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解のでない方程式
日時: 2015/05/09 02:10
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、タッキーです
今回は中編ということで、だいたい10話くらいでまとめたいなぁ、と思っています(まとめるとは言ってない
とりあえず前作で消化不良だった部分もこのお話でスッキリできると思うので、全部読んでくれるとありがたいです。文はやっぱりアレですが、どうか温かい目で見守ってください。
それでは『解をだせない‘想い’の方程式』…
更新!!











































「くそっ!くそっ…!」

これで僕が乗った客船が沈むのは二度目。まったく、どれだけ運が悪ければ気が済むのだろう?もう腰あたりまで浸水してしまっているし、水圧のせいか、もしくは重い家具とかが外から部屋を塞いでしまっているせいか、いくら叩いても目の前の扉は頑として僕をこの個室から出してくれなかった。あいにくケータイは紛失してしまっていて、助けを呼ぶどころか一緒に乗っていたお嬢様たちの安否を確認することもできない。
唯一よかったと思えるのは、もうすぐ海の青に隠されるだろうこの船に自分の妻と娘が最初から乗っていないことだった。まぁ、あんなことさえなければ僕もこの船に乗る予定はなかったんだけど…

「………」

扉を叩くのをやめ、ダラリと腕をさげると当然ながら僕のいるこの部屋は静かになる。さっきよりはっきり聞こえるようになったはずの水が流れる音も、遠くで船内が崩れていく音も、今の僕には常日頃聞いていた自然音のようにしか感じなかった。
別に諦めたわけじゃない…と思う。ただ、この胸の痛みを思い返す度にだんだんと自分がなにをしたかったのか分からなくなってしまっていて、なんだかここから脱出することの意義も見失っていくようだった。



「ヒナ……」



もう肩下まであがってきた海水に、僕の体はどっぷりと浸かっている。服が張り付いているところから伝わる温度も、服の合間から流れ込んできた水の温度も、冷たいのか熱いのか…もう分からなかった。

















「どうして…こんなことになっちゃたのかな……?」











































 第1話 『 足りない言葉で 』

























ナギお嬢様が高校を卒業されたことで、三千院家は前にもまして遺産相続のごたごたが騒がしくなった。三千院家の執事長を務めている僕こと綾崎ハヤテがその件についての仕事をほったらかしにして家族と一緒にいることは当然許されず、月に一日でも休みをもらえれば多いほうだったし、娘であるアカリが生まれてからの4年間はそれに拍車がかかったかのように忙しくなった。

そしてそれはつい昨日、そんな生活がやっと終わり、これからの家族との日々に胸を膨らませながら家に帰ることができた日のことだった。


















「ただいま〜」

返事はなかった。水の流れる音が聞こえていたから、きっとキミは食器を片付けている最中だったのだろう。案の定キッチンまで足を運ぶとそこには愛おしい妻がいて、黙々とお皿を洗っていた。

「ヒナ…ただいま」

「あ、おかえりなさい…ハヤテ…」

なんだかそっけなかった。多分この時点でキミの表情が曇っている理由を理解していれば、いや、それが分からないまでもそのことに思考を馳せることさえしていれば、もしかしたらあんなことにはならなかったのかもしれない。でもこの時の僕は久しぶりに会えたことに浮かれていて、キミが無理をしていることに気づきもしてやれなかった。

「えっと…アカリは?」

「幼稚園よ。平日なんだから当たり前じゃない。それにしても仕事のほうはもういいの?」

「うん。遺産の件もようやく片付いたし、後始末まで全部終わらせたから…これからは毎日帰ってこれるよ」

「そう…なんだ」

僕はここで初めて違和感に気づいた。それはキミがもっと喜んでくれると思っていたからなのもあるし、それに…


「ねぇ、ハヤテ…?」

「ん?」

「なんでさっき……」














キミが、今までにないほど悲しい顔をしているのを見てしまったから……



















「天王州さんと、一緒にいたの…?」




























































「え…?」


























何か言わなくちゃいけない。今すぐ誤解を解かないといけない。そう思ったのに、なぜか僕の唇はとっさに動いてくれなかった。

「ねぇ、何か言ってよ…。家族ほったらかしにしてまで仕事してたのはなんで?私たちのためじゃなかったの?」

「ち、ちがう!僕はずっとヒナとアカリのためにって…!!アーたんはただ買い物に付き合ってもらってただけで……」

「じゃあなんで…!!」

僕の言い訳をさえぎったキミの言葉はまるで火のようだった。その激しさも、それが僕に与える焼け付くような感覚も…。

「なんで、彼女にネックレスをあげてたのよ…!!」

「そ、それは…!」

「私ずっと待ってた!寂しかったけど、心細かったけど…!それはきっとハヤテも同じだからって思って…ずっと我慢してた!!なのにハヤテは仕事が終わってもすぐに家に帰ってこないし、それどころか先に天王州さんと会っていて…!」

「だ、だからそれはヒナがちょっと誤解してるだけで…!!」

「誤解!?あんなに楽しそうに笑っていたのに!?」

キミは僕が思っているより、ずっと寂しい思いをしてきたのだろう。だからこんなにもキミは怒り、声を枯らし、今までになく感情の波を僕にぶつけてきた。なのに僕はそれに応えることも、受け止めることもできず…ただ弁明を求めるだけ。今思い返してみても、どうしてこうすることしかできなかったのか自分でも理解できないけど、きっとキミはそんな僕を見てもっと怒りを募らせていたのだろう。

「ハヤテにとって私たちはなんなの!?あなたが私を大切だと言ったことも…特別だって言ってくれたことも全部うそなの!?」

「うそじゃない!!結婚だってしてるんだから……」

その瞬間、まるで世界中の音を一瞬だけ消してしまったような錯覚がした。








「結婚してるから…アカリがいるから……私は特別なの?」





さっきまでの激しさからは想像できないほど、この時のキミの声は静かで、そして冷たかった。そしてそれは再び何倍もの温度で燃え上がり、僕の胸に消えない傷を残すことになるのだけど、もしかしたら僕はそのことをうすうす感じ取っていたのかもしれない。だってこの時がきっと、僕が生きてきた中で一番恐怖に身体をふるわせていたのだから…。

「ち、ちがう…。僕は…そんなんじゃ……」

「もういいわ……」

「僕は…ヒナとアカリのこと、ずっと……」

「もういい!!」

























「………」










この時に感情を、なんと表したらよかったのだろう?どういう言葉をかけてあげれば、キミのその先の言葉を止められたのだろう?






「もうハヤテなんか…!!」



















どうすれば……キミにあんな寂しいことを言わせずにすんだのだろうか…?











「ハヤテなんか…!



































  いなくなっちゃえばいいんだーーー!!!」












































どれくらいの静寂が流れたのか正確には覚えていない。1分以上だったのかもしれないし、10秒にも満たなかったのかもしれない。だけど、その無意味な時間を終わらせたのが僕の頬につたうモノだったのは覚えている。それに気づいた僕は思わず取り乱してしまって、キミも突然のことにすごく驚いているようだった。

「ご、ごめん…!辛いのはヒナのほうなのに……!」

「……」

何も言われなかったけど、あまり気にならなかった。それよりも部屋を出るためにドアに手を伸ばしたとき、一瞬だけ見えたキミの申し訳なさそうで…つらそうな表情が、とても印象的だった。













「ちょっと…出かけてくる……」



ドアノブを回している最中も…部屋を出てドアを閉めた後も、僕に返ってくる言葉はなかった。

































































「ガハ…ッ……」

肺から残り少ない酸素が逃げていき、その代わりに塩辛い海水が喉に流れ込んでくる。もう僕のいる部屋は完全に浸水していて、きっと船自体も沈没してしまっているだろうから僕が助かる見込みは限りなくゼロに近いだろう。
でももし僕が名前を呼んで、その声が海に溶かされずにキミに届いたとして…キミはあんなことをした僕を救い上げてくれるだろうか?いや、ここに疑問をもつことは絶対に間違いだろう。誰よりも優しいキミは自分の危険を顧みず、きっと助けに来てくれる。だから僕の声は届かなくていい。届かないほうが…きっといい。




(このままさよならしてしまったほうが…きっと……)




思わず手を伸ばしてみるけど、ただ水を切って力なくユラユラと揺れるだけ。いろんな感覚がなくなっていくと同時に、だんだんと瞼も重くなっていった。



















(でも…やっぱりイヤだな……。まだ、一緒にしたいこととか…たくさんあったのに……)






視界のすみでチラリと何かが光る…。たぶんケータイだろう。もっと早く見つけてさえいれば僕も助かっていたかもしれない。もしそうだったら…いや、たとえこの状況が変わらなくても……また………








































(ヒナ……


















































































  また、会いたいよ………)





















その瞬間、僕の意識は真っ黒になった。









































どうも
この中編でハヤテ視点の回はこれを含めて二回ほどかと。取り敢えず次はヒナさん視点で、それ以降もヒナさん視点が多くなると思います
それでは



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Re: 解をだせない‘想い’の方程式 ( No.1 )
日時: 2015/05/09 09:12
名前: どうふん


ハヤテ君・・・相続を巡りどんな争いがあって大変だったのかは知らないが、新婚かつ娘が生まれて4年間、月に一度ぐらいしか家に帰らないってのはあんまりだよ。

アテネの件が誤解であるのは読者としては見当つくけど、そんなシーンを目撃されればいくらヒナギクさんでも怒るよそれは。
君に「火に油を注ぐ名人」と言ったのは花菱さんだったっけ・・・。



タッキーさんへ


話の引き、としては臨場感があっていい入り方だと思います。

ハヤテとヒナギクさんが喧嘩するところは、会話が噛み合っていませんが、深刻さの度合いに関わりなく痴話喧嘩は大体そういうものだと思います。

実際私の作品もそうでしたし。

何にせよ、当方としては今までの謎の解明編と理解しておりますので今後の展開を楽しみにしております。

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Re: 解をだせない‘想い’の方程式 ( No.2 )
日時: 2015/05/11 21:15
名前: タッキー
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どうも、タッキーです

どうふんさん、ご感想ありがとうございます。ということで今回はレス返しです。




まぁ、家に帰っていなかったとはいえ、その分ハヤテも頑張っていたんじゃないかと。我慢して遺産の件を早く片付けるか、それともそれを遅らせて家族との時間を少し増やすか…ハヤテが前者を取った結果が今回の話だったのですが、こうなってしまったからと言ってハヤテの選択が一概に間違いとは言えないことを少しだけでも分かっていてもらいたいです。
これからヒナさんがその正解を見つけることができるのか、それともそうでないのかも分かっていただけるように続きを書いていくつもりです…たぶん(上手く書ける自信がない


喧嘩の話がかみ合ってないのは…まぁ、仕方ないんじゃないかと(テヘ☆
とりあえずこんなもんだと見過ごしていただけたら幸いです。


なんにせよ謎解明のほうはしっかりやるのでご安心を
それでは
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Re: 解をだせない‘想い’の方程式 ( No.3 )
日時: 2015/06/17 00:31
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、タッキーです
試験とかいろいろあって遅くなっちゃいましたけどやっと更新です。
それじゃ、特に言うこともないのでさっそく第2話…
更新!!





























正直に言って、それほど寂しいとは思っていなかった。別に彼がいないことがなんともなかったわけじゃない。たまに彼が帰って来てくれた時はすごく嬉しかったし、その時間が終わった後の喪失感だって痛いほどに感じていた。だから、私のハヤテを好きな気持ちが変わったことだけは…絶対に無かった。
しいて言うなら…

「それじゃママ、いってくるね!」

「いってらっしゃい。あんまり先生に迷惑かけちゃダメよ?」

しいて言うなら…満足感だろうか。ハヤテと結ばれたこと、ハヤテとの娘ができたこと。心に余裕ができたっていうか…安心しているっていうか…。

「むー!私いい子にしてるもん!」

なんにせよ、目の前でふくれっ面を作っている我が子を見ているだけで温かい気持ちになれているのは確かだった。

「はいはい。それじゃアカリ、また夕方迎えに来るからね」

「うん!」

そう、私は幸せだった…。










今日、娘を幼稚園に送って…気紛れに商店街に寄り道して…そこで、私たちのために仕事をしてくれているはずのハヤテを見るまでは……。









































小さなプレゼントと一緒に、天皇州さんに…私たち以外の人に向けられたあの幸せそうな表情を見るまでは…













































  第2話『 ワスレモノ 』





















 





食器を片付けている途中、すぐそばで声をかけられてはじめて私はハヤテが帰ってきたことに気づいた。玄関のドアが開いた音にも、その時にハヤテが「ただいま」と言ってくれたことにも気づいていなかった。それぐらい、さっき見た光景のことで頭がいっぱいだった。

「ヒナ…ただいま」

「あ、おかえりなさい…ハヤテ…」

ハヤテは少し嬉しそうに見えたけど、私にはその理由が分からなくて……いや、ホントは分かっていたはずなのに、その答えに自信を持つことができなかった。

「えっと…アカリは?」

「幼稚園よ。平日なんだから当たり前じゃない。それにしても仕事のほうはもういいの?」

目は合せなかった。私の沈む気持ちとは逆方向に、ハヤテの声のトーンはだんだんと弾んでいく。それが…なぜか面白くなかった。

「うん。遺産の件もようやく片付いたし、後始末まで全部終わらせたから…これからは毎日帰ってこれるよ」

「そう…なんだ」

嬉しい知らせのはずなのに素直に喜ぶこともできない。それどころか意に反してふつふつと沸いてくる感情は、自分でも分かるくらいにいやしいモノだった。

「ねぇ、ハヤテ…?」

「ん?」

「なんでさっき……」


































ホント、自分のことが嫌いにになるくらい……嫉妬していた


































「天王州さんと、一緒にいたの…?」




























































「え…?」













































何も、言ってくれなかった。べつに言い訳をしてほしかったわけでも、謝ってほしかったわけでもなかったのに、なぜかそれは私を激しく葛藤させた。

「ねぇ、何か言ってよ…。家族ほったらかしにしてまで仕事してたのはなんで?私たちのためじゃなかったの?」

「ち、ちがう!僕はずっとヒナとアカリのためにって…!!アーたんはただ買い物に付き合ってもらってただけで……」

「じゃあなんで…!!なんで、彼女にネックレスをあげてたのよ…!!」

多分、彼がどう答えていても私はこの問いを投げかけただろう。だけど一番心に引っかかっていたのはこれじゃなかった。

「そ、それは…!」

「私ずっと待ってた!寂しかったけど、心細かったけど…!それはきっとハヤテも同じだからって思って…ずっと我慢してた!!なのにハヤテは仕事が終わってもすぐに家に帰ってこないし、それどころか先に天王州さんと会っていて…!」

