01〜06日分
07〜13日分
14日
15日
16日
17日
18日
19日
20日
21〜27日分
28〜33日分
その夜、支天輪の中にて。
虎賁「反対だ、おいらは」
離珠「虎賁しゃん‥」
虎賁「いくらあのぼうずがOKしたからって、こればっかりは駄目だ。考え直してくれよ、月天さま」
シャオリン「‥ごめんなさい‥」
離珠「虎賁しゃん、シャオしゃまだって辛いんでし! わかってあげて欲しいでし!」
虎賁「でも、守護月天が主人を放り出して、他の人を守るなんて‥」
シャオリン「わかっているわ、いけないことだってことは‥」
離珠「虎賁しゃん! シャオしゃまは何も、太助しゃまを放り出すんじゃないんでし! 麻美しゃんの身の危険が去るまで、ちょっとだけ、ちょっとの間だけなんでし!」
虎賁「‥ちょっとって、いつまでだよ、離珠」
離珠「それは‥」
虎賁「守護月天の必要が無くなる日って、いつまでだよ‥昔ならいざ知らず、この平和な時代にあのぼうずに仕えてる月天さまが言ったって説得力無いぜ‥それに麻美とか言う姉ちゃんの事情なんて、まだ全然わからないんだろ?」
シャオリン「‥みんな、あなたの言う通り‥でもね虎賁、私、梨扇様の生まれ変わりを放っては置けないの。あんな光景を見たあとでは、なおさら‥太助様やみんなに迷惑を掛けるのは分かってる。でもお願い、少しだけ、眼をつぶってて」
虎賁「いやだね」
離珠「虎賁しゃん!」
虎賁「月天さまの気持ちは分かるけどよ、こんなことがあの爺さんに知れたら、どうなると思う?」
シャオリン「‥‥!」
虎賁「あの爺さんのことだ、月天さまを連れ戻して閉じ込めるに決まってる‥今度ばかりは、ぼうずの懇願も通じないだろうぜ。なんせ守護月天の使命に反しちまったんだからな」
離珠「だ、大丈夫でし。南極寿星しゃんなら予告編に出てたから、このお話には出てこないでし」
瓠瓜「ぐえっ(ネタばれペナルティ発動!)」
離珠「ひ、ひゃああぁぁ〜(瓠瓜の口に吸い込まれる)」
シャオリン「‥‥わかったわ、私は守護月天‥使命には、逆らえない‥」
虎賁「お、おい泣かないでくれよ月天さま‥参ったなこりゃあ‥(脇を向いて)おい八穀」
八穀「(黙って酒樽を差し出す)」
虎賁「ちぇっ、お見通しかよ‥月天さま、おいらこれからあの爺さんと、男同士の話をしてくるよ。この酒を肴にさ」
シャオリン「‥(瞳を濡らしたまま顔を上げる)‥」
虎賁「八穀、この酒の効き目は?‥えっ、2週間は眼を覚まさない?‥1合も飲めば、蹴っても怒鳴っても起きないって?」
シャオリン「‥‥!」
虎賁「それじゃ月天さま、おいらしばらく戻ってこれないけど、いいよな? おいらと爺さんが寝込んでるあいだ、ちゃんとやっていけるよな? 爺さんを困らせるようなこと、しないよな?」
シャオリン「‥‥ありがとう、虎賁。約束するわ‥」
翌朝の学校、休み時間にて。
たかし「(自分の席で独り言)麻美さん、やっぱり変だよなぁ‥なんであんな連中に追いかけられてたんだろ‥」
シャオリン「たかしさん」
たかし「(ぎょっ)し、シャオちゃん?! どうしたの、おれに何か用?」
シャオリン「‥お願いが、あるんです。麻美さんのこと、詳しく教えてくれませんか」
たかし「えっ? えっ? えっ? で、でもどうして‥あっ、そういや昨日のシャオちゃん、あれって‥」
シャオリン「お話しします‥昨日あんなことをした訳を。あの方のことを知りたいんです‥」
かくかくしかじか。
たかし「そうかぁ‥麻美さんが、昔のシャオちゃんの主人と、ねぇ」
シャオリン「別人だってことは分かってます。でも、あんな目にあっているようでは‥教えてください、たかしさん。麻美さんの身に何が起こってるんですか」
