「支天輪の彼方で」25周年記念総括文
4.運営者を取り巻く環境と嗜好の変化
Since : 2023.10.29
written by
双剣士
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1.はじめに/
2.運営者としての意識の変化(1)/
3.運営者としての意識の変化(2)/
4.運営者を取り巻く環境と嗜好の変化/
5.おわりに/
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前のページではサイト運営スタイルを変化させた要因として『ひなゆめファンの止まり木』の開設を挙げましたが、もちろん原因はそれだけではありません。何しろ25年も経ったのですから、ネット内外でも様々な変化がありました。2次小説を読むために当サイトに来てくださる皆さんには関係のないことなので明言はしてきませんでしたけど、せっかくの節目です。それ以外の要因についてもお話ししましょう。
まずは趣味に合うサイトを探す手段の変化が挙げられます。
開設当初の1998年はブログや2ちゃんねるはおろか、Google検索エンジンすら存在しない時代でした。当時の検索エンジンはYahooディレクトリに代表されるように、サイト運営者自らが大手ポータルサイトにリンク掲載依頼を出して、審査を経た末に限られたサイトだけがポータルサイトに登録されて検索エンジンに引っかかる、そんな時代だったのです。ですからYahooディレクトリに登録されることがステータスになる一方、登録されないサイトたちは各サイト自身の持つリンク集や掲示板やWebリング、あるいは有志の作った同人系検索エンジンを通じて密に連携を取り合い、どこかのサイトを訪れた訪問者がリンク先サイトに流れてくるのを期待するしかありませんでした。もしどこかのサイトが(原作のアニメ化などで)大手サイトで紹介されれば、そのサイトだけでなくリンク先サイトのほとんどでアクセス数が急増する。そのチャンスを逃してなるものか……という感じで、サイト運営者同士の交流は大事な要素でしたし、特に親密なサイト同士では新作に目を通して感想を送り合うことが当たり前の習慣でした。私が「自作小説を親しいサイトに寄贈する」という行為をしていたのもその一環でした。
ところが事前登録不要なGoogle検索エンジンの登場と、そこで前の方のページに表示されるためのSEOテクニックに長じたブログシステムの登場により、状況は一変しました。個人サイト同士でのリンク集をいくら充実させても、関連リンクやトラックバックなどを記事ごとに自動生成するブログのページランクには遠く及びません。加えてSNSや「小説家になろう」など、HTMLの知識がなくても文章さえ書ければ投稿できて多くの読者が集まるサイト上に順位付けして表示されるシステムが登場して大勢の集客をするようになったことも、個人サイトの来客数減少に大きな役割を果たしました。
こうして読者がブログや大手SNSに流れ、個人サイト同士の交流が以前より減ってしまうと……私たちサイト運営者もまた、閲覧者としては彼らと同じ行動を取るようになります。ごく一部の親しいサイトの更新状況をウォッチし続けなくても、目を通し切れないほど膨大で良質な読み物が次から次へと提供されるわけですから、閲覧する側にとっては楽をして楽しめる時代になったのです。こうなってくると趣味の合うサイトを探すことすら稀になり、感想を書いたり送ったり返信したりと言った行為も年数回レベルに下がりました。傍から見れば「やる気をなくした」ように見えたのでしょうけど、正直に言うと小説執筆やジャンル活動への熱意が下がったと言うよりは、それ以外でやれることが増えすぎて手間のかかる作業の比重を下げざるを得なかった、と言うのが正しいと思います。
2つ目として、私個人の嗜好の変化が挙げられます。
このサイトを訪れてくれてる方ならご存知でしょうけど、当サイトのメインコンテンツはSide Storyです。その定義は人により様々ですが、私は以下のように考えています。
- 作品設定や人間関係が読者にとって既に周知である作品を題材として、その1シーンから分岐して原作にはない寄り道エピソードを挿入したもの
- そして寄り道エピソード終了後は原作の1シーンに戻ってこられるもの。間違っても原作の関係を壊したりしないもの
再度念押ししますが「この定義こそが正しい、他の人もこれに合わせろ」などとは言っていませんよ。あくまで双剣士個人の解釈でありスタイルです。
そしてこのスタイルを貫くためには、原作が「寄り道しても戻ってこられる、読者に馴染みのある日常」を備えていなくてはなりません。語弊を恐れずに書けば「馴染みのあるシーンから始まって馴染みのあるシーンで毎回終わる、一回や二回分原作を読み飛ばしても読者が違和感を持たない構成」と言う感じでしょうか。当サイトで扱った「まもって守護月天!」「セイバーマリオネットJ」「ぴたテン」「ハヤテのごとく!」は皆こういうスタイルの作品でしたし、今年の秋アニメで言えば「SPY×FAMILY」あたりがそれに該当するでしょう。もちろん連載が続くにつれて原作キャラ同士の関係性が徐々に変わっていくことは避けられませんけど、それでも原作を知る読者が「えぇ、いつの間にこの2人が仲良くしてるの? こいつこんな振舞いをするキャラだっけ?」といった違和感を持つことはまずない、そういう原作が私の執筆スタイルには合っているのです。
しかし私が見ている漫画やアニメの中には、そうでない作品もたくさん存在します。「キャラ同士の関係が一話ごとに目まぐるしく変わり、次回の話はその直前の関係変更を引き継ぐ。そのため直前までの連載を見ていないと今回の話が分からない」というタイプですね。例を挙げるなら「蟻の王」や「プランダラ」、今期アニメなら「はめつのおうこく」がそれに当たるでしょうか。こういう作品は「戻ってこられる日常」が過去編くらいにしか存在しないので、読む分には面白いのですが私のやり方で2次創作するには難しい作品群と言えます。(原作を壊す覚悟があれば別ですが)
これまで私は後者の作品群に関する言及はほとんどしてきませんでした。前者の作品群のファンであり、前者の2次創作を読むために当サイトに来てくれる読者から見れば、運営者が後者の作品に言及することは「心変わり?」と疑われる可能性が高かったからです。そのため前者について楽しく語り2次創作をしている自分と、後者について愛読しつつも声を出さない自分という2つの顔を切り換えながら趣味活動を続けてきました。別に無理をしているつもりはなく、TPOをわきまえて発言しているだけだったのです。
しかし上述の通り、サイト閲覧スタイルの変更により前者コンテンツに注力する時間が減ってくると……自分の中で後者作品群に割く時間が明らかに増えてきました。2次創作の元ネタにならないとは分かっていても、連載を追っている分には面白いんですもの! 見逃せないんですもの! それに単行本2巻までは前者タイプだった「Kiss×sis」も、第3巻からは後者タイプにシフトチェンジしてきましたし……そんなこんなで後継となる元ネタがなかなか決まらないまま、個人としては大いに楽しんでいるのが現状です。
最後に3つ目として……某運動系サークルに割く時間が増えたことも大きいです。
私はもともと某運動部の出身で、下手くそではありますが中学から大学まで同じ競技の部活動をやってきました。社会人になってからはそれも途絶えていたのですが……ほんの4〜5年前に近所でその競技を楽しめるサークルを見つけまして、週1〜2回で練習をするようになったのです。こうなると練習に時間を割かれるばかりでなく、ネットに接続してもその競技のための用具やグッズを検索して通販する時間が増えるようになりましたし、関連動画をyoutubeで見る機会も多くなりました。
サイトを訪れてくれている読者の方々には何の関係もない話で、本当に申し訳ないのですけど……そんなこんなで、当サイトに割く時間が開設当初より明らかに減ってしまっているのが正直なところなのです。たぶんこうした変化は一時的に止まることはあっても、この先逆転することは無いでしょう。
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