「だ、だからそれはヒナがちょっと誤解してるだけで…!!」

「誤解!?あんなに楽しそうに笑っていたのに!?」

私は…ホントに寂しかったのだろうか?ふとそんな疑問が頭をよぎった。でもそれは一瞬で、思考を巡らせる間もなく頭の中から消えてしまった。だって…

「ハヤテにとって私たちはなんなの!?あなたが私を大切だと言ったことも…特別だって言ってくれたことも全部うそなの!?」

「うそじゃない!!結婚だってしてるんだから……」

ハヤテが…こんなことを言いだしたのだから……








「結婚してるから…アカリがいるから……私は特別なの?」





言っていることは無茶苦茶だったと思う。後で冷静になって考えればもっと良いとらえ方が…自分に都合のいい解釈ができたのかもしれない。

「ち、ちがう…。僕は…そんなんじゃ……」

「もういいわ……」

「僕は…ヒナとアカリのこと、ずっと……」

「もういい!!」

























「………」










ハヤテは…辛そうだった……






「もうハヤテなんか…!!」



















私も…悲しかった……















「ハヤテなんか…!」






































なぜか、この時だけは二人の気持ちが一緒だと…確かにそう感じることができた。































































ホント、皮肉にもほどがあると…そう思った。










「いなくなっちゃえばいいんだーーー!!!」




































































私が我に返ったのは、ハヤテの目から流れているものに気づいた時だった。その瞬間「言い過ぎた」と、そう思ったのに、先に謝ってきたのはハヤテの方で、私は言葉をなくしてしまった。

「ご、ごめん…!辛いのはヒナのほうなのに……!」

「……」

そう。私はハヤテがいない間、とても辛かった。だから…










































 だから…?

































ハヤテが背を向ける。その瞬間、背筋にゾクリと悪寒が走った。手は…伸ばさなかった。































ハヤテがドアに手をかけた。まだ間に合う気がしていのに、手は…伸ばせなかった



























「ちょっと…出かけてくる……」











ドアが閉まる音が、一人ぼっちの部屋に虚しく響いた。
























































ハヤテがいない間、私はそれほど寂しいとは思っていなかった。だけどその分、すごく…すごく……辛かった





だから、帰ってきたときにはせめて…































  抱きしめて…ほしかった…











































「私は、ハヤテに抱きしめて…欲しかったんだ……」




















































































どうも、
なんかヒナさんの心情の変化がややこしいですが、まぁ、次で落ち着くとこに落ち着くかと。上手く書けるか分かりませんけど落ち着けるように努力します。
短いですが今回はこれで

それでは
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Re: 解をだせない‘想い’の方程式 ( No.4 )
日時: 2015/06/27 01:46
名前: タッキー
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どうも、タッキーです
今回はまぁ、ハヤテがどうなったかとか…その後とか…いろいろです。………。
そ、それでは!
更新!!

































ハヤテが家を出てから2日。しかし、もともと彼が家にいた時間のほうが少ないためか綾崎家にこれといった変化はなく、娘のアカリにいたっては父親がいなくなったことに気づいてすらいなかった。
ただ、日常が変化したことに…いや、自分が日常を変えたことに気づいてるヒナギクだけは、この時間をとても息苦しいものに感じていた。

「ハヤテ…少しやつれてたな……」

彼女は後悔していた。反省もしていた。だからと言ってハヤテがひょっこり帰ってくるわけでもないし、そんな彼に戻ってきてくれと電話をかけることも、ヒナギクは罪悪感からできずに悶々としていた。
ハヤテが出ていった日の夜も、その次の何の変哲のない一日も、そして…まだぐっすりと眠っている娘のために朝食を作っている今も、ずっと…












 第3話 『 ちょっと出かけてきます 』















  ポーン…







来客を知らせるチャイムが鳴った。だけど今は朝の6時で、他人の家を訪ねるには早すぎる時間だ。私はIHの電源を切って、玄関のインターホンと連動しているモニターで来客の顔を確認した。天皇州さんとナギだった。面子に驚きはしたけれど、すぐに玄関のドアを開けた。

「朝早くに悪いが、別に挨拶しにきたわけじゃない。今、時間は大丈夫だよな?」

ナギは暗い顔をしていて、どこか悲しそうで…そして、どこか怒っているようにも見えた。その横の天皇州さんは私から顔を背けて何も話さなかったけど、申し訳そうな表情をしていた。

「そ、そりゃこんな時間だし余裕はあるけど…話って?」

「ハヤテが死んだ」




















































 ………は?





















「正確には行方不明だ。だが…」

「ちょっ、ちょっと待って!!」

いきなりだった。いきなりすぎた。ハヤテが……死んだ?

「嘘…でしょ?」

「本当だ。昨日…」

「嘘って言いなさいよ!!!」

思わず叫んでいて、自分でも驚くくらいに取り乱していた。一瞬の沈黙が流れた後、ナギは続きを話し出した。

「昨日の4時頃、ハヤテの乗った客船が事故で沈没して、その船にハヤテが取り残された…。何時間も捜索を続けさせたんだが、見つからなかった」

「………」

言葉が出なかった。正直、ナギが話したことを受け止めきれていなかった。だってハヤテが死ぬはずないじゃない。あのハヤテが……

「ヒナ…」

気が付くと天皇州さんが心配そうに私の顔を覗いていた。

「その…ハヤテは別に浮気してたわけじゃないの。私が勝手にハヤテを買い物に連れ出して…」

「分かってる…」

そう、分かってた。誤解だってことぐらい、ハヤテが浮気なんてしてないことくらい…気づいてた。

「分かってるから…。お願い、今は一人にさせて……」

「ヒナ!」

天皇州さんが呼び止めたのは私が振り向くより一瞬だけ早かった。彼女はゆっくりと近づくと、やはり申し訳なさそうな顔で私の手に小さな箱を握らせた。桜色のリボンに包まれた、白い長方形の箱だった。

「先日、ハヤテがあなたのために選んだものよ。私が選んだものは返されてしまったから、それをハヤテが私にプレゼントしてると勘違いしたのよね。本当に…ごめんなさい」

天皇州さんはそれ以上何も言わず、深く頭を下げるとそのまま去っていった。どう言葉をかけていいのか分からなかったから、正直彼女の行動はありがたかった。気づくとナギもいなくなっていて、私は一人で玄関に立っていた。












箱を開いてみる。やはりというかなんというか…ネックレスだった。チェーンじゃなくて紐だったところとか、その先についていたのが文字を刻んだ小さなプレートだったところとかが、飾らない彼らしいと思った。


























 With you

































































「嘘つき……」

















































-ちょっと…出かけてくる…-







































「嘘つき…!!」

頬を冷たいモノがつたう。それがネックレスに落ちたときにはじめて自分が泣いていることに気づいた。








「う、あぁぁ…」












信じられなかった。もう彼がいないことも、もうハヤテに会えないことも…全部、信じたくなかった。ハヤテとの最後があんな酷い形になってしまうことが…何より嫌だった。














「あぁぁ…っ!!」














だけど多分、私がこうして悲しむことは筋違いなことなのだろう。彼にあんな言葉を吐きかけた私には涙を流す資格なんてきっと無い。なのにぬぐう雫の量はどんどん多くなって、終いには両手で顔を押さえられずには…泣き叫ばずには、いられなくなってしまった…。







「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!」
















安心していた。ハヤテと結婚して、そしてアカリという娘ができて…ハヤテはもう私から離れていかないって勝手に思い込んでた。




-結婚だってしてるんだから…-



ハヤテがこの言葉を口にしたとき、私は彼が結婚していることを…アカリがいることを私をつなぐ鎖のように考えるんだと思って悲しくなった。でも本当にそう思ってたのは私の方で、ハヤテがいる現実に甘え、自分勝手な思い込みで何も悪くないハヤテを傷つけてしまった。最低だ…。
私はハヤテに、どうやって償いをしたらいいのだろう…?これからアカリと、どんな顔をして一緒に過ごせばいいのだろう…?ハヤテのことを追いかけていた頃を、私はどうやって思い出したらいいのだろう…?





























答えなんて出ないまま…なに一つ分からないまま…私はただ泣くことしかできなかった。


























































「ママ…?」







涙も枯れ果て、これ以上泣くこともできなくなったころ、後ろから聞こえた声にはっとして振り向くとアカリが心配そうな顔でこっちを見ていた。

「ママ…泣いてるの?」

今すぐあの子を抱きしめないといけない。抱きしめて、大丈夫だよって言わないといけない。そうしないといけないのに、泣き疲れていた私はとっさに立つことができなかった。それどころかアカリのほうから近づいてきて、こんな私に抱きついてきてくれる始末だ。こんなんじゃ…いや、もう既に私は母親失格だ…。

「ママ…泣かないで……」

私の頬に触れたアカリの手は温かくて、私はその小さな手を優しく握りしめずにはいられなかった。

「うん…。ありがとう……ありがとう、アカリ……」

アカリの腰に回していた片腕に少しだけ力を入れると、彼女はギュっと私のことを抱きしめ返した。その仕草が嬉しくて、愛おしくて…また、瞳が潤んできてしまった。だけど涙が出るギリギリのとこで押さえつけ、アカリを少しだけ引き離してから私は彼女の目をじっと見据えた。ハヤテと同じ、優しい青色の瞳だった。

「ねぇ、アカリ…」

「ん…?なぁに?」

「パパ…しばらく帰ってこないけど、大丈夫?」



泣いてくれた方がどれだけ楽だっただろうか…。責め立てられたほうがどれだけ後悔せずに済んだだろうか…。なのにアカリは少しキョトンと首を傾げた後、私の意に反してニコリと笑ってみせた。

「…うん。私はママがいてくれれば、それだけで幸せだよ」

「………」

ハヤテがいたら…そして、アカリの台詞にハヤテの存在が含まれていたら…どんなに嬉しかっただろう。
アカリが私のことを気遣って笑顔を作ったことも、アカリの言葉が私を想ってくれていたからだということも分かっていたのに…どうしても、悲しい気分にしかなれなかった。

「ねぇ、アカリ…」

「ん?」

























































「……ごめんね」























































































































あれから4年が経った。
アカリと二人だけの生活全てが悲しいことだったわけじゃないけれど、未だ私の罪の意識は消えていない。ハヤテとの思い出も、当然忘れられるわけなかった。
今は三千院家のメイド…といってもハヤテの仕事をナギに頼んで引き継がせてもらって、それで収入を得ている。初めてハヤテの仕事場に入った時、戸棚に整理されていた膨大な書類の量が印象的だった。ナギの遺産の件だけに絞ってもとても4年で片付けられる量じゃなかったのを見て、ハヤテが私たちのためにどれだけ身を粉にしていたのか痛感させられた。

「…ま……ママっ!!」

「…!あ、アカリ?どうしたの?」

どうやら私はボーっとしていたらしい。なかなか反応をしなかった私にアカリは少し頬を膨らませていた。だけどすぐにその表情は緩んで、いつものニコニコした愛娘になった。

「いや、友達と遊びに行ってくるから…」

「そ、そうなんだ。分かったわ。いってらっしゃい」

アカリは嬉しそうに笑うと玄関のほうに駆けていった。

「じゃあママ、ちょっと出かけてきます!!」

「……っ!!」

その言葉を聞くたびに私の身体は一瞬だけ固まる。それをアカリに悟られないように…アカリにだけは気づかれないように…私は少しだけ声を大きくして、胸のネックレスをギュッと握りしめて…彼女に呼びかける。

「ちゃんと、夕飯までには帰ってくるのよ」

「は〜い!」






































私の声にアカリが返事をしてくれる。今は、それが嬉しかった…。
















































「できるだけ…早く、帰ってきてね……」









































































どうも
これは「兄と娘と恋人と」の話にもなるんですが、未来(この話では現代)でハヤテがいなかった理由…伝わったでしょうか?
取り敢えずこれからは、この話の最後でやったさらに4年後の時間軸でやっていきます。これも前作の話なんですがアカリちゃんが過去に飛んで行ってしまう時代です。彼女のいない間にいろいろあるんですが、それは次からということで

それと、急ですがタイトルを「解をだせない‘想い'の方程式」から「解のでない方程式」に変更させていただきました。なんか「想い」はいらないかなぁと思ったり、ほかにもいろいろあるので。急な話で本当にすいません。次回からもよろしくお願いします

それでは

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Re: 解のでない方程式 ( No.5 )
日時: 2015/07/20 21:28
名前: タッキー
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どうも、タッキーです
なんというか、更新速度が…。一日一回投稿していた頃の自分を褒めてあげたいです
それはともかく、今回からまたオリキャラがでます。簡単なプロフィールは後書きの方で。
それでは…
更新!!




































