日記風ショート小説  RSS2.0

1999年03月「チェリーの早春譜」第2週

written by 双剣士 (WebSite)
日記風ショート小説の広場へ
目次

01〜07日分+予告編
08日  09日  10日  11日  12日  13日  14日
15〜21日分  22〜28日分  29〜31日分+あとがき


第8日「将軍様のお呼び」

梅幸「(小声で)それにしても、手際が良すぎる。やつらが小樽どののことを調べるにしても‥」
玉三郎「(同じく小声で)うむ。この3人の隙を突くとは、侮れぬ相手かも」
チェリー「ねぇ、ねぇってば! どうなっているの、小樽様はさらわれてしまったの?」
玉三郎「(無表情に)うむ」
梅幸「実は、身辺に気を付けるよう知らせにこうして参ったのだが‥一歩遅かったようだな」
チェリー「そんな‥小樽様、小樽様ぁっ! わたくしが、わたくしがあんな事をしたから‥きっと罰が当たったんだわぁっ!」
小樽「(がらっ)よおチェリー、何を騒いでんだい‥」
一同「‥‥(一瞬、天使が通り過ぎる)‥‥」
チェリー「お、小樽様ぁっ!(抱きっ)」
小樽「ど、どうしたんでぇチェリー‥ちょっと厠に行ってただけじゃねぇか」
チェリー「小樽様、小樽様‥わたくし、わたくし‥(言葉にならない)」
梅幸「(あくまで冷静に)小樽どの、無事で何より‥さっそくだが、上様がお呼びだ」
玉三郎「我らと共に、ジャポネス城にご足労ねがいたい」
小樽「将軍さまが、俺に? いってぇ何の用で?」
玉三郎「おぬしと、ライムたち3人を狙っている輩がいるかもしれんのだ‥ところで、ライムとブラッドベリーは?」
梅幸「まさか、敵の攻撃を受けて?」
チェリー「い、いえ‥そのぉ‥(顔真っ赤)」
小樽「なんのこたぁねぇ、酒飲んで寝ちまってるだけさ‥将軍様のお呼びじゃしょうがねぇな、チェリー、ちょっくら行ってくるから留守を頼むぜ」
チェリー「嫌です!(小樽にしがみつく) あ、あんな思いをするのは、もう嫌!」
小樽「おいチェリー、聞き分けてくれよ‥ライムじゃあるめぇし」
梅幸「いや、おぬしたちも一緒に来るようにとの仰せだ。私と玉三郎で、ライムたちを運んで行こう」
玉三郎「そうだな。(ブラッドベリーを肩に担いで)行くぞ小樽どの」
小樽「あ、ああ‥そうしてくれると助かるぜ」
チェリー「‥(ふう、危なく出番が無くなるところでしたわ)‥」

そして舞台はジャポネス城内に。


第9日「風雲の予感」

家安「おお、よく来たのぉ小樽」
小樽「将軍さま、ご無沙汰しておりやす」
チェリー「ご機嫌うるわしゅう、将軍様」
家安「うんうん‥ん? 元気者のライムはどうした?」
小樽「それが、そのぉ‥いま家で宴会をやってる最中でして、ライムとブラッドベリーは酔いつぶれて寝ちまったんで」
梅幸「上様、残りの二人は我らが城内に連れてまいりましたゆえ」
家安「そうか‥ま、楽にすると良い。ちと長い話になるからの」
小樽「はい」
チェリー「(小樽の隣に、身体を寄せるようにぴったりと張り付く)」
小樽「お、おいチェリー‥」
家安「ふぉっふぉっ、よいよい‥ところで小樽、心を持ったマリオネットとの暮らしはどうじゃ?」
小樽「はぁ、どうって‥騒がしくて危なっかしいけど、仲良くやってます」
家安「そうか‥良かったのぉ、チェリー」
チェリー「はいっ、わたくしは幸せ者です」
家安「そうかそうか‥チェリー、お前を作った初代家安公は、きっと小樽のように、マリオネットを大事にしてくれる男が現れるのを信じていたに違いない。じゃがな、世のマリオネットたちで、お前のように扱ってもらえるのはごく少数なのじゃ」
チェリー「‥???」
家安「いまお前たちは宴会をしておったと言うたがの、このテラツーの別の国では、今こうしているうちにも沢山の血が流されておる‥聞いておるか、ガルトラントがペテルブルグに侵攻しておるという話は」
小樽「ガ‥ガルトラン?」
チェリー「ガルトラント、ですわ小樽様。ジャポネスのお隣の国で、ファウストという強力な総統が指揮していると聞いています」
家安「うむ‥そのガルトラントが、1週間前にペテルブルグとの国境を突破し、遮る者をなぎ倒して侵攻中なのじゃ。その先頭には、不敵な笑みを浮かべて防衛軍を翻弄する3人のマリオネットが立っているという‥おそらくは、心を持ったマリオネットがな」
小樽「心を持ったマリオネットが? じゃあ、ガルトラントにもチェリーたちみたいな奴らが‥」
家安「ファウストはそういう男じゃ。野心のためには手段を選ばぬ‥心を持ったマリオネットも、奴にとっては強力な兵器のひとつに過ぎんのだろうよ」
チェリー「ひどい‥戦争の道具に使われるなんて」
家安「気持ちは分かるが、ガルトラント側に同情しても始まらん。そんなわけでペテルブルグ側は狂乱しておってな、あちらのセイバーでは歯が立たんから、ジャポネスのセイバーを貸してくれ、と言ってきたのじゃ。わしが以前うっかり口を滑らせたのを憶えておったらしい」
小樽「ま、まさか将軍様、用件ってのは‥(意気込んで立ち上がる)」
家安「落ち着け小樽。わしがお前たちを戦場に送る男と思うたか。きっぱり断ってやったわい」
チェリー「小樽様‥(小樽を座らせる)‥ありがとうございます、将軍様」


