小説ノウハウ講座
First Uploaded Date: 2001.04.29

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投稿時間:01/04/29(Sun) 00:19
投稿者名:双剣士
Eメール:soukensi@dp.u-netsurf.ne.jp
URL :http://www1.u-netsurf.ne.jp/~soukensi/
タイトル:1.なぜプロットが必要なのか

 第02章において、ネタだしについて解説しました。その際には『面白い小説になるかどうかはひとまず考えずに、思いついたものをどんどんメモすること』と述べました。皆さんのメモ帳には、どう育つか楽しみな数々のネタが芽を吹いていることと思います。
 この章では、それらのネタを組み立てて小説の大筋を作ることを目的とします。この大筋をまとめた文章を『プロット』と称します。プロットは小説の設計図に当たるものです。良いものを作り出すためには設計図の検討に多くの時間を割かなければなりません。

 おそらく小説を書こうとしている方の多くは『早く書き始めたい』とうずうずしていることでしょう。小説に盛り込むネタが多いに越したことはないけれど、小説の大筋はとっくに自分の頭に入っているのだからプロットなど作る必要はない、さっさと書き方を教えてくれ――そう感じておられる方が少なくないのではないかと思います。これまでに何らかの小説やエッセイを書いた経験がある方は、なまじ経験があるだけに『自分にはプロットなど必要ない』と胸を張っておられるかもしれません。
 しかし、プロットは書くべきなのです。この講座が初心者向けだからこう言っているのではありません。プロットを書くことは単に大筋を明文化する作業にとどまらず、そのプロットをベースにして物語を推敲することを可能にするからです。
 そして、この推敲作業こそが小説書きのもっとも面白いところなのです。プロット作成とそれに基づく推敲作業は、私が当講座の読者に伝えたい『小説書きの醍醐味』の3割を占めます。それくらい重要な過程なのです。


 さて、プロット作成がどういう作業なのか、どういう部分が楽しいのか――については今後の稿でおいおい述べるとしまして。本稿ではプロット作成を省略するとどういう壁に突き当たるのか、いくつか例を引いて説明します。いずれも私が経験した失敗であり、面倒がらずにプロットを作成するようになって解決できた事例です。


1.あれもこれもと見所シーンを詰め込んだ結果、盛り上げ所が
  散漫になり『結局なにが言いたかったのか』がぼやけてしまった。
2.ネタの部分から本文を書き始めるため繋ぎの部分が貧弱になり、
  場面転換がスムーズにいかなくなったり台詞ばかりで読みにくい
  文章になった。
3.主役ばかりに描写が集中して、脇役がご都合主義的な登場しか
  出来なくなってしまった。

 これなどは初期の頃によく犯した過ちです。ひらめいたアイデアに惚れ込んで一気呵成に書き上げると、こういう小説になりがち。書いている本人は枝葉末節が頭の中にあるので出来の悪さに気がつきにくいのですが、しばらく時間をあけて読み返してみると……すべてをゴミ箱に放り込みたくなるほどひどい文章なのですな、これが。でもいまさら最初から書き直す気力は起こらないので、本当に消してしまうか『我ながら下手くそな小説ですが……』との留保付きでWebに掲載してしまう。当然ながら読者から高い評価は得られず、落ち込んで自分の才能のなさを嘆く……という悪循環に陥ります。
 本文を書く前にきちんとプロットを書き、時間をかけて推敲しておけばこういう事態は避けられます。仮に後で読んで赤面するような物語だったとしても、プロット段階なら大幅に修正するのは簡単ですし『せっかく書いたんだから』という未練も残りません。また筋道の全体像を俯瞰することで、物語に起伏を持たせたり『この話における役割』を脇役に与えて出番を増やしたりすることが可能になります。


4.調子よく書き始めたものの、謎を詰め込みすぎてラストシーンが
  せこくなった。
5.書いてる最中は楽しいが、できあがった小説を読み返してみると
  誰かが既に書いている小説に似てきてしまった。

 これなどは『書き上がってみると面白くない』という例です。執筆技術云々より以前に、筋道そのものに無理があるとなれば『完成したけど満足できない』のは当たり前。『こういう物語が好き』という読者からの感想がくると嬉しくは思うのですが、書いた本人が満足していない場合は『自分は誰のために小説を書いているんだ?』という苦悩に突き当たることになります。
 こういう悩みを持つネット作家をときどき散見しますが、双剣士の答えは単純。『自分が書いてて楽しい物語を、その楽しさが読者に伝わるように書く』のが本道であり、この条件を満たさない物語は没にするか“練習作”の覚悟で執筆すればよいのです。プロットを事前にきちんと作っておけば、その見極めを早い段階で行うことが出来ます。


 以上に示した悪例に心当たりのある方は、今後の当講座に期待してください。


- 以下は関連一覧ツリーです -
★ - 第03章・プロットの組み方 - 双剣士 01/04/29(Sun) 00:04 No.4