェオレ派でブラックとか超絶無理な人種です。 西沢さん見なかったことにしたなにやら大掛かりなryに関しては今後が楽しみですね。こういう裏方がいると今後の話が作りやすくて便利なのかぁ・・・ふむふむ。あ、こっちの話ですよ。 それにしてもアユって!まぁ、アユユと言ってたら多分殴りたくなるような図になってしまうのである意味正解なのかな?まぁ、そうでなくともヒナさんとイチャコラしているハヤテに何度爆発しろと叫んだものか・・・。
リボンについてはみんなのお祝いの気持ちが伝わってきますね。自分も一度でいいからこういうプレゼントをもらってみたいです。去年初めてもらったプレゼントがなぜかチャリキーでしたからね。丁度壊してたのを知ってて送ってくれたし、ヒナさんのレンズ拭き(勿論使わず鑑賞するだけ)ももらったから嬉しかったですけど・・・。
雨・・・ですか。自分は先日土砂降りのなかビショビショになったのに、イヤホンの向こうでは同じ雨というシチュエーションなのにまたもやハヤテと西沢さんがイチャコラしやがるという(ドラマCDです。)・・・。あのときほどリア充爆発しろと思ったことはありませんね。 でも西沢さんの心情がよく伝わってきてよかったと思います。告白するときは いくか!?いくか!?いったーー!!みたいな感じでしたよ。ハヤテのほうも言うか!?言うか!?言ったーー!!っぽい感じで一人で盛り上がりました。自分のSSでもできればこんな感じにしたいですね。西沢さんはまだ決着つけてないので。
それにしても、最後はやっぱり西沢さんらしい感じになりましたね。ラブ・マイスターからハンターに変身。将来たちが悪くなって手当たり次第に狩ってなければいいですけど、そこは西沢さんだから問題ないかな?
まぁ、なんだかんだでこれからも頑張って下さいね(ニッコリ それでは長文失礼いたしました。
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Re: 【第3話更新】しあわせの花 Cuties ( No.9 ) |
- 日時: 2014/08/20 02:12
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >タッキーさん
毎度ご感想ありがとうございます。
今回の歩の告白、誰のためだったのかという話をすれば、まず一番はヒナのためでした。ハヤテと恋仲になれて嬉しい反面、歩が自分の事をどう思ってるのかが分からず不安で仕方無かったというのを晴らせてあげたかったというのがこのお話の主旨となります。ヒナのセリフでもありましたが、ハヤテが自分を拒んで歩を恋人とした場合の想像が出来ないので、歩の側からは想像だにしていない不安を抱えてしまっていたという訳です。 もちろん歩のためのお話でもあります。アリスちゃんとはまた違った角度から二人の恋仲をサポートし続けてくれている事へのご褒美として、あま〜いデートとはっきりとした恋の区切りをつけてあげたかったという作者心です。とはいえ、ハヤヒナ以外のカップリングをこのお話でやる事は無いとは思いますが…。笑 ちなみに「アユ」というのは「ヒナ」の互換のつもりです。もちろん、一世を風靡したあの歌姫も意識しています。コレは3年前の時点で決まっていたので「あゆゆ」より先になりますね。あの世代で2005年だかにあだ名をつけるとしたらコレになるでしょう。
雨の中で思い切り泣くというシーンは原作ではヒナにやって欲しいシーンです。個人的にですよ。 それを歩にやってもらうというのもまた作者的に彼女へのご褒美のつもりだったりします。 考えてみたら、はっきりとした断りの意思を伝えるハヤテってなかなか無かったなと思います。(アテネはストーリー上必要なのでそれ以外では。)その点も、歩を他のキャラと差別化してる所だと捉えて頂ければと…。
最後に、プレゼントはもらえるだけでありがたいもんですよ。 失ってからでは全てが遅い。(意味深
ではでは、ありがとうございました。
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【第4話】親子 ( No.10 ) |
- 日時: 2014/09/28 02:44
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
これまたご無沙汰しております。ちゃんと生きてます。
今回は、イラスト掲示板にてピーすけさんが応えてくれたリク絵に宛てたお話です。 あとがきにイラストのリンクを貼ってますので是非是非ご覧下さい。 イラスト掲示板は、止まり木トップページから行けます。ユーザーの皆さんの力作が見られる新しいコーナーです。 それではどーぞ!
--------------------------------
しあわせの花 Cuties 第4話【 親子 】
「お待たせ、できたわよぉー!」
「はぁい、早く食べたいですわ!」
とある土曜日。午前授業で早く帰ってきた私の昼食はアリスと二人きり。 リクエストされたメニューは彼女の大好物の焼きそば。焼いたソバよ、鯖じゃないわ。
「「いただきまーす!」」
挨拶と同時に、口の中いっぱいにソバをすすりまくるアリス。まるでハムスターのように頬を膨らませて食べている。 他の皆といる時は作法にうるさいお姫様も、私と二人きりの時に限ってはただの腹ペコな子供になってくれる。ちょっと優越感。
「でっかいうんまーいです!やっぱり焼きそばはヒナが作ってくれるやつが一番ですわね」
「あらあら、たくさん作ったからジャンジャン食べてね」
「おかわりですわ!」
「ウフフ、ハイハイ…」
あの小さな身体のドコにこんなたくさんの質量が入るのか。そう思わせるほどの食べっぷり。 ホントにご飯の作り甲斐のある子ね。 その、幸せそうな笑顔を眺めているうちに、自分のお箸が止まっていた事に気付かなかった。
「ん…なんでしょうか?ジロジロと…」
「え?なんでって…」
・ ・・ ・・・ ・・・・
「おいしーい!やっぱりお義母さんのカレーが一番おいしい!」
「ウフフ、良く噛んで食べないとダメよ」
お義母さんの作ってくれるカレー大好き!おいしいなぁ…ホントに! 今日はおかわり何杯いけるかな? ってお義母さん、あたしのほうばっかり見てニヤニヤして…どうしたんだろ?
「なに…お義母さん。あたしの顔に何かついてる?」
「ふふ、ちょっと嬉しいだけだよ。ヒナちゃん!」
どーゆー意味だろ?ま、いいや。 お鍋にまだたーっくさんあったからドンドン食べちゃおう!
「おかわり!」
「ハイハイ、すぐによそって来ますからねー」
「お肉たくさん入れてねー!」
・・・・ ・・・ ・・ ・
唐突に、そして鮮明に遠い昔の出来事を思い出した。 なるほど、そーゆー事だったのね。今ならばもう分かるわ。お義母さんもおんなじ気持ちだったんだ…。
「ちょっと嬉しいだけよ」
言葉通りの気持ちだった。何も考えなくても嬉しさだけがじわじわとこみ上げてくる。 幼い時分には気付かない…というか、知る事が出来ない。人の親になるって、こんなに嬉しい事だったんだ…。
「ふーん…まあいいですわ。おかわりお願いできます?」
「ハイハイ、すぐに持ってくるからね♪」
「お肉たくさん入れてくださいね!」
貴女の嬉しそうな顔を見ていれば、私はしあわせ。私のしあわせそうな顔を見ていれば、彼も嬉しくなってくれる。 しあわせは、ほんのささいな事から生まれて、人と人とが繋がっていくうちに大きくなっていくんだと思う。 きっと、しあわせってモノは花のように咲いていて、他人の嬉しい気持ちが肥料やお水のようにその花を育てて大きくしてくれるんじゃないかしら。雛菊の花を育ててくれるのは、優しい風と少女の笑顔ってトコロね。
「恥ずかしいモノローグ、禁止ですわよ!」
「えぇ〜!? -□-」
こうして、いつものように時が過ぎていく。しあわせいっぱいの花を大きく咲かせながら…。
【つづく】
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【あとがき】
アリスとのやり取りで、自分と義母との思い出がフラッシュバックしたヒナさんでした。 今回は冒頭で述べたとおり、イラスト掲示板(ハヤテ)でピーすけさんが私のリクエストに応えて描いてくれたものをイメージして書いた作品です。 ↓イラストURLです。 http://soukensi.net/perch/illust/hayate/index.php?mode=view&prevno=22
リクエスト内容が「マンガ『ARIA』の最後のシーンの『ちょっと嬉しいだけだよ』といった感じの笑顔でアリスちゃんを見ているヒナ」というものです。という訳で、随所に「ARIA」キャラのセリフを散りばめております。 そして、最後のこっぱずかしいモノローグ。「ARIA」の主人公アカリちゃんがこんなセリフを毎回放って、友達にツッコまれるというのがお約束なので、恥ずかしい感じを頑張ってみました。
さて、久々に親子っぽい絡みを書きました。 「ヒナ・ヒナ義母」「アリス・ヒナ」共に血の繋がらない母子ながらその姿を見て幸せになるんだというのをお伝えできていれば幸いです。今度はハヤテも絡ませてあげたいけど、ハヤヒナになってアリスちゃんと絡むと途端に悪乗りギャグになるから困りもの。 次の機会はいつになる事やら…。
最後に、ピーすけさん。ステキなイラストをありがとうございました。 prprしてあげたいくらい嬉しいです(ニッコリ
ご感想・ご質問等お待ちしております。ありがとうございました! 次回(未定)もおたのしみに。
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Re: 【第4話更新】しあわせの花 Cuties【イラスト付き】 ( No.11 ) |
- 日時: 2014/09/28 09:36
- 名前: タッキー
- 参照: http://hayate/nbalk.butler
- 心がぴょんぴょん・・・!じゃなくて、とてもほっこりしますね。
どうも、タッキーです。こんな出だしですいません。 そういば、ロッキーさんはごちうさはご覧になったんでしょうか?自分はキャラクター的にグッときました。
さてさて、今回の感想なんですが、とっても温かい話で心がぴょ(ry ゴホン!ハヤテがいると甘甘で、抜けてしまってもほかほかとは・・・もう無敵じゃないですか!!(くわっ 自分もこんな展開はやってみたんですが、もうちょっと・・・こう・・・温かくしたかったなぁ〜、と若干涙目な状態です。ただ後悔しているわけではないですよ。やりたくやっていることなので。
それにしても親子ネタというのは本当にいいものですね。ヒナさんの最後のモノローグなんかもう・・・!もう!!!すぅ〜・・・アッカリーーーーーン!!!! はい、すいません。そろそろ自分もほのぼのした話が書けそうなので、頑張りたいと思います。 そういや、鯖はまだ生きてたんですね・・・。
ピーすけさんもホントにイラストがお上手ですよね。自分もprprしたいくらいです(テヘ☆
さて、次回も楽しみしていますね。
それでは。
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Re: 【第4話更新】しあわせの花 Cuties【イラスト付き】 ( No.12 ) |
- 日時: 2014/09/30 15:26
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >タッキーさん
毎度ご感想ありがとうございます。
ヒナ義母・ヒナ・アリスちゃんと親子3世代がいますが全員血の繋がりはありません。前スレでハヤテが言っていた、血よりも大事な「心の繋がり」というものを感じて頂ければ幸いです。 温かい雰囲気は、元ネタになった「ARIA」を意識しております。全12巻+αほどで非常に読みやすい作品ですので、私の方からもオススメさせて頂きます。ちなみにごちうさは未視聴…今度CSで放送機会があれば! アカリちゃん繋がりですが、タッキーさんのアカリちゃんもなかなかの幼女っぷりですね。ウチのアリスちゃんの良いライバルになりそうです。
鯖・やきそばなど、前スレで使ったネタもドンドン使っていく予定です。 「こんな事もあったなぁ」と時の流れを感じて頂ければと。(更新遅い言い訳
では、ありがとうございました。 次回もどうぞお付き合いください。
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Re: 【第4話更新】しあわせの花 Cuties ( No.13 ) |
- 日時: 2014/10/04 19:49
- 名前: どうふん
ロッキー・ラックーンさんへ
こういっては何ですが、ホント他愛ない題材でこれだけ面白いものを作ってしまう実力には感服します。 アリスの子供っぽいところは、原作ではあまり見た覚えがありませんからね。
ただ、何となく腹ペコの子供であるアリスには既視感があったので、思い出そうと努めてみました。 ハヤテがアパートの皆に高級焼肉を御馳走したときでしたかね。どうもはっきりしませんが。 とにかく食事に夢中になっている子供は可愛いもので、そのイメージがはっきり湧いてくるこの作品は名作だと思います。
どうふん
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Re: 【第4話更新】しあわせの花 Cuties【イラスト付き】 ( No.14 ) |
- 日時: 2014/10/05 06:23
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >どうふんさん
ご感想ありがとうございます。
扱おうとする題材が他愛無いものであればあるほど、この物語のハヤヒナ+アリスちゃんは幸せを感じるように努めてくれています。二人(ないしは三人)でいられる時間というのが当たり前に思えて、実は特別な事であるというのを分かっているからです。常々アリスちゃんが二人に説いています。 今後もこの親子たちの他愛も無い日常はやっていきたいと思っております。どうぞよろしく。 食べ盛りの子供のアリスちゃんにもご期待ください。
それでは、失礼しました。
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【第5話】三千院ナギ ( No.15 ) |
- 日時: 2015/01/18 02:31
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
今回は二大金髪美少女の一角、ナギのお話です。 自分でも意外なキャラが活躍してくれました。
それではどーぞ!
--------------------------------
おいーっす、三千院ナギだぞ!ついについについに!私が主人公となる番が来たのだ!! 全世界334億人のナギちゃんファンのみんな、おまたせッ! この私の…新しい恋路の行方をとくと目に焼き付けておくのだぞ!
しあわせの花 Cuties 第5話【 三千院ナギ 】
「よぉし、朝はおめざのナギナギ体操第一だぞアーちゃん!」
「いつでもOKですわ、ナーちゃん!」
「じゃあマリア、ミュージックカモーン!」
「はいはい(ボタンポチー」
おはよう、今日も良い天気だな!休みの日でも、昼過ぎまで寝てたらダメ人間になってしまうというアーちゃんからの提案で、日課の体操を実施中だぞ。早朝の体操は身体にも良いから皆も見習って欲しいと思うのだ。(現在AM11:45) こうして二人で張り切って身体を動かしていると、玄関先に見覚えのある人影が…。
「一樹…一樹じゃないか!」
「え…ナギさん!?」
人影の正体は一樹。いつぞやに私を電車に乗ろうと連れまわした男だ。ついでに言うと、私の事がスキだと…熱烈な告白をしてきたヤツだ…。なんかすごく懐かしい気がするな。
「一体どーしたのだ、こんなトコに?」
「ね、姉ちゃんがこのアパートに住んでいて荷物を届けに…って、ナギさんもココに住んでるんですか!?あんな立派なお屋敷があるのに…」
「私はココのオーナーだからな、屋敷の方は色々ワケあって離れてるんだ…って、姉ちゃんだと!?お前の苗字は西沢とかいったけどひょっとして姉って…」
「うん、西沢歩。姉がいつもお世話になってます」
「し、知らなかった…」
一樹があのハムスターときょうだいだったとは!初耳な上に、何で今まで分からなかったんだ…?まあそんな事はどうだっていい。 一樹の表情がとても嬉しそうになる。それはひょっとして私と会えたからなのかという自意識が出た瞬間、いてもたってもいられなくなってしまった。
キュピーン (ナーちゃん…これは…うふふ♪)
「ナーちゃん、歩さんの荷物は私がお預かりしますから…お茶の一杯でも出して差し上げたらいかがでしょう?」
「えっ!?」
「大家さんなんですから、入居者のご家族におもてなしをするのは当然の務めですわよ。という訳なので一樹さん?」
「ん?えっと…」
「これは申し遅れました。私はアリスでございます。ナーちゃんの『まぶだち』で、歩さんにもいろいろとお世話になっておりますわ」
「これはご丁寧に…西沢一樹です」
トントンと話を進めていくアーちゃんに、戸惑う暇も無い。 これこれ、この慌しさだよ、私が求めていたのは。やっぱり主役って忙しいんだよなぁ。
「さぁ、ナーちゃん。立ち話もナンですので」
「お、おう!一樹、時間は大丈夫か?」
「え…大丈夫も大丈夫!この後ヒマすぎて死にそうなくらいだよっ!」
「じゃあ…私の部屋へ来ないか?茶の一杯でも飲んでけ」
アーちゃんの勧めるがままに一樹を招き入れた。後になって思えば、この時にはもうハメられていたというのが分かるんだよなぁ…。
「その…なんだ、ホントに久しぶりだな、一樹」
「うん、ナギさんもお元気でしたか?」
「まぁ色々あったけど…とりあえず今は元気だぞ」
失恋したり人生に絶望したりそこから這い上がってひとつの事を成し遂げたりと、このスペースだけでは語り尽くせない程の経験を私は積んだ。前に一樹と会ってからこれまで本当に色々とあったけど、家族や友達のおかげで今の私がいる。今いる場所(ここ)というものは、それほど悪くはないと思っている。
「一樹の方は、どうだったか?」
「僕は…ずっとずっと、ナギさんに会いたいと思ってました!」
「え…!?」
そんな、いきなりそんな事をぶっこまれても、心の準備というものが…!こんな風に真正面から言われるだなんて思ってもみなかったし、どーすれば…?
コンコン
「失礼いたします。お茶をお持ちしました〜!」
「「ファッ!??」」
なんとも微妙な空気をぶち破ったのは、我が執事ハヤテだった。テキパキとテーブルにティーセットを準備していく姿に、私も一樹もあっけにとられていた。
「一樹さん、ごゆっくりなさっていって下さいね♪それでは失礼いたしました!」
「えと、どうも…」
「お、おいハヤテ!」
足早に去っていくハヤテを扉の外で呼び止めた。さっきの一樹との話を聞かれていたんじゃないかと思ったからだ。
「お嬢様、どうされましたか?」
「さっきの一樹の言葉、聞いてたのか?」
いぶかしげに聞く私の表情などお構いなし、私の質問に対してこの執事がしたリアクションは… 「満面の笑みで親指を立てる」というものだった。
「グッドラックですよ、お嬢様♪…では!」
「おいハヤ…」
テと言い切る間もなく去って行った。…アイツ聞いてたな絶対。 とりあえず、待たせている一樹にも悪いと思ったので部屋に戻る。
「すまん、待たせたな」
「いえいえ、お帰りなさい」
テーブルに目をやると、まだ紅茶には手を付けていないようだった。一樹のヤツ、私の事を待っててくれたのか…。
「せっかくの茶を冷ませてしまって申し訳が無い。粗茶だが、どうぞ召し上がってくれ」
「はい。では頂きます…」
ハヤテの淹れた紅茶だ。まずいはずも無く、絶妙な味と香りが舌を包む。 一樹の方も喜んでくれている様子だ。
「美味しい…すんごく美味しいです!」
「だろう?おかわりもあるぞ」
ハヤテのお茶の香りがさっきの微妙な空気も消し飛ばしてくれたようだった。が、冷静になってみると私の方が一樹の言葉の本心が気になって仕方が無くなってしまった。
「で、一樹。さっきの話に戻ってしまうのだが…」
「え?」
「その…まだ、私の事を…」
「……」
続く言葉が出てこない。一樹の方も、私からの言葉を待っているようだった。そうならないように言葉を選んだはずだったのに、自分から先程の空気を蒸し返してしまった。
コンコン
「ナギ〜、一樹くん〜。クッキー焼いて来たわよぉ〜♪」
という言葉と共に部屋に入って来たのはヒナギク。ハヤテやマリアならまだ分かるが、なんでお前が来るんだよ!?
