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【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised
日時: 2015/03/11 22:39
名前: ネームレス


2/19追記
この物語の注意点。
・この物語はハヤテのごとく! とソードアート・オンラインのクロス小説となります。
・この物語はSAOの世界にハヤごとのキャラを嵌め込んだものとなります。あくまでも「ハヤごとのキャラでSAOをプレイする」といったストーリーにする予定なので、SAOキャラは積極的に出す気はありません。
・オリジナル設定、オリジナルソードスキル、オリジナルキャラなどを含みます。
・ストーリーは原作沿いの予定です。

以上の事が大丈夫だという方のみお読みください。
__________
【プロローグ:小動物少年の受難】

 東宮康太郎はその手にゴツいヘッドギア状の機械を持っていた。

「……」

 それは親から買い与えられたものだ。
 その機械は、ファンタジー風に言えば「異世界の入り口」とでも言うアイテムだ。実際の原理は全く違う科学的なものであるが。
 その機械の名は《ナーヴギア》。完全なヴァーチャルリアリティを再現した《ゲーム機》である。
 なぜナーヴギアを康太郎が持っていのかと言われれば、

「……両親め」

 と呟いた。そう、両親が東宮に与えたのだ。
 漫画家であり、息子にも漫画の技術を叩き込んだ康太郎の両親。そんな両親は、康太郎に新しい刺激を味わって欲しかったのだ。
 自分の目で、耳で、実際にファンタジーの世界に旅立つ。その経験が漫画に役立つのではないかと両親は思ったのだ。
 さらに康太郎の執事である野々原も留学先から後押しした。「今の坊ちゃんにはコミュニケーション力が足りませんので、ゲームの中でなら知らない人とでも話せて成長に繋がるのではありませんか?」とのこと。
 そんなわけで、康太郎はナーヴギアを手に持ち、異世界への興味と恐怖に挟まれながら悩んでいた。
 いや、それだけではない。両親がナーヴギアと一緒に手に入れた限定一万個で売られたゲーム《ソードアート・オンライン》略称SAO。これこそが最も康太郎を躊躇させている原因だろう。
 これは、ナーヴギア発売以来の初の《VRMMORPG》なのだ。
 戦闘においてプレイヤーが持つ武器は剣一つ。魔法はない。魔法のようなアイテム、魔法を使ってくるモンスターはいれど、プレイヤーの攻撃手段は基本的には剣一つ。
 康太郎も剣道部所属。しかし、周りには虚勢で見栄を張れど、自分が一番わかっている事実。

 自分がめちゃくちゃ弱いということ。

 だからこそ、初のVR世界が戦闘、しかも近づくことが前提の世界に行くのには、心の準備というものが必要だった。
 公式サービス開始は明日。
 康太郎は悩んでいた。

「……野々原〜」

 そしてこんな事を思ってしまう。
 __なぜ限定一万個しかない激レアゲームを手に入れてしまったのか
 と。



 時間とは儚いものだ。
 特に、同じことを延々と考えている時ほど早い時はない。
 公式サービスまで後十分。

「……はっ」

 康太郎は今にも寝てしまいそうだった。

「……うん……時間……え」

 目を擦る。
 時計を見る。

「……」

 繰り返し。

「……えぇ」

 __僕、もしかしてずっと起きたまま悩んでた?
 自分の優柔不断さに若干泣きそうになるものの、サービスまではもう時間が無い。

「ど、どうしよう」

 あと五分。

「……」

 三分。

「………………」

 一分。

「ああもう!」

 少しだけ泣きのはいった叫び声を上げながら、東宮は手早く準備して行く。
 ログインして無理そうならログアウトすればいい。そう決めて電源を入れ、ネットに接続し、ソフトを入れ、ログイン__

「あ、説明書」

 __ログインする前に、ナーヴギアとSAOの説明書読むところから始める康太郎だった。
 零。サービス開始。



「よ、よし」

 公式サービス開始からおよそ三十分が経ち、康太郎はついにナーヴギアを被る。
 深呼吸を繰り返し、心臓を落ち着かせる。
 そして、魔法の言葉を口にした。

「リンクスタート!」


 ◯


【第一話:ソードアート・オンライン】

「ね、眠い……」

 __そういえば寝不足だった。
 そんなことも忘れて飛び込んだ異世界。不安と恐怖が入り混じった気持ちが胸に渦巻いているのがわかる。
 SAOに入るに当たってキャラメイクやキャラネームなどがあったが、キャラはデフォルトのままに、ネームも本名の捩りで《kou》と決めて颯爽とダイブしてきた康太郎は精神的にも体力的にも余裕がない。
 思い頭を振り、やっとか自分の置かれている状況を把握する。

「……うわぁ」

 視線を少し上に上げると、壮観な眺めだった。
 ファンタジーを具現化したような町並みに、腰に背中に武器を吊るし町を闊歩する人々。そこは本当に異世界のようであった。
 胸の中の不安や恐怖は忘れて、何かに誘われるようにふらふらと歩いていく。
 落ち着き無くキョロキョロと町を見て回り、一つ一つ新しい発見をする度に子どものようにテンションを上げた。

「うわあ! 凄い!」
「ああ。本当に凄いな!」
「うん! 本当に凄……い」

 __あれ? 今僕は誰と。
 そんな疑問とともに振り返ると、自分よりも高身長でキャラも少しだけ手を加えたような後を残す《プレイヤー》がいた。
 町を見ていくうちに、自分の視界にはいろいろな情報が入ってくることがわかり、プレイヤーの頭の上には緑色の四角錐が逆さまになって浮いていることに気づいた。目の前の人物にも同じように「カーソル」が浮いており、プレイヤーであることに気付く。

「え、あ……」

 人と話すことが苦手である康太郎は萎縮してしまったが、目の前のプレイヤーはそれに気付くこと無く話を続ける。

「元々はお嬢に頼まれたから始めたんだが、これは感動するよなぁ……」
「え? は、はい」
「だよな!」
「ぼ、僕も元々はあまり乗り気じゃなかったんだけど、でも、この世界にきてからそういう悩みも吹き飛んじゃった」
「ははは。お前もか」

 自然に目の前の名前も知らないプレイヤーと話しながら、康太郎は自然とほおを緩めていた。
 そのことを自覚した時、自然と心の中で驚愕する。
 __僕が、知らない人と喋ってる。
 現実ではまず出来ない大きな変化。その事実に大きく胸が高鳴った。
 この世界でなら、きっと強くなれる、と。

「お、そうだ。これも何かの縁。フレンドリストを交換しようぜ」
「うん」

 説明書にもあったフレンドリスト。交換しておくことで、特定の場所などを除き相手の場所がわかったり、メッセージを送ったり、通話できたりなど多くの特典がついてくる便利機能だ。
 初めての操作に少しもたつきながら、説明書通りに操作していく。

「Iron Tiger……アイ……ロン? タイガーさん?」
「アイアンだな。アイアンタイガー。まあ呼び方は自由でいいぞコウ」
「じゃあアインさんで」
「よろしくな」

 こうして康太郎はゲームの中で初の友人を作ったのだった。

「さて、どうせならこのまま狩りに行くか。せっかく来たなら戦わないとな。時間はあるか?」
「う、うん」
「よし」

 アインは手元で少し操作すると、康太郎の目の前にテキストが現れる。

『Iron TigerがKouをパーティに誘っています。承認しますか? ○/×』

 迷わず承認し、視界の端に新しいHPゲージが追加されたのを互いに確認してから、二人は笑いあった。



 この世界には魔法が存在しない。
 それは発売前から発表されており、様々なメディアやネット民たちから「ファンタジー物で魔法を無くすなんて随分と思い切ったことをするものだ」と言われていた。
 しかし、実際にゲームを始めてみればその判断は正しかったと言うべき他無い。
 従来のゲームでは、ただコマンドを押すだけだったゲーム。しかし、VRの中ではコマンドではなく自分自身を動かすことができる。そうなると《必中の魔法》よるも《必殺の剣技》の方が体を動かす必然性を出し、なにより__凄い爽快感があるのだ。