第10日「ペテルブルグの切り札」

小樽「将軍様、でもそれじゃ、俺たちを呼んだのは‥?」
家安「まぁ焦るな小樽、話はこれからじゃ。というわけで、この話はいちおう断ってはおいたがな、ペテルブルグとしては自国の存亡を賭けた戦い、はいそうですかと引き下がるとも思えん。お前たちを襲う者があるかもしれんと言うのは、ひとつにはそういう理由からじゃ」
チェリー「襲うって、ペテルブルグが、わたくしたちを、ですか?」
家安「さよう、心を持ってはおらぬにせよ、ペテルブルグにもセイバーマリオネットはおるからな。梅幸や玉三郎に匹敵するセイバーを送り込んできて小樽を人質に取り、チェリーたち3人にガルトラントと戦うよう脅しを掛けることがないとは言えん」
小樽「きったねぇ‥そんな手に乗るもんか!」
チェリー「小樽様、大丈夫、大丈夫ですから(小樽をひし、と抱きしめる)わたくしが、小樽様のことをきっと守ってみせますわ」
小樽「チェリー‥すまねぇ」
チェリー「何をおっしゃいます、これがわたくしのつとめ」
家安「‥う、うぉっほん。すまんが、話を続けてよいかな? 2度までも『ま○って守○月天』に流れるわけにはいかんのだが」
チェリー「あ、あ、わたくしったら‥(ちぇっ)‥そ、そういえば将軍様、先ほど『ひとつには』とおっしゃいましたが?」
家安「うむ、実はの、ペテルブルグはこの苦境をひっくり返す、切り札という物を持っているらしい。そう、最終兵器とでも言うべき、恐るべき機械人形をな」
チェリー「機械人形? じゃ、それもマリオネットなのですか?」
家安「いや、マリオネットというのは正確ではないな‥どこぞの鉱山で発掘された、古い遺跡の中に眠っておったそうじゃよ。明らかに300年以上前‥つまり人間がこの惑星テラツーに入植する前に、作られた遺跡だそうじゃ。あまりおおっぴらには言えぬことだが、この惑星には先史文明があったらしいのじゃな」
チェリー「先史文明?(かたかた)わたくしのデータベースには、そんな物はありませんわ」
家安「それも無理はない。発掘されたのはつい最近じゃからの。だが先史文明の有無はともかく、その遺跡から機械人形が発掘されたのは事実じゃ。そして傍にあった古文書によると、それは自由に空を飛び、一振りで山ひとつを吹き飛ばす破壊力を持つ、先史文明を滅ぼすきっかけとなった兵器らしい」
小樽「何だって!」
チェリー「そんな、ものが‥いったいどんな‥」
家安「これはペテルブルグでも極秘事項での、こんな国難でもなければ情報を漏らしはしなかったろうが‥見かけは女性、いやマリオネットと同じ姿をしていて、大きさも人間とほぼ同じだそうじゃ。そして動力源はゼンマイらしい」
小樽チェリー「ゼンマイですって?」
家安「さよう。そしてそのゼンマイを巻いた人物を主人と見なしてその命に従う‥そう古文書には書いてあっての。発掘された当初は怖がって誰も触らなかったそうじゃが、こういう事態となった以上、ガルトラントへの反攻に役立てようと意見が出たそうじゃ」
小樽「そ、それで、目覚めたんですかぃ?」
家安「それがのぉ‥その人形、人見知りをするらしくての。ゼンマイを巻くと眼は覚ますのじゃが、主人の顔を見ると『ちぇっ』と捨てぜりふを残して、また眠ってしまうそうじゃ」
小樽「‥(こけている)‥」
チェリー「でも、それじゃ間に合わないじゃありませんの」
家安「それでじゃよ。ペテルブルグは、わしにこう言うてきた‥伝説のマリオネットを目覚めさせたという少年なら、この機械人形の主人になれるのではないかと。だからぜひ、その少年を貸して欲しい、とな」