「ヒナギク!誰が入って良いと言った!?」
「え?アリスからお茶菓子を出すよう頼まれて…。いらっしゃい、一樹くん!」
「こんにちは、桂さん。姉ちゃんがいつもご迷惑を…」
「こちらこそ歩にはいつもお世話になってるわ…どうぞ、ごゆっくり〜!」
「お、おいヒナギク!」
ハヤテの時と同様に、部屋の扉の外で呼び止める。間違いなく聞いていただろうけど、一応聞いておく。
「どうしたの?」
「お前も、私と一樹の話を…」
いぶかしげに聞く私の表情などお構いなし、私の質問に対してこの生徒会長がしたリアクションは… 「満面の笑みで親指を立てる」というものだった。
「私は、いつだってナギの味方だからね!がんばれがんばれ♪」
「そうか、それなら安心…ってオイ!そうじゃないだろ!」
ツッコミを入れた時には去ってしまっていた。コレは間違いなくアーちゃんからの刺客だろうな…。 とりあえず、再び待たせてしまっている一樹のもとへと急ぐ。
「何度もすまない、待たせたな」
「いいえ、お構いなく…」
「ま、まあせっかく作ってくれたんだから頂こうか」
「そうだね、頂きます!」
二人でクッキーを食べ始める。あのヒナギクが作ったクッキーだ。まずいはずも無く、上品な甘みが口の中を満たしていく。
「美味しい…桂さんて料理も上手なんだ。ウチのアホ姉ちゃんとは大違いだ」
「一樹、ヒナギクの事知ってるのか?」
「うん、たまに姉ちゃんと遊びに家に来るんだ。と言っても、ほとんど姉ちゃんが勉強を見てもらってるみたいだけど…」
「そうなのか」
一樹は一樹で、前に私と会った時から新しい人間関係を作っているようだった。
――もしかして、ヒナギクの事を好きに…。
ふと頭をよぎった考えが、どんどん心の中で増幅していって、身に覚えのある痛みとして私の胸を締め付けた。この痛みは…もう二度と思い出したくない感覚だった。 なんで?どうしてだ?私は私の心に一樹を近づけさせなかったのに…。
「ヒナギクは強くてかっこいいし、何でもできるし、みんなが憧れてるからな…私なんかじゃ敵わない、いい女だ」
「ナギさん?」
「ハムスター…お前の姉だって、凄いヤツだよ。失恋なんかものともせずに自分の道を突っ走って、私なんかじゃ…」
「ナギさん!」
「!?」
急に大声を出す一樹。その目からは、私の言っている事を真っ向から否定しようという気持ちがはっきりと見えた。
「ナギさんだって、素敵です。気品があって、素直で、壮絶にキレーで…そんなナギさんに僕は一目惚れしたんだ!」
「一樹…違う…」
違うんだ…私なんてガサツで、ひねくれ者で、ヒキコモリで、耳年増な勘違いで人を好きになっちゃうマセガキで…お前が言う私なんて…ただの勘違いなんだ…。 そう思っていたけど言葉に出来なかった。口にしたら、それまでガマンしていた何かが爆発してしまいそうな予感がしたからだ。
ドンドン
「ナギちゃん〜、一樹〜!あんたたちいつの間にそんな仲になってたのかな?」
「ハムスター!?」「姉ちゃん!?」
部屋に充満するシリアスムードにもお構いなし。練馬のラヴ・ハンターことハムスターが登場。私と一樹の肩を両腕に抱え、グイグイと揺すってくる。 今度はコイツかよ!もうたくさんだぞ!!
「いいよいいよ〜。人をスキになるってとっても素敵な事だね!ラヴ万歳!」
「なんだよ、ナギさんの部屋に気安く入ってくるんじゃねーよ!」
「弟よ、照れるな照れるな♪あ、味噌煮込みうどんならすぐ作れるけど、ナギちゃん食べる?」
「あ、じゃあ頂きます…って、オイイイイイイ!!もういい!一樹早くそれを飲め!出かけるぞ!!」
堪忍袋の緒が切れた…というほど怒ってはいないけど、もううんざりだ!どいつもこいつも私の主役を邪魔して!普段からあんなにハヤテとヒナギクの引き立て役を買ってやってるんだからたまには譲れというのだ!
「え?ナギさん?」
「ココじゃ真面目に話が出来ないと言ってるのだ!どーせこの後はマリアが控えているんだろう、ハムスター!?」
「え"っ?何故それを…」
「ほうら見ろ。そーゆーワケだ一樹、早くしろ!」
「ハイっ!ごちそうさまでした!」
一樹にカップの半分くらい残っていた紅茶を一気に飲み干させている間に、ご丁寧に用意してあった袋にクッキーを詰めた。私がこう言う事を見越していたかのような周到さに、この時は気付けなかった。
「ではハムスター、私たちはこれから出かけるが…ついて来るなよ?絶対ついて来るなよ!?」
「それは逆について来てって事なんじゃ…」
「ちがーう!!行くぞ一樹!!」
「ハイッ!」
手早く上着を羽織り、一樹の手を引っ張って部屋を後にした。部屋にはハムスターのヤツを残してしまったが…特に見られて困るようなものなんて…。(無いとは言ってない
「アレ、お嬢様。お出かけですか?」
「珍しいわね、ナギが休みの日に外に出るなんて」
「しらじらしいぞ、バカップルどもが!」
玄関で靴を履いていると、やっぱり現れた刺客その1・その2。ミュージカルのようにセリフにポーズを付けて来る様子は、明らかに誰かの訓練を受けているのを確信させた。
「え、ハヤテ。ナギが私たちにヤキモチを焼いちゃうくらいお似合いカップルだなんて言ってるわよ」
「お嬢様がそこまで僕たちの事を祝福して下さってるんですよ、ヒナ!愛してます!」
「ハヤテ…私も愛してる…!!」
「あー!もー!なんなのだコイツら!!」
「まあまあナギさん。あ、お二人ともお茶とクッキーご馳走様でした。」
「「いえいえ、お粗末様でした♪」」
ホントに感心してしまうくらい息ピッタリの二人。一樹の受け答えのはずなのに…ハッ、まさか一樹すらも仕掛け人だなんて事…無いよな?
「そのラブラブユニゾンはやめろ…」
「まあまあナギさん。行きましょう」
「そうだな、お前ら絶対ついて来るなよ!」
「え、ナギ。それって、ついて来てビデオ撮影してくれっていう…?」
「ちがーう!行くぞ、一樹!!」
「ハイ、お邪魔しました」
「「いってらっしゃーい♪」」
あのウブな二人があんなバカみたいな返しが出来るはずが無い…アーちゃんの仕業に違いないな。あの短時間でどんだけ仕込むんだよ…「ガ●使の笑っては●けない」かよっての!
「それで…ナギさんはどこに行きたいの?」
「うーん、コレと言って無い。アパートだと話せないからっていうだけだったし。どこでもいいぞ!」
「ん、今どこでもいいって言ったよね?じゃあ、僕に任せて!」
「うむ。…で、どーするんだ?」
「そうだね…じゃあこないだは電車だったし、今度は路線バスに乗ろう!」
「おおっ、バスは学校とかで乗った事はあるが路線バスは初めてだぞ!乗ろう乗ろう!」
それからの行動は全て一樹にプランを任せた。路線バスに乗ったけど、停留所に着くたびにラブラブの刺客が乗り込んでくるなどという事は…無かったぞ。一応。 終始嬉しそうな笑顔を私に向けてくる一樹。その表情を見てると、さっきまでカリカリしていた自分が妙に馬鹿らしく思えてきて、純粋に楽しいと思えた。
「いやぁ、路線バスというのもなかなかだったぞ!」
「ナギさんに喜んでもらって僕も嬉しいよ」
「途中『パチンコ』の『パ』の字だけ電飾が壊れてたのはドキッとしたけどな」
「それはなんともツッコミづらいネタだね…」
初めての経験だったバスツアーはやっぱり刺激的で、私の興奮もしばらく醒めなかった。
「あ、ナギさん。そこに喫茶店があるからちょっと休憩にする?」
「うむ、そうだな」
「さっきのお話の続きも…そこで聞かせてもらえばと…」
「…うむ」
先程の興奮とは別のベクトルでのドキドキが胸を襲った。 一樹に促され立ち寄った喫茶店。入ってすぐ左側にポツンと一つだけあるボックス席、他の客席は入口から右側にしかない。込んだ話や他人には聞かれたくない話をするには最適な空間のようだった。なんか見覚えのあるような喫茶店だったけど、そんな事を気にしている余裕はこの時の私には無かった。
◆
「と、とりあえずなんか頼むか?」
「うん…」
なんとも落ち着かない気持ちを抑えるべくエスプレッソを注文。ストローでカフェオレをすする一樹は物珍しそうに私のカップを眺める。
「やっぱりナギさんは大人だなぁ。僕はそんな苦いの飲めないや」
「なぁに、人前だからカッコつけてるだけだ」
「そーゆー事をサラッと言えちゃうのも僕にはできないな」
舌を襲う強い苦みと、なんともいえない良い香りが脳みそを醒まさせる。ようやく落ち着いて話せそうだ。 一樹は私が話を切り出すタイミングをずっと待ってくれていたようだった。
「…以前私は、先約がいるなどとお前に言った」
「……」
唐突に話を切り出した。「さぁ私の失恋話を始めますよ」などと宣言はしたくなかったのが正直なところだ。 あの時の私は、ハヤテと両想いだと信じて疑わなかった。だから、自信満々に自分の心の一番奥には一樹の想いは届かないと言い切った。ハヤテの心の一番奥に自分の想いが届いてない事にも気付かずに。 勘違いなのも知らずに一樹の想いを寄せ付けようともしなかった自分がどうにも滑稽に思えて悔しくなった。一樹の事だからきっと気にするなと言ってくれるのは分かっていたが、それを分かりながらも甘えてしまうであろう自分にさらに悔しさが増した。
「だがそれは私の勘違いだったんだ。そう、私の一方的な勘違いで「僕は今でもずっとナギさんが好きだ」
私のネガティブ街道まっしぐらなセリフにとんでもない言葉をかぶせてきやがった一樹。 その表情はハムスターのヤツが恋の話をする時のものとよく似ていた。
「その先約というのが誰の事だったのかは僕には分からない。けど、大事なのは今ナギさんがどうしたいかって事なんじゃないかと思うよ。過去は過去、思い出として胸に残しても、それにこれからの未来を縛られる事は無いよ。ナギさんは、僕の事…どう思ってる?」
「どうって…その…言わなきゃダメか…?」
「今すぐじゃなくても良いよ。ナギさんが言ってくれる気持ちになるまで、ずっと待つから…!!」
今いる場所(ここ)はそれほど悪くはない。それは確かだ…。ただ、自分の気持ちに関しては、時間が止まってしまっている。ハヤテが好きだった時と今とで、自分のいる場所は変わらない。 でも、一樹は今を精一杯生きている。自分の気持ちと向き合って、前に進み続けている。こんな私のために人生の大切な時間を止めるとまで言っている。 ならば私も…少しずつで良いから、前に進まなくっちゃな。
「ははっ、やっぱりきょうだいだ。ハムスターのヤツと同じような事を言うんだな」
「えっ、姉ちゃんと同じ…ちょっと恥ずかしいよ…」
「照れる事じゃないぞ。家族ってのはいいものなんだ。ただ、いつもそこにあると思うとありがたさを忘れてしまうだけだ」
「ナギさん…」
家族に関する話は…また今度にしよう。ただ、これもハムスターからの受け売りがほとんどだ。
「ありがとう一樹。少し気持ちが楽になったよ。で、その、一樹さえ良ければなんだが…またこうして一緒に出かけたりしたいと思ってるんだが…良いだろうか?」
「も、もちろん!ナギさんがそう言ってくれるなんてメチャクチャ嬉しいよ!!」
期待と違わぬ反応にこそばゆい感覚を覚えた。が、これから一樹と仲良くしていく上で一つだけ勇気を出してみたい事がある。
「ナギだ」
「!?」
「いい加減、そんな他人行儀な呼び方もいいだろう?友達なんだし。…なんなら『ナーちゃん』でもいいぞ?」
「ナーちゃん…?」
「ああ、この呼び方は特別なヤツにしか許してない。私にとって一樹がそうなって欲しいと思っているんだ」
自分としてはかなり勇気を出したと思う。この私が再び前に進みだす一歩目を一樹に託してみようと決めたのだ。
「そんな…僕が…」
「ははっ、光栄に思うがいいぞ」
「じゃあ…『ナーちゃん』って呼ばせて頂きます!」
「うむ!恥ずかしがるんじゃないぞ!」
めでたく、私の勇気が身を結んだ。呼び方だけじゃない、これから幾度と無く勇気を出す時が来るだろうけどくじけずに頑張ろうと思う。一樹と一緒に今を精一杯過ごしたい。
「では帰るか!良い店だったな…あっ」
「ん、どうしたの?」
「いや、なんでもない。人生というのは実に奇妙だと思ってな」
「??」
心がひと段落してからようやく思い出した事実は、なんとも皮肉で滑稽だとも思ったが、それも人生の一部として楽しんでおこうと思う。自分で言うのもなんだが、少し大人になれたんじゃないだろうか?
◆
一樹はアパートまで送ってくれた。帰ってきた私を出迎えたのはさらなる刺客…ではなく、そのプロデューサーであろう美少女だった。
「おかえりなさい、ナーちゃん。縁側でお茶でもご一緒しませんか?」
「ただいまアーちゃん。では是非頂こうか」
今日の一連の刺客のドコからツッコんでやろうか迷いながら座り、差し出された湯飲みの緑茶に口をつけた。 おそらくマリアが淹れたのであろうお茶は、絶妙な苦味と香りで私の舌を踊らせた。
「あーあ、ナーちゃんの一番の特別は私だと思っておりましたのに…。アリス寂しいですわ…」
「アーちゃん!?そそ、そんな事無いぞ!アーちゃんだって私の大事な親友だ!一樹は一樹だ!」
私の方からズバっと行こうと思っていたのに先を越された…慌てて返したため、日本語が良く分からない感じになってしまった。 てゆーか、なんで呼び方の件を知ってるんだよぉ!?
「ジトー、ムキになるところがますます怪しいですわ」
「そんなこと無いって!」
「うふふっ、冗談ですわよ。良かったですわね♪微力ながら私も応援してますわよ(ニヤリ」
「ゲゲゲ…それって、ハヤテとヒナギクみたいな…?」
コレまで私はあいつら二人を煽ってくっつける側だったのが…一気に逆転してしまう!やってる自分で言うのもなんだが、アレはかなーりえげつないぞ…!
「ナーちゃんがお望みとあらば♪」
「や、やりすぎはイカんと思うぞ!」
「あらあらうふふ…素敵な恋になると良いですわねぇ〜」
「アーちゃん…こうして見るとなんて恐ろしい子なのだ…!!」
なにはともあれ、新しい恋が芽生えそうで今回のところはめでたしめでたしだ。 うーん、やっぱり私が主役だと話に華があるというものだぞ! さて次回は、「しあわせの花 Cuties」から「ナギナギカーニバル」にタイトル変更、乞うご期待なのだ!
…え、ダメ? ちぇ〜、ケチ。
◆
「あの〜アリスさん。私の出番はもう来ないのでしょうか?あと、この服はやっぱり恥ずかしいのですが…」
「大丈夫ですわマリアさん!『鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホーホケキョ』ですわ。あとその服はとってもハイセンスですからご安心ください。ヒナは絶対着てくれないので嬉しいですわ♪」
「こんなオチに使われる私の存在って一体…」
刺客控え室で大きいアテネのコスプレをして待ちぼうけのマリアさんでした。
【つづく】
--------------------------------
【あとがき】
久々の主役となったナギの新しい恋のお話でした。 最初の段階では「ハヤテとの関係が勘違いだったと知って絶望する話」だったのですが、ナギにネガティブなセリフばかり言わせてしまう事になるのでやめました。まさかハヤヒナ以外でカップルが誕生してしまうとは…と自分でも思っております。
一樹くん…いいキャラだとは思うんですが、原作での出番がありませんねぇ。あんまりにも出番が無さ過ぎて、歩と姉弟なのをナギに知られてなかったんじゃないかと思います。(うろ覚え ナギのロマンス展開を一向に進めないのが一番の原因で、ハヤテとの誤解とかがポンポン進んでいけば出てくるんじゃないだろうかと勝手に予想しています。このSSでハヤヒナがくっついて一番得をしたキャラかもしれませんね。
そしてハヤヒナ、ついに脇の盛り上げ役に。笑 ナギにも言わせていますが、年末恒例の「笑ってはいけない」の刺客をイメージしています。今までやられた分という事で、かなり張り切っていた模様です。
マリアさんは…ごめんなさい。今度きっと活躍する時が…!(来るとは言ってない
さて、カップルとは言いましたがまだまだ友達以上恋人未満の第一歩にしか過ぎません。が、この一歩がこれまで「ハヤテが好きだった」で止まっていたナギの心を動かす大きな力としたいと思って書きました。今後の活躍があるのでしょうか?乞うご期待。
最後に小ネタとして、喫茶店を出る際のナギのセリフ・モノローグについて特に明記しておりませんが、ピーンと来て頂けたらすんごく嬉しいです。
次回は、アリスちゃんに出番を奪われまくっているあの縦ロールキャラのお話を予定しています。また時間がかかりますがどうぞよろしくです。 ご感想・ご質問等お待ちしております。 では、ここまでありがとうございました!
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Re: 【第5話更新】しあわせの花 Cuties ( No.16 ) |
- 日時: 2015/01/19 22:40
- 名前: どうふん
ロッキー・ラックーンさんへ
着ぐるみの話とはまた違ったほのぼのした楽しいお話でした。 ナギの気持ちはともかく、一気にストレートな行動に移ってしまうところはちょっと急展開すぎるかな、とも感じましたが、考えてみれば、瞬間的に周囲を思うがままに操るアリスの力が凄いのでしょう。 ナギ、これを機に引きこもりを捨ててしまえ。
しかし、マリアさんに関しては・・・その格好で登場したら、逆効果のような気がするのですが。 それともこれは単にアリスのいたずらだったのでしょうか? まあ、そのぐらいのことはやりかねないお姫様だとは思いますが。
どうふん
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Re: 【第5話更新】しあわせの花 Cuties ( No.17 ) |
- 日時: 2015/01/21 12:34
- 名前: タッキー
- 参照: http://hayate/nbalk.butler
- どうも、タッキーです。
なんというか、アリスちゃん恐るべし。人前でヒナさんがあんなセリフを言ってくれるとは。 それにしてもナギちゃんのフリっぽいセリフは面白かったです。そのあと一樹のことを意識している感じも可愛かったですし、一樹のまっすぐな感じもとてもよかったと思います。ただ、薄々予想していたとはいえカップリングがかぶってしまっちゃったので少しこれからのネタが乏しくなるというか・・・。
ま、なんにせよロッキーさんのナギカズも応援しています。 それでは
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【感謝】レス返し ( No.18 ) |
- 日時: 2015/01/22 01:57
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- 皆様ご感想ありがとうございます。
>どうふんさん 急展開であるのは本家「Cuties」同様、1話に一人の物語を詰め込んでおりますのでご容赦頂ければと…とりあえずご指摘の通りアリスちゃんのおかげ(せい?)です。ナギが直情的に行動してしまうような展開にプロデュースしてくれています。 この先、二人でいろんな場所に行く(はず)ので、ヒキコモリ脱出の日は近いのかもしれません。
マリアさんはナギが出て行かなかったらあの格好で何事もなかったかのようにお茶のおかわりを持ってきた…かもしれません。
>タッキーさん アパートでの一連のアレは当然のように録画されてるとかされてないとか…。動画研究が捗りますね。 ナギは、一話限りでの主役なのでとにかくやってほしい事を詰め込んでいます。まさにヒロインな彼女は次に出てくる機会があるのかどうか…。 原作の感じを見ていても、ナギ×一樹の組み合わせはイイと想っています。あんまり採用する書き手さんはいませんが…。まあ、ネタの重複は似たもの同士発見だと思ってお互い喜びあいましょう(笑
それでは、ありがとうございました。
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【第6話】桂雪路 ( No.19 ) |
- 日時: 2015/03/03 21:47
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
「次回は、アリスちゃんに出番を奪われまくっているあの縦ロールキャラのお話を予定しています」と言ったが、ありゃ嘘でした。去年はサボ…出来なかったヒナの誕生日記念のお話となります。 果たして「キューティーズ」に入れて良い人物なのかどうかは定かではありませんが、気にせずいきましょう。
それではどーぞ!
------------------------
今日は3月4日。我が妹、ヒナギクの誕生日…の翌日。 昨日は学校行事のヒナ祭り祭りで全校生徒からのお祝いがあったため、我が家での誕生祝いは一日ずれた今日となった。土曜日という事もあり、彼氏のハヤテ君と(自称)愛娘のアリスちゃんが泊まりに来て家族5人でのパーティとなった。
「ヒナぁ、起きてる?入るわよ〜!」
「お姉ちゃん…。どうしたのよ?」
宴も終わり各人が部屋で休みに入ろうとする深夜、飲み足りない私は一升瓶を片手に妹の部屋へ突撃した。幸い、彼氏とのお楽しみタイムが終わった後のようで、パジャマ姿のヒナが寝に就く直前だった。
「どうしたのとは水臭いわねぇ。せっかくの誕生日なんだから二人っきりの姉妹水入らずで語らおうじゃないの!」
「またお酒なんて持ってきて…。いい?私は高校生、お姉ちゃんは先生なのよ?」
「今この瞬間、この空間に先生も生徒も無いわよ。私とその妹のアンタがいる、それだけよ。分かったらお姉ちゃんのグラスに注ぎなさーい!」
「んもう…私はジュース持って来るから、そこで待ってなさい」
酒に付き合うのは拒まれつつも、追い出されないあたり妹の機嫌も悪くないようだ。 さて今回の主役は私、白皇学院の美人教師桂雪路よ。みんな待たせたわね! お姉様の威厳というヤツを見せてあげるわ!
