小説ノウハウ講座
First Uploaded Date: 2001.04.29

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投稿時間:01/04/29(Sun) 00:16
投稿者名:双剣士
Eメール:soukensi@dp.u-netsurf.ne.jp
URL :http://www1.u-netsurf.ne.jp/~soukensi/
タイトル:メモはこまめに貪欲に

 ひらめきと言うものは、いつどんなときに訪れるか分かりません。机に向かっているときにアイデアの奔流が押しよせてくれれば好都合なのですが、たいがいの場合は食事中やトイレの最中など、思いがけない夕イミングで頭に浮かぶことが多いものです。
 そこで重要になるのはメモの活用です。常に身近にメモを用意して、思いついたことをすぐに書き留める癖を付けるようにしましょう。いま思いついたアイデアは今後二度と思い出せないかもしれません。また周囲の状況によっては、そのアイデアを一時的に脇に置いておかなければならない場合も多いのです。
  『アイデアを忘れないように、またすぐに忘れても大丈夫なようにメモに書き移す』
 これは小説に限らず、新しい何かを生み出そうとする者にとっての鉄則と言えます。

 さて、この提言に総論として異議を唱える人は少ないでしょうが――実際に実行するとなると、二の足を踏む人が多いようです。いくつかの異論と、それに対する私からの回答をQ&A形式で示します。

Q1.
 自分は集中すると周りが見えなくなるタイプ。小説ネタのことばかり考えていたら普通の生活ができなくなる。

A1.
 こう考える人は思い詰め過ぎているのです。友人との会話の最中に今夜のテレビ番組のことを考えたり、授業を受けながら放課後の寄り道のことを夢想したり……同時に2つ以上のことを考えることは大抵の人が普段からやっていることのはずです。頭の隅っこに『面白そうな思いつきは書き留めておこう』という意識を持っておけばよいこと。出来ないなどと投げ出さずに挑戦してみてください。
 このときの注意点を挙げますと、メモの段階では深く考えてはいけません。深く考えるのは、時間のあるときにメモを読み返すときで間に合います。メモに書き写したらきっぱりと頭を切り換える、と言う訓練をしてください。難しく思えるかもしれませんが、同時に考えるのではなく一方を凍結させておくのです。状況と立場に応じて頭を切り換えることは誰もが自然に身につける社会生活の基本技能ですから、気楽に考えて大丈夫です。決して出来ないことではありません。

Q2.
 授業の最中や誰かとの会話でネタを思いついても、その場でメモに取るなんて出来やしない。

A2.
 そういう状況はよくあります。そこで頭の隅に凍結する前に、アイデアを“短いキーワード”にまとめるよう心がけてください。例えば、
  『野村たかしが傷心の花織を慰め、彼女のチョコを口に入れたとたんに意識喪失』
という落ちを思いついたとしたら、頭を急速回転させて
  『野村先輩、デリカシーないんだから!』
の一言にまとめ上げます。こういう決め台詞やキーワードというのは忘れにくいものです。その台詞だけを頭の隅に残しておいて、メモを取るチャンスがきたら
  『チョコ、倒れる、デリカシーないんだから』
と素早く書きます。これだけでOK。“短いキーワード”にまとめる練習というのは小説を執筆する際にも必要になる技能ですから、訓練の一環だと思って頑張ってみてください。
 後になってアイデアを復元できるだろうか、という心配はいりません。頭の中で一度でも整理しておけば、短いメモから全体を思い出すのは意外と簡単なものです。それに別の項で述べるように、最初のアイデアに拘泥する必要はありません――アイデアの断片というのは、どんどん膨らませていくことに醍醐味があるのですから。

Q3.
 小説に使えるネタなんて、そう都合良く思いつきやしない

A3.
 小説書きというのは、転がってるネタを文章化する作業ではありません、何気ないきっかけから思いついたネタを膨らませ育てあげて組み立てることにより、あなたにしか作りだせない物語を創造する作業です。ですから小説に使えそうなネタかどうかを今の段階で選別する考えは、きっぱりと捨ててください。

 例えば、私のメモの片隅にはこんな名前があります。
  “ネフェルトゥーム”
――な、なんなんでしょうね、これ? 1年半ほど前の記述なので書いた本人にも分かりません。人名なのか地名なのか、それとも世界の命運をにぎる細菌岳器のコードネームなのか?
 思いだせませんが、それでもいいんです。いつか思いだすかもしれないし、全然別の物語のキャラ名として使うことがあるかもしれない。なにより、メモが断片であれ残っていたお陰で色々と想像を膨らませることが出来たじゃないですか。

 もうひとつ例を挙げておきます。先日の自民党総裁選をテレビで見ていて、ふと本宮ひろし氏の漫画の一節を思いだしました。
  「親父さんが再登板することなんて、だれも望んじゃいない!」
        (出典:『大と大』YJコミック刊……だと思う、多分)
 ふたたび首相になろうとする派閥のボスを、主人公たる若手国会議員がいさめるシーンです。この先どうなるかは原作コミックを見てほしいのですが、この直後のシーンとしてあるインスピレーションが浮かびました。
  ――――メモからの引用開始――――
  「良く言ってくれた。それじゃ明後日の昼、俺は不出馬表明の
   記者会見を開く。だがその直前まで、俺はあくまで出る気だと
   言いつづける。俺の真意を知ってるのはお前一人だ」
  「…………」
  「1日やる。他の連中を説きふせるなり、マスコミにリークする
   なり好きにしろ……見せてもらうぞ、俺の首を取った男の器量を」
  ――――メモからの引用終了――――
 このあと主人公が何をするのか、実は全然考えてません。ですからネタとしては未完ですし、そもそも政治ドラマを書くつもりなんて無いんですが――それでも書き残しておいて後日に振り返れるようにするのが、メモの役割なのです。
 応用例のひとつを挙げると、
  ボス→慶幸日天ルーアン
  主人公→遠藤乎一郎
  首相選→たー様の争奪戦
と置きかえることで、乎一郎SSの一節として使えそうですね。


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★ - 第02章・ネタ出し - 双剣士 01/04/29(Sun) 00:03 No.3