偽チェリー「なんだか、別のアニメの話に似てきたわねぇ‥」


第11日「これでよろしいのですか?」

小樽「ちょっと待ってくれ、将軍様。俺ぁ別に、そんな‥」
チェリー「‥(黙って小樽の決断を待っている)‥」
家安「小樽。気が進まぬのはよぉ分かる。口実が変わっただけで、戦場に向かうことに違いはないからの。お前にすれば、いままで縁もゆかりも無かったペテルブルグのために命を張る理由なぞあろうはずも無い‥しかしな、小樽」
小樽「そんなことじゃねぇ! そんなんじゃねぇんだ、俺は‥」
チェリー「‥(黙って小樽の決断を待っている)‥」
家安「嫌なら断ってもかまわん‥だが、最後まで話を聞いてくれんか。もしお前が行かなければ、ペテルブルグは滅び、その人形はガルトラントの手に渡るじゃろう」
チェリー「‥!!!」
家安「ガルトラントの総統ファウストは、心を持つマリオネットを従える男。お前と同様、マリオネットを目覚めさせる何かを持っておるのかも知れん。そんな奴の手に、最終兵器を渡すわけにはいかんのじゃ」
小樽「そんなんじゃねぇんだ‥将軍様、俺は、せっかく眠ってるそいつを戦争のために目覚めさせる、それが我慢ならねぇんです。俺はチェリーたちを、戦いの道具として見たことなんか一度もねぇ。確かにこいつらは人並みはずれた力を持ってるし、俺のために戦ってくれたこともあるけど、でも、それを当てにして目覚めさせるなんて‥」
梅幸「我らはセイバーマリオネット。戦闘用にチューンされた機体。戦って上様のお役に立つのが、我らが使命」
玉三郎「さよう。おぬしの3人のセイバーも、ゆくゆくは‥」
小樽「言うな!」
チェリー「‥(俯いて、肩を震わせている)‥」
家安「よさぬか、玉三郎、梅幸。‥そうか。分かった、小樽。ならばもう言うまい」
玉三郎「上様!」
家安「よいのじゃ。あれがファウストの手に渡るのは痛いが、小樽がここまで言う以上無理強いはできぬ。機械人形が小樽にまでそっぽを向くようでは、何にもならぬからのう」
チェリー「小樽様‥」
小樽「‥(顔を伏せたまま)けぇるぞ、チェリー。ライムたちと一緒にな」
チェリー「(しきりに家安の方を振り向きながら立ち上がり)‥はい」
梅幸「小樽どの」
家安「梅幸、黙って行かせてやれ‥大儀じゃったな、小樽。もう帰って良いぞ。だがさっきも言ったように、身辺には十分に気を付けることじゃ」
小樽「‥わかりました」
チェリー「(無言で振り向き、家安に一礼する)失礼いたします」