しあわせの花 Cuties 第6話【 桂雪路 】
「「かんぱーい」」
白濁色のジュースの入ったグラスと、透明な日本酒の入ったグラスが綺麗な音を奏でる。私はなみなみ注がれたそれを一気に飲み干した。
「かーっ、うんまーい!ヒナも飲めばいいのに…」
「あと3年たったらね」
あと3年…長いような短いような年月ね。その頃には私は…ゲッ、30越えてるじゃないの…。
「それにしても、お姉ちゃんがお金をせびる以外で私の部屋に来るなんて珍しいわね」
「私だって、たまには姉っぽい事をしたいと思ってんのよ。可愛い妹は最近じゃ彼氏やお子ちゃまに夢中で、いつだったかみたく『お姉ちゃんお姉ちゃん』言わなくなっちゃったし…」
「それは成長の印として喜んでもらっても良いくらいだと思うけど…」
以前は家に帰ってくると必ずいたヒナ。今では住む場所が変わって、頼りにする存在も変わって、一緒に過ごす時間はかなり減った。それを妹の成長を喜ぶ反面、少し寂しかったりもするのも確かだ。宿直室に入り浸って帰って来ない私も悪いけど、お金が無いのだから仕方が無い。
「とにかく!どーでもいいからお姉ちゃんにもっと構って欲しいのぉ〜!」
「はいはい。で、お姉ちゃんは可愛い妹に何を話してくれるのかしら?」
「酒が無くなった。注いで〜!」
「はいはい」
本来なら主役でもてなされる側になるはずのヒナが付きっきりでお酌をしてくれる。こんな大層なご身分は私にしか許されないんだろうねぇ〜。
◆
「ハヤテ君とは、付き合ってどんくらいになるの?」
「えーと、半年くらいね」
他愛無い話にも飽きてきたので、妹カップルのラブラブっぷりをからかう事にした。 恋の話を振っても動揺する事が無くなったヒナの様子がちょっと期待はずれだった。
「もうチュウとか、キスとか、接吻とかしちゃったの?」
「何よそれ…てゆーか、キスしてる時にお姉ちゃんが入ってきた時があったじゃないの!」
「そうだったわね、ゴメンゴメン」
「反省の色が見えないわよ」
要らぬ話をむし返してしまった。アレは私が帰って来るやいなやお義母さんが「ヒナの部屋に行ったら面白いものが見れる」とか言い出して、その言葉に釣られてホイホイ行ってみたら絶賛イチャイチャ中で、あんまりにもピンク色な空気に耐えられなくて突入しちゃったってだけなのよ!私も被害者なんだってば!(←誰に向けての言い訳なのかしら?by桂ママ)
「でも、ヒナったら大胆よね。いつの間にかあーんなオトナなチュウを覚えちゃっただなんて」
「もう、その話はやめ!また百裂拳をお見舞いするわよ?」
「うわーん、妹が凶暴でこわーい」
確実に大人の女性への階段をのぼっている我が妹に対して、姉の私と来たら…。 まあ言い訳をするのであれば、こういった話に一番敏感な年頃の時に人生の一番のピンチが重なってしまったってのもあるし…今じゃすっかり興味も無くなってしまった理由にはならないものかしらね?
「で、アンタ今は幸せなの?」
「それはもう、すっごく幸せよ」
「そりゃあ良かったわね。やっと手に入れたその幸せ、大事にしなさいよ?」
「もちろん!」
何気なく聞いた風だけど、本当は内心ドキドキだった。あんな小さな時期から餓死しかける事すらあった生活を強いてしまったヒナに対しての罪悪感に今でもたまに襲われる事があるからだ。 今の両親が引き取ってくれ、それに何よりヒナ自身の強さのおかげであの頃の不幸からは解放されはしたけど…いつの日かヒナにあの時の事を責められるのではないかという不安はこれまでの人生で無くした事が無い。
「でもお姉ちゃん…」
「ん?」
「私は『今は幸せ』なんじゃなくて『今も幸せ』なのよ?」
「…ほう、どゆこと?」
この時の私はヒナの言う事が全く分からなかった。
「お父さんとお母さんがいなくなった時は、確かに不幸だと思った事もあったけど…今考えてみると、お姉ちゃんと一緒だったから私はあの時『も』幸せだったわよ」
「えっ?」
「あれからこの家に養子に入って、学校に通わせてもらって友達ができたり、ハヤテと出逢ったり出来たのは、みんなみんなお姉ちゃんのおかげだって思ってるわ」
「ヒナ…」
イカン、涙が出てきた。 私はヒナにとってあの頃は不幸でしかなかったと思い込んでいた。だって私のせいでこの子にさびしい思いやひもじい思いをさせてしまったから。それなのにこの子は…
「だから、いつもはあんまり言えないけど…お姉ちゃんの事、私すっごく尊敬してるのよ?比べるような事じゃないけど、ハヤテやアリスよりも…誰よりもよ」
「この…可愛いヤツめ!」
私はヒナに抱きついた。涙を見られないように、罪悪感があった事を悟られないように。
「ちょっ!なに抱きついてるのよ!?てゆーかお酒くさっ!もう、離してってば!!」
「うーん、ヒナはいい匂いがして抱き心地が良いわねぇ〜♪もうちょっとだけ〜!」
「んもう…今日だけなんだからね!?」
「やったー!ヒナだいすき〜!」
ヒナの身体に身を委ねて胸の昂ぶりをしずめさせる。ヒナが小さかった頃はいつもこうしていた事を思い出す。 それと同時にもう一つ考えていた。私の人生を支えてきた一つの言葉を、ここで告白したいと思う。
「ヒナ…一度しか言わないから、よーく聞きなさい!」
「ん?」
「私にとってアンタが人生の全てだったわ。もう何度イヤんなって逃げ出そうと思ったか数え切れないくらいだったけど…ヒナがいると思ったから何でも出来た。ヒナは私の…『しあわせの花』だったから」
「それって…ハヤテも言ってた…」
「そーなのよ。あの子に『ヒナのどこが好きか』って聞いたら、10年以上ずっと私が思ってたのとおんなじ事を言い出してさ。もう嬉しくって嬉しくって…酒が止まらなかったわよ!」
読者の皆は何度も目にしている言葉かとは思うけど、この言葉をハヤテ君の口から聞いた時には正直鳥肌が立ったほどだ。出会って間もない彼が私と同じ事を考えていた事にシンパシーを感じたと同時に、ずっとずっと私を支えてくれていたヒナが自分以外の人も支えているんだと少し寂しくもなった。他にも色々思うところはあったけど、私と同じ事を思っている彼は、私と同じくらいこの子を愛してくれるだろうと信じる事にした。
「そうなんだ…って、嬉しくてもそうでなくてもお姉ちゃんのお酒は止まらないでしょ」
「はっはー。バレた?」
「んもう!…でも、ありがと」
「へ?」
普段ヒナの口からは聞き慣れない言葉が出てきて耳を疑う。まあヒナにお礼を言われるような事を普段からしないので当然っちゃあ当然だけど。
「ありがとうって言ったのよ。私、お姉ちゃんの妹で良かった…。お姉ちゃん♪」
「おっと!甘えんぼさんね〜、ヒナは」
さっき私がやったように思いっきり飛びついてくるヒナ。胸に顔を埋めて匂いを嗅いで来る仕草は小さな頃から変わらないこの子の愛情表現だ。 こんな風に甘えてくるだなんていつ以来だろう?こんなに大きくなって…それでも変わらずに私を愛してくれているという事に胸が熱くなった。
「そっちが先にやってきたんだから、お互い様でしょ?」
「それもそうね、思う存分お姉ちゃんに甘えなさーい」
明日は日曜日。この特別な夜をまだまだ思う存分楽しめる事に心から感謝したい。 恋人でも親子でもない。それでも最愛の存在と言える関係…二人っきりの姉妹。たまにはこんな話も悪くはないわよね? おめでとう、ヒナ。ありがとうヒナ。
【つづく】
------------------------
【あとがき】
主人公補正が入りまくり、普段のダメっぷりはどこへやらな雪路さんとのお話でした。 書く予定はまったくありませんが、雪路は前作の主人公的な立場としてハヤテと同じ事を考えていましたという設定です。 なんかあとがきがあんまり思い浮かばないので追記するかも…という形で締めさせていただきます。
ご感想・ご質問などお待ちしております。 ありがとうございました。
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: 【第6話更新】しあわせの花 Cuties【ヒナ誕記念】 ( No.20 ) |
- 日時: 2015/03/04 00:17
- 名前: タッキー
- 参照: http://hayate/1212613.butler
- ヒナさん、そんなこと言ったらだめじゃないか。涙で・・・涙で画面が見えなくなってしまうじゃないか!!
どうも、今回はイラストの方に集中させてもらったタッキーです。
自分はヒナギクさんのどこが好きかと聞かれたら「なんだかんだで妹なトコ」と、その他もろもろの理由とともに即答しますね。別に妹キャラが好きなのではありませんよ?いいなぁ、と思ったキャラが妹なことが多いだけであって、決して妹好きとかじゃないです。はい。 それにしてもカッコいいときの雪路はとてもカッコいいですね。カッコいいときは・・・ でも、なんだかんだ言ってヒナさんの中でハヤテと同じくらいかそれ以上にカッコいい存在なんだと思っています。やっぱお姉ちゃんっていいですね←さっきまで妹、妹言ってた人間のセリフ 自分のハヤヒナにもちょうど二人の年の差(10才差でした)姉妹がいますので、こんな展開をついつい考えてしまいます。アカリちゃんもいい意味で雪路っぽくなるでしょうね〜。
最後にヒナギクさん誕生日おめでとうです!たくさんいるキャラクターの中で一番幸せになって欲しいです!
それでは
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【感謝】タッキーさん ( No.21 ) |
- 日時: 2015/03/04 05:58
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >タッキーさん、ご感想ありがとうございます。
確かに、「なんだかんだで妹なトコ」には同感です。普段の頼れる姿から一変して限られた人にしか見せない妹っぽさがツボにハマるんだと思います。 自分が良いと思ったキャラは…なぜか金髪で幼く見える娘が多いんですが、普通ですよね?はい。(ニッコリ
雪路はこの作品のヒナの中の三本柱の一人です。もう二人は言わずもがな…。 その三人の中でも一番出番に恵まれない前作主人公的存在として、これからも細々と活躍してもらおうと思っています。
さてタッキーさんとこの姉妹のやり取りも楽しみにしております。 それでは、ありがとうございました。
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しあわせの花 Cuties【ヒナ誕記念】 ( No.22 ) |
- 日時: 2015/03/04 21:38
- 名前: どうふん
- ロッキー・ラックーンさんへ
久々にロッキー・ラックーンさんの新作を読んでほのぼのとした気分になりました。 退職金の前借りで宝くじを買いこむ教師とは思えない存在ですが、ヒナギクさんからあれだけ尊敬され愛されているお姉さんはやっぱり立派なところもあるわけですね。
常日頃堕落しているのは、ヒナギクさんを育てる間に人生のエネルギーほとんどを使い果たしたからではないか、と思っていますが・・・
それにしてもあの行状でありながら、このお姉さんは常に愛されて幸せで、ある意味羨ましい存在ですね。 それだけヒナギクさんを育てた姉、という財産は凄いのでしょう。 王貞治氏を育てただけで野球の歴史に語り継がれる荒川コーチを連想する私は間違っているでしょうか。
ただ、このまま歳を重ねるとしんどくなるぞ。年相応の分別はそろそろ身に着けないと・・・
どうふん
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【感謝】どうふんさん ( No.23 ) |
- 日時: 2015/03/05 06:07
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >どうふんさんご感想ありがとうございます。
ダメ人間雪路もお姉ちゃん雪路も紙一重で同一人物ですかね。普段はクズなのにここ一番で閃きの一手を思いつくカイジのように。 究極的な事を言ってしまえば、ヒナを育てる使命を終えた(窮地を脱して桂家の人にヒナを託した)彼女にとって、残りの人生は道楽なのかもしれません。だからあれだけ破天荒な事ばかりしているんじゃないかと思ったりもします。
王さんとヒナの共通点としては素材自体が一流なのだと思います。一本足打法も、白皇学院の生徒という立場も、扱う人間があってこそなのではないでしょうか?って一体なんの話をしているのやら。巨人ファンなのでちょっと嬉しいですが。
生まれ年はハヤテたちと同じはずなのに雪路の年齢に近づきつつある今日この頃。私も人のふり見て我がふりも直そうかと思います。 ホント、何を話しているのやら(笑
そんなこんなで、毎度の事ながらありがとうございました。
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Re: 【第6話更新】しあわせの花 Cuties【ヒナ誕記念】 ( No.24 ) |
- 日時: 2015/04/26 17:24
- 名前: 明日の明後日
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=373
- 技巧に走りがちな気がしている今日この頃。こんにちは、明日の明後日です。
1スレ目から読み始めたのがいつの頃だったか既におぼろげですが、漸く読み終えることができました(苦笑
さて、ここまで読んだ上での率直な感想を申し上げますと、ハヤテくんが随分とアレな感じですね。暴走気味というかどうしたんだよお前って感じですw あれですか、幸せがオーバーヒートして脳の回路が短絡してリミッター解除的な(意味不明 高校生男子らしい思考に関してもですが、随所に出てくる ウェヒヒヒ なる下卑た笑い声を、原作では人畜無害として定評のある彼がどんな顔して発しているのか、私には上手く想像できません(笑
そしてアリスの名監督っぷり。実に楽しそうです。 裏から手を回すのはマリアさんの得意分野だと認識していますが、そのマリアさんでさえ手玉にとるとは・・・アリスちゃん、恐ろしい子!
ところどころに作者側からのツッコミが入ったり、キャラソンの歌詞やコアなパロディネタがちりばめられていたりと、ノリノリで書いてるんだなぁということが伝わってきて、読んでいるだけでこちらもモチベーションが刺激されます(書くペースが上がるとは言ってない
本スレではタイトルの通りアニメ4期に倣って色んな人物にスポットを当てていくとのことで、個別にエピソードを考えるのが随分と大変そうですが、本文はもちろん後書きなんかからもやりたいことをやっているんだなというのが窺い知れ、尊敬の念を抱かずにはいられないというかなんというか。 私は某SSでやりたいことを見失って打ち切りにしたという苦い経験がありますので、その姿勢はまぶしく見える訳です(苦笑
支離滅裂で恐縮ですが、この辺りで失礼したいと思います。今後の更新も楽しみにしていますね。 明日の明後日でした。
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Re: 【第6話更新】しあわせの花 Cuties【ヒナ誕記念】 ( No.25 ) |
- 日時: 2015/04/27 21:47
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >明日の明後日さんご感想ありがとうございます。
「太陽と月」が打ち切られて5年半、このSSを始めてから4年。随分と長い時間が経ちましたが、こんな時を迎えられる事を夢見てコツコツ細々と続けてきた甲斐がありました。 打ち切りをきっかけに自分で書いてやろうという思いになった経緯がありますので、ここでご感想を頂いた事は一つの節目に個人的にはなりました。今後も細々とやりたいようにやっていこうと改めて思います。
さて、頂いたご感想について…。 このSSのハヤテ君は健全な男の子なのです。好きなものを好きと言えて、自分の気持ちに素直に向き合える人物でいて欲しいと思っています。原作のほうの彼は刺激とかときめきとかゆうのに心が動かなくなってしまっているフシが見受けられますので…そういった意味では別人といえるのではないかと。ちなみに「ウェヒヒヒ」は、連載開始当時流行っていた血だまり系魔法少女アニメの主人公の笑い方から取りました。
アリスちゃんについてですが、このSSに登場してもらうにつれて愛が深まっていった経緯があります。気付けば私の中のハヤテキャラランク1位を不動のものとしていました。恐ろしい子や!今後とも末永くおつきあいして頂きたいキャラクターです。
では、この後も細々とやっていきますので生暖かい目で見守っていただけたら幸いです。 ありがとうございました。
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【第7話】母親 ( No.26 ) |
- 日時: 2015/08/06 08:38
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
大変ご無沙汰しております。生きてます。
今回は季節はずれの母の日のお話です。もう投稿予定から3ヶ月も経っているのか…(驚愕 それではどーぞ!
------------------------
こんにちは、アリスでございます。 今日は母の日。世間のお母様方がご家族から日頃の感謝をされている日です。 私の家族もその例に漏れず、「ママ」であるヒナのお家にて家族全員でお食事を楽しみました。やはりヒナとハヤテの手作りハンバーグは絶品で、主賓であるおば様からも拍手が起こりました。 お食事の後は、サプライズのプレゼントタイム。雪路さんからはお酒のボトルを、私達3人からはグラスセットを贈りました。ヒナがおば様へ感謝の気持ちを伝えると、おば様の目にはかすかに涙が浮かんでいるのが見えました。 ちなみにその後には私からヒナへサプライズのカーネーションをプレゼントしました。ヒナは照れながらも喜んでくれているようで、私もひと安心。 血の繋がった母子が一組もいないのにもかかわらず、母の日を存分に満喫した我が家なのでした。 さて、今回のお話はおば様のお部屋にお邪魔をして就寝という時間の出来事です。
しあわせの花 Cuties 第7話【 母親 】
「アッちゃん、少しだけお話をしてもいいかしら?」
「ええ、なんでもどうぞ」
寝る仕度を整えておば様の布団に入ると、ヒナの布団と同じでとても温かくて安心できました。
「アッちゃんは、ヒナちゃんの事…好き?」
「ええ、もちろん大好きですわ。今さらなお話ですわよ」
おば様の様子からは、かなり改まった話題が出るような予感がしました。それでも私の思う事はまっすぐ素直に伝えていきます。
「そっか…。ヒナちゃんもね、アッちゃんの事が大好きなのよ。あの子ったら、私と二人でおしゃべりしている時の半分くらいはアッちゃんのお話なのよ?」
「それは初耳ですわね。嬉しい事ですわ!」
その言葉には純粋に嬉しくなリました。分かってはいるけど、嬉しい。本当に自分があの人の事を好いているのだと実感します。
「アッちゃんはヒナちゃんの事をママだって心の底から思えるかしら?」
「愚問ですわ。私の『ママ』はあの方ただ一人ですわよ」
「そっか。ヒナちゃんは幸せ者ねぇ〜」
「ウフフ、それを言うなら私の方が幸せ者ですわよ。無理に押しかけて来た私に対して、まるで本当に自分の子供のように愛してくれているのですから。とっても感謝してますわよ」
ヒナが私を受け入れてくれた事で、私の世界は大きく変わりました。 惰眠を貪っていたばかりの朝は、ヒナの元気な声から始まるようになって…その声から私も元気を分けてもらいました。ただただ暇なばかりだった昼は、ヒナが帰ってくるのを楽しみにする時間になりました。 親友と呼べる存在も出来ました。独り寂しくて眠れなかった夜は、あたたかくて優しいヒナの温もりに包まれるようになって…いつまでもこうしていたいと思うような安らぎを感じるようになりました。 普通の親子であれば普通の事なのかもしれませんが、それは私にとって何よりの心の支えとなりました。
「アッちゃん、私ね…」
「はい?」
「旦那との子供が出来なくて自分の人生に負い目を感じてた頃があってね…。とっても辛かった時期に私の前に現れたのがヒナちゃんと雪ちゃんだったの」
「そうなんですか」
いつになく真剣モードなおば様。きっと、今までヒナや雪路さんにすら話せなかった事なのではないかと思います。
「うん、嬉しかったなぁ〜。『神様は私の事を見捨ててなかったんだ』って思ったくらいよ」
「おば様の事を見捨てる神様なんていませんわよ」
「ウフフ…。だからね、私の『お母さんになりたい』っていう夢を叶えてくれたあの子たちの事を本当に愛してるの。」
「ヒナもおば様の事、とても愛していると思いますわ」
「そうかしら?本当にそう思う?」
「ええ、もちろんですわ!…信じられませんか?」
「ううん、そんな事無いわ。でもね、たまに…本当に時々だけど、不安になるの。私はヒナちゃんの事を愛してるけど、ヒナちゃんは私の事を…どう思っているんだろうって…」
ヒナを疑っている訳ではない。人間ならば誰しもが持っている言いようの無い不安をおば様も感じているのだと分かりました。
「おば様、私の話をしてもよろしいですか?」
「…うん、もちろんいいわよ」
「私には、実の両親がいません。もちろん私も『誰かしらの子供』だと思うのですが…その『誰かしら』というのを知りません」
「アッちゃん…」
「まあ、そんな事は今はどうでも良いのです。私が『ママ』として頼れるのはヒナだけなのです。それと同じように、ヒナが『ママ』として頼れるのはあなただけなのですわ!」
「!!」
「もしヒナが未だに実の両親に対して何か特別な感情を抱いていようとも、あなたがヒナの最愛である事は揺るがない。言い換えれば、あなたがもしヒナの前からいなくなったりしたら…ヒナは絶対に傷付きます。もちろん私もですわよ」
「うん…」
もしヒナが実の両親と再会できたとしても、ハヤテにはもちろん、おば様や私に対してもこれまでとはなんら変わらない愛情を振りまいてくれる事でしょう。 母親が二人という特殊、最愛が二つという特殊、二つなれども偽りなし。母親が二人という幸運は、きっと神がヒナに与えた特別な運命だったのではないかと思います。
「ヒナは私に対して『あなた方、義理の両親から注がれた愛情をそのまま向ける』だなんて言ってくれているらしいですわよ?あなたのヒナへの愛情無しには、今の私も存在しなかったですわよ。ですから…ありがとうございます」
「アッちゃん!」
「うっ!?もがもが…おば様苦しいですわ…もがもが」
「あなたと出会えて良かった…!」
「私も嬉しいですけど…苦しいですわ、おば様!」
大人げも無く、力いっぱいに私の事を抱き締めるおば様。私は苦しみながらもおば様の愛情を受け止めようと必死になりました。
「ゴメンゴメン。ちょっと嬉しいのが抑えられなくって♪」
「んもう、イヤですわおば様!」
「あ、今のちょっとヒナちゃんに似てた」
「そりゃあ、あれだけいつも一緒なら口調の一つもうつってしまいますわよ」
「そっか。仲良し母娘ね♪」
この人がヒナに注いでくれた愛情、それは私が受けている愛情。私がこの愛情を誰かに向けて注ぐ時が訪れたら、それはとても素晴らしい事なのだと思います。いつか、きっと…。
「ええ♪ですから明日もママを喜ばせてあげたいと思いますの!」
「良い娘を持ってヒナちゃんは幸せね。じゃあ私に良い考えがあるわよ〜!」
「是非お聞きしたいですわ!」
今はその愛情を受けるに足る存在を目指して、日々是精進なのでありますわ! 大好きなママのために、私はなんでもしてあげたいと思います。
【つづく】
--------------------------------
【あとがき】
大人を相手にもお悩み相談をこなしてしまうアリスちゃんのお話でした。 本当は母の日に投稿する予定で書いていたのが、間に合わなくなったのでお蔵入り…かと思いきやの投稿となりました。というのも、どうふんさんのSSを読んで親子関係の話を書きたいと刺激を受けたため、書き途中だったこの話に手をつけたという経緯があったりします。
母の日をお祝いしてるけど、そこに血の繋がった親子は一組もいない。というのがミソで、いつぞやにハヤテが語っていた「心の繋がり」を可視化させたような集まりだと感じ取って頂ければ幸いです。
ヒナママの「子供が出来なくて」うんぬんは、もちろんオリジナル設定です。雪路・ヒナギク姉妹が桂夫妻に助けてもらったのと同様に、桂夫妻もこの姉妹の存在に救われたのであったら良いなと思ったので、重い話をアリスちゃんに向かって語って頂きました。それにしても、桂義父の姿がお披露目される日は来るのでしょうかねぇ?
