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リレー小説  2人の明日はどっちだ!? (二話完結)【完結】
日時: 2016/04/10 06:37
名前: 瑞穂

このSSをご覧になっている皆さんへ

 初めまして、或いは茶会で交流がある方はこんにちは、瑞穂です。
 今回のSSにつきましてですが、昨年末の茶会におきましてネームレスさんに誘われてアドリブで書くことになったハヤヒナのカップリングです。
 このSSは前半を私が、後半をネームレスさんが担当する二話完結方式です。
 私自身は小説掲示板へのSS投稿が初めてですので、温かく見守っていただければ幸いです。勿論後半部分を担当することになったネームレスさんに対しても。

 それでは次のレスから始まるお話をどうぞ。




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Re: 2人の明日はどっちだ!? (リレー小説、二話完結) ( No.1 )
日時: 2016/04/10 06:52
名前: 瑞穂→ネームレス

【第1章・夢と現実の間で】

「はぁ……この書類の山どうにかならないかしら……」
 生徒会長であるヒナギクが二年生に進級した五月のある日、放課後の生徒会室でひとり溜息をつき愚痴をこぼしながら
書類に判を押していた。生徒会メンバーは他にも数えただけで5人いるが、みんながみんな用事でヒナギクに押しつけて
いなくなってしまうのだ。
 彼女は桂ヒナギクという白皇学院の生徒会長であり容姿端麗、成績優秀、公明正大な人柄から学院の内外を問わず人気者。
しかし異性に対しての好意は異常に鈍感である。因みにこのSSでは原作と違い素直である。
 副会長の愛歌は病弱で、書記の千桜はアルバイトなので少々目を瞑る事ができるが後の3人娘は遊びという名のサボリなので
手に負えない。
 その一方でヒナギクの傍には仕事だけでなく私生活全般においてサポート、バックアップしてくれる執事の少年がいるので
彼女にとっては大変ありがたい。
「ハヤテ君お願い助けてよ!」
 仏様のように穏やかな少年に救いを求めるヒナギクの叫びは生徒会室に虚しく響き渡り、それに呼応して座席の机も震え
生徒会室の灯りも点滅するのであった……。


 室内の灯りを直し生徒会活動に戻った直後、ヒナギクは紅茶を飲んで落ち着くことにした。平常心が失われたままだと
仕事にもそして体にも支障を来すためである。そうするうちにエレベーターの上がってくる音が聞こえてきた。
「誰かしら……ひょっとしてハヤテ君!?」
期待に胸を踊らせたドアの先にいたのは――
「やっほーヒナちゃん、報告書を届けにきたよ!」
「あら泉ご苦労様、遅かったわね」内心落ち込むヒナギクを尻目にそこにいたのは彼女と同じクラスの委員長、
瀬川泉であった。
「うん、ハヤ太君が手伝ってくれたから早く終わったの」
「それにしては時間がかかり過ぎよ、もう予定より40分も遅れているのよ」時計は既に18時10分になっている。
「ごめんヒナちゃん、何を書けばいいのか分からなくて20分前にハヤ太君に手伝ってもらったの……」
 先程から名前が出ているハヤ太君とは「執事の少年」「仏様のように穏やかな少年」「ハヤテ君」のことを指し
本名を綾崎ハヤテという。ヒナギクとはクラスメイトでもあり、素直で温厚であり誰に対しても優しい天然ジゴロな
人柄からか女の子からの人気は高い。因みに手先も器用なので女顔の如く料理、洗濯、掃除、裁縫といった家事全般も
得意とする。
 予定時間より前に提出してよね、とひとり毒づくヒナギクであった。その後生徒会活動を終わらせて帰宅したのは
19時を大きく過ぎていた……。


        ○        ○


 ゆかりちゃんハウス――ヒナギクの現在の住居である。
執事であるハヤテとメイドを務めているマリアに、住人達は家事全般を2人にお願いしている。
「ただいま」
「おかえりなさい、ヒナギクさん」
 自室に戻り安堵の溜息を漏らすと着替えを済ませてダイニングに向かった。
「マリアさん、今夜の夕食はなんですか?」
「今夜はジャガイモとタマネギ、それに果物が安かったのでカレーライスとフルーツサラダですよ」
 ゆかりちゃんハウスの住人達はハヤテやマリアを毎日食べている。勿論2人の作る料理を食べるという意味の
換喩だ。
「わぁ……!! 今夜は豪勢ですね♪」目を見開き感動するヒナギクであった。今夜は昼間の嫌なことを忘れる
ことができそうだと安堵するくらいに。


