ここまではSSサイト管理人としての私が、SS書きとそれ以外の面においてどんな悩みを抱えているかを説明しました。しかし管理人がどう悩んでいようと、読者には関係のないこと。読者にとっては自分の求めているものをこのサイトで得られれば、それでいいわけです。
当サイトは読者の目から見て、どのように見えているのでしょうか。
まずSSサイトとしての評価や期待が以前より高まってきていることは認めていいでしょう。20万ヒット記念のアクセス解析で示したとおり、読者数やブックマーク率は上昇傾向にありますし現役コンテンツである「ハヤテのごとく!」関連ページへのアクセス数もサイト内では圧倒的。他サイトとの比較においても、GoogleやYahoo!の検索をかけた際に検索結果1ページ目に載る程度には相対的優位性を確保できているといえそうです。ランキング1位になったところで表彰や賞金が出るわけではないので、検索1ページ目で皆さんの目に触れられる位置にいればそれで十分でしょう。
しかしサイト全体の雰囲気としては、親しみやすい人気サイトとはお世辞にもいえないようです。
今年5月に『ここの管理人は****な人?』という緊急アンケートを実施しました。前ページで述べた「SS以外のことは書かない」という方針からは外れますが、気になることがあったので1週間限定で意見を聞いてみたわけです。基本的に褒め言葉ばかりなのは企画の性質上仕方がないのでしょうが……よく考えてみると、評価されてるのは私が他のサイトで行動したり他の人のSSに感想を書いたときのことばかり。『支天輪の彼方で』というサイト管理人としての評価には、だれも触れていません。
前ページまでに書いたとおり個人的な経験や感情は極力出さずにサイト運営をしてきたのですから、ある意味で当然な結果といえます。このサイトにSS目当てで通っている限り、管理人がどんな人格・性格・趣味の持ち主であるかはまったく分からない。SSを楽しむ分にはそれでも支障ないけれど、いざ双剣士のイメージは何かと訊かれるとサイト外での出来事しか記憶に残ってない。そして思い出というと『小説に感想をくれた』『他サイトの掲示板などでアドバイスや注意を受けた』の2種類がほとんどと言っていい。仲間とか友人とか同好の士とかいう親近感とは無縁な、山奥に隠れ住むご意見番。どうもそういうイメージのようなのです。
くどいようですが読者の皆さんが冷淡なのではありません。そう見られるような付き合い方しかしてこなかった、それも意図してそれ以外の部分を隠し続けてきた私のほうに原因はあるのです。私だってネット参入初期に先輩方の小説サイトを回っていた頃は『小説が追加されたときだけ見に行く、他は興味ない』みたいな巡り方をしていました(2周年総括文を参照)。先輩方にメールを出すときも小説の感想を書くだけで、これを期に交流を深めたいといったニュアンスは込めませんでした。そんな私が読者にとって一番気楽で都合がいいサイト形態は何かと自問して『支天輪の彼方で』を運営してきたのですから、こうなるのは自業自得なのです。
気楽といえば気楽な運営方針ですが、そろそろこの弊害も目立ってきました。前ページに書いた『SS以外のことを話題に出来ない』というのもそのひとつなんですが、SSそのものに対しても障害が出てきたようなのです。
たとえばSSに感想を送るとき、気難しい作者さんにこんなことを書いたら失礼じゃないか、笑われるんじゃないかってブレーキをかけてしまう読者が増えてきてるようです。実際にはブレーキをかけた人の人数や心理はこちらには見えないんですけど、無記名の1行感想フォームの賑わい振りとその内容を見ていれば、メールで感想をくれる方々とは別の層の読者を掘り起こしているらしいことは推測がつきます。内容のほうもメールでは『上手いです』『構成力や描写が素晴らしい』といった技術面への言及が多く、『面白かった』『ほんわかした』といった感情面での評価は1行感想フォームのほうに集中しています。私は小説にダメ出しをしたことはあっても、もらった感想に文句や不満を返したことはないんですけどね?
また管理人の顔が見えないだけでなく当サイトに通う読者同士の交流も皆無なため、いわゆる『読者参加型コンテンツ』は悲惨な様相を呈しています。一時期あった掲示板は読者のほうが話題を持ち込んで私が答える形式に自然とならざるを得ず、読者同士の会話はほとんど成立しませんでした。また私のほうから話題を提供しようとした小説ノウハウ講座やSSあらすじシステムなどは、最後まで読者書き込みゼロのまま閉鎖を余儀なくされました。
そればかりか、当サイトに関わりを持とうとする読者の方もすっかり減ってしまいました。今年のお正月企画のとき、『メールアドレスを記入して感想をくれた方にはお礼SSを送ります』といった企画をやったのですが、相互リンク先からの応募はゼロ、某大手サイトで知り合った友人からの応募は1通のみ、他はみな携帯電話向けメールからの応募でした。今だから書きますが、あの時期は16万ヒット企画としてメールマガジンの発行を真剣に検討していた時期でして、自分のメールアドレスを明かしてまでも私の文章を読みたがる人がどのくらい居るのかを見積もってみたかったのです。しかし大半が携帯電話ユーザでは長文のメールマガジンを送れるわけもなく計画は頓挫、同様の理由でゲストブック設置も断念。結局はRSS導入へと方針変更したのでした。
かくして、SSを読む分にはいいけれど読者のほうからアクションをかけるには敷居が高い、そんなサイトとして評判が定着してしまった感があります。自分が望んだ運営方針に伴う当然の帰結とはいえ、さびしいです。