「はぁっ!」

 僕は気合とともにソードスキル《スラント》を発動させる。
 まだ慣れていないため、発動させるのに若干もたつき、動きも完全システムアシスト任せのためぎこちなさを残していた。
 それでも剣は人間の限界を超えた速度で走り、淡い青色のライトエフェクトが空中に線を引きながら目の前の始まるの街周辺に生息する青色のイノシシ型のMobを斬り裂き、そのHPゲージを削り切った。
 イノシシはやられた状態のまま一瞬硬直し、直後に破砕音とともにデータの破片となって空へ溶けて行った。
 このゲームでは血や内臓は出ないし、倒した後も先ほどのように消滅し、死体は残らない。そういったゲームらしさが、こんな僕でも剣を振るい、今倒したイノシシのようなMobを斬り、倒すことができる要因かもしれない。

「やったな」
「アインのおかげだよ。ソードスキルの出し方まで教わっちゃったし」
「いいんだよ。俺のもどうせネットで集めた情報だ。本当ならこのままブーストさせるとこまでやりたいんだが」
「ブースト?」
「ああ。ソードスキルってのはただ発動させるだけじゃなく、自分自身もソードスキルに合わせて動くことで威力や剣速をブースト、つまりは上げることができる……らしい」
「うへえ。なんかめんどくさそう」

 びくん、と体が跳ねる。
 辺りを警戒し、何も無いことを確認してから一息つく。
 アインは不思議そうに眺めていたけど、長年の習慣だからしょうがない。
 野々原が今の聞いてたら竹刀でボコボコにされてたろうな……。

「ま、たしかに上級者用だしな。でも原理自体は難しいものじゃ無い。簡単なとこで言うなら踏み込みとかだな」
「あー、なるほど」

 剣道でもただ振るだけでなくきちんと踏み込めってよく言われてたっけ。

「でも大分時間も経ったしな。それは明日にでもするか」
「そうだね」

 そう言って僕たちは休憩することにした。
 適当なところに腰を落とし、そして景色を眺める。

「……凄いね」
「ああ」

 そこに見えるのは広大な大地と無限に広がる空だった。
 夕日は空を茜色に染め、幻想的な景色を作り出していた。

「なあ。コウはこのゲームを作った奴を知ってるか?」
「ううん」
「そうか。実はさ、このゲーム、SAOを作った奴はさ、フルダイブ技術を生み出し、さらにはナーヴギアを作り出した奴でもあるんだ。凄くないか」
「え、嘘でしょ?」

 たった一人で、この全てを生み出したという事実に純粋に驚いてしまった。
 それはもう、天才なんて言葉じゃ足りないだろう。

「名前は茅場明菜。SAOをやってるプレイヤーなら常識だ。覚えておけ」
「うん。ありがとう」

 茅場……明菜。
 いったいどんな人物なのだろう。

「俺はこの時代に生まれてホントに良かったと思ってる。環境に恵まれて、友人にも恵まれて、好きな奴もいて、そんでこのゲーム。なんつーか、ホント感動だよ」
「うん……僕もこのゲームが出来て本当に良かったと思ってる」

 それは本心だった。
 流れでこのゲームをやることになってしまったものの、たしかにこれはやるだけの価値がある。
 きっとこれから先発展していくVR技術の先駆けに立ち会えた。それはどんなに幸運なことか。

「……さて。じゃあそろそろ落ちるかな。仕事があるんだ」
「アインさんって社会人なの?」
「ん? あー、まあ、手伝いみたいなものだ。お嬢よりも先に戻らないとな」
「お嬢ってさっきも言ってたよね。どこかの執事とか?」
「こらこら。ネットでリアル詮索はマナー違反だぞ」
「あ、ごめん」

 どうやら自分は思った以上にはしゃいでいるらしい。

「じゃ、俺は落ちるから、なにかあったらメッセージ飛ばしてくれ。ゲームの中なら、すぐに駆けつけられるから」
「フレンドなら互いに位置もわかるしね。うん、何かあったら連絡する。バイバイ」
「おう」

 現実では知ってる人が相手でもなかなか出来ないことが出来ることに言いようのない感動を覚え、もう少し狩りをしようかと考えた__その時。

「ありゃ?」

 アインの声が聞こえた。

「どうしたの?」
「あ、ああ。おかしいな。ログアウトコマンドが無いんだ」
「……どうしたの?」
「そんなイカれた奴を見るような目で見るな。本当に無いんだ」
「そんなまさか」

 そう言って、自分も同じように右手を振りリストからログアウトコマンドを見つけ……

「あれ?」

 __ログアウトコマンドが無かった。
 横で「言ったとおりだろ?」とドヤ顔を決めてくるアインがウザいが、しかし、これは、もしかして物凄くまずいのでは?

「ね、ねえ。コマンド以外でログアウトする方法ってあるの?」
「いや、俺が知る限りでは……まあ大丈夫だろ。今や皆挙ってGMコールしてるだろ。俺もしたしな。けど、今頃運営は涙目だろうな。サービス初日にこんな大ミスやらかすなんて」
「そうだね……」

 そうやってアインと話していると少しは落ち着くことができた。
 しかし、この体に纏わり付くような違和感だけが一行に取れない。

「……ねえ。少しおかしくない?」
「何がだ?」
「だって、ログアウト出来ないなんて、今後の運営に響く大問題だよね? だったら、普通は強制的にログアウトさせたりするもんじゃない? それに……」

 このゲームはオフラインではなくオンラインだ。運営側から強制的にログアウトさせることもできるはず。
 なのに、それを一向にせず、何より

「挙ってGMコールしてるはずなのに、アナウンスの一つもないないなんて」
「……」

 アインもその違和感に気づく。
 時間はGMコールしてから十分は経っているだろうか。他のネットゲームをしたことないからわからないけど、アインの様子を見る限り長い部類に入るだろう。
 互いに顔を見合わせる
 最悪の想定がお互いの頭に浮かぶ。
 どうしようもない不安が溢れそうになった……その時だった。

 ゴォーン、ゴォーン……

 鐘が鳴った。時間的に五時の鐘だろう。
 そして、それが合図だったのか、変化は突如として現れた。

「う、うわあ!」
「な、なんだこの光は!?」

 謎の光が僕たちを包む。
 理解出来ない現象に心が恐怖で満ちる。

 視界が全て光によって染められた。



 しばらく、意識が飛んでいたような気がする。
 頭の中がふわふわして、立っているのかどうかさえわからない。

「コウ!」
「え、あ、アイン」

 耳元で叫ばれ、やっとか意識が肉体に定着する。
 僕はすぐに周りを見回した。

「こ、ここは……中央広場?」

 始まりの街の中心にして、プレイヤーが初めてログインする場所。
 それこそ、詰め込めば一万人ぐらいなら入ることが出来るでかい広場だ。

「そうらしい。多分、さっきの光は転移の光だ。俺たちはまだそんなアイテムは持ってないから、おそらく運営の仕業だろうが……」
「で、でもまだ出て来てないよね?」

 ざっと見て、この広場には一万人__全SAOプレイヤーが集まっていそうだった。
 もしかしたらログアウトが出来ない現状についてなにかアナウンスがあるのかもしれない。……しかし、肝心のGMがいない。
 まだ一万人集まってないのだろうか?
 その時だ。

「あ、あれ!」

 誰かが叫び、プレイヤーたちは導かれるように上を見る。

「……なんだ。あれは」

 隣にいたアインがそう呟いた。
 僕恐怖でまともに動くことすら出来ない。
 空はまるで世紀末のように赤く、紅く、どこまでも朱く染まっている。さらに、この広場上空を<WARNING>と書かれた不吉な表示によって覆われて行く。
 表示の隙間から値が滲み出るようにして赤い何かが空中に集まって行く。それは徐々に人の形を取って行く。
 その光景はまるで世界の終焉のようで、誰も、何も言えずにいた。