「母親が二人という特殊」からのくだりは、とある格闘ギャグ漫画のワンシーンに影響を受けています。 分かってくれる人がいたら嬉しかったりして…。この話のヒナも実の両親を未だに愛しています。
そんなこんなで主役の二人を一切出さずに終わる事となりました。次のお話では活躍が出来るのでしょうか?(未定
では、ここまでありがとうございました。ご感想・ご質問等お待ちしております。
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Re: 【第7話更新】しあわせの花 Cuties ( No.27 ) |
- 日時: 2015/08/06 13:58
- 名前: タッキー
- 参照: http://hayate/1212613.butler
- ん?いま、なんでもするって…?
どうも、タッキーです。 このフレーズが真っ先に思い浮かぶあたり、自分の心はキレイではないなぁ、とか思っていたり、思っていなかったり。
それにしても、仲良し家族はやはり微笑ましいものがありますね。おばあちゃんと孫という感じの関係も個人的にグッドでしたし、ロッキーさんの仰った通り一切の血の繋がりがないというのがこれまた…。
自分は家族三人ともバラバラにしちゃっているのが現状ですが、ロッキーさんみたいな仲良し家族になるよう頑張りたいと思っています。
次回も楽しみにしております
それでは
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Re: 【第7話更新】しあわせの花 Cuties ( No.28 ) |
- 日時: 2015/08/07 23:42
- 名前: どうふん
ロッキー・ラックーンさんへ
なるほど、三世代揃っての母の日ですか。あの家族は盛り上がりそうですね。 血の繋がりがない、というだけでなく、かなり重い命題を抱えていながら、暗さを感じさせない楽しいお話でした。
しかし、ヒナギクさんとお義母さんの話の半分はアリスのことですか。きっと残り半分はハヤテのことなんでしょうね。 それとも1〜2割くらいは姉に関する愚痴なんでしょうか。
ついつい笑ってしまったのが、あのお寝坊姫がヒナギクさんに触発されて早起きしているというところです。 これは思いつきませんでした。
ところで、ハヤテにも母親が実際いないわけですが、ヒナギクさんのお義母さんとは、仲良くしてると思います。 今のハヤテにとって唯一の(初めての?)お母さんということになりますし、母の日にどんな絡みがあったのか、それもちょっと気になりますね。
最後に、ロッキー・ラックーンさんがこの作品を書き上げるにあたり、私の書いた物が多少の刺激になったとしたら本当に嬉しいです。
どうふん
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【感謝】レス返し ( No.29 ) |
- 日時: 2015/08/08 09:21
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- 皆様ご感想ありがとうございます。
>タッキーさん アリスちゃんならきっとなんでもしてくれる事うけあいなのでセーフなんじゃないかと。笑 タッキーさんの家族の場合は、血の繋がりを持ちながらもバラバラになっているところから心の繋がりを持っていくという過程に楽しみが凝縮されていると思うので、寂しかったり辛かったりする描写にも期待をしております。
>どうふんさん このSSのテーマは「ヒナギクに恋するハヤテ」です。…そういえばそうだった。 なのでテーマから離れた話題で暗くなる事はなるべく避けております。つとめて楽しく書いております。 アリスちゃんのモノローグについては、残念ながら文章以上の意味がありません。つまり、早起きしてるなどとは一言も言っておりませんので、早起きなどしていません。 もしヒナがあの文章を読んでアリスちゃんにツッコむような事があれば、「毎朝ヒナの声から元気を貰って、日課である二度寝に励んでるからウソじゃないですわ」などと返って来る事うけあいです。そのあたりはマブダチの入れ知恵が働いているのだと思います。 そんなこんなで、どうふんさんの書かれたアリスちゃんのおかげで久々に投稿できました。ありがとうございました。
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Re: 【第7話更新】しあわせの花 Cuties ( No.30 ) |
- 日時: 2015/08/08 21:47
- 名前: 瑞穂
- ロッキー・ラックーンさんへ
初めまして、瑞穂(みずほ)です。
まず、このお話を書くのに特に心理的に大変だったと思いますが、 諦めずに書き上げるという姿勢には敬意を表します。
感想になりますが、 三世代揃って血の繋がりがないのに(アリスちゃん、ヒナギクさん及びハヤテくん、ヒナママ)、お互いに愛情を注げる、親密な関係を築けるというのは微笑ましいですね。アリスちゃんに母親が2人居るというのも。このあたりは皆さんと同じ考えです。
あと、どうふんさんのSSからも学びましたが「母性愛」というものは実母からであろうとなかろうと、「愛してる」と言われるのと同じですから注がれると気持ちのいいものではないでしょうか。逆(子→親)もまた然りですが。 実際に愛され、信頼されているわけですし。
今作も全体を通して、更新の度に今度は主人公2人以外の誰が登場するのか、どんなストーリーなのかと楽しみながら物語を読んでいます。その「誰か」がキャラクターとしても面白いですし、いい意味で予想外の展開になる、いわば鋭い洞察力をもって作ったお話なのが良いですね。
それから伝言板にも記しましたが、「憧憬は遠く近く 第1章〜 不思議の姫のアリス(どうふんさん著)」のスレッドにおいて僕の素朴な質問にお答え頂きどうもありがとうございました。 見ず知らずの僕なんかにすぐにでも答えを返して頂き、とっても嬉しかったです。
これからも頑張ってください。次回のお話も楽しみにしています。 長文、雑文失礼しました。
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【レス返し】瑞穂さん ( No.31 ) |
- 日時: 2015/08/11 02:51
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >瑞穂さんご感想ありがとうございます。はじめまして。
まず今回の話を書く上で…というか、ほぼ全体を通して言えるのが「大変だ」とか「諦めない」とかいう心情からかけ離れた所から書いているのがこのSSとなります。「アレ書きたいから書こう」とか「気が向いたら書くか」といった気持ちで細々と書き続けております。尊敬の念を向けられてしまうのは非常に恐縮であると感じてしまいます。 また、作る上では「自分がこのキャラをどう動かしたいか」というのを一番に考えております。畑先生が動かすキャラクターに対してどう観察するかというのが洞察であるのに対し、「どうしたら自分好みの展開になるか」というのを考える…想像力(妄想力)を持って書いていると言えば伝わりますでしょうか。かなり大げさな表現をあえてしましたが、たいして難しい事は考えておりません。笑
さて内容について。書き間違えかもしれませんが、アリスちゃんの母親はヒナだけです。産みの親である天王州家の父母についてアリスちゃんは何も知りませんし、興味すら持っていません。ヒナさえいれば彼女にとっては必要十分なのです。 それに対して、ヒナは産んでくれた母親にもまだ愛情を持っているという違いがある…というのが主旨となります。
「心の繋がり」による親子関係はお互いの気持ちが働き続けないと維持できないものなので血縁とはまた別の茨の道なのではありますが、ここの家族については心配は無いでしょう。多分。
最後に、アリスちゃんのデータの件は本当にただのお節介でしたので…。お役に立てて頂ければ幸いに思います。
それではありがとうございました。
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【第8話】綾崎ハヤテ ( No.32 ) |
- 日時: 2016/11/17 01:51
- 名前: ロッキー・ラックーン
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
1年と3ヶ月ぶりの投稿です。合同本では半年に1回くらい書いておりましたが…。 待っていた読者様がもしいたとすれば、嬉しい反面大変申し訳無いと感じております。
さて今回はハヤテ、雪路の誕生日ネタ。もう1週間も過ぎてるからいいや、と思っていたらまた放置になると思って、このタイミングでも書きました。
それでは、どーぞ!
------------------------
「んもう、ハヤテは主役なんだから座ってくつろいでいればいいの!」
「いやいやいやいや、これだけの量を彼女一人に押し付ける男なんていませんってば!」
今日は11月12日、ハヤテの誕生日からは一日遅れの日。ついでにお姉ちゃんの誕生日の二日後でもある。土曜日で明日は休みなので、桂家にハヤテとアリスをお招きしてお誕生会を開いた。お義母さんの発案とアリスのプロデュース(見てるだけ)で、主役の二人もとても楽しそうにしてくれていた。今は宴会の後片付けと食器洗いをしているところだけど…大人二人とアリスは散々飲んで食べての夢の中。もてなされる側のハヤテが手伝ってくれるだなんて事態に…。
「お義母さんったら、あんなにお酒飲んじゃったら寝ちゃうに決まってるでしょ。普段全然飲まないのに…」
「桂先生にずっと付き合ってましたからね。それだけ嬉しかったんだと思いますよ」
お義母さんのお酒を飲む姿は久しぶりに見た。ハヤテの言う通り、お姉ちゃんと一緒にビンを次々と空けていった。ずっとニコニコしていたのが印象的だった。 思い返してみると、今日の都合をつけておくようにお義母さんに言われた日が、もう2ケ月も前の事になる。ハヤテと付き合う事を伝えた翌日に彼の誕生日がいつかを聞かれ、その時から今日の予定を空けておくように言われていた。ずっとずっと今日を楽しみにしていたお義母さんの気持ちは私にも良く分かる。 今回は、そんな楽しみにしていた一日の終わりをお届けします。
しあわせの花 Cuties 第8話【 綾崎ハヤテ 】
「ヒナ、昨日も今日もこんなにお祝いしてくれてありがとうございました」
「どういたしまして」
後片付けが終わって、私の部屋でハヤテと二人きり。アリスのお気に入りの紅茶を淹れてようやくのひと段落。 お礼を言ってきたハヤテの顔は、今日一日ずっと見せていた笑顔と同じだった。
「誕生日が嬉しいだなんて感覚、生まれて初めてですよ。これまでは親に『産んでもらったお礼』と称してお金をたかられるだけの日でしたから…」
「そ、そうなんだ…。ハヤテが喜んでくれたなら、私も嬉しいわ」
さらっと放たれたとんでもない過去の告白に驚きながらも、この二日間がハヤテにとって良い時間だった事に安心した。ちなみに、昨日(11/11)はナギと私主催でアパートの住人たちでお誕生会を開いていた。
「ヒナ、ちょっとだけ語っても良いですか?」
「うん。ちょっとと言わず、好きなだけどうぞ」
「では…コホン」
わざとらしい咳払いをするハヤテ。その合図は、彼の心の奥底を覗ける機会だと理解した。
「僕は、気付いてしまったんです」
「何に?」
「誕生日で嬉しく思うのって、その誕生日を祝ってくれる人がいるからなんだという事に…です。さっきも言いましたけど、これまで僕にとって自分の誕生日は別に全然嬉しくない日でした。僕自身は両親の誕生日には無関心でしたし、兄の誕生日を祝おうと思っても留守にしている時ばかりで…。誕生日に対してありがたみとか、嬉しいだなんて気持ちはちっとも持った覚えがありませんでした。小中学校のクラスメイトなんかはお誕生会を開いてましたけど、もちろん僕は誘われた事なんてありませんでした」
「そうだったの…」
「あ、別にひがんでいるとかじゃないんですよ。誕生日に限らず何かに誘われたりしたのが無いのが事実なだけです。あんまり他人のせいにしたくはないですが、親がアレだったんでクラスメイトの保護者間で僕の家が要注意視されてたようで…」
「……」
チクリと、胸の痛みを感じた。私とハヤテとで、親に対しての考え方が全く違ったのを知った時と同じ痛み。ハヤテが「クラスメイト」という表現をわざわざ使っている事にも気になった。私だったら、何の気もなく「友達」と言っているだろうから…。
「そんな顔しないでください…って、僕がさせちゃったんですよね、スミマセン。本当に言いたいのはこの後です」
「…うん」
「…だけど昨日はアパートの皆さんが、今日はこの家の皆さんが僕の誕生日を自分の事のように喜んでお祝いしてくれて…『この日は僕にとって特別な一日と思っていいんだ』って感じられました。これって、僕の人生では衝撃的な事なんですよ」
「!!」
ハヤテの言葉に、痛かった胸が別の感覚を催して涙が出てきた。 喜んでもらえた。私たちのした事は間違っていなかった。そう思った時には胸の痛みは消え去って晴れやかな気持ちになっていた。
「それは…良かった…わねっ!!」
「はい。僕の誕生日を変えてくれたヒナや皆さんには感謝感激雨あられです」
「うん。…もう!ハヤテのせいで…涙…出てきちゃったじゃない!」
「スミマセン。…こうしていれば僕に見られずに済みますよね?」
ハヤテは馴れた手つきで私を抱き寄せ、表情の見えない体勢になった。別に涙を見られて悔しいとか今日は思わないけど、ハヤテの気遣いに甘えさせてもらう事にした。 考え方が違うのは悪い事じゃない。今日みたいにハヤテの考えを変えるきっかけを作ったり、私がハヤテに歩み寄ったりする事で寂しさは解消される。きっと、これから先もこういう事を繰り返して私とハヤテは分かり合っていくのだろうなと思った。
「……」
「……」
私の涙が乾くまで何分経っただろう?私たちはずっと無言で互いの温もりを感じていた。 そこからふたり言葉を交わすことなく見つめ合い、私は目を閉じた。それを合図にハヤテは私の肩に手を置きゆっくりと近づいて…
「ベタベタな展開ですわねぇ」
「「ファッ!!?」」
いきなり発せられた声に驚いて二人して跳び上がった。すっかり冷めてしまった私の紅茶を優雅にすするアリスがそこにいた。
「ちょっ…いつからいたの!?」
「『ヒナ、ちょっとだけ語ってもいいですか?』からですわ」
「ほぼ最初からじゃないの!!」
「全然気付かなかったよ、アーたん」
私の文句など一向に構わんという様子はいつものごとく。お茶うけに置いておいたクッキーにまで手を出しているアリス。
「誕生日をお祝いするのは、それだけその人を大切に想っているということなのですわ。その人の誕生日を覚えて、その日に『おめでとう』と言う。まずはそれだけで良いのです。プレゼントはあれば嬉しいですが、無くてもその言葉だけで嬉しくなってしまうものです。ハヤテもヒナも、たくさんの人の誕生日を祝えるような人であって欲しいと思いますわ」
「「うん!」」
アリスの言葉に、二人して同じ返事をする。ただ、アリスはクッキーのカスをこぼしまくりながら話していた。お行儀が悪いと後で叱ってあげないと…。
「と言うわけで、11月30日は楽しみにしていますからね?ちなみに私は、プレゼントが無いと不機嫌になるタイプのお姫様ですからお忘れのないように、ですわ!」
「「えぇ〜!?」」
完全に矛盾する誕生日アピールにズッこける私たち。まったく、いい話が台無しじゃないの!プレゼントはもちろん用意するけど…。
「アハハ…アーたんには敵わないですね、ヒナ」
「フフ、そうね」
…いきなりだけど、最近私は11月を「奇跡の月」と呼ぶようになった。もちろん自分の心の中だけで、誰にもそれを言った事は無い。ハヤテとアリスとお姉ちゃん、私の大切な人たちの誕生日がこんなに重なっているから。今日に至るまでの2ヶ月間、どうやったらハヤテとお姉ちゃんが喜んでくれるのかを考えている時間がとても幸せだった。アリスの誕生日までの3週間、きっとまた皆が笑顔になれる日にして見せるわ。
「うーん、『奇跡の月』はちょっとネーミングセンスを感じられませんわね」
「なんで!?カッコイイじゃないの!…ってか、心の中読まないでよ!!」
「え、なんですか?なんですか?」
「あーっもーっ!ハヤテはいいの!!」
この後、私は一切口にしていないのに「奇跡の月」が桂家とアパートの中で流行ってしまったのは別の話…。 ハヤテ、お姉ちゃん、お誕生日おめでとう!!
【つづく】
--------------------------------
【あとがき】
誕生日観が一変したというハヤテのお話でした。まえがきで「雪路の」と言いつつ、一切出番の無かった件はさておいて、ヒナとアリスちゃんの会話を書けて良かったです。
クイズ大会のお勉強で17巻あたりを読んでいたところ、ハヤテの両親が酷いアレだったのが刺激になりました。両親を改心させようと思ってあえなく失敗し心を半ば壊された経験を持つハヤテが、ヒナによって考えを変えさせられたという対比があったり、無かったり…。
「奇跡の月」…うーんこのネーミングセンス。自分で考えてダサいと思ったのでヒナに使ってもらいました。来年も再来年も奇跡の月をお祝いしたい…みたいな事をヒナに最初は言わせていましたが、それだとアリスちゃんを元に戻す事をまったく考えてないじゃんと気付いたので封印。アリスちゃん流読心術の餌食となってもらいました。
あんまりにも久しぶりで、色々と違和感を覚えた読者様もいるんじゃないかと…。表現のミスとか分かりにくいトコとかは是非ご指摘頂けると…。
それではまたいつの日か。 ありがとうございました!
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Re: 【第8話更新】しあわせの花 Cuties ( No.33 ) |
- 日時: 2016/11/19 20:02
- 名前: どうふん
ロッキー・ラックーンさんへ
「しあわせの花」の世界では、二人の付き合いが始まって二か月になりますか。正直、思ったより短いんだな、と感じましが、ベタベタな関係ではあってもまだ二人の間ではお互い知らないことも多いのでしょう。 こうしたことを一つ一つクリアして、二人の未来を築いてもらいたいですね。
雪路とアリスも11月生まれなんですね。気付きませんでした。雪路はともかくアリスちゃんをすっかり忘れていたのは不覚だったな、と思っております。アリスちゃんからぶん殴られそうな・・・。 それはともあれ、ヒナギクさんにとっては(ネーミングはともあれ)「奇跡」といいたくなるのもわかります。そして、お祝いする側のヒナギクさんやお義母さんも幸せそうで何よりです。
ところで、この究極のお姫様が、優雅にお茶を啜りながらクッキーの屑を撒き散らすのはちょっと意外でしたね。 これは、イチャイチャしている二人を目の当たりにして、緊張か、ヤキモチか、手が震えていたんでは・・・。 それともヤケ食いみたいな勢いで、クッキーを口に頬張りながら喋っていたのか・・・なんてことを考えてしまいました。
ロッキーさんのお話は、読みやすく、キャラが皆楽しそうにしている情景がスムーズに頭の中に浮かんできます。今でも、時々過去の作品を読み返しておりますが、久しぶりに新作を読むことができて楽しかったです。 催促するつもりはありませんが、次回のご投稿を楽しみにしております。 また、いつの日か!
