タイトル | : 「ハヤテのごとく!エクスタシー」発売決定! |
投稿日 | : 2008/05/03(Sat) 20:55 |
投稿者 | : ウルー |
三千院家のナギお嬢さまが百合にお目覚めになられた。
理由? そんなもの決まっている。ギャルゲエロゲのやりすぎだ。
「なぁハヤテ、鈴と小毬なら鈴が受けだよな! なにせネコだからな!」
「はぁ、そーですね」
「はるちんと佳奈多なら佳奈多受けが案外イケそうな気がするんだが、どうだ?」
「はぁ、そーですね」
「姉御は……そうだな、アレだからいいのであって、実際に行為に及ぶとなるとちょっと……な気がするぞ」
「はぁ、そーですね」
「美鳥×美魚……これはイケる!」
「はぁ、そーですね」
最近やったゲームがモロバレな百合妄想を垂れ流しているだけならまだ問題はなかった。平気な顔してエクスタシーを予約しているのも、まだいい。
問題なのは――。
「はぅ、あん! や、ちょっとナギ、ダメです、ハヤテくんが見て……や、あぁん!」
「ふふ、そんなこと言って、どうせ見られて感じているんだろう? 相変わらずマリアは変態メイドだな」
「そ、そんなこと……! い、はぅあ、やぁん!」
珍しく早起きしてきたナギとの、朝食の席。
ナギはもにゅもにゅと、マリアのおっぱいを揉んでいた。ハヤテは目を逸らしてはいるが、だったら部屋から出ていくべきである。しっかり聞き耳たてやがって、このムッツリめ。
ナギがゲーム世界だけでは飽き足らず現実世界へと侵攻を始めたのは、つい先日のことである。ご覧の通り、最初に餌食になったのはマリアだった。
毎晩ベッドを共にしている二人だから、機会は作るまでもなく、いくらでもあったことだろう。最初は、ちょっと抱きついてみたり、胸に顔を埋めてみたり、そんな軽いスキンシップから始まった。なんだかんだでナギのことが可愛くてたまらないマリアであるから、そんなナギを微笑ましく思い、「ふふふナギったら甘えん坊さんですね」と受け止めてやっていたのだが……。
「計画通り……!」
その胸の中でナギがニヤリと笑っていることなど、マリアは夢にも思っていなかっただろう。
最初は軽く、そして少しずつ少しずつ、夜の触れ合いは過激になっていく。本当に少しずつだったから、マリアの防衛本能はいつの間にか麻痺してしまっていた。マリアは普段あんな感じではあるものの、その中身はわりと初心な17歳の女の子。エロゲのおかげで無駄に(間違ったものも含め)知識豊富なナギが一度攻めに回ってしまえば、ろくに抵抗することもできず、為すがままにされるしかなかった。
そして――現在に至る、というわけである。
「なあマリア、私がニンジン嫌いなのは知っているよな……?」
「そ、それは……でも、バランスよく食べないと身体に悪いですし……あん」
片手でマリアのおっぱいを揉み続けつつ、もう片手に持ったフォークに刺さったニンジンの煮付けを恨めしそうに睨むナギ。
「……そうだ、いいことを考えた。マリアの口移しなら、食べてやらんこともない」
「ええっ!?」
マリアとハヤテが同時に驚きの声をあげた。というかやっぱり聞いてやがったのかこのムッツリ執事。
「なんだマリア、私の言うことが聞けないのか?」
「……わ、わかりました、ナギ。いえ、ご主人様……」
躾もバッチリだった。
結局ニンジン以外も全てマリアからの口移しで平らげたナギは、これまた珍しく、学校に行くと言い出した。自主的に、である。無論マリアもハヤテも喜んだが、ハヤテは一抹の不安を拭えないでいた。
ナギの真意を探るための時間を得るべく、ハヤテは徒歩での登校を提案した。ナギはあっさりと了承する。そんなわけで、場面は清々しい朝の通学路へと移る。
「お嬢さま、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「ん、なんだ?」
「その……どうして、学校に行こうと思われたんです?」
回りくどい質問はあえて避けて、ハヤテはストレートな問いをぶつけた。尺の都合もある。
ナギは然も当然のように答えた。
「どうしてって、そんなのヒナギクに会いにいくために決まってるだろ」
「……ああ、さいですか」
「まあ、いいんちょも捨てがたいところではあるが……いいんちょは攻略難度低そうだし、後回しだ」
「……お嬢さま!」
もう、ハヤテは耐えることができなかった。変わり果ててしまったナギの行く手を阻むようにして、一歩前に出る。
