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鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【最終話】
日時: 2019/08/04 08:13
名前: どうふん

当スレッドは本作の最終章となります。
ヒナギクさんと鬼太郎、ハヤテそしてもう一人の未来を描いて締めくくりたいと思います。


                                     どうふん



第一話:鬼の目にナミダ


ヒナギクを引き留めようとする鬼太郎の眼には、まるで戦う時のような必死さが滲み出ていた。言葉が出ないヒナギクをかばうように砂かけババアが前に出た。
「鬼太郎、お前の気持ちはわかっておる。勘違いも」
「か・・・勘違い・・・」呆然とする鬼太郎に砂かけババアは続けた。
「あれはあくまで戦いのことじゃ。どんなに苦しくても逃げることなく一緒に戦う、ということじゃよ。そうじゃな、ヒナギク」
ヒナギクは否定できなかった。西洋妖怪と鬼太郎の抗争に巻き込まれた当初、鬼太郎はにべもなくヒナギクの参戦を拒んだ。「僕には人間の友達ならいる。だが、一緒に戦う仲間なんていない。足手まといなだけだ」
ヒナギクにとっては屈辱的なセリフだった。その鬼太郎の窮地を白桜の剣捌きで救った。「これでも足手まとい?」と尋ねる自分はさぞかしドヤ顔を決めていたことだろう。
その後も勝手に行動を共にすることとなり、ついに「一緒に来てくれ」と言われたことはやっと自分が認められた気がして嬉しかった。
西洋妖怪の侵略に立ち向かう正義の味方として生きるのも悪くない、そう思っていた。
あの言葉がまさか鬼太郎の告白、いやほとんどプロポーズとは気づかなかった。


「そうだったん・・・ですか」ずっと黙っているヒナギクを縋るような目でみていた鬼太郎はがっくりと肩を落とした。「それは・・・そうですよね。済みません、おかしなことを・・・」その後は聞き取れなかった。
鬼太郎は二人に背を向けて歩き出した。とぼとぼと足を進める背中にヒナギクは胸を締め付けられた。(何か声を掛けないと・・・)しかし何と言っていいのか、自分が何を思っているのかさえヒナギクにはわからなかった。
取り繕うように、砂かけババアがヒナギクの肩を叩いた。「済まん。鬼太郎の気持ちもこうなることもわかってはいたんじゃが・・・。とにかく一度人間の世界に戻るがええ。親や友達に会って、そして・・・」
「もういいわ、砂かけババアさん」ヒナギクの声が棘を含んでいた。驚いたように見返してくる砂かけババアを無視して、ヒナギクは歩き出した。わけもなく苛立っていた。
その時初めて気づいた。これはかつてハヤテを相手にしばしば感じていた気持ちだということに。
鬼太郎に苛立ちながら、それ以上に自分自身が歯がゆかった。


そればかりではない。必死になって自分を引き留めようとする鬼太郎の姿が繰り返し蘇ってくる。
かつて自分にできなかったことだった。だが見た覚えがある。そうだ、ハヤテだ。
つい先ほど必死になって自分を人間界に連れ戻そうとするハヤテを前にして心が震えた。まさか、とは思いつつ心臓が高鳴った。こんな自分を、顔をズタズタにされても好きになってくれる人がいるんだ。そして、その人はかつての想い人。その気持ちを受け入れたらどれだけ幸せか、本当にそう思った。
それでも醒めている自分がブレーキをかけた。今の私に一番大切なことはそれではない。

そして鬼太郎もベクトルこそ正反対でも、やっていることは変わらない。そして今、感じていること。嬉しかった。ハヤテに告白された時と同じくらいに。
そればかりではない。胸が苦しいくらいに高鳴っているのだ。


***********************************************************:


妖怪たちの酒盛りは続いていた。
鬼太郎はゲゲゲハウスに寝転んでいた。賑やかな声が虚ろに響いてくる。
西洋妖怪との戦いが始まった当初、日本妖怪とは全く異なる西洋妖怪の戦法や魔法に苦戦が続いた。その時に加勢してくれたのがヒナギクだった。
「足手まといだ」と言っても平然とつきまうヒナギクは、西洋の聖剣を振るい鬼太郎たちを黙らせた。さらに「この戦争が終わるまで一緒に戦う」と言い張った。
「ヒナギク。なんでそこまで・・・」鬼太郎の視界に素敵すぎる笑顔が広がった。「あなたたちが身を挺して女の子を助けているのを見たからよ」全身に痺れるような電流が走った。「体内電気」※を自分でくらったようだった。
 ※全身から電流を流して敵を倒す鬼太郎の必殺技の一つ

こんな人間もいるんだ、と思った。かつて鬼太郎は墓場で生まれてから、多くの人間を助ける一方で、また養われてきた。お世話になったことも再三ある。だが常に一線を引いて親しくなりすぎないよう心掛けていた。
妖怪と人間とは寿命も環境もまるで異なる以上、当然だった。何十年と生きながら、長年に亘る友達などいない。鬼太郎やネコ娘を慕う犬山まなには可能性があるが、それとて大人になったらどうなるかわからない。それで構わない。
ずっと一緒にいてほしい、心から願ったのはヒナギクが初めてだった。それを伝え、受けてもらえたと思って有頂天になった。
二年に亘り戦いが続いた。その間、特に愛情表現やスキンシップがあったわけでもないが、自分自身がそうしたことに疎かった。それ以上に厳しく苦しい戦いの中でそれどころではない、と割り切っていた。
ヒナギクが傍にいてくれる、それだけでどれほど救われたか。楽しかったか。ヒナギクもそうだと信じて疑わなかった。


(全部勘違いだったのか・・・)恥ずかしさと後悔と苦しさで胸が押しつぶされそうだった。改めて自分がどれほどヒナギクを好きなのかを思い知らされた。
それは鬼太郎にとって初めての恋だった。涙が頬を伝っていた。









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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢 ( No.1 )
日時: 2019/08/04 12:43
名前: masa

どうもmasaです。

第三章待ってました。


鬼太郎の言葉は、ヒナギクには逆効果ですよね。とある芸人が「絶対に押すなよ」っと言ってるのと同じ意味になっちゃいますし。
っとはいえ、妖怪ですら死ぬ事もあるのに人間の参入を嫌がるのは納得出来ますが。


鬼太郎の言葉の本当の意味を理解するなんて、相当困難でしょ。お月見している時に「月が綺麗ですね」ってぶつけて「本当はI LOVE YOUなんだよ。理解しろよ」って思ってるのとあんま変わらない気が。

ってかヒナギクも鬼太郎を少なからず意識を!?まあ、2年も同じ過酷な環境に居れば、不思議はないですが。


今回の鬼太郎を見ていると、かつてのナギを思い出しますね。
ハヤテの誘拐の言葉を愛の告白だと勘違いし、そのまま関係がずるずると続いていたんですから。
おまけに勘違いが解けて落ち込む所も。まあ、ナギの方は感情の爆発で王族の庭城への道が開けちゃいましたけど、鬼太郎の方はなさそうですけど。


では。
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢 ( No.2 )
日時: 2019/08/04 22:07
名前: どうふん


masaさんへ


さっそく感想ありがとうございます。
ご期待に応えられるよう最後まで頑張ります。


さて、ご感想について。
人間は普通なら妖怪に歯が立たない存在ですし、鬼太郎が人間を妖怪同士の戦いに巻き込もうとしなかったのは当然なんですが、ちょっと言い方が悪かった。あんな言い草をされて素直に引き下がるヒナギクさんではありません。

鬼太郎のプロポーズは・・・これは確かに曖昧ですよね。かつてハヤテが微妙な言い回しでナギの誤解を招いたのと同様のことを鬼太郎がやらかしていた、というところです。
ただ鬼太郎も恋愛初心者なんですよね。一方のヒナギクさんも大した差があるわけではないし、まあ無理もない、というところでしょうか。

そんなヒナギクさんが鬼太郎をどう思っていたのか。まあ憎からず思っていることは確かのようです。


さて、誤解が解けて今度こそ鬼太郎の気持ちを理解したヒナギクさんは・・・これは次回投稿にて。


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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢 ( No.3 )
日時: 2019/08/08 22:29
名前: どうふん

第二話 : 二人の告白


いつの間にか眠っていたのだろうか。鬼太郎はすぐ横に人の気配を感じた。
「ヒナギク?」そこに座って鬼太郎の顔を覗き込んでいたのはネコ娘だった。
ネコ娘は寂しそうではあったが、限りなく優しい目で鬼太郎の顔を覗き込んでいた。(ヒナギクに似てる・・・)なんでそんな気がしたのか自分でも不思議だった。
「泣いていたのね、鬼太郎」
「あ、ああ・・・。ごめん、みっともないところを・・・」
ネコ娘は首を振った。「みっともなくなんてないわよ、鬼太郎。今のあなたは、私の知る中で一番素敵よ」意味がわからず鬼太郎は首を傾げて、まじまじとネコ娘を見た。
少し顔を赤らめたネコ娘は、顔を背けながら言った。「ヒナギクを引き留めるなら今よ」
白けた気分が胸に広がった。「引き留めたさ。そして振られた」
「本当に?ヒナギクから振られたの?嫌いって言われたの?」
「い、いや、そういうわけでもないけど・・・」あれ?考えてみれば、否定的な言葉はすべて砂かけババアの口から出ていたのではないか。先ほどの会話を最初から思い返してみた。ヒナギクが認めたのは、二年前の告白をそれと気付いていなかったということだけだ。
だとするとまだチャンスはあるのかもしれない。鬼太郎は跳ね起きた。「ありがとう。行ってくるよ、ネコ娘」
ゲゲゲハウスから飛び降りて駆けだした鬼太郎の姿はすぐに見えなくなった。
「立ち直るの・・・早すぎよ・・・」ネコ娘の口から溜息が漏れた。


そこはゲゲゲの森と人間世界の境界線。あと一歩踏み出せば古い祠の横手に出る。
息せき切って辿り着いた鬼太郎の前に、月に照らされた人影が浮かび上がった。
「ヒナギク・・・」
その顔が鬼太郎に向かって微笑みかけた。
「遅かったわね。もう少しで手遅れだったわよ」からかうような優しい響きが胸に浸み込んでくる。
さっきヒナギクと別れてからどれくらい時間が経ったのかはわからない。だが、まどろんでいた時間も含め、もう少し、といいながらヒナギクはずっとここで鬼太郎を待っていてくれたのか。
「じゃ、じゃあ。行かないでくれるのか」声が上ずるのを押さえようがない。
「それはだめ。私は人間なんだから」膨らむだけ膨らんだ期待が萎んでいく。

ヒナギクは言葉を区切り、鬼太郎に向かって一歩、二歩と踏み出した。七歩目で向き合ったヒナギクが腰を落とし、目の高さが同じになった「でもね、すぐに戻ってくるわよ。その後は、あなたと一緒にいてあげる」
「ほ、本当に・・・?」
答えの代わりにヒナギクは右手を差し出した。