11月12日、木曜日。天気……雨

「もぉーー!朝の予報じゃ降らないって言ってたクセにーーー!!」

土砂降りとはいかないが、人間に傘をささせるには十分すぎる雨量の中を綾崎アカリは必死に走り抜けていた。

「どこか雨宿りできるところ…」

公園まで辿り着いたアカリは傘がわりしているランドセルごと頭をキョロキョロと回して、屋根のある場所を探した。そんな彼女の目に真っ先にとまったのは三つほど連続して並んでいる自販機だった。そこには最近になって設置された屋根があり、少なくとも雨に打たれることはなくなる。アカリはいそいで駆け込んだ。

「うわっ、びしょ濡れ…。もう11月だし、早く帰らないと風邪ひいちゃうかも…」

とは言ったものの、彼女の眼前で降る雨は収まるどころか、むしろ激しさを増している。こういうのを不幸とでも呼ぶのだろう。アカリは大きくため息をついた。

「そういえば……」

不幸という単語で、彼女は思い出したことがあった。母親から聞いた、というより聞かされた、ある人のこと。彼女の…父親のこと

「お父さんの誕生日って、昨日なんだっけ…」

その瞬間、彼女の視界を真っ白な光が包んだ。













































一瞬の出来事だった。痛みなどは全くなく、特に身体に変化があったわけでもない。思わず目をつむっていたアカリは恐る恐る瞼を開いた。

「あ、あれ!?晴れてる!?」

雨が止んでいたどころか地面に水たまりすらできていない。辺りは少し暗くはあったが西の空には綺麗な夕日も見え、とてもさっきまで大雨だった天気ではなかった。しかも、違和感はそれだけではなかった。

「ここの自販機ってこんなに綺麗だったけ?ていうか屋根もなくなってるし……。どういう……わぷっ!!」

彼女の言葉を遮ったのは風邪に飛ばされてきた新聞紙だった。一瞬また何か起こったのかと慌てたアカリだったが、落ち着いて顔に張り付いている新聞をはがし、日付が印刷されている上部になんとなく目をやった。

「20……05年!?コレどんだけ前の新聞!?まさか私がタイムスリップしてしまったとかそんなわけ……」

急激すぎる天気の変化、見慣れたはずの公園の真新しい景色。思い当る節はいくらでもある。

「いやいや、タイムスリップってあれでしょ?某マンガで執事やってる主人公がお嬢様の帽子追いかけてたら突然過去に行ってしまったっていうアレでしょ。たしかに突然だったけど、私お嬢様の帽子どころか自分の帽子すら追いかけてないし、ただ雨の中を必至に走ってきただけだし………」

なんだか虚しくなってきてしまったアカリは自販機に手をついてガックリと肩を落とした。

「どうしよう……」

もし本当に過去に来てしまったのなら、アカリの住んでいる家はまだ建てられていない。三千院家に行っても向こうは自分のことを全く知らないのだから、迷子か…最悪不審者としてSPに捕まってしまうかもしれない。事情を話したって信じてはくれないだろう。唯一信じてくれるとしたら母親であるヒナギクか、あるいは…

(取り敢えず、早くママを見つけた方が……)

「どうしたの?」

「あ…」

声をかけてきた少年はアカリと同じ優しげな青い目をしていて、髪も青空のような色をしていた。ボブカットのような髪型で、女の子と見間違えそうな容姿。全部、母親から聞かされた通りだった。































まぎれもなく、綾崎アカリの父親……綾崎ハヤテだった。

































 第4話 『 残り風 』


















「アカリも傘持って行ってなかったけど…大丈夫かしら?」

仕事を終え、三千院家の屋敷から外に出たときにはじめてヒナギクは雨が降っていることに気づいた。今朝の予報では降らないと聞いて、それを信じきっていたためあいにく傘は家に置いてある。彼女はしかたなく、マリアに頼んで貸してもらうことにした。




























ヒナギクが家に着き、玄関の鍵を開けようしたときだった。

(あれ?開いてる…?)

朝、ヒナギクはきちんと戸締りをして家を出て、彼女自身もそれをしっかりと覚えている。それに娘のアカリが帰ってくる時間にはまだ早く、彼女が鍵を開けていたという線もないだろう。ヒナギクは一瞬だけ泥棒なんじゃないかと考えたが、その可能性も限りなく低かった。今ヒナギクが入ろうとしていた家は三千院家の敷地内にあり、当然SPの監視の目も行き届いている。こんな厳重な警備の中を昼間から堂々とすり抜けられたとはどうしても考えにくかった。

(もしかして……)

淡い期待がヒナギクの頭に浮かんだ。だが、それは絶対にない。万が一にもありえない。なのに、それが分かっていても彼女は小さな希望を抱かずにはいられなかった。
しかし家の中から聞こえてきたのはやはり聞き慣れない声で、ヒナギクは思わず肩を落とした。

(それにしても…人の家でなにしてるのかしら?)

ヒナギクは念のために白桜を構え、中にいる人物に気づかれないよう少しだけ玄関を開けた。はっきり聞こえるようになった声から、中には二人いることが分かった。

「ったく…どんだけビショビショになってんだよ…。ほら、脱がすぞ?」

「ん〜!やぁ〜だぁ〜!」

(本当に、なにをやっているのだろう……)

ヒナギクは会話の内容を変な方向に受け取ってしまったが、すぐに雨に濡れて着替えをしているところだと思い直した。というより、ヒナギクはそうであって欲しいと思った。しかしどちらにしろ不法侵入であり、非常識であることに変わりない。意を決したヒナギクは勢いよく玄関のドアを開け、声の主がいるだろうリビングに飛び込んだ。

「ちょっと!人の家で勝手になにやっ…て……?」

「…?」

女の子がいた。雪のように真っ白な髪はお下げにしてあり、横髪は外側にクセがある。瞳はそれ自体が光源になっているんじゃないかと思えるほど明るい黄色で、唯一着ているように見えるブカブカのTシャツは雨に打たれていたためかグショグショに濡れていた。そして年は…5歳くらいだろうか

「えっと…なに?この子…」

初対面だ。初対面のはずだ。なのに、ヒナギクはこの女の子に会ったことがあるような気がした。しかしそのことにヒナギクが思考を巡らす前にリビングの奥から声が聞こえ、彼女は咄嗟に身構えた。

「こら、人の家なんだから濡れたまま歩き回るなってさっき言っただろ?」

「だってお風呂嫌なんだもん!」

さっきの女の子とは対照的に髪は吸い込まれそうな黒一色で、腰あたりまでストレートに伸びている。目も同じように闇夜みたいに黒く、ボーイッシュな口調だがその声は涼やかでとても綺麗だった。
そして今度は確実に、ヒナギクは目の前のこの人物に見覚えがあった。

「もしかして…ガウくん!?」

「ん?なんだヒナ、意外と遅かったんだな」

驚いているヒナギクとは違って岳はすごくあっけらかんとしていたが、それよりもヒナギクが気になっていたのは彼の綺麗な長い髪だ。もとから中性的…ぶっちゃけてしまうとハヤテ並かそれ以上に女顔であったため、本当に女性のようにしか見えなかった。岳はそれに気が付いたのか、ヒナギクが質問するよりも前に口を開いた。

「あぁ、これか?これはその…レナが……な」

しかし彼のほうとしては自分の意思ではなく、恋人に頼まれてしぶしぶといった感じのようだ。しかし恥ずかしそうな表情でクルクルと自分の髪を弄る岳の姿は誰がどう見ても美しい一人の女性にしか見えず、正直、ヒナギクもレナの判断は正しかったんじゃないかと思うほどだった。それくらい…似合っていた。
思わず見入っていたヒナギクだったが、岳がそれを遮るように話を切り出した。

「あ、そうそう。このちっこいのはリナ。俺の娘だ。ほら、あいさつ」

「こんにちは…」

リナと呼ばれた女の子は行儀よくお辞儀までしてきて、ヒナギクもそれにつられるようにお辞儀してあいさつを返した。

「そういえば、レナは…?」

「レナならルナと…もう一人の娘と一緒にシャワー借りてる。リナとルナは双子なんだ」

ヒナギクは大きくため息をつくことしかできなかった。いくら彼らが神様でも、人の家に勝手に入ってさらにシャワーまで使うのはどういうものなのだろうか。

「まぁ、あなたたちだったら別に構わないんだけど…。でも一応言っとくけどそれ、不法侵入だからね?」

「悪かったって。てか、俺たちが来てることマリアさんから聞いてなかったのか?メッセージも送っといたぞ?」

マリアからそういう話は聞いてないが、ヒナギクがケータイを確認してみると確かに着信とメッセージが残されていた。帰ってくる途中でかかってきたのだろうが、雨の音で気づかなかったらしい。ヒナギクは思わず、また大きくため息をついた。

「ていうか、なんで日本にいるのよ?たしか外国行ってたんじゃ…」

岳たちはヒナギクとハヤテが結婚して丁度一年後くらいに日本を去っていた。彼らがいなくなったのは本当に突然の出来事で、ヒナギクたちがそのことに初めて気づいたのは岳たちの家に改めて訪ねた時だった。そこは空地になっていて建物すらなく、勘違いしてるのかもと思ってきちんと確認してから探してみても結果を同じだった。あとからメールで引っ越したと連絡をもらったときには、ヒナギクは怒りすら覚えたものだ。それほどまで、岳たちは何も言わずにどこかへ行ってしまっていた。

「まぁ、やることがほぼ終わったから…帰ってきたんだよ」

彼らがやることなんてどうせ途方もなく、ヒナギクにはとうてい理解できないことだ。それを察した彼女はあえて何も質問しなかった。そんな唇を閉じているヒナギクをよそに、岳はしゃがみこんで、ずっと彼の足もとにいたリナの頭を撫でてから彼女に一枚のタオル持たせた。

「リナ。レナたちがそろそろあがってくるころだろうから、タオル持っていってくれるか?」

「うん!」

風呂場までかけていくリナをヒナギクは目で追い、それから岳に視線を戻すとすでに彼は立ち上がっていて、どこかいたずらな表情を浮かべていた。

「それに、こっちに戻ってきたのは例の件があったからというのもあるしな」

「……」

‘例の件’ヒナギクはそれが何を指しているのかすぐに分かった。しかし、だからと言ってなんなのだろうか。どうせ岳がハヤテのことを知っていたとしても、神様の力を使って生き返してくれるわけではないだろう。彼はそういことを絶対にしないし、ヒナギク自身もそれを頼み込もうとは思っていなかった。

しばらく沈黙が続いた。だが、ヒナギクはずっと顔を伏せていたため、その静けさを破った岳の口の動きに気がつかなかった。

「なぁ、ヒナ…」

「……なに?」



















































































「ハヤテのこと、生き返らせてやろうか?」



「…!!」
















顔のあげたヒナギクの前にいた岳は、さっきよりもいたずらな顔をしていた。
















































どうも
なんというか、「るな」って感じとかひらがなだとそうでもないのに、「ルナ」ってカタカナにすると途端に厨二っぽくなるなぁ〜て。

それはさておき、今回はもうほとんど恒例化してる岳さんが登場する話でした。双子の子供まで連れてるのでまたオリキャラが増えました。いやまぁ、一次小説にしたいわけじゃないんですけど…なんか気づけば多くなっているっていうか…。上にもう一人、男の子もいますし……(ため息
なんにせよ、どんなにオリキャラが増えようと軸であるハヤヒナだけはしっかりやっていくつもりです。……やっていきたいと思っています(小声

取り敢えず、簡単なプロフィールです↓





竜堂 岳(りんどう がく)

正真正銘の神様。最後の台詞のように人を生き返らせることだって造作もありません。ただ、彼自信がそういう行為を良しとしてないため、この話のヒナさんみたいな人を見つけたとしても手を差し伸べるようなことは絶対と言っていいほどしません。それが何故、今回ヒナさんにそういう話をしたのかは後ほど。
本名はガウス・ノバルクといって、彼と幼馴染っぽい関係でもあったヒナさんは略して「ガウくん」と呼んでいます。実は最近、授業でガウス(数学者)の話がよく出てくるようになっていろいろと複雑な気分です(どうでもいい




竜堂 レナ

岳さんの妻であり、恋人。今回はお風呂に入っていて出てきませんでしたが、多分次回からは出てくるかと。取り敢えず、ヒナさんのママ友みたいな感じのポジションです。
本名もそのままレナです。



二人の子供であるリナちゃんとルナちゃんについては今後出番がないので、省力させていただきます。取り敢えず双子でございます。














さて、次回からはお話の方向が結構変わるので、これからもよろしくお願いします。
それでは
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Re: 解のでない方程式 ( No.6 )
日時: 2015/07/20 22:36
名前: どうふん

タッキーさんへ

第一話を読んで、タッキーさんではありませんが、「ハヤテのバカヤロー」と思いましたが、その後の展開を読んで「ヒナギクさん、ちょっとそれは・・・」と思い直した私です。


まあ、私の作品も、「恋愛下手で不器用な二人の物語」、から一歩たりとも出ることはありませんから言いたいことはわかります。


さて、ハヤテが死んで、というか行方不明になって8年(ですよね)。岳さんがどのような意図を持って改めてヒナギクさんに近づいてきたのか、今後の展開を楽しみにしています。


どうふん


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Re: 解のでない方程式 ( No.7 )
日時: 2015/07/23 21:31
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、タッキーです

どうふんさん、ご感想ありがとうございます。

お互いにミスをし合って、取り返しのつかないようになれば颯爽と岳さんが登場して解決へ導いてくれる。自分のSSはそんな感じなんですが、どのお話にせよやっぱりハヤヒナは周りからの支えが必要なカップリングだと思っています。まぁ、そこが自分の好きな部分でもあるんですけど

正直、岳さんが接触してきた理由は明確には定まっていません。
彼はもともと、作者自身の考えをお話に入れやすくするためにも置いているキャラなのですが、自分でもヒナさんにどういうふうに幸せになってほしいのかとか、ハヤテにヒナさんのことをどう思ってほしいか…とか、どうしても結論にたどり着けずにいます。

だから岳さんがヒナさんにどんなことを伝えるのかはお話作りながら考えていきたいと思っています(←結果グダグダで分かりにくくなる

なんにせよ、ヒナさんたちに幸せになってほしいことだけは本当です。

それでは
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Re: 解のでない方程式 ( No.8 )
日時: 2015/08/02 02:20
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、夏休みに入ってダラダラしているタッキーです。
あ、ちなみに前回からでてきたリナちゃんですけど、一応イラスト載せてます。普通のフリーイラスト掲示板のほうではなくイラスト合同本のほうで載せているので、よかったらそちらも覗いてみてください。キャプションを考えたりなど、絵描きさん以外も参加できますので気が向いたらぜひ(宣伝
それから、載せているリナちゃんは幼女ではなく、一応中学生設定です。双子のルナちゃんは載せてないです(描きたいんですけどね…

それでは、なんだかんだで第5話です。なんとか10話くらいで終わらせられそうです。
ということで…
更新!!









