「いったい……いったい、どうしてしまわれたんですか! ついこの前は、サンデー片手に『現実(リアル)なんてクソゲーだぁああぁああああ!』と叫んでおられたじゃないですか!」
「ああ、確かに現実はクソゲーだ。あれほどの名言に私はかつて出会ったことがない」
「だったら、ああいうのはゲームの中だけにしときましょうよ! 僕、マリアさんのあんな姿見たくありません、ああ眼福眼福なんて決して思ってませんっ! ほんのちょっとしか!」
無駄に正直者だった。そんなハヤテをジト目で見やりながら、ナギは静かに語り始める。
「なあハヤテ、私は気付いてしまったんだ……」
「な、何にですか?」
「私達が二次元のキャラであることに」
「なにぶっちゃけてんですかぁああぁああああっ!!」
「つまりここは現実じゃない。クソゲーじゃないんだ。むしろ神ゲーと言ってもいい」
ハヤテのツッコミを華麗にスルーしながら、ナギは淡々と言葉を継いでいく。いや、淡々と、というか少しずつ熱がこもり始めているような気もするが。
「なぜ神ゲーかって? そんなの決まっている。ハヤテ、マリア、伊澄、咲夜、ヒナギク、ハムスター、いいんちょ……他にもいっぱいいるが、とにかく可愛いおにゃのこが選り取り見取りだからだ! グゥレイトォ!!」
「当然のように僕をカウントするのはやめてください!」
「えー」
だってだって。メイド服のおまえとマリアとの百合シーンなんて、読者の誰もが妄想してることだろ? だろ?
いやいやいや、何言ってんですかお嬢さま!?
でもあれだな、私ふたなりは趣味じゃないんだ。よしハヤテ、金は出してやるから性転換手術を受けろ。
嫌ですよ! 大体、読者の皆さんは男の僕が女装させられてるからこそ萌えてるんだと思いますっ!
へぇ……。
うわぁー何を口走ってるんだ僕はぁああぁああああっ!!
「とにかく! 私はこの素晴らしき神ゲーをクリアしてみせるのだ!」
「いやもう、好きにしてください……」
「ふふ、私はトロトロやっているおまえとは違う。一週間後には、ヒナギクは私の愛奴隷となっていることだろう……。ふはははは!」
高らかに笑いながら、ずんずんと先を歩いていくナギ。そのある意味逞しくなった背中を見て、ハヤテは、HIKIKOMORIから脱却してくれたしまあいいんじゃね? と投げやりな気持ちになりかけていた。
ナギから泊まりに来ないかと誘われ、それを快く了承してしまった時点で、勝負は決していたと言ってしまっていいだろう。ヒナギクが泊まりに来たのは金曜の夜だったのだが、彼女が自宅へ戻ったのは日曜の夕方だった。ちなみに、土曜は一日中、ナギ共々寝室から出てくることはなかった。
しかしまあ、ナギとヒナギクでは、その身体能力に雲泥の差がある。それを一体どうやって克服したのか、ハヤテとしても――正直に言ってしまえば――非常に興味があった。薬でも盛ったのか、寝ている間に手足を縛って身動きを封じたか。
どちらにせよ、マリア相手に実技の経験を積んできたナギによって(途中からマリアも参戦したようだ)丸一日快楽をその身に叩き込まれたとなれば、いかなヒナギクといえども陥落してしまったとしても仕方のないことだと言えるかもしれない。
ナギがヒナギクの攻略を開始してから、実に三日目のことであった。
休み明けの月曜日、その朝。
「ふあっ、あぁん! ちょ、や、ナギ、だめ、だめぇ! ハヤテ君が見てるのに、こんなの、ひぃん!」
「ふふ、そんなこと言って、どうせ見られて感じているんだろう? 相変わらずヒナギクは変態生徒会長だな」
珍しく――というか、最近はそれが普通になりつつある。実に喜ばしいことだ――早起きしてきたナギとの、朝食の席。
ナギはもにゅもにゅと、わざわざ迎えに来てくれたヒナギクのおっぱいを揉――揉めるようなものなどないので、制服のスカートの中に手を突っ込んであれやこれやとやっていた。むしろ、おっぱいもにゅもにゅよりエスカレートしているような気がしないでもない。
ちなみにハヤテは目を逸らしてはいるが、だったら以下略ムッツリめ。
しかしまあ、気の毒なのはマリアである。羨ましそうに、しかし文句を言うことなく、ヒナギクにその双眸を向けている。その視線にどのような複雑怪奇の想いが絡められているか、ある意味人生経験豊富とも言えるハヤテをして読み取ることはできなかった。もっとも、彼は色恋沙汰については驚くほど役に立ちそうもない上、ナギ・マリア・ヒナギクのトライアングルは端から見ても特殊すぎる。