たかし「いやその、それがさぁ‥おれも昨日から気になってるんだけど、話してくれないんだよ、麻美さん。今日の放課後にでももう一度、会って聞いてみようと思ってたんだけどさ」
シャオリン「お供します」
たかし「え、でもシャオちゃん、太助の傍についてなくていいの?」
たかし、向こうの席の太助に視線を送る。それに対してウィンクを返す太助。
シャオリン「太助様には、お許しをいただきました。私、こんなもやもやした気持ちではいられないんです」
たかし「分かったよ、シャオちゃん(立ち上がってシャオリンの手をがしっと握る)一緒に頑張ろう、麻美さんのために!」
シャオリン「(あっさり笑顔で)はいっ」
たかし「そうと決まれば、今日から作戦開始だ。麻美さんは昨日の道を通って下校するはずだから、待ち伏せしよう! よおっし、燃えてきたぜ!」
一方。
乎一郎「‥いいの、太助くん?」
太助「うぅっ‥たかしの奴ぅ‥(わなわなと震える拳)」
ルーアン「あ〜ら、たー様なんにも心配することなくってよ。あたしが居るじゃない」
太助「くっつくなぁ!」
乎一郎「‥いいなぁ‥二人とも」
その日の放課後、例の道にて。
たかし「麻美さん!」
麻美「(今日はセーラー服)あら、たかしくん。こんにちは」
シャオリン「‥昨日は失礼しました」
麻美「あっ、あなた‥いいえ、あなたにはお礼を言わなくちゃね。助けてくれてどうもありがとう、シャオリンさん」
たかし「麻美さん、改めて紹介するよ。この子が昨日話した、シャオちゃん」
シャオリン「守護月天シャオリンです。シャオ、とお呼びください」
麻美「こちらこそ、よろしく。笹月麻美です」
たかし「麻美さん、ちょっと聞きたいことがあるんだ。一緒に来てくれない?」
麻美「‥聞きたいこと?」
たかし「昨日のこと。シャオちゃんもおれも気になってるんだ」
麻美「‥もう、いいじゃない。私は気にしてないわ‥」
たかし「とにかく、来てよ。今日は誤魔化されないからな(麻美の手を引く)」
麻美「た、たかしくん‥」
たかしを先頭に、彼に引きずられる麻美、そして後からシャオリンが続く。
麻美「(小声で)今日は随分積極的じゃない、彼女が見てるから?」
たかし「(赤面)そ、そんなんじゃないよ‥」
麻美「‥‥」
しばらく行ったところで、麻美がぴたっと立ち止まる。
たかし「麻美さん?」
麻美「どこへ行くつもりなの?」
たかし「駅前の喫茶店だけど‥」
麻美「ごめんなさい、差し向かいで問い詰められるのって苦手なの、私。別のところにしない?」
たかし「えっ?」
シャオリン「話していただけるなら、私はどこでも‥」
麻美「いいわ、でももっと楽しいところで、のんびりとお話しましょ‥いいわよね、たかしくん」
たかし「あ、ああ‥」
麻美「じゃこっちよ」
今度は麻美がたかしの手を引いて、バスに乗り込む。そして降りた先は‥。
たかし「ここって、遊園地じゃんか‥」
遊園地に入る3人。
たかし「ねぇ麻美さん、話すの、ここで?」
麻美「そうよ。でもちょっと暗い話になるから‥ストレス発散してからね」
たかし「発散って‥」
麻美「シャオリンさん、こういうの、嫌いかしら?」
シャオリン「いえ‥」
麻美「それじゃ、まずは‥」
宇宙船型メリーゴーランドに乗った後。
たかし「ひゃああ〜っ、凄かったぁ」
麻美「‥(青ざめている)‥そう、ね‥」
シャオリン「‥ちょっと怖かったです‥」
お化け屋敷の中にて。
たかし「だ、大丈夫だよシャオちゃん、麻美さん。おれが付いてるから‥あれ、麻美さん?」
麻美「♪〜♪(さっさと先へ行ってしまう)」
たかし「もう‥仕方ない、シャオちゃん一緒に行こう‥うわっ(眼の前にミイラ男が飛び出してくる)」
シャオリン「‥‥! 来々、車騎!」
たかし「うわぁ〜っ、ちょっと待ったシャオちゃん!」