 夕食を食べ入浴を済ませて自室で団欒していると――ノックの音がした。
「はい?」「ハヤテです」「待ってて、すぐ開けるから」
 ドアの向こうには青髪の執事がいた。先にも述べたようにハヤテは家事全般だけでなく私たちが困っている時に
自分の身を顧みず、私たちに尽くしてくれるとても心優しい少年なので忙しい身には大変ありがたい。ヒナギクも
家事は得意であり遂行しているが毎日こなしているハヤテやマリアにはそういう意味では敵わない。言い過ぎかも
しれないがヒナギクが蛍とすれば彼らは月。
「こんな遅くにどうしたの、ハヤテ君」
「ええ……ちょっと考えすぎかもしれませんが、最近ヒナギクさん疲れていませんか?」
「そ……そうかしら?」
 ふとヒナギクの顔を見るといつもと違う様子が感じられる。誰がどう見ても過労であることを示している。
「そうですよ。毎日の生徒会活動で動き回っていますし、肉体的にも精神的にも見た目以上の負荷がかかっている
でしょうから、ゆっくり休んで体調を整えた方がいいですよ」
 そう言われてみてヒナギクは確かに最近全然休んでいないと気がついた。
「……それもそうね。ちょうど明日は休みだしバイトもないからゆっくり休もうかしら」
「その方が無難ですよ」ハヤテが頷くと部屋を後にしようとした。
「えっ……ちょっと待ってよ、ハヤテ君それだけ? もっと話があるんじゃないの?」
「他にないこともないのですが、今夜はヒナギクさんをゆっくり休ませてあげたいですから。勉強で困っている
ところも特にありませんし」
「……そう。分かったわ、それじゃあまた今度ゆっくりと時間のあるときにゆっくり話しましょう。おやすみなさいハヤテ君」
「はい、おやすみなさいヒナギクさん」
 ハヤテへ密かに好意を抱くヒナギクにとってはもっと長く話をしたかった。学院でもハヤテとよく会話を交わしているが
放課後の生徒会室でしか実質的には2人きりになれない。
 一方でゆかりちゃんハウスでは、ハヤテとの2人きりでの会話は他の住人達に比べると圧倒的に多く、ハヤテの
主である三千院ナギをも凌ぐほどなのでこのチャンスをものにしたいのだ。


 しかし背に腹は代えられない。心身ともに健康があってこそ毎日の活動ができるというものであり、ハヤテへの好意を
二の次としてヒナギクはまず心身を休めることにした。
 時刻は既に翌日の0時。消灯して布団に入った直後、ハヤテが屋根裏部屋へ向かう階段を上る音が聞こえて夜は
更けていった。
「ハヤテ君……私は困った時にすぐ駆けつけてくれる、優しくて面倒見のいいあなたが好きよ……」


        ○        ○


「あら? ハヤテ君一体どうしたのかしら」
 とある公園の近くを通りかかったところ、桃色髪の少女は想い人の姿を見て笑顔を浮かべた。
 しかしそれも束の間、少女は衝撃的な光景を目の当たりにすることになる。なぜなら自分の想い人が可愛らしい
顔立ちをした少女と甘々な展開を繰り広げていたからだ。
 その可愛らしい顔立ちをした少女は西沢歩といってハヤテの前の高校の同級生であり、3人にとってはお互いに
かけがえのない親友である。またヒナギクにとってはハヤテを巡る恋のライバルでもあるのだ。そしてまさに2人が
マウストゥーマウスでキスを交わそうとするところであったので、ヒナギクにとってはあまりにもショックが大きかったのだ。
「ハヤテ君、好きです! こんな特技もお金持ちでもない普通の女の子だけど付き合ってくれるかな!?」
「いいですよ。僕こそ1億5千万円の借金を抱えた執事ですけどこんな僕で良ければ喜んで。これからもよろしく
お願いしますね、西沢さん……いや、歩」
「ありがとう、ハヤテ君!」
 そしてどちらからともなく最高の笑顔を浮かべて抱き合って二つの唇が重なり、あたりは幸せオーラに包まれた。
……ある一点を除いては。
「ハヤテ君! 歩!」
 2人がふと横を向くと、そこには熱いものを零す女の子がいた。しかしそれ以前に幸せな雰囲気を壊すのも
如何なものか。デリカシーに欠ける行動は慎むべきだと思うが。
「ヒナギクさん!」「ヒナさん!」『どうしたんですか』
 2人は突然の親友の登場に意外な表情を浮かべていたが呼ばれた方の少女はそんなことにはお構いなしに
続ける。
「どうしたんですかじゃないわよ! これは一体どういうこと!?」
 激昂した彼女に2人は当たり前のように、
「見て分からないんですか? 私達お互いに好きなんです。これまでは友達だったんですけど、今日からは恋人
として付き合うんですよ。ね、ハヤテ君?」
「ええ、今日から僕と歩は恋人同士なんです。それじゃあこれからもよろしくね、歩」
「うん」
 そしてラブラブ満載の2人が放った台詞はヒナギクにとってはまさに痛恨の一撃となるのであった。
「ねえ、本当のことを言ってよ、これが夢だって!」
 もう目の前の出来事全てが信じられない彼女にとって最後の懇願だが、それも虚しく砕かれることとなった。
「いいえ、夢ではありませんよ。ヒナギクさんも頑張って新しい恋を探してください」
 そう言ってハヤテは歩を抱きしめて口づけを交わした。
「いやあー!! お願いハヤテ君戻ってきてー!!」
 原作ではとても考えられないような非情なハヤテの一言でヒナギクの初恋は終わったのであった……