この日、間を置かず、ハヤテと鬼太郎、二人に告白された。かつての想い人と最高の戦友に。
その瞬間まで二人の気持ちに気づかなかった。(やっぱり鈍いのかしらね・・・私)
それ以上に自分が愛される、という感度がなかった。
大好きだった両親からは捨てられた。姉もヒナギクの元を去った。これはまだ夢を目指しての旅立ちだから笑顔で見送ることができたが、心の中では泣いていた。想い人は行方不明となった。
自分の好きな人は皆いなくなってしまう。そんな虚無に囚われていたことも、ヒナギクが妖怪の世界に身を投じた一因であろう。顔の半分を焼かれて壊された後は尚更だった。
しかし、二人に告白をされて、本当に嬉しい、と感じることができた。
ハヤテは自分が人間で少女であることを思い出させてくれた。
だがそれ以上に鬼太郎は自分の胸の高鳴りを感じさせてくれた。今、きっと自分は鬼太郎に恋しているのだ。


「ありがとう、ありがとう、ヒナギク」鬼太郎は両手でヒナギクの手を握り締め、ぶんぶんと振った。傍から見れば年の離れた弟の様な鬼太郎だが、中身は自分よりずっと長く生きた大人なのだ。
そして、鬼太郎もまたヒナギクの容貌がどんな時も全く気にせず、常に自分を好きでいてくれたことはわかっている。
だったら自分がこの少年のような姿の妖怪を好きになってもおかしくない。いやむしろこの二年間一緒に過ごし、生死を共にした濃密な時間を考えればそうならない方が不思議とも言える。
ヒナギクの空いている手が伸びて、髪をなぞるように鬼太郎の頭を撫でた。ヒナギクなりの愛情表現であったがこれも一般には年下を可愛がる行為ではあった。


改めてヒナギクは鬼太郎に手を振り、人間世界へと足を踏み出した。
ふと思い出した。顔を傷つけられた時、外見に惑わされることなく愛情を持ち続けてくれたという点ではハヤテも一緒ではなかったか。
ヒナギクは頭を振った。もう終わったことなのだ。そう言い聞かせた。
ちょっと気になることもあった。さっき手を握られて胸の高鳴りを感じてはいても、かつて白皇学院の生徒会長室でハヤテと二人で寄り添うようにして夜景を見たときほどではない。
(鬼太郎の彼女になってできることはせいぜいキスとハグくらいかしらね・・・。それ以上は・・・って、何を考えてるのよ、私は)ヒナギクは赤く染まった顔を振った。
まあ鬼太郎の背格好を考えると無理もないだろう。例えいかほどの純愛であったとしても、おのずと限界というものはある。





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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢 ( No.4 )
日時: 2019/08/09 15:21
名前: masa

どうもmasaです。


猫娘の言葉の意味は「恋愛等を知って成長したから」って意味だと、自分は思ってますね。
なんせ、自分が知っている限り鬼太郎は「恋愛? たぶん良い物じゃない?」位のにぶにぶな面がありますからね。
ま、猫娘からすれば立ち直ってくれない方が良かったかもしれないですね。恋愛って、フラれたりして落ち込んでいる時が一番の落とし時らしいですから。


ヒナギクは鬼太郎への想いを自覚しましたか。これでハヤテの付け入る隙は・・。
まあでも、ヒナギクの中の恋愛天秤は「ハヤテ>鬼太郎」みたいですけどね。それがこれ以上傾かなければハヤテにもチャンスが!?
まあ、それはこの先の展開を待つしかないでしょうけど。


今まで見ていて思ったんですが、

「ヒナギクとハヤテがくっつき、落ち込んだ鬼太郎を猫娘が慰めてそのまま結婚へ」
「ヒナギクと鬼太郎がくっつき、想い人にフラれた者通し慰め合ってハヤテと猫娘が結婚へ」

このどっちかを迎えるのが綺麗な着地の仕方なのかな。何て思っちゃってます。
まあ、勝手な妄想なんですけどね。


では。
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢 ( No.5 )
日時: 2019/08/10 17:25
名前: どうふん

masaさんへ

感想ありがとうございます。

今回のネコ娘についてですが、本人にしてみれば、鬼太郎はいつまで待っても振り向いてくれない。そもそも女の子に興味らしいものを持つことのない唐変木です。そんな鬼太郎がヒナギクを想って泣いている姿は、ネコ娘を動揺させ惚れ直させるに十分だったのではないでしょうか。masaさんのいうとおり、これは人間(?)としての成長に違いないですね。

まあこれがネコ娘にとって良かったのかどうか。確かに今が鬼太郎を落とすチャンスだったかもしれないですが、ネコ娘にしてみれば弱みに付け込むようなマネはできなかったわけです。

ヒナギクさんの想い。それは確かに微妙なところにあります。
そして久々に人間界に戻ったヒナギクさんが見るものは。そしてハヤテは今・・・。これは次回投稿にて。


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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢 ( No.6 )
日時: 2019/08/18 23:04
名前: どうふん

第三話 : 帰還兵の肖像


「もう、全く・・・」案の定、と言えないこともないが、貸し切りとなっている喫茶店「どんぐり」には予想以上の人数が集まっていた。
「それでは、ヒナさんの無事生還を祝して乾杯、とお、言いたいですが。その前に万歳三唱−っ!」西沢歩の声が高らかに響いた。
「ばんざあい、ばんざあい、ばんばんざーい!」ヒナギクにすればその場にいるのが気恥ずかしいくらいの盛り上がりである。
(中国映画でも見たのかしら)余談ながら元祖の古代中国では万歳三唱は「万歳。万歳。万々歳」であった。
だが、恥ずかしくはあっても決して不愉快なものではなかった。自分が戻ってきたことをこれだけ喜んでくれる友達がいる。
そればかりではない。仲間に同じだけの心配を掛けていたということでもある。そんなことさえ気付かなかった。やはり凄惨な戦いに明け暮れる中、余裕を失い、心が荒んでいたのかもしれない。

(戻ってきて良かった・・・。妖怪の仲間になってもやっぱり私は人間なんだ・・・。この世界を救おうと思いながら、こんな素敵なお友達のことをすっかり忘れていた)
それを思い出させてくれたかつての想い人ハヤテの姿は見えなかった。探そうとしたが、会場の喧騒でそれどころではなかった。
この二年間にあったことについて口々に聞かれたが、「世界の平和を守ってきたの」とだけ答えていた。それで十分意味は通じるらしい。
だが、当初の狂騒も一段落すると、あちこちで歓談が始まった。改めてヒナギクはあたりを見回したが、やはりハヤテの姿は見えなかった。
この場にいないのは仕方ないとして、ハヤテは仲間の元にかえってきたのか。ゲゲゲの森で別れる時に、戦いのどさくさできちんと確かめなかったことが悔やまれる。
(と・・・とにかくナギとはきちんと話さないと)ずっと隅の方でちびちびとノンアルコールカクテルを舐めているナギの姿は目に入っていた。

「ハヤテを振ったのか、ヒナギク」歩み寄ってくるヒナギクに気付いたナギは不機嫌な顔を向けた。それは引きこもりだった当時の目つきだった。
「ハヤテ君は帰ってこなかったの?」我ながら間の抜けた質問だと思った。
「訊きたいことがあるのはこっちの方だ。本当は来たくなかったがな。私を妖怪アパートに送り込んだあたりから説明してもらうぞ」
「え、ええ。パーティが終わってからね」確かに今はそれどころではなさそうだった。
「ヒナちゃーん」「ナギちゃーん」後ろから抱き着いてきたのはそれぞれ瀬川泉と歩だった。


パーティが終わり、跡片付けも一段落した。ヒナギクはマスターに頼み、ナギと二人でその場に残ることにした。
ヒナギクの長い話が一段落し、ナギは膨れっ面を変えず横を向いた。
「まあ、お前には感謝すべきなんだろうな」
ヒナギクが一瞬、きょとん、としたのを見逃がさなかった。「私だって他人に感謝することくらい覚えたさ」立ち上がったナギはカウンターまで歩き、コーヒーポットを掴んで二人の手元にあるカップにつぎ足した。「お前のお陰でな」
気まずそうにカップを啜ったヒナギクは、外から聞こえてくる音に気付いた。
いつの間にか雨が降り出していた。


*******************************************************************************************************:


ベンチに寝っ転がって眠っていたハヤテは、顔に落ちてくる水滴に目を覚ました。
雨に濡れずに済む場所は負け犬公園の中にあるが動く気になれなかった。
口を開くと水分が体内に浸み込んできた。水飲み場に行く手間が省けた。
公園のベンチに寝転がって三日が過ぎていた。生存欲求を満たす以外はほとんど動いていない。

しかし当然ながら雨は次第に衣服に浸み込んで全身の素肌を濡らしている。それでも動けなかった。頭が朦朧として立ち上がるのも億劫だった。このまま濡れネズミになって野垂れ死ぬのもありか。自分にはそれがふさわしい・・・。

「ハヤテ様」伊澄が立っていた。和傘を差す伊澄は頭に包帯を巻き、片手で松葉杖を突いてはいたが元気そうに見えた。「ハヤテ様、どうしてこんなところに」
(ああ、そうだった)ハヤテは苦笑した。伊澄に煽られ、期待を背負い勇躍ゲゲゲの森へと向かった自分がこんなところでホームレスになっているとは思わないだろう。
「済みません。伊澄さんには報告しておかなければなりませんでしたね。闘いは終わりましたよ。鬼太郎とヒナギクさんのお陰で勝つことができました。僕は何の役にも・・・」
「何を言ってるんです?ヒナギクさんから聞きましたよ。ハヤテ様に助けられた、と」
いつの間にかヒナギクは伊澄の元に戦勝報告を済ませ、不甲斐なかった自分にも花を持たせてくれたのか。やはりヒナギクはどこまでもヒナギクだった。所詮、自分なんかと釣り合う存在ではない。自然と苦笑いが泣き笑いに変わった。顔がとっくにずぶ濡れになっているのが救いだった。
「それでハヤテ様はこちらの世界に一足先に戻ったと伺いましたが、何でブラジルにおられるんです?」
負け犬公園って地球の裏側にあったのか。突っ込む気力が失せた。ついでに意識も。




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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢 ( No.7 )
日時: 2019/08/18 23:57
名前: masa

どうもmasaです。


妖怪との戦いはやはり過酷でしかないですよね。ヒナギクともあろう人が「自分を慕い、大切に思ってくれている仲間が人間側にもいる」何て当たり前すぎる事を忘れてたんですからね。

まあ、ナギの「パーティーに来る気は無かった」ってのは照れ隠しだと、自分は思ってます。
成長してもナギはナギ。人間の根本は相当な事が無い限りは変わりませんから。

あれ?ナギって素直な所もあったはずじゃ? ヒナギクとはあんまり関係なかったような。まあ、いいか。


さて、一方のハヤテはすっかり落ちぶれてましたね。哀れな程に。 まあ、無理もないですけど。
助けられたってのは、あながち間違ってなかった気が。だって、ハヤテが居なければ「戻って来れない所まで足を踏み入れていた」のはほぼほぼ確実ですし。

