Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.1 ) |
- 日時: 2015/08/31 19:45
- 名前: 瑞穂
- どうふんさんへ
こんにちは。瑞穂です。 少々ご無沙汰しています。
ハヤテくんだけでなく、ヒナギクさんまで逃避してしまったようですね。 私としてはやっぱり、3人の微笑ましい親子関係がたまらなく好きですので、アリスちゃんには一肌脱いでもらいたいですね。「三国志」で劉備玄徳が諸葛亮孔明を三顧の礼で後の蜀の軍師に迎えたように(結局、中国を統一したのは魏ですが)。 ハヤテくんとヒナギクさんとの溝を少しでも埋める為に……。
それから、1点質問させていただきたいことがあります。 >頭の中で、何かが弾ける音がした。
Googleで検索しましたが、私の調べ方が悪いのか意味が解りません。 もし宜しければこの意味を教えていただけないでしょうか?
質の高い感想を書くために書き方を少々変えてみましたが、こんな感じで宜しいでしょうか。
今後ともアリスちゃんの活躍を、そして2人の仲の進展を楽しみにしています。頑張ってください。 それから、感想キャンペーンにはコメントを差し上げる予定です。 それでは、失礼致します。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.2 ) |
- 日時: 2015/08/31 23:09
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- 瑞穂さんへ
早速の感想ありがとうございます。 この物語の最後までアリスには働いてもらいます。ただ、アリスにはアリスの想いがあるわけで、それは無視できないと思っています。それは必ずしも微笑ましい親子関係だけではありません。
ご質問の「頭の中で云々」、というのは、いわゆる(頭の血管が)ブチ切れた、というのをイメージしてもらえれば。 「弾ける」というのは「破裂」という意味もあるわけですから、より意味を強めたつもりです。 ヒナギクさんが、ハヤテの無神経な言動にブチ切れるのはしょっちゅうですが、今のヒナギクさんは怒りだけでなく、というかそれ以上に悲しみの方が強い状態です。 ハヤテから何でそんなことを言われなきゃならないのかさっぱりわからないわけですから。
で、弾けたヒナギクさんがどうするのか、これは次回投稿にて。
今回の瑞穂さんの感想は、三国志を引用するなど、私だけでなく、他の読者にも「読ませる」ことを意識したのかと思います。(ただ、細かいことを言いますと、当時のシナを統一したのは魏ではなくて晋です)
「書き方」について、私はとやかく言う立場ではありませんが、いろいろと試してもらえればいいと思います。私自身、新たな物語を投稿する度にやり方、書き方を変えてきているわけです(第一作とは良くも悪くも書式がだいぶ変わったかな)。考えて書くことで上達していくと思います。 余計なお世話かもしれませんが、ご容赦。
どうふん
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.3 ) |
- 日時: 2015/09/02 21:49
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- 前回はヒナギクさんの視点でしたが、今回はハヤテ側から始まります。
本当のところ、ハヤテは今ヒナギクさんをどう思い、何を考えているのか、というところです。 そして本章のサブタイトルが意味を持ち始めます。
【第2話:ムラサキのたまり場】
ヒナギクの視線はハヤテの顔を捉えていた。 「ハヤテ君、一体何を言っているの?『迷惑』って何よ。『無理』って何のことよ。私に対して何かやましいことがあるわけ?」 「・・・(やましいことなんて幾らでもありますよ・・・。それに言える訳ないじゃないですか。ヒナギクさんを好きだなんて)」
ヒナギクを好きだと自覚して以来、どれだけ自分を叱咤しても想いは募る一方だった。 夢に見てうなされ、目を合わせると苦しくて・・・という有様で、一緒に過ごすのが苦痛になり、次第にヒナギクを避ける様になっていた。 だが、それはヒナギクにしてみれば嫌われ避けられているとしか思えない。 目を逸らしたまま黙りこくっているハヤテを前に、ヒナギクの感情は爆発寸前となっていた。 「ねえ、答えてよ。私はハヤテ君に迷惑なんか掛けられてないし、無理をしているつもりもないのよ」 ヒナギクは涙を一杯に溜めてハヤテににじり寄っていた。 その苦しくて悲しそうな表情に、引き込まれたハヤテは目を逸らせない。
ハヤテはヒナギクを抱き締めたい衝動に駆られた。 胸をかきむしられるような苦しさに自分がどうにかなってしまいそうだった。 (ヒナギクさん・・・。僕のために大変な思いをして、僕を嫌っているはずなのに、何でこの人はこんなにも優しくて、僕なんかのことを心配しているんだろう) ハヤテは理性を必死に働かせようとした。しかし、懸命に絞り出した言葉はかすれていて、およそ理性とはかけ離れていた。 「どうして・・・。どうして・・・そんなに残酷・・・なんですか。そんなことを僕に言わせようとするんですか」
もう自分を押さえることができなかった。 凍り付いたヒナギクを突き飛ばすような勢いで、ハヤテは部屋を飛び出していった。
*************************************************************
一人残されたヒナギクは、もう部屋に戻ってアリスと顔を合わせる気にもならなかった。 ムラサキノヤカタを出て、ふらふらと歩いていた。 当てもなかったが、足は次第に喫茶店「どんぐり」に向かっていた。
どんぐりには西沢歩がアルバイトをしていた。 「おや、珍しいお客さんだね。ヒナさん、ようこそいらっしゃいませえ。どうぞお好きな席にぃ」やたらとハイテンションなのは、ヒナギクの雰囲気にただならぬものを感じたからだろう。
相変わらずガラガラの喫茶店で、ヒナギクは一番奥まで歩いて隅のテーブルに座った。 「ヒナさん、何があったの」 歩はヒナギクの向かいに腰掛け、頬杖をついて微笑んでいた。 何でわかったの、なんて聞くだけ野暮というものである。自分が今どんな風に見えているかは見当がつく。 「歩・・・、やっぱり私はもうあきらめた方がいいのかな・・・。もうすっかりハヤテ君には嫌われちゃったみたいだし」 「な、何を言ってるのかな?嫌われてはいないと思うけど・・・。また例の勘違いなのかな?」 ヒナギクは俯いたまま動かない。歩はそんなヒナギクに優しく向き合っていた。
ヒナギクがようやく口を開いた。 「アリスに頼まれて・・・ハヤテ君と三人で明日外出しようと誘ったんだけど・・・」 「ああ、例の家族行事ですね。いいなあ、私もハヤテ君やアリスちゃんと家族デートしたいなあ」 「最後まで聞きなさいよ。ハヤテ君からは・・・断られたわよ」 「断られた・・・の?行きたくないって?」 「正確には嫌がっていた・・・ということ・・・かしら。アリスは問題ないけど、『私も一緒で良い?』って聞いたら、そっぽを向いたまま返事をくれなくて・・・。」 「そ、それはあんまりじゃないかな。幾らなんでも」 「あんまり悲しかったから、何でって聞いたのよ・・・。そしたら『そんな残酷なことを僕に言わせるんですか』って」 経緯を考えると無理からぬところではあるが、ヒナギクは勘違いにさらに大きな聞き違いを重ねていた。それは誤解の連鎖を生んだ。
「お、女の子に向かって、心優しいヒナさんを捕まえて『残酷』だって?いくらハヤテ君でもそれは許せん!ヒナさん、お店は任せた」 「え、あの、歩?」 止める暇もあらばこそ。歩はどんぐりを飛び出して、ムラサキノヤカタに向かって自転車を漕いでいだ。 ヒナギクは慌ててポケットをまさぐったが、携帯電話も財布も何もなく、全くの手ぶらであることに気付いた。歩が一人で店番していたどんぐりの電話は慢性的に故障中で、歩にもムラサキノヤカタにも連絡する方法がない。