        ○        ○


「はっ!」
 顔から大粒の液体を流した少女は漸く我に返った。これまでに見た光景は全て夢であったということに気付いたのだ。
「ゆ……夢……やっぱり夢だったのね……」
 安堵の溜息をつきつつもヒナギクは、今後ハヤテと上手くやっていけそうなのか不安に駆られた。親友のままで
終わるのか、それとも願い叶って恋人同士になれるのか。
「それにしてもなんて夢見たのよ……。まだ3時20分か……もう少し寝よう。今日は貴重な休みだし、ハヤテ君も
休めって勧めてくれたから」
悪夢で神経が高ぶっていたものの、早く目が覚めた事や疲労の蓄積、それについての助言もあったのでヒナギクは
休むことにした。寝られるかどうかは別にして――


 翌朝――
「おはよう」「おはようございます、ヒナギクさん」「おはようヒナ。今朝は珍しいな、寝坊なんて」
 お互いに挨拶を交わしていると、想い人である執事とその主の姿が見えない。
「かなり疲れていたからね。それよりハヤテ君とナギは?」
「綾崎君は西沢の家へ行くって出掛けたし、ナギはまだ寝てるぞ」
「もう8時なのにまだ寝てるの? 相変わらずね」
「まあいつものことだ。それからヒナ、綾崎君が『ヒナギクさんは疲れているから皆さん、ゆっくりと休ませて
あげてください』と言ってたぞ。私が言えることではないが確かに最近生徒会活動を1人でこなしているから
ゆっくり休んだらどうだ?」
 男言葉で話しているこの少女は春風千桜。ハヤテやヒナギク達のクラスメイトであり生徒会の書記でもある。
眼鏡っ子でクールな顔立ちとは裏腹に、誰に対しても分け隔てなく優しいアニメオタクだ。一方のナギとは前述のように
ハヤテやマリアの主であり、本名を三千院ナギという。三千院家の跡取り娘でヒナギクや千桜に引けを取らない
頭脳の持ち主で、13歳であるにもかかわらずハヤテ達と同学年に飛び級している。だが怠惰で引きこもりなのが
玉に瑕であり、千桜と同様にアニメや漫画にうるさい。
「そうね。皆が勧めてくれるし実際に疲れているからそうさせてもらうわ。それからハヤテ君は歩のところに行ったと
いう事だけど、何かあったのかしら?」
「分かりませんけど、なんだか楽しそうでしたよ」
「楽しそう? どういうことかしら……」
 マリアの返答に訝しげなヒナギクであったが千桜曰く、
「さあな。帰ってきてから聞いたらどうだ?」
 ということだったので肯定の返事をしてその場は終わり、朝食を済ませてハヤテの事を考えながらベッドに横になった。


 しかし夕方になってもハヤテは帰宅しなかったのでスマートフォンで連絡を取ったところ「すみません、現在
調理中で手が離せないんです。すみません」という返事が返ってきた。受話器を通して少女の呼び声がしたので
ハヤテは断った上で「帰ってからお話しします」という返事の後、二言三言話して電話は切れた。
 ヒナギクはちょっとだけ訝しげに通話を終えたが、ハヤテがこれまで嘘をついた事は一度もなかったし約束は
全て守り遂行してきたので青髪の執事の言葉を信じて帰りを待つことにした。
 こうしてみると普段の行いというか信用は大事で何物にも代え難く重いようだ。お金や命よりも。だから信用を
失っては人には頼れない、頼ってもらえないので何もできない。