伊澄の相変わらずのボケはなんか和みました。そんな場合じゃ無いですけど。


さて。大体で予想は出来ますが、ハヤテがどうなるのか気にしつつも次回を楽しみにしてますね。


(やっぱり、ハヤテと猫娘が結婚するのかも気にはなりますけどね)


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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢 ( No.8 )
日時: 2019/08/19 21:28
名前: どうふん


mssaさんへ


毎度感想ありがとうございます。ご期待に応えられるよう次回も頑張ります。


さて原作においても戦闘シーンが多いヒナギクさんですが、今回の闘いは人間の形をした西洋妖怪を真っ二つにしたり、味方が多数戦死したりと精神的な負担が大きかったと思います。
ましてや、ろくに休む間もなく二年間も続いたわけですから、多かれ少なかれ心がささくれ立つのは仕方ないかと。

ナギについてですが、当人にしてみればやっと心をつかむことができたハヤテをヒナギクさんに一瞬でかっさらわれたわけです。まあ、そこまでは覚悟していたでしょうが、戻ってきたのはヒナギクさんだけで、ハヤテが帰ってこない。一体どうなっているんだ?
かといってハヤテが死んだ、とは思えない。(もしそうならヒナギクさんがこんなパーティに参加するわけないですし)
一方で、ヒナギクさんから受けた恩にも気づいているわけですから、自分自身でも気持ちの整理がつかず、困惑や怒りがあんな態度につながったわけです。

そしてハヤテは、といえばまだ立ち直れない様子です。
ヒナギクさんを「助けた」という点、masaさんの言う通りなんですが、自分では気付いておりません。
そんなハヤテと周囲の絡みについては次回投稿にて。


                                                    どうふん

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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢 ( No.9 )
日時: 2019/08/22 21:43
名前: どうふん



第4話 : もう一度見た夢


体が熱い。熱があるみたいだ・・・。だが、その体は柔らかな布団に包まれていた。
そうだ僕は伊澄さんに会って・・・また、助けられたのか。頭だけ動かして周りを見た。いつの間にか明るくなっていた。灯りではなく、朝日ですらなく、真昼の日差しだった。
すぐ横に見える人影が動いた。
「ああ・・・済みません、伊澄さん」え・・・、そこに座っていたのはヒナギクだった。
今度こそハヤテは跳ね起きた。
眼を擦った。ヒナギクに紛れもなかった。髪は短いままだったが顔のヤケドは跡形もなかった。
一体、どれが夢なんだ?ゲゲゲの森に向かったことか、負け犬公園で伊澄に会ったことか、それとも今現在か。

だが、すぐに気づいた。どれも夢ではない。ゲゲゲの森で不甲斐なかったことも、負け犬公園でホームレスになっていたことも、そして目の前に美しいヒナギクがいることも。
「やけど・・・治ったんですね」ヒナギクが頷いた。「良かった・・・僕に言えるのはそれだけです」
ヒナギクは一度口を開きかけたが、ハヤテの表情を見て思いとどまった。
言えるのはそれだけ・・・そう言ったばかりのハヤテの口がふたたび開き、堰を切ったようにまくしたてた。
「どうして・・・ここにいるんです?ヒナギクさんは森に残ったんじゃないですか」
「こんな僕の姿を見て、何か面白いんですか」
「罪悪感なら感じることはないですよ。ヒナギクさんを好きになるなんて僕が身の程知らずだっただけですから」

辻褄もへったくれもない。まだ熱の残った頭はヒナギクを詰問しているようで、ただただ自分に罵声を浴びせていた。だが、それも一段落して下を向いた。その後に絞り出すような声が続いた。
「どうして僕じゃ駄目なんですか・・・。あんな小学生みたいな子供の方がいいんですか」
パチン、と頬が鳴った。
「私の彼氏の悪口は許さないわよ」
顔に痛みは感じなかった。ただ心臓がきりきりと痛んだ。悲しいのか、悔しいのか、妬ましいのか。それさえわからない。ただやっと気づいた。今の自分がどれだけ見苦しいか。こらえることができず、泣き声が漏れた。
「済みません・・・ヒナギクさん。こんな情けないヤツ、愛想尽かされて当然ですよね・・・」
「ハヤテ君・・・それは私のことを言ってるの?私だってね、ハヤテ君に告白された時、動けなくなって泣いたのよ」言葉に詰まった。
「どうして戻ってきたのか、訊かれてたわね。お答えするわ」
そんなこと訊いたっけ・・・。それがどうした。考えてみれば当たり前じゃないか。そもそも戦いが終わったら帰ってきてほしい、と言ったのは自分じゃないか・・・。だが、その答えはハヤテの意表を突いた。
「ハヤテ君にお礼が言いたかったからよ」呆気にとられたハヤテにヒナギクは続けた。
「私は世界の危機を知って、それを防ごうと思ったの。ヒーローとして生きようとして死ぬことだって覚悟した。女の子であることなんか忘れよう、友達ともう会えなくてもいい・・・。
だけどハヤテ君が助けに来てくれて、私のこと好きだって言ってくれたわね。心が荒んで顔までズタズタにされた私に。本当に・・・嬉しかったの」

とてもそんな風には見えなかったが・・・。だが、最後にヒナギクを抱きしめたときのことを思い出した。やはりヒナギクは人間で普通の女の子だった。そう感じたことは間違いではなかったという事か。
「大切なことを思い出させてくれたのはハヤテ君よ。だから自分の行く道が決まったの。私は妖怪たちの仲間になってもあくまで人として生きる。あなたたちの友達としてね。本当にありがとう」
あなたたち・・・友達として・・・。今更ながら沈み込むような感覚があった。だがヒナギクの瞳は果てしなく優しい光に満ちていた。
ヒナギクが一緒に歩むことを選んだのは妖怪だった。鬼だった。もう受け入れてもらえることはない。だが、ヒナギクはあくまで人として生きていく。そのきっかけを作ることができた。
凍り付いているような心が溶けていくのを感じ、ほんの少しだけ、体に力が湧いた。
ヒナギクは立ち上がった。その背中にハヤテは叫んだ。
「僕こそ・・・ありがとうございます。ヒナギクさんを好きになって良かった。あなたが傷ついた時もずっと好きでいられて良かった」
「私もよ。ハヤテ君を好きになって、好きになってもらって本当に良かった」振り向いたヒナギクがもう一度笑顔を見せてくれた。
その笑顔が襖の向こうに消えた後も、ハヤテはずっと同じ場所を見詰めていた。


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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第4話】 ( No.10 )
日時: 2019/08/22 23:27
名前: masa

どうもmasaです。


やっぱり、ハヤテは伊澄に助けられてましたか。
まあ、伊澄もハヤテが好きだった時期があるので当然と言えば当然ですけど。


ハヤテが荒れちゃうのは仕方ないと言えば、仕方ないですよね。
好きな人を助けに行ったのに何も出来ず、おまけにその人の心は既に盗まれた後。荒れない方が尋常ならざるほどに心が強いですよね。それか尋常じゃない程に心が冷たいか。


前回も言ったような気がしますが、ハヤテは「人としての心を取り戻させ、人に戻れる道を指示した」ですよね?だからこそ、ヒナギクの決断につながる訳ですし。

これは自分の勝手な判断ですが、若しかしたら、ハヤテが来なければヒナギクは「自分は妖怪として生きる」何て決断をした可能性が無くは無い気がします。
たぶんですけど、鬼太郎が蒲鉾にされた回で出て来た妖怪病院に頼めば出来ると思いますし、鬼太郎も若しかしたら反対しなかった可能性もありますし。

まあでも、ヒナギクの彼氏発言は驚きしかありませんでしたが。


結局、ハヤテとヒナギクはくっ付かないで終わりそうですね。今回の話を見る限りじゃ。
って事は、ハヤテと猫娘が・・。


では。
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第4話】 ( No.11 )
日時: 2019/08/24 05:46
名前: どうふん


mssaさんへ


まいど感想ありがとうございます。

さて、伊澄はなぜハヤテが意識を失ったのかも気づいていないでしょう。とはいえ、ここでハヤテを見捨てる伊澄さんではありません。


ハヤテが理屈もへったくれもなくなっているとはいえ、これはヒナギクさんへの愛情の裏返し、とも言えるでしょう。自己嫌悪と僻みのようなネガティブな感情が噴出してきたんだろうと。

そんなハヤテですが、ヒナギクさんが戦いにのめりこんで周りが見えなくなっているとき、ヒナギクさんへ必死になって気持ちを伝えようとしました。それがヒナギクさんをこちらの世界に戻すきっかけを作ることになったと言えるでしょう。
そのことにようやく気付いたからこそ、ハヤテは少しだけですが気持ちを持ち直すことができたわけです。

そして、ヒナギクさんが「自分は妖怪として生きる」可能性もついて。う・・・ん、そこまで行くか…。せいぜい「妖怪の仲間として・・・」とは思うのですが、確かにありえますね。
妖怪を人間に変える妖怪病院なら恐らく可能でしょうし、鬼太郎や砂かけババアが反対しても、ヒナギクさんはこうと思い込んだらそこまで突っ走る可能性も・・・。改めてハヤテをほめてやりたい。


ヒナギクさんの「彼氏発言」について。ハヤテには衝撃だったでしょう。残酷だったのも確かです。しかしハヤテを傷つけるのが目的だったわけではなく、ヒナギクさんなりの思惑があります。そのあたりについては次回かその次あたりに。


                                                                                どうふん




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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第4話】 ( No.12 )
日時: 2019/08/25 18:38
名前: どうふん



第五話 : 回帰する場所


まだ体はふらふらする。ちょっと熱はああるかもしれない。だが、この程度ならどうってことはない。もうナギの元には戻れないが、また一からやり直そう。身づくろいして部屋を出ようとしたハヤテだが、入ってきた伊澄に止められた。
「ハヤテ様。まだ体は治っておりませんよ。まずお食事だけでも済ませて下さい。栄養を摂らないとまた倒れますよ」確かに・・・言われてみれば今まで気づかなかったのが不思議なくらいの空腹感だった。


おひとり膳で部屋まで運ばれてきた料理は美味しかった。久々のまともな食事が体に浸み込んでいく。メニューも味付けも特段凝ったものではなかったが、ゆっくりと味わっていると心が落ち着いていくのを感じた。
「どうですか、ハヤテ様」
「すごく美味しいです」
「それはどのように美味しいのですか」首を傾げながらもハヤテは答えを探した。「え、そうですねえ。すごく基本ができていて・・・」
「そんなことを訊いているのではありません。もっと端的に感じたことを教えてください」
「は、はあ・・・。なんか・・・懐かしいというか、心が落ち着いて安心できると言いますか・・・」
伊澄の眼が責めるような色をした。「そこまでわかっていながら、なんで気付かないんですか?」
あっと気付いた。これは・・・この料理を作った人は。箸を取り落した。「ナギさん」