*************************************************************:
「何だ、ハムスター。血相を変えて」 歩はムラサキノヤカタの食堂に飛び込んだ。そこにはナギ、千桜、ルカ、カユラと、ほとんどの住人がいた。 「ハヤテ君、ハヤテ君はいずこ。乙女心を踏みにじる悪は許さじ。西沢歩、ここに見参!」 「・・・時代劇の見すぎだ、お前は。しかしハヤテが悪とは聞き捨てならんな。どういうことだ」 「ハヤテ君が私の大事な大事なヒナさんをずったずたに傷つけたのよ」 ナギとルカの眉がピクリと動いた。 「どういうことだ(なの)?」
歩の説明を一通り聞いて、ナギは首を傾げた。 自分はむしろ、全く正反対の疑いを抱いて悶々としていた。今の話とはかけ離れている。 ルカも明らかに違和感を感じていた。 「ちょっとそれ・・・おかしくない?ハヤテ君のセリフじゃないと思うけど」 千桜とカユラもうなずいた。 そう言われると、歩は自信が半分ほどなくなった。 「と、とにかくハヤテ君を呼べばはっきりするのかな」 「あの・・・。ハヤテ君なら大分前に外に飛び出して行って帰っていませんけど・・・。 はっきりとはわかりませんでしたけど、泣いていたみたいで」食堂に入ってきたのはマリアとアリスだった。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.4 ) |
- 日時: 2015/09/05 22:21
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- ハヤテとヒナギクさんの仲はムラサキノヤカタ全体を巻き込むことになりました。
とは言え、住民にはそれぞれ思惑があるわけで・・・
【第三話 : オペレーション・パープル】
アリスは、ヒナギクがハヤテの部屋に向かったいきさつを話した。 その後起こったことは、マリアと歩の証言を組み合わせると、ヒナギクはハヤテに決定的な決別を告げられ、ハヤテが泣きながら屋敷を飛び出したということになるのだから、全く噛み合わない。
「それじゃ全くつじつまが合わないじゃないですか。どこかが間違っていますよ」 マリアの分析に、ナギは冷たく言い放った。 「それはハムスターの説明が下手すぎるんだろう。説明云々より勘違いしている可能性が圧倒的に高いがな」 「な、何を言っているのかな。少々事実誤認があったとしても、あのヒナさんのズタズタに傷ついた顔は紛れもなく本物なんだよ」
「それでは、もう一つお話しましょう。これは言いたくなかったのですが」改めて口を開いたのはアリスだった。 「これは当時の住人みんなでババ抜きをした時の話ですが、部屋に籠っているハヤテは部屋から出ない理由をこう言ったのです。『ヒナギクさんのことを考えると胸が苦し過ぎて・・・』」 周囲が凍り付く音がした。 「もう一つ、『僕はヒナギクさんに迷惑掛けっぱなしで嫌われてしまって』とも言っていましたね」
「これは・・・二重三重に誤解が重なっているようだな」呻くように千桜が言った。 「な、何が何だかさっぱりわからない・・かな」 「つまりだ、いきさつはわからんが、ヒナと綾崎君はお互いに相手から嫌われていると思っているんだ。皆も最近二人がよそよそしくなっているのは気付いているだろう」 「え、本当なのかな。全然気づかなかったけど」 「・・・まあいい。はっきり言えば綾崎君がヒナを避けていた。綾崎君はヒナに嫌われているとばかり思っていたから、気遣ったつもりなんだろう。しかし、ヒナにしてみれば綾崎君が自分を嫌って避けていると思い込んだ・・・」
「じゃ・・・あの『残酷』というのは何なのかな?」 「まあ、ヒナを残酷呼ばわりなんてことは綾崎君でなくともありえない。 それはおそらく・・・、『胸が苦しすぎて・・・』って言葉が全て物語っているんだろう。綾崎君はヒナと距離を置こうとしているのに、ヒナから家族デートを誘われて困ったんじゃないか。自分としては行きたくてしょうがないんだから。 それで自分の気持ちを抑えようとして苦しくてたまらず、口走ってしまった・・・といったところか」
材料が乏しいため推測が多くなるが、日頃から二人を間近で良く見ている千桜の推理には説得力があった。 「だとすると・・・、ヒナさんは信じ込んでいるけど・・・、それはハヤテ君の拒絶じゃなくて愛の告白・・・?」 「ハヤテに告白したつもりはないでしょう。でも娘の立場で二人を見ていて感じるものはあります。ヒナもハヤテも、お互い秘めていた想いが見当違いの方向に噴き出したと考えれば筋が通ります」
最後に補足したのはアリスだった。周囲は完全に引き込まれていた。 ただ一人を除いては。
「そんな・・・、そんなはずはない。あるはずない。ハヤテは私の恋人なんだ!」 ナギの叫び声がムラサキノヤカタ一杯に響き渡った。 それに応えたのは、マリアを除く全員の憐れみに似た視線だった。
「な・・・何だ、その目は?お、お前だって・・・、いいのか、ハムスター。ヒナギクにハヤテが惚れているなんて、それでいいのか?」 「残念だけど・・・、千桜さんの言う通りだとしたら・・・、いや言う通りだと思う。もう勝負は着いちゃったんだよ。 それに私は・・・あんなに苦しんでいるヒナさんをこれ以上見たくない」 「ルカ、お前だってそうだ。お前とはハヤテを賭けて同人誌勝負するはずじゃなかったのか?私に勝ったらハヤテと結婚するんだろ」 「いくら私でもハヤテ君の気持ちが固まっているんじゃ・・・。ヒナは恩師だし、ヒナが相手なら負けても仕方ないって思えるもん」
「お前ら・・・、お前らみんな・・・、どいつもこいつも・・・。根性なしめ。私は違うぞ」 ナギは食堂を飛び出し、部屋に駆けこんだ。 それを追おうとした千桜をマリアは呼び止め、自分が立ち上がった。 マリアはナギを追った。今、全てを話すしかない、その決意がマリアの顔に浮かんでいた。
千桜は周囲を見回して続けた。 「・・・ナギのフォローはあとでするとして・・・。とりあえずはマリアさんに任せよう。何、あいつは今こそ激情に駆られているが大丈夫だ。問題はヒナだ。正確にはヒナと綾崎君だ」 「そうだよ。ここは皆で協力して二人をくっつけよう」 「ハムスター、じゃなかった、歩。いいのか?」 「さっきも言ったよ。もうあんなに苦しんでるヒナさんもハヤテ君も見たくない。二人には幸せになってほしいんだから」 「私も力を貸すわよ。今の私があるのはハヤテ君とヒナのお蔭なんだから。水蓮寺ルカは恩知らずだ、なんてゴシップ記事を週刊誌に書かれたくないからね」 「ゆきがかりだ。私も協力しよう。執事があんな風では住民として困る」カユラも賛同した。
「こうなったら、この恋愛コーディネーター、AYUMUにまっかせなさい。名づけてムラサキノヤカタ大作戦!」歩が吼えた。 「まんまじゃないか。どうせならオペレーション・パープルの方がいいんじゃないか」 「結局、どこが違うんだよ・・・。お前らに任せる気にはなれんが・・・。とにかく全員で協力してやろうじゃないか」 「おおー」唱和した声にはやけっぱちのような響きも含まれてはいたが。
「あれ、そう言えばアリスは?」 いつ消えたのか、誰も気付いたものはいなかった。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.5 ) |
- 日時: 2015/09/06 21:00
- 名前: 瑞穂
- どうふんさんへ
こんにちは。瑞穂です。 今回更新前に感想を差し上げられずに申し訳ありません。
簡潔にですが、前回と今回の感想を。
まず第2話につきましては、三人称形式なので視点を変えて表現するとこうも変わるものなのですね。 ハヤテくんが素直になれないのはある意味新鮮でした。 それと意外とハヤテの呪縛を解き放つのは西沢さんかも、と思ってしまいました。潮見高校時代から一番ハヤテのことをよく分かっているのはアーたん(アリスちゃん)を除くと彼女ですから。
第3話につきましては、千桜さんの解説といいますか洞察が光っている、という点です。 そもそも洞察というのは「物事の本質を見抜き、見通すこと」であり、対象は内面的なものを奥深くですから。 それから小泉純一郎元首相ではありませんが、ハヤテくんとヒナギクさんの2人を結びつけようとするゆかりちゃんハウスの住人皆の気持ち、意思には感動しました。 今話では誤解を千桜さんとアリスちゃんが解く手法が分かり易くて、これまでで最も読みやすかったです。