        ○        ○


「ただいま戻りましたー」
 陽がとっぷりと暮れたゆかりちゃんハウスにハヤテが帰ってきた。
『おかえりなさい』
 住人達は皆女神のごとき笑顔で迎えてくれたようでまだ夕食を食べていなかった。いつも住人達に尽くしてくれる
ハヤテをずっと待っていたのだ。温かく微笑ましい人間関係である。
 そして夕食を終え皆がお風呂に入っている最中、ヒナギクは自室にハヤテを招き2人きりになっていた。勿論
昼間に歩の家で何をしていたのかを聞く為だ。昨夜あのような悪夢を見たので目に焼き付いて頭から離れないのだ。
 2人が向かい合って座ると、ヒナギクは徐に話を切り出した。
「ハヤテ君、正直に答えてほしいの。今日歩の家で何をしていたの?」
 正夢ではあってほしくないと内心の焦りを隠しながら詰問するヒナギクに返ってきたのは意外な言葉であった。
「そういえば理由を話していませんでしたね。実は西沢さんの家族全員が留守で西沢さん1人だったので僕が家事全般を
手伝いに行ってたんですよ」
「え……それだけ?」
 思わず呆気に取られたヒナギクにハヤテは続ける。
「はい、西沢さんも家事はできますけど、やっぱり1人では寂しいので手伝いに来てほしいと前もって僕達に連絡が
あったので行ってきたんですよ。ヒナギクさんは疲れが溜まっていたので行けなくなりましたから、他意はありません」
「じゃあ、楽しそうに出掛けたっていうのは……」
「ああ、それは友達である西沢さんの家に行けるのが楽しみだったんですよ」
「ちょっと待ってよ、じゃあハヤテ君は歩に告白されなかったの?」
 今度はハヤテが呆気に取られた。
「い……いきなり何を言い出すんですか。西沢さんに告白されていませんし僕も告白していませんよ」
 それを聞いた少女は体の力が抜けたようで前のめりに倒れてしまった。
「ちょ……ヒナギクさん! しっかりしてください!」
 慌ててハヤテが彼女を揺り起こすと、ヒナギクは涙を零しながら安堵の笑みを浮かべていた。無理もない、
愛しの彼をライバルに奪われたと思い込んでいたから。
「よ……よかった……」
 泣いていた少女を落ち着かせると、今度はハヤテの心に住み着いた怨霊を払うことにした。
「でもどうして突然告白の話を持ち出してきたんですか?」
 目の前の彼が全て話してくれたので、彼女も全てを打ち明けることにした。昨夜見た夢の事、その中でハヤテと歩が
恋人同士になってショックを受けた事、それにより正夢だと思い込み自分が不安定な精神状態であった事、
またハヤテの帰りが遅いので心配した事、そして……
「私、ハヤテ君の事が好きなの!! 今年の誕生日にハヤテ君と生徒会室のテラスから一緒に夜景を見た時に
気がついたのよ! こんな私だけど……付き合ってくれないかしら!?」
 愛しい人に抱いていた好意を。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


いかがでしたでしょうか。SS書きとしてはまだまだ駆け出しもいいところですので上手く書けずにすみません(ペコリ)。
こんな拙作でしたがお付き合いくださりどうもありがとうございました。
今後どんな展開になるのか私も楽しみです。
後半はネームレスさん、よろしくお願いします。
書き方については一人称、三人称どちらでも結構です。

それでは皆さん、後半をお楽しみに。そして失礼します。
瑞穂でした。


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Re: 2人の明日はどっちだ!? (リレー小説、二話完結) ( No.2 )
日時: 2016/04/24 07:05
名前: ネームレス

【第2章・2人の明日はどっちだ!?】

「こんな私だけど……付き合ってくれないかしら!?」

 伝えた。
 伝えた! やっと伝えた!
 私の好きな人に、私の気持ちを。
 伝え__

「……(ドキドキ)」

 何故だろう。ドアの隙間から人の顔が見える。
 疲れたのかな。
 目を強く閉じ、もう一度開く。いやいや、流石にもういないはず……。

「……(ドキドキ)」
「……(ドキドキ)」

 ふ、増えている!?
 い、いや。落ち着くのよ桂ヒナギク。よく状況を整理して。ドアの向こうにいる気配。恐らくは千桜とカユラね。普通に考えれば当たり前。一緒のマンションに住んでるんだものね。一緒のマンションに住んでいるんだものね!?(※大切なことなので二回ry)

「ひ、ヒナギクさん。それは、つまり……」

 あーーーー!!! 一人だけシリアスな空気のままだし! 当然だけどね! 対面して向かってるんだから! ドアはハヤテくんの後ろにあるんだから!