「やっと気づいたか。遅い遅い」
襖を開けて入ってきたのはナギだった。ほんの数日とはいえ、一緒に過ごしているときに何度も食べる機会がありながら、ヒナギクが行方不明になり、じっくりと意識して味わうことはできなかった。それでも何となく舌が覚えていたらしい。
「あ・・・あの・・・。なんでナギさんがここに・・・」
「こっちが訊くことだろう。なんで私たちの家へ帰ってこなかった。まさか負け犬公園に倒れているとは思わなかったぞ」冷や水を頭からぶっ掛けられたような気がして俯いた。針の筵に座っていた。
「話はあとだ。私も食べることにする」
三人で向き合い、黙々と箸を動かした。気まずくて仕方ないが、一度火のついた飢餓感は次々と皿を空にした。
「もういいのか。まだお代わりはあるぞ」
「いえ・・・もう十分です」
「さて・・・と」ナギが改まるのが見え、ハヤテの背中に緊張が走った。言いにくいことだが言わなきゃいけない。「あの・・・ですね。ナギさん・・・」
「何も言わなくていい。全てヒナギクから聞いた。お前に救われたそうだ」
「ヒナギクさんが・・・」
「ここに私を呼んだのもヒナギクだ」
ハヤテは伊澄を見ると、伊澄は気まずそうに目を反らした。伊澄がヒナギクに、ヒナギクがナギに伝えたということか。

(でも、なんでヒナギクさんがナギさんに・・・)
「ヒナギクに頼まれた。昔好きだった人を宜しくお願いします、ってな」
そうだった。ヒナギクにとっての過去であり、自分にとっても一度は過去になりかけた物語だった。
それでもナギにとってだけは現在だった。初めて会った時から、別々に暮らした時を経て今の今まで惑うことなくずっと自分のことだけを想っていてくれた。

だが、それだからこそ、自分にそこまで愛される資格なんかない・・・そう思わざるを得ない。今回のことだって、ナギにしてみれば浮気されたようなものだろう。それさえ許してもらえるというのか。今さらながら自分の情けなさが身に染みた。
「済みません、ナギさん・・・。やっぱり無理です。僕はあなたを・・・」
「ギリシャでもそうだったじゃないか。お前が昔好きだった人を見捨てることができず、前に進むことができなかった」ナギの両手が伸びてハヤテの手を握り締めた。その瞳がハヤテには眩しすぎた。
「お前は世界を救うヒーローじゃなかったかもしれない。だけど、その時も・・・そして今はヒナギクを助けることはできたんだ。今度は私を守ってくれ。これからもずっと。それで十分だよ」
心が初めて揺らいでいた。あのギリシャの時と同じ・・・。そう考えてもいいのだろうか。そして今、ナギの元に帰ってこれた・・・。
ダメだ、虫が良すぎる。やはり・・・しばらく旅に出よう。しばらくは一人で自分の気持ちを整理して・・・。

「ハヤテ、ここにいたのか」前触れもなく駆けこんできたのは瀬川虎徹だった。今はハヤテと組んでベンチャー事業を営んでいる。
「熱があるのか、ハヤテ。だったら服を脱げ。俺が温めてやる」息せき切って服を脱ぎだす虎徹は、ハヤテの鉄拳に吹き飛ばされ、襖を突き破り庭の池に頭から飛び込んでいた。
「そこで頭を冷やせ」それでもずぶ濡れになって這い上がってきた虎徹はハヤテに縋るような目を向けていた。その場の緊張感も盛り上がりも一瞬にして消え去り、失笑と苦笑だけが残った。
「いつまで休んでいるんだ、ハヤテ。クライアントがお怒りだぞ」
「わかった。すぐ行くよ。ナギさん、夜には家に戻ります。お話の続きは後で改めて」
「ま、まて、ハヤテ。お前、熱は」
「お陰様で下がったみたいです」
「そ、それは俺のお陰ってことだよな」褒めて褒めて・・・と言いたげにすり寄ってくる濡れネズミの頭をハヤテは撫でた。
「はいはい。いい子いい子」これだけで幸せいっぱいの顔をしている虎徹をナギは眺めて」いた。
(まさかとは思うが・・・私の愛情なんて、こいつの変態行為にも及ばないのか・・・)
余り穏やかでないことが頭をかすめるが、何とも言えない笑いがこみあげてくることも確かであった。


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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第5話】 ( No.13 )
日時: 2019/08/25 20:39
名前: masa

どうもmasaです。


ナギからすれば「妖怪との一件が片付けば結果はどうあれ帰ってくる」って思っていたはずですから、ハヤテを責めるのは当然ですよね。
まあ、あの状況下じゃ料理の美味しさは半分位になる気が。まあ、いいか。

あ、そうそう。「ナギの作る料理は懐かしい味がする」って言うのは自分が連載していた小説にも出した話ですが、偶々似ただけとは言えなんか嬉しかったです。


ナギの行動は流石と言うべきですね。アテネとの一件で立ち止まってしまったハヤテの背中を押し、正しい道に進ませた時と言い、今回と言い。要所要所で良い仕事しますね。


まあでも、虎鉄は色んな意味で何かをしてくれちゃいましたね。あのままじゃナギも伊澄も止めたのにどこかに行っちゃったでしょうし。

大丈夫だよ、ナギ。ナギの愛情は伝わったって。虎鉄に対しては「呆れと殺意が湧いただけ。それ以上でもそれ以下でもない」ってだけだし。


さて、今回のお話を見ていると、「ナギVS猫娘。ヒナギクへの未練を多少は残すハヤテの心を盗み取るのはどっちだ!?」何てタイトル(○○編ともいう)がついて色々と始まりそうですね。


では。
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第5話】 ( No.14 )
日時: 2019/08/26 21:18
名前: どうふん


masaさんへ


感想ありがとうございます。

さて、「もうナギに合わせる顔がない」と思い込んでいるハヤテにしてみれば、当の本人がそこにいたわけですから、慌てふためいたことは言うまでもありません。
その後は料理の味がしなかったでしょうね。それこそせいぜい半分くらいしか。

ナギの作る料理があまり食する機会がなかったにも拘わらず「懐かしい味がする」というのは推定年齢数百〜千年の妖怪から手取り足取り教わったからだと思います。付け加えるとハヤテはゲゲゲの森にいるとき、ナギの師匠である砂かけババアの料理も食べたでしょうし。
masaさんがどういうイメージで私と同じ設定にされたのかは興味ありますね。


>ナギの行動は流石と言うべきですね。アテネとの一件で立ち止まってしまったハヤテの背中を押し、正しい道に進ませた時と言い、今回と言い。要所要所で良い仕事しますね。
⇒ やはりいいキャラだと思いますよ。原作のヒロインですし、一度はハヤテの心をつかんだわけですから、今度こそ幸せをつかんだと信じたいですね。


>まあでも、虎鉄は色んな意味で何かをしてくれちゃいましたね。あのままじゃナギも伊澄も止めたのにどこかに行っちゃったでしょうし。
⇒ 雰囲気をぶち壊したわけですから、何かをしたことは間違いないでしょう。それが偶々いい方向に働いた、ということですね。結果的にナギやハヤテにとっても。しかし、「熱がある」から「あっためる」とはどういう思考なのやら。
それにしても、原作ハヤテはどういういきさつで虎徹をパートナーにしたのか。自分から誘ったとは思えませんので、拙作と同じような状況があったのではないか、と思うのですが。


>大丈夫だよ、ナギ。ナギの愛情は伝わったって。虎鉄に対しては「呆れと殺意が湧いただけ。それ以上でもそれ以下でもない」ってだけだし。
⇒これはナギから、
「そ、そうだよな。きっとそうだよな。だけど・・・あいつが羨ましくなるときもあるんだよ」

                                              どうふん
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第5話】 ( No.15 )
日時: 2019/08/31 07:08
名前: どうふん


第6話 : ゲゲゲの森へと



「あれだけお膳立てしてあげたんだから・・・後は何とかなったかしら」そんなことを思い浮かべたヒナギクは足を止めて苦笑した。
自他ともに認める恋愛音痴で、ハヤテと実は両想いであったということすら気づかずに空回りを続けていた自分が、今になってナギとハヤテをなんとかくっつけようと手を砕いている。

伊澄から連絡を受けたヒナギクはハヤテの看病を手伝い、あえてハヤテを突き放した。あの時のハヤテの顔を思い出すとまだ胸がちくりと痛む。
気持ちを奮い立たせてナギを呼び、状況と自分の気持ちを伝えた。
「それで・・・いいのか」アンビバレンスな感情そのままに顔を歪めるナギに笑顔で応えた。ちょっとぎこちなかったかもしれないが。

ハヤテ君に告らせたい・・・。そんな想いをずっと抱いていた。ただ想うばかりでは駄目だということにようやく気付きながら結局何もできなかった。自分が好きになった人はみんないなくなってしまう・・・幼いころ両親に捨てられた苦しみにいつも縛られていたから。だがそれも言い訳に過ぎなかった。
しかしハヤテのお陰で自分は恋することを知り、それは想像もできなかった形で叶うことになった。
ハヤテを振ったのはちょっと惜しい気もする。だが今となっては思い出の一頁でしかないはずだ。
「ハヤテ君、ナギ・・・幸せになってね」
そして私も・・・。もう駆け引きも逃げもしない。私にも幸せになる権利はある。それを求めよう。
ヒナギクは再びゲゲゲの森に向かって歩き出した。


あの祠が見えてきた。ここから先は妖怪の世界。そして私はそちらの住人になる。自分の意志で。
あくまで半分だけだ。人間界と縁を切ることはない。両親にも今までのことを説明した。理解を得た、とは言い難いが自分の選んだ道を認めてくれた。友人とも旧交を復することができた。

鬼太郎の顔が頭に浮かんだ。
なぜ鬼太郎に心魅かれたのか自分でもうまくは説明できない。長い間、共に戦い共に過ごした日々で情が沸いたというのは確かだろう。だがそれだけとは思えない。
鬼太郎は人間ではない。ただ人間として人を思い遣る心なら誰より強く持っていた。
ちょっと残念なことに二人で並んだら恋人同士には見えないだろう。しかし見た目はコドモでも自分よりずっと長く生きている。
世界を守る本物のヒーロー。その一方で、どこか抜けていていわゆる雑魚妖怪やネズミ男に足元を掬われる。自分がついていないと・・・という危なっかしさを多分に持っている。
そんな鬼太郎を選んだのは決して間違いではないはずだ。
ヒナギクは心に決めていることがあった。今度鬼太郎に会ったその時は・・・。


ゲゲゲの森へと足を踏み入れた。その先に鬼太郎が立っていた。
「お帰り、ヒナギク」満面の笑顔と共に、鬼太郎が両手を広げた。その姿を見て、どきんと胸が高鳴った。少年の姿に変わりはないが、自分なりに一生懸命、彼氏の役割を果たそうとしている。その姿が何とも健気で可愛かった。だが、外見上はお姉さんの立場がある。駆け寄りたい衝動を抑え、ゆっくりと歩み寄ったヒナギクは鬼太郎より大きく手を広げて、鬼太郎を包み込んだ。
「ただいま、鬼太郎」鬼太郎の頭が胸の辺りにあった。子供のような体が何よりも温かく感じた。
ヒナギクは腕を緩めた。もうしばらく抱き合っていたかったらしい鬼太郎が、ん、とヒナギクの顔を見上げた。ヒナギクはちょっとぎこちない笑顔を浮かべて膝を落とし、唇でそっと鬼太郎の額に触れた。
「え、え」何をされたのか理解できない鬼太郎があたふたしている。その眼があちらこちらへ泳いでいた。
(やっぱり私の方がお姉さんだ・・・)少なくとも恋愛に関しては。顔を赤らめていたヒナギクにちょっと余裕が生まれた。
「鬼太郎、知ってる?本当に好きな人同士はね・・・こうするのよ」
鬼太郎の目が改めて近づいてくるヒナギクの顔を見上げた。あう、あう・・・と喘ぐような音を発する鬼太郎の口元に、ヒナギクの唇が重なった。