第12日「戦争を知らずにボクらは生まれた」

梅幸「では小樽どの、ごゆるりとなされよ(がらっ)」
玉三郎「上様の‥いや、何でもない(がらっ)」
小樽「ああ‥ちぇっ、何てこったい。さっさと帰るつもりだったのに‥ジャポネス城に泊まることになるなんてよ」
チェリー「(眠るライムに膝枕をしながら)しかたがありませんわ。わたくしたちを狙っている人たちが居る以上、このふたりが眠ったままでは危険ですから」
小樽「だけどよ‥な〜んか、落ちつかねぇよな。こんな広い部屋に俺たち4人だけだなんて‥」
チェリー「‥4人‥」
小樽「すまなかったなチェリー、せっかくの雛祭りだってのに。明日の朝になったら、こいつらを連れて帰って続きをやろうな」
チェリー「(小声で)雛祭りは‥遅らせてしまうと、縁起が良くないんです‥」
小樽「‥え? 何か言ったか、チェリー」
チェリー「いえ、なんでも‥ねぇ小樽様、さっきの将軍様のお話ですけれど‥」
小樽「ああ、心配すんなよチェリー。俺ぁお前たちを置いてペテル何とかなんかに行ったりしねぇからよ」
チェリー「‥‥(うつむく)‥‥」
小樽「?」
チェリー「‥何だか、申し訳なくって‥わたくしたちは小樽様に、本当の人間のように優しくしていただいています。とっても感謝しています‥でも、ペテルブルグの人形は、戦争目当ての人ばかりをマスターに持ってきたのでしょうね‥」
小樽「おいおい、俺ぁ神様じゃねぇんだぜ。誰にでも優しく、なんてできねぇよ」
チェリー「‥ええ。でもその人形が起こしてくれたマスターの顔を見て、また眼をつむりたくなる気持ちが分かるような気がするんです。本当はその人形も、戦争なんかしたくないんじゃないのかしら‥わたくしたちと同様、小樽様のような優しい方が目覚めさせてくれるのを、ずうっと前から‥初代家安公がテラツーに来るよりずっと前から、待ちつづけてるんじゃないかって‥思えて‥」
小樽「チェリー‥そ、そりゃあ、可哀相だとは思うさ。そいつが、ほら、ジャポネスのどこかに眠ってて、戦争なんかと関係ないご時世に俺と出会ったのなら、新しい仲間として誘ってやってもいいと思うぜ。でもよ‥」
チェリー「‥可哀相です。たまたま戦争の時代に見つけられたというだけで、その子を利用しようとする人たちばかりが集まり、小樽様のような優しい方に敬遠されてしまうなんて‥」
ライム「‥小樽ぅ‥大好き‥むにゅむにゅ‥」
小樽「お、ライム‥はは、無邪気な寝顔しやがって」
チェリー「‥小樽様」
小樽「ん?」
チェリー「その人形も‥ひょっとしたら、ライムやわたくしたちと同じ夢を見てるのかも‥優しかったマスターとの思い出や、これから会うマスターへの憧れを胸に抱いたままで、じっと眼をつぶっているのかも‥だったら、いずれ戦うにしても、優しいマスターのために戦いたいと‥」
小樽「もう、それ以上言うなチェリー。俺ぁどこへも行かねぇ。今の俺には、守らなきゃならねぇ物があるんだ。おめぇらを放り出して、よその国の戦争なんかに行けるかよ」
ブラッドベリー「そうだよぉ小樽ぅ‥(背中に覆い被さる)‥そんな胸無し娘のことは放っといて、あたしとねんごろに‥すうぅぅ〜(崩れ落ちる)」
ライム「むにゃ‥小樽ぅ‥」
チェリー「小樽様‥」
小樽「さ、この話は終わり終わり。腹が減ったな、飯をもらってくるから二人を頼むぜ」
チェリー「‥はい‥」


第13日「空き巣」

小樽「将軍様、お世話になりました」
ライム「またね、家安のじっちゃん」
梅幸「ライム!」
家安「ははは、よいよい‥元気でな、ライム、チェリー、ブラッドベリー」
ブラッドベリー「ああ、小樽のことはあたしたちがちゃあんと守ってみせるからよ」
ライム「うん、大丈夫大丈夫」
チェリー「‥お世話になりました、将軍様」
小樽「さ、行くぞみんな(背を向けてジャポネス城を後にする小樽。その後を追う3体のマリオネットたち)」
玉三郎「‥上様」
家安「うむ‥ペテルブルグにとっては死活問題じゃからの。このままで済むとは思えん」
梅幸「では、我らが」
家安「いやぁ待て待て、お前たちがついては却って小樽が目立ちすぎる。むしろ、気の利いた人間の方が良いかも知れぬな‥そう、戦闘中のペテルブルグにすれば、セイバーをこちらに差し向けるより誘拐役の工作員を送り込む方が容易かも知れぬ」
彦左「‥では上様、てまえの配下の者を」
家安「うむ」