「あ、いや、えっと」

 まずい。ハヤテくんにはすでに全てを吐露してしまっている。
 夢のこと。
 歩とのこと。
 帰りが遅くて心配したこと。
 その上で告白してしまっている。
 いや待て。なにを慌てる必要があるの? いっそここで見せつければ公認カップルに。絶好のチャンス!
 いいえ落ち着きなさい。相手はあのハヤテくん。雰囲気でつい告白までやっちゃったけど断られる可能性だってある。そうなったら気まずさは通常の十倍。ヤカタ全体に知れ渡るどころか、もしかしたら学園全体にまで……。

「……(ドキドキ)」
「……(ドキドキ)」
「ヒナギクさん……」

 どうするどうするどうする!?

「そ、そう! 付き合ってくれないかしら! 私の__」




















「あ〜、それで『私の特訓相手として!』なんて言っちゃったんですね。精神の鍛錬のためにとか理由付けちゃって」
「そうよ! ひよったのよ! この私が! せっかくのチャンスをフイにしちゃったのよ!」

 そんな先日起きたことを私は歩に報告していた。この件について唯一隠すことなく伝えることができる親友にしてライバルに。
 本当にあの後は苦労した。ハヤテくんに追求させるまいとごり押しで黙らせた。その後に千桜とカユラに生暖かい目で「一緒にゲームしないか? 操作は教えるから」とか言われた時は羞恥心で死ぬかと思った。

「というか歩も歩よ! 言ってくれれば私が作りに行ってあげたのに! 勘違いするようなことして!」

 そんな子どもの駄々みたいな事を言うと、歩は急にどこか遠くを見つめるようにして呟いた。

「そうですね。ヒナさんに頼めばよかったです」
「……え?」

 その日になにがあったかを歩は話してくれた。
 まずは今日は親がいないアピールをしまくったのだとか。戸締まりをしっかりして変な電話には気をつけるよう言われたらしい。
 次は世間話でもして盛り上がろうとしたらしい。一人でも簡単にできる料理や片付け、整理のコツなどを伝授してされたのだとか。
 料理の手伝いで新婚夫婦感を! と思ったけどハヤテくんの流れるような作業についていけなかったと言う。
 最後はせめていい空気を! と思い一緒に料理を食べようとしたけど料理に掃除をしたらナギが待っているからと颯爽と帰って行ってしまったのだと締めくくった。
 ハヤテくんに悪い部分はない。別に急ぐように適当にやったわけでなく、綺麗に丁寧に物事をやってくれたし、話題を振れば必ず二言三言返してくれる。お互いに楽しい時間を共有できた。
 しかし、友達以上の空気になる事はなく、虚しい気分を味わったと言われてしまった。

「……ごめんなさい」
「いえ。大丈夫ですよ。なんせあのハヤテくんですから」

 そんな死んだ目で言われても説得力がない。

「まあ私の事は置いといて、今はヒナさんですよ!」
「わ、私?」
「前はハヤテくんから告白させる〜、とか言ってたのに、まさか自分から告白するなんてねぇ……」
「そんな感慨深く言われても」
「ツンデレの看板は下ろしちゃうんですか?」
「そもそもそんな看板は掲げてない!」

 だからその「まっさかー」みたいな顔はやめて。

「冗談ですよ」

 睨むように歩を見ると、吹き出すようにして笑いながら歩は言う。
 何故だろう。周りからは完全無欠だとか才色兼備だとか言われてるけど、目の前の親友にだけは一生勝てる気がしないのは。

「それにしても、変わりましたね。本当に」
「何がよ」
「最初はツンツンして自分からアプローチなんてしそうになかったヒナさんが、自分からガンガンアタック仕掛けていくようになるなんて」
「それを言うなら歩だって」

 歩だって……。
 …………。

「お腹周りが変わったわよね」
「ぐはぁ!?」

 はっ!? つい。

「ひ、ヒナさんていつの間に天然毒舌キャラにジョブチェンジを……?」
「い、いや私もなんか言わなきゃなーって思ったんだけど思いつかなくて」

 私が慌てていると、なにが面白いのか歩は柔らかい笑みを浮かべる。

「なんか、柔らかくなりましたよね」
「え?」
「いえ、こちらの話です」

 人差し指を唇に当ててウィンクするというあざといポーズ。
 そういうのを自然にやってのけるのはずるいと思わなくもないが、そういう仕草が妙に様になっているのでなにも言うことができなかった。

「でも、ヒナさんがここまで変わってるのに進展無し……本当に変わるべきは案外……」
「? なんの話」
「いえ。これもこちらの話ですよ。ヒナさん」

「私も負けてられないなー」と言われても、現状私の方がハヤテくんとの距離がある。もう昔の事ではあるけれど、一時期は「私がハヤテくんを嫌ってる」とさえ思われていたのだ。今はどうなっているかはわからないけれど、今までの事を思い出すとそこまで進展してるとは思えない。

「はぁ。なんかもう、疲れちゃったわよ……」

 そう言って私は、辛い現実から逃げるように目を瞑った。





























『ヒナギクさん』

 ……ハヤテくん?