「幸せって、どんな色してるんだろう…?」

「へ?」

「ねぇ、ママはどう思う?」

「え、え〜と…」

突然だった。ヒナギクは自分の娘が口にしたもはや哲学的な疑問に驚いたが、学校でそういう絵の課題でも出ているのだろうと思い、深く考えずに答えてやることにした。

「そうね〜。答えになっていないと思うけど、人それぞれなんじゃないかしら」

「人…それぞれ?」

「そう。例えば私には私の幸せがあるし、アカリにはアカリの幸せがあるでしょ?」

「………」

ヒナギクはそう言ったものの、その話を聞いているアカリは不服そうな顔をしていた。もっとも、彼女がそうしていたのは母親の話がよく理解できなかったからではなく、自分とヒナギクの幸せが別々だと言いまわされたことに納得がいかなかったからなのだろう。それを察したヒナギクはアカリの頭を優しく撫でてあげた。

「拗ねなくたっていいじゃない。どうであれ、私はアカリのこと大好きよ」

「でも…どうせママは自分の幸せはお父さんにあげちゃったからだ、とか言うんでしょ?」

ヒナギクはため息をついた。アカリの母親好きも大概だが、それと同じくらいに父親嫌いもなかなかのものだ。アカリがその父親であるハヤテのことをほとんど知らないというのが大きな原因なのだが、ヒナギクはその状況を作ったのが自分であることを自覚している。彼女は胸が締め付けられる思いだった。

「ほら、また辛そうな顔してる」

「…!」

「どうしてママはそんなにお父さんのこと………」

「………」

それからは何も言わずに黙り込んでしまったアカリを、ヒナギクはそんな彼女をただ静かに抱きしめた。

「ねぇ、アカリ…。幸せって最初から決まっていて、絶対に塗り替えることができないものなんだと私は思う。だからね……」

ヒナギクは娘を抱きしめる腕に少しだけ力を入れ、アカリは複雑な気持ちを抱えながらも母親の言うことをただ黙って聞いていた。



































「私の幸せの色も…きっと決まっているの」




























 第5話 『 Sky-blue Hppiness 』































「生き返らせるって…どういうことよ……」

「いや、そのまんまの意味だけど?」

声が震えているヒナギクに、岳は澄ました顔で肩をすくめてみせた。

「まぁ、もう少し正確に言えばお前の願いを叶えてやるってことだよ。いかにも神様らしいだろ?」

「だから…そうじゃなくて……!」

ヒナギクはすごく混乱していた。岳の提案はたしかに嬉しかった。またハヤテに会えるかもしれないのだ。嬉しくないはずがなかった。ただ、自分たちの事情をすべて知っているであろう岳が、なぜ自分にそんな話を持ち掛けてくるのか見当もつかなかった。

「どうして?……とか思ってるだろ?」

「…!!」

「ま、アカリちゃんも過去に行ってしまったからな。寂しい思いをしているんじゃないかと俺は思ったわけだ」

「え!?アカリが過去にってどういう…!?………っ!!」

ヒナギクはアカリが過去に行って、一ヵ月ほどいなってしまうことをすっかり忘れていた。彼女がまだ高校のときに未来からアカリがきて、それから随分と時間が経ったというのもあるだろうが、やはりハヤテのことがあったのが忘れていた一番の原因だろう。

「なんだ…やっぱり忘れてたのか」

「……」

ヒナギクはうつむき、何も答えなかった。そんなヒナギクに岳はどこかイタズラ気だった口調を緩め、今度は優しげに彼女に質問した。

「で、お前はどうしたいんだ?」

「私…私は………」

ヒナギクが喉まで言葉を持ってきたときだった。突然彼女の後ろでドアが勢いよく開き、その音でヒナギクは自分が言おうとしていた言葉を忘れてしまった。

「おっ!!ヒナちゃん久しぶり〜!!」

いくら妻とはいえ、タイミングの悪すぎる…というか全く空気を読まない登場の仕方に岳は思わずため息をついた。薄い桜色の髪と明るい黄色の目はヒナギクの記憶とまったくといっていいほど変わっておらず、岳の時とは違って、ヒナギクには会話に割って入ってきた女性が誰なのか一目で分かった。

「8年くらいだっけ?ホント久しぶりだね〜!」

「そ、そうね…。レナのほうこそ、久しぶり…」

レナは随分とテンションが高かったが、ヒナギクは状況が状況なだけに上手く親友との再開を喜べず、作り笑顔もどこかぎこちなくなってしまった。だからここで岳がレナに話を振ってくれたのはとてもありがたかったが、当然それだけでヒナギクの心の内が晴れることはなかった。

「なぁ、レナ。リナはどうした?タオル持っていかせたはずだけど…」

「ん?あぁ、半ば無理やりだったけど、取りあえずルナと一緒にお風呂に入らせてるよ。でもまぁ、それよりも……」

岳のほうを向いていたレナはクルリと体を回してヒナギクと向き直り、彼女の浮かない表情を覗き込むように顔を近づけた。

「ヒナちゃんは…また、ハヤテくんに会いたい?」

言い方が変わっただけなのに、少しだけ質問の内容が変わっただけのはずなのに…ヒナギクにはレナの言葉がやけに重くのしかかった。

「そ、そりゃ…会えるのなら……」

「それじゃあ、なんでまた会いたいの?」

「そ、それは……」

レナは優し気に微笑んでいたが、ヒナギクにはそれが自分に情をかけてくれているからでも、ましてや反応を見て面白がっているからでもないことはすぐに分かった。しかし彼女が何を考えて自分に微笑みを向けているのか見当もつかず、そんなレナをヒナギクは正直に怖いとすら思った。

「ねぇ、ヒナちゃん…」

少し間を空けてレナが口を開いたとき、ヒナギクはその声に思わず身を震わせた。

「べつに、ヒナちゃんがガウスに頼み事をするのを止めるわけじゃないけど……


























































 ヒナちゃんは、自分のしたことを理解しているよね?」


「…っ!!」

背筋に走る寒気。フラッシュバックする思い出したくもない自分の台詞。ヒナギクはまるで金縛りにあったかのように、身体が動かなくなってしまった。レナはそんな彼女にそれ以上何も言わず、ただ、怖いくらいに優しげな表情は一切崩さずに一度だけヒナギクの肩をポンと叩くと部屋を出ていってしまった。ヒナギクは一気に力が抜けてしまい、その場にへたりと座り込んだ。

「すまないな…。でもまぁ、今回のレナは大目に見といとくれないか?あれでも意地悪をしていたわけじゃないし、一応お前のことを考えてのことだから…」

ヒナギクもそれは分かっていた。だから岳にはきちんと頷いて見せたが、それでもレナの言葉が彼女の胸を大きくえぐったのは事実だった。





暗い沈黙にしばらく俯いていた後、ヒナギクは自分でも情けなくなるほど、力のない声を出した。

「ねぇ……?私、どうしたらいいの…?」

「………」

岳は何も言ってくれなかった。慰めの言葉も、非難するような言葉も、手を差し伸べるようなことも…何も。彼はしばらくすると部屋の出口へと向かい、ドアに手をかけたところでやっと口を開いた。

「12月12日、午後3時頃に喫茶どんぐりに来い。俺たちそこで店始めることになったから、美味しいコーヒーでも出してやるよ」

そう言って最後に少しだけ微笑んで、岳はドアを閉めていった。さっきまでかすかに聞こえていたシャワーの音や子どもの話し声も、まるで最初から何もなかったかのように…一緒に消えてしまっていた。













































































1ヶ月後、ヒナギクは岳に言われた通り、喫茶どんぐりまで来ていた。当然と言えば当然なのだが、マスターが変わったからと言って外見までは変わっておらず、ドアを開けると聞き慣れていた鈴の音色が店内に響いた。

「おっ!ちゃんと来てくれたみたいだな。よかったよかった」

「もう…。自分が来いって言ったんでしょ…」

カウンターにはこの店のエプロンをしている岳だけが立っていて、レナや子供たちは見当たらなかった。

「はは。ま、いいじゃねぇか。それで来て早々だがヒナ…」

「ん?」

なんとなくカウンター席に座ったヒナギクに、岳は洗練された手際でコーヒーを淹れ始めながら彼女に話しかけた。




































「取り敢えず…最初の質問だ」































































どうも

取り敢えず次はヒナさんが質問漬けになる感じです。ダラダラと更新していますけど、次回も楽しみしていただけたら嬉しいです

それでは





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Re: 解のでない方程式 ( No.9 )
日時: 2015/10/12 14:51
名前: どうふん
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413


タッキーさんへ


 感想は次の展開を見てからにしておこうかな・・・、と思っていましたが、キャンペーン期間ということで、現時点での感想を述べておきます。
 正直ハヤテ君もヒナギクさんも、ちょっと頂けませんね(私の感度では、です。ご容赦)。
 まあ、ハヤテは自分なりにご主人様と家族のこと両方を考えてのことでしょうが。
 私が首を傾げるのは、ヒナギクさんが、ハヤテの激務や不在をほとんど気にしていないように見える点です(ご本人は否定するでしょうが)。
 仕事に追いまくられているハヤテを手伝おうともせず、内容も全然知らなかった様ですし、無関心、とも見えます。
 レナさんの手厳しいセリフに私は共感しますが、むしろヒナギクさんが「したこと」より「しなかったこと」の方が気になります。
 ※ちなみにヒナギクさんが激怒した直接の要因については、無理もない、と思います


 ちょっと勝手なことを書きました。ご容赦。
 二人が実質8年間の空白を無事に埋められることをお祈りしています。
 

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Re: 解のでない方程式 ( No.10 )
日時: 2015/10/14 01:09
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうもタッキーです。

どうふんさん、ご感想ありがとうございます
更新が遅れているのは本当に申し訳ないと思っています。すいません

まぁ、ヒナさんが行動を起こさなかったのは、このお話でも彼女が言ってるように「安心していた」というのが大きな理由です。大げさにしてしまうと「信じていた」とも言えるのかもしれません。今回の事件はそれを壊したハヤテが悪いとも言えますし、それに頼りきっていたヒナさんも悪いとも言えます。

しかし、ここまで言っておいてなんですが、これは今回の趣旨ではありません。どちが良いとかどちらが悪いとか、そしてどちらも悪いとか悪くないとかはこの話では正直どうでもいいことなのです(言葉が荒くなってすいません

そして、レナさんの台詞についてですが、あれは決してヒナさんを責めているわけではありません。分かりにくく……というか、分からないように書いていますが、本当のことを言ってしまうとあの言葉が指しているのは今回のヒナさんが「したこと」でも「しなかったこと」でもないのです。

多分、もう意味が分からなくなってしまっていると思いますし、これ以上はネタバレにもなってくると思うのでこのあたりで止めておきます。
なんにせよ、キーとなるのは結局ハヤテですので、そこからいろいろと想像を膨らませてみてください。ちなみに、あと少し言えるとすれば今回の話は「ヒナさんのしなかったこと」ではなく、「ハヤテのしなかったこと」です。あと、自分の「ハヤテのバカヤローーー!!!」にも大分精通しているはずです。



長くなってしまったのと、せっかく頂いた感想にきちんと応えていないことを重ねてお詫びいたします。こんな自分ですが、これからも感想等をいただけると嬉しいです



それでは
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Re: 解のでない方程式 ( No.11 )
日時: 2015/10/15 18:58
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、タッキーです。
すごくご無沙汰していましたが生きてます。元気です
さて、久しぶりだというのに特に書くこともない…というか後書きの方でいろいろと書かせてもらおうと思ってるので、前書きの方はこれくらいにして…
それでは久しぶりに…
更新!































































「無理して見送らなくてもよかったのに…」

「夜遅くに帰ってきたくせに、早朝にはまた仕事に行っちゃう人にだけは言われたくないわよ」

「ははは…。まったく申し訳ないです…」

いつからだろうか。あなたの気の抜けたような笑顔が、少し申し訳なさそうにしていると見え始めたのは…

あなたがそんな表情をしていなければ、私はちょっとだけ意地悪を言えていたのかもしれない。あなたがそんな顔で私を見ていなかったら、私の喉は我が儘を飲み込まずにすんだのかもしれない。

「それじゃ、行ってきます」

行かないでなんて言ったら、きっと困らせてしまう。そうでなくとも今の私の役目はあなたを見送ること。口にしないといけない言葉なんて最初から決まっていた。

「いってらっしゃい…」

あなたは一度だけ微笑むと、私に背を向ける。もう会えなくなるわけじゃない。言うほど遠くに行ってしまうわけでもない。それでも…

「ねぇ、ハヤテ!」

「ん?」

「………」

振り返ったあなたの顔はやっぱりどこか抜けていて、なのに…少し申し訳なさそうだった。あなたは、いつだってそうだ…

「……。ううん、何でもない。お仕事がんばってね」

「…うん」

昔も…今も、いつだって同じ。あなたがそんな顔をするから……























-できるだけ、早く帰ってきてね…-























そんなこと、この私が言えるはずなかった…

































  第6話 『 命題(@) 』

















「は…?質問?」

言われた言葉を復唱した私に、なぜかもうカップにコーヒーを注いでいるガウくんは肩をすくめみせた。

「そぅ。まぁ、こっちも無条件で願いとか聴くわけにもいけないからな。ほれ、コーヒー」

差し出されたカップからは当然湯気が出ていたけれど、ふちに触れてみるとそこまで熱いということはなかった。淹れたてのはずなのに飲めない温度ではなく、私の口の中にはほんのりした苦味と一緒に甘くさわやかな香り、そして少し強めの酸味が優しく広がった。

「これ……モカ?」

「ああ。お前、それ好きだっただろ?」

彼の淹れたコーヒーはどこかハヤテの淹れてくれたコーヒーの味に似ていて、たしかに私好みの味だったけれど、今はその気遣いが少し重く感じた。

「で、質問ってなに……?」

トーンの下がった私の口調にも彼は全くと言っていいほど表情を崩さず、それどころか勝ち誇ったようにほほ笑んできた。

「なんだ。お前もすっかりやる気じゃないか」

「違うわよ!いいから早く質問しなさい!」

「はいはい。それじゃ…」

後から思うと、私はうまく誘導されていたんだと思う。でなければきっと質問なんか聞かず、文句だけを残して帰ってしまっていたか、もしくは彼の質問の内容を聞いた途端、この店を飛び出していたかもしれない。





