ライム「ねーねー小樽、おうち帰ったら雛祭りの続きしようね」
小樽「ああ、でも3月3日を過ぎちまったからな、急いで片づけないと」
ライム「ええぇ〜っ、つまんないよ、もっと遊びた〜い!」
ブラッドベリー「そうだぜ、なんか甘いのを飲んだ記憶しかないなんて、お祭りをした気がしないよ」
チェリー「ふふふっ‥でも、お祭りはいつか終わるものよ。今度はお花見の時にね」
ライム「えっ、『おはなみ』って何? 食べられるもの?」
小樽「ははは、今度は家の中じゃなくて、桜の木の下でやるお祭りのことさ‥さーて、着いたぜ(がらっ)」
ライム「たっだいま〜っ‥あれ?」
チェリー「こ‥これは‥」
ブラッドベリー「どうした?‥お、おい、空き巣か? 部屋の中がぐちゃぐちゃじゃねぇか」
ライム「あ〜っ、小樽が作ってくれたお茶碗が割れてる〜」
チェリー「(センサーの唸る音)‥小樽様、あれを」
小樽「ん? 足跡か‥ジャポネスのものじゃねぇな、これは」
謎の男「やぁ、やっと帰ってきたのか‥あんた、ここの人?」
小樽「(振り向いて)見慣れない顔だな、何だおめえは?」
ライム「キミ、誰?」


第14日「遠路よりの訪問者」

謎の男「やぁ、やっと帰ってきたのか‥あんた、ここの人?」
小樽「(振り向いて)見慣れない顔だな、何だおめえは?」
ライム「キミ、誰?」
謎の男「あ‥マリオネットが、しゃべった‥信じられない‥」
ブラッドベリー「何だ、お前。あたしの小樽に、なんか用かい」
謎の男「こっちのマリオネットも‥噂は本当だったんだ‥良かった、ここに来て良かった‥(はらはらと涙をこぼす)」
チェリー「小樽様、ひょっとしてこの方‥」
小樽「下がってろ、みんな」
謎の男「(急に顔を上げて)オタル・マミヤくん! 君がそうなんだね! 良かった、噂を信じてきてみて良かった‥君に頼みたいことがあって、はるばるここまで来たんだよ!(小樽の手を握る)」
小樽「お、おい、おめぇ‥」
花形「僕の小樽くんに何をする〜(謎の男の頭部に飛び蹴りを食らわす)」
謎の男「ぎゃっ!」
チェリー「キャー、いきなり何よ花ちゃん!」
ブラッドベリー「突然出てくんな花公(ぼかっ)」
花形「酷いよみんな、僕がどんなに心配したと思ってるんだぁぁぁ〜(空に舞いあがる)」
小樽「おい、おめぇ、大丈夫か?」
ライム「花ちゃんが人をのしたとこ、初めて見た‥」

(閑話休題)

チェリー「はい、どうぞ(お茶を差し出す)」
謎の男「ああ‥ありがとう、って言っていいのかな‥あちっ(手を引っ込める)」
チェリー「うふふ、お茶を飲むのは初めてのようですわね‥ペテルブルグにはありませんの?」
ライム「ほぇ?」
謎の男「(ぎくっ)」
ブラッドベリー「おいチェリー、お前なにか知ってんのか、こいつのこと」
小樽「まぁ、そんなとこだろうな(チェリーの方をちらっと見て)‥とりあえず、用件を言ってみなよ。せっかく来たんだしさ」
ライム「ぶぅ〜、なんなの今の? ずるいよ小樽とチェリーだけ知ってるなんて」
ブラッドベリー「ちょっと黙ってなライム」
謎の男「ははは‥それじゃ、前置き抜きで行くよ。僕の名前はペドロスカ・ルケチャロスキー。お察しの通り、ペテルブルグから君に会いに来た。心を持ったマリオネットを蘇らせたオタル・マミヤくん、君を探しにね」
チェリー「(声をひそめて)小樽様、やっぱり‥」
謎の男「オタルくん、我がペテルブルグは、今ガルトラントの侵略を受けて存亡の危機に瀕している。ガルトラントの装甲戦車と3体のマリオネットに対抗するには、もはや形振りを構っている余裕はない。君の力がどうしても必要なんだ」
ブラッドベリー「小樽の力が必要って、どういうことだい?」
小樽「いいから、ブラッドベリー‥そんなこったろうと思ったぜ。悪いけどな、俺はペテルブルグになんか行くつもりはねぇし、こいつら3人を危険な目に合わせるのもごめんだぜ。遠いところを来てもらって申し訳ねぇが‥」
謎の男「そうか‥いや、そうだろうそうだろう。マリオネットと一緒に暮らしていると聞いた時点で、そう答えるだろうとは思っていたよ。だからこそ僕が来たんだ‥オタルくん、頼むよ」
チェリー「???」
謎の男「僕を、きみの弟子にしてくれぇ!」
小樽「はぁ?」


01〜07日分+予告編
08日  09日  10日  11日  12日  13日  14日
15〜21日分  22〜28日分  29〜31日分+あとがき

日記風ショート小説の広場へ