ジェットコースター乗り場にて。
たかし「やっぱりジェットコースターは先頭でなくっちゃなぁ。さ、麻美さんこっちだよ〜」
麻美「‥ご、ごめんなさい、見ただけで気分が‥」
シャオリン「大丈夫ですか?」
麻美「‥私、下で見てる‥シャオリンさん、乗ってあげて」
シャオリン「でも‥」
係員「ほらお嬢さん、出発するよ、早く乗って」
ソフトクリーム屋の前で。
麻美「お待たせ。たかしくん、シャオリンさん、買ってきたわよ」
たかし「‥麻美さんは座っててよ。言ってくれればおれが買ってきたのに」
麻美「ううん、私が誘ったんだから‥はい、どうぞ」
シャオリン「麻美さんの分は?」
麻美「あ、いけない、自分の分を買い忘れてきちゃった‥ごめんなさい、もう一回行ってくるわね」
たかし「あぁ、おれ行く、おれ行くよ。先におれの分を食べておいて」
麻美「‥ごめんね、バニラ味は苦手で‥やっぱり自分で買ってくるわね」
そして、お約束の大観覧車にて。
たかし「(シャオちゃんとふたりっきり‥どきどき)」
シャオリン「‥(窓の外から、ベンチで待つ麻美を見つめている)‥」
たかし「し、シャオ、ちゃん‥困ったもんだよね麻美さんにも。高いところが嫌いだなんて、だったら遊園地に来なけりゃいいのに‥あはは、はは‥」
シャオリン「麻美さん‥さっきから遠慮してばかりですよね‥」
たかし「全く‥せっかく来たんだから楽しめばいいのにな。でもだいぶストレス発散できたんじゃないかな、表情が明るいもん」
シャオリン「‥‥」
たかし「(な、何か話さなきゃ)‥お、おれも、さ‥ここに来れて、楽しかったよ‥シャオちゃんと一緒に、こうして‥」
シャオリン「‥えっ、何ですか?(やっとたかしの方を向く)」
たかし「(汗)‥い、いやぁ、たまには遊園地も、いいなって‥シャオちゃんも楽しかった?」
シャオリン「ええ、とっても。また来ましょうね」
たかし「(どきっ)あ、ああ、そうだね‥」
シャオリン「太助様や翔子さんと一緒に」
たかし「(心の中でヘッドスライディング)‥そう、だね、ははは‥」
シャオリン「それにしても、麻美さん‥本当に、このあと話をしてくれるんでしょうか‥すっかりお疲れのようですけど」
たかし「だ、大丈夫だよ‥ああ見えてもさ、麻美さんは昔、ガキ大将だったんだぜ」
シャオリン「がきたい‥なんですって?」
たかし「ガキ大将、子供の中で一番喧嘩が強い子のことだよ。今じゃ想像も付かないだろうけどさ‥だから、ああ見えても体力はあるんだよ、あの人は」
シャオリン「そうでしょうか‥(窓の外を見下ろす)‥‥!」
たかし「麻美さんは大丈夫だって。それよりさ‥」
シャオリン「麻美さんが、いません!(観覧車の扉を開ける)」
たかし「えっ? うわっ‥し、シャオちゃん‥」
シャオリン「来々、軒轅!」
軒轅に飛び乗って麻美を探しに行ったシャオリン。置いてきぼりにされた野村たかし。観覧車の駕籠が下に着くまでには、まだ半周以上残っている‥。
ミラーハウスの裏側で、野村たかしと同じ年頃の少年の袖を引いている麻美。
麻美「ねぇ、お願い‥話を聞いて」
謎の少年「うるせぇな、つきまとうんじゃねぇよ‥さっさと行けって」
麻美「ごめんなさい‥怒ってるのね、私たちのこと。本当に悪いことをしたと思ってるわ‥でも」
謎の少年「そんなんじゃねぇよ‥迷惑なんだ、はっきり言って。俺たちがなんなんだか、知ってんだろ? さっさと帰った方が身のためだぜ」
麻美「だからこそよ‥こんなところに居ることはないわ。一緒に帰りましょう」
謎の少年「しつこいって。ほら誰かが来ちまうだろ。行っちまえよ、そら」
麻美「‥嫌。やっとあなたを見つけたんだもの」
謎の少年「帰れよ!(振り払う)」
麻美「きゃっ!(振り払われて転倒)」