『ヒナギクさん。大丈夫ですか?』

 大丈夫? なにが? って、ここどこ?
 なんでハヤテくんがいるの?
 だって私はさっきまで……。……なにをしてたっけ?
 どこかふわふわしていて、心地よい。頭に靄がかかったように、うまく思考が働かない。
 ああ、そうか。夢か。

『もうすぐ着きますよ』

 どこに?
 ハヤテくんが指差した方向に門のようなものが見えた。
 ハヤテくんは私の手を引いて、ゆっくりそこへ向かう。
 待ってハヤテくん。もう少しだけ。もう少し……。

『ヒナギクさん?』

 門の前。
 少しだけ立ち止まる。
 ああ、どうしよう。なにも考えてない。
 ハヤテくん……。

『どうしましたヒナギクさん?』

 夢の中。
 その認識だけがあった。
 だったら、普段言えないような事を言ったって、いいよね。
 ハヤテくん。

『……』

「好きだよ。ハヤテくん」



















「ッッッッッ!?!!?」

 夢!?
 夢……よね。そう夢。
 そうよね。夢よね。歩と話してる途中で寝入っただけよね。
 だから決して“いつの間にか自分の部屋の自分の布団の中”にいるからと言ってあの夢が現実にあったなんて事はないわよね!(必死)
 ないわよね!(懇願)

「あ、メール」

 頭の横にあった携帯に一通のメール。それは歩からだった。
 内容を完結に伝えると、

 〈ヒナさんが急に寝入っちゃって起きないから余程疲れてるんだろうと思いハヤテくんを召喚して運んでもらいました^_−☆〉

「歩ぅううううう!!!」

 いや。落ち着くのよ桂ヒナギク。まだ夢の中で完結してる可能性が

「あ、ヒナギクさん」
「は、ハヤテくん」

 可能性が……。

「あ、あの」
「な、なにかしら!?」

 可能性が…………。

「その、昨日の“あれ”は」
「“あれ”?」
「帰り道の……いえ、なんでもないです」

 か、可能性が…………。

「……ちょ、朝食の準備してきますね!」
「あ! ハヤテくん!」

 …………。
 ハヤテくん。顔を赤く染めてたわよね。見間違いじゃなければ。
 …………。

「______________!!!!!」

 声にならない悲鳴を上げて、私ははっきりと覚えてしまっている夢を思い出す。
 こういう時に限って覚えている夢に文句の一つでも言いたいが、その夢を見たのが私であれば、覚えているのもまた私。行き場のない怒りと羞恥心が私の中で暴れ回る。だというのにハヤテくんに意識してもらえたかもしれないと思うと嬉しく思ってしまいどうしようもなく……。
 この後いったいどういう顔でハヤテくんに会えばいいのか。
 生徒会長の仮面を投げ捨て、ただの恋する少女となった私は服が乱れるのも構わずただ悶えるだけ。その時、小さな同居人に呆れた目で見られてるとも知らずに。

「ああもう! ハヤテくんのバカァアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 二人の明日はどうなるか。
 それは誰にもわからない。

〜Fin〜
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Re: 2人の明日はどっちだ!? (リレー小説、二話完結) ( No.3 )
日時: 2016/04/24 07:08
名前: ネームレス

こんこぉん。ネームレスです。今回は瑞穂さんとコラボさせていただきました。
いやぁ、私は割といろんな人に「一緒に書きませんか?」と声をかけている(つもりな)んですが、割と冗談だと思われてるのかスルーされたり、空中分解する事が多いので、今回は一緒に書いてくださった瑞穂さんにめっちゃ感謝しております。
瑞穂さん、ありがとね!
今回はハヤヒナカップリング2話構成ということで前回の瑞穂さんの話を見てこう思った人は多いだろう。
次はハヤヒナイチャラブ回だろうと。
残念! くっつきません! 瑞穂さんごめんね! でも俺を知ってる人なら予想してたと思う! 俺一度としてくっついたまま終わらせたこと無いしね!
まだまだいろいろ語りたいのですが俺一人語ってるとあれなんでそろそろここらで締めたいと思います。
コラボってくれた瑞穂さん、そして読んでくださった皆さんに感謝を。ネームレスでした!
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Re: 2人の明日はどっちだ!? (リレー小説、二話完結) ( No.4 )
日時: 2016/04/24 13:30
名前: 瑞穂

あとがき(その2)


こんにちは、瑞穂です。
私もSSを完結させることができて嬉しいです。
>>0>>3にもありますが、このお話はネームレスさんに誘われて執筆したリレー小説です。
誘っていただき、一緒に書いてくださったネームレスさんにはすっごく感謝しています。
ネームレスさん、どうもありがとうございました!