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 ついに出来上がったのは、SAOには存在しないはずの職(クラス)、魔導師を彷彿とさせるフード付きの赤いローブ。フードはもちろん頭を覆い隠し、その奥はどんな顔なのか、表情なのかはわからない、もしかしたら、最初からないのかもしれない。
 声は男とも女とも取れない中世的なものだ。どこか無機質のようにも感じられ、一層恐怖を掻き立てる。
 私の世界? たしかに、あれがGMならそうなのかもしれないけど、なぜ今そんなことを。

『私の名前は茅場明奈。今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ』

 一瞬にしてプレイヤー間で動揺が伝播する。
 茅場明奈。さっきアインから聞いた名前だった。
 VR技術を作ったのは茅場明奈、ナーヴギアの基礎設計を作ったのも茅場明奈、このSAOを作ったのもまた茅場明奈。この世界の創造主という言葉に偽りはない。

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』

 ざわつきが先ほどよりも大きくなる。
 ログアウトが出来ない現状が仕様? なにを言っているんだ?
 プレイヤーの中には大声で不満を漏らす者も出始めていた。しかし、目の前にいるこの世界の神、茅場明奈は動じること無く続ける。

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない』

 わけがわからない。
 思考が麻痺していく。

『……また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合__』

 わずかな間。
 緊張は限界まで張り詰められて行く。

『__ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 痛いほどの静寂が場を支配する。
 誰もなにも言えなかった。
 理解だってできない。だって、だって、今のはつまり__

 __殺す、ということだから。
 自分でもその結論が信じられなくて、信じたくなくて、理解できない。したくない。
 もはや叫ぶ者すらいない。まだ信じているのだ。これがただの演出。ただのオープニングだという可能性に。
 隣にいたアインがポツリと呟いた。

「……ナーヴギアには最先端の技術が詰め込まれているが、原理自体は電子レンジと同じ。さらにナーヴギアには大容量のバッテリーも積まれている。だから、やろうと思えば」

 __不可能ではない。
 アインはその先を言わなかったけど、僕は理解できてしまった。
 __ああ、この人は本気だ。
 と。

『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間の外部ネットワーク切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み__以上のいずれかによって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制解除を試みた例が少なからずあり、その結果』

 無機質な声は、そこで一呼吸入れ。

『__残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 どこかで悲鳴が上がった。
 だけど、周囲のプレイヤーは呆然としている。
 笑みを浮かべて誤魔化す者、思考を放棄する者、今だオープニングだと思っている者__。
 誰もがこの現実から、目を背けていた。

『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に解除される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心して……ゲーム攻略に励んでほしい』
「な……」

 アインがいよいよ耐えきれないといった風に鋭い叫び声が迸った。

「何を言ってる! ゲーム攻略だと!? ログアウト不能なこの状況で呑気に遊べって言うのか! こんなの、もうゲームでも何でもないだろうが!!」

 しかし、茅場明奈は相変わらず感情のない声で告げる。

『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に』

 僕は次に紡がれる言葉を、なぜか直感できた。

『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

 視界の端に映るHPゲージ。
 残酷なまでに明確に表示された僕の命の残量。
 一と零の間などという曖昧な境界線など無く、零になれば__死ぬ。
 だけど、そんな危険なゲームにまともに参加しようなんてプレイヤーがいるのか?
 そんな僕の考えを見透かすように、次の言葉が響いた。

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッドの最上部、第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』

 しん、と一万のプレイヤーが沈黙した。
 第百層。
 第一層《始まりの街》含め、九十九体ものボスを打ち倒し、第百層に待ち受けるラスボスを打倒し、クリアする。
 出来るのか。そんな果てしない道のりを生き残って歩き続けることが、ここにいるプレイヤーに。

「クリア……第百層だとぉ!?」

 アインが突然大声を出す。鋭い眼光で茅場を睨み、右拳を青らに向かって振り上げる。

「出来るわけないだろう!! ベータじゃろくに上れなかったってあったぞ!」

 ネットとかに書いてあったのだろうか。それが真実なら、このルールはあまりにも酷だ。
 中には始めてネットゲームというものに触れる者もいるのだ。僕みたいに。
 右も左も分からない初心者がそんな過酷な現実を前に生き残れだと? 戦えだと?
 無理だよ、そんなの。
 僕は死ぬ。この世界で?
 二度とログアウトも出来ず、頂きに辿り着くことも出来ず、道半ばで__死ぬ。

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

 それを聞くと同時に僕は右手の人差し指と中指を揃えてまそ他に向けて振った。同じように他のプレイヤーも同様のアクションを起こし電子的な鈴のサウンドエフェクトが響く。
 出現したメインメニューから、アイテム欄のタブを開くと、表示された所持品リスト一覧の一番上にそれはあった。
 アイテム名は__《手鏡》。
 なぜこんな物を、と思いながら、僕はその名前をタップし、浮き上がった小ウィンドウからオブジェクト化のボタンを選択。たちまち、きらきらという効果音とともに、小さな四角い鏡が出撃した。
 おそるおそる手に取るが、なにも起こらない。そこにあるのは初期設定のままで繰り出した平凡な僕のアバターの顔が映るだけだ。
 隣にいるアインも呆然とした様子で眺めていた。なにも無い、のか?
 __と。
 突然、アインや周りのアバターを白い光が包んだ。なにが起こったのか理解する間も無く、僕も同様の光に包まれ、視界がホワイトアウトした。
 ほんの二、三秒で光は消え、元のままの風景が現れ……。
 いや。
 目の前にあったのは、見慣れたアインの顔ではなかった。いや、有る意味ではもっと見慣れた顔だった。
 装備はそのまま。先ほど、一緒に狩りに出た時と全く同じもの。しかし、顔だけが変わっていた。
 その顔は、白皇学園に通う生徒__瀬川虎鉄の顔だった。

「……虎鉄、くん?」
「東宮、か?」

 その瞬間、僕はある種の予感に打たれ、同時に茅場のプレゼントである《手鏡》の意味を悟った。
 もう一度、食い入るように覗き込んだ手鏡に映ったのは、男にしては線が細く、弱気な瞳の情けない顔。
 数秒前までの作られた顔では無く、僕そのものの顔がそこにあった。

「な……俺、か?」

 隣の人物も気づいたようで、僕たちはもう一度顔を見合わせ、同時に叫んだ。

「君がアイン!?」「お前がコウか!?」

 声が元の世界のそれになっていたが、気にしていられなかった。
 改めて周りを見回すと、存在していたのは数秒前までファンタジーに出てきそうな美男美女の群れではなかった。まるでそこら辺を歩いていた一般人を集めたような集団がそこにはあった。恐ろしいことに、男女比も大きく変化している。
 どうしてこんなことになってしまったのか。その顔の造形はあまりにも細かく、なにかでスキャンしたかのようだ。

「……そうか」

 アインは押し頃た声を絞り出した。

「ナーヴギアは。高密度の信号素子で顔全体をすっぽり覆っている。つまり、脳だけじゃなくて、顔の表面の形も精細に把握出来るんだ。身長や体格も変化しているが……キャリブレーションで体のあちこちを触った時に身体データを取ったんだろう」
「な、なるほど」

 そういえば、アインはゲームや仕組みに関して結構詳しかった。もしかしたら、瀬川という立場にあったからかもしれない。
 そして、なぜ体格や顔まで現実のそれにしたのか。しかしその意図は、最早明らかすぎるほどに明らかだった。