つまり、ハヤテには視線を逸らしつつも聞き耳を立てるぐらいのことしかできないのだった。
だが、しかし。
「はふぅ、んあっ……や、そ、そこぉ……ひやぁんっ!」
「うーん、だいぶ濡れてきてしまったな……よし、今日は一日ノーパンで過ごしてもらおうか」
「そ、そんなぁ……」
ハヤテには、ナギの執事として一つだけ言わねばならないことがあった。
「お嬢さま」
「ん、なんだ?」
ナギは相変わらずヒナギクの肢体を弄び続けているため、ハヤテもまた目を逸らしたままである。そんな様子では、説教染みたことを言うにもいくらか格好がつかない。
だが、どこぞの誰かが言ったように相手の目を見て話そうとすれば、この場合ヒナギクの痴態が否応にも視界に入ってしまう。ハヤテの中で如何様な境界線が設定されているかは定かではないものの、ソレは見てはいけないものということになっているらしい。
「その……差し出がましいことを言うようですが……」
「かまわん。言ってみろ」
「はい。では……」
ハヤテは一息ついてから、少し大きめの声で言い放った。
「僕、二股はよくないと思うんです!」
「…………」
ナギは動かしていた手を止めた。そしてハヤテを見る。ヒナギクもハヤテを見る。マリアもハヤテを見る。みな一様に、ジト目だった。
「え……あれ? 僕、何か変なこと言いました?」
「いえ、別に変ではないんですけど……」
「ハヤテ君に言われても、ねぇ……」
「え? え?」
要するに、自覚無しでフラグ乱立させてるような奴に二股どうこう言われても説得力がない、ということだった。
「……まあ、ハヤテのことはおいといて。それは私としても色々と思う所のある問題だ」
二股をかけられている側であるマリアとヒナギクはいいとしても、かけている側のナギがハヤテの言葉をジト目だけでスルーするわけにはいかなかった。それなりに真面目な顔である。
「しかし、解決法はもう考えてある。実に簡単な方法だ」
マリアとヒナギクの顔色が変わった。
簡単な解決法。そんなもの、どちらかと別れてしまえばそれで済む話である。しかし、なかば無理やり手篭めにされた挙句にポイされたのでは、当人達からしてみればたまったものではない。
二人のなんとも言えない視線に晒されながら、ナギは口を開いた。
「私達三人、全員が二股をかければいいのだ!」
ハヤテがポカンと口をマヌケに開けている一方で、マリアとヒナギクは目を輝かせていた。まるで、まさかそんな方法があったなんて、とでも言いたげな風に。
「私はマリアとヒナギクに二股をかける。マリアは私とヒナギクに、ヒナギクは私とマリアに。どうだ、これなら公平だ。な、そうだろハヤテ?」
「……いや、そうだろと申されましても」
「なに、心配するな。じきに三股になる」
どの辺りが心配するな、なのかは全くもって理解できないハヤテだが、自分を見るナギの瞳のその奥で、怪しげな光が瞬いているのだけは分かった。
ハヤテは助けを求めるように、マリアへと振り返る。目が合った。にぱー、と笑顔を返される。
次いで、ナギの隣に立つヒナギクへ。目が合う。どういうわけか、頬を染められた。
「いや待てよ。じきに、なんて言わずに今すぐ三股になってしまってもいい気がしてきた」
「いいわけないですよっ! だいたい学校はどうするんですか、ほらヒナギクさんも、なんとか言ってやってください!」
腐っても生徒会長である、こんな不埒な理由のために学校を欠席するなど、ヒナギクが許すはずがない。……ないのだが、それはもう過去の話だった。
「ナギ、私ちょっと熱っぽくて……今日一日、ベッドを貸してもらっても大丈夫かしら」
「ヒナギクさーん!?」
熱っぽいのは決して風邪だとかの類ではないという確信がハヤテにはあったが、これはある意味、一種の病気と言ってしまっても間違いではない気もする。もちろんナギは快く了承していた。
「ふむ、ヒナギクがそんな状態では放っておくわけにはいかないな。心を込めて看病してやるから、期待しておけ」
「う、うん……」
以前ならばママレモン入りお粥を思い出していたのだろうが、今のハヤテには全く別の想像しか浮かんでこない。
そんな想像をしている最中だったから、続くナギの言葉はすさまじい衝撃となってハヤテの心身を襲うことになった。
「そうだな、ハヤテにもヒナギクの看病を手伝ってもらおうか」
「ええっ!?」