次回のお話も楽しみにしています。 前回のレス>>2で感想の書き方についてのアドバイスを頂き、どうもありがとうございました。 それでは、失礼致します。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.6 ) |
- 日時: 2015/09/07 20:54
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
瑞穂さんへ
感想ありがとうございます。
今回のお話の登場人物について、一応の役割分担は考えています。
歩の役割は、ややもすると暗くなるストーリーを盛り上げることです。 歩にハヤテあるいはヒナギクさんを縛る鎖を引きちぎる力はありませんが、あの明るさが大きな救いになることは間違いないでしょう。
それと、千桜さん。彼女の役割(洞察、リーダーシップ)はすべてアリスに任せてもいいのですが、アリス一人の活躍にはしたくないので。まあ、この辺りは個人的な好みです。
一つ付け加えると、私も投稿はマイペースでやっておりますので、感想も無理せず自分のペースで取り組んで下さい。
どうふん
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.7 ) |
- 日時: 2015/09/12 11:27
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- オペレーション・パープル始動。
しかし、それはハヤテとヒナギクさんだけに対するものばかりでは不十分です。 もう一人、ナギの存在は重要だと思っています。 果たしてナギが二人の仲を認めることができるのかどうか。
【第4話:決意と迷い】
「何の用だ、マリア。お前まで私を馬鹿にしに来たのか」 「そうじゃありません、ナギ。私はあなたに謝りに来たんです」 部屋に一人で閉じこもろうとするナギに、マリアは繰り返し話し掛け、ナギの方が根負けして中に入れたような形であった。
「お前が私に謝ること?そんなものがあるのか。念のため言っておくが、ハヤテのことはお前には関係ない話だぞ」 「それが、あるのですよ、ナギ」その厳しい表情にナギは気圧され沈黙した。
*************************************************************************
そして、30分ほど後。
「ナギ、今言ったことが本当のことなの。あなたの気持ちをわかっているから、それを踏みにじるようなことはできなかった・・・。本当にごめんなさい。ずっと隠していたことについて、どんな責めでも私が負います。 ハヤテ君はね・・・、あなたを騙すつもりなんかは全くなくて、ただ・・・本当に言いにくいんだけど、あなたの気持ちに全く気付いていなかったの」
一言も口を利かないナギはさっきからずっとそっぽを向いてゲームをしている。 だが、その動揺しきった心情はその惨憺たるスコアが雄弁に物語っていた。 マリアの話が終わっても、ナギはゲームの手を休めない。息が苦しくなるような時間が過ぎていく。
しかし、ナギの口から出て来たのは意外な言葉だった。 「私を馬鹿だと思っているのか、マリア」 「え」 「そんなこと、とっくに気付いていたよ・・・。時間が過ぎても、どんなシチュエーションでもハヤテにそんな意識らしいものは何もなかったし、考えてみれば、愛の告白と思い込んでいた言葉だって、あの鈍感男がどういう意味で使ったのか・・・。
まあ、誘拐するつもりだったというのは初めて知ったがな。
それでも私は・・・、ハヤテが振り向いてくれると信じていた。 私は特別な何かになり、ハヤテから愛される・・・そう思っていた。 ギリシャで私は王玉を壊した。これからお前が私を守ってくれるなら遺産なんかいらない、と。 お前さえいれば、他の全てを投げ出してもいい。そういう意味だったんだ。
ハヤテは私を抱き締めてくれた。『お嬢様の元へ必ず戻ってきます』と言ってくれた。 信じてて良かった、想いは届いた、そう思ったよ。 だけど、それさえ、全てを投げ打って届けた想いさえ、気付いてもらえなかった・・・。
私はそれだけの存在でしかなかった・・・。それだけの話なんだ。それだけなんだよ」 「ナギ・・・」
「私は諦めない。ハヤテは言ったんだ。『僕が君を一生守る』と。言葉に責任は取ってもらう。ヒナギクもムラサキノヤカタも全員敵に回しても、私はハヤテを手に入れる。 借金をタテにとってでも婚姻届を提出させる。
マリア、私が卑怯と思うか。私の言っていることは許されないことか・・・」 「それは・・・」
「もういい。マリア、話が終わったんなら出てけ」
マリアはそれ以上何も言うことはできなかった。苦い思いを抱いて部屋を出た。 (きっとわかってくれる。わかって上げられる・・・はずよね。あなたの大好きなハヤテ君と・・・それと大切なヒナギクさんのことなんだから)
ナギは戸の閉まる音を聞いて、ベッドに寝っ転がった。 これ以上ゲームをする気もしない。 「あんなこと言ったけど・・・どうすればいいのだ」ポツリと呟くと、心の中にぽっかりと穴が開いたような気がした。穴から水がもれるように涙腺が決壊した。 ナギは枕に顔を埋めて声を殺して咽び泣いていた。
ナギは、ふと部屋に座敷わらしの存在を感じた。 顔を上げて辺りを見回すとアリスがすぐそこにいた。澄ました顔を崩すことなく黙然と突っ立っている。
「な、なんらあ、おまいは。いったいいつからそこに」慌てふためいて涙を枕になすりつけるナギだった。 「マリアさんの隣にずっといましたわよ」 「・・・だったらなぜマリアと一緒に出ていかない?」 「ナギはマリアさんに『出ていけ』と言いましたが、私は言われた覚えはありません」 「それはそもそもお前に気付いてなかっただけなのだ、ちっこいの。わかったらさっさと出てけ」 「まあ、そう言わず。私はあなたに話があるんですから」 「はなし?大人の事情に口出しする気か、お前は」 「ま、そんなところですわね。同じ男に恋した女として」 「はあ?」
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.8 ) |
- 日時: 2015/09/12 23:53
- 名前: 瑞穂
- どうふんさんへ
こんにちは。瑞穂です。 いつもながら楽しいお話を読ませていただけることに感謝します。どうもありがとうございます。
ハヤテ君は強く、誰に対しても優しく誠実です。私はそんなハヤテ君が大好きです。 そのハヤテ君に何もかも捧げたにも関わらず、愛情が通じなかったというのはナギちゃんにとって可哀想です。 ナギちゃんが過激な、乱暴な表現を用いるのはいつものことですが、今回はいつもに増して厳しいですね。
今回印象的だったのは、マリアさんが30分以上にわたりナギちゃんを説得していたシーンです。普通は途中でマリアさんが折れるもので、ここまで説得を続けることは不可能でしょう。 マリアさんがとても優しく面倒見がいいことは私自身よく分かっています。ここまで長時間説得を続けられるのはマリアさんが気が長いのか、はたまたお節介なのか……。長年連れ添ってきた関係のなせる業(?)ですかね。 ただそれ以上に、マリアさんの厳しい表情というのは原作でもなかなか見ませんので、一瞬焦りました。これ以上は上手く言葉が出てこなくて恐縮ですが……。
ところどころ日本語が、表現がおかしいところがありますがご容赦ください。 次回もどのような展開になるのか楽しみです。 それでは、失礼致します。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.9 ) |
- 日時: 2015/09/13 01:37
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