「……現実」

 これは現実なのだと。死ねば死ぬ。本物の命なのだと。
 それを現実と一緒の顔と体にすることで再現した。

「……ああ、そうだな。そういうことだろう。だが」

 アインは鋭い眼光をさらに細め、叫んだ。

「なぜだ! そもそも、なぜこんなことを…………!?」
「……すぐにそれも答えてくれるよ」

 その予想は当たった。数秒後、地の色に染まった空から厳かとも言える声が降り注いだ。

『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は__SAO及びナーヴギアの開発者の茅場明奈はこんなことをしたのか? これは大規模なテロなのか? あるいは身代金目的の誘拐事件なのか? と』

 僕は頭でそれを否定する。
 そんなわけがない。そんなことをするために、こんな舞台を整えるわけがない。
 ならば、茅場の目的とは。

「私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとって最終的な目標だからだ。この世界を創り出し、鑑賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』

 短い間に続いて、締めくくるように声が響く。

『……以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の__健闘を祈る』

 そして茅場は空に溶けるように消え、空も元の青さに戻った。遠くから荘厳なBGMがなり、元のソードアート・オンラインに戻った。
 そして__この時点でようやく。
 一万人のプレイヤー集団が、然るべき反応を見せた。
 つまり、圧倒的なボリュームで放たれた声が、広大な広場をビリビリと振動させたのだ。
 叫び、泣き、罵り、祈り、それぞれがそれぞれの行動を出した。
 先ほどまで一万人のプレイヤーだった僕たちは、この時を境に、一万人の囚人へと変わった。
 この時、僕は__


 ゲームが始まって三日が経とうとしていた。
 その時、プレイヤーは三つのグループに分かれていた。
 一つは先行者。一番数が少なく、ベータテスター中心に構成されたプレイヤーだった。
 この世界で生き抜くためにスタートダッシュをして、自分の強化に邁進した。その代わり死亡率も高く、たくさんのプレイヤーが死んだ。
 二つ目は進行者。みんなで力を合わせて進むと決めた者たちだ。一部テスターも情報を出し合い、レベルアップに務め、ゲームクリアに意欲を出していた。
 アインもこの中にいた。お嬢__つまりは瀬川泉に合流したと連絡が来た。どうやら結構多くの知り合いがこのゲームに来ているらしい。まあ、白皇は金持ちの学校だから、コネなどを使えば一般家庭よりもゲームを手に入れやすく、当然とも言えた。
 そして最後三つ目は、停滞者だ。思考を放棄し、ゲームクリアは人任せ。いや、むしろ諦めていると言ってもいい。街にこもり、フィールドに出ず、自らを守る自己中心的な者たち。
 そしてこの三つ目のグループには……僕も入っていた。



『こっちはなんとか全員生き残ってやってる。コウはどうだ。元気か。この世界には病気は無いが、精神的な疲れなどはあるからな。気をつけろよ』

 僕は毎日送られてくる瀬川虎鉄ことアインからのメッセージを読み、格安の宿屋で借りた部屋の隅で膝を抱えていた。
 外に出る勇気もなく、ひたすら孤独に耐えて、逃げていた。この現実から。
 日々まどろみの中で幸福だった頃の夢を見ていた。みんなに囲まれて、泣いたり、笑ったりしていた頃の。
 その夢を見ていることが僕の唯一の楽しみになっていた。
 もう一度立ち上がる気力などありはせず、あの日のことを思い出す。

『東宮、いやコウ。俺と来ないか』
『お嬢たちもログインしている。今は知り合いと固まった方がいい』
『綾崎も来てるはずだ。一人でいるよりいいはずだ』

 あんな混乱していた状況の中、冷静になって僕を誘ってくれたアイン。だけど、僕は、

『……ごめん』

 その誘いを断った。
 みんなといると否が応でも現実だと思い知らされるから。

「……野々原」

 僕は、この世で最も信頼する人の名前を呟き、まどろみに沈む。



「…………ん」

 声が聞こえる。

「…………ちゃん」

 どこかで聞いたことのある声だ。
 どこか懐かしい。いや、けっこう最近にでも聞いたことがあるような……。

「坊ちゃん!!!」

 の、野々原!?

「いつまで寝てるんですか! さっさと起きろやごるぁ!」

 ひぃっ! なんでそんな怒ってるの!

「坊ちゃん! いつまで逃げてるつもりだ! そんな風に育てたつもりは無えぞ!」

 ひぃっ! だ、だけど無理だよ! 僕じゃ戦えないよ、死んじゃうよ! それでも野々原は僕に戦えって言うの!?

「だったら、東宮坊ちゃんはずっとそこで何もかも終わるまで待っているつもりですか」

 ………………それは。

「なにも外に出ることだけが戦いではありません。街の中で戦闘色の方々をサポートするのも立派な《戦い》です」

 …………。

「立ってください。そして、進んでください。坊ちゃんは、東宮康太郎は、こんなことで折れるようなお方では無いはずです」

 …………それでも、無理だよ。
 野々原は僕を買い被り過ぎだよ。僕は……脆い。

「……なら、しょうがないですね。本当は自ら立ち上がって欲しかったのですが……」

 野々原?

「いいですか東宮坊ちゃん」

 う、うん。

「グダグダ言ってねえでさっさと戦ってこいやぁあああああああああああああああ!!!」



「うわああああああああ!!! ゆ、夢!?」

 跳ね起きるように立ち上がり、荒い息を繰り返す。
 あまりにもリアルな夢で、一瞬現実にいるのかと思った。
 というか野々原、夢の中にまで現れるのか……。

「…………」

 僕は自分の掌を見つめる。
 あまりにも情けない、弱々しい手だ。簡単に折れてしまいそうだ。
 でも、剣なら握ったことがある。
 それは竹でできた簡素なもので、それを使ったスポーツではとても弱かったけど、でも、この手は剣を握ったことがある。

「……あまり情けないこと言ってると、また野々原が来ちゃうな」

 一番信頼する人に、何度も何度も怒られてはいられない。

「……よし!」

 自分を奮い立たせるように声を上げ、ストレージに閉まっていた剣を実体化させる。
 この世界における、唯一の武器。

「……ここから始めるんだ。三日も遅れたけど、僕のソードアート・オンラインが」

 アインには伝えない。伝えれば、なんだかんだで頼りになるあの変態は、きっと僕を助けてくれる。そして僕は、それに頼る。頼り切ってしまう。
 それじゃダメなんだ。最初の一歩は、僕が踏み出さなきゃダメなんだ。
 僕は、強くなるよ。野々原。




 ーーーーーーーーー

 というわけで、ソードアート・オンラインクロス、Badly-bruised第一話。終了いたしました。
 主人公は東宮康太郎です。ハヤテだと思った方、素直に手を上げなさい。
 今後の展開は序盤はアニメや原作の展開に沿ってやり、後半はオリジナルが多くなる予定です。東宮康太郎ことkouの冒険をお楽しみにしてくださると嬉しいです。
 さて、ちょっと発表があります。
 この作品、Badly-bruised。続くかわかりません。←
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised ( No.1 )
日時: 2015/09/20 23:21
名前: ネームレス