どうふん
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【感謝】レス返し ( No.34 ) |
- 日時: 2016/11/20 01:43
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- >どうふんさん
ご感想ありがとうございます。
楽しそうにしているキャラを想像して頂いているというのは本望です。過去分を自分でもおさらいで読む事はありますが、なんともこっぱずかしいですね。 ちなみにこのスレの各話はアニメ4期同様、時系列バラバラのオムニバス形式を取っています。(3話の歩の「ハヤテ君とヒナさんが付き合い始めてから半年以上が経過するけど」等でご確認頂ければと…)
奇跡の月…11月生まれの3人が並んでいるところに向かって、ヒナが飛び込んで全員抱きしめにいくイメージで思いつきました。これでお義母様や、まだ見ぬお義父様まで11月だったら…とも思いましたけど公式設定が無かったので触れずにおきました。アリスちゃんは優しいので、忘れていてもきっと許してプレゼントを買わせてくれるのかと思います。
アリスちゃんのクッキーカスの撒き散らしには、実はいくつか理由がありました。 まずは偉そうに親二人へかける言葉がお説教なので、それに加えて立ち居振る舞いがビシっとしてると厳しいイメージを与えてしまうから…というアリスちゃんの二人への配慮です。さらには、自分の事をちゃんと叱ってくれるヒナが好きで、わざと隙を見せて構ってもらいたいという子供心から…といった感じです。 アリスちゃんに限っては、何気無い行動にもいちいち根拠をつけていたりするので、こういった点に注目して頂けるのは嬉しいですね。
最後になりましたが、久々の投稿への熱いご感想ありがとうございました。 次は…またがんばります。
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【第9話】綾崎マリア ( No.35 ) |
- 日時: 2017/11/12 00:37
- 名前: ロッキー・ラックーン
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
約1年ぶりですね。止まり木も変わってしまってちょっと寂しく思いますが、存続していただける限り細々とやっていけたらと思ってます。
今回はマリアさんの話です。ひさびさに「Cuties」だなと思いつつも、久々の投稿なのになにもイチャイチャできないハヤヒナ。すまん! サブタイトルに苗字がついているのは「せっかく判明したんで」くらいの勢いです。深い意味ゼロです。
それでは、どーぞ!
------------------------
しあわせの花 Cuties 第9話【 綾崎マリア 】
AM4:30起床、メイドさんの朝は早いです。まずは着替えと身だしなみを整えて、早速キッチンへ。5時にヒナギクさんが起きて日課のランニングに向かうので、それより早く共用のテーブルを整える事から始まります。
「おや、今日は私の方が早かったですね」
独り言がむなしくキッチンに響く。というのもヒナギクさんが5時に起きるのだから、もちろん彼氏のハヤテ君はそれに間に合うように起きて特製ドリンクを作るというのがここ数ヶ月続くムラサキノヤカタの台所風景。(※ここの読者さんならお分かりかと思いますが、ドリンク作りはハヤテ君が彼氏になってから自分で勝手に始めた事です。ヒナギクさんが作って欲しいと頼んでいる事ではありません。念のため)キッチン朝一番乗りはしばらくハヤテ君が続いていたので、今日のような光景はひさびさです。 いつもより遅いと言ってもまだ5時前。たまにはちょっとした朝寝坊もご愛嬌と思い、私がヒナギクさんのドリンクを作り始め…ようと思ったら来ました来ました。
「おはようございますマリアさん!今日は寒いですね〜…」
「ハヤテ君、おはようございます。そんなに言うほど寒いですかね?」
もう春も近く、特に今日は夜の冷え込みが弱かったと思いましたが、朝の挨拶のついでの会話だと思って特に何も感じませんでした。
「ハハハ、寒いですけど今日も張り切ってお嬢様を起こしちゃいますよぉ!」
「ウフフ、じゃあ今日は頼りにしてますからね」
「ハイ、お任せください!」
いつもの感じ、いつものやり取り。特にいつもと変わらぬ一日が始まったと思ってました。
「あ、ヒナのドリンク…ひょっとして手を付けられてますか?」
「いえ、まだですよ。ハヤテ君いつもよりちょっと遅かったから、そのまま寝かせてあげようかなーってボトルを開けたところです」
「すみません、遅くなってお気遣いさせてしまって…」
「いいえ、私が好きでやろうとしたことですし」
「じゃあ、僕が作るんでボトル頂きますね」
「ええ、お願いします」
バターン
「えっ!?」
背後からものすごい音がして、振り返ってみたらハヤテ君が頭から倒れていました。
「ハヤテ君!?どうしたんですか!?」
「ハヤテ君!ハヤテ君!!うわ…すごい熱…」
額を触ってみると、今まで人の肌で感じたことの無い熱さを覚えました。これはかなり危ない…熱すぎる。
「とにかくお医者様を…」
「マリアさん…だい…じょうぶ…ですよ…」
「大丈夫な訳ないでしょ!布団まで運びますから、ヒナギクさんを呼んで来るんで待っててくださいね!」
朦朧とした意識の中でも強がりを言う彼に呆れてしまいます。なんにしても今はまず部屋に運んでお医者様を呼ぶ。早くしないと!
「ひ、ヒナギクさん!」
「あわわわ、マリアさん着替え中です!!」
ノックをするのも忘れてヒナギクさんの部屋に突撃。スポーツウェアに着替えようとしていた彼女は下着姿で慌てふためきます。
「それどころじゃないんです!ハヤテ君が…」
「えっ!?」
事情を説明し着替えを済ませて二人でキッチンに戻ってみるとハヤテ君は眠っていました。というか気絶してると言う方が正しい気がします。
「部屋には私一人で運べますんで、マリアさんはお医者さんを…ってまだこんな時間じゃ…」
「大丈夫です。三千院のかかりつけでちょっと無理言っても対応してくれますので」
「じゃあお願いします!」
このお医者様はアパートの住人の皆さんに何かあったときに昼夜問わず駆けつけてくれます。実はアパートの隠れた魅力のひとつだったりします。 電話を終えてハヤテ君の部屋に行ってみるとさすがヒナギクさん、ハヤテ君を一人で部屋まで運んで寝かしつけてくれていました。
「ハヤテ…かなりまずいと思うんですけどマリアさんはどう思います?」
「確かにちょっと体温が異常ですね。大事じゃなければいいのですが…」
ヒナギクさんの問いに気休めにもならない言葉をかけます。
「あんな苦しそうなハヤテ初めてで…私、どうすれば良いのか…」
「お医者様もすぐ来てくれます。私たちの出来る事をしましょう。貴女が前を向かなかったら、ハヤテ君も治ってくれませんよ?」
「マリアさん…そうですよね。私がハヤテより元気無くしてちゃダメですよね」
震える手を取って、肩を叩いて励まします。私もどうすれば良いのかまだ分からないけど、この人が諦めた時がハヤテ君の終わりというのだけは分かります。とにかくどうにかするしかない。
◆
あれから数十分でお医者様も来てくれて、診察と処方も済みました。長年溜まり続けていた疲労が爆発したもので、重い病気などではなく、それに関してはひと安心。
「マリアさんすみません、ハヤテの事お願いしますね」
「ええ、私に任せてください。だからヒナギクさんはお勉強の方にしっかり身を入れてくださいね」
「ハイ。アリスはマリアさんの邪魔しちゃだめよ?」
「誰に物を言ってるのです?私は寝てご飯をいただくだけなのでハヤテには触れません。大丈夫ですわ!」
時刻は7:30。なんやかんやで起こしたナギと一緒に普段より遅い登校時間のヒナギクさん。同じくなんやかんやで起こしたアリスさんと一緒に見送ります。ハヤテ君自身は面会謝絶なので他の入居者の皆さんは普通に登校してもらってます。
「ナギ、ちょっと…」
「なんだ?」
出がけの玄関でナギを呼び止めます。
「今日はヒナギクさんの事、しっかり見ててくださいね?ハヤテ君の事になるとあの人、なにしでかすか分からないですから…」
「なんだなんだ、マリアもアーちゃんと同じ事言うんだな。私に任せておけ。不沈艦アー●エンジェルに乗った気でいろ!」
「私はどちらかと言うとエ●ーナルの方がいいのですが…とにかく、コッチは大丈夫ですからお願いしますね!」
「はいはい、では行ってくるぞ!」
高校生の皆さんを送ってようやくひと段落…という暇も無く、ハヤテ君の看病の前にお洗濯だけは済ませないといけません。
「マリアさん」
「はい?」
「私に出来ることがありましたら言ってくださいね?貴女が倒れたらここは終わりですわよ」
アリスさんも自分なりに危機感を覚えてくれているのか、どこか頼もしい雰囲気です。
「ありがとうございます。今日の仕事は最低限に済ませて無理はしませんので、安心してくださいね」
「そうですか」グー
緊張の糸が途切れてしまうようなお腹の虫の音。恥ずかしがりもせずに、その音の主は私のスカートの裾を握って離しません。アリスさん得意の空腹をアピールする仕草です。
「とりあえず朝食にしましょう。一息つきましょうか」
「そうですわね。私は起きただけですけど」
お洗濯などの仕事は後回し。まずは私がバテないようにしっかりと栄養補給ですね。 朝食が終わったらアリスさんは邪魔をしないよう二度寝へ。食事の時の話し相手になってくれるだけでお姫様の存在は助かります。
◆
洗濯物を干し終えて、ようやくハヤテ君の看病へ。といっても薬が効いてずっと寝ているのでそんなにする事もありません。
「まったく、貴方が元気じゃないとヒナギクさんもナギもアリスさんもみんなダメダメになっちゃうんですからね。いつも言ってますけど、あれがあーでこれがこーで、クドクドクドクド…」
すやすやと寝息を立てる彼の水まくらを替えながら言いたい放題。日ごろの鬱憤を晴らします。
「これでよし!」
汗拭きと着替えも済んでひと段落。起きるはずも無い彼のおでこを撫でていたら、鬱憤以外にこれまで溜まっていたものが出始めます。
「今だから言えますけど…ハヤテ君の事、私もスキだったんですからね」
衝撃の告白。と言ってもヒナギクさん編6話でそんな事を口走ってましたが…。 ヒナギクさんがハヤテ君を好きだというのを知ってから気になる事が増えて、気持ちがモヤモヤして仕方なかったので、思い切って歩さんに相談してみたらはっきりと分かりました。 はっきりと分かったのは良かったけど、ナギが彼を好きな事…こればかりが自分の恋心を縛ってしまい、何も出来ずにいたらヒナギクさんに取られてしまった。なんて情けない初恋でしょう。 まあ私の初恋が終わってしまったのは仕方ないとして、今置かれた現状を整理してみましょう。 部屋には私と彼の二人きり。邪魔な恋人も、心の枷になっていたご主人様もいない。今日だけ、今だけ、この一回だけだから…。
「……」
10センチ…5センチ…もう少しで…
「ふぁ〜あ。お腹が空きましたわねぇ〜」
「ファッ!?」
驚きすぎて何がなにやら分からない奇声を上げてしまいました。そうだ、アパートにはまだこの子がいました。
「アリスさん、いつからそこに!?」
「たった今来たばかりですが、何か問題でも?」
「…見てましたか?」
冷静に、あくまで冷静に取り繕ったつもりでしたが、見返してみると完全に取り乱してますね。お恥ずかしい。
「ん?何の事ですか?私はマリアさんがハヤテを手厚く看病してる姿しか見えませんでしたが」
「そ、そうですか」
「ひと段落ついたのなら、一緒に休憩しませんか?」
今起きたばかりでは?というツッコミもこのお姫様には野暮というものです。
「ええ、ではおやつにしちゃいましょうか。お紅茶を淹れますね」
「お願いしますわ。…良かったですわね、間に合って」
「?」
「いえ、こっちのお話ですわ」
やっぱり見られていたようです。私も疲れが溜まっていたのか、なんであんな事をしようとしたのか…。 でも、アリスさんにとってのパパとママである二人を守れて良かったのは確かですが、なぜ私に「ですわね」と言ってきたのか、この時は分かりませんでした。
◆5日後◆
いよいよハヤテ君復活の日です。3日目くらいで体調は戻っていましたが、仕事は一切させずに、アリスさんと一緒に2日ほどぐーたら休んでもらいました。そんな事言ったらアリスさんに怒られますかね?
「おはようございます、ハヤテ君」
「おはようございます、マリアさん!」
起きてキッチンに向かうとヒナギクさんのドリンク作りに精を出している彼の姿が。朝のいつもの風景も復活です。
「マリアさん、ほんっと〜〜にご迷惑おかけしました!」
「いいえ、お身体の方は大丈夫ですか?」
「ハイ!治った後に二日もアーたんとダラダラさせて貰いましたので、身体も心も休養十分です」
「それは良かったですね」
挨拶からの流れで会話を続けていると、ヒナギクさんもやってきます。
「おはようございまーす、マリアさん」
「おはようございます、ヒナギクさん」
「おはよう、ハヤテ」
「おはようございます、ヒナ」
ハヤテ君の様子を見て安心したのか、ふうと一息つくヒナギクさん。昨日までで元気になっていたのは知っていても、やっぱり不安なものですよね。
「マリアさん。ハヤテの事、本当にありがとうございました!」
「僕からも、本当にありがとうございました」
「…あっ」
今になってようやく分かりました。あの時のアリスさんの「良かった」の意味が。きっとあのままハヤテ君にキスをしていたら、私は物凄く後悔していたのだと思います。ハヤテ君もヒナギクさんも、私の事を完全に信頼してくれています。私がしようとしていたのは、その信頼を裏切る行為。何も疑う事無く私に感謝を告げる二人の姿に、罪悪感で押し潰されそうになっていたに違いありません。だから私にとっても、アリスさんが止めてくれたのは良かったという事なのです。
「どうかしましたか?」
「い、いえ。困ったときはお互い様ですよ。とにかく、ハヤテ君もこれからはもう少しご自愛くださいね?貴方一人の身体じゃないんですから」
「は、ハイ。気をつけます…」
お説教もそうそうに、ランニングに行くヒナギクさんをお見送りしてハヤテ君と朝食の準備に。いつも通りの朝がやっと帰って来ました。
◆また数日後◆
「アリスさん、お茶を淹れたんですが飲みませんか?」
「ありがとう、いただきますわ」
先日のお礼をしたく、昼食を終えて縁側でボーッとするアリスさんに声をかけます。渋いお茶も好きなお姫様と緑茶でアフタヌーンティーとしゃれこもうと思います。
「この間はありがとうございました」
「ん?なんの話でしょうか?お礼を言うなら、パパを看病して頂いた私の方ですわよ。ありがとうございました」
「そうですか…どういたしまして」
あくまで無かった事にしてくれるようなので、その厚意に甘えさせてもらいます。 私の淹れた緑茶を美味しそうにすするアリスさんは自分から話を進めようとはしません。私のペースで…という事なんでしょうね。
「私、自分の恋を探してみようと思います」
「そうですか、それは素敵なことですわね。私も応援してますわ」
いつまでも終わった恋に未練を持っていてはメイドは務まりません。恋に仕事に精一杯生きようと改めて誓いました。
「マリア」
「ん、どうしました?」
キッチンの方からやってきたのは私のご主人様。珍しくというか、モジモジとしおらしい感じで話し始めます。
「あの、な。これから一樹が来るから…髪をとかしてくれ」
「……」
この子も、新しい恋を見つけて前を見て進んでいる。 このアパートの中では一番のお姉さんのつもりでしたが、実は私が一番お子様なのかもしれませんね。
「ん?どうかしたのか?」
「い、いえ。ブラシ持って行くので部屋で待っててください」
「終わったらお茶の準備も頼むぞ」
「はいはい、メイドさんにお任せですわ!」
お茶の時間も早々に、急に忙しくなった休日の昼下がり。お客様とご主人様のためにメイドは頑張ります。
「メイドさんは忙しいですわね」
「ふふっ、今はご主人様が恋人みたいなものですから」
「そう遠くない未来、きっと運命の出会いがありますわよ」
「??」
「お姫様のたわ言ですわ」
「そうですか、たわ言ですか。では、私は失礼しますね」
たわ言とはいえ、アリスさんの言葉に心が躍ってしまいました。運命なんて言葉はそんなに信じていませんが、楽しい事ならアリかもしれませんね。 ご主人様の待つ部屋の扉を開ける腕も軽やかになってしまうメイドさんなのでした。
【つづく】
--------------------------------
【あとがき】
1年ぶりの投稿でハヤヒナの出番がほとんど無いお話でした。 ネタ出しの段階で止まっている話がこの他にもかなりありまして…いつ投稿できるのやら。期待せずお待ち頂ければ幸いです。
さて内容について。 前スレでチョロっと出したマリアさんハヤテが好きだった説を完結させました。ハヤテの体調不良は、ただ物凄く疲れていただけです。今後これが原因で大きな病気とか、そーいった展開はこの話にはありません。いちおう。 見直してみると、ヒナギク視点で学校に行くけどソワソワして全然集中できない…みたいな話も作れそうですね。
裏設定といいますか、アリスちゃんの「良かったですわね」には「姉弟でチューという展開にならなくて良かったですわね」という意味も含まれてたりします。今後この話では特に姉弟だったネタを扱うつもりは毛頭ありませんが…。お姫様はなんでも知ってますね。
さて、久しぶりのお話でした。次回もいつになるか分かりませんがお付き合い頂けると幸いです。 ありがとうございました。
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Re: 【第9話更新】しあわせの花 Cuties ( No.36 ) |
- 日時: 2017/11/12 21:01
- 名前: きは
- にゃんぱすー。きはですー。
感想書くとか久々なんですが、せっかくの感想キャンペーンなんで書いてみようかと思います。
ロッキーさんの作品は、原作だけにとらわれないオリジナルな世界が広がっていて正直羨ましいです。 原作にとらわれてしまう私からすれば、この作品からは何か熱いパトスを感じてしまいます。 (その原作の話すら、最後の4年ほどは把握してないんですけどねー)
しかも、最初のハヤテ君が過労で倒れてしまうシーンで、すごく親近感が…。 本当に限界なときは、しんどいなーと知覚する前に身体が悲鳴あげますよねー。近しい経験したことあるので、よく分かりますw しかし、ハヤテ君。2日も丸ごと休めるなんて羨ましいぞ! その内1日でもいいから私に分けてほs(
……感想の趣旨から外れる内容で失礼しました。 またまた、こんなニヤニヤできる話を楽しみにしています!
では、おにゃんぱすー。
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Re: 【第9話更新】しあわせの花 Cuties ( No.37 ) |
- 日時: 2017/11/12 22:01
- 名前: どうふん
ロッキー・ラックーンさんへ
しばらく完全ご無沙汰のどうふんです。 とはいえ、ちょくちょく覗きに来ております。久し振りのロッキーさんの新作、楽しく読ませていただきました。
え?え! マリアさんがハヤテの姉? ・・・そんなことがありうるのか・・・?ということはイクサの妹になって・・・。 う・・・ん、やはり、無理があるのでは・・・?という次第で、僭越ながら拙作「タガタメニ」ではスルーしました。
とはいえ、マリアさんが弱っているハヤテ君についフラフラと・・・、なんてことは起こりそうな気がします。 まあ設定はどうあれ、アリスちゃん、GOOD JOB!相変わらずの不思議の姫ですね。
印象に残ったのは、「私、どうすれば良いのか…」とオロオロするヒナギクさんと、意識のないハヤテ君に向かって「あれがあーで」鬱憤晴らしをするマリアさんです。 ともに普段は見せない姿ですので、新鮮でした。 あと、ナギには拍手したいです。「あとは私に任せとけ」さて、気もそぞろのヒナギクさんに何をしようとしたのか。空回りの失敗ばかりだったかもしれませんが、それでもいいじゃないか。最初からうまくはできなくても、上達するセンスを持っていることは(原作で)明らかになったんだから。
本作はまだ続けて頂けるということで、また、ロッキーさんの新作にお目にかかれることを楽しみにしております。
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Re: 【第9話更新】しあわせの花 Cuties ( No.38 ) |
- 日時: 2017/11/13 22:35
- 名前: 瑞穂
- ロッキー・ラックーンさん、こんばんは。瑞穂です。
ロッキーさんの作品に感想を投稿するのは初めてですかね。 とはいえ随時読ませていただいています。
ロッキーさんの作品は読んでいて楽しい気分になりますね。特にキャラクターをよく生かしてるという印象を受けます。 例えば今回のマリアさんにしても優しく面倒見がよく、アーたんにすると暴走を止める書き方をしていますから。
他にもマリアさんは皆さんから信頼され、感謝されているのが好印象でした。 ただ、恋愛について一番のお姉さんのつもりがお子様なのは可哀想ですね。
拙筆ながら以上で締めさせて頂きます。 これからも執筆を頑張ってくださいね。続きを楽しみにしています。
それでは、失礼します。 瑞穂でした。
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【感謝】レス返し ( No.39 ) |
- 日時: 2017/11/14 02:50
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 久々の投稿にもかかわらず、こんなに早いタイミングでご感想を頂けるとは・・・。感謝感激です。ありがとうございます。
>きはさん
感想キャンペーンに合わせて投稿できて良かったです。 もともとのテーマ(ヒナギクに恋するハヤテ)の段階で、原作は完全に無視するという前提が出来上がっています。それに加え、そのテーマを畑先生がやらない、さらに(詳細は割愛)明後日さんが止めてしまった、なら自分で書いたろ!という精神が熱いパトスに見えているのかと推測します。
とりあえず、身体壊す前に休め。
>どうふんさん
お楽しみ頂けましたようで幸いです。 マリアさんが姉という設定は、正直ドン引きした覚えがあります。別に(読者的に)やらなくてもいい事を裏設定にして自分(畑先生)だけで楽しめばいいのに話が完結してから(やらんでもいいのに)ネタばらしとかなんなん?と思いました。(個人の感想です ただまあ、せっかく判明したことだし、特に話に影響も無いのでサブタイトルには使った次第です。
弱気なヒナに関しては、この作品の本来の姿であれば「自分がハヤテをどうにかする!」と終始前向きになるであろうと思いつつもあえて出してみました。アリスちゃんについては平常運行できたと思います。
次回はいつになるか分かりませんが、またお付き合い頂ければ幸いです。
>瑞穂さん
言いにくいですが、>>30にて一度ご感想を頂いてます。 再度のレスありがとうございます。
キャラクターを活かすのは一番に重要視している箇所です。 マリアさんの現状、言いそうなことを想像しながらセリフにする作業は楽しかったです。
さて、今後もお付き合い頂ければ嬉しく思います。
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【第10話】花菱美希 ( No.40 ) |
- 日時: 2018/02/10 01:47
- 名前: ロッキー・ラックーン
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
ここ数年ではかつて無い更新頻度。3ヶ月でイケました。 「まさかお前が主役か」という人選ですが、掲載開始当時(2011年ってウソやろ・・・)から考えていたものとなります。
それでは、どーぞ!