ご無沙汰しておりますが、毎回楽しませて頂いております。
なかなか陽気な方向に向かない物語の中で、飄々としているように見えるアリスちゃんの存在が刺激になっていると感じます。実家のような安心感を覚えるとでも言いますか…。 そんなアリスちゃんがナギに向かって放つ言葉とは一体…期待です。
前回とは変わってアパートの住人やら多数のキャラが出てきておりますので、各キャラの動向にも注目しつつ次回も楽しみにしております。
それでは失礼しました。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.10 ) |
- 日時: 2015/09/13 19:52
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
瑞穂さんへ ロッキー・ラックーンさんへ
感想ありがとうございます。 少々、ストーリーが暴走しているようです。計算ずくで展開しているわけではなく(いいのか、それで)。 原作のメインヒロインであるナギが、ギリシャで起こったことをどのように捉えているのかは興味があります。 あくまで選択肢の一つではありますが、この時にナギはハヤテの愛を勝ち取ったと思っても不思議はないと思います。
それでは、瑞穂さん
マリアさんがナギを説得、というより過去の経緯について説明していた、と言うべきでしょうか。「30分」というのはちょっと長いかもしれませんね。ただ、これは「厳しい顔」と合わせて、マリアさんがそれほどこの問題を深刻に考えていた、ということでしょう。 実際、マリアさんが、なぜあれほどナギのために尽くせるのか、これは一つの謎ですね。この物語の中で触れる余力はないと思いますが。
ロッキー・ラックーンさん
実のところ、「なかなか陽気な方向に向かない」というのは、ちょっと私も気にしております。私も読む分には明るく楽しい話が好きですので。 ただ、本作のテーマからして、なかなかそれは難しいかな、と。 深刻になりすぎないよう、アリスや西沢歩に働いてもらっているところです。 各キャラの動向については、原作から違和感を極力減らしつつ役割を果たしてもらうつもりです。
どうふん
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.11 ) |
- 日時: 2015/09/15 20:55
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- さて、ムラサキノヤカタが揺れ動く中、渦中のハヤテは何をしているのでしょうか。
いつもの、あの場所で・・・
【第5話:告白と白状】
夕日が沈み、星が瞬いていた。
負け犬公園のベンチに一人、ハヤテは腰かけていた。 くじけそうになった時、いつもここに居た。ここに逃げ込んでいた。いや、辿り着いたというべきか。 (これで三度目かな・・・) 一度目はナギに、二度目はヒナギクに助けられた。 (さすがに三度目はないだろうな)
しかし、今は借金取りのヤクザに追われているわけでも、家を追い出されて所持金を持たないわけでもない。帰ろうと思えばいつでも帰れる。 だが、立ち上がることができない。つい先ほどのヒナギクの涙を溜めた顔が今も胸を締め付ける。とてつもない罪悪を犯したような気がしてならない。
このまま眠ろうか。過去二回と違い、凍え死ぬ心配はない。 (いや、そんなことをしたらあの苦しそうなヒナギクさんをほったらかすことになる。家事を任せっきりにしてマリアさんにも迷惑が掛かる。
帰らなきゃ。 ヒナギクさんに会ったら謝ろう。でも何て謝ればいいんだ・・・?) ハヤテは上げかけた腰をまた下ろした。頭を抱えて考え込んだ。
上から声が降ってきた。 「そこにいたのか、綾崎君」「探したぞ、執事」 「千桜さん・・・、カユラさんも」
***********************************************************::::
千桜もカユラもうんざりした顔をしていた。延々と堂々巡りが続いている。
「そんなわけ、ないじゃないですか」 「なんで、そう思うの」 「そりゃあ、僕はヒナギクさんにずっと迷惑の掛け通しで、困らせて・・・」 「だからな、綾崎君。まあ、君が確かにヒナに『面倒』を掛けているのは間違いない。だが、それを『迷惑』と思うかどうかはまた別だ。 大体だ、君が本当に迷惑を掛けているのは、その恐ろしくめんどくさい考え方だ。 ヒナは君のことを考え、君のことを想って頑張っているんだ。いい加減わかってやれよ」 「それはヒナギクさんが本当に優しくて、正義感に満ちていて、ってことじゃないですか」 「あのなあ、ハヤテ君。優しいとか正義とか、それだけで人間は動かないぞ。君みたいな人間は例外に近いけど、それでも嫌いな男には容赦がないじゃないか」 「まあ、それはそうですが。でも僕と比べられたらヒナギクさんが気の毒です。天女みたいな人じゃないですか」 「天女か・・・、うまい表現だな・・・。 じゃなくて、それが違うと言っているんだ。ヒナだって人間だ。自分の想いもあれば欲求だってある。そしてそれをうまく表現できないでいるだけなんだ」
ここでカユラが初めて口を開いた。 「ハヤテ君。さっきから聞いていると、『ヒナギクさんが』『ヒナギクさんに』とばかりだが、君の気持ちはどうなんだ。 君が無敵センパイを嫌いというなら、我々にできることなんか何もないし、口出しすることもない。 ただ、君たちが好き合っているのに、気持ちを通じ合わせることができないでいるようなので、友人として協力したいと言っているんだ」
ハヤテは顔を歪めた。 「・・・それは・・・僕の口からは言えません。ちょっと残酷ですよ、カユラさんまで」 (やっぱりな。歩が言っていた『残酷』とはそのことか) 千桜は改めて思い返していた。 いずれにせよこのままでは進展がない。 千桜は作戦を変えた。
「では、ハヤテ君。それについては機会を改めよう。 だがな、ヒナの方からその気持ちを打ち明けられたら、その時はきちんと応えてやれるんだな」 「・・・無理ですね。僕は、借金持ちですよ。しかもナギお嬢様の執事で、女の子を養う甲斐性もないし・・・」 「いい加減にしろ。君の借金や仕事なんて誰もが知っていることだ。それを承知で付き合いたいと、君の好きな子から言われたら、その時は応えられるんだろう、と言ってるんだ」 「・・・・・そんなことはあり得ません」 (よし、ヒナギクを好きだと白状したな、鈍感執事) 「だから、もしあればだ。その時はきちんと応えてあげるんだな?それだけは約束しろ」 「・・・・は、はあ・・・」 「はっきりと、だ」 「や・・・約束します」 (よし、それで十分だ。できればコイツの方からヒナに告白させたかったが、今のヒナなら告白くらいできるだろう) 千桜とカユラは内心でガッツポーズをした。 (ところで・・・歩とルカはうまくやっているのかな)
****************************************************************::
一方の喫茶店どんぐり・・・ 歩は当てが外れた、という顔をしていた。ルカもサングラスにマスクの下では同様だろう。
どういうわけか、数時間前と打って変わってどんぐりは大盛況で、ヒナギクと話し込むどころか、歩にルカも手伝いにかかりっきりとなっている。 マスターまで駆けつけてきていた。
「な、なんでこんなことになっているのかな、マスター」 「それはあんまり言いたくないけど。 今日の店番は歩ちゃんになっていたから油断してたんだよね。ヒナちゃんが店番やると時々こういうことになるんだよ」 「うう、原因はそこか・・・って、そりゃあんまりでしょおがー!」
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.12 ) |
- 日時: 2015/09/23 23:55
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- ちょっと西沢さんに悪いことをしたかな、と思ってます。