「お前の好きな食べ物は?」












「………は?」

「だからお前の好きな食べ物は何かって聞いてるんだ。ほら、さっさと答えて」

「か、カレーと…ハンバーグ……」

なんというか…拍子抜けだった。いろいろと小難しい彼のことだから、もっと答えにくい質問をしてくるんじゃないかと思っていた。それに私の好みぐらい知っていたはずじゃ…

「なんだか納得がいかないって顔してるな」

「そ、そりゃいきなり好きな食べ物とか聞かれたら誰だって納得いかないわよ。てかこれ、意味あるの?」

「ん?ないけど?」

私は思わずため息をついた。というか、つかずにはいられなかった。こういう無駄な話をよく挟む人なのは知ってはいたけれど、こう重要な時というか…もうちょっと雰囲気というものを考えて欲しい。だけど、それは仕方のないことだと思う。だって彼は…




「じゃあ、ヒナ……」



無駄話の後は、決まって大事な話を持ってくる人だったから……







































「お前の好きな人は?」
















「………」

少しの間、私は口を開かなかった。でも、今度は催促をされることはなかった。

「綾崎…ハヤテ……」

「今も?」

「…当たり前でしょ」

「じゃ、なんで好きなんだ?」

「そ、それは………」

ふと、顔をあげてみた…というより、顔をあげてしまった。。そこでは思っていた通り、真っ黒な瞳が私のことを静かに見つめていた。
言葉に詰まったのは質問が答えにくいものだったからとか、答えるのが恥ずかしかったからじゃない。いや、それが少しもないと言ったら嘘になってしまうのだけど、一番の理由は彼の問いかけがなんだか淡々としていたことだった。なんというか、質問しておきながらその答えに興味を示していないというか……ただ、私に言わせているだけのような感じがして、最初の質問と同じように私はこのやりとりに意味を見いだせなかった。だから…あまり答えたくはなかった。





「………ま、これは別に答えなくていいか」

なかなか答ええなかった私に業を煮やしたのか、それとも最初から答えることを期待していなかったのか、彼は少しため息をついた。
でも、その代わりといってはなんだけど、次の彼の言葉には変化があった。

「それじゃあ、お前さ………」

少しあきれたような表情も、淡々とした問いかけ方も変わっていなかったけど、その質問には、ちゃんと答えを求められている気がした。

































「いったい…どうなりたかったんだよ?」













「………」





どうなりたかった…。‘どうなりたい’じゃなくて‘どうなりたかった’
別にその違いに意味があるかはよく分からないけど、彼の言い回しは妙にに私の心に引っかかった。

(どうなりたかった……か…)

もし本当にその言い方に違いがあったとしたら、多分、私がまだハヤテと付き合う前のことを聞かれているのだと思う。
でも、だったらその時の私はどうなりたかったのだろう?ハヤテに好かれたかった?それは当然だ。大好きな人に自分のことを好きなって欲しいということは正しいとまでは断言できなくとも、きっと当然で…普通で…当たり前だ。だけど、これは少し違う…と思う。
それじゃ、ただハヤテと一緒にいたかったのだろうか?いや、多分これも違う。ずっと一緒にいられたとして、それがもし友達という形だったら…。例えばハヤテが天皇州さんとか、歩とかと付き合っていてそれを傍で祝福するという形だったら……

「………」

ダメだ。私にはそれを言う資格は決してないけれど、そんなの絶対に耐えられない。ハヤテと好き合えないのなら、まだ離れ離れになっているほうが………











































(自分から会いにいくのもしなかったくせに、私はそれにも耐えきれなかったんだっけ……)










考えれば考えるほど、思えば思うほど自分に嫌気がさしてくる。好かれたいとか、一緒にいたいというのは結局私の我が儘でしかなく、こんなことをガウくんの前で口にしようものなら間違いなく一括されていただろう。

だけど……



「言っておくが、オレはお前が何言っても怒ったりはしないからな?」

「……!」



その考えも、彼にはお見通しだったようだ。
でも、だからと言って答えを教えてくれたわけでもないし、ましてや見つかったわけでもない。結局は振り出しに戻っただけ…




「もう一回だけ言うぞ。お前、どうなりたかったんだ?」

「わたし……」

繰り返された質問に私は力なく口を開く。どうなりかったなんて、そんなの私が知りたいぐらいなのに……

「わたしは………」






ただ好かれたいわけでもなく、ただ一緒にいたいわけでもない。いや、この二つは最初から回答になっていないんだ…。これは私が‘どうしたかった’であって‘どうなりたかった’とは意味合いが違う。
だったら、私は……











































あの頃の、ハヤテを追いかけていた頃の私がなりたかったものは……










































「幸せに……」

「ん?」

「私は、幸せになりたかった……と、思う…」

「………」


どうしようもない我が儘だと、突拍子もなく自分勝手な願いだとは自覚してる。


「私はハヤテに好かれたかったし、ずっと一緒にいたいとも思っていた。一人占めだってしたかった……」



でも、本当にそうだったから……



「ハヤテの一番じゃないのが悔しくて、苦しくて……。なのにハヤテはいつまで経っても気づいてくれなくて、いつもほかの女の子のところに行ってしまう…」



みんな同じだったのは分かってる。私と同じ気持ちをしていたのも知っている。私とハヤテが結ばれたとき、彼女たちがどんなに悲しい気持ちになったのかも理解している…つもり……



「だから余計にハヤテのことが好きで、欲しくて、愛されたくて、同じように私も愛したくて……」




きっと私がこんなことを言うのはすごくおこがましいことで、多分…許されないことなんだと思う




「ハヤテに笑ってほしくて、ハヤテと一緒に笑っていたくて……」




それでも…




「ハヤテの一番近くいるのは私がいい…。私の一番近くにいるのはハヤテがいい…。ハヤテじゃなきゃ……いや………」






わたしは……






「私はハヤテじゃなきゃダメ!ハヤテじゃなきゃ……幸せになんかなれない!!」
































































「………そうか」









長かった。長いように感じた。なのにようやく返ってきた言葉はその一言だけだった。




「質問は以上だ。帰っていいぞ」

「……」

私は何も言わず、何も聞かず、ただ言われるがままに席を立ち、喫茶店の出口へと向かった。帰り道は特に短いとも長いとも感じることもなく、ただ淡々と歩き、三千院家につき、その中にある家まで着いた。ごく、普通の帰路だった。空が朱色に染まりはじめているところを見ると、今は4時くらいだろうか。腕時計で確認すればいいのだけど、結局何もせずに玄関の鍵を開け、中に入った。

「終わった……のかな…」

リビングにいくと、ふと口から言葉が漏れた。そうだ…終わったんだ……。喫茶店からでるとき、ガウくんが「ごめん…」と小さくつぶやくのがたしかに聞こえた。彼らしくない口調だったけれど、たしかに彼はそう言っていた。

















おわったんだ……



















期待も…可能性も………全部。
そうだ、死んだ人が生き返るわけないじゃない。私はなにを考えていたのだろう。だってそんなのは不平等だ。恋人が死んで、家族がいなくなって悲しみに打ちひしがれる人は私以外にもいる。私だけ幸せになろうなんて都合の良すぎる話なのだろう。私はバカだ。バカで、弱くて、自分勝手だ……






でも……









それでも………













「わたしは……」






頬が、濡れる…。

なんでガウくんは、ハヤテを戻してくれなかったのだろう。神様なのに…それぐらいわけないと言っていたのに、なんでハヤテを生き返らしてくれなかったのだろう……


「いやだ……いやだ………」


わたしの回答が悪かったのだろうか。どう答えていればハヤテは戻ってきてくれたのだろう。わたしは何をすればハヤテを返してもらえたのだろう。なんでここに……




「いやだ…よぅ………」



























なんで今ここに、ハヤテはいないのだろう……



























私のせいだってことは分かってる。でも…いやだ。もうハヤテに会えないなんて…ハヤテの声が聞けないなんて……もう、耐えられない…







だから…だから……















お願いだから………



























「帰ってきてよ……。




















































  また、会いたいよ……」



















私がそうつぶやいた瞬間だった。家にインターホンの音が響き渡った。
アカリだろうか。いや、早すぎる。過去にいったアカリが帰ってくるのが今日とはいえ、戻ってくるのは午後8時以降のはずだ。じゃあ、宅配便?それは絶対にない。この家の宅配便はまず三千院家の母屋に届けられ、それを自分で取に行っていたのだから、今日に限って例外などあるはずがない。それじゃあ……



































ガウくん

この人しかいないだろう。何しに来たのかは分からないけど、話の残りでもあったのだろう。そんなミスをする人ではないけれど、わざとという可能性だってある。





それに、丁度良かった





多分、無理だと思う。無駄だと思う。でも、まだ……いや、絶対に諦めたくない。もう一度、できれば何度でも彼に頼めば…頼み続けたら、もしかしたら……





(ハヤテに…また………)

















いそいで涙をぬぐう。目元がはれてしまっているのはどうしようもないから、それはそのままで玄関へ向かった。向かっている途中でまたインターホンが鳴ったけど、返事はしなかった。





ドアの前までくると、一回深呼吸をする。準備はできた











無様でいい。未練たらしくていい。どんなに惨めでも、どんなに自分勝手でも……
































それでも、私は幸せになりたい。ハヤテにまた…会いたい

















私はドアを開けた
















































「あ………」








少し気の抜けた、そして困惑したような声が聞こえた。準備はできていたはずなのに、覚悟はしていたはずなのに…その声だけで私の身体は金縛りにあったように動かなくなってしまった。







「え、えっと……ヒナ?」



名前を呼ばれた。ゆっくりと、本当にゆっくりと顔をあげる……







































































「あ……えっと………ただいま?」




綾崎ハヤテが、わたしの目の前にいた
































































どうも。
戻ってきたね…ハヤテくん。ま、それは別に大して問題ではないのですが(おい

で、まぁ今回ここで触れておきたいのはヒナさんの回答についてです。今回のお話でヒナさんの言った「幸せになりたかった」というのは、単に「幸せになる」というより、「自分の望む幸せの全てが欲しい」というニュアンスのほうが強いです。次の話かその次の話か、とにかく後々本編でも(岳さんが)言いますが、これは決して欲張りな答えではありません。
これは自分の見解ですが、欲を満たすことと、幸せになるということは全く別の意味でありながら、人間は欲を満たしたときにも「幸せ」という言葉をつかいます。なので「幸せになりたい」という願いはたいてい欲の延長にあるものです。しかし、今回ヒナさんの言った「幸せ」は本当の意味での「幸せ」であり、彼女は否定するでしょうが、決して欲張りでも自分勝手な願いでもありません。長々とくだらない自己見解などを持ち出しましたが、要するに、今回のお話ではそれをちゃんと理解してほしいのです。
そして、この物語でのヒナさんの幸せとは「ハヤテに好かれたい。そしてずっと一緒にいたい」「ハヤテから様々なものを与えられ、自分も彼に様々なものを与えたい」という、全てが「綾崎ハヤテ」という人物を中心に組みあがっています。そこに贅沢などはもちろん、彼女自身の欲すら入っていません。つまり彼女の「幸せ」=「ハヤテ」であり、今回の彼女の言葉は「ハヤテが欲しい」とも言い換えることができます。ここも、彼女の言葉で理解してほしい点の一つです(別にあといくつもあるわけじゃないです

さて、本文のほうでは自分の文のつなさにより伝えることができないのではと思い、長々とした解説になりましたが、これが今回の第6話で一番知って欲しかったことです。「ハヤテが戻ってきたと」いう事実より、「ヒナさんが何を望んだのか」を理解していただけたらと思っています。たとえ理解までせずとも、この後書きで納得さえしてくれれば、それだけで嬉しい限りです。



筆が遅く、文も決して上手くはない自分ですが、読者のかたにはいつも感謝しております。



それでは、長文失礼いたしました。
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Re: 解のでない方程式 ( No.12 )
日時: 2015/10/24 18:20
名前: どうふん
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413


タッキーさんへ

とうとうヒナギクさんが理不尽を承知でハヤテを取り戻すべく行動を決意しましたか。
ちょっと遅すぎる気はしますが、間が悪くタイミングやチャンスをいつも逃しているヒナギクさんらしい(失礼)といえばらしいな、と。

ふと思ったのですが、ヒナギクさんは今30歳になるんですよね(違うかな?)。
改めて、20代の大半をハヤテと会えないでいたヒナギクさんの心中はいったいどれほどの・・・。

それだけに逆に、なりふり構わずハヤテを取り戻そうとするヒナギクさんも見たかったですが、まあヤボですな。

何にせよ、ヒナギクさんとハヤテ君、それとアカリちゃん、おめでとう!