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しあわせの花 Cuties 第10話【 花菱美希 】
「わざわざ来て貰ってすまんな、ハヤ太君。とりあえず、茶でも飲んでくれたまえ」
「くれたまえって…僕が淹れたお茶じゃないですか〜」
「ああ、そうだったな。すまんすまん」
この超不定期連載SSに付き合ってくれている諸君、ごきげんよう。花菱美希だ。今回の主役を務める事になった。ここまで本当にチョイ役しか与えられていなかった私が主役だなんて、誰も予想がつかなかっただろう?かくゆう私もそうだ。 とりあえず主役という事なので、なんとなくメインキャラであるハヤ太君を呼び出して適当に色恋沙汰の絡みを見せる…という訳ではない。
「それで、お話というのは…ヒナの事ですか?」
「おお!察しが良くて助かるぞ、ハヤ太君。その通りだ!」
私にとってとても大事な話をするために呼び出したのだ。チョイ役にはチョイ役なりに大事な物を抱えているのだ。
「その…なんて言えばいいのやら…『告白』と言って良いのかな?…させて欲しいのだ」
突拍子の無い話になるが、私はヒナが好きだ。女同士なのになどと言われても、そんなの仕方が無い。好きなものは好きなんだ。私の憧れであり、ヒーローであり、たまにヒロインになる…私にとってのすべてと言って過言ではない。ここにいる彼、綾崎ハヤテに対していつぞや零した事のある「言ったところで絶対に受け入れてもらえない相手」というのがヒナだ。 なぜこのタイミングで想いを打ち明けようなどと考え出したのか、それは彼の主である三千院ナギと例の小さいお姫様の影響を受けたからだ。長くなるので、ここではその経緯は省くとしよう。
「ええ、僕は構いませんよ…というか、僕にそんな許可を取る必要なんて無いですよ」
「ん?というと、私が勝手に告白しても良いとでも言うのか?」
「はい、そもそもヒナは誰のものでもありませんから。誰がヒナを好きになっても、それに対して僕がとやかく言える筋合いはありません」
淡々と返事をするハヤ太君。驚かれたり、慌てふためいたり、ともすれば罵倒されるんじゃないかとも予想していた私にとって、一歩間違えるとヒナに対して非常に無関心にも見える彼の態度は不思議なものに見えた。
「そうか…?ヒナは君の恋人なのにか?」
「確かにそうです。でもそれは僕たち二人の間で交わされた約束にしか過ぎません。だから、他の人は一切関係無いんです。誰だってヒナを好きになれるし、その誰かがヒナに付き合いたいと申し込んでも、僕にはどうする事も出来ません。一方ヒナはヒナで、自分の幸せのために一番好きな人を選ぶべきだと思っています。だから、もしヒナが僕をダメだと思ったのなら、すぐにでも別れてしまうべきなんです。…そんな事にならないよう、僕はヒナに相応しい相手であるために努力し続けなくてはいけないと考え、精進しながら日々を過ごしております」
ストイックというかなんというか、彼の恋愛観は今まで聞いたことの無いものだった。正直ついていけない。「ヒナは僕の彼女なんだから僕のものだ」とでも言ってくれた方がスッキリするというものだ。
「…なんというか、ハヤ太君は恋愛に対してドライなんだな?」
「ハハ、そんな事ありませんよ。男も女もそういった競争の中にいる…その前提の上で、僕はヒナの事を誰よりも愛している自信がありますし、ヒナは僕の事を誰よりも愛してくれていると信じる事が出来ます。アーたんよりも、桂先生よりも。もちろん花菱さん、貴女よりもです…」
「なるほどな…」
彼の恋愛観はヒナに対して絶対の自信を持っているからこその物だという事を思い知らされた。在りし日の彼…優柔不断で、色恋沙汰には疎いフリをして誤魔化すような、ヒナを任す事なんて絶対にありえない、論外だと思っていた綾崎ハヤテとは全くの別人だった。
「ただ、物事に絶対はありません。だから僕は、ヒナが貴女と付き合わってしまわないようにドキドキしながら祈っています。それだけです」
「そうか。なら、気兼ね無く告白させて貰うよ」
「そうですか、頑張って下さい」
「オイオイオイ、私が頑張ると君は困るはずだろう?」
これまた他人事のような態度を見せる彼に訳が分からなくなって、思わず突っかかってしまう。
「ええ。でもヒナ相手にいい加減な告白はして欲しくありませんからね。それに、僕も自分一人では告白する勇気が持てなかったですし…」
「なんとも面倒な性格をしているな君は…」
ともあれ、私の気持ちを打ち明ける上での心配事は無くなったのでよしとしよう。彼の告白についてはノロケ話になると思ったので、あえて聞く事はしなかった。
◆
で、場面は変わって告白当日。 雪路から仕事を押し付けられたという体で泉と理沙を先に返して、昇り慣れた時計塔のエレベーターへ。ボタンを押す手が震えているじゃないか、私らしくもない。
「……」
次にこのエレベーターに入る時、私はヒナとどうなっているんだろうか。考えても仕方ないのは分かっているが、止まらない。
ウィーン
「あ、花菱さん」
「ごきげんようですわ」
開いた扉の前にいたのはハヤ太君とアリス姫。ヒナを生徒会室に呼び出しておいてくれるという約束をしていて、その帰りのようだ。
「ふたりとも、ありがとう」
「いいえ、このくらいお安い御用ですよ」
「部屋でヒナが待ってますわ。私たちは行きますわよ、ハヤテ」
「うん、アーたん。では…」
「ああ」
ウィーン
ついてしまった最上階。相変わらずの大層な扉が生徒会室を守っている。 ここでヒナはどんな顔をして待ってるのだろうか…。もう、どうとでもなれという気持ちでノックもせずに扉を開ける。
「あれ、美希!?」
「なんだ、驚いて…」
ハヤ太君たちはヒナに本当に私の事を伝えなかったようだ。私の顔を見るなりがっかりしたような安心したような顔をする。
「今日私に話があるって、貴女のこと?」
「ああ、私だぞ」
「そうなんだ。…もう、アリスが『特別なお客様』だなんて言うから誰が来るのかと思ってたわ」
お姫様のヤツ、いらんハードルを上げやがって…などという憎まれ口を叩く余裕はこの時の私には無かった。が、いつもはその場に無いポットにはかろうじて気づけたので話題に出してみる。
「ほう、じゃあその紅茶は私のために淹れてくれてたんだな」
「そうよ。はい、どーぞ」
見知らぬ客人を迎えようというヒナの気合を感じる紅茶だった。私のために淹れてくれたものだ。それはもう…
「うまいな」
「それはどーも。特別な葉よ」
興奮しっぱなしだった頭を落ち着けるのにちょうど良い苦味だった。ヒナが話を振るまでは休憩にしよう。
「それで話ってなにかしら?宿題なら見せないわよ?」
「分かってるって、ヒナはお堅いな」
さて、どう切り出すか。時間はたくさんあったのに結局決めきれずにいた。いきなり「好きだ」もセンスが無いだろうしな…。
「ヒナ、私と一緒にテラスに出てくれないか?」
「えぇっ!?テラスに?」
私の提案にヒナは驚く、と言うより明らかに嫌そうな反応だった。まあ予想の範囲内だ。
「私とでは…やっぱり怖いか?」
「そっ、そんな事…あるわけ無いじゃない!ホラ、行くわよ?」
「フフッ、そう。ヒナはいつでもかっこ良くなくちゃな…」
ゆっくりとだが確実に歩を進めるヒナ。私はそれを急かさないよう手を添えるだけ。
「手、離さないでね?」
「ああ、分かってる」
見慣れた学校の敷地、見慣れた大都会のビル群、見慣れた人々の営み。いつもと変わり映えしない風景が広がっていた。見慣れたはずのものなのに、そこから見えた景色は今まで見た何よりも美しく見えた。ヒナの目にもこのすばらしい景色が焼き付けられているだろうか。
「ヒナ、聞いてくれ」
「ん、何かしら?」
「今から私は突拍子も無い事を言う。だけど、ただそれを聞いてくれればそれだけで良いんだ!」
「どうしたの?改まっちゃって。…良いわよ。何を言われても、まずは貴女の言葉を最後まで聞くわ」
「ありがとう。では…」
そのヒナの言葉に勇気を貰って、いざ告白せんと決心…したはずだった。呼吸を整えて、言い出す言葉を整理して、握っていたヒナの右手を取ろうとした時に、気付いてしまった。
「歩君の誕生日と、声優の中尾衣里さんの誕生日は一緒だそうなんだ」
「…それは本当に突拍子も無い話だわね」
あそこまで盛り上げて、決心して、出した言葉がこれ。一体何が私をそうさせたのか。
「怖い思いさせてすまなかった。戻ろうか」
「えっ…こんなの全然大丈夫なんだから!」
「まあ無理するな、ヒナ」
そう、ヒナは無理をしている。告白しようとした時、ヒナの手が震えているのに気付いてしまったのだ。 私では彼女を安心させる事が出来ない。この「告白しようとするシチュエーション」に酔っているのが私だけなんだと分かった瞬間、空しくなった。ヒナの事を一番に想っていると自負していた自分が、実は自分勝手にヒナを振り回していただけだったのだ。
「それで、本命のお話は?まさかあんな事を言うために、わざわざ私をテラスまで連れ出したんじゃないでしょう?」
「……」
・・・
「失恋をした」
「えっ!?」
「どうしようもなくミジメで寂しかったから、変な事を言って誤魔化したんだ」
「美希…」
ここで「慰めて欲しい」だなんて言えない。多分、そう言えばヒナは理由も聞かずに慰めてくれる。それと同じく私が甘えてしまうだろうというのも分かっていた。
「私の肩でいいなら、泣いてもいいから…」
「…ヒナっ!!」
何も聞かずに貸してくれた肩はいつものヒナの温かさで…とても安心出来てしまい、柄にもなく大泣きしてしまった。
◆
「言いたくなかったら言わなくていいんだけど…」
「うん?」
泣くも泣いて、私の呼吸が落ち着いたころにヒナが切り出す。
「失恋の相手って、ひょっとして…ハヤテ?」
「!?」
多分ヒナは勇気を出して聞いてきたのだと思う。が、私にとっては告白以上に突拍子も無い話だった。
「ハハハッ」
「ちょっ、私おかしいこと言った?」
「あー言った言った。安心しろ、ヒナの恋人を盗る気なんてさらっさら無いぞ。…もっともっと素敵な人だ」
「あーっ、ハヤテを馬鹿にするなー」
「馬鹿になんてしてないさ。その人が本当に素敵なんだから仕方が無いんだ」
ハヤ太君だって私と同じ事を思ってるぞ、と言いたかったがやめておこう。
「そう。会ってみたいわね、その素敵な人に」
「すまんなヒナ…」
ヒナが会う事は絶対に出来ないという意味で謝る。
「良いわよ。誰だって知られたくない事のひとつくらい…」
無理に聞いてこないところが実にヒナらしい。その優しさに、今日は甘えさせてもらおう。
◆
「ヒナちゃん、美希ちゃん!」
「遅かったな二人とも」
時計塔からいつもの様に二人で出て行くと、そこには泉と理沙が。先に帰っていいと言っていたのだが…。
「泉、理沙!待っててくれたの?」
「悪かったな遅くなって…」
いつもより明らかに遅い時間だったが、時計塔で何があったのかは二人は聞いてこない。気を遣ってくれているのか、何も考えてないのかは分からない。
「よし、久々にヒナも揃った事だ。明日は休みだし、私の家に泊まりに来い!歩君も呼ぼう」
「え、でも…」
「安心しろ。お姫様には許可を取ってあるし、ハヤ太君に着替えを持ってきてもらってある。もちろんお気に入りの下着もだ」←ちょっ!衣類はアーたんが詰めてくれたんですから誤解を招く言い方しないで!ホントですよ!byハヤテ
「なんで私の許可を取る相手がアリスなのよ!?」←ヒナはまったく気にしてないというのにハヤテは何を慌てているんですの?byアリスちゃん
上手くいったらヒナをそのまま家に泊める約束をハヤ太君たちとしていた。上手くはいってないけど、まあこんな形でもいいだろう。
「やったー!ヒナちゃんとお泊まり久しぶりだ〜!」
「最近ヒナはハヤ太君とばかりお泊まりしてたみたいだからな」
「ちょっ、理沙!変な事を言わないの」
「否定はしないんだな」
「美希まで〜!…もう、行くわよ!」
チョイ役なりに抱えている物、お分かり頂けただろうか。 想い人になれなくとも、私とヒナは友達だ。このかけがえの無い関係を大切にしていこうと思う。
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『今日は二人で温泉に入るわよ♪』
『ほぉ〜、それはイイですね〜…って、え"え"えぇぇ!?』
「ちょっと!なんでこんなトコ撮られてるのよォ〜!!?」
お泊まり会では、ホームシアターでヒナとハヤ太君のこれまでの思い出を動画で振り返った。 もちろん動画提供はあのお姫様だ。
「ヒナちゃんすごーい!だいたーん!」
「まさかヒナの方がハヤ太君の身体目当てだったとはな…」
「あ〜あ。おとなしそうな顔して結構スケベなのが皆にも知られちゃったね、ヒナさん」
「動画はまだまだあるぞ〜!」
「(白目」
このあと、滅茶苦茶カミナリ落とされた。
【つづく】
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【あとがき】
まさかの美希のお話でした。ずーーーっと書きかけのまま作成中フォルダにあったネタをようやく消化できました。ちなみに他2名の話は構想すらありません。 ヒナギクを人の輪の中心とする物語でCutiesとなると、資格十分っちゃあ十分ですよね。これまでの話の中でハヤテやアリスちゃんと一緒にいる時のヒナギクについては苦手なもの(高い所、ヘタレ、素直になれない性格等)を克服する傾向で書いてましたが、美希についてはヒナギクにとってその域に至っていない。そんな対比を感じ取って頂ければと思います。 恋人のポジションはハヤテに、一番の親友のポジションは歩に取られてしまっている不遇な環境ですが、前向きにいっていただきたいキャラです。
余談ですがハヤテの恋愛観については「バキ」のアライJr編に影響されまくっています。…と言って通じる方がいたらうれしい。
ご感想・ご質問などお待ちしております。 ありがとうございました。
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Re: 【第10話更新】しあわせの花 Cuties ( No.41 ) |
- 日時: 2018/02/14 22:41
- 名前: どうふん
- あーあ、へたれちゃったか。いや残念、と言いたいところですが、まあそれで良かったんじゃないですかね。美希の気持ちとしては、告白を済ましたんでしょう。
どうふんです。ご無沙汰です。
>「告白しようとするシチュエーション」に酔っているのが私だけなんだと分かった瞬間、空しくなった。
やはり美希はいい奴ですね。もっとも >ヒナの事を一番に想っていると自負していた自分が、実は自分勝手にヒナを振り回していただけ ・・・というのは今さら感が強いですけど。
それでも、それなりに受け止めてあげようとするヒナギクさんは相変わらずステキです。 美希もこんなヒナギクさんを好きになったけど、決して女の子が好きなわけじゃないと思います。普通の恋愛をして彼氏と並んで歩く日がきっと来るんじゃないですかね。
しかし、アリスちゃん。あんな動画を人目にさらすのはワルノリしすぎだ。せめて一人で楽しむだけにしときましょうね。
毎度ながら楽しんで読める作品でした。また、新作を期待してます。
どうふん
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【感謝】レス返し ( No.42 ) |
- 日時: 2018/02/18 19:45
- 名前: ロッキー・ラックーン
- >どうふんさん
ご感想ありがとうございます。
今回の話は、最終的にはヒナを尊重する美希として、その最終的な姿を断片的に書いたものです。 そこに至るまでの経緯はめんど・・・ネガティブな方向性に行ってしまうと思ってはしょりました。 最後まで自分の好きな姿を見せてくれたヒナの事をこれからも応援するというか、愛し続けると思います。良い意味で。
アリスちゃんの行動については「ハヤテの恋愛観なんぞ認めませんわ。二人はどうあがいても私のパパとママなのですわ」という意味として捉えて頂けると・・・。 周囲がグウの音も出ないほどに二人の親密になる姿をアピールする、いわば広報のようなものといえば良いかと。適当です。
それでは、またいつの日か。 ありがとうございました。
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【第11話】春風千桜 ( No.43 ) |
- 日時: 2021/07/30 00:04
- 名前: ロッキー・ラックーン
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
3年半…放置してしまいました。その間に世界は大きく変わってしまいましたね。 私個人的にも1度死にかける事態に陥りましたが、周囲の皆様のおかげでなんとか生還する事ができました。 ちなみにコロナじゃありません。詳しく知りたいなんて物好きな方は毎週土曜のチャットルームにて…!
で、少し時間と体調に余裕ができたのでひっさびさに書きました。 久々の割に読者の皆さんに負担をかけてしまいますが、長いです。 あと、イマイチ把握できてないキャラ同士の呼び方を決めました。 原作がどうこうではなく、この話の中ではこういきます↓↓
千桜からの呼び方 アリスちゃん→「姫様」地の文では「アリス」 歩→「西沢」
千桜の呼ばれ方 アリスちゃん→千桜さん 歩→千桜ちゃん マリアさん→千桜さん ハヤテ→春風さん
という訳で、主役バレですね。今回はメガネビューティーのあの人の話です。 それでは、どーぞ!
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読者の皆さん、ごきげんよう!春風千桜だ。 好きなことは可愛くて物凄い人のサポートをすることだ。 この物語ではアパートの住人Bくらいの扱いを受けている。 別に文句があるという訳ではない。住人Bとして主役の2人を面白おかしく見させてもらっているからな。 今回の主役は私と言われても、特になんにも無いぞ?しいて言えば、通いメイドをしてるくらいかな。 なんにも無いので、住人B目線でのアパートの様子をご覧いただくとしよう。
しあわせの花 Cuties 第11話【春風千桜】
とある日曜日の朝。 ナギとゲームで徹夜してしまった私は、なんとなく物音のする台所へと眠い目をこすりながらフラフラと入っていった。
「あれ、おはようございます春風さん」
「おはようございます、千桜さん。今日は早いですね!」
まだ5時前だというのに、マリアさんと綾崎くんが元気いっぱいに働いていた。これには罪悪感を覚えざるをえない。
「おはようございます…スミマセン、実は今から寝る所でして…」
「あら、徹夜ですか?」
「はい。ナギとゲームをしてて…」
しばらくこのアパートにいて学んだこと…マリアさんには正直にということだ。 ナギをかばおうとして変に誤魔化して伝えてうまくいった試しが無い。
「まあ!?じゃああの子もこれから寝るんですか?」
「はい。もう先に爆睡してますが…」
「はぁ…」
ナギはマリアさんに黙って私の部屋に来てたようだ。 黙って来てもロクなことが無いってのに!
「ゲームをするなとは言いませんけど、徹夜は控えた方がいいですよ?せっかくのピチピチのお肌にも悪いですよ」
「はい、気をつけます。あの、ナギは私に付き合っただけなんで…」
「あの子へのお気遣いは大丈夫ですよ。寝たふりをして部屋を抜け出した事実は変わりませんので」
あー、これはみっちり叱られるパターンだな。 そういう運命だったと諦めるしかない。
「春風さん、寝る前にこれをどうぞ!」
唐突に綾崎くんが出してくれたのはホットミルク。 朝食の準備と同時に私に作ってくれていたようだ。 たしかに寝る前にはちょうど良い飲み物でありがたい。
「ありがとう綾崎くん、いただきます」
砂糖が少し入れられた牛乳の甘さが徹夜で疲れ切った脳を優しく包んでくれる。 もうここで落ちてしまいそうな眠気が襲ってくる。
「おはようございまーす!…あらハル子、随分早いのね」
「おはようヒナ。私はこれからおやすみだ」
これまた元気いっぱいに食堂に入って来たのは、主役の桂ヒナギク。私にとっての可愛くて物凄い人その1だ。 この時間に10キロほどランニングしていると聞いたことはあったが…本当だったのか。
「おやすみ?…あぁ徹夜したの。スゴイわね。私なんて夜10時くらいには眠くなっちゃうわよ」
「朝5時から10キロランニングする方がスゴイって」
おしゃべりをしながらホットミルクを飲み干し、ヒナを玄関まで見送りに行く。
「じゃあいってきまーす!ハル子はおやすみー」
「「「いってらっしゃーい」」」
朝日に向かって走り出すヒナを尻目に、大あくびをしながら部屋に戻ろうとする私。 これにも罪悪感…は感じていない。ヒナは好きでやってるだけだし…。 とりあえずおやすみだ!