前回投稿末尾のオチについてです。 まあ、マスターにしてみれば、いきなりローテーションを無視して職場放棄した西沢さんへ嫌味の一つも言ってみたくなったのではないでしょうか・・・ということで。
【第6話:開かれる扉】
同じ頃・・・ムラサキノヤカタ、ナギの部屋
「やっとわかったよ。どっかで見たようないけ好かないガキだと思っていたが・・・。ギリシャで私にカラの宝石箱を渡した女だな」 「ええ、そうみたいね。みたい、というのは私にはっきりと記憶がないからですけど。ちなみに小さくなった原因は私にもわかりませんので説明はできません」 「口の減らないガキだな・・・。で、お前もかつてハヤテを愛していたというわけか。 それで?お前が諦めようがどうしようがそれはお前の勝手だ。私は私だ。私は諦めるつもりなんか・・・お、おい、どうした」 ナギはアリスの目から涙が零れているのに気づいた。
次の瞬間。アリスはナギの胸に飛び込んでいた。 「ナギだけじゃない・・・。 私だって・・・、私だってハヤテが好きだった。ハヤテも私を愛してくれた。 私にとって絶望の中の希望だった。 だけど離れ離れになって十年経って・・・、やっと会えたのに・・・。ハヤテはもう違う人を愛していた。 私は・・・、私はハヤテだけをずっと好きだったのに」 「お・・・おい」 アリスは、今まで無理に押さえつけていたものが堰を切って噴き出したように泣きじゃくっていた。泣きながらナギにしがみついていた。 「ちっこいの・・・。お前・・・やっぱり・・・、お前の記憶は・・・」
ナギの頭の中では、アリスの言葉が終わりのないエコーのように響いている。 『ナギだけじゃない・・・』『私だって・・・』『絶望の中の・・・』『離れ離れになって・・・』 (コイツも・・・私と同じ涙を・・・? いや、違う。コイツはハヤテと愛し合って、離れ離れになって、そして小さくなって、元に戻ろうとして・・・) 途切れ途切れの言葉の合間に、アリスは一体どれほどの数奇な運命を辿って来たのか。 (私とは全然違う。ずっと運命に抗って生きてきたんだ・・・、コイツは。 十年も前から・・・こんな小さい頃から)
胸が締め付けられたナギもまた、アリスを抱き締めて泣いていた。 仲のいい姉妹のようにずっと抱き合っていた。
******************************************************************
翌日、千桜と歩は喫茶店でヒナギクと向き合っていた。
「そう言っても・・・。私はハヤテ君にずっと避けられてるし・・・。頑張っても私の気持ちにも全然気づいてくれないし・・・。 それとも気づいちゃったから私のこと避けるようになったのかな・・・。前はそんなことなかったのに」 「だからね、ヒナさん。その前提を疑ってみようよ。ハヤテ君はハヤテ君で、ヒナさんに嫌われているとばっかり思っているんだよ。いつかもそんなことがあったじゃないの」 「まあ、あの無神経男にも呆れるけど、ある意味仕方ない部分もあるじゃないか。 何と言っても、綾崎君は1億円を超える借金を抱えて、別の女の子の執事を務める立場だ。相手のことを思えば思うほど、恋に臆病になってしまうのも無理はない。 ヒナは綾崎君のそういう優しいところに魅かれたんじゃないのか」 「・・・それは・・・、そうだけど・・・」半信半疑のヒナギクは煮え切らない。ハヤテが全く意識していないところで、それだけの仕打ちを受けて来た。
「いいか、ヒナ。綾崎君はヒナのことが大好きだ。だけどヒナに嫌われてる、と思いこんでしまってる。ヒナから心配されても、優しくされてもヒナが天女だからだと、本気で考えてる。 それだけでなく、気後れと優しさに縛り付けられてヒナに想いを自分から伝えられないで苦しんでいるんだ。 なあ、ヒナ。おまえは完璧超人じゃないか。綾崎君を気遣ってやれよ。救けてやれよ。 ヒナ次第で、綾崎君を縛る鎖を引きちぎることができるんだ」 「そうだよ、ヒナさん。相手に告白されることばかりが勝ちじゃないでしょ。ハヤテ君を幸せにできるのは、ヒナさんしかいないんだから」 「歩・・・あなたたちの言っている通りだったとして・・・。あなたは本当にそれでいいの?」 「覚悟の上だよ。私はヒナさんとハヤテ君の幸せな笑顔を見たいんだから。 それに私だけじゃないよ。ルカも他のみんなも全部分かった上で協力してくれているんだから」 「歩・・・、千桜・・・。どうしてそこまで・・・」 「いつかも言ったろ、ヒナ。ヒナの幸せを願わないヤツなんかいないんだよ。 綾崎君だってその一人なんだ。まあ、彼の場合、根本が間違っているがな。 どれだけ自覚しているかは知らないが、お前はそれだけ周囲を助けて幸せにしているんだ」 「ありがとう・・・」ヒナギクの瞳から涙が溢れて止まらなくなった。
*********************************************************************:
その日の夜遅くハヤテ、ヒナギク、アリスを除くムラサキノヤカタの住民が食堂で話し込んでいた。
「ナギは相変わらずですか、マリアさん」 「う・・・ん、部屋からほとんど出てきませんし。食事も私が部屋まで運んでいます。もう少し時間がかかりそうですね。 それでもトゲトゲしさが抜けた感触はあります。アリスちゃんと何か話し込んでいたみたいですけど・・・」 千桜は腕を組んで考え込んだ。 「できれば、ナギも一緒になって二人を送り出してあげたかったけど・・・、まだ無理か」 「さすがに、あれだけショックを受けてまだ一日じゃあね・・・。私だってそうなるもん」 「きっと、大丈夫だよ。ナギちゃんはああ見えてホントは誰より優しい子なんだから」 「ええ、私もそう思います。今は反発していても最後はきっと・・・」 「じゃ、あとは舞台を整えるか。無敵センパイのことを考えると早い方がいいな。明日にでも」
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.13 ) |
- 日時: 2015/09/25 04:48
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
いよいよアリスちゃんによる援護射撃が始まってワクワクしています。アテネの記憶のうんぬんについてはこれからフォローが入るのでしょうか? ナギとの繋がりがどう変化していくのかが楽しみです。
ヒナの方は、ハヤテの気持ちを先に知らされるパターンですか。周りの人たちの助力あってのハヤヒナは見ていて温かい気持ちになれますね。ハルさんの最後のセリフに感慨深くなってしまいます。
さて順調な風が吹き始めているような気がしますが、またひと波乱ふた波乱あるのでしょうか?期待して次回をお待ちしております。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.14 ) |
- 日時: 2015/09/25 23:21
- 名前: 瑞穂
- どうふんさんへ
こんにちは。瑞穂です。 いつもながら楽しいお話を届けてくださることに感謝します。
とうとうハヤテ君とヒナギクさんを縛る鎖が千切れるときがやってきそうですね。 ゆかりちゃんハウスの住人皆さんが協力して2人を結びつけることを考えると、皆さんの優しく温かい気持ちに私も熱いものがこみ上げてきます。 西沢さんとルカさん、そしてアーたんはハヤテ君を諦めることになるので心中複雑でしょうけど、天秤に掛けるとハヤテ君とヒナギクさん2人の幸せに傾くみたいですね。ナギちゃんについてはまだまだ完全に闇から抜けられないみたいですけど。
ヒナギクさんについては彼女に思い遣り(人助け)の精神があるので、ハヤテ君を助けてあげられるのではないでしょうか。 そういえば今更ですが、このお話の登場人物は思い遣り、優しさがある人が多く程度も高いですね。
お話を読んでいると漸く全体に日が当たる、若しくは日が昇る感じがしてきます。 この雰囲気でゴールに進むことを期待しています。 次回のお話も楽しみにしていますので、どうふんさんも心身に気をつけて頑張ってください。
P.S.1日遅れですが、伊澄さん誕生日おめでとう!