【第二話:マリオメーカーの鬼畜ステージ攻略動画見て、徐々に洗練されていく動きを見ていると「これをプレイしている人間って最後目が死んでそう」っていつも思う】

 《片手直剣使い必見! 森の秘薬クエ》

 進むと決めてまず、アイテムなどを買い込むために訪れた店に置かれていた無料の攻略本。恐らくはプレイヤーメイドと思われるそれには、少し驚くほどの情報量があった。
 街、村の位置、フィールドに出現するモンスター、店に売られているアイテム、値段、最初に取っておくといいスキル情報……etc
 こんなものを無料だなんて、随分気前のいい人がいたもんだ、なんて思いながらも製作者に心から感謝する。
 その中にあったクエスト情報の中にあった《森の秘薬》と言うクエスト。それは始まりの街の北西ゲートを出て、広い草原を突っ切り、深い森の中の迷路のような小道を抜けた先の《ホルンカ》という名の村にあるクエストらしい。小さい村らしいがちゃんとした《圏内》らしく、宿屋と武器屋、道具屋もあり《進むと決めた者》の殆どが最初に行き着く拠点として使うらしい。周辺のフィールドでも麻痺毒や装備破壊といった危険なスキルを使うモンスターはおらず、経験値を稼ぐのにもオススメらしい。
 そんなホルンカという村にあるクエスト、《森の秘薬》と呼ばれるものの概要は、病気で寝込んでいる娘のために薬の材料を手に入れたいが、それが危険なモンスターからしか取れない代物らしく、それを取ってきてくれたなら我が家に伝わる剣を冒険者に譲る__といった内容だ。
 そして、危険なモンスターというのはリトルネペントと呼ばれる、ホルンカの近くの森の比較的浅い部分に現れる植物系モンスターのことで、秘薬の材料になるのはその中でもごく稀にしか現れない《花つき》と呼ばれる個体らしい。
 さらにリトルネペントは攻撃力こそ初期モンスターの中では高い部類で、腐食液による武器や防具の耐久力を減少させる厄介な攻撃があるらしいが防御力は低く攻撃もバリエーションが少なく注意すれば難なく避けれる。弱点を正確に狙えばレベル1初期装備でも倒せるらしい。
 もちろん、装備アイテム類はしっかり整えておくに越したことは無いが。

「よし、行くか!」

 攻略本通り、スキルには片手直剣と索敵を選び、アイテムもポーションを買えるだけ買い、僕は少しの間だがお世話になった最初の街から旅立った。


 ◯


 道中、何匹かのモンスターとエンカウントしたものの、最初の街周辺のモンスターはソードスキルさえ使えれば勝てる__これは攻略本ではなくアインの言だ__という言葉通り、特に慌てることなく倒した。
 不思議な気分だった。
 ここはデスゲーム。明確なまでに「命が数値化されゼロになった瞬間に現実世界の自分も死んでしまう」ことが確定されている世界。
 ふわふわした頭で考えていたことがある。もしこれがデスゲームではなかったら。もしデスゲームというのが茅場明菜の嘘であれば。
 すでに何百何千と被害が出ている今、それだけの数現実世界に「帰還」している事になる。なら、僕たちもナーヴギアを引っこ抜いてこの事件はお終い。
 そうならないのはここが本当にデスゲームだから。
 だというのに、僕は慌てなかった。少し前までの僕なら、きっと慌てて、まともにソードスキルも出せず死んでいただろう。
 もしその理由が僕がこの世界に「慣れた」ということなら喜ぶべきことだろう。だが、理由が「現実を直視出来ていない」のであれば__僕は近いうちに死ぬだろう。
 覚悟を決めるべきだ。僕が、「kou」として生きる。その覚悟を……。


 そんな僕は今、ホルンカの村の中で隠れていた。

「……ままならないなぁ……」

 理由? あると言えばあるし、無いと言えば無い。

 ただ僕が知らない人の集団にビビってるだけだ。

「情けないにも程があるぞ僕……!」

 頭のどこかで野々村が呆れたような声を出した__ような気がした。
 僕はなぜか隠密スキルも取ってないのにスニーキングミッションに精を出し、無事途中で倒したモンスターの素材を売却し茶革のハーフコートを購入し即装備。予備のスモールソードも買っておく。上位のブロンズソードもあったが、耐久力が低くリトルネペントの腐食液とは相性が悪いらしい。
 そこまで考えて気付く。自分の知識は攻略本ありきの知識だと。当たり前としては当たり前。しかし、生き残ると決めたkouにはそれだけでは足りない。
 今後、もしもっと強い敵と出会ったら装備はどうするか。もし最前線まで行くとするなら、いつまでも攻略本に頼ってもいられない。自分で考え、行動する必要もあるはずだ。
 少し考え、

「金属装備は無い」

 フルプレートの鎧を着た自分を想像。絶望的に似合わないし、なんか着せられてる感が凄い。なにより動きにくいし、あまりモンスターの攻撃を受けたくないkouとしては当たる前提の装備はしたくない。
 なら部分的に金属をあしらった装備なら? どこか勇者然とした自分を想像する。__ダメだ。黒歴史だ。命の危険をギリギリまで減らせるにしても着てるだけで正気度が減って行く気がする。
 やはり革装備。これなら地味でいいし動きやすい。攻撃をあまり受けたくないkouとしてはベストだ。

「今後、可能な限りは革装備を貫こう」

 __今装備してるコートのような。
 そこまで考えてから早速店を出て、隠れながら圏外へと向かう。
 これから自分のこと全てを自分で考えていくというあまりにも普通で、それでいてとても難しいことをしていかなければならないことに心が折れそうになるkouだった。

「あ、クエスト」

 クエストを忘れていることに気づき、さらに未来への不安が高まるばかりだった。


 その後、僕はすぐにクエストを受ける。
 その時、実際に今にも消えてしまいそうな寝込んでいる少女を見てしまったせいか、僕は昔のことを思い出し泣きそうになってしまった。
 昔、僕が風邪で寝込んだ時、野々村がそれはもう慌てふためきながら__しかし看病は完璧だった__世話をしてくれた。
 そのことを思い出したせいか、例えNPCだとわかっていても、邪険に扱えるはずもない。

「待ってて。今、薬の材料を持ってくるから」

 理解できるはずもない。何故なら彼女はNPCなのだから。ただ決まった行動を繰り返すだけの、ゲームを円滑に回すための存在。
 でも、そんな僕の言葉を聞いて、その少女は笑った__気がした。
 幻想かもしれない。ただ、そうであってほしいと願う自己満足。それでも、僕はその笑顔に勇気をもらい、森へと駆け出した。



「おい、あれ」
「そうだな。あいつにするか」



 森につき、すぐに索敵を開始する。モンスターは倒れることでリポップする。つまり、リトルネペントを狩り続ければレアな花つきとも出会えるはずだ。
 索敵は自分と敵の簡単なレベル差もわかる。カラーカーソルが白に近ければ余裕で倒せるレベル。赤に近くなる程強く、黒が混じったような色になると現在のレベル差ではまず勝てない、というものだ。
 あくまで簡易的なもので、パーティを組むなり装備を新調するなりとその差を埋めることは可能だが、今現在においてはかなり心強い。
 早速カーソルが近くに現れる。色はちょっと濃いめの赤。油断しなければ倒せるレベル。僕はそこに向かい、案の定というかリトルネペントを発見した。カーソルの周りには狭いイエローの縁取り。つまり、クエストのターゲットであることを示す。

「……よし」

 覚悟は決めた。武器を手に取り、不意打ちの準備。
 弱点はウツボ部分と太い茎の接合部……!

「はぁっ!」


 あれからたくさん狩った。数は五十を超えたあたりで数えるのをやめた。とにかくたくさん狩った。
 途中、《実つき》と呼ばれる危険なネペントとエンカウントしたりと心臓が破裂するかと思ったけど、なんとかやり過ごしとにかくリトルネペントをひたすら狩り続けた。
 レベルも上がり、今ではレベルは4である。ここまで上げるのに五時間ほどかかったけど。

「……そろそろ出てくれないかな」

 武器の耐久力は限界にきていて、予備の方を現在使っているがそっちも耐久力が半分を切った。流石にキツイ。耐久力回復のために一旦村へ戻った方がいいかも……。
 と、そこまで考えていた時。

「い、いた?」

 《花つき》がそこにいた。
 一瞬幻かとも思ったが、たしかに花つきがそこにいた。
 噂では花つきは花が完全に散ると実つきになるらしい。そうなってしまっては折角のレアモンスターもただの地雷モンスターだ。勝負は短期決戦。一気に行くしかないと覚悟を決める。

「……っ!」

 駆ける。
 敵は花つきが一体、取り巻きが二体。しかし、すでに数多くのリトルネペントを狩り、その途中でブーストの練習もしたkouの敵ではない。

「フッ!」

 短く息を吐き、片手直剣ソードスキル《ホリゾンタル》を放つ。単発水平切りの斬撃は青いライトエフェクトを宙に走らせ、踏み込みとソードスキルに合わせた手の振りで速度と威力をブーストさせる。《ホリゾンタル》は見事弱点へとヒットし、花つきのHPを三割ほど減少させる。

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 叫び声を上げながら取り巻きとともに蔓を鞭のようにしならせ攻撃をしてくる。しかし、技後硬直がすでに終わり後ろへ下がっていた僕なら避けるには容易。
 目の前で花つきの頭上の実から徐々に花びらが散り、実自体も巨大化していく光景は心臓に悪いが焦らない。
 __大丈夫。これぐらいなら、野々村の方が百倍強い!

