「支天輪の彼方で」11周年記念総括文  RSS2.0

4.撤退に至る経緯(2/2)


Since : 2009.10.12
written by 双剣士
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はじめに前提となる価値観撤退に至る経緯(1/2)撤退に至る経緯(2/2)今後についてハヤテSS批評サロンの総括おわりにご意見専用掲示板

(3)後期段階……創作系における地位低下

 「支天輪の彼方で」は交流サイトではなく2次創作サイトです。読者は2次小説を読みに来るのであって、運営者である双剣士と雑談するために訪れるのではありません。ですから交流の少なさ、閲覧者にとっての交流の見えにくさはあまり減点要素にはならないと思っていました。小説を読みたいと思う人だけが来てくれればいい、それを通じて裏側からジャンル興隆に貢献できる……そう割り切って運営を続けてきました。
 ところが2008年の春以降、つまり第1期アニメが終わって以降のアクセス数急降下が私の表情をこわばらせました。確かに第1期アニメ放映中はそれ以前の3倍近いアクセス数がありましたから、アニメ終了後に1/3前後に戻るのは仕方ありません。でも1/5を下回るのは想定外でした。ファン人口の裾野は間違いなく広がってるはずだし、作品数も被リンク数も以前より増えている。なのにアニメ化以前より来客が減るのは何故なのか。緊急アンケートで人気回復の手段を探ったりもしたものの、来客が減る根本原因はなかなか分かりませんでした。

 来客が減った原因に思い至ったのは数ヶ月後、SS捜索サイトArcadiaでハヤテSSサイトとして当サイトが紹介され来客数が一時的に急増したときでした。あそこでは第1期アニメ放映当時にも紹介されて、同様のアクセス急増を経験していました。そして比較してみたところ、第1期アニメ放映当時と終了後の来客数が、結果としてほとんど同じ数値だったのです。(第2期アニメが放映された今年にも同様のことがありました)
 つまり、アニメが終わったからと言って需要が減った訳じゃない。私の作風が飽きられたわけでもない。
 減ったのは知名度だったのです。これまで「ハヤテの2次小説に興味を持った人なら1度は訪れるサイト」と言われていた「支天輪の彼方で」が、今では知らない人の方が多い存在になっていたのです。

 もちろんジャンルが盛り上がるに伴って、うち以外にも小説サイトやブログはたくさん誕生しました。しかし当サイトは10年以上の歴史を持つサイトです。ページ数や被リンク数において簡単に追い抜かれるはずはなく、検索でも上位をキープしているはずだと思っていました。
 しかし調べてみると検索上位どころか、検索結果の3ページ目以降まで辿らないと当サイトは顔を出さなくなっていました。私より上位のサイトには「これから小説を増やして行きます!」と宣言してるだけの生まれたてサイトまで含まれていました。検索の順位がサイトの善し悪しを反映するとは限りません。しかし1ページ目に登場するサイトと3ページ目以降のサイトとでは、新規来客の数に差があって当然です。

 では何故、こうした相対位置低下が起こったのか? ここからは私の想像になりますが、他の小説サイトが個性化・差別化を強めたことと、交流系サイトと同様の囲い込み体制に入ってきたことが原因ではないかと考えています。
 思えば初期のハヤテ小説サイトは私と同様、色々なキャラのSSを書いてきました。もちろん得手不得手はあったものの、出番の少ないキャラを目立たせてやろう、自分の新解釈をジャンル内に浸透させてやろう、と言った気概にあふれていたような気がします。
 しかし新キャラ登場が一段落しネットの情報が整備されてから参入してきた小説サイトは、それとは別の狙いがあったようです。彼らは既に多くあった小説サイトの中で埋没しないためか、特定キャラの応援姿勢を堂々と正面に押し出してくる傾向がありました。単に「○○×△△メイン」と公言するだけではなくて、サイト名やHNにキャラ呼称を入れたり、各キャラのファンクラブを併設するようになってきました。そればかりか趣味の合う人同士で相互リンクやコメントやトラックバックを送り合ったり、合同企画を開催したり……感想系ブログの人たちが作り出した「輪」に相当するものを作るようになってきたのです。
 もちろんそれは悪いことではありません、趣味なんですから。しかしこうした創作サイトが市民権を得るようになってくると、うちのようなニッチ狙いのサイトは埋没しがちになります。ページ数や被リンク数は趣味の合う者同士の相互リンクやトラックバックによって簡単に追い抜かれてしまいますし、「○○の小説が読みたければ△△のサイトへ!」という明確な顔があるサイトは創作系以外からも紹介されやすく、また読者にとっても感想やコメントを送りやすい雰囲気が生まれるようになります。しかもジャンルの成熟によって読者の方も「意外性」よりは「自分の好きキャラの話をもっともっと」という志向が強くなってきていますので、主義のはっきりした小説サイトに直行した後は他を探そうと思わなくなった……あくまで想像ですが、こんな状況が起きていると思われるのです。

 こうなると初期段階で感じていた「ジャンルを盛り上げる一端としての手応え」は既に私の手を離れてしまったことになります。前々頁Aに記した「ブラックホール恐怖症」が再発して、私の創作意欲はガリガリと削られていきました。もはや頼みの綱は前々頁B「ニッチ狙い」が読者に支持されるかどうか、そこだけに掛かってきたのです。

(4)末期段階……ある読者からのメール

 かくして検索エンジン経由での来客の大半を失った当サイトでしたが、それでも私はあきらめませんでした。新規来客や他サイトリンクからの来客は減っても、ブックマークからの来客は確かに存在する。うちのサイトを気に入ってくれて新作を楽しみにしてくれてる無言の読者さんは確実にいる。同ジャンルの人全員を味方につけられるわけじゃなし、楽しみにしてくれる人が1人でもいるならいいじゃないか……そうやって気持ちを支えてきました。ところが2009年に入った途端、そんな気持ちをぽっきりと折ってしまう出来事が起こりました。

『○○の更新をもっと増やしてください』
『△△だと思ったのにがっかりしました。次こそは△△を書いてください』
『もう●ヶ月も待ったんですよ、いつになったら◇◇を書いてくれるんですか』

 こうしたメール(意訳)が立て続けに、複数の読者から舞い込むようになったのです。(3)で述べた「主義のはっきりした小説サイト」に慣れきった読者さんが、私のサイトにもそれを押しつけてきたわけです。こっそりと自分なりの書き方を貫くことも許されなくなったのか、人気キャラのSS量産という世間の趨勢に合わせることしか期待されなくなってしまったのか……自分のやり方が当ジャンルの要望に合わなくなったことを思い知らされた瞬間でした。
 メールを送ってくれた人にそんな意図はなかったかも知れません。他のサイトに出したメールであれば問題なく通じた内容でしょう。しかし私にはもう軽く受け流す気力は残っていませんでした。


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