前ページを読んで「それは違うと思う」とか「なんでそんな頑固なの?」という印象を持たれた方は多いでしょう。こうした感覚が人によって異なるのは当然だと思います。しかし当サイトは元々マナー啓蒙サイトではありませんし、総括文とは私個人の経験や思想を1年ごとに書き記すのが目的です。ひとまず違和感には目をつぶって、先述のような価値観を持つ人間が「ハヤテのごとく!」ジャンルからの撤退を決断するまでの経緯をご覧いただきたいと思います。
(1)初期段階……同志が増えるのを素直に喜べた時期
当サイトが「ハヤテのごとく!」2次創作に参入したのは2005年5月。単行本第1巻が出た2ヶ月後で、ちょうど暫定最終回2(ハヤテが鷺ノ宮家に売られる回)を連載でやってた頃でした。当時は大手交流サイトがポツポツと産声を上げつつある段階で、まだまだ小説もイラストも供給不足のため投稿物コーナーも動きが悪く、名簿に名前を乗せるだけの同盟系サイトが幅を利かせていた頃だったと記憶しています。
あのころは読者の絶対数が少なかったし感想もあまり来ませんでしたけど、すごく充実してたと思います。原作の方でも新キャラ登場や既存キャラの新たな設定追加・内面描写などが目白押しだったので創作ネタには事欠かなかったし、少しずつでも同ジャンルサイトやSS書き手さんが増えてくるのが自分の頑張りの証みたいに感じられて、やる気に繋げられる時期でした。また時折もらえる感想も『読者の渇望感』に裏打ちされた熱い長文が比較的多かったため、数ヶ月に1本の感想であっても十分にお腹一杯になれる気がしました。当時はSurfers Paradiseや駄文同盟.comなどにも「ハヤテのごとく!」のカテゴリ分類など無かった時代で、登録内容更新のついでに管理人さんに依頼メールを出したりもしたものです。
(2)中期段階……格差社会化
ところが2年ほど経って、いわゆる『ハヤテ界隈』という呼称が出てきた頃になると状況が一変します。創作サイトや感想ブログの数が増えすぎて閲覧者の回りきれる数を超えた結果、誰もが知ってる定番サイトとそうでないサイトとの差が明らかになってきたのです。
もちろん以前からも人気サイトとそうでないサイトの差はありました。しかしファンサイト名簿やトラックバックの普及により、定番サイトは他の定番サイトとのつながりをはっきりと表に出し、連載のない日には定番サイト管理人さん同士のメッセ会話とか互いのサイトの企画紹介・バトン回しなどを堂々と記事にするようになってきたのです。あたかも「ハヤテファンであること」は胸元を飾るバッジの1つでしかなくて、それをきっかけにして知り合った閲覧者や管理人との交流自体が活動の核である、みたいな。こうなると交流の輪の外にいる閲覧者や新規参入者は定番サイトの盛り上がりばかりに目を奪われるようになり、その外側で活動してる人たちのことを意識しにくくなります。輪の内側にいる人たちの意識については述べるまでもないでしょう。
ただまぁ、これ自体は悪い事じゃないんです。自分が楽しいと思うことを自由にやるのが趣味の醍醐味なんだし、人気のあるサイトに注目が集まってますます人気を高めていくのは理の当然。それに輪の内側にいる人たちは選ばれし者だけのサロンを築いていたわけではなく、仲間が増えることを心から歓迎していました。参入障壁が低くて中に入れば快適。だったら入らなければ損というものです。
しかし問題もありました。相手が輪の中にいるか外にいるかによって、輪の中にいる管理人さんたちは露骨に態度を切り替えるようになってきたのです。自分と同じく「ハヤテのごとく!」を愛する仲間だから、などという牧歌的な空気はそこにはありませんでした。同じ輪にいる人からのバトンやコメントには即日回答するのに輪の外の人からのコメントは1週間以上放置するとか、ある人からの寄贈品は「頂き物」カテゴリに入れるのに別の人からのは「その他」「未分類」に入れるとか、そういう行為が目立ってきました。
私は前頁Cの理由により日記もブログもメッセンジャーも開いてなかったので、自然と輪の外側に位置するようになりました。「小説サイト持ちの双剣士」という肩書きを捨てれば駄目元で輪に飛び込むことも出来たのでしょうが、前頁Dの理由でそれも適いませんでした。それ自体は私自身の選択なので不満はありません。しかし他サイトへのコメントや寄贈作品が上述のような扱いを受けることに気づいたとき、私は自分の『許される活動範囲』というものが想像していたよりずっと狭いことを悟らざるを得ませんでした。それが意地悪や特殊ルールによるものでなく、仲間とそれ以外とを峻別するという人間として当然の思考による結果だという点も私の足を凍りつかせました。
なんだか暗い雰囲気になってきましたが、でもこの段階では私は落ち込んでいませんでした。他サイトにとっての良き閲覧者として、同じ趣味を持つ仲間として振る舞うことは自分には無理かも知れない。でもSS作者としての行動には何ら制約はなかったし、楽しみにしてくれる読者もいる。もともと10年間そうやってきたじゃないか……そう自分を納得させてSS執筆を続けてきたのです。
ここまではまだ、撤退することなど夢にも考えていませんでした。