                                       どうふん


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Re: 解のでない方程式 ( No.13 )
日時: 2015/10/25 15:24
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、タッキーです。


どうふんさん、ご感想ありがとうございます。

この話でのヒナさんの年齢は一応26です。誕生日がきたら27ですが…。で、まぁそれだけ間ヒナさんが決心をすることができなかったのは、正直「どうしようもなかった」からですかね。ハヤテはもはや死んだも同然でしたし、岳さんたちもどこにいるのかすら分からない状態。さらには音信不通でした。
普通だったら諦めるのが正解ともいえる状況です。その中でハヤテのことをずっと想い続けていたヒナさんは、もしかしたら異常にもなるぐらいかもしれません。

今回はそうやって溜め込んできた気持ちが岳さんの言葉で爆発した、という感じでしょうか。
それに、これは自分の見立てですが、「我慢できないものまで我慢しようしてしまう」ヒナさんにとって、今回は彼女にとって十分と言っていいほどなりふり構わなかった言動だったと思います。まぁ、岳さんのなりふり構わないと比べたらそりゃ規模が小さいでしょうけど……

さて、今回もまた長くなってしまってすいません。次回は割りと早めに投稿できそうなので、楽しみにしていただけるとありがたいです(投稿するとは言ってない

それでは
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Re: 解のでない方程式 ( No.14 )
日時: 2015/10/28 01:54
名前: タッキー
参照: http://hayate/1212613.butler

どうも、タッキーです。今回の投稿は比較的早かったんじゃないかな?
ま、それはともかく今回は、前回やっと戻ってきたハヤテ視点のお話です。
それでは……
更新!!








































誰もそのこと知らないし、そして気づいてもいないが、その「家」はいつの間にか改修されていた喫茶どんぐりと直結していた。喫茶店の分も含めているとはいえ、その家は「宅」というニュアンスを使うには少し大きく、しかし「邸」という漢字を用いるには少々小さい。取り立てて立派な庭があるわけでも、見るからに高そうな高級車が止まっているわけでなく、近隣住民の目からは〈ある程度収入のある若者が、奮発して買ったまぁまぁ立派な家〉ぐらいに見られている。
だが、当然ながらその家のどうこうは話の中心ではない。いうなれば蛇足とも表現できる余談の類だ。
ならば話の中心、加えて話が始まるのがどこかといえば、それはその家の…「竜堂宅」もしくは「竜堂邸」の二階。階段を上った後の一番奥の部屋での話だ。






そして、今まさにその部屋に一つだけある、ベッドの上………














































「ん……」

見慣れない天井、どこか懐かしい香り。この二つが綾崎ハヤテが目を覚まして、一番最初に彼が受け取った情報だった。

(あれ……僕、死んだんじゃ…?)

取り敢えず布団をめくり、自分の姿を確認する。ゆったりとした簡素な服……一見、病衣のような服を着ていた。しかしハヤテには自分がこの服を着たという記憶はないし、ましてやこの見知らぬ部屋に入った覚えもない。彼が覚えているのはグラグラと揺れる船室の中で、下から迫ってくる海水に沈んでいく自分……

「やっと起きたか」

「……!!」

ハヤテの思考は一旦シャットアウトされ、その方向は彼の目線とともに声のした方を向く。その行動でハヤテはこの部屋には何もないことに初めて気づいた。自分と、自分を上にのせているベッド。そしてドアの脇に置いてある椅子とそれに腰かけている人物を除けば…何も……

「岳さん…なんですか……?」

見覚えのある黒髪が腰まで伸びているのを見ると、ハヤテはそう聞かずにはいられなかった。岳はあきれと肯定のふたつの意味を含めて、大きくため息をついた。

「別に誰でもいいだろ。動けるんならさっさと帰れ」

「あ……」

岳に言われるまで気にしていなかったが、彼の言葉でハヤテは自分の身体が思うように動くことを改めて認識した。記憶通りならハヤテは客船と一緒に海に沈み、こうして生きてることから助けられたんだとは分かるが、それでも水圧などで体がボロボロになってしまっていたことは想像がつく。それこそ、一命を取り止めたとしても一生植物状態か、後遺症は確定して残るほどの重体であったことぐらいは……
ハヤテはベットに乗せていた脚部を下ろし、岳と向かい会った。岳の方はハヤテが姿勢を変えたことに気にも留めず、さっきからずっと読んでいる本から目をそらさない。その表紙に書かれている文字にハヤテはどこか見覚えがあったが、なんと書いてあるのかも、何語なのかも分からなかった。
でも、今のハヤテにとってそんなことはどうでもよかった。

「あの……岳さんが、僕を助けてくれたんですか?」

「………。だったら……?」

「ありが……っ!!!」

それはハヤテが礼を言い、頭を下げようとした瞬間だった。「何か」がハヤテの頬をかすめた。顔の側部から下部までをどろりとした液体がつたうのを感じたが、ハヤテにはそれをぬぐうことも、おそらく後ろの壁に突き刺さっているだろう「何か」を振り返って確かめることもできなかった。岳の黒い瞳がそれを許さなかった。

「もう一度だけ言う。さっさと帰れ」

「………」

短く、冷たく言い放つと岳は再び読んでいた本に目線を落とした。ハヤテは何か言おうと頑張って口を動かそうとしていたが、やがて諦め、言われた通りにするためにベッドから立ち上がった。

「階段を降りるとすぐに玄関が見えるだろうから、それとは逆方向に行け。喫茶どんぐりにつながってる。そこにお前の服も置いてある」

ハヤテが横を通りすぎようとしたときにルートこそ教えてくれたが、岳の声は相変わらず冷たく、非難されているわけでもないのに棘があるようにすら思えた。

「それと、感謝の言葉を初めに言う相手も、謝罪するべき相手も……間違ってもオレではないだろ」

「……はい」

力のない返事を残してハヤテはドアを閉めた。





































部屋に残された岳が本を閉じ、椅子から立ち上がると瞬く間にその椅子は消え、さっきまであったベッドも消えていた。ハヤテがはじめに感じた通り、その部屋には何もなかった。家具も、窓も、ハヤテの頬をかすめた「何か」も、それが壁につけたはずの傷跡も……







その部屋には、何一つなかった














強いて言うならば、ハヤテが寝ていたベッドがあったと思われる位置……もう少し詳しく言えば先ほど「何か」が刺さったと思われる位置にドアがあったことぐらいだろうか。
本来ドアとは部屋と廊下、または部屋と部屋という建物内の壁に設置されるものだが、そのドアは外と建物の内部とを隔てるための壁についていた。しかし、そこにあるのは確かにドアであり、外からは確認できない……つまり開いても決して意味があるわけではない。だが、それはれっきとしたこの部屋にある……





二つ目の「ドア」だった


































 第7話 『 アイかわらず 』

































岳さんの言った通り、知らない廊下は見知った喫茶店へと続いていた。
正直驚いた。別に彼の言葉を疑っていたわけではないけれど、誰だって自分の知っているモノが変わっていることを伝えられたら戸惑うことぐらいするだろう。
服はカウンターに置いてあった。いつもの執事服ではなく、黒の長袖Tシャツとジーンズ。それらに着替えたあたりで、僕はふと今の時間が気になった。幸い、時計をかけてあった位置は変っておらず、すぐに午後4時半だと確認することができた。

「そういや、今って何年なんだっけ?」

助けられ、こうして生きているとはいえ、岳さんの言葉は僕が長い間目を覚まさなかったかのような口ぶりだった。急いで今日の新聞で今が何年か確認した。

「4年も…眠っていたのか………」

長い。純粋にそう思った。4年間もの間……いや、仕事をしていた期間を入れると8年も、僕はヒナをほったらかしにしてしまった。



-感謝の言葉を初めに言う相手も、謝罪するべき相手も……-



岳さんから言われた言葉が脳内でフラッシュバックする。僕は今日の日付も確認しないまま、乱暴に扉を開けて外へ飛び出した。












































三千院家の門を抜けたあたりから、僕の足からはどんどん勢いがなくなっていった。決して疲れたわけじゃないし、やっぱり後遺症があったとかそういうことでもない。ただ、自分のやろうとしていることが正しいことなのか、不安になってきたのだ……


彼女にあんなことをしておいて、彼女をあんなに傷つけておいて……こんな僕にもう一度ヒナと会う資格があるのだろうか?







そうこうしているうちに、ついに自分の家の玄関まで着いてしまった。
正直、怖かった。僕がその感情を抱くのはきっと間違っているのだろうけど、それでも、僕のことを嫌いになっていたり…もうどうでもいいとでも思われていたらと思うと、背筋が凍るように寒くなった。

インターホンを押す。目視でも分かるほど、その指は震えていた。


















反応は無かった。





どれだけ胸がざわついただろうか。思考がどんどん悪いほうへと偏っていく。彼女がこの家にいないと考えるのではなく、彼女から無視されているのだと考えてしまう。

家の鍵は一応持っているのだから自分で開けて入ればいいのだろうけど、僕はどうしてもそうすることができなかった。もしかしたら、この期に及んでも僕は、彼女にこのドアを開いてほしいなんてことを思っていたのかもしれない。



もう一度インターホンを押す。今度は指は震えなかった……いや、震えなかったんじゃない。固まってしまうほど、動かすことができなかった。

足音が聞こえたからだ。










すぐにカチャリと鍵が開けられる音が聞こえ、僕はその音に身をこわばらせる。そしてドアが開かれた瞬間、中からでてきた彼女を見て…出てくると分かっていた彼女を見て、思わず気の抜けた声を漏らしてしまった。

「あ………」













ヒナだった。まぎれもなく…ヒナだった。なぜか下を向いたままで顔はよく見えなかったけど、それでもすぐ分かった。
顔を見なくたって分かる。声を聞かなくたって………その綺麗な桃色の髪だけで十分だった。



「え、えっと……ヒナ?」


どうしていいか分からず、取りあえず名前を呼んでみる。ヒナはゆっくりと、本当にゆっくりと顔をあげた……














目が合った






久しぶりに、ヒナと目を合わせることができた












































「あ……えっと………ただいま?」



なんとなく言葉をかけてみたけれど、それが聞こえていないかのようにヒナはポカンと口を開けて固まっていた。無理もない。4年も行方不明になっていた人間が連絡もなく急に帰ってきたら、そりゃ驚きで動けなくなるもなるだろう。


………と、そう思った瞬間だった。













 ドスッ!!










突然、胸に鈍い衝撃が走った。そのまま僕は突き飛ばされ、芝生の上を4,5メートルくらい転がって最終的には仰向けになっていた。
ほんの少しの間を置いて、上体だけを起こす。

そして………




















僕の服をギュッと力強く掴み、僕の胸に顔をうずめているヒナを……泣いて震えているヒナを………そっと、抱きしめた。









「ハヤテ……ハヤテ、ハヤテハヤテ…………ハヤテぇ……!」

「………」

「どこいってたのよ……!わたし、ずっと待ってたんだから…!!ずっと……ずっと………ずっと!」

「……ごめん。本当に、ごめん………」

ただ、ごめんと謝ることしか……ただ、泣いているヒナを抱きしめることしか……ただ、それだけしか僕にはできなかった。でも、抱きしめている腕に力を入れると、ヒナも負けじと力強く抱きしめ返してくる。そのことで僕は彼女からまだ求められているんだと感じ、すごく…安心できた。

「バカ……ばか………あぁぁぁああ!」

「………」

どうしてだろう…。涙がこぼれ、僕の頬頬を伝ってヒナの肩に落ちた。

「あぁ……」

僕の口からでた「あぁ……」という言葉は、きっと安心したという意味と、堪えていたモノが溢れだしてしまったという二つの意味があったのだと思う。













そうだったのだと……僕は思った






「「あぁぁぁ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!」」






いつの間にか、僕とヒナの泣き声は重なっていた

































































どうも
冒頭の「何か」とか「ドア」はぶっちゃけ特に意味ないです。なんか書いてたらやりたくなっただけです。まぁ、意味が全くないわけではないですけれど、この中編には関係はないので読み流していただいて結構です。
あとは………あんまりないですね(テヘぺろ☆
あるとすればまだ終了というわけではないことと、ハヤテが帰ってきたからと言って、次からハッピーエンドに直行するわけではないことくらいです。
それはまぁ、次回からのほうを読んでいただきたいと思います


それでは
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Re: 解のでない方程式 ( No.15 )
日時: 2016/03/05 21:43
名前: タッキー
参照: http://1120agl





m(_ _)m


すいません。マジですいません。いや、ほらね……レポートとかあったし、試験とかイラストもあったんですよ。…モンハンも…あったし……(小声
まぁ久しぶりで、そうでなくともいろいろ行き詰っていた回なので今回は正直言ってすごく端折りました。すいません。
いろいろまた問題が多くなるとは思いますが、それでもまだしぶとく更新していくつもりなので、温かい目で読み流しだけでもしていただいたら幸いです(特に今回は
それでは、久しぶりに…
更新!








































「で…、なんでまたここにきた?もう店を閉めたいんだけど…」

「店を閉めるって…、そもそもガウくんがマスターになってからオープンもしてないじゃない」

現在、ハヤテとヒナギクの前では明らかに不機嫌そうな顔をした岳が、喫茶どんぐりのカウンター席にどかりと腰を下ろしていた。ただ、彼の表情を不機嫌とは表したものの、それはハヤテたちが来たことに対して怒っていると言うより、どちらかというと「やっぱり来た…」という呆れた感じの色が強く出ているようだった。











少し前…
泣いて、泣いて……泣きはらした後、ハヤテとヒナギクはお互いの体を離すよりも先に、岳の家へと向かうことを決めた。感謝の言葉はもちろん、謝罪の言葉などいろいろなことを伝えておかなくてはと、両方とも思っていた。
しかしまぁ、一応そういう経緯があって二人一緒に喫茶どんぐりに来たのはいいものの、言葉を伝えたい相手がどうにも話づらい雰囲気を出してていたため、現状、ハヤテとヒナギクはどうしていいか分からずにただ岳の言葉を待っていた。
そんなハヤテたちに岳はため息をつき、めんどくさそうな顔で自分の髪をワシャワシャと掻き回した。

「じゃあ、ヒナ」

「え?…私?」

「あぁ。取り敢えずお前だけ話せ。ハヤテとは少し二人だけで話しがしたいから、言いたいことがあるならその時に聞いてやる」

ハヤテとヒナギクはお互いに顔を見合わせた。ハヤテと二人だけで話したいことというのが気になったが、それついては一旦考えるのを止め、ヒナギクはずっと気になっていたことを言葉にした。

「それじゃあ、なんでハヤテを生き返らしてくれたの?」

「……生き返らせたもなにも、別にハヤテは最初から死んでいなかったんだけど?」

「そ、それじゃ!なんでハヤテのことを助けくれたのよ!?ガウくんが助けてくれたんでしょ!?」

「それはそうなんだが……」

岳は仰ぐように天井を見上げ、少しの間をおいて、視線はそのままで口を開いた。

「まぁ、ぶっちゃけ気分だな」

「……は?」

「たまたまだよ。たまたま、そういう神様みたいなことをしてみようかと思ってたら丁度よくハヤテが海に沈んでたんでな」

「………」

既に視線を戻している岳の黒い目を見て、ヒナギクはすぐにそれが嘘だと分かった。いや、嘘をついているとまではいかなくても、少なくとも言葉を濁していることはなんとなく察することができた。そして、それと同時に彼の言いたいこともヒナギクには理解できたような気がした。