鬼太郎の体にいきなり力が籠り、ヒナギクは振り払われた。
「な、何をするのよ、鬼太郎」甘い雰囲気が一瞬にして吹き飛び、倒れこんだヒナギクは呆然としている。
だが、そこにはさらにヒナギクを愕然とさせる景色が広がっていた。
鬼太郎が両腕で自分の胸を抱き、苦悶の表情を浮かべている。その口からはうめき声が漏れていた。
鬼太郎が地面に倒れた。その体がけいれんするように震えている。
ヒナギクは鬼太郎に駆け寄ろうとしたが、金縛りになったように動けなかった。

黒い記憶が閃くように脳裏に走った。好きになった人はみんな自分の前から消えていく・・・。
両親、姉、ハヤテ・・・。
(まさか鬼太郎も・・・。鬼太郎までも・・・私の前からいなくなっちゃうの)
ヒナギクの絶叫が森に響いた。




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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第6話】 ( No.16 )
日時: 2019/08/31 13:01
名前: masa

どうもmasaです。


ヒナギクの彼氏発言にはそういう意図があったんですね。
まあでも、ハヤテとナギがくっつく可能性は皆無に等しいと思いますけどね。

っとはいえ、「幸せになれる権利」は誰であっても持ってると思いますけどね。
それを手に入れるか手放すかは、その人次第ですけどね。


ヒナギクの気持ちは分からなくはないですが、鬼太郎は「世界を守る本物のヒーロー」って感じはしないですよね。
基本的に積極的に人間と係わろうとはしませんし、場合によっては妖怪からの被害を見放す場面もあった気がしますし。


鬼太郎に何が!?
まあでも、某海賊女帝と似た症状な気がしますし、きっとそれな気が。違うとも思いますし。
それに関しては次回以降って事ですかね。



因みに、ナギの料理に関しては、自分の小説では触れましたが、「プロの味は無理だからおふくろの味を目指したらどうか?」っと言うアドバイスを受けて実践したら「誰もが懐かしいと感じる味になった」ってのが設定理由です。
似てても細かい所は違いますね。


では。
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第6話】 ( No.17 )
日時: 2019/09/01 07:08
名前: どうふん


masaさんへ


感想ありがとうございます。


ヒナギクさんの意図について。
ヒナギクさんにすれば、今までナギやハヤテをいろいろとサポートしたり、助けられたりで情が移っていたと思います。この二人を何とかしてあげたい、とは当然思うでしょう。まして一度は想い合った二人ですし、自分がはっきりと身を引けばきっとうまくいくはずだと、信じていたでしょうね。


さて、鬼太郎ですが、シリーズ全般を眺めると結構負けていて、仲間はもちろんのこと奇跡的な強運や偶然性に救われるところは、初期のキン〇マンにも似ています。
そればかりか、人助けはしても深入りはしない。「忠告はしましたよ」「約束は守るべきだ」こうしたセリフは第6期の鬼太郎のスタンスを良く表しています。
その一方で、最近のタイタンボウや地獄送りの巻ではかなり手の込んだやり方で人を救っています。人間と接する機会が増えて次第に丸くなってきたのかな・・・。
評価の難しいところではありますが、妖怪大戦争では「世界を救った本物のヒーロー」にふさわしい活躍でしたし、それを目の当たりにしているヒナギクさんの主観ではそうなるんでしょう。
ついでに言えば、ヒナギクさんはそれほどドライにはなれないでしょうから、ヒナギクさんが一緒であれば、それに巻き込まれる形で鬼太郎もスタンスを変えざるを得ないのではないか、とは思います。


鬼太郎の急変についてですが、「某海賊女帝に似た症状」。ワ〇ピースのことかと推察しますが、済みません。見ておりませんのでコメントできません。まあ、とにかく次回投稿にて、ということで・・・ご容赦。


あと、masaさんが、ナギの料理にどういうイメージや意図をもっておられるのかは拝見しました。


                                                       どうふん

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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第6話】 ( No.18 )
日時: 2019/09/05 21:25
名前: どうふん



第7話: メモタルフォーゼ


「き・・・鬼太郎、しっかりせえ」
「何じゃ。何がどうした」まだ体が動かないヒナギクに代わり、駆け寄ってきたのは砂かけババアと子泣きジジイだった。
二人がかりで鬼太郎を抱き起し、砂かけババアが鬼太郎の髪を持ち上げて顔を覗き込んだ。
二人の口から驚愕の叫び声が飛び出した。
(ま・・・まさか・・・鬼太郎)よろよろと体を懸命に引きずるようにして鬼太郎に近づいたヒナギクも悲鳴を上げた。鬼太郎の姿が変わっている。髪と腕に隠れた顔は見えなかったが、手足といい身長といい、少年ではなく大人のものとなっていた。
「砂かけババアさん、これは一体・・・」
「わ・・・わからん・・・。じゃが、これは・・・この鬼太郎は・・・これは鬼太郎の父親じゃ」
ヒナギクは混乱した。父親とは目玉おやじのことか。

「正確には父親の生前の姿というべきじゃな」確かに聞いたことがある。目玉おやじは、肉体が滅びる寸前、病で包帯塗れになっていたそうだが、元々は「男前だったのじゃよ」と茶碗風呂に浸かりながら自慢していた。正直なところホラ話と思っていたが。
「で、でも何で・・・。何で鬼太郎がおやじさんに?」子泣きジジイも砂かけババアも首を捻った。
「と・・・とにかく鬼太郎をゲゲゲハウスに運ぼう。おやじなら何かわかるかもしれん」ぬりかべが現れてまだ体をけいれんさせている鬼太郎を担ぎ上げた。
乱れた髪の間から鬼太郎の横顔がちらりと覗き、ヒナギクの胸が鳴った。今の鬼太郎は美青年・・・いわゆるイケメン男子であった。


やはり外傷はない。しかし意識が戻らない鬼太郎を前に、目玉おやじは腕を組んで考え込んでいた。その周りには鬼太郎ファミリーが勢ぞろいしている。
「ヒナギクさん、思い当たる節はないかね。何か変わったことなど」
「な・・・何も・・・」心当たりがないでもないが、まさかねえ・・・との思いが強い。第一他人に話せるようなことではない。
「鬼太郎はわしら幽霊族の末裔の赤ん坊として生まれ、人に養われて少年に育った。じゃがその後は・・・」

鬼太郎はのびのびと子供らしい夢を持つこともなく年を重ねた。そして年相応の分別を身に着け大人びた少年とはなったが、思春期すらなく恋することも知らなかった。ずっと鬼太郎の面倒を見ていた目玉おやじにもこれだけは与えることはできなかった。無理に恋愛ゲームをやらせたこともあるが、鬼太郎を睡眠不足にしただけだった。

ずっと罪悪感に苛まれていた。自分がこんな姿になっていなければ鬼太郎にまっとうな子供時代を送らせてやれたかもしれない。少年のまま成長せずにずっと生き続けることはなかったはずだった。
「だとすると、鬼太郎はヒナギクさんを好きになって、成長期に欠けていたものを得ることができたのかもしれんのう」
「た、確かに鬼太郎の年齢ならとっくに今の姿になっていても不思議はない。今までずっと封じ込められていたものが噴出した、ということじゃろうか」
「それで・・・一気に青年鬼太郎になったんかいね。確かに若い頃のおやじさんそっくりばあい」砂かけババアと一反もめんが顔を見合わせた。
「しかしあれだけ固く封じられていたものが解かれるからには何かきっかけがあったはずじゃ。ヒナギク、思い当たることは本当にないのかね」
「あ・・・あるわけないでしょ」子泣きジジイに顔を向けられたヒナギクは憤然と立ち上がり、急ぎ足でゲゲゲハウスから出て行ったが、その顔は明らかに真っ赤に染まっていた。
「こりゃ何か・・・絶対にあったな」ネズミ男の無神経な声が響き、そこにいた全員の目が覗うように一方を向いた。ずっと沈黙しているネコ娘が俯いていた。


いつの間にかゲゲゲハウスから遠く離れていることにヒナギクは気付いた。まだ心臓がバクバクと鳴っている。まさかとは思う。だがそれ以外に思い当たる節はない。
(私がキスしたから鬼太郎に掛かっていた魔法が解けた・・・そういう事かしら)
魔法というより呪いか封印か、そのあたりは定かでないが、こうした現象は西洋のおとぎ話ばかりではない・・・らしい。
それは喜ぶべきなのだろうが・・・。今まで心のどこかに意識していた鬼太郎の姿。弟のような少年に自分からキスすることも特段抵抗なかった。だが、自分と同じくらいに成長した姿を見ると、急に気恥ずかしさが押し寄せてきた。
「うう・・・、鬼太郎は覚えているのかしら。今度どんな顔して会ったら・・・」顔を覆った両手の隙間から声が洩れていた。

「決まっているじゃないか。今のままだよ」はっと見上げた先に鬼太郎がいた。少年鬼太郎の面影を残した美青年。見た目、自分より少し上くらい。
まっすぐにヒナギクを見詰めて近づいてくる。それだけで全身に痺れるような衝動が走った。
鬼太郎がすぐ目の前に立った。「さ、その手を顔から離してくれ。僕にしっかりと見せてくれ」
今度こそ本当に魔法にかけられたようにヒナギクの両手が顔から離れた。
その腰に腕が回ってくるのを感じた。あっと思う間もなく唇を奪われていた。
心臓を破裂せんばかりに高鳴らせているヒナギクの髪を鬼太郎の掌が優しくなでた。その手は肩のあたりで止まった。
(そうだ、また髪を伸ばさなきゃ・・・)


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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第6話】 ( No.19 )
日時: 2019/09/05 21:56
名前: masa

どうもmasaです。


成程、鬼太郎が苦しんだのは「急激な成長期」のせいだったんですね。
実際、某名探偵も「本来の姿」になる時も「子供の姿」になってしまう時も猛烈に苦しそうですもんね(実際、「苦しみ方が尋常じゃない」何て言われる位ですし)。


まあ、確かに「何かあったか?」っと聞かれて馬鹿正直に答えられる女性はいませんよね。
ハヤテだったら「え!?キスしただけですけど。 それが何か?」みたいな鈍感を発揮して答えてたでしょうけど。

まあ確かに、今期の鬼太郎で出て来た「目玉親父の本来の姿」はかっこいいですもんね。
今迄は「描かれても死の直前のミイラ男の様な醜い姿」でしたし。鬼太郎が父親そっくりに成長しても、不思議でも何でもないですよね。