◆
「今日もまた…激しく寝過ごしてしまいましたわ…」
「おはよう、姫様。今日は早いんだな」
午前10時、なんとなく目が覚めてそのまま起きてしまった。明日は学校なので、まだ眠いけど生活リズムを戻さないといけない。 なんとなく縁側に来たら、ちっこい先客がいたので挨拶を交わす。
「ごきげんよう、千桜さん。全然早くなんてないですわよ。もう10時ですわ!」
このお姫様、こと寝起きに関してはナギ並にひどいと評判だが、口にすることはご立派だ。
「そっか。意識だけは高いな」
「意識だけじゃありませんわ!(行動するとは言ってない)そういう千桜さんも今起きたんじゃないですか?」
「ああ。ナギと徹夜して朝寝たけど、もう起きちゃった」
「あらあら徹夜だなんて不健康ですわね。それでは体内時計がおかしくなってしまいますわ。明日は月曜で学校もあるでしょうし、私が直してあげますわ!」
自信満々に宣言するアリス。確かに今のこの異常な眠さをどうにかしてくれたら助かるのだが…。 アリスはどこからか取り出したクッションを私に差し出してきた。
「姫様、これって?」
「見ての通りクッションですわ。ひなたぼっこで太陽の光を浴びれば自然と身体も起きますわよ」
「なるほど、確かにそうだよな」
言われるがままにアリスの隣に座り、さんさんと降り注ぐ朝の太陽を浴びる。 春の日差しは暖かく私たちを包み込んでくれる。これは気持ちが良い…
「…」カックン
「…」 カックン
二人揃ってうっつらうっつら。まあ、寝ちゃうよな。
「アリスちゃん、千桜ちゃんおはよー!!!」
「「!?」」
この無言の時を元気ハツラツにぶち壊してくれたのはアパートの住人Aこと西沢歩だ。 実家が健在なのに、綾崎くんと恋仲になるためだけに入居してきた…ある意味すごいヤツだ。 ヒナに綾崎くんを取られてからしばらく経つけど、いつまでいるのか…謎だ。
「いい天気だねー!」
「にっ、二度寝なんかしてませんわ!」
「それは流石に苦しいぞ、姫様」
聞かれてもないのに取り繕おうとするアリス。なるほど寝起きがやはり弱点なのか…覚えておこう。
「ところで、人のひなたぼっこを邪魔するなんて、一体なにごとですの?」
「そりゃないよー。今日はバイト行く前にお悩み相談してくれるって言ってたじゃんー」
「………あら、ごめんなさい。今の今まで忘れてましたわ」
「そりゃないよー」
どうやら二人の間で約束があったようだ。たいして怒っていない西沢の態度を見るに、よくあることなんだろうと察した。
「お悩み相談…?」
「うん、アリスちゃんに色々話を聞いてもらってるの。学校のこととか、ハヤテ君とヒナさんのこととか、私の新しい恋のこととか…。すっごくいいアドバイスをくれるよ」
「すごいな」
そう言えばヒナの部屋には来客が多い。それもヒナのいない時間に。 みんなアリスに話を聞いてもらいに来てるのか…。
「忘れていたのは申し訳ありませんわ。バイトまでそんなに時間も無いでしょうし、早くやりましょうか」
「うん。じゃあ千桜ちゃん、アリスちゃん借りてくねー」
「私はモノじゃありませんわ!」
「いってらしゃーい」
ヒナの部屋に向かう二人を見送り、また一人きり。せっかくだから昼食までは日なたで体内時計をリセットするか!
◆
「おはよう諸君!あれ、ハヤテとヒナギクはどうしたのだ?」
「もうとーっくにデートに出かけましたよ。午後からお客様の来るどこかの誰かさんは大丈夫なんですか?」
昼食を食べていると、ようやく起きてきたのは三千院ナギ。私のゲーム友達だ。 13歳にして飛び級で白皇の高等部に入る天才の凄いヤツ…のはずだが、普段の生活がアレすぎて台無しな感じだ。 マリアさんの返事も呆れ返った様子だ。
「フン、準備なぞとっくに終わってるのだ!そうだマリア、昼メシのあと髪をとかしてくれ」
「そーゆーのを『準備ができてない』って言うんだよ」
「えっ、そうなのか?」
私の指摘に驚いた様子のナギ。これは部屋とかも散らかしっぱなしでマリアさんに叱られるんだろうなぁ…。
「まあとりあえず、私は一樹をもてなさなくてはだから、千桜は午後はアーちゃんと遊んでくれ」
「ヒマなので遊んであげますわ」
「それはどうも…」
アリスのお守りは任せた、といったところか。 彼女と二人きりになるのは珍しいな。面白いことがあるといいが…。
◆
昼食の片付けも終わり、午前中に引き続きひなたぼっこに勤しむ私とアリス。 もうこのまま一日過ごしちゃえとも思うが、一応遊ぶか聞いてみる。
「遊ぶと言っても、どうする?」
「そうですわねえ…散歩も兼ねて、西沢さんでも冷やかしに行くというのはいかがでしょう?」
「ふむ、悪くないな」
そうと決まればお互いに身支度をして、アパートを出る。 喫茶どんぐりまではそこそこの距離があるので、ちょっとした運動になりノドも乾く。 わざわざ出かけて疲れたところの目的地が喫茶店。このマッチポンプ…嫌いじゃない。
「千桜さん、もう疲れましたわ。ハイヤーで行きましょう!」
「お姫様だからって、そーゆーのは良くないぞ。ってかまだアパートの前じゃないか!」
自分から言いだしておいてぐずるアリスの手を引っ張り、どんぐりへと向かう。 最後の上り坂はかなりしんどかったが、帰りはあれが下りになると考えてなんとか耐えきった。
「あ!千桜ちゃん、アリスちゃん。いらっしゃーい!」
「いらっしゃいましたわ!」
「どこでもいいかな?」
「いいよー、ご新規2名様ご案内ー!」
客席の埋まり具合は半分ちょい。この店にしては頑張っている気がする。 私は外の風景も中の様子も一望できる端っこのテーブルへとアリスを連れていった。
「いらっしゃいませー」
「ありがとうございましたー」
「はーい、ブレンドとオレンジジュースと肉マンお待たせしましたー!」
うらやましい。西沢の接客をボーッと見ながらふと思った。 彼女の笑顔にはオンもオフも無いように見える。アパートで見る顔そのままだ。他の客もその接客に満足そうにしている。 それに引き換え私はどうだ?アパートの住人の前でメイドの時のテンションなんて出せる訳がない。 別に隠したいという訳ではないが、もう今更カミングアウトするタイミングも逃して今に至る。 あー、無駄にストレス抱えてるよなー私。 咲夜さんにもナギの前で気を遣わせちゃってるし…。
「あの、千桜ちゃん」
「ん?」
「あんまりジロジロ見られると恥ずかしいんだけど…」
ボーッと眺めてたつもりがだいぶ凝視していたようだ。ボーッとしていたからか、つい本音が出てしまう。
「あー、ごめんごめん。西沢の接客を見てると心があったまるなーと思って」
「もー!褒めてくれても何も出ないよー!マスター、ホットココアマシュマロマシマシ2丁入りまーす!」
「へ?」
上機嫌になった西沢の勝手なオーダーの通しに、思わず変な声が出る。
「ココは私の奢りだよ、ココアだけに」
「「……」」
寒いギャグで冷えた身体にマシュマロ乗せココアはちょうど良いメニューだった。
◆
「うらやましいのですわね、西沢さんのこと」
「ぶっ!?」
ココアを飲んでいると唐突にアリスが話し出した。図星だった私は吹き出しそうになるのをこらえる。
「お顔にそう書いてありますわ」
「マジか…!?」
書いてあることなんか絶対無いのだが、私は持っていた鏡で自分の顔を見る。
「少なくとも私の知る貴女のお友達は、貴女が新しい一面を見せても変に思うことは無いと思いますわよ?」
「んー…そうかな?」
このお姫様、私の悩みを知っているのか!?一体どうやって!?
「話の主役になったからには相応の扱いというものがありますの」
「人の心を読むなよ…」
なるほど、ヒナや綾崎くんはいつもこれで鍛えられてるのか。そりゃあこの子に頭が上がらない訳だ。
「まあ変に隠してストレスを溜めるよりは、さらけ出したほうが貴女もこれから楽でしょう?それにみんなも喜びますわ。ナーちゃんも、貴女のご主人様も…」
「姫様…」
はからずも私のお悩み相談となった喫茶店。 帰り道、途中で歩き疲れたアリスをおんぶしながらこれからの事を考えた。 マシュマロココアで余計に摂取した糖分は、これでチャラだ。
べつのひ
「ハルさん、ホンマにええんか?」
「はい。隠すのも疲れますし、咲夜さんにも気を遣わせますし…」
この日、私は咲夜さんーー私にとっての可愛くて物凄い人その2だーーにお願いしてアパートまで同行してもらっている。 私はメイド姿でメガネはかけていない、「ハル」の状態だ。
「さよか、ハルさんがええならええんや。せっかくならドカンと笑わせたってや!」
「こんなんで笑いますかね…」
私の作戦はアパートの住人を集めてマジックショーをして、最後に大変身と称してメガネをかけてカミングアウトをするというもの。 このためだけに手品の本を3冊買って必死こいて練習した。その甲斐あって、10分は舞台の尺を埋められるくらいになった。
「咲夜に言われてとりあえずみんな集めたぞ」
「サンキューな、ナギ。ハルさんも喜んでるでー!」
「私のためにお集まりいただき、感謝感激ですぅー!!」
縁側に集まってもらった住人、私は庭でショーを行うという流れだ。 ヒナも西沢も、このハイテンションなメイドが私だと気づいていない。
「アレ、メガネかけたクールそうな女の人おらんかったっけ?」
咲夜さん、それは余計な話ですよ!!
「メガネは来ないと。多分メガネ星に帰ってメガネのメンテナンスでもしているのだろう」
「なるほどなー!」
ナギめ…メガネメガネ呼びやがって…あとで叩く!
「じゃあハルさん、始めよか!」
「ハーイ!レディースアンドジェントルメン!今日はメイドのマジックショーにお集まりいただきありがとうございます!」
『わーい』←(『』は住人みんなとして読んでください)
「今宵は貴方たちを…メイドイリュージョンの世界へと誘(いざな)います」
『どこやねんそれ!』
「それでは、イリュージョンスタート!!」
そこからの私は多分凄かった。 シルクハットからハトを出し、ヒナに引かせたトランプのカードを当て、マリアさんの1万円札を燃やして復元し、ナギの身体を真っ二つに斬って戻した。進路に「マジシャン」の選択肢も出てきたんじゃないか…!
「皆さん、楽しんでますかー!?」
『たのしんでまーす!』
「ありがとー!でもごめんなさい。次が最後のイリュージョンなんです」
『えー!?』
「名残惜しいですが、頑張りますので皆さん応援お願いしまーす!」
『いえーい!!』
私もみんなもノリノリだ。さて、肝心のカミングアウト…どんな反応が来る…?
「メイドの大変身いっきまーす♪」
『いえーい!!』
後ろを向き、髪を結って、メガネをかける。これだけだ。さあ、どうなる!?
「これがメイドの正体でしたー!」
「千桜!?」「春風さん!?」「ハル子!?」「千桜さん!?」「千桜ちゃん!?」「ですわ」
やり切った、言い切った。あとはどうとでもなれ…!
「いやーハルさんすごいな!確かにちょっと似てると思ったけど、メガネかけたらますますそっくりだぞ!」
「え"!?」
「はい。僕もなんとなーく似てると思いましたが、ここまでとは!」
「は!?」
「世の中にはこんなに似た人がいるものなのね」
「おい!」
「はぁー、やれやれですわね」
こいつらアリス以外気付いてない!?んなバカな!!
「おい、千桜はなぜ見に来てないのだ!?劇場版のラストシーンの時のように部屋で寝てるのか!?マリア、起こしてきてくれ!」
「いやだから!私が春風千桜なんだって!」
「ん…?では千桜がハルさんのモノマネをしていたって事か…?」
「ああんもう!メイドのハルも春風千桜も私なんだよ!」
『なんだってー!!?』
「コイツら…」
「アーッハッハッハ!!最高のリアクションもろたな、ハルさん!」
住人B目線でお送りすると言ったが、結果的には主役になってしまった。 まあとりあえず変に思われることなくカミングアウトをすることができた。アリスには感謝だな。 しかし…
◆
「おーい千桜、今日もハルさんの声でやってよ(モン●ンを)」
「お前…ハーイ、最強メイドハンターのハルさんが、狩って狩って狩りまくっちゃうゾ!ナギお嬢様もレッツハンティーーング!!」
「プハハハハハハ!れっつ…はんてぃんぐだって!!ハハハハハ!!」
「お前…」
私が大富豪になったら絶対ナギをメイドにして遊んでやると誓ったのだった。
【つづく】
------------------------
【あとがき】
千桜さんのお悩み解決してしまいました。相変わらずアリスちゃんの活躍が書きたくて仕方ないマンのRRです。 話の裏でハヤテとヒナギクにはつかの間の二人きりの時間も楽しんでいただけたかと思います。あ、ナギと一樹くんもですね。
最初は「可愛くて物凄い人のサポート」をテーマにヒナギクと長々しゃべるシーンを作ってましたが、ふとハルさんカミングアウトネタを思いついたのでお蔵入りに。そのうち書き上げる…そのうち…
「千桜」って書くときに毎度千の桜と打つのが面倒なのでユーザー辞書登録までしてしまいました。 SS関連では千桜さんだけの快挙。
そして咲夜が初登場でした。関西弁に自信が無いのでこれまで出さなかったキャラ。 おかしいトコがあれば是非教えてください。
ところで飛行機や新幹線のアナウンスでよく聞く「レディースアンドジェントルメン」という表現、この令和の世の中では使わなくなってるらしいですね。ただこの話は平成なので気にしない。
さて久しぶりの投稿で小説版の来訪者もなかなか厳しい人数かと思われます。ハヤテというコンテンツ自体も…。 それでもRRは毎日チェックしますので、感想なんていただけたらすぐにお返事します!
またいつの日かお会いしましょう!ていうか、ちゃんと終わらせんといけないですよね…。スミマセン…。
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Re: 【2021.7 第11話更新】しあわせの花 Cuties ( No.44 ) |
- 日時: 2021/08/08 08:39
- 名前: どうふん
- ロッキー・ラックーンさんへ
久しぶりにロッキーさんの作品を堪能でき、楽しませてもらいました。 確かに千桜さんはいろいろ有能ですし、その気になればマジックショーくらいできそうですね。 しかしあれだけ大掛かりに正体を明かしたにもかかわらず誰も気づかないとは・・・。 かつてメイド姿を一瞬で見破った愛歌さんの眼力はやはりただ者ではなかったわけですね。
当方の作品でも千桜さんはキーパーソンで、私の分身を務めているのですが、考えてみればメイドの千桜さんを扱ったことはなかったなあ・・・。 原作では作家になった千桜さんは副業でメイドを続けているんでしょうか。そんなことを久しぶりに考えました。
どうふん
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Re:どうふんさん ( No.45 ) |
- 日時: 2021/08/08 14:16
- 名前: ロッキー・ラックーン
- どうふんさん、ご無沙汰してます。ご無沙汰にもかかわらず、ご感想いただきありがとうございます。
千桜さん、初めてまともに出てもらいましたが、好き勝手に動く他のキャラと比べてとても扱いやすい常識人でした。メイド姿の件は、ヒナギクかマリアさんあたりは気付いても良いのではないかとも思いましたが、たまに出る抜け感ということでボケてもらいました。ちなみに愛歌さんにも出てもらおうとも思いましたが、キャラ数多くなりすぎるので断念しました。実際、マジックショーの時には歩もいましたがほぼセリフなしで持て余してしまってます。 作家のストレスを発散するためにも、ぜひ副業でメイド業を続けて欲しいですね。咲夜のもとでならできる!
連載期間の半分以上の放置でしたが、お楽しみいただけたのであれば幸いです。 ネタ自体は練ってたりするんで、またお読みいただける日が来てくれるよう細々頑張ります。 ではまたお会いする日まで!
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【第12話 桂ヒナギク2】 ( No.46 ) |
- 日時: 2023/03/03 00:43
- 名前: ロッキー・ラックーン
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
ヒナギクさんの34歳のお誕生日ですね。
なんとかかんとかやっつけでも仕上げたので投稿しちゃいます。
それでは、どーぞ!
------------------------
コーヒーは癒しなんだと思う。 ストレスの多い現代社会で、いっぱいのコーヒーがほんの少し人々の気持ちをやわらげる。
ここは喫茶どんぐり。 そんな癒しのコーヒースポット。
「ま、客はだーれも来ませんけどね…」
「……」
しあわせの花 Cuties 第12話【桂ヒナギク2 -真昼喫茶店でも有能- 】
土曜日の昼下がり、お客様はゼロ。 店内にいるのは店員の私と、お守りで連れてきたアリスだけ。
というのも、今日は大寒波が襲来して東京にも大雪が降る事態に。 そんな中でも同人誌のイベントがあるとかで、アパートの住人は私と付き添いのアリス以外はナギの手伝いに駆り出されて有明のあの大きな展示場に。 この大雪の中、本当にお疲れ様ね!