「はぁ!」

 攻撃の隙間を抜い、花つきへ追撃のホリゾンタル。さらに三割減少。この調子なら、あと二撃で倒せる。
 自分の中にある最強の存在、野々村を強くイメージする。
 野々村ならどう動くか、野々村ならどう倒すか。
 その動きを常に間近で見てきたkouは少しずつ自身の動きを自身の中にある野々村の動きへとトレースさせていく。
 __もっと早く、もっと鋭く、もっと強く!!!
 その後、三十秒ほどで花つきを倒し、取り巻きも一分ほどで倒しkouはキーアイテムを入手することに成功した。


「疲……れた」

 満身創痍。僕は今まさにそんな状態だった。
 ここはゲーム。意識がある限りは走り続けれるし剣は降り続けられる。だとしても、すごく集中した後は倦怠感がすごい。
 でも、同時に達成感もあった。やり遂げた、一人でもクリアできたんだという、達成感。

「……よし」

 いつまでもその場にいてはモンスターが寄ってくる。
 さっさと帰ってあの少女の元へアイテムを届けなきゃ!
 ……実際にアイテムを渡すのは母親の方だけど。

「おい」
「え?」

 声をかけられた。反射的に振り向く。
 そして、

「っらぁ!」
「っ!? ぐっ!」

 ドン、という衝撃。まともに受けることも出来ず、HPは二割ほど減少。受身も取れず地面へと転がってしまう。
 そして、僕の頭の中はパニックになってしまう。
 __なぜ!? どうして!? マップ上にカーソルは無かった! 油断してたとはいえ、索敵スキルも持ってるのに!
 グルグルと頭の中を駆け巡る思考。ようやく顔を上げれば、そこにいるのは二人のプレイヤー。そこにきて、ようやくカーソルを確認する。

「よう」
「う……ぁ……」

 恐怖。
 ここにきて僕は、ようやく感情が状況に追いついた。
 __マズイ。マズイマズイマズイ!
 __死にたくない死にたくない死にたくない!
 恐怖に彩られたであろう僕の表情を見下ろしながら、プレイヤーは口を開く。

「とりあえず、アイテムよこせや」



 ーーーーーーーーーー

 ども! ネームレスです! 二話目です!
 いやぁ、まさか続くとは。自分でもびっくりなんだなこれが。
 今回はアニメでは無かった原作8巻「始まりの日」を題材にしております。
 弱虫東宮がなんだかんだでゲーム内でやっていく話。果たして、彼の行動は勇気か、もしくは思考の麻痺か。これからも彼には頑張って行ってもらいましょう。
 さて、早速オリジナル展開になってしまったが私は謝らない。そしてもし続きができなくても謝らない。
 それでは次回があればそこでお会いしましょう! ネームレスでした!
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised ( No.2 )
日時: 2015/12/27 14:35
名前: ネームレス

【第三話:エンカウント】

「おいおい。ビビっちゃって声も出せねえのか?」
「そう急くなよ。おいガキ。さっさとアイテム出せや」

 目の前のプレイヤーの頭上にアイコンが表示される。色はオレンジ。プレイヤーがプレイヤーを圏外で攻撃した際に変化する色。この色になるとしばらくの間圏内に入るリスクがある。
 だというのに、目の前のプレイヤーは容赦なく僕にそれを行ってきた。明確な敵対の意思。狙いは……僕が手に入れたクエストのキーアイテム。

「いやあね。強い剣欲しくて来たんだけど一時間張っても花つきさんが出ないのなんの。めんどいから君みたいなのに《頼んで》譲ってもらおうかなーって」

 と、軽薄そうな方が薄い笑いを浮かべながらそう言ってきた。隣の大柄な男は何も喋らない僕に痺れを切らしつつあるのか、イライラした態度だった。

「おい。さっさと出せ。そうすりゃ楽に逝かせてやる」
「い、いかせる?」

 やっと出た言葉が、それ。
 どういうことだ。いかせる? 行かせる? どこに?

「あー、つまり、殺す、ってことだよ。君に言いふらされたりしたら、俺たち商売上がったりだもん」

 殺す。
 他はなんて言ったか分からないけど、その言葉だけはクリアに脳に響いた。
 殺す。僕を、殺す。

 死

「い、嫌、だ」
「ああ?」
「嫌、だ。死にたく、ない。死ぬわけには、いか、ない!」

 生への執着。剣を構え、震える体を必死に抑えながら、立ち上がる。

「あーあ。めんどくさいなー。ねえ君。もうちょっと考えなよ。二対一。しかも君は消耗してる。そんな震えた体じゃ剣だってまともに」
「うるせえ。やる気ならいいじゃねえか。さっさと殺るぞ」
「はいはい。せっかちだねえ」

 目の前の二人も武器を抜く。大柄な方は片手剣。軽薄そうな方は短剣。
 そこで初めて僕は二人の顔を、目を見た。
 死人のような目だった。
 何もかも諦めてるような、全てを放棄してしまったような、濁っていて生気を感じさせない、恐ろしい目。

「う、うわあああああ!」

 恐怖に駆られ、滅茶苦茶に剣を振り回す。ソードスキルも型も無いチャンバラ以下の剣。
 そんな剣が届くはずもなく、簡単に弾かれガラ空きの胴を蹴られる。

「かっ…!?」

 HPが数ドット減少。再び立ち上がる気力も無く、もがくように二人から距離を取る。

「ひっ、いや、助け」
「いやー、それ俺らに言っちゃう? ねえ」
「はっ。違いねえ」

 二人の口の端が吊り上がる。
 殺される。

「いや、しにたくない、しにたくない、いやだよ、たすけてよ、だれか、だれか」
「誰も来ませーん」

 短剣で切りつけられる。HPが減少する。
 片手剣で斬られる。HPが減少する。
 短剣で突かれる。HPが減少する。
 片手剣で斬り払われる。HPが減少する。
 HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。HPが減少する。
 レッドゾーン。危険域。
 残り、一割。

「ぅ……ぁ……」
「あひゃひゃひゃひゃ! トラウマなっちゃった!? ねえ! こっちはすっごく楽しいよ!」
「はっ。ちょうどいい慣らしだったよ。練習台ありがとな」

 視界が赤く染まる。思考がまとまらない。頭の中は真っ白だ。
 形にならない後悔だけが濁流のように胸の内に流れ込む。
 始まりの街に引きこもっていればよかったんだ。最初から、ずっと、誰かがこの世界を終わらせてくれるんだって。
 最初から無理だったんだ。僕みたいな弱虫が、この世界を剣一本で生きていくなんて。
 野々原。ごめん。もう、会えないかもしれない。
 最後までダメな坊ちゃんでごめん。
 苦労をかけてごめん。
 世話をしてもらってごめん。