それでは、失礼致します。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.15 ) |
- 日時: 2015/09/26 09:16
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- ロッキー・ラックーンさんへ
瑞穂さんへ
感想ありがとうございます。 やっとここまでこれたかな、という気がしています。 第二章も大詰めとなってきました。
ロッキー・ラックーンさん
アリスの動向と意図については、一度補足しなければ、と思っています。 まあ、今後ナギと絡めた話の中でそうした機会があるかと。(そんなことを考えて忘れてしまうのが私の常套なのですが)
「周囲のサポート」あっての二人、というスタンスは前作から全く変わっておりません。 千桜にはもう少し頑張ってもらいますが、私の言いたいことを代わりに言ってもらっているような・・・。 本作における彼女は、キャラこそ崩していないと思いますが、ある意味私の分身かもしれないですね(たった今、気付いた)。
瑞穂さん
原作の登場人物は、変な奴はいても概ね愛すべきキャラクターですし、ヒナギクさんやハヤテも周囲から愛される存在です。 周囲の「思い遣り」、「優しさ」を引き出すものを二人は持っていると思っています。 それでも、ハヤテの気持ちが確定しているからこそ、こうした展開になるわけです。もしまだハヤテの気持ちがふらふらしていたら「自分は身を引いて」なる発想ができないでしょう。
ただ、ナギについては、他人の話や推理だけで気持ちの整理をつけることはできないと思います。第4話でマリアさんにぶつけたセリフにしても決して間違いではなく、それだけのことをしてきたわけですから。
あと、今後の展開についてですが、一言だけ触れておきますと、 本作の主題となる「波乱」はまだ始まってもおりません。 (今にして思えば、何と長い前振りであったことか)
どうふん
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.16 ) |
- 日時: 2015/09/27 23:11
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- ヒナギクさんの告白の時が迫っています。
ハヤテとヒナギクさん、二人とも緊張を隠せないでいます。 周囲の皆は、その瞬間までサポートを続けています。 もちろんその中には心で泣いている人もいるわけですが。
【第7話 : 約束の場所へ】
翌日夕方、ムラサキノヤカタの玄関先。 歩、カユラ、ルカ、アリスそしてマリアがハヤテを取り囲んでいた。
ハヤテはもう一度自分の姿を見直した。執事服は不可、と指示され私服姿だった。 「おめかしした、とは言えないが、うん、なかなかカッコいいぞ、ハヤテ君」ルカはハヤテの安物のTシャツとズボン姿をチェックしていた。ちなみに15分前、ハヤテの服を強引に剥ぎ取り、アイロンを掛けたのはマリアだった。 「安心なさい。女装させたりしませんから」
「あの・・・、ホントに行かなきゃいけないんですか?」慣れない私服を着、女の子たちに囲まれて「告白」の場=負け犬公園に赴くハヤテはちょっと、というか大いに恥ずかしかった。 「当たり前でしょ、約束したんだから」 「でも、ルカさん。僕は・・・」ハヤテからすれば、ルカも自分に想いを告白した一人である。 「ルールは聞いているわよ。安心なさい、待ち合わせに行くのは私じゃないから。私を振る必要はないわよ」ハヤテは顔の向きを変えた。 「西沢さん・・・」 「案外、私かも知れないよ、行くのは。私が好きならしっかり受け止めてね。好きなら、ね」 ハヤテはもう一度体の向きを変えた。 「あーたん・・・」 (なぜ、ここでアリス?)ほぼ全員が内心で首を捻ったが、当のアリスは至極当たり前のように親指を立てて応えた。 「Good Luck、ですわよ、ハヤテ。Good Job、期待してますわよ」
「それにしてもお嬢様のことが気になるんですが・・・」 まだナギは部屋に閉じこもった状態が続いている。ハヤテとも顔を合わせようとしない。 その原因を、ハヤテは知らない。誰も教えていない。 「それは私に任せなさい。今はハヤテ君のなすべきことだけ考えなさい」マリアが答えた。 「わかりました。行ってきます・・・」
「さ、これを持って。もし受け入れるんなら・・・その子が好きだったらちゃんと渡すんですよ」マリアがハヤテに花束を渡した。マリアが今朝三千院家の屋敷に戻って花壇の花を見繕ってきたものだった。小ぶりだが、さまざまな色や大きさの花がセンスよくまとめられていた。 「これはマリアさんがご自分で・・・?あの・・・そこまでしてもらっては・・・」 「女の子に告白させるんだから、そのくらいのお礼は準備していきなさい。待ち時間があれば、その花束をじっくりと眺めてみなさい」 「はい・・・。ありがとうございます」
ハヤテは門に向かって歩き出したが、門の前で振り返った。 「あ、あの・・・。まだよく事態が呑み込めないですが・・・。それでも皆さんが僕のために真剣に考えてくれたのはわかります。 僕は、僕なりに・・・皆さんのお気持ち、しっかりと受け止めさせてもらいます」 ハヤテが久々の笑顔を見せて、門を出て行った。
「あの笑顔・・・ホント罪だよね。でも、あんなハヤテ君の笑顔、久しぶり」 「もっとも受け止めるべきは私たちじゃなくて無敵センパイの気持ちだけどな」 「それにしても、さすがはマリアさんですわね。ヒナはまだ半信半疑でしょうが、ハヤテが花束を持っているのを見ればきっと安心できますわね」 「さすが、アリスちゃんは賢いわね」 「歩、ちょっと部屋でヤケ食いしようか。お菓子を買いこんでるんだけど」 「何を言ってるのかな、ルカ。ここは決定的瞬間を瞼に焼き付けないと」 「・・・歩、覗きに行く気?」 「覗くなんて人聞きが悪いなあ。恋愛コーディネーターとしては、成果まできちんと確認しないと、責任を果たしたことになりません」 「・・・ほとんど千桜とマリアさんの働きじゃなかったっけ」 「おや、何のことかな。でもあれだけ不器用な二人がどんな感動のラブマシーンを演じるのか、マンガのネタになるかもよ」 「ラブシーンでしょ、それは」 「う・・・、いやいや、あの二人のことだからマシーンみたいなぎくしゃくとした動きが予想されるという意味で・・・」 結局、ルカも歩に引き摺られることになった。
*****************************************************************::
同時刻−負け犬公園の近くにある喫茶店
千桜とヒナギクが向き合って紅茶を飲んでいた。 昼前に千桜はヒナギクを連れ出し、ゲームセンターやボーリング場で、とにかくヒナギクの緊張をほぐそうとしていた。それほどヒナギクは表情が硬い。 (それにしてもこんな日に普段着か。もうちょっとお洒落してくればいいのに) 千桜は思ったのだが、指摘はしなかった。その方がリラックスできるかもしれない。 いや、恐らく、この負けず嫌いな生徒会長は決戦の場に武装して赴くこと自体、負けたような気がするのだろう。 (まあ、今までの経緯が経緯だからな・・・。無理もないか)
千桜の携帯が鳴った。 「歩から連絡があったよ。綾崎君が今、出たそうだ。負け犬公園までもうちょっと時間がかかるが、約束の時刻より30分も早く着くぞ。 やっぱり、綾崎君も本気だな、これは・・・。
どうしたヒナ・・・?顔色が悪いぞ」ヒナギクの顔が青ざめている様に見えた。 「ご、ごめん。ちょっと緊張して・・・」 「何を言ってる。日頃全校生徒の前で堂々と話をしている生徒会長が。それに比べれば軽い軽い」 「でも・・・何となく怖くて・・・」ヒナギクがちょっと震えているように見えた。 千桜は違和感を覚えた。ヒナギクの様子が、無理やり高いところに連れてこられた時に似ている。 半信半疑の今、不安が残るのは当然だが、それだけでこんなに怯えるものか?