鬼太郎は「逆白雪姫」ですね。お姫様のキスによって呪いが解け、目覚める事が出来た。ですから。
まあ、普通に考えれば「本当の恋を知り、本当の成長を遂げる事が出来た。つまり、本当の意味で大人になれた」って理由で急成長したんでしょうね。間違ってたらすみません。


さて、お互いに本当の意味で意識し合った鬼太郎とヒナギクがどうなっていくか、楽しみにしてますね。
(しつこいようですが、ハヤテと猫娘が恋愛からの結婚になるかも)


因みに、「某海賊女帝」に関しては、詳しい事は長くなるので省きますが

主人公がその海賊女帝が皇帝として君臨している女性だけの島に飛ばされ、色々あって仲間達との約束の地に送って貰える事になったが、その海賊女帝が病にかかり、診てみたら「恋煩い」だった。歴代皇帝はそれで何人も死んでいる。

っと言う話があったので、「鬼太郎も恋煩いに罹って苦しんでいるだけかな?」って思ったので感想で書いたんです。   まあ、間違ってましたけどね。


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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第7話】 ( No.20 )
日時: 2019/09/06 22:03
名前: どうふん


masaさんへ


感想ありがとうございます。
それともう一つ。第6期アニメの鬼太郎に詳しい方がここにどれだけいるのかはわかりませんが、丁寧に解説を加えてくれてありがとうございます。いや、ホント気恥ずかしいくらいです。


さて、鬼太郎は自分でも予期しなかったメモタルフォーゼで手足や身長がいきなり引き伸ばされたわけですからこれは苦しいだろう、と。
名探偵コ〇ンにしても同様でしょう。

そんな鬼太郎が青年になった時、どんな姿になるのか。これはmasaさんの指摘通り、アニメの目玉おやじが鬼太郎を守るために生前の姿に戻った時をイメージしてます。あの時の目玉おやじの嘆きや苦悩には胸を打たれるものがあったなあ・・・。
もともと鬼太郎は子供までは普通の人間並みのスピードで育ったはずですから、そこで成長がストップしてしまったのは何か余程の力が働いたはずだと思います。

西洋の「白雪姫」や「眠りの森の美女」はキスされ目を覚まして、その後で王子様と恋に落ちるストーリーです。本作における私のイメージは「美女と野獣」です。まずは好きな人から愛される、という前提があって魔法が解けたわけで、キスはそのきっかけです。これもご指摘の通りです。
実際に鬼太郎が好きでもない女の子にキスされたとしても、たぶん何事も起こらないでしょう。

そしてネコ娘についてですが、これは次回投稿にて。

海賊女帝については、丁寧にありがとうございます。なるほどそういうことでしたか。残念ですがこれはちょっと違いましたね。


                                              どうふん
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第7話】 ( No.21 )
日時: 2019/09/11 22:08
名前: どうふん


第8話 : 別れと出発



その夜のゲゲゲハウスでは、鬼太郎ファミリーの酒盛りが続いていた。
「こうして並ぶと見違えるみたいばあい」
「ほんに、ついこないだは姉と弟みたいじゃったがのう。今は兄と妹じゃな」
ヒナギクよりも背が伸びた鬼太郎がヒナギクに顔を向けると自然と見下ろすような形になる。
顔を見合わせた二人だが、視線が合うだけでヒナギクは顔を朱に染め俯いてしまう。その姿を見て口笛が鳴る。鬼太郎とヒナギクを囲んで浮かれ騒ぐその様子はさながら祝言の席であった。
「やっぱりこれは兄妹じゃなくて夫婦じゃのう」


「ええ、次の酒は・・・」土間を漁ろうとした子泣きジジイだが、砂かけババアに襟首を掴まれた。
「子泣き、ええかげんにせえ」
「おばば、お祝いの日じゃぞ。わし、まだ・・・。それともまだおばばは・・・」
「そんなことを言うとるんじゃない。そろそろ気を遣う時分じゃ」子泣きジジイは砂かけババアを見た。ゆっくりと頷く顔を見て、二人の仲に反対していた飲み友達も今は祝福しているのだと気付いた。そして二人きりにしてやろうというのだろう。
「そうじゃな・・・後は若いモン同士で・・・」腰を上げた子泣きジジイだが、それでもちゃっかりと新しい瓢箪を手にしていた。
ぞろぞろとゲゲゲハウスを出ていく妖怪たちの中に、目玉おやじもいた。
「父さん、どこに行くんです」
目玉おやじは振り向いた。「子泣きの言った通りじゃよ。後はお前たち二人に任せて・・・」
「何言ってるんです。父さんは別ですよ。僕と一心同体なんですから」
当然のように引き留めようとする鬼太郎を見て、ヒナギクは今まで考えてもみなかった問題に気づいた。
鬼太郎は青年となり、恋愛については一気に成長した。ほんの二時間前、有無を言わさず唇を奪われた記憶で今でも全身が火照っている。だが、親離れに関してはまだ子供だったということか。
この親子の愛情つながりが半端なものではないことはわかっているし、ヒナギク自身も本当の肉親のように大切に思っている。何といっても幾多の戦場を共にして、事ある毎に知恵を授けてくれた同志なのだ。
だが、鬼太郎と二人きりの時間空間に入り込まれるのは当然ながら大いに抵抗があった。はっきり言えば拒否感が。
さすがに目玉おやじは気付いていた。
「馬鹿言っとるんじゃない。そんなことではヒナギクさんに逃げられるぞ。ここはもうわしの出る幕ではない」
「え、ヒナギクはそんなこと気にしませんよ」
(気にするわよ−)ヒナギクは心の中で叫んでいた。

「ま、まあ、わしも今日くらいはおやじとサシで飲みたいからの」砂かけババアが間に入ってとりあえずは収まった。しかしヒナギクの胸の中には蟠るものが残った。それは今から始まるであろうことではなく、なかなか珍しいファザコン息子を巡る不安だった。
眼の前の酒をゆっくりと飲み干したヒナギクはおずおずと話しかけた。「あ、あのね、鬼太郎・・・。あなたの親孝行はよくわかるし私も協力するけど・・・」その先をどう切り出そうかと迷っていた。
全く邪気のない顔をそのままにちょっと首を傾げている鬼太郎を見て、ヒナギクはため息をついた。



ゲゲゲハウスを出たネズミ男は持ち出したスルメをしゃぶりながら歩いていた。
池のほとりにうずくまる人影が見えた。その右手が動いて小石を拾った。指で弾かれたその石は池の中へ飛び込み、水音を立てた。
「何だ、カエルでも跳ねたのかと思ったぜ」振り返らない人影にねずみ男は近寄った。
「こんなところにいたのかよ、ネコ娘。すぐ消えちまったからどこに行ったのかと思った」それでも動く気配はない。
「ま、仕方ないやな。お前さんは鬼太郎に女と意識させることすらできなかったんだからな」
初めて人影が揺れた。ネコ娘の背中が震えていた。ネズミ男はしばらく佇んでいたがネコ娘の傍に寄り、背中から抱いた。びくんと震えた体が硬くなったが、動き出す気配はなかった。
(へっ。ここまでされても怒らねえのかよ)普段であれば、ここに至るまでもなくネズミ男はギタギタにされるところだ。
「お前さんにとってはこの方が良かったんじゃねえのか」
初めてネコ娘の口が開いた。「どういう意味よ」。
「お前さんじゃ、百年経っても鬼太郎を今の姿にすることはできなかっただろうってことさ」
さすがにネコ娘の横顔をちらりと覗いたが、爆発の気配は感じられなかった。

だけどよ、ネズミ男は続けた。
ヒナギクのお陰で鬼太郎は女の子を好きになることを知った。そしてヒナギクが人間である以上、必ず鬼太郎やネコ娘より先に年を取り、死ぬことは避けられない。一度恋することを覚えた鬼太郎がその時にはネコ娘を好きになる可能性がある。
情報通のネズミ男は知っている。ヒナギクもあのハヤテに対して今のネコ娘と同様の恋をした挙句、実らせることはできなかった。結局のところヒナギクとネコ娘は似ているのだ。ただ、ヒナギクは失恋という経験を済ませていた。ネズミ男のみるところそれだけの差でしかない。

「ヒナギクには感謝すべきだろうさ。鬼太郎の心を開いてくれたんだから。その後、ってことになるだろうけど、五十年や百年、妖怪にとってはどうってこたあねえ」
「余計なお世話よ・・・」ネコ娘が二度目の口を開いた。そしてもう一度。「ありがとう・・・」

ところでこの時の二人の姿を見た妖怪がいて、ネコ娘はこの後しばらく「ネズミ男とネコ娘が赤い糸で結ばれた」との噂に悩まされることになる。





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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第8話】 ( No.22 )
日時: 2019/09/11 22:56
名前: masa

どうもmasaです。


砂かけババア達のやった事って、完全にお見合いでの一幕ですよね。
お互いを紹介し、「後は若い者同士で」なんですからね。

まあ、鬼太郎が目玉の親父を残そうとした気持ちは分からなくはないですが、「完全な的外れ」ですよね。
だって、ああいう場で親が居れば普通は「どっか行けよ。なんで残ってるんだよ」って怒る物ですし。まあ、鬼太郎にそう言う事を期待するのは無理な話ですけどね、今は。


ネズミ男って、締める時は締めるんですね。普段はお金に汚い平気で人を裏切る様な奴ですけど。
まあでも、そう言う時の100年って長いと思いますよ。妖怪にとって、普段は何でも無い長さでも、「待つ100年」って長すぎるって感じると思いますよ。

仮にヒナギクが亡くなってある程度経った時に気持ちを伝えたとしても、鬼太郎が受け入れる可能性はかなり低そうですし。


ってか、猫娘とネズミ男がくっつく可能性なんて、ありえないでしょ。それこそ「1秒後に宇宙そのものが消滅する可能性」の方が高く感じる位。
確か、自分の記憶が正しければ「猫娘はネズミ男を嫌ってて、何かあれば容赦ない制裁を加える」ってのが全部のシリーズ共通のはずですし。


そう言えば、「妖怪いやみ」の回は何だか凄かったですね。今回のお話を見ると、「いやみの妖術にかかってない、ナンパしない愛のある鬼太郎」って感じですかね。


では。

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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第8話】 ( No.23 )
日時: 2019/09/13 22:35
名前: どうふん


masaさんへ


感想ありがとうございます。

さて、妖怪たちのお祝いの宴ですが、長い間知り合った者同士ですし、その場にいるのは身内ばかりですから、お見合いというよりはむしろ祝言ですね。鬼太郎の新しい姿とお嫁さんのお披露目という意味もあるでしょう。
確かにこれは本文に入れておけばよかったな、ということで、冒頭を一部修正しました。ありがとうございます。

しかしそうなると微妙になるのが目玉おやじの存在です。もしかしたら初夜になるかもしれない傍に第三者がいるなんて、無垢な花嫁さんにとってとんでもない話です。それに気づかない鬼太郎はやはり唐変木の域を脱しておりません。