 本当に、ごめん、なさい。

「じゃあ、ラストー!」

 剣に光が宿る。ソードスキル。
 紅く染まった刀身が、容赦無く僕に襲いかかり__

 __ライトグリーンのライトエフェクトがそれを吹き飛ばした。

「ぐぎゃっ!?」
「なっ!? て、てめ」
「おっそ」
「ぐっ!?」

 ……なにが、起こったのだろう。
 僕と二人の間に割って入るように一人の剣士が立っていた。

「いやー、びっくりしたよ。普通にマップに来たら他にプレイヤーがいるのにずっと動かなかったんだよ。いや、動いてはいたかな? 滅茶苦茶遅かったけど。こりゃなんかあるなーって思ったら突然別のアイコン、しかもオレンジ! これ、隠密のスキルだよね。あ、こりゃ危ないと思っていっそいで駆けつけたんだよ。いやー、さすが私。速い速い。ギリギリ間に合ったよ。おや? どしたのそのリアクション。まだ戸惑ってるねー。ダメダメ。そんなんじゃ遅い遅い。生きたかったら常に速くあれ。あ、これ持論なんだけど。だから今から君のことも速攻で助けて」
「うるっせえええええ!」

 大柄な男がラストグリーンの光を剣に纏わせ、疾風のような速さで目の前の剣士に突撃し、“何か大きな物が上へと飛んだ”。

「君、遅いね」

 いつの間にか剣を上へと掲げるようにして振り上げていた剣士。その姿はポーズが変わっていること以外は先ほどと全く同じ。何一つ変化はない。

 ドサッ。

 先ほどの“何か”が地面に着く。
 《腕》。それは《腕》だった。見間違えようもない。

「う、あぁあああああああああああああああああ!!?」

 絶叫。大柄な男が。
 肩から無くなった《右腕》を見て、絶叫した。

「君たちはオレンジ。オレンジを攻撃してもオレンジにはならない。__殺してもね」

 先ほどから変わらない明るい声音。それに、僅かに氷の棘が混じったような攻撃的な口調に変わる。

「まさか、攻略組」
「それはどうだろうね〜」

 一歩、踏み出す。

「ひっ」

 それだけで大柄な男は萎縮する。先ほどまでの姿は見る影もない。
 軽薄そうな男もまた、恐怖していた。

「私、結構強いよ? 君達二人ぐらいなら後ろの子守りながらでも余裕で相手できる自信がある。……さて、君達はどうする? 逃げるなら追わない。この子回復させなきゃだしね。でも君達の情報はきちんと広めておくから、もう表に出れるとは思わないことだね。もし二人で掛かってくるならそれでもいい。__その時は死んでも文句言わないでね」
「「ひっ、ヒィぁあああああああああああああ!!!」」

 二人は表情を恐怖に歪め、全力で逃げ出していった。
 僕はそんな光景を、ただ眺めることしかできなかった。
 目の前の剣士がこちらに振り返る。その時僕は、本当に遅まきながら、目の前の剣士が女性であることに気づいた。

「さて。君も早く立って。はいポーション。飲んで回復しといてね。四肢がくっついて状態異常もないならこの世界は気力次第で何処までも走り回れるから気合出してね。さっさとしないとMobがどんどん集まってくるから。いやー、さっきの奴らが大声でMobを呼び寄せるなんてことにでなくて良かったよ。さすがの私も君を守りながら無限に沸くMobとか勘弁だからね。冷静さを欠いて尻尾巻いて逃げてくれて助かったー。やっぱり余裕奪うのが交渉のコツだよねー」

 早口でまくしたてるように喋りながらも、彼女はこちらへポーションを投げこちらに飲むように促す。
 一瞬毒かと思ったが、この人が僕を殺す気なら今更どうしようもないと決め好意に甘える。ほんの少しの苦みと甘酸っぱい液体を飲むと、ゆっくりとHPが回復していく。

「あり、がとうございます」
「あ、いいよいいよ。プレイヤーはいつ助ける立場助けられる立場が逆転するかわからない。一人でも攻略してくれるプレイヤーが増えるのはいいことだしそれにあの場で見なかったことにして後々になっていやな想像が膨らみ真実がわからないから「ああ、あの時見に行っていれば」みたいな思考に囚われるのとか嫌だからね。メシマズなっちゃうからね。美味しい物は美味しく食べたいもの」

 本当に、本当によく喋る人だなー、と失礼なことを考えていた。
 ぼんやりとここがフィールドである事も忘れ聞き入っていると、不意に目の前に手が差し出される。

「じゃ、行こっか。私《キャシー》。君は?」
「……《コウ》」

 手を繋ぐと、グイッと引っ張り上げられ、彼女の顔が近くから僕の顔を覗き込む。

「よろしくね、《コウ》!」
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised ( No.3 )
日時: 2016/01/02 04:42
名前: デス

このサイトに干渉するのは何年振りだろうか……お久し振り。

そして明けましておめでとうございます、ネームレスさん。デスであります。


ここんとこのリアル事情は金銭的に余裕が出来ましたが時間的に余裕0となった為あっちゃこっちゃに浮気して自分の創作活動を放棄し、ひたすら受動のスタイルをとっておりましたw

ということでちょっと実家に帰ってきた気分で覗いてみたらネームレスさんが素晴らしい作品を執筆なさっていたのでこうして感想を書き込んだ次第でありますよ。


で、肝心の感想なのですが、すいません、一番最初に驚いたのがネームレスさんの文章力でした(笑)。誰の視点でどういう風に話が展開されているのか、場面の描写はどうなっているのか、淡々と状況を拙い言葉で云うだけになってないか。そーいう素人さんのネット小説読む時、毎回私が気にしてる部分がオールパーフェクトでした(何様ですかおのれは)。本当に数年前の作品と比べてダンチだと思います。

そんな感じで何にも気にすることなくスラーっと読めまして、読んだ結果、


「東宮ガンバッ!」


もーーこれだけですね言いたいことは(笑)。こういう未熟な男の子が傷付いて転んでボロボロになりながら、それでも自分の足で確り立ち上がって、前向いて踏ん張って、一人じゃ無理な時でも周りの人に支えられて、段々と進んでいく。そんな王道成長物語を感じさせてくれました。

これから逞しくなっていくであろう東宮君を妄想すると胸がバクバクしてきます(笑)。

それとログインしている他の原作キャラ(両方)との邂逅も待ち遠しいですね。やっぱり二次創作の醍醐味は原作と違う展開、人物と出逢った原作キャラ達の反応だと個人的には思っておりますので。勘違い物大好物ですはい(笑)。その時の心理描写等も期待してます!


長々と軸の定まってない文章すいませんでした(苦笑)。これからも執筆頑張ってください!

それでは!
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised ( No.4 )
日時: 2016/01/02 23:28
名前: ネームレス

〈レス返し〉
※お詫び:こちらの方で本編内容に関係無いと判断した部分はスルーさせていただきます。申し訳ございません。

感想きちゃいましたー! やったぜ! やりました! やっちゃったぜ!
こんなテンションでやっていくのは私ことネームレスと申します。よろしくお願いします。

そんなわけでデスさんあけおめことよろでございまーす! 感想あざーっす!

>そんな感じで何にも気にすることなくスラーっと読めまして、読んだ結果、


「東宮ガンバッ!」


もーーこれだけですね言いたいことは(笑)。こういう未熟な男の子が傷付いて転んでボロボロになりながら、それでも自分の足で確り立ち上がって、前向いて踏ん張って、一人じゃ無理な時でも周りの人に支えられて、段々と進んでいく。そんな王道成長物語を感じさせてくれました。<

東宮は私自身も好きなキャラですので、どうにかしてこの子を活躍させたい! と考えたら当時少し構想としてのみ考えていたSAOクロスの主人公にしようと考えました。今後も傷付き、ボロボロになり、心が折れて前を見れなくなる……そんなことがあるかもしれませんし無いかもしれません。どっちでしょうね?←作者
これからも日進月歩で進んでいく東宮の成長をどうか見守ってください。そして私が途中で投げ出さぬよう見張っていてください。

>これから逞しくなっていくであろう東宮君を妄想すると胸がバクバクしてきます(笑)。<

Q.東宮は逞しくなりますか?
A.それがわからない。
作者として今後どうなっていくのかをここでバラせないのが辛い。とりあえず無双はしません。

>それとログインしている他の原作キャラ(両方)との邂逅も待ち遠しいですね。やっぱり二次創作の醍醐味は原作と違う展開、人物と出逢った原作キャラ達の反応だと個人的には思っておりますので。勘違い物大好物ですはい(笑)。その時の心理描写等も期待してます!<

ここから少し真面目な話になります。
実はというかなんというか、この作品は“SAOキャラを積極的に出す気がありません”。言ってしまえばこの世界は“ハヤテのごとく! にソードアート・オンラインの世界観のみを委託した”ということです。原作及びアニメを知ってる人でナーヴギアの開発者の名が変わっていることに気付いた人は気づいていたかもしれませんが、この時点でヒースクリフが出る可能性はゼロです。先に言っちゃうとキリトとアスナも出ません。私は気分で書くタイプなので他キャラはわかりませんが、それも積極的に出す気はありません。
他作品ごとのキャラの邂逅を楽しみにしていた方々には申し訳ございませんが、この方針を変えるつもりはありませんので、今後この作品を読むにあたってはその事をご理解の上お願いします。この度は私の不手際で説明不足であった事をお詫びします。

>長々と軸の定まってない文章すいませんでした(苦笑)。これからも執筆頑張ってください!


