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対象スレッド 件名: Re: 2人の明日はどっちだ!? (リレー小説、二話完結)
名前: ネームレス
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Re: 2人の明日はどっちだ!? (リレー小説、二話完結)
日時: 2016/04/24 07:05
名前: ネームレス

【第2章・2人の明日はどっちだ!?】

「こんな私だけど……付き合ってくれないかしら!?」

 伝えた。
 伝えた! やっと伝えた!
 私の好きな人に、私の気持ちを。
 伝え__

「……(ドキドキ)」

 何故だろう。ドアの隙間から人の顔が見える。
 疲れたのかな。
 目を強く閉じ、もう一度開く。いやいや、流石にもういないはず……。

「……(ドキドキ)」
「……(ドキドキ)」

 ふ、増えている!?
 い、いや。落ち着くのよ桂ヒナギク。よく状況を整理して。ドアの向こうにいる気配。恐らくは千桜とカユラね。普通に考えれば当たり前。一緒のマンションに住んでるんだものね。一緒のマンションに住んでいるんだものね!?(※大切なことなので二回ry)

「ひ、ヒナギクさん。それは、つまり……」

 あーーーー!!! 一人だけシリアスな空気のままだし! 当然だけどね! 対面して向かってるんだから! ドアはハヤテくんの後ろにあるんだから!

「あ、いや、えっと」

 まずい。ハヤテくんにはすでに全てを吐露してしまっている。
 夢のこと。
 歩とのこと。
 帰りが遅くて心配したこと。
 その上で告白してしまっている。
 いや待て。なにを慌てる必要があるの? いっそここで見せつければ公認カップルに。絶好のチャンス!
 いいえ落ち着きなさい。相手はあのハヤテくん。雰囲気でつい告白までやっちゃったけど断られる可能性だってある。そうなったら気まずさは通常の十倍。ヤカタ全体に知れ渡るどころか、もしかしたら学園全体にまで……。

「……(ドキドキ)」
「……(ドキドキ)」
「ヒナギクさん……」

 どうするどうするどうする!?

「そ、そう! 付き合ってくれないかしら! 私の__」




















「あ〜、それで『私の特訓相手として!』なんて言っちゃったんですね。精神の鍛錬のためにとか理由付けちゃって」
「そうよ! ひよったのよ! この私が! せっかくのチャンスをフイにしちゃったのよ!」

 そんな先日起きたことを私は歩に報告していた。この件について唯一隠すことなく伝えることができる親友にしてライバルに。
 本当にあの後は苦労した。ハヤテくんに追求させるまいとごり押しで黙らせた。その後に千桜とカユラに生暖かい目で「一緒にゲームしないか? 操作は教えるから」とか言われた時は羞恥心で死ぬかと思った。

「というか歩も歩よ! 言ってくれれば私が作りに行ってあげたのに! 勘違いするようなことして!」

 そんな子どもの駄々みたいな事を言うと、歩は急にどこか遠くを見つめるようにして呟いた。

「そうですね。ヒナさんに頼めばよかったです」
「……え?」

 その日になにがあったかを歩は話してくれた。
 まずは今日は親がいないアピールをしまくったのだとか。戸締まりをしっかりして変な電話には気をつけるよう言われたらしい。
 次は世間話でもして盛り上がろうとしたらしい。一人でも簡単にできる料理や片付け、整理のコツなどを伝授してされたのだとか。
 料理の手伝いで新婚夫婦感を! と思ったけどハヤテくんの流れるような作業についていけなかったと言う。
 最後はせめていい空気を! と思い一緒に料理を食べようとしたけど料理に掃除をしたらナギが待っているからと颯爽と帰って行ってしまったのだと締めくくった。
 ハヤテくんに悪い部分はない。別に急ぐように適当にやったわけでなく、綺麗に丁寧に物事をやってくれたし、話題を振れば必ず二言三言返してくれる。お互いに楽しい時間を共有できた。
 しかし、友達以上の空気になる事はなく、虚しい気分を味わったと言われてしまった。

「……ごめんなさい」
「いえ。大丈夫ですよ。なんせあのハヤテくんですから」

 そんな死んだ目で言われても説得力がない。

「まあ私の事は置いといて、今はヒナさんですよ!」
「わ、私?」
「前はハヤテくんから告白させる〜、とか言ってたのに、まさか自分から告白するなんてねぇ……」
「そんな感慨深く言われても」
「ツンデレの看板は下ろしちゃうんですか?」
「そもそもそんな看板は掲げてない!」

 だからその「まっさかー」みたいな顔はやめて。

「冗談ですよ」

 睨むように歩を見ると、吹き出すようにして笑いながら歩は言う。
 何故だろう。周りからは完全無欠だとか才色兼備だとか言われてるけど、目の前の親友にだけは一生勝てる気がしないのは。

