ハヤテのごとく! SideStory  RSS2.0

ラブ師匠VS恋愛コーディネーター

初出 2010年01月05日/再公開 2011年03月26日
written by 双剣士 (WebSite)
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************* プロローグ編 第5話(Side−N) *************

「ねぇ! ちょっと待ちなさいって!!」
「なんで追いかけてくるんですかー!!」
「あなたが逃げるからよ!!」
「もぉいいんです、私みたいなのは……知らない街でやきいも片手に朽ち果てていきますから!!」
 それは寒風吹きすさぶ冬の夜のこと。意中の男の子と憧れの生徒会長さんとが同じ家に暮らしていることを知った西沢歩は、大好きな焼き芋を放り出して衝動的に夜の街を駆けていた。だが美貌の生徒会長に追いかけられ、あっさり手を捕まれてしまう。自分がお邪魔虫だと思いこんでいる歩は握られた手の強さに戦慄を走らせた。
《うわわ、どうしよう! ハヤテ君と生徒会長さんが新婚さんっことは、私はおめかけさんってことで……これから慰謝料とか請求されちゃうのかな?》
 バレンタインデーに知り合った桂ヒナギクという少女。自分の知り合いの中では最上位に位置するといって過言でない、お金と美貌と聡明さを併せ持ったスーパーヒロイン。そればかりか歩の勘によれば、綾崎ハヤテという少年はまさに彼女のような頼り甲斐のあるタイプを好みにしているはずだった……知らなかった、身の程知らずも良いところだった、彼女とハヤテ君が既にくっついていたなんて!
「だったら、うちに泊まっていかない?」
「そんな……で、でも……そんなお2人の愛の巣に私なんかが……」
「そういうヒワイな表現は止めてくれる?! だいたい綾崎君のこと本気で好きなら、こんな簡単にあきらめてどうするのよ!」
 そうだ、この人には私の気持ちなんてお見通しなんだった……バレンタインデーでの出会いを思い起こした歩は、かあっと頬に血を上らせた。ダメだ、この人からは逃げられない!
「ハワワワ! ダ、ダメなんじゃないかな? そんなこと本人の目の前で言っちゃうのは!!」
「ああ!! もぉ!! 可愛いわね!!」


 それから少しして。結局その晩を桂家で過ごすことになった歩はじゅうたんに寝ころびながら、拾ってきた子猫を挟んで桂ヒナギクと対峙していた。
「それにしても少し安心しました。桂さんがハヤテ君のこと好きとかではなくて」
「ああ……」
「ハヤテ君って私の勘では、桂さんみたいな人に弱いんですよ」
「え? そ、そうなの?」
 誤解の解けた歩の口はすっかり軽くなっていた。もう自分の気持ちは全部知られてしまってるわけだし、『あんなふうに格好良くなれたら』と憧れていた雲の上の美少女と直接語り合える機会なんて滅多にない。恥じらったり虚勢を張る必要はなにひとつ無いのだ。
「そうですよ!! ハヤテ君って基本的に大人っぽい女の子が好きなんです!! 特に頼り甲斐があって綺麗で優しい人にすぐメロメロになるっていうか……」
「ふーん。でもなんというか……それだけわかってて好きだって言うのはよっぽど好きなのね〜〜」
「ハワワワ!! だ、だからそう言うことストレートに言ってはダメです――!!」
 得意のプロファイリングを披露するも余裕綽々で切り返される。顔を赤くしてモジモジしながら、この人にはとてもかなわないなぁ、と歩は頭の隅で考えた。やっぱり自分なんかとは格が違う。ハヤテ君だって私と桂さんとじゃ、絶対に桂さんを選んじゃうよね……そう落ち込みかけてふと思い当たる。桂さんはハヤテ君のこと、どう思ってるんだろう?
「なんかそんな可愛いところを見せられちゃうと、思わず応援したくなっちゃうわね」
「え? ほ……本当ですか?」
「ええ」
 まるでこっちの想いを見透かしたようなヒナギクの言葉に、西沢歩は心の底から安堵したのだった。そっか、桂さんにとってハヤテ君は恋の対象外ってことか。美男美女だからって両想いになるとは限らないもんね……と。


 こうして桂ヒナギクと知り合って以後。西沢歩の世界は大きく広がり、ハヤテの主人である三千院ナギやヒナギクの学友たちとも交遊を結べる間柄になった。ヒナギクとは下田温泉とかバイト先とかで一緒になったし、これまで偶然に頼るしかなかったハヤテとの交流機会も以前より格段に増えるようになった。恋人として進展しているとはまだ言えないものの、会いたいときにはいつでも会えるし周囲とギクシャクもしていない。これらはすべて桂ヒナギクと知り合ったお陰。焼き芋と子猫の取りなした奇妙な縁を、西沢歩は神さまに感謝したい心境になっていた。
 ところが物事は良いことばかりは続かない。桜の舞う春の季節、夢の中にいるような歩の心境を一気に覚めさせる出来事が起こる。

「私は……ハヤテ君のことが好き」
「…………」

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