投稿時間:01/04/29(Sun) 00:15
投稿者名:双剣士
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タイトル:数珠つなぎに発想を生み出す方法
小説を書くには、核となるネタが必要です。これは改めて説明するまでも無いことでしょう。小説を書き始めようと思っている皆さんは『こんな物語を書きたい』とか『こういう話だったら自分にも書けるのでは』『面白いのでは』というアイデアを、おぼろげながらも思い描いているはずです。というより思いついているからこそ、それを書きたいと考えるのでしょう。
しかし、頭の中で思いついたネタは多くの場合『断片』にすぎず、それを読者に理解してもらえる形に仕上げるには色々と肉付けをする必要があります。戦争シーンやカーチェイスを目玉にしている映画を考えてみてください。2時間丸ごと派手なシーンばかりにしてしまっては視聴者に飽きられてしまうし、かといって派手なシーンだけを10分間流してお終いにしてしまっては物語として成立しません。なぜ戦争が行われているのか、主人公はどういう人物でどういう事情でこのシーンに登場するのか、主人公が何を達成すれば物語は終わりになるのか……そういった周囲の状況をきちんと視聴者に理解させてこそ、派手なシーンが生きるのです。小説もまったく同様。
このへんが、小説や漫画などの形で物語を提供できる人と、それが出来ない人の最初の分岐点になります。本人が頭の中で考えて楽しかった部分だけを文章化したのでは不十分なのです。読者に分かる形にするには、そこに至るまでの経緯や人物の立場、それなりのエンディングを迎えるための論理的な帰結などをきちんと揃えなければなりません。つまり余計なことにまで頭を悩ませる必要があります。
小説書きの好きな人はこの『余計なこと』こそが小説書きの醍醐味だと知っているのですが、ここを『面倒くさい』と感じてしまったら物語は書けなくなってしまうのです。
そういうわけで。最初のアイデアを思いついたら、今度はそれを補強するための数々のネタをしぼり出さなくてはなりません。本稿では、そのための手法について幾つか例を挙げてみます。
1.アドリブ法
初期条件と登場人物を設定し、あとは各キャラクターたちに自由に振舞わせる方法です。物語がどう進展するか、エンディングに向かうためにはどう進めるか……といったことはあまり気にせずに、『こういう状況ならこのキャラクターはこうするだろうな』という想像をひたすら積み重ねていきます。気楽に書き始められることができ、思いついたネタをどんどん取り入れることができるので長編小説に向いています。
発端となる初期条件には、例えば以下のようなものがあります。
・ToHeartのキャラクターたちがファンタジーの世界に迷いこんだら
・もし透明人間になることが出来たら
・何らかの物語をベースに、『ここでこうなったら』『この先は?』と考える
2.バックトラック法
特定のシーンや名台詞などを先に思いついておいて、その場面に向かうにはどんな状況と経緯があれば良いのか、という風に発想を進めていく方法です。筋の全体像が見えるまでオープニングが決まらないという弱点はありますが、うまい筋を構築できればオリジナリティをもっとも発揮しやすい方法でしょう。推理小説のトリックを考えるやり方、といえば発想のイメージが湧くでしょうか?
発想の起点となる場面は、突飛なほど面白いです。例えば以下のように。
・花織ちゃんが守護月天ワールドの精霊たちと戦う羽目になったらどうなる?
・「誰が好きなのか、はっきりさせてよ」この台詞を七梨太助に浴びせるのは誰?
・「……嫌です」この台詞をティーゲルに言わせるとしたら、それはどんな状況?
3.キーワード法
名前、イベント、台詞……など思いついた断片を片っ端からメモに取り、それを並べ替えながら各々を結びつける物語を想像する方法です。チェックポイントを通過しながら小刻みにアドリブ/バックトラック法を用いるという感覚ですね。発想の発端と結末を指定して頭を絞るので、難しいですが驚くようなアイデアが思い浮かぶこともしばしばあります。意表を突いた展開を随所に織り込みながらも全体の大まかな道筋は押さえておけるというのは大きな長所です。
以下のような例が該当します。
・仲の良い恋人同士が別れていく過程を書きたい
……キーワードは親友、鳴らない電話、距離、反対する家族、意地、など。
・悪意を持つ人は誰も居ないのに、事態がどんどん混迷する物語を書きたい
……キーワードは過干渉、恋愛関係、ポケポケと先走り、各人が別々の立場と経験をもつ、など。
他にも色々な発想法がありますが、とりあえず3つを挙げてみました。
人によって得意な方法や不得意な方法は当然あるでしょうが、どれかひとつの方法だけに頼るというのは感心しません。どの方法にも長所と短所があるからです。状況に応じて『こんな角度から考えたらどうかな?』と使い分けると良いでしょう。発想が行き詰まったときの打開策としても使えると思います。
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