「何が怖いんだ、ヒナ?」 「あの・・・私が好きになったら・・・私のこと好きになってくれたら・・・ハヤテ君はどこかへ行ってしまいそうな気がして」
(そっちの方か・・・) 千桜は聞いたことがある。ヒナギクが幼いころに大好きだった両親が失踪し、姉と養父母の元で育てられたこと、それがトラウマとなり、好きな人は皆自分から去って行くのではないか、という思いを拭えないでいることを。 「ヒナ・・・。子供のころの辛い思い出がトラウマになるというのはわかる。だが、今そんなことを考えてどうする」 「・・・そうよね。ごめんなさい、変な事を言って」 「大丈夫だ、ヒナ。綾崎君は必ずヒナを受け入れてくれる。関係ないことは考えるな」 「え、ええ」 「さ、そろそろ行かなきゃ。どうする?私も公園まで付いて行こうか?」 「だ、大丈夫よ。ここまでやってもらったんだもの。結果はどうあれ、後は一人で決めてくるわ」 「その意気だ、ヒナ。自信を持っていけ」 (そうよ。あの時とは違う。あの時はハヤテ君に気付いてももらえなかった。今は、ハヤテ君は私の気持ちも、何が起こるかも知っているんだ)
ふと、思った。 それは必ず何らかの決着をもたらすことになる。 背筋に凍りつくような悪寒が走った。いつかも同じものを感じたような気がしたが思い出せなかった。 (な、何を怖がっているのよ。千桜の言う通りよ。勇気を出すのよ、ヒナギク)
ヒナギクは立ち上がり、喫茶店を出ていった。もう振り向くことはなかった。 (やれやれ・・・。本当に手のかかる二人だこと)千桜はホッと息をついた。 喉がしきりと渇いていた。もう一杯紅茶を頼もうとした千桜だったが、ヒナギクの震える姿や不安げな眼差しが頭の中に蘇った。
妙な胸騒ぎがした。 (あまり感心できたことではないが・・・)千桜はヒナギクの後をつけることにした。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.17 ) |
- 日時: 2015/10/02 23:09
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- 約束の場所へ一足早く辿り着いたハヤテはヒナギクさんを待っています。
ヒナギクさんの想いは報われるのか、ハヤテは鎖から解き放たれるのか。 以下、第8話をもって、第二章を締めくくります。
【第8話:花束の中のDaisy】
公園の街灯が点くのはもう少し後だろうか。夜空、と呼ぶには少し早い空を眺めると一番星が見えた。次第に薄暗くなってきた負け犬公園には、誰もいなかった。
まあ、当然だ。子供たちは公園から帰る時刻だし、待ち合わせの時刻よりは30分も早い。 本当に僕はこの公園に縁が深い。 一人で逃げ込んでいつも誰かに助けられて来たこの場所で、僕は今、僕を好きだという人を待っている。
ムラサキノヤカタでこれ以上待つことに耐えられず、一時間も前に飛び出そうとしたのだが、マリアさんに呼び止められた。他の皆さんも出てきて、まるで壮行会だったな。 恥ずかしかったが、皆さんの気持ちは涙が出るほど嬉しかった。
僕なんかのために・・・というのはうぬぼれが過ぎるだろう。僕に告白してくれる女性のため、でもなければあれだけの人たちが応援してくれるとは思えない。 あの中には、僕を好きだと言ってくれた人もいたんだし。
でも、問題はこれからだ。 僕に告白をしてくる人が誰なのかまだ聞いていない。 僕の「好きな人」って・・・。 いきさつから考えるとヒナギクさん以外考えられないけど・・・。
本当だろうか。 僕が夢に見て、遠くから見ているだけで心臓が高鳴る程、大好きな人が僕を好き・・・? やっぱりおかしい。ヒナギクさんは僕を嫌っているんじゃなかったっけ?
いや、嫌いじゃなくても、ヒナギクさんなら、自分が望めばどんな恋人だって持つことができるだろう。それが、僕・・・? ヤガミヒメから愛された大国主みたいな話が本当に現実にあるんだろうか?