ここで今回の舞台裏を明かしたいと思います。
昨年末に開催された月末茶会で、その前の週に開催したリレー小説が話題になりましてそこでネームレスさんに誘われて、2話完結のリレー小説を執筆することになりました。
アドリブでハヤヒナのカップリング、距離は近づけるもののくっつけないという方向で纏まりまして、年明けから私の執筆で始まりました。
(余談ですがその時、止まり木を構成するものは何かという話題も出ましたが、半分は優しさ、残りの半分は愛と勇気という結論に達しました)


ネームレスさんが仰るように、第1章が終わった時点で2人は結ばれるだろうと思われた読者の皆さんが多数いらっしゃったでしょうね。
ですがすみません、前述のようにそれが2人で決めた既定路線ですのでどうかお許しください。
まだまだ他にも語りたいことはありますがそろそろこのあたりで締めさせていただきます。
一緒に執筆してくださったネームレスさん、そしてこのSSを読んでくださった皆さんに感謝します。どうもありがとうございました!
それでは失礼します、瑞穂でした。
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Re: 2人の明日はどっちだ!? (リレー小説、二話完結) ( No.5 )
日時: 2016/04/30 21:45
名前: どうふん
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=413

瑞穂さんへ
そしてネームレスさん、初めまして


しばらくご無沙汰しておりましたが、リレー小説なるものを拝見し、なかなか面白いな、と思ったので簡単ながら感想をお送りいたします。


確かに、第二章で意外な方向に走りましたね。これがリレー小説の醍醐味ということか。
まさかヒナギクさんが、あそこまで思いっ切りの告白をしていながら最後にヘタレるとは。やはりヒナギクさんには、過去に何かあったのでは?・・・済みません、自作を宣伝しているわけではありません。

しかし、ヒナギクさんはごまかしたつもりでも、ああまで経緯に説明付きの告白をされれば、さしもの鈍感執事も気付いたんじゃないですかね、ヒナギクさんの気持ちに。
と、なると、波乱はここから始まるのでは?
「特訓相手として付き合って」と言われたハヤテがどう反応するのか、ちょっと興味がありますね。

それがヒナギクさんにとって、半と出るか丁とでるか。
それは読んだ限りでは・・・確かに私にもわからないですが。



あと、瑞穂さんへ。

主語と述語のつながりとか、言葉の重複など、微妙な表現もありますが、読み手を意識して一生懸命書いていることが伝わってくる作品だと思います。
これからも頑張って下さい。


どうふん
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Re: 2人の明日はどっちだ!? (リレー小説、二話完結) ( No.6 )
日時: 2016/05/01 19:25
名前: 瑞穂

どうふんさんへ

 こんにちは、瑞穂です。ご無沙汰しております。
 拙作を読んでいただきまして、そして感想をお寄せいただきましてどうもありがとうございました(嬉)。
 それではレス返しにまいります。


>> 確かに、第二章で意外な方向に走りましたね。これがリレー小説の醍醐味ということか。

 そうですね、リレー小説は一般のSSとは異なりまして1人で書き上げる種類の小説ではありませんので、
当然書き方は人により様々です。
 ですから>>4に記したように予め最終的な方針を決めてあっても、どんな展開になるのかは
作者、読者のいずれにとっても楽しみなんですよ。


>> まさかヒナギクさんが、あそこまで思いっ切りの告白をしていながら最後にヘタレるとは。やはりヒナギクさんには、過去に何かあったのでは?