もわもわーんと、想像、否、妄想の中でやりたい放題していたナギの姿が自身へと摩り替わった。あられもない姿のヒナギクに、やりたい放題しているハヤテの図。
「うわぁああぁああああっ!? 僕が鬼畜だぁああぁああああっ!?」
「き、鬼畜って……ハヤテ君、私できれば、その……優しくしてもらいたいっていうか……」
「まあ、これまで何かと抑圧された人生だったようですからね〜。ハヤテ君が実は鬼畜だったとしても、そんなに不思議ではないのかもしれません」
自分の妄想に頭を抱えて悶え苦しむハヤテと、顔を真っ赤にしてハヤテとは別の意味で悶えるヒナギク、そして冷静にハヤテの性癖について考察するマリア。場がカオスの様相を呈してきたところで、
「さあハヤテ、これに着替えるのだ。看病ときたらこれが定番だからな」
ナギが最終兵器を投入した。
ナース服である。
今は看護師と職業名も変わって男性も増えてきているが、ナギの持つそれは当然女性用のものだった。
「う、うう……」
己の鬼畜的妄想でHPに大ダメージを負ったハヤテは、にじり寄るナギの姿をその目に確認して抗うかのようにうめき声をあげる。だが、それだけだ。逃げようにも、金縛りにでもあったかのように、身体が動こうとしない。
いや。正確には、動こうとしないのではなく、動けない。背中に、柔らかいものが当たっていた。
「ふふ……ハヤテ君、観念したらどうですか?」
「マ、マリアさん!?」
いつの間にか、マリアに羽交い絞めにされていた。
「離してください、というか正気に戻ってくださいよマリアさん!」
「私はいつだって正気ですよ♪」
「正気だったら三股なんておかしいとお嬢さまに言ってあげてください!」
「いいじゃないですか、三股」
マリアはあっさりと言ってのける。彼女が何を考えているのか、それはハヤテに知り得ないことではあるが、その言葉はハヤテからしてみれば全く別の意味をも持ちうる。
「……さ、三股ってことは、その。僕とだって……色々と……アレな感じのことを……そ、それでいいんですか、マリアさん!?」
「かまいませんよ」
何の迷いもなく口にされたその答えに、ハヤテは驚きに目を見張った。
「……実は私も、ハヤテ君のことが……」
さっきまでと比べればだいぶ小さなその呟きを最後まで聞き取ることはできなかった。羽交い絞めにされたまま、マリアの表情は窺い知れない。
そうこうしている内に、ナギがハヤテの執事服を脱がしにかかっていた。ボタンを一つずつ、正確に、ゆっくりと……外していく。
(ぼ、僕は……)
ハヤテには、それを見ていることしかできない。
ナギがハヤテを見上げ、その幼い顔に笑顔を浮かべる。年に見合わぬ、妖艶すぎる笑み。
彼の大事なお嬢さまが、笑っていた。
(僕は……このままで、いいのか……? このまま、流されるまま……お嬢さまやマリアさん、ヒナギクさんと……僕は……)
いい
→よくない
ガッシャーン、と窓ガラスが割れる音が大きく響いた。と、同時に部屋の中に飛び込んでくる黒い影。その影は、まさしく風のように地を蹴り、駆け、一瞬窓ガラスに気をとられていたマリアから、ハヤテの身をさらっていった。
突然の侵入者にいち早く反応したのは、ヒナギクであった。その手にはいつの間にか木刀・正宗を携え――足に力を溜めて、一気に踏み込む。
「突きぃッ!!」
容赦のない必殺の一撃が、侵入者の喉元めがけて放たれる。
並みの使い手なら避けようのなく突き出されたその鋭い剣先を、侵入者はほんのわずかに首を傾けてかわした。絶対の自信をもって繰り出した技を避けられ、ヒナギクは一瞬その身を硬直させ――しかし侵入者は、その隙をつくことをせず、軽やかなバックステップで距離を取った。一瞬の後、マリアが振るった箒が虚しく空を切った。
「なかなかやりますわね」
あそこでヒナギクを攻撃していたなら、マリアが侵入者の首を討ち取っていただろう。かなりのやり手であることに間違いはなかった。
「ヒナギクとマリアの攻撃を立て続けに避けるとは……貴様、何者だ!?」
ナギが、まさしく悪の軍団、その頭領かのように、演技がかった文句を侵入者の大柄な背中に投げかける。
ハヤテをお姫様抱っこで抱えるその男は、ナギらに振り返って答えた。
「瀬川虎鉄……しがない執事さ」
「こ、虎鉄さん……」
「助けに来たぞ、マイハニー。もう安心だ」
「って、安心できるかぁああぁああああっ!!」
おわれ。
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