仮にヒナギクさんだとして、僕はどうすればいいんだろう。 僕は借金持ちで甲斐性はないし・・・。 い、いや、今さら悩む問題じゃない。
偉そうに言うことじゃない。今朝、千桜さんからこのことを告げられてからずっと、ヒナギクさんが僕のことを好き・・・かもしれないと思うだけで、心臓が破裂しそうだ。
朝、一度だけヒナギクさんと廊下で顔を合わせた。 「お、お早うございます、ヒナギクさん」 「お早う、ハヤテ君」 ヒナギクさんは僕と目を合わすことなく通り過ぎて行った。 今までなら僕は、『やっぱり嫌われているんだ』と思っただろう。だけどこの時、僕はヒナギクさんの顔が朱く染まっていることに気付いた。
もしかしたら・・・、初めて思った。
僕はヒナギクさんを呼び止めようとしたが、声がかすれた。そのままヒナギクさんは気付かずに歩き去って行った。 その後、ヒナギクさんはずっと外出していて全く見ていない。
街灯に明かりが点いた。 光の下でもう一度、マリアさんが用意してくれた花束に目を遣った。 『待ち時間があれば、その花束をじっくりと眺めてみなさい』 花束の真ん中には、真っ白で小さなdaisy・・・雛菊が一輪だけ入っていた。 周りを取り囲んだカラフルな大きな花に負けることなく輝き、それだけでなく周りまで輝かせているように見えた。 『これがヒナギクさんなんですよ』そんな声が聞こえてきたような気がした。 これがヒナギクさん・・・。綺麗で可憐で、そして周りを幸せにする花。
マリアさんは、女の子への御礼と言っていたけど、もしかしたら僕へのメッセージだったのだろうか。
*****************************************************************:
足音が近づいていることには気付いていた。 だが、公園の外に背を向けたまま動かなかった。 顔を向けるのが怖かった。何を今さら・・・とは思いつつ、体が動かなかった。 足音が僕のすぐ近くで止まった。
僕は、金縛りにあったような体を懸命に動かし、目を固く瞑って向き直った。 そおっと目を開けた。 僕のすぐ前に立っていたのは、紛れもなくヒナギクさんだった。 その表情は強張っているようだった。 ヒナギクさんも緊張しているのか・・・。
(僕の方から話し掛けなきゃ・・・)そんなことが頭をよぎったが、何を言っていいのか全く考えていなかったことに気付いた。
頭をフル回転させたものの、いや空回りだろう。何も考え付かない。 汗が噴き出してくる。
ヒナギクさんが口を開いた。 「ハヤテ君・・・」 「は、はい・・・」 やっとそれだけを声に出した。カラカラに渇いた喉からはかすれた声しか出てこない。 ヒナギクさんの表情は変わらない。
ヒナギクさんがもう一度口を開いた。 「月がきれいですね」 「・・・?」
ええと、今、月はどこに?きょろきょろしながら振り向くと、確かに満月と半月の間くらいの月が綺麗に輝いていた。 「は、はあ。そうですね」だけど、ヒナギクさんは何が言いたいんだろう。 さっぱりわからないまま、ヒナギクさんに向き直った。
(え・・・) ヒナギクさんの様子がおかしい。 両腕で自分を抱き締めガタガタと震えている。顔は真っ青で汗に塗れている。 「ど・・・どうしたんです、ヒナギクさん」
ヒナギクさんが顔を僕に向けた。その目が必死に何かを訴えかけている。 ヒナギクさんの口がぱくぱくと喘ぐように動いた。声は出てこない。 スローモーションのようにヒナギクさんが崩れ落ちていく。
「ヒナギクさん!」 ヒナギクさんに駆け寄り、抱き止めた。 「ヒナギクさん、しっかりして下さい」 僕の腕の中で、ヒナギクさんは目を閉じてピクリとも動かない。 気を喪ってるのか?
一体、何が起こったんだ。 呼ばなきゃ。救急車を。
「ヒナギクさん!ヒナギクさん!!」 駆け寄ってくる人影がある。
マリアさんの花束が地面に転がっていた。
【憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が・完】
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.18 ) |
- 日時: 2015/10/03 09:31
- 名前: タッキー
- 参照: http://hayate/1212613.butler
- 勉強しろぉぉぉぉおおおおおおおお!
どうも、タッキーです。なんだかお久しぶりですね。随分とご無沙汰していましたが、ちゃんと(?)一話から読ませていただいております。
まずは第2章完結おつかれさまです。 実のところ、自分も何章かに分けた長編でも書こうかなとは思ってはいるのですが、今のペースだと…(遠い目 なので、更新頻度が全くと言っていいほど落ちないどうふんさんは素直に尊敬しています。これからも頑張ってください。
それから、最後のヒナさんは……とにかく、本当に緊急な事態ではないことを祈っています。
今までの分の感想を持ってくると長くなってしまうので今回はこれぐらいで
次章も楽しみにしております それでは
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.19 ) |
- 日時: 2015/10/04 08:45
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
タッキーさんへ
感想ありがとうございます。 ホントご無沙汰ですね。
「一体何が起こったんだ」ハヤテの驚愕に対する答えは第三章にて回答を用意します。 もちろん、当方の勝手な設定によるものですが。
心配をおかけして申し訳ありません。 実はヒナギクさんは不治の病に侵されていて、余命○ヶ月・・・なんてことは全く考えておりません。 私が書きたいのはあくまで幸せなヒナギクさんとその世界、というより、そこに辿り着くためのプロセスですから。
と、勿体ぶっておいて恐縮ですが、当方としては、第二章が終わったのを機に一休みしようかと思っています(褒められた直後にこれかい)。
とはいえ、ヒナギクさんとハヤテには早く幸せになってほしいので、できるだけ早く第三章に取り組みます。
タッキーさんの物語の続きも楽しみにしております。
どうふん
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.20 ) |
- 日時: 2015/10/07 03:17
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
はっきり言って驚きました。二人の様子、周りのサポートの感じからすると不恰好ながらも告白は成立するんじゃないかと思っていましたので… ハヤテの気持ちに整理がつき、ヒナに決心が出来た上で起こるトラブルとは…とにもかくにも、次章に目が離せない展開ですね。
個人的にデイジーをヒナの分身として扱っているところに親近感を覚えました。語呂もいいし、花としても綺麗ですし二次創作にはなかなか使い勝手のいい表現だと思っています。
そんなこんなで、次回も期待しております。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.21 ) |
- 日時: 2015/10/07 21:56
- 名前: 瑞穂
- どうふんさんへ
こんにちは。瑞穂です。 第2章の執筆お疲れ様でした。完結おめでとうございます。
完結ということでハヤテ君とヒナギクさんの告白について解決すると思いましたが、繰り越しという意外な結末に驚きました。周りの、ゆかりちゃんハウスの皆さんのサポートからしてこの問題が解決して第3章へ繋がると思っていましたから。 読んでいて皆さんの気遣いに、行動に熱いものがこみ上げてきました。感動しました。 なんだかロッキーさんと似たようなことを書いていますが気のせいです。(苦笑)
他に気になったのは、ヒナギクさんが無愛想ながらハヤテ君に挨拶を交わしたこととハヤテ君のことが好きだとはっきりと意識していることです。 これまでのヒナギクさんなら有り得ませんでした。まあ、告白のセリフが文学的なのは頭がよすぎて男性に免疫がない彼女らしいです。
ヒナギクさんの体調もハートも告白前より回復することを、成長することを祈っています。なによりも2人が幸せになれることを期待して、感想を締めさせていただきます。
それでは第3章を楽しみにしています。頑張ってください。(笑) 最近気候変動が激しいので体調管理に気をつけてください。(余計なお世話かと思いますが、お許しください)
それでは、失礼致します。
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Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が ( No.22 ) |
- 日時: 2015/10/07 23:55
- 名前: どうふん
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413
- ロッキー・ラックーンさんへ
瑞穂さんへ
感想ありがとうございます。 ちょっと意外な展開でしたか。 まあ、お二人を驚かせたくらいなら、今回の仕掛けは上々だったということで・・・ 済みません、冗談です。そんな大層な計算はしておりません。 ただ、以前、感想へのレスとして、「本作の主題となる『波乱』はまだ始まってもおりません」と書いたことがあります。 それが、今始まったばかりです。 第三章は、本章末尾の謎解きから始まりますが、皆さまが納得できる答えを用意できるか、しばらく時間を頂戴いたしたく。
ロッキー・ラックーンさん
以前、感想を書いたことがあります。当方、ロッキーさんの「Stand up,Daisy!」が大好きでして、なぜヒナギクさんにこれだけのことができないんだろう、と思っています。 それについて、私なりに思いついたことが本作につながっております。 ロッキーさんに親近感を感じてもらえたのなら、光栄です。
瑞穂さん
毎回のように、私の体調を気遣ってくれてありがとうございます。 ムラサキノヤカタに住むみんなが、二人のために親身になっている姿は、正直なところ、作者の構想を超えてエスカレートしています。各キャラが勝手に行動し、私はそれを書き留めているだけのような気がしてます。 当方としても彼女らの想いをムダにしたくはありません。 なかなか二人の仲が進展せず、じれったいと思われるかもしれませんが、何よりも二人の幸せを、というのは私も同様です。
どうふん
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