で、先日のアニメでの「妖怪いやみ」のお話ですが、恋するネコ娘の哀れさとかっこよさが凝縮されてましたね。いや実にいいタイミングだったな。
最後は「自分の力で鬼太郎の本当の気持ちを」と宣言したネコ娘ですが、果たして行動に移せるのか?それができればネコ娘は原作のヒナギクさんに勝ったのではと思いますけど。正直、またツンデレに戻りそうな気がします。
そのあたりも、やはりネコ娘はヒナギクさんに似ているんですよ。

そんなネコ娘が百年先に鬼太郎と結ばれる可能性があるのか。
確かに長い待ち時間です。しかもその間、目の前で鬼太郎が他の女といちゃつくのを見なければいけないわけですから。もしかしたらその間に違う恋を見つけることになるかもしれないですね。
しかしもし、気持ちを変えずにいることができたとしたら、そしてその可能性はかなり高いと思いますが、その時は想いをかなえることがきっとできると思います。
今こそヒナギクさんの陰に隠れていますが、鬼太郎にとって、ネコ娘は大事な仲間であるだけでなく、ヒナギクさんとは共通点が多いですから。実際に(本章第2話では)鬼太郎がヒナギクさんを想って涙にくれているとき、ネコ娘にヒナギクさんの面影を見たということも含めて。

ところでネコ娘がネズミ男に怒ることは多くても、それほど嫌っているかというとそうでもないと思いますよ。かつてネズミ男が結婚詐欺に遭った時、それを叱咤して励ましていたこともありますし。腐れ縁というか・・・。
かといってネズミ男とネコ娘が結ばれる可能性はといえば、それは確かに皆無ですね。そんなお話を作ったら各方面から石が飛んできそうな・・・
この物語でいえば、ネコ娘を慰めるのはネズミ男である必要はなく、むしろ砂かけババアの方が適任なのですが(実際、アニメはそうでしたし)、ここはあえてネズミ男に大役を任せました。
その理由は、ただ一つ、第8話最後の一文を挿入したかったからです。
ありえない話だからこそ、見た者は話したくなる、聞いた者は広めたくなる。まあこのあたり妖怪の世界も人間と同じですね・・・多分。


                                               どうふん

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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第8話】 ( No.24 )
日時: 2019/09/16 20:38
名前: どうふん



第9話 : 別れをもう一つだけ


翌朝 − ゲゲゲハウスの下が騒がしかった。
「鬼太郎!起きとるのか?一大事じゃ」砂かけババアの声が響いた。
「ん・・・・。どうした」ゲゲゲハウスの窓から鬼太郎が眼を擦りながら裸の上半身を見せたが、すぐに後ろに引き戻されて姿が消えた。
中から押し殺した声が聞こえ、続いて大慌てでごそごそしている気配があった。
改めて衣服を羽織った鬼太郎が顔を見せたとき、顔を赤らめている砂かけババアが「一大事」を口にするまで間があった。
だがその中身は鬼太郎を愕然とさせるものだった。
「おやじが消えそうじゃ」
「父さん!?」飛び降りた鬼太郎が駆け寄ると、砂かけババアの掌の中で横になっている目玉おやじの手足が次第に薄れ、今にも消え入りそうになっているのが見えた。「父さん、どうしたんです」
目玉が鬼太郎に向いた・・・ように思えた。「わしの役目は終わったようじゃ、鬼太郎」


今から七十年ほど前−
最後の幽霊族として人間の世界で生き延びていた夫婦がいた。だが二人は病に侵され、明日とも知れぬ命だった。
幽霊族はわれわれで滅びるのか・・・。だが二人には最後の希望があった。妻は妊娠していた。
生きているのが不思議なほどの重症であったが、この子だけでも、という執念が二人を支えた。
そして生まれたのが鬼太郎だった。生れ落ちる直前に息を引き取った妻は母親となったことに気づいただろうか。おそらくは知っていたはずだ。臨月となりもう大丈夫だと思った時に、張り詰めていた気持ちが尽きたのではなかったか。父親はそう思っている。
自分もすぐ妻の後を追う存在であることはわかっていたが、それはできない、と足掻いた。溶けるように滅びゆく体に包帯を巻きつけていた。もう少し・・・もう少しだけ・・・持ってくれ。この子を、妻が命を授けた最後の一族を何としても生き延びさせなければ・・・。
死にたくない、まだ死ねない。父親の最期は苦悶に満ちたものとなった。

その思いが奇跡を生んだ。父親の魂は自身の骸から溶け堕ちた目玉に宿ることとなった。
以来ずっと目玉に胴体と手足がついた状態で鬼太郎を見守り、育ててきた。
そして最後の心残りがなくなった今、もう自分の役割は終わったのではないか。
そして・・・ほとんど時を同じくして死んだ妻にずっと寂しい思いをさせた、との想いもある。鬼太郎とヒナギクの睦まじい姿を見て思い出した。


目玉おやじは、鬼太郎と、その後ろにいるヒナギクをもう一度見た。
「ヒナギク、ありがとう。わしが鬼太郎に与えてやれなかったものを、あんたが教えてくれた。あんたのお陰じゃよ」
わしの役割はもう終わった、いつのまにかヒナギクを呼び捨てにしている目玉おやじは繰り返した。
「おやじ、何を言っとるんじゃ。気が早すぎるぞ。せめて孫の顔くらい見てから逝かんかい」
「見るまでもない。わかっとるよ。花婿も花嫁も美男美女でこれ以上ない良い子なんじゃからな・・・」

目玉おやじから胴体も手足も消えた。それでも目玉は蚊の鳴くような声で語り続けていた。延々と続く息子自慢にその嫁自慢、そして自分の妻自慢をみんなが耳をそばだてて聞いていた。ネズミ男さえあくび一つせず、聞き入っている。
「鬼太郎、ヒナギクを・・・大切に・・・するんじゃぞ。ヒナギク、鬼太郎を・・・たの・・・む」もうはっきりとは聞き取ることもできない。
「妻よ・・・待たせてすまなんだ。今から・・・行く・・・ぞい」
それが最後の言葉になった。動かなくなった目玉を前に号泣やすすり泣く声が響いた。

一番泣いていたのがヒナギクだった。アデルに続き目玉おやじまでも。なぜ自分に感謝しながら死んでいくのだろうか。ある意味、原因の一部は自分にあるのに。アニエスから姉を、今度は鬼太郎から父親を奪ってしまった。いや、それは言い過ぎかもしれないが。
昨晩、鬼太郎と繰り返し父親を巡る話をして初めてケンカした。一度は険悪な空気さえ漂った。それでも「鬼太郎はヒナギクと二人きりの時間を尊重する」「ヒナギクは普段から目玉おやじを本当の父親と思って大事にする」というあたりで手を打った。
曖昧さの残る玉虫色の決着であることは否定できないが、最後は鬼太郎の胸にヒナギクは顔を埋めた。
だが、その間に目玉おやじの寿命は徐々に削られていたということか。
何とか死に目には間に合ったが、最後の貴重な時間の大半を目玉おやじと鬼太郎から奪ってしまった。


そんなヒナギクの肩を鬼太郎は抱いた。「やっとわかったよ、ヒナギクの言うことが。親離れ、子離れってこういうことなんだな。そして僕は会ったことはないけど・・・母さんのものでもあったんだ、父さんは」
ヒナギクは鬼太郎を見上げた。
「これで良かったんだ、きっと」鬼太郎の顔は涙に濡れてはいたが、見たことがないほど優しかった。
無表情やぼんやりした顔が多かった鬼太郎だが、ヒナギクが初めて見る表情が次第に増えている。




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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第9話】 ( No.25 )
日時: 2019/09/16 22:20
名前: masa

どうもmasaです。


鬼太郎が夜に何かあった!?っと思ってしまうような始まりでしたが、無かったようですね。
まあ、何かがあってもおかしくは無いんですけど。


確かに、鬼太郎の母親は我が子を産む前に亡くなってしまい、その後埋葬された。しかし、鬼太郎は自力で生まれて自力でお墓から這い出て来たんでしたね。
鬼太郎の片目が潰れているのは抱き上げた人(水木という青年)が誤って墓石にぶつけてしまったからでしたっけ。


目玉おやじがああやって生きているのは書かれていた通り、奇跡でしかないんですよね。
「生まれてきた我が子を1人に出来ない」っと言う強い思いが起こした、ね。

寂しいですけど、未練が無くなった以上、その奇跡を継続させるのは無理からぬ話なんですよね。
でも、後悔とかはいっさいしてないですよね、きっと。


目玉おやじがヒナギクを呼び捨てにしたのは、息子の妻=義理の娘だと認めたからだと思ってます。違うかもしれませんが。

ヒナギクの考えは「思い上がり」だと思いますよ。アデルにしろ目玉おやじにしろ、「自分自身の意思で決め、自分自身の意思で行動した」ですから。
きっと、口が悪い人が聞けば「思い上がるな、小娘」っと罵るでしょう。


まあ兎も角、親離れ出来た鬼太郎とヒナギクがどうなっていくか楽しみにしてますね。


因みに、目玉おやじの妻(鬼太郎の母)は「岩子」っと言う名前みたいですよ。病に侵される前の姿が描かれた時は、美人だったみたいですし。


では。
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第9話】 ( No.26 )
日時: 2019/09/17 21:59
名前: どうふん


masaさんへ


感想ありがとうございます。


さて、昨晩何があったのか、なかったのか・・・。状況的には・・・。まあ、ヤボな詮索は控えておきます。


鬼太郎生誕のいきさつはmasaさんが書いている通りです。「墓場の鬼太郎」でしたね。あの当時は「醜い姿(「顔」だったっけ)」とコメントが入っていましたが、時代と共に大きく変わったものだ・・・。
目玉おやじもそうですね。わが子を想う執念があの姿で生き延びさせることとなりました。
でも、水木しげる先生が描く妖怪の中で、私が一番好きなのは目玉おやじなんですよね。
アニメ第6期では、父親としての過去や苦悩が何度も出てきましたので、これを何とかしてあげたい。つまりは心置きなく成仏(というのか?)させたい、というのが、本作を書くに至った動機です。

最愛の息子の成長と幸せを見届けることができた。今まで一緒に戦ってきた仲間を息子の嫁という形で自分の娘にすることができた。ご指摘の通り、呼び捨てにするのもそれを意識してのことでしょう。
後悔なんてとんでもない、満足感で一杯になって亡き妻の元に戻ったと思います。


悲しんでいるヒナギクさんですが、確かに傲慢な思い上がりとも言えるでしょう。後で冷静になって考えてみれば、という意味で。
ただ立ち会ったその場においてはどうか。かつてアデルは自分の命と引き換えにヒナギクさんの傷(と森)を元に戻しました。アデルの意思は尊重しても、やはりその心情を思えば無関心ではいられないのがヒナギクさんです。胸に引っかかっていただろうと。

そして今回の目玉おやじ。目玉おやじが今まさに消えようとしているとき、ヒナギクさんは何も知らずに鬼太郎と喧嘩したりイチャイチャしたりして過ごしていたわけです。せめて昨晩だけでも目玉おやじを受け入れていれば、鬼太郎親子の最後の大切な時間を奪うことはなかったのに・・・。そんな後悔が胸を締め付けていたはずです。
「そんなことをいつまでも悔やんでいたら目玉おやじは喜ばないぞ、元気出せ」まあ、こういうことです。