シャオリン「麻美さん!(駆け寄る)」
謎の少年「???(突然現れた美少女に驚く)」
シャオリン「麻美さんを傷つけましたね!(きっと少年を睨む)」
謎の少年「‥(たじっ)‥」
シャオリン「許しません‥」
麻美「(起き上がって)待って。いいの、私は‥ありがとう、見知らぬお嬢さん」
シャオリン「???」
謎の少年「‥ふんっ‥」
麻美「また来るわ‥さぁ行きましょう、親切なお嬢さん。お礼に何かおごってあげるわ、さぁ早く‥」
シャオリン「麻美、さん‥?」
チンピラA「‥そうは、いかねぇな」
麻美「‥‥!」
チンピラB「グズイチ、おめぇも隅に置けねぇなぁ‥こんなマブい子らに声掛けられて、はいさよなら、はねぇだろうが」
謎の少年「す、すいません兄貴‥そうじゃねぇんで。単なる人違いです。こいつらとは何でも‥」
チンピラA「すっこんでろ、このグズ!(殴打)」
麻美「‥‥! なんてことをするの!」
シャオリン「麻美さ‥!!!」
チンピラB「(シャオリンを背後から抱え込んで)こいつが心配かい? 心配だろうなぁ‥じゃあ、もう少し遊んでいきなよ‥」
羽交い締めにされたシャオリンの白い顎を、チンピラAが持ち上げる。
チンピラA「ほう、こりゃ上玉だ‥坊ちゃんがお喜びになるだろうぜ」
チンピラB「だろ?」
シャオリン「ら、乱暴な‥」
麻美「離しなさい!(チンピラAに飛び掛かる)」
チンピラA「(あっさり麻美の手を掴んで宙づりにし)ほう、こっちもなかなか‥今日は運がいいぜ。こいつらを連れてきゃ、俺たちの株も上がるよなぁ、兄弟?」
チンピラB「へへへ‥」
謎の少年「や、やめて、くれ‥堅気に手を出しちゃ‥(切れた口を拭いながら立ち上がる)」
チンピラA「ほう、じゃ何かグズイチ、こいつらはおめぇのコレだとでも言うのか?」
謎の少年「‥‥‥」
チンピラB「関係ねぇなら引っ込んでな」
謎の少年「‥そ、そうです。その二人は、俺の‥」
チンピラA「百億年早ぇんだよ!(少年を蹴り飛ばす)」
麻美「やめてぇ!」
そこへ。
出雲「これはこれは、何かと思えば‥無粋な真似はよしてもらいたいですねぇ(ふぁさっ)」
シャオリン「‥‥!!!」
チンピラA「なんでぇ、てめぇは」
出雲「その二人の連れですよ。ちょっと眼を離したらすぐこれだから‥」
美女「あたしはぁ?(遠くからつぶやく)」
出雲「(汗)‥と、とにかく、離してあげてください。この私に免じて‥」
チンピラB「引っ込んでな、このキザ野郎!(シャオリンを離し、出雲にボディブロウを決める)」
出雲「ぐっ‥(よろめくが倒れず)‥いいんですか、私を怒らせて‥痛い目に会うことになりますよ」
チンピラB「うるせぇ!(今度は顔面に殴打)」
出雲「ぐはっ‥こ、この程度ですか‥相手を見て喧嘩を売った方がいいですよ‥」
チンピラB「‥(無言で出雲に蹴りを入れる)‥」
出雲「がっ‥けほっ、けほっ‥ま、まだまだ‥正当防衛にするには、もう少しハンデを付けないとね‥(ふらふら)」
チンピラA「なんでぇ、あいつ‥うわっ(少年の体当たりを受け、麻美を離す)」
シャオリン「出雲さん‥あっ!」
たかし「シャオちゃん、大丈夫? さぁ、今のうちに逃げよう(シャオリンの手を引く)」
謎の少年「早く、行けぇ!」
麻美「‥‥(少年と出雲の方を交互に見る)‥」
たかし「早く行こう、さぁ(麻美の手を引いて立ち上がらせる)」
麻美「‥でも」
謎の少年「(チンピラAを抑え込みながら)は、早く!」
出雲「(チンピラBにしがみついて)い、行ってください‥血生臭いところを見せたくはありません」
たかし「わかんないのかよ! 早く!(シャオリンと麻美の手を引いて走る)」
麻美「‥(手を引かれながら、もう一度だけ少年を振りかえる)」