ちなみに喫茶どんぐりの営業自体はハヤテ、ナギ、歩、私、アリス(口を出すだけ)の"チームどんぐり"が接客やらメニュー開発やら集客のための宣伝やら色々と頑張っていて、いつもであれば、土曜日のこの時間はほぼ満席の状態になるというのは知っておいて欲しい…! 特にナギは「ラビッ●ハウスにもスティー●にも負けない店を作るぞ!」とやる気満々だったりするの。
「雪の降る寒い日に、あったかい喫茶店でダラダラしながら、ヒナのお給料から天引きされるお金でクリームソーダを飲む、こんなに幸せなことはありませんわ!」
「はいはい、それはよかったわねー。それにしても一人くらいはお客さん来て欲しいわね…」
の●太君のようなことをのたまいながら、アイスに乗ったさくらんぼを舌の上で転がすアリス。 幸せなのは結構だけど、このままでは開店休業。 アリスの子守りだけで私の人件費がかさんでしまって申し訳なく感じるわ…。
カランコロカラン
「いらっしゃいませー!!あ、あなたは橘くんの…」
「あなたはハヤテ様の彼女さんの…!」
10時の開店からはや3時間。ようやく、ようやく、本日1人目のお客様。 白皇学院を辞めた橘ワタル君のメイドさん、確か貴嶋サキさんだったわね…。
「こんな足元の悪い中、ようこそいらっしゃってくださいました。どうぞゆっくりしていってくださいね」
「ありがとうございます。すみません、ホットミルクを一杯もらえませんか?…はぁー」
「はい、ホットミルクですね」
そのお客さんは見るからに何か悩んでいて、ため息ばかりついていたの。 貴嶋さんは直接の知り合いという訳ではないけど、こんなにため息が多いと心配になってしまい、ついつい話しかけてしまう。
「何か…悩み事でもあるんですか?」
「え?」
「いえ…顔色がすぐれないようでしたので…」
「ああ、すみません。大した悩みじゃないのですが…同じ家に住む好きな人と、もう少しうまくいけばいいなぁって…」
同じ家に住む好きな人!? ご主人である橘くんのことかしら?ご主人様との恋のお話?ステキね。
「なるほど、恋の悩みですね。全然大したことない悩みなんかじゃないですよ!」
「そうですかね…?」
「私もずーっと、同じアパートにいる好きな人とうまくいかなかったので、貴嶋さんの気持ちすごく分かります!」
「そうなんですか!」
「ホントにその通りですわね」
「外野はだまって!!」
「ばっちこーいですわ」
「その外野じゃなくて…」
私とアリスの漫才を見せても仕方ないので、貴嶋さんの方に向き直る。
「桂様はどうやってそんな状況を脱したんですか?」
「ぜひ『ヒナ』って呼んでください。私には恋のキューピッドがいて、逐一アドバイスをもらえてたので変なアプローチとかしないで済んだのだと思います」
「へぇ、そうなんですね!ヒナ…様にはすごい人がいるんですね」
「はい、そうなんです。それがこのアリスです」
「エッヘンですわ!」
しばらくアリスと一緒に暮らしていて学んだこと、それは私のカンはかなり鈍いということ。 たとえば、このシーンであれば私の直感では「フリルを増やして努力すればいいんじゃない?」と思っている。 九分九厘正しいと自分の中では思っているけど、その自分の直感でうまくいった試しは無い。悲しいことに。 なので自分の直感がポンと出てきても、一回アリスに確認をしてみるというプロセスを踏むようになったわ。
「というわけで、アリスから一言なにかある?」
「そうですわねー…あなたは、その方のことを大切に思ってますか?」
「ええ、もちろんです!」
え、フリルじゃないの!? と思ったけど、やっぱり私のカンは変だったみたい。 話を遮らずに二人のやりとりを見守る。
「では、その大切に思っている気持ちを普段から口に出していますか?」
「うーん、あまり口には出していませんね」
「そう。ならまずは、普段から口に出すというのはいかがでしょうか?」
「え!?でも若に変に思われるんじゃ…」
「あなたのご主人様も、あなたのことを大切に思っていますわ。その手からこぼれ落ちてしまわぬように必死になってあなたを守ろうとしています。だからあなたもその気持ちに応えてあげたらもっとうまくいくと思いますわよ」
相変わらず、まるで本人から聞いてきたかのように話すわね。(←本人から聞いてますわ byアリスちゃん) その自信満々な話し方に、みんな引き込まれていくのよね。
「なるほど…でもちょっと恥ずかしいですね」
「なら、練習していくのはどうでしょう?ここにお手本もいますし。ヒナ、いつものを…」
「え"!?ここでやるの!?」
アリスからの急なパスに戸惑う私。面識のあまり無い人相手でも容赦無いわね…。
「そうですわ、今更何を恥ずかしがってますの?ハイどうぞ!」
「ハヤテ、いつもありがとう…愛してる!」
「まあまあですわね、及第点ですわ」
常日頃から感謝を伝え合うようにとアリスから言われてる私たちは、毎日こんな言葉をかけ合っている。 すでに私の習慣にある言葉だけど、家族以外の人に聞かれるとなるとやはりかなり恥ずかしい…。
「『いつもの』ということは、ヒナ様は毎日ハヤテ様に『愛してる』と言葉をかけられているんですか?」
「え、ええ。そうです。ハヤテがいつもいつでも私のそばにいてくれるとは限らないので…」
「ステキですね…!私は、若がいつも自分のそばにいるのが当たり前だと思っていたかもしれません。ぜひ、私の特訓にお付き合いください!あと、私のことは『サキ』とお呼びください!」
「もちろんです、サキさん!」
というわけで、雪の降る街の静かな喫茶店が謎の特訓場となってしまったのだった…。
◆1時間後◆
「若、いつもありがとうございます…愛してます!」
「「おぉー!(ですわ)」」
サキさん表情がすごく柔らかくて明るくなった!特訓の成果ね! こんなステキな人に思われているだなんて、橘くんも隅に置けないわね。
「なんか…自信がついてきました!」
「そうですか、良かったですね!ぜひ橘くんに言ってあげてくださいね」
「はい!お二人ともありがとうございました!」
カランコロンカラーン
「……」どーーーーーよ 「はいはい、素晴らしいお手本でしたわね」 「……」
あんまり私のキャラに合わないドヤ顔をキメてしまい、変な間ができてしまう。
「まあ、とにかくなんとかなりそうだからヨシね!」 「そうですわね」
カランコロンカラン
「そうしているうちに、またお客様が…」
「ヒナちゃん!」 「泉!?いらっしゃいませ…こんな雪の日にこんな所へどうしたの?」
本日2人目のお客様は泉、今日は美希も理沙も一緒じゃないみたい。 この雪の中を走ってきたのか、息があがっている。
「ヒナちゃんと二人きりでどうしても話したい事があって、今日みたいな日ならバイトもヒマかなーって思って…ハァハァ…」 「別にバイトの時に乗り込んで来なくても。いつでも大丈夫よ?」 「ううん、わざわざ時間を取るとなると緊張して無理だと思って…ハァハァ…」 「一体どうしたの?とりあえず、息も上がってるみたいだし水でも飲む?」 「ありがとー、いただきまーす!」
コップになみなみ注がれた水を一気に飲み干す泉。よほど喉が渇いていたみたい。 いつもの元気なイメージとは違った雰囲気。ひょっとして緊張してる? 二人きりでの話って…もしかしてハヤテのことかしら?
「それで、どうしても話したい事って?今ならお客さんもいないし」 「あ、でも…」
私の催促に対して口ごもる泉。どうやらアリスの事が気になっている様子。 本当に私と二人きりじゃないと話したくなさそうね。
「ヒナ、泉さんは二人きりで話したいのですわ。ここには私がいるのでそれができませんわね。というわけで、事務室の休憩スペースでテレビでも見てますわ」 「アリスちゃん、ありがとー!」 「いえいえ、ごゆっくりですわ」
どこで覚えたのやら、アリスの空気を読むスキルはさすが…。 事務室の扉がパタンと閉まったと同時に、緊張した面持ちの泉は意を決して口を開く。
「私もハヤ太くんのこと、好きなの!」 「え”!?」
急な告白に、面食らった私は何も言えなかった。
「でもヒナちゃんのことも大好き」 「うん…」 「でもハヤ太くんとヒナちゃんへの好きは違ってて、ハヤ太くんをヒナちゃんに取られたのは悔しいけど、二人はすっごくお似合いだとも思ってて…なんだかよくわからなくなっちゃって…」 「そうなの…」
泉の言うことは良くわかる…気がする。 私だって、ハヤテが他の女の子とくっついてしまったらなんて思えば良いかわからなくなると思う。 そんな中で、私にありのままの気持ちを言いに来る泉の勇気は本当にすごい…。
「ヒナちゃんは私のこと、どう思ってる?」 「もちろん、かけがえのない友達だと思ってるわ」 「ありがとー!それが聞けたら十分だよー」
セリフとともに泉は私のことを抱きしめてきた。 肩が震えている。顔は見えないのだけど、多分泣いているのだと思う。 改めて、私の今の幸せというのは当たり前なんかじゃないのだと痛感した。
「私も、ハヤ太くんに好きって言ってもいいかな?」
涙も落ち着いて、注文のロイヤルミルクティーを飲みながら泉が言ってきた。 これに関しては、私も思うところがある。
「もちろんいいわよ、ていうか私への許可なんて取る必要無いわよ」 「えっ、なんで!?」 「ハヤテは誰のものでもないから…誰がハヤテを好きになっても、私がとやかく言える筋合いは無いわ」
そう、ハヤテは誰のものでもない。 もちろん私のものにしたいという気持ちはあるけど、それが現実になるかどうかは別問題なの。
「えー?ハヤ太くんはヒナちゃんの恋人なのに?」 「確かにそうね。でもそれは私とハヤテの二人の間に交わされた約束に過ぎないわ。だから他の人には関係ないの。泉でも歩でも、誰だってハヤテを好きになれるし、その誰かがハヤテに告白しても私にはどうすることもできないわ。ハヤテはハヤテで、自分の幸せのために一番だと思う女の子を選ぶべきだとも思ってる。だから、ハヤテが私をダメだと思ってしまったらすぐに別れてしまうべきなの。そんなことにならないように、私はハヤテに相応しい女性であるために努力し続けてるわ」
私の持論に、泉は目を丸くする。 たしかに、少し前の私からは絶対に出てこないようなセリフ。 なにもかもアリスのトレーニングのたまもの…なのかもしれない。
「へぇー、ヒナちゃんなんか大人ー!」 「そんなこと全然無いわ。ハヤテが誰かに告白されたなんて聞いたら気が気じゃなくなっちゃうし、ハヤテのことになると自分が何してるのかわからなくなっちゃうし…。でも、ハヤテを好きだって気持ちは誰にも負けないわよ?ナギにも、歩にも、アリスにも、もちろん泉にもよ」
ハヤテを好きな気持ち。 比べることでも無いとは思うけど、これだけは誰にも負けないし、ハヤテはハヤテで私のことを一番に好きだと思っていることを私は知っている。 信じているのではなく知っている。「信じている」だとそうでない可能性があることを意味するから「知っている」なの。
「…ヒナちゃんには敵わないや。でも私もやれるだけやってみる」 「うん、頑張って!」 「じゃあ、今日はありがとう!またねー!」
カランコロカラーン
雪の中を全速力で走って去っていく泉。 転ばないか心配ね…。
「悩みが解決してあんなに喜ばなくてもいいのに…」 「ずっと抱えてた胸のつかえが取れたのですわ、それは喜びますわよ。それにしても、あなたたち二人して同じようなことを考えているのですわねー」 「そりゃあ、同じ人から毎日お説教されてるし」 「確かに、そうですわね」
また二人きりになってしまったどんぐり。雪は変わらずに降り続いている。 クリームソーダの後にパンケーキを食べて、お腹もいっぱいになったアリスがウトウトし始めると…
カランコロンカラン
「はぁー疲れたぁーー!寒かったー!」
今日はじめての団体客は、有明チームのナギ、マリアさん、千桜、歩、ハヤテの5人。 イベントは17時まででそこから撤収の流れで、19時からアパートで打ち上げだったはずだけど…。
「みんな、お疲れ様ー!まだ4時前よ?だいぶ早かったわね?」 「天気もこんなだし、準備した分は完売したから早仕舞いしてきたんだ」 「そうなの!すごいわね!」 「打ち上げはアパートでの夕食の時間だから、その前にどんぐりで反省会でもと思って…いいかな?」 「もちろんよ!ちょうどお客さん全然いなくてヒマしてたの!」
ナギの同人誌のほうもかなり順調に成果が上がってるみたいね。 打ち上げのご馳走の下拵えはアパートの台所で済ませてあるけど、どんぐりはどんぐりで彼女たちを労ってあげたいと思う。
「みんな、寒い中お疲れ様!あったかーいココア淹れてあるから飲んで飲んで」 「サンキュー!いやーあったまるぅー!さすがヒナギク。天才!」 「ほんと美味しいです。ヒナギクさんにだけ働かせて、申し訳ないですね」 「いえいえ、みなさんお疲れだと思いますので!」 「ヒナさん、おかわり!マシュマロマシマシでお願いします」 「西沢ほんとマシュマロ好きだよなー。といいつつ私もおかわり!」 「はいはい、すぐ持ってくるからねー」
それぞれが思い思いのくつろぎ方をしている。 癒しの空間をようやく作り出すことができたわ。
「ヒナ、僕も手伝いますよ」 「ハヤテも疲れてるんだから、みんなと一緒に休むの。いい?」 「え、でも…」 「私は雪のせいでずーっとヒマしてたから体力が有り余ってるの。はい、座って座って」 「ヒナがそこまで言うなら…」 「ハヤテ、そんなに働きたいのであれば私の相手をすれば良いのですわ。とりあえずたかいたかーいを」 「オッケー、アーたん」
アリスをあやしているハヤテを眺めながらコーヒーを淹れる私。 ああ、なんだかとても幸せ。 そうか。癒しのコーヒースポットは、お客様だけではなくて自分まで癒してくれる空間なのね。 今はまだアルバイトだけど、いつか私自身がみんなを癒す空間を作ることができたら、それはとても素敵なことなのだと思う。
こうして…今日も喫茶どんぐりのコーヒーは人々を癒やしていく。
「コーヒー、一杯も出てませんけどね」
【つづく】
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【あとがき】
44巻「深夜食堂→有能 真昼喫茶店→ポンコツ」のパロディでした。 原作では数少ないヒナギクとアリスちゃんが1話通して絡みがある回です。
完全にラブコメのコメ側に行ってしまっていたヒナギクを、ちゃんとラブ側に戻してあげたいという気持ちが働いて作ったものです。 口調はなるべく原作通りのセリフ回しにしたいと思ったため、たまに「?」って感じになってます。 ちなみに、ヒナギクがアリスちゃんを名前で呼ぶシーンってほとんど無いんですよね。 51巻になってアテネと話してる時に始めて「アリスちゃん」って言っていたのを見て、「ちゃん付けかーい!」って思った印象が激しかった覚えがあります。 51巻が2017年6月に1刷、このSS連載ではマリアさんの話が2017年…どんだけ進んでないんだこのSS。
■サキさん 原作では面識が無い感じで描かれてましたが、ハヤテの彼女という設定であればどこかしらで顔を合わせてるだろうし、 そもそも学校全校生徒のことを知っているヒナギクが知らないというのはちょっと不自然だなと思ったので知り合い設定。 ワタル君はアニメ4期にアリスちゃんからありがたいお説教があったので、それを拝借しました。
■泉 3人娘では美希だけがフィーチャーされましたが、まさかの泉も登場。 一応ちゃんと完結したいという思いがいまだにありますので、少しずつながら各キャラクターのスッキリさせたいことはやってもらってます。 美希の話にハヤテがしていた恋愛観と同じ感覚のヒナギク。いずれも範馬刃牙くんの恋愛観をパロってます。 理沙はさすがにピンで出ることは無いだろうなー…。
オチはなるべく原作に寄せて。 あえてオーダーでコーヒーが一杯も出なかったのを回収しています。
ところで作中の「どーーーーーよ」のドヤ顔ヒナギクはLINEのスタンプにもなってます。令和も数年経ってからスタンプが出るハヤテ、侮れません。 アリスちゃんスタンプも少しあるので必見です。
最後に、茶室で昨年末だかの忘年会チャットで話していた「目標」 最低目標が1話投稿、最高目標が完結させる。だったかと思いますが、なんとかかんとかやっつけですが最低目標はクリア。 自分が満足に完結させるためには何が必要なのか洗い出す必要もあり、そんな時間を取れていない現在。 まずは終わらせずに死なないように、健康管理からやっていこうと思います。
と言うわけで、ヒナギクさんの34歳のお誕生日記念でした。おめでとうございます。 伊藤静さんのライブ"Daisy"の2回目の開催を祈りつつ、またお会いできるように過ごしていきます。
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感謝 ( No.47 ) |
- 日時: 2023/03/11 00:30
- 名前: RR
- 感想キャンペーン期間とのことなので、賑やかしに。
誤字の指摘を頂きました。 自分で何十回と読み直していても見逃してしまう無意識の恐ろしさを感じるとともに、読んでくれてる人がいることに感激です。
に加えて誤字指摘されたことのアナウンスと修正のシステムがすごいと、体験して初めて感じました。
管理者の双剣士さんと、指摘してくれた方に感謝。 ありがとうございました。
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(感想の書き方忘れてしまった…) ( No.48 ) |
- 日時: 2023/03/24 00:37
- 名前: きは
- にゃんぱすー。
止まり木が始まる前から連載されている超長編の本作ですが、私自身感想を送るのは初めてだったりします。 お話が完結してから感想を送ろうと思ってた……そんな時期が私にもありました。
そういう冗談は置いときまして。今回のお話で気になったのは、泉の告白とヒナギクの恋愛観ですね。 本作のテーマ「ヒナギクに恋しちゃって仕方のないハヤテ」という根底の部分を守りつつ、ヒナギクのスタンスを明白にしています。 親友の一見すると横恋慕のような告白を受け入れているのが好印象です。 名参謀アリスちゃんはあくまでアプローチ面での補佐だと思ってますので、この部分はヒナギクの人間性がにじみ出てるのではないでしょうか。さすが完璧超人。
前スレでナギの失恋にアリスちゃんが慰める話もありましたが、 ハヤヒナだけでなく、周囲の人間模様にもしっかり触れていくというのは素晴らしいことです。 ハヤヒナ一辺倒で終わってしまうと、主人公にフォーカスを当てたまま「めでたしめでたし」で終わる童話のような、ディフォルメされたような感が拭えません。 つまるところ、ゴールを目指すのはもちろんですが、前回のハルさんのようなサイドストーリーのお話でもたしかな満足を得られる作品だなと思います。
あ、でも、体調管理には気を付けてください。 ずーっと息の続くような作品になることを切に願っております。
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感想感謝! ( No.49 ) |
- 日時: 2023/03/26 23:00
- 名前: ロッキー・ラックーン
- にゃんぱすー、RRです。
全く関係ないけど今日はヒナギク役の伊藤静さんのトークショーで最前列、手を伸ばせば届いちゃう圏内で姿を拝見できたのですごく上機嫌です。
ご感想ありがとうございます。サンキューキッハ。 止まり木が始まる前からの連載って、そんなバカな…本当でした。 人間、「終わらせる」というのが一番苦手だというのを顕著に表した例ですね(他人事
とりあえず、死なないで生き延びれたことでキッハからの感想をもらえて嬉しい… って、確認してみたら2017年にくれてるわー!笑 No36ね。
ヒナギクの恋愛観は完全にバキのアライJr編の受け売り+ここの2人であれば何があっても揺るぎないでしょという思いで書いてます。 決して完璧超人というわけではなく、ハヤテに対してだけは真面目になった結果おかしな事をしだす(生徒会を私物化するとか言い出した事の実例の話も作ってますが、長い事未完成)という風に捉えていただけると嬉しいです。
周囲の人間模様については、自分の脳内に立っているキャラクターについては一人も余す事なく不幸にしたくないという気持ちがあります。ルカを始めとする自分の中で深掘りできていないキャラクターについてはわざわざ変に書くのも申し訳無いので、元からでないような形で対応をしています。
なので筆が遅いのも相まっていつまで立っても終わらない作品とあいなってしまいました。 つい今しがたキッハの作品を読んで、他作品とのコラボ股書きたいなーとも思ったので今年中にもう1話くらいできるよう、健康に気をつけて細々とやって行きます。 生きてる限りは終わらせる気持ちはありますので、またご感想いただけると嬉しいです。
RR
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Re: 【2023.3 第12話更新】しあわせの花 Cuties ( No.50 ) |
- 日時: 2023/04/09 23:55
- 名前: 双剣士
- いま見返したら、このスレッドで私の名前が出てるの誤字修正システムのとこだけじゃないですか!
ということで1ヶ月遅れですが感想を書かせていただきます。不精な管理人ですみません。 きはさんが泉ちゃん絡みのコメントをしてくれたので、私からは本スレッド初登場のサキさんたちの話をしようかなと。
さすがはRRさん版アリスちゃん、ワタルくんの近況を本人から直接聞いていたとは。 店子さんに某新婚夫婦が入ったことでイチャイチャが伝染してるかと思いきや、本命に対して奥手なのは相変わらずのようですね。 もっともその店子夫婦は火事ですぐ出て行っちゃいましたが。
……メタなコメントはここまでにして。 このスレッドに出てくるヒナギクは良い意味で原作とは違う自信家ですけど、恋愛相談に対しても「完走者」の立場で アドバイスしてる姿がすごく新鮮でした。アリスちゃんをフィルター役にして失敗を繰り返さないようにしてるのも彼女らしい。 もっとも当のアリスちゃんはそれを利用して完全に遊んでいますね。完璧超人を口先ひとつで操る幼女、恐るべし。
ただ、それでもアドバイスを活かそうとして滑りまくる姿しか思い浮かばないのがサキさんなんだよなぁ。 「愛してます」を舌噛みながら「味してます」と言っちゃって、「あぁごめん、味付け濃かったか」とワタルにお皿を交換されて 《か、間接キス……》と赤面硬直するイメージしかできないのは何故でしょう。 アリスちゃんの恋愛相談第2ラウンドが必要になる日はきっと近いのでしょうね!
ご投稿ありがとうございました。
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双剣士殿、感想感謝 ( No.51 ) |
- 日時: 2023/04/13 23:03
- 名前: RR
- このスレッド開設から9年、元スレッドからは12年の歳月を経て、合同本や企画以外で双剣士さんからの感想を頂けました。サンキューボッス。
やはり継続することと、アピールすることは大事ですね!
ワタル君は4期キューティーズ3話のアリスちゃん回でも直接アリスちゃんからお説教をいただくという役に恵まれてましたね。アニメオリジナルでしたが。という訳でそこからのお付き合いでサキさんの事も良く存じていたものと思われます。 キューティーズ5話のヒナギクへのアドバイスしかり、アリスちゃんの見せ場をオリジナルで作ってくれてた今は亡き制作の皆さまには感謝感激です。
話は戻って、店子さんのネタは勉強不足ゆえわかりません!失敬。 トニカワでタチバナビデオ店が出てるとか?今度教えてくだせ。
ヒナギクが他人に恋愛アドバイスをするなど、本編ではありえない現象ですよね。 本人の意識としては完走者という事に加えて、いまだに道半ばであるという経験を話したに過ぎないかとも思われます。 ハヤテともども、お互いにまるで今日初めて逢うかのように浮つき、まるで今日が最後の日であるかのように油断しないような教育をアリスちゃんから面白おかしく受けさせられてます。…またバキネタw
サキさんが上手くいかないのは当然ながら、それを慮れないワタル君の方が先にアリスちゃんトレーニングの餌食になるかもしれませんね。 パパママ以外の恋愛に口を出す気になるのかどうかは、アリスちゃんのみぞ知る…。
そんなこんなでご感想ありがとうございました。 今後ともどうぞよろしくお願いします。
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