 第1章で素直なヒナギクさんに設定しまして、ヒナギクさんがハヤテ君に告白する、近づけるものの
結びつけないというエンディングにする展開は当初の計画通りでした。告白が成功しないようにするには、
ハヤテ君がそれを受け入れない若しくはヒナギクさんがなかったことにするかのいずれかの展開になる必要があります。
 そこでネームレスさんは後者を採用したようですが、おそらくはゆかりちゃんハウスの住人達に覗かれた
羞恥心だけでなく前夜に歩さんに口づけまでしてハヤテ君を取られたという(悪)夢、歩さんの家へ
ハヤテ君がプライベートで出掛けた現実及び帰宅後のハヤテ君への対応が相まって、ヒナギクさんは
絶好のチャンスを逃してしまったのではないでしょうか(愚見)。


>> しかし、ヒナギクさんはごまかしたつもりでも、ああまで経緯に説明付きの告白をされれば、
さしもの鈍感執事も気付いたんじゃないですかね、ヒナギクさんの気持ちに。

 全く同意です。というよりあれで気づくはずです。普段から親交がありますからヒナギクさんを意識しているはずです。


>> と、なると、波乱はここから始まるのでは?「特訓相手として付き合って」と言われたハヤテが
どう反応するのか、ちょっと興味がありますね。

 そうですね、原作では編入当日に剣道場でヒナギクさんの道着姿を見ているので「剣道場で特訓相手として
付き合って」と勘違いするかもしれませんね、ハヤテ君ならw
 しかし私としてはそれよりも、ゆかりちゃんハウスの住人達がハヤテ君やマリアさんに「料理や洗濯などの
家事全般をお願いしている」ので、それらのレベルアップを図るために付き合ってほしいというのもありだと思いますww
 そして将来2人で共同作業する上での地盤とするために。


>> それがヒナギクさんにとって、半と出るか丁とでるか。
それは読んだ限りでは・・・確かに私にもわからないですが。

 うーん……確かに私にも分かりませんが、この2人ならばどんな障害も乗り越えられそうな気がします(偏見)。
 今でも仲良く過ごしていますし相性も悪くはないでしょうし、頭脳や優しさといった内面だけでなく
信用や人脈といった対外的な面におきましても優れていますから。


>> 主語と述語のつながりとか、言葉の重複など、微妙な表現もありますが、読み手を意識して一生懸命書いていることが
伝わってくる作品だと思います。
これからも頑張って下さい。

 ご指摘いただきましてどうもありがとうございます。自分では気付かない部分が多々ありますし
こういった点はまだまだ未熟ですから、これからの課題として取り組んでまいります。
 言葉の重複につきましてはとある方からもご指摘を受けて改善している最中です。それに比喩を
多く用いて多岐にわたり表現しています。これが正しいのかどうかはちょっと不明でした。
 今後とも書きたい内容がありますので頑張って書いてみようと思います。書き上げられるか
どうかは別問題ですが(苦笑)。
 また、読者の皆さんに少しでも読みやすく書いたつもりなので評価していただいて嬉しいです。


こんな書き方で良かったでしょうか? 特に2つ目は……
長文、雑な表現になってしまい申し訳ありません。
改めてどうふんさん、感想をくださいましてどうもありがとうございました。
それでは失礼します、瑞穂でした。
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Re: 2人の明日はどっちだ!? (リレー小説、二話完結) ( No.7 )
日時: 2016/05/03 17:23
名前: ネームレス

こんこぉん、ネームレスです。遅ればせながらレス返ししていこうと思います。


【瑞穂さんへ
そしてネームレスさん、初めまして】

初めましてー! 読んでくださりありがとうなのですよー!

【確かに、第二章で意外な方向に走りましたね。これがリレー小説の醍醐味ということか。】

くっつけてもよかったんですが、なんかこう、やっちゃったぜ☆

【まさかヒナギクさんが、あそこまで思いっ切りの告白をしていながら最後にヘタレるとは。】

ヒナさんは告白だけなら何度かしてますけどね。夢の国からの帰りに電車先輩が遮ったり、アテネ編で告白しようとしたら手痛いカウンターくらったりまともに届いてませんが。
可哀想なヒナさん! 悉くチャンスを不意にしていくスタイル。←原因

【しかし、ヒナギクさんはごまかしたつもりでも、ああまで経緯に説明付きの告白をされれば、さしもの鈍感執事も気付いたんじゃないですかね、ヒナギクさんの気持ちに。】

と、おもーじゃん?
まあそこは解釈によりけり。

【と、なると、波乱はここから始まるのでは?
「特訓相手として付き合って」と言われたハヤテがどう反応するのか、ちょっと興味がありますね。】

「あ、なーんだ! そういうことでしたか! てっきり……いえ、なんでもありません。そういうことなら喜んでお付き合いさせていただきます」
て感じじゃね?( 適当)
皆さん妄想でカバーだ!

【それがヒナギクさんにとって、半と出るか丁とでるか。
それは読んだ限りでは・・・確かに私にもわからないですが。】

書いてる俺にもわからないです!


瑞穂さんとの初タッグで感想、しかも初めましての方からもらえるとは。これも瑞穂さんの人徳のなせる技(確信)。感想くださったどうふんさん、ありがとうございました!
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