「岩子」か・・・。正直忘れていましたが、聞いた覚えがありますね。「お岩さん」をイメージしたものかと思いますけど。


                                                         どうふん
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【第9話】 ( No.27 )
日時: 2019/09/24 22:10
名前: どうふん


ハヤヒナのハッピーエンドを期待した方にはごめんなさいです。
本作はもともと、鬼太郎の目玉おやじが心置きなく亡き妻の元へと行ければ・・・という物語です。
ただ、鬼太郎が惚れるのはどんな女の子だろうか、と考えた結果、こうなりました。

以下、最終話です。
今期の鬼太郎を知らない方にも喜んでもらえたかどうか。




最終話: ゲゲゲの女房


かつてナギが住んでいた妖怪アパート、いや爽快アパートは今もそこにある。
その狭い庭を砂かけババアが掃いていた。
「よう、ご苦労さん」現れたのはネズミ男だった。
「何か用かの。何度頼んでも生活ルールを守れん奴に住まわせる気はないぞ」
「ご挨拶だな。あいつら今日、退院だろ。お祝いに来たのによ」
「お祝いというからには手土産くらい持ってきたのか?」
「えへへ・・・」大方、お祝い品にありつくのが目的であろう。実際、そこにはあちこちからおさがりを含めた大量の品が届いていた。


アパートの前にタクシーが止まり、ヒナギクと鬼太郎が降りてきた。
ヒナギクの腕には生まれたばかりの赤ん坊が抱かれている。二人の住む部屋に新しい家族が増えた。胸元まで伸びたヒナギクの髪が赤ん坊の顔に掛かり、くすぐったそうにしている。アパートの中からわらわらと妖怪たちが飛び出してヒナギクと赤ん坊を取り囲んだ。妖怪たちは混乱を避けるため、入院しているヒナギクの見舞いには行っていなかった。
「はあ・・・、こりゃ可愛い」
「おいらの嫁にほしいくらいだぜ」
「お、おい。俺にも拝ませてくれよ」感嘆の声が沸き上がる中、ネズミ男が妖怪たちを掻き分けて近寄ってきた。どれどれ・・・ネズミ男も息を呑んだ。
「はああ・・・。鬼が出るか蛇が出るか・・・、と思ったけど」
「失礼ね。鬼は出るかもしれないけど、蛇はないわよ」ヒナギクが睨んだ。
「そ、そうか・・・。鬼が出るか人が出るか・・・の間違いでした」まあそれならいいでしょ、ヒナギクが肩をすくめた。
「で、実際のところどうなんだ。どっち似なんだ」容姿なら一目瞭然であるが、妖力のことを言っているのだろう。
「まだ、わからないわね。妖怪の世界ならいつでも入れるし、とりあえず人間として暮らせるように手続きだけはしておかないと」
「なかなか面倒なんだな」ネズミ男は頭をぼりぼりと掻いた。(だけどよ、本当に大変なことはその先にあるんだよな・・・)それは呑み込んだ。

この半妖の娘がどのような力を持ち妖怪や人とどう関係していくのか。それは誰にもわからないことであった。


***********************************************************************:::::


夜道を一人の若い女性が歩いていた。
その後ろから若い警官が急ぎ足で駆け寄ってきた。
「今からお帰りですか」
その女性は警官に顔を向けた。警官が息を呑むほど美しいその女性はしばらく黙っていたがやがて口を開いた。「ええ」
「若い女性の一人歩きは危険ですよ。最近の事件のことはご存じでしょう」
「ご心配ありがとうございます。でもすぐ近くですので。もう帰ります」
近くでしたら家までお送りします、と警官は繰り返し申し入れたが、女性からは丁寧に、しかしきっぱりと断られた。
「ではお気をつけて・・・」がっかりしているのが声からもわかった。
(凄く綺麗な人だったな・・・)女性の背中を見送りながら警官は呟いた。(あの人が襲われたら・・・。かっこよく助け出してそれをきっかけに美しい愛が芽生え・・・。まあ、そんなにうまくいくわけないよなあ・・・)さっきの女性が襲われることを望むような気分になっていることに気づき、警官は頭を振った。


その一時間後、パトロールを続けていた警官は目をむいた。(あれは・・・さっきの女の人じゃないか)すぐ近く、もう帰ると言いながら一時間もあの女性は何をしているのか。しかも先ほどの場所からはかなり離れている。
警官は改めて女性に駆け寄ろうとした。が、足が止まった。
一個の巨大なゴムマリのような物体が、その女性に向かって飛び込んできた。その物体は地面に飛び込んで跳ねることなく地響きを立てた。
(あれは・・・人間か?)最初真ん丸に見えたそれは相撲取りのような体型の巨漢だった。
巨漢は両手を広げ、その体型からは想像できないスピードで女性に飛び掛かった。
まさかあいつが最近続発している若い女性限定の吸血殺人事件の犯人か。一時間前の妄想が現実になりかけていることに気づき、警官はピストルを抜いて駆け出そうとした。
その肩が後ろから掴まれた。
「おい、離せ」振り向いた警官だが、悲鳴を上げて腰を抜かした。そこにいたのは金髪の少年のように見えたが、口には人間のものとは思えない牙が生えていた。
「きゅ、きゅうけつき・・・?ほんもの?」
「失礼だな、君は。由緒ある吸血鬼の貴族であるラ・セーヌに向かって『本物』とは何のつもりだ」
ラ・セーヌを名乗る少年は、舌なめずりして警官に向けて踏み出した。地面に落としたピストルを拾う余裕もなく、警官はもう一度悲鳴を上げて気を失った。失禁していた。
「フン、殺すまでもないか」異臭に顔をしかめたラ・セーヌは軽く笑い、女性と巨漢に目を向けた。「マンモス、片付いたか?」

意外なことに、マンモスと呼ばれた巨漢が立ちすくんでいる。その先で女性は大人の背くらいもある塀の上からマンモスを見下ろしていた。
ラ・セーヌは舌打ちして歩み寄った。「何をのんびりやってるんだ。さっさと捕まえろ。もっともっと生き血を集めないとバックベアード様は・・・」あっと、目をむいた。
その女性は塀に飛び乗っていたのではない。宙に浮いている。いやそれも違う。宙に浮く一本の剣の上に立っていた。女性が口を開いた。
「この人じゃないと思ったのよね。あんたが張本人ね」
「お前・・・ただ者じゃないな。だが、一人で僕たち二人に勝てるとでも思っているのか」
「一人じゃないよ」声とともに後ろから響いてきたのは下駄の音だった。
「誰だ、お前は」
「ゲゲゲの鬼太郎」あっと緊張を走らせる二人の上から明るい声が響いた。
「そしてゲゲゲの女房・・・ってとこかしら」だが、その声には浮ついた響きはなく、さながら手配中の凶悪犯を追い詰めた刑事のそれだった。


警官は目を覚ました。交番の椅子にもたれていた。さっきのは夢だったのだろうか。
近くで呻くような声が聞こえた。あの巨漢が猿轡を嵌められ、両手両足を縛られて床に転がっていた。
やはり夢ではなかった。誰がやったのかはわからないが、とにもかくにも大手柄だ。警視総監賞だ。近寄ろうとした警官はズボンが濡れていることに気づいた。
「と、とにかく・・・。ズボンを・・・」慌てて奥に入ろうとした警官は、微かに響いてくる音に気づいた。
そのリズムは足音に似ていたが、靴音とは違う。下駄の音・・・だろうか。
ふと思った。いつか・・・ずっと昔に聞いた覚えがある。仮面ライダーやウルトラマンに憧れ、ただ正義の味方になりたかったあの頃に。
もう一度外を見た。人影らしいものは何も見えない。下駄の音は次第に遠ざかるようで、消えることなく響いていた。


今、警官になってその夢は叶ったのだろうか。
今の自分は昔の自分を裏切っていないだろうか。
ズボンの汚れも忘れて立ちすくんでいた。心が洗われている、そんな気がして胸が締め付けられた。



鬼か人か【完】
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【最終話】 ( No.28 )
日時: 2019/09/24 22:54
名前: masa

どうもmasaです。

まずは、第三章?若しくは全部? 兎も角、完結おめでとうございます。


まさかヒナギクと鬼太郎の間に娘が生まれるとは。・・いや、不思議は無いのかな?
とは言え、その子はネズミ男と同じなんですよね。妖怪と人間のハーフっと言う意味だけでは。

ネズミ男も色々あったみたいですし、悪い言い方をすれば「前途多難」「過酷な運命に飲み込まれるか乗り越えるかは本人次第」ってとこですね。


幾ら警察官とは言え「本物の妖怪」なんて物に出くわせば怖いですよね(まあ、某ドラマに出てる特命係のあの人なら別かもしれませんが)。

どうやら、夫婦で「悪しき妖怪退治」をしているんですね。まあ、子供は砂かけババアや妖怪達が見てくれるので、大丈夫なんでしょうけど。


さて、もし「第四章」なんて物があれば「猫娘VSナギ 疾風の心の傷を癒し嫁の座を射止めるのはどちらか!?」ってのがありそうですが・・無いですよね、すみません。

では。
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Re: 鬼か人か 〜 第三章 混沌の夢【最終話】 ( No.29 )
日時: 2019/09/26 20:19
名前: どうふん


masaさんへ


感想ありがとうございます。そして長い間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。


鬼太郎とヒナギクは何らかの形で結婚していますから(恐らくは人間と妖怪双方から別々に祝福されているかと)、子供ができることはおかしくないでしょう。妖怪と人間のハーフということになりますが。
ただ、ネズミ男が体験したとおり、ここから先、いろいろと大変だとは思います。
鬼太郎は赤ん坊の頃から人間に育てられ、多分、当時は人としての籍もあったんだろうと思いますが、今はどうか。他にも子供が妖力を持った場合、小さな体では制御も難しいし、周囲から気味悪がられる可能性も高い。
ただ前途は険しくともこの二人なら、そして二人の遺伝子を受け継ぐ子ならきっと乗り越えていけるはず。そう信じております。


末尾は鬼太郎夫妻の妖怪退治となりましたが、子供は妖怪たちが面倒見てくれているでしょう。特に砂かけババアは鬼太郎の父親に惚れていた可能性が高い(第6期)ですから、自分の孫のように可愛がっていたと思いますよ。
とはいえ、いつも夫婦で妖怪退治に勤しんでいるわけではなく、ヒナギクさんは普段は全く別の仕事をしています。鬼太郎は・・・これは妖怪ですし、何もなければゴロゴロしているんじゃないですかね。


なお、本編は第三章で完結しておりますので第四章はありません。とはいえ、周囲にもいろんな波乱があり、また二人に関わってきます。本作の中では語れなかったところです。
ただ、これを作品にするかどうか保留しておきたいと思います。


自分の作品が他人の目にどのように感じてもらえたのか、それを知ることは何よりのモチベーションでした。
毎回、こうして感想を書いてくれたmasaさんには改めて御礼申し上げます。

                                                                        どうふん
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