お前に話すことは何もない…と。




「………」

「というわけだから、別に俺はお前の願いを叶えてやったわけじゃない。それに、人の願いを叶えてやるのは人だと…だいたい決まっている」

岳は椅子から腰をあげると、顎でハヤテについてくるよう合図し、そのまま彼の家につながっている休憩室までまっすぐ向かって行った。ハヤテは心配そうにヒナギクのほうを見ていたが、やがて岳についていき、ヒナギクは喫茶店で一人になった。









































「おやおやおや?そんなに浮かない顔をして、ヒナちゃんはいったいどうしたのかな?」

少しわざとらしい心配の言葉が、突然後ろから聞こえてきた。ヒナギクが振り向くと、レナがニコニコとした表情で当たり前のように立っていた。まぁ、ここが岳の店になったということは彼女の店になったということと同義なので、彼女がいるのは当たり前と言えあ当たり前のことではあったのだが。

「レナ……。もしかして、全部聞いてた?」

「いや、私はさっき来たばかりだよ」

ヒナギクには入り口のベルが鳴った音は聞こえなかったし、ましてや岳たちの向かった休憩室から誰かが入ってくるのも見えなかった。だから「さっき来た」というのはおかしな話だと思ったが、彼女が「さっき来た」と言っているのでヒナギクはそれを信じることにした。相変わらずニコニコしているレナが嘘を言っているようにも見えなかった。

「ねぇ、ヒナちゃん…」

「ん?」





































「ガウスが言わなかったこと……教えてあげようか?」














第8話 『 籠庭の入り口 』
















岳に連れられてハヤテが入ったのは、彼が目を覚ました部屋と同じ部屋のようだった。「ようだった」というのは、その部屋がある位置はハヤテの記憶通りだったにも関わらず、その中の景色はハヤテの知っているモノと少しは違っていたからだ。あったはずのベッドがなく、代わりに…ではないだろうが、その位置にはなぜかドアがあった。
そのほかは何も変わらず、ハヤテが最初に感じた通り、何もない部屋だった。

「あの……話って、なんですか?」

「まぁそうせかすな。取り敢えず座れ」

岳がそう言うと、ハヤテの後ろにどこからともなく丸椅子が現れた。ハヤテはそれに驚きこそしたものの、既に岳が何食わぬ顔で座っていたため、何も考えずに腰を下ろした。

「ハヤテ、お前さ……ヒナのことどう思ってる?」

「え?ヒナのこと…ですか?」

「ああ。もっと質問を簡単にすると、お前はヒナのこと好きか?ってことなんだけど…」

「そ、そりゃ!もちろん好きに決まってるじゃないですか!!」


「………。そうか…」

岳の反応にハヤテは思わずたじろいだ。彼は組んだ足の上に肘を置き、顎の下に手を当ててハヤテの目だけに焦点を合わせていた。ハヤテには彼が自分の回答を疑っているようには見えなかったが、どちらかというと、自分の言った言葉をじっとりと吟味されているような感じだった。

「じゃあ聞くが、ハヤテ」

「……はい」

「お前、そのお前の好きって感情が、勘違いだと思ったことはないのか?」

その瞬間、ハヤテの全身に寒気に酷似したビリビリとした衝撃が走った。

「たしかお前、昔ヒナに言ってたよな?大抵の好きという感情は思い違いや勘違いだって。だったらお前のその感情も勘違いなんじゃないのか?今までお前がヒナにささげてきた愛も、全部……ただの思い違いなんじゃないか?」

「そ、そんなこと……!」

「ない。とは言えないだろ?」

「………」

ハヤテは何も言えなかった。この部屋の空気が彼に言葉を発するのを許さなかった。

「まぁいい。お前がヒナを好いているのが勘違いでも、そうじゃなくても別に何か問題があるわけじゃない。それに、お前の言った通り本当に誰かを好きになるなんて方が珍しいのだから、勘違いだったとしてもそれが悪いとは言われるわけじゃない……」

「ぼ、僕は……………」

その先は言えなかった。断言されたわけじゃないが、それでも、岳の言葉はハヤテの体をこれ以上ないくらいに重くさせた。

「………。ヒナはさ……」

ふと、ハヤテは顔をあげた。黒い瞳が彼を見つめていた。

「ヒナはさ、正しいんだ。正解しているんだよ。ヒントも参考書もないのに、勉強しようにもする術さえないのに…ヒナは正解を導き出した。いや、持っていた…と言ったほうがいいか……」

「………」

「ヒナは本当の意味で、お前に恋をして…お前を好きになって…お前のことを愛している。それはとても特別なことだし、それができるヒナ自身もまた特別な存在だ」

岳はそれを嬉しそうに、悔しそうに、羨ましそうにして話していた。何とも言えない彼の複雑な表情に、ハヤテはほんの少しだけ目を奪われていた。

「もっと言うと、ヒナの幸せは誰よりも優遇しなくちゃならない。誰が不幸になっても、ヒナだけは不幸になってはいけない。誰を不幸に落としてでも、ヒナは幸せにしなければならない…。お前を助けたのはそのためだし、逆に言うと、そのためだけにしかオレはお前を助けていない。だからさ、別にお前がヒナのことを好きじゃなくてもいいんだ。最悪ヒナ以外の誰かを好きだったとしても構わない。それでも、例えそうだったとしても……ヒナは変わらずお前のことが好きだから……ヒナにはお前しかいないから……だから………」






































岳は、頭を下げていた




















「お願いだから、もっと…ヒナのことをちゃんと見てやってくれ………」









































































しばらく時間が経った。ハヤテは既に部屋から出ていて、岳はそのまま椅子に黙って座っていた。

「いいの?もっと言いたいことあったんじゃない?」

「……。いいんだよ。アイツはまだ全然足りないから、全部言ってしまったら逆に立ち止まってしまう」

岳は振り返らず、自分の後ろで壁に背をもたれているレナにそのままの状態で答えた。

「焦ってる?」

「別に………」

レナは恋人のそっけない態度にフッと微笑むと、彼の後ろまで移動して自分の腕を軽く絡めた。

「大丈夫だよ。だって…………」

レナは岳の身体に回した腕に少しだけギュッと力を込め、寄り添うように、彼の肩に顔を近づけた
















































「今の私は、こんなにも幸せなんだもの……」

















































































































はい。実を言うとホントはいろいろやりたかったんです。もっとハヤテをディスりたかったんですけど(問題発言)、なんかもうメンド(ry

ということで第8話です。多分、次が最終話でその次がアフターです。

それでは(言うこと少なくてすみません)
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Re: 解のでない方程式 ( No.16 )
日時: 2016/03/08 01:08
名前: タッキー
参照: http://1120agl

どうも、タッキーです。
いよいよ(ていうかやっと)最終話です。待っていただいた方には、本当にお待たせしてすみませんでした。でもまぁ、アアフタがーあるんですけどね
それでは『解のでない方程式』最終話…
更新!








































彼女の言っていることは、よく分からなかった。

いきなり自分が特別だと言われても、全くと言っていいほど理解ができなかった。

「別に、特別だからどうこうって話じゃないよ。ただ、それを自覚しているのとしていないのとでは大きく違ってくるから、だからガウスもあんなにまどろっこしいことをしてまでヒナちゃんにこのことを伝えようとしたかったんだと思う」

彼女の恋人から受けた質問と、自分がそれに対して答えた回答を思い出す。幸せになりたいだなんて、随分と突拍子もない答えをだしたものだと思う。

「あ、そうそう。ヒナちゃんの幸せはちょっとほかの人と変わっていてね……」

「へ?」

「人の幸せってちゃんと定義があるの。だけどヒナちゃんの幸せはそれとは少しだけずれているんだよね。分かりやすく言えば普通よりもワンランク上の幸せって感じで、そしてそれがヒナちゃんが特別な一番の理由でもあるんだけど……」

レナは言葉を濁してなかなか回答を言おうとしなかったけど、一回ため息をついた後に私と真っ直ぐ向き合った。さっきまでのニコニコとした笑いは消えていて、代わりに優しく微笑んでいた彼女に私は思わず見とれてしまっていた。

















「ヒナちゃんの幸せってね、ハヤテくんを好きでいるってことなんだよ」












































 最終話 『 With you 』

























帰り道、ヒナと僕はあまり話さなかった。多分、というか確実にそれは僕のせいなんだと思う。落ち込んでいる僕の暗さがヒナにまで伝わっているのは明らかだった。

「私って、特別なんだって……」

気を利かせてくれたのかもしれない。ヒナが少し控えめな音量で話しかけてきた。

「レナに言われたの。特別なのに、幸せになるべきなのに…私は謙虚すぎるって。他人を不幸にするぐらいで丁度いいくらいだって…」

「僕も、岳さんに同じこと言われた。ヒナのことをもっとちゃんと見ろって…。でも、その通りだと思う」

僕は隣りにいるヒナのほうに顔を向けた。ヒナも僕のほうに顔を向けていた。

「僕はヒナのことをほったらかしにしすぎたんだと思う。結婚する前も、してからも…。付き合う前なんか思い返したら、岳さんに怒られるのも無理ないことばかりだった…。本当にごめん……」

「なんで謝るのよ……」

「もっと、ヒナに手を差し出しておくべきだったって思ったから……」

「………」

「………」

多分、ヒナのために気を遣うことは正解ではないんだと思う。でも今の僕にはこうすることしか、ヒナのことをしっかり見るための方法が思いつかなかったから……



























また沈黙に戻ってしまった。
























































家に着いた。玄関のドアを開けているヒナに、今度は僕の方から声をかけた。

「ヒナは……」

「ん?」

「ヒナは、本当の意味で僕のことを愛してくれているって岳さんに言われたんだ。でも、僕のほうは違うんじゃないかって……そう質問された」

悲しい顔をさせると思っていたのに、僕の予想とは裏腹にヒナは眉一つ動かさなかった。

「ハヤテはどう答えたの?」

「答えられなかった……。だって、僕はヒナのことが好きだし、説得力ないかもしれないけど…ちゃんと愛している。でも、実際本物なのかは分からないし、岳さんは結局なんなのか教えてくれなかったから………」

「じゃあ、もし本物じゃないって断言されていたらどうしてたの?」

「……何も変わらないよ。本物じゃなかったとしても、僕はヒナの隣にいて………って、ヒナ?」

ヒナは笑っていた。クスクスと、とても可笑しそうに……







とても、嬉しそうに……

















「もうっ…バカね………」








































そう言って笑ったヒナを見て、気づいたことがあった……



































「私の傍にいるつもりなら、悩む必要はないじゃない。そりゃ、本当に愛してくれていたらそれに越したことはないけど、でもそれが全てってわけじゃないでしょ?正解していないのなら、今から答えを探せばいいわよ」

「………」

「それにね、今回のことで分かったの……」


夕方、午後5時くらいだろうか。玄関には窓から夕日が差し込み、幻想的なオレンジ色で染められていた。


「ハヤテは、私のことを誰よりも愛してくれているんだって……
その愛は正解じゃなかったとしても、正しいわけじゃなかったとしても、決して間違いなんかじゃない。じゃなきゃハヤテを愛している私が特別なわけないし、それに…こうして私のとこに戻ってきてくれたのが、一番の証拠よ」


夕陽にあてられているヒナは、すごく綺麗だった。特別な人でないとおかしいと思うほど、絶対に守らないといけないと思うほど……彼女は美しかった




















「ハヤテ……」




























ヒナの笑顔で、気づかされたことがあった































「おかえりなさい」





























































僕は……この人のことが、好きなんだ………

























































                解のでない方程式〈完〉






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Re: 解のでない方程式 ( No.17 )
日時: 2016/03/08 15:32
名前: ヒナと結婚したい大学生

どうも、ヒナと結婚したい大学生です。
3月に高校を卒業し名前が変わりました(笑)
こちらに書かせて頂くのは初めてですね。僕はあまり文才も無いし書いてる事がめちゃくちゃになると思いますがご了承ください。
まずは完結おめでとうございます。今回も楽しく読ませて頂きました。
タッキーさんは空間を凄く大切にして書き起こしているのをとても感じます。そして一語一語をしっかりと練られているのだなぁと思います。この作品のオリジナルキャラクターの岳くんは異彩を放つ存在で、ヒナさんの事を大事に思っているんだなって凄く伝わってきます。
個人的にはナギと一樹の関係の進展や他のキャラクターの登場なども見てみたいです。
それでは引き続き執筆頑張って下さい!楽しみに待っています。それでは。
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Re: 解のでない方程式 ( No.18 )
日時: 2016/03/08 15:58
名前: ヒナと結婚したい大学生

すいません。内容が重複してますね。
ちなみに歴史学科なのでベクトルとかはやんないです(笑)文系だったので^_^
ではでは。
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Re: 解のでない方程式 ( No.19 )
日時: 2016/03/13 23:56
名前: タッキー
参照: http://1120agl

どうも、タッキーです。

ヒナと結婚したい大学生さん、ご感想ありがとうざいます。こちらでは確かに初めましてですね。

空間に関しては、文で埋められないから間をあけて雰囲気出るかなぁ〜って。まぁ、正直言って手抜きみたいなものなのであまり褒められたものではないかと。あぁ…、誰か文系の人に文の書き方とか教わりたいなぁ〜(チラッ

岳さんは異彩を放っているというか彼自身が異彩そのものというか……。なんだかんだで便利ですけど、扱いがむつかしいです。
彼はヒナさんを大切にしているというか、それこそ特別視だというべきだと思います。理由はいろいろ(という設定)なんですが、多分、これから触れることは少ないと思います。せっかくなのでおおざっぱに言ってしまうと、まずレナさんのためってのが一つと、感謝と、贖罪と、あとは正しいことの証明って感じです。それからはご想像にお任せします

ナギと一樹くんに関しては、また別のところで少しずつやっていこうと思っています





あらためまして、ご感想ありがとうございます

それでは
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Re: 解のでない方程式 ( No.20 )
日時: 2016/03/16 16:40
名前: タッキー
参照: http://1120agl