「それにしても、変わりましたね。本当に」
「何がよ」
「最初はツンツンして自分からアプローチなんてしそうになかったヒナさんが、自分からガンガンアタック仕掛けていくようになるなんて」
「それを言うなら歩だって」

 歩だって……。
 …………。

「お腹周りが変わったわよね」
「ぐはぁ!?」

 はっ!? つい。

「ひ、ヒナさんていつの間に天然毒舌キャラにジョブチェンジを……?」
「い、いや私もなんか言わなきゃなーって思ったんだけど思いつかなくて」

 私が慌てていると、なにが面白いのか歩は柔らかい笑みを浮かべる。

「なんか、柔らかくなりましたよね」
「え?」
「いえ、こちらの話です」

 人差し指を唇に当ててウィンクするというあざといポーズ。
 そういうのを自然にやってのけるのはずるいと思わなくもないが、そういう仕草が妙に様になっているのでなにも言うことができなかった。

「でも、ヒナさんがここまで変わってるのに進展無し……本当に変わるべきは案外……」
「? なんの話」
「いえ。これもこちらの話ですよ。ヒナさん」

「私も負けてられないなー」と言われても、現状私の方がハヤテくんとの距離がある。もう昔の事ではあるけれど、一時期は「私がハヤテくんを嫌ってる」とさえ思われていたのだ。今はどうなっているかはわからないけれど、今までの事を思い出すとそこまで進展してるとは思えない。

「はぁ。なんかもう、疲れちゃったわよ……」

 そう言って私は、辛い現実から逃げるように目を瞑った。





























『ヒナギクさん』

 ……ハヤテくん?

『ヒナギクさん。大丈夫ですか?』

 大丈夫? なにが? って、ここどこ?
 なんでハヤテくんがいるの?
 だって私はさっきまで……。……なにをしてたっけ?
 どこかふわふわしていて、心地よい。頭に靄がかかったように、うまく思考が働かない。
 ああ、そうか。夢か。

『もうすぐ着きますよ』

 どこに?
 ハヤテくんが指差した方向に門のようなものが見えた。
 ハヤテくんは私の手を引いて、ゆっくりそこへ向かう。
 待ってハヤテくん。もう少しだけ。もう少し……。

『ヒナギクさん?』

 門の前。
 少しだけ立ち止まる。
 ああ、どうしよう。なにも考えてない。
 ハヤテくん……。

『どうしましたヒナギクさん?』

 夢の中。
 その認識だけがあった。
 だったら、普段言えないような事を言ったって、いいよね。
 ハヤテくん。

『……』

「好きだよ。ハヤテくん」



















「ッッッッッ!?!!?」

 夢!?
 夢……よね。そう夢。
 そうよね。夢よね。歩と話してる途中で寝入っただけよね。
 だから決して“いつの間にか自分の部屋の自分の布団の中”にいるからと言ってあの夢が現実にあったなんて事はないわよね!(必死)
 ないわよね!(懇願)

「あ、メール」

 頭の横にあった携帯に一通のメール。それは歩からだった。
 内容を完結に伝えると、

 〈ヒナさんが急に寝入っちゃって起きないから余程疲れてるんだろうと思いハヤテくんを召喚して運んでもらいました^_−☆〉

「歩ぅううううう!!!」

 いや。落ち着くのよ桂ヒナギク。まだ夢の中で完結してる可能性が

「あ、ヒナギクさん」
「は、ハヤテくん」

 可能性が……。

「あ、あの」
「な、なにかしら!?」

 可能性が…………。

「その、昨日の“あれ”は」
「“あれ”?」
「帰り道の……いえ、なんでもないです」

 か、可能性が…………。

「……ちょ、朝食の準備してきますね!」
「あ! ハヤテくん!」

 …………。
 ハヤテくん。顔を赤く染めてたわよね。見間違いじゃなければ。
 …………。

「______________!!!!!」

 声にならない悲鳴を上げて、私ははっきりと覚えてしまっている夢を思い出す。
 こういう時に限って覚えている夢に文句の一つでも言いたいが、その夢を見たのが私であれば、覚えているのもまた私。行き場のない怒りと羞恥心が私の中で暴れ回る。だというのにハヤテくんに意識してもらえたかもしれないと思うと嬉しく思ってしまいどうしようもなく……。
 この後いったいどういう顔でハヤテくんに会えばいいのか。
 生徒会長の仮面を投げ捨て、ただの恋する少女となった私は服が乱れるのも構わずただ悶えるだけ。その時、小さな同居人に呆れた目で見られてるとも知らずに。

「ああもう! ハヤテくんのバカァアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 二人の明日はどうなるか。
 それは誰にもわからない。

〜Fin〜