ハヤテのごとく! SideStory  RSS2.0

ラブ師匠VS恋愛コーディネーター

初出 2010年01月02日/再公開 2011年03月23日
written by 双剣士 (WebSite)
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************* プロローグ編 第2話(Side−L) *************

「お待たせしました……あら、愛歌さん」
「こんばんは、マリアさん」
 三千院家に赴いた愛歌を出迎えたのは、綾崎ハヤテの推薦状を出してきた張本人。となれば余計な前置きは不要だった。愛歌はにっこりと微笑みながら、制服の懐から白い紙の箱に包まれた生徒証を取り出した。
「おめでとうございます。綾崎君を編入生としてお迎えすることに決まりましたわ」
「合格したんですか! 良かった……良かったです。一時はどうなることかと」
「ま、マリアさん?!」
 喜んでくれるとは思ったものの、ポロポロと泣き出すのは完全に想定外。愛歌はあわててマリアの手を握り、しゃくりあげる同い年の学院OGを落ち着かせた。
「ご、ごめんなさい……ハヤテ君、てっきり合格だと思ってたところに不合格通知を突き付けられて、行方をくらましちゃったんですよ。今みんなで探してる最中で……」
「まぁ……」
「元はと言えば、通知が来る前にはしゃぎ過ぎた私たちが悪かったんですけどね。でもこれで喜びますわ、ハヤテ君もナギも」
 涙をぬぐいながら微笑むマリア。そんな姿を見ていた愛歌の脳裏に、ふと小さな興味が湧いた……天王州アテネ・マリアという伝説の才女たちを入学前からここまで振り回す綾崎ハヤテと言う少年とは、いったいどんな人物なのかと。そして興味の種が生来の悪戯癖へと結びつくのに時間は掛からなかった。
「でも、そんなに落ち込んでるようなら……生徒証を渡したくらいじゃ信じてもらえないかも知れないですね。話がうますぎますもの」
「そ、そうでしょうか……そう言えばハヤテ君、結構クヨクヨ悩むタイプの子だし」
「言葉や物だけじゃなくて、態度で示してあげた方がいいかも……たとえばほら、背中から優しく抱きしめてあげるとか」


 ところが、この夜の愛歌の驚きはそれだけでは終わらなかった。
「……あ、会長?!」
「え、愛歌さん、どうしてここに?」
「それはこっちの台詞です。会長こそどうして」
 いくら人気者で正義感の強い生徒会長とはいえ、桂ヒナギクは政治的工作などとは無縁な“表”の存在のはず。まだ入学もしていない少年のために三千院家の邸宅内を走り回っているなどとは愛歌は想像すらしていなかった。いったいどれだけ驚かせてくれるのだろうか、綾崎ハヤテという少年は?
「お姉ちゃんの付き添いよ。不合格を伝えるの気が重いってお姉ちゃんが言うから、一緒に頭を下げに来たのに……あぁもう、ハヤテ君たら本当に世話が焼けるんだから。ショックなのは分かるけど」
「……ハヤテ君?」
 思わずオウム返しをしてしまう。ヒナギクが男子のことを下の名前で呼ぶ、愛歌にとっては初めて遭遇する場面だった。問い返しの意図を悟ったヒナギクがとっさに手を口に当てる。その頬が赤く染まっているのは冬の寒さのせいだけではあるまい。
「会長、綾崎君のことをご存じだったのですか?」
「え……ま、まぁね。あの人はチャー坊とお姉ちゃんの、命の恩人でもあるし」
「命の恩人って……」
「ご、ごめん、いま彼を探してる最中だから! これで失礼するわね!」
 逃げるようにハヤテ捜索へと戻っていく桂ヒナギク。その背中を追う霞愛歌の瞳に、ふと嗜虐的な炎がともった。これからは退屈せずに済みそうね……そう心の中で呟きながら車へと戻る愛歌の左手には、愛用のジャプニカ弱点帳がしっかりと握られていたのだった。


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