どうも、タッキーです
『解のでない方程式』も、今回でやっと終わりです。
それでは、アフター更新です
















































































振り返ればそこにあったのはただの自販機で、幻想的な光のゲートはなくなっていた。


「………」


頬が濡れている









綾崎アカリは過去に行き、今さっき若い頃の自分の両親に別れを告げて、そして現代に戻ってきた。名残惜しかったのはもちろんだが、アカリが泣いている理由はもう一つあった

「こっちには、パパはいないんだったっけ………」

よく知らなかった自分の父親のことを、ハヤテのことを……アカリはずっと誤解していた。でも若い彼にあって、ハヤテが優しい人間だということを、母親であるヒナギクをちゃんと大切にしていることを、痛いほどに知ることができた。アカリ自身もずっと嫌悪していたはずのハヤテのことをすぐに好きになり、彼と一緒にいた短い時間はとても楽しいものだった。

「…………。家に帰らなきゃ……」

落ち込んでいる暇はなかった。母親に、ヒナギクに心配をかけたくはなかった。だからすぐに涙をぬぐい、暗い夜道が怖いのも忘れて歩き始めた。が……

「おかえり、アカリちゃん」

「え……」

公園の入り口には、岳が立っていた。


























「えっと……ママは……?」

「家にいるよ。オレが迎えに行くから、誕生日の準備でもしといてやれって言っといたんだが、嫌だったか?」

「い、嫌じゃないです!でも……えっと……その……髪、どうしたんですか?」

「………」

アカリはさっきまでまだ髪が短い時の岳と会っていたことになるのだから、すごく違和感があるのは確かだった。いい加減この質問をされるのがうっとおしくなってきた岳は自分の長い髪を一瞥したあと、ことの経緯をアカリに説明した。

「な、なるほど……。で、でもすごく似合ってますよ!!」

「はぁ……。ありがと」

似合ってるとアカリが思っていたのは本当だったが、彼女の焦って言い訳がましい口調に岳はそっけなく返事するほかなかった。

「そ、そういえばさ!!岳さん!!!」

「ん?」

「私を過去に送ったのって……もしかして岳さん?」

「いや。なんで?」

「えっと……ちょっとなんて言ったらいいのか分からないんだけど………」

アカリは言葉に詰まるのと同時に歩みも止めていた。彼女は少し考え込んだあと、やがて覚悟を決めたように岳のほうを向いた。

「私が過去に行く瞬間、真っ白な光に包まれたの。でね、その光の中に一瞬だけ人影……のようなものが、見えたから………」

「………」

「でも影っていうほど黒い色してたわけじゃなくて、ただの見間違いかもしれないんですけど……」

ふとアカリが岳の顔を覗き見ると、彼はどことなく深刻そうな顔をしていた。

「も、もしかして幽霊かな……!!」

「ん?いや、多分違うんじゃないか」

「で、でも……!!」

岳は思いっきり怯えているアカリの頭に手をおき、そのまま優しく撫でてあげた。さっきまで震えていたアカリも、安心したのかすっかり大人しくなった。

「詳しくは言えないけど、もしそこに誰かがいたのなら、それはきっとアカリちゃんのことを大切にしている誰かだ。だから安心していい」

「………」

「ほら、もう着いたぞ」

いつの間にか、二人の前には三千院家の大きな門が立ちはだかっていた。

「家まで付いていったほうがいいか?」

「いや、いい…です……。ありがとうございました」

門から綾崎家までの道のりには、ほぼアカリのためだけに外灯がいくつも設置されており、昼間のようまでとはいかないが随分と明るかった。それでも、彼女が進んで一人でこの光が照らす道を通ろうとすることはこれまで一度もなかった。

「そうか。じゃ、二人によろしく」

「え?ちょっと…岳さん?」

アカリが呼び止めたにも関わらず、岳はすでに夜の闇の中で見えなくなってしまっていた。

「二人って……パパはいないのに………」

そうつぶやいた瞬間、アカリに「もしかして…」という考えが浮かんだ。すぐさま家のほうを向き、彼女は一心不乱に走り出した。














「ただいまーー!!!」

乱暴に玄関のドアを開け、息が上がって肩が上下に動いているアカリに言葉は返したのはヒナギク一人だった。

「おかえりなさい。どうしたの?そんなに息を切らして…」

「え…いや、その………」

できるだけ表情に出ないにように努力した

(やっぱり、パパはいないんだよね………)

いつもと全く変わらない。ヒナギクはアカリが過去に行く前と同じように、普段通りアカリの帰りを迎えた。つまり…無理しているんだと、アカリは瞬時に思った。

「ま、いいわ。それより今日は誕生日でしょ。何か欲しいものとかない?」

「え、いや……」

本当に言いたい言葉は、胸の奥底に押しやった。それはヒナギクにとっても辛いことだから…それは手に入らないものだと分かっているから……

「ううん、いらないよ。私はママがいるだけで、それだけで…………っ!!」

ふいに、アカリは抱きしめられていた。母親の温もりに、アカリは胸にしまい込んだはずのものが溢れだす感覚を覚えた。

「泣くくらいなら、ちゃんと本当のことを言いなさい……」

「………。うん…………」

しかしヒナギクはアカリが口を開く前に彼女を放し、後ろ側に回るとまだ小さな娘の背中をポンと押した。キョトンとしているアカリに、ヒナギクは微笑みながら優しく声をかけた

「いってきなさい」

状況がいまいち呑み込めていないアカリの目が一番最初に映したのはリビングから漏れてくる光だった。一ヵ月ぶりに返ってきたからだろうか、それともゆっくりと歩いていたからだろうか、アカリには日常的に使っていた短いはずの廊下が、今はとても長いものに感じられた。





それは、アカリがリビングのドアを開けた時だった














「おかえり…」

すでにアカリの顔はくしゃくしゃだった。それでも……それでもアカリは涙を見せたくなくて、ゴシゴシと荒っぽく目を服の袖でこすった。

















そして、また顔をくしゃくしゃにしながら、アカリはハヤテに言葉を返した






「ぱぱぁ…!ただいまぁ………!!」










































  〜 After 〜 『 泣きたいくらい幸せになれるよ 』



































「おいしい?」

「うん!!!」

アカリはいま、ハヤテが作ったオムライスに文字通りかぶりついている。彼女の前に座っているハヤテには口まわりがケチャップで汚れている自分の娘がなんだか可愛く見えた。

「ていうかアカリ、本当にプレゼントいらないの?」

「う〜ん……。まぁ、欲しいものも特にないし……それに、私いますっごく幸せだし」

ヒナギクの質問に、アカリは正直に答えていた。今、家族全員がここに揃っていることは、まぎれもなく彼女にとっての幸せだった

「強いて言うなら、パパにちょっとだけチューを……」

「ダメよ」

「即答!?それはちょっとひどくなぁい!!」

アカリは冗談半分だったのだろうが、ヒナギクはいたってマジメに答えていた。もちろんというか、当然というか、ハヤテはすでに蚊帳の外だった。

「ひどくないわよ!あなた、こっちに戻ってくる前にもハヤテの頬にキスしてたでしょ!!私ちゃんと覚えてるんだから!!」

「ちぇ〜……」

いまのアカリの表情は、残念そうというよりもむしろ嬉しそうだった。ずっと無理して感情を押し込んでいたヒナギクを知っている彼女にとっては、母親の素の姿を久しぶり見れて嬉しかったのだ。

「まぁ、冗談はこれくらいにして……」

「アカリはともかく、ハヤテはあんな冗談言ったら許さないからね」

「え?あ、はい……!」

それは釘を刺したヒナギクと刺されたハヤテが、一息つくために同時に水を飲もうとした瞬間だった

「ぶっちゃけ言うと、妹とかほしいかな」

「「ブっ!!!!!!」」














「「「……………」」」


















すごく、微妙な空気になった。


しかしそれを作った本人がそうなった理由を知っているはずもなく、アカリは目の前でなんだか顔を赤らめている二人をただ困惑して見ているほかなかった。

「え、えっと……私、何か変なこと言った………かな?」

吹き出した状態で固まっていたハヤテは、コップに口をつけたまま、水がこぼれないように顔を横に振った。ヒナギクは大分持ち直してこそいたのだが、アカリの質問にはどこか明後日の方向を向いていた。

「あ、うん……。妹………妹ね。い、いもうと……………」

「い、いや……!!妹じゃなくても、べつに弟でも…………って、二人ともどうしてそんなに顔真っ赤にしてるの?」

「「…………」」

無邪気って恐ろしい。ハヤテとヒナギクがそう思った瞬間だった

「あ、もう食べ終わったんなら片付けてくるわね!!二人はゆっくりしてていいわよ!!!!」

「えっ!?ちょっ…!!ヒナ!!??」

ハヤテが手を伸ばすのも虚しく、ヒナギクは即座に食器をまとめて台所まで逃げていった。二人きりになってどうしていいか頭の中がぐるぐるしていたハヤテに、アカリの方から声をかけてきた。

「ねぇ、パパ。ちょっとケータイ貸してくれる?」

「え?あ、うん」

流れのままにスマホを渡したハヤテだったが、このタイミングでその行為がどんなものか瞬時には理解できなかった

「えっと……なにしてるの?」

「ん?いや……子どもってどうやってできるのかなぁ…………」

「ノーーーーーーーッ!!!!!!」

机を強くたたき、しりに火が付いた勢いで立ち上がったハヤテに、アカリはビクッと体を震わせた。彼女は両手で、ハヤテのスマホをしっかりと握りしめていた。

「アカリ……!!」

「はっ!はい!!」

「黙って……。ケータイを………。僕に……渡すんだ………!!」

「…………」

ハヤテはさながら政治家の演説のように、一語一句はっきりと、そして力強く娘に言い聞かせた。ハヤテ自身切羽詰まっていたこともあり、その言葉は怖いほどに説得力が増しており、アカリは今まで見たことのない父親の表情にただ震えながら頷くしかなかった。

「いいね……?」

「はい…………」

アカリはもう泣きそうになっていた










































「まったく、なに吹き込んだのよ?」

「だって……アカリにはまだ早いと思って………」

22時30分。アカリはすでにベッドにもぐり、静かに寝息を立てていた。豆電球で弱い光こそ点けているものの彼女が一人で寝付くのは珍しく、そのことからヒナギクはハヤテが相当怖がらせたのだろうと容易に想像できた。

「ま、いいわ。ちょっと早いけど私たちももう寝ましょ」

ヒナギクはそう言うと、寝ている娘を起こさないように彼女の右側からベッドに潜り込んだ。ハヤテも左からベッドに入り、久しぶりに……本当に久しぶりに、3人が同じベットに落ち着いた。

「ねぇ…ハヤテ………」

ヒナギクは手を伸ばしていた。ハヤテも手を伸ばし、二人はアカリを包むような形で手を繋いだ。

「ヒナ……ありがとう…」

「なによ…。急に………」

微笑んだハヤテにヒナギクは顔を赤らめたが、それを隠そうとはしなかった

「今回も、今までも……ヒナには救われてばかリだから………。だから、ありがとう……」

「………」

お互いの手を握る力が少しだけ強くなった。そんな……気がした

「ハヤテ……」

「ん?」

「またいつか喧嘩しちゃっても……きっと大丈夫だと思う」

ハヤテから見たヒナギクは、少し涙目だった。

「これからどんなことがあっても、この手は離さない……離せないと思う。だからね、どんどん引っ張って行っちゃうことになるだろうけど、ついてきてくれる?」

ハヤテはヒナギクの言葉に何も言わず、ただ嬉しそうに顔を縦に動かした。言葉じゃない足りないから、この気持ちが色褪せることはないと分かっているから、こうすることが一番だと思った。

「ありがと……」


ハヤテは握ったヒナギクの手が温かくて、少し泣いてしまいそうだった





「ヒナ……愛してる………」


「………うん。わたしも…愛してる………」










ヒナギクは繋いだ手がうれしくて、泣いてしまいそうなほど……幸せだった




















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Re: 解のでない方程式 ( No.21 )
日時: 2016/03/19 23:06
名前: どうふん
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413

タッキーさんへ


ちょっと遅ればせながら完結おめでとうございます。

めでたく家族三人が揃うことになってよかったです。
結局岳さんの言いたいことは「もっとヒナを見てやってくれ」に尽きるんでしょうね。
私は、基本的に(本作はもちろん、原作および私の作品も共通して)「ハヤテのバカヤロー」というスタンスですが、正直、ヒナギクさんにも「それはちょっと・・・」と思うことはあります。
それを補って余りある愛情の持ち主である本作のヒナギクさんは、ある意味岳さん以上に神に見えます。そこに岳さんが引け目みたいなものを認めて肩入れしているのではないかな・・・などと勝手に考えております。


ところで・・・この世界はまだ続くんですよね。アカリちゃん待望の妹ができるまで。

でもね、ハヤテ君にヒナギクさん。アカリちゃんの発言にそれほど過敏に反応することはないよ。一人っ子の口癖みたいなものだから

                                        どうふん
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Re: 解のでない方程式 ( No.22 )
日時: 2016/03/20 20:56
名前: タッキー
参照: http://1120agl

どうも、タッキーです

どうふんさん、ご感想ありがとうございます。



う〜ん……なんて言えばいいんでしょう?岳さんの言いたいこととなると、正直多すぎて彼の説教だけで1話くらいまるまる書けてしまいそうなので、今回(前回)の発言はもうすごく単純に一番伝えたいことの一つだけを切り抜いた結果という感じでしょうか。


なんだかんだで岳さんは神様らしく人を救ったりとかは、滅多にしていません。ていうか、人助けしたのは多分ハヤテの件くらい。本人自身、そういうことにやる気も興味もないので、ヒナさんに引け目を感じているかというと、それはちょっと違ってくるかなぁ〜と。とらえ方が違っていたらすみません。


この世界観はもちろん続きます。次はどうふんさんのように何章かに分けた長編で、ダラダラとやっていきたいと思っています(テヘペロ☆
まぁ、妹ができるまでの話は多分やらないと思いますけど。実際のところ、早く妹ちゃん出したくて……。




それでは、あらためましてご感想ありがとうございました

次回作も読んでいたただければ嬉しいです。
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