それでは!<

先ほどの説明の後だと凄え気まずいですが、この作品をお読みいただき本当にありがとうございます。執筆の方も頑張りますので、拙い文ではありますが、お付き合いしていただければと思います。
デスさん。ありがとうございました。
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised ( No.5 )
日時: 2016/01/03 01:29
名前: ネームレス

【第四話:実は状況はなに一つ進展していないということに書き終わってから気付いた】
「いやぁー! 命あっての物種だとはよく言うけど本当に生きててよかったよかった! あ、改めて自己紹介するね。私の名前はキャシーだよ。よろしくね! こう見えて攻略組なんだよ。この世界じゃ性別の差は存在しないから女でもその気になりゃあそこらの男どもよりいっぱい強くなれるんだよ。む? その顔は攻略組について聞きたそうだね。いいだろう教えてしんぜよう。攻略組というのは現時点でゲームクリアに積極的な人たちの事だよ。レベル上げて装備を強化してボスを倒すぞー! って意気込んでる人たちの事を敬意を込めて攻略組と誰かが言い始めたんだよ。で、私もその一人。なぜ攻略組である私がこんな最初の村にいるかというと__」

 ……。……よく喋る人だなぁ。
 僕の周りでこんな喋る人は見た事がない。こんな一方的に自分の情報だけを伝える、というよりは押し付けるタイプの子は初めてだと断言できる。そのぐらいよく喋る子だった。
 おかげで先ほどまでの恐怖心とかも和らいできたけど、彼女がそれを狙ってやっているのかまでは判別できない。

「__てなわけだよ。さて、今度はコウの番だよ」
「……うぇ!? ぼ、僕!?」
「当たり前だよー。レディにだけ話させるなんて紳士じゃないぞー。ほーらほら。ここで会ったのもなにかの縁。自己紹介しなさいな。さらっとでいいよー。深いとこまで教えられても扱いに困るから」

 なんというか、物怖じしない人だ。誰にでも堂々と出来るのは桂さんに通じるところがあるかもしれない。

「ぼ、僕の名前はコウ。えっと、今日この村にきて、秘薬クエを受けたんだ」
「ふむふむ。三日遅れで動くとは大胆だねー」
「あ、はは。前の人たちとはかなり離されちゃったよね」

 今更ながら自分の決断の遅さに後悔する。三日遅れ。この遅れをこの世界で取り戻すのは至難の技だろう。常にログイン状態を強いられるのだから、家の事情も何も関係ない。先に「動く」と決めた者からその分前へ進めるのだ。
 僕なんかが行っても足手まといにしかならないし、覚悟していた事とはいえ、初日のアインからの誘いを断らなきゃ良かったと思ってしまう。
 ところが、

「ううん。実はそうでもないよ」

 と、彼女は言った。

「何分ネトゲ経験者って結構いないものでねー。さらにはナーヴギア初のVRMMOと来たもんだから今はみんな足踏みしてる状態なんだよね。今迷宮区をみんなで探索してるところだけどいやはや見つからない見つからない。さらにはボスは七人パーティを七つまで、最大四十九人で挑む事ができるという前提がある以上強敵確実でしょ? 今だいたい二十人ぐらい集まってて初の大規模戦闘ということもあってパーティの運用とかここの役割とかパーティ線における最低限の立ち回りの基本とかそういうのも情報共有して練習中だし足踏みしてる状態なんだよね。それに君、秘薬クエのキーアイテム取ったってことはアニールブレード入手するんでしょ? ああ、警戒しないで私はもう持ってるから。わざわざ助けた命を捨てるような真似はしないよ。とにかく君がこれから頑張れば、まあ二層ぐらいからは参戦できると思うよ?」

 ふぅー、と一息。
 激流のごとく伝えられた情報を必死に拾い、頭の中で整理していく。その中で気になったことがあった。答えてもらえるかはわからないけど、聞いてみよう。

「あ、あの」
「なになに?」
「ベータテスターの人たちは? その人たちの知恵を借りれば、もっと楽になるんじゃ」

 ベータテスター。
 このソードアート・オンラインという世界を正式サービス前に短い期間だが体験する事ができた千人。この人たちがいれば、この世界は少なくともベータテストでクリアされている階層までは楽なんじゃ……。
 そんな楽観的思考を切り捨てるかのように、彼女の言葉は鋭く言い放たれた。

「半分は死んだ。もう半分は姿をくらました」
「……え?」
「この世界の理(ルール)を教えようか。この世界はリソースの奪い合いなんだ。無限に出る物じゃない。物によっては本当に先着一名様のみのアイテムとかあるしね。少し話は変わるけど、この世界で生きるにはどうすればいいと思う? 答えは強くなること。強くなるためには誰よりも早く行動することと、誰よりも多く情報を集めること。ベータテスターの皆さんは全員スタートダッシュをして“他プレイヤーを置き去りにしたんだ”。もちろん、みんながみんなそうじゃない。だけど、大抵のベータテスターが情報抱えて多くの経験値やアイテムを独占しちゃったもんだから一般プレイヤーのベータテスターへの怒りの感情は尋常な物じゃない。この狂った世界でまだいろいろと浮き足立ってる状況だから尚更ね。そこに自分がベータテスターだと名乗って行ける勇気もなく潜伏するような感じで攻略組と行動を共にしてるんだよ。で、これは秘密のルートで手に入れた情報だけど情報に溺れ経験値効率のいいけどその分危険度も倍に膨れ上がるソロの道を走ったベータテスターがその慢心からか半分近くがすでにこの世からサヨナラバイバイしちゃってるんだよね。むしろ、君みたいなプレイヤーの方がいっぱい生き残ってるんだよね」

 結論を言えば、ベータテスターの知識は当てにできないということだ。
 このままだと攻略にはかなりの時間を消費してしまいそうだ。

「ま、理由はそれだけじゃないけど」
「なにか言った?」
「なーんでも。あ、そうだ。ベータテスターが何にもしてないわけじゃないよ。店で無料配布してる攻略本にはベータテスターたちの知識も使われてるんだから。攻略組に中にはベータテスターを受け入れようと周りに説得している人たちもいるしね」
「そうなんだ」

 おそらく、動いている人たちというのはアインたちだろう。誰々が来ているかはわからないけど、綾崎が来てるならまずベータテスターを見放す選択はしないはずだ。
 さらに多分だけどアインも綾崎もどちらも主人が一緒の可能性がある。アインがそれっぽいことを言ってたし、綾崎の主人の三千院はゲーマーだから執事がいるなら絶対いる。そうなれば、アインはともかくとしても綾崎なら三千院を守るよう立ち回るはず。なら、有用な知識を持ってるベータテスターを放置はしないはずだ。そしてアインなら無条件で綾崎の手伝いもするだろう。
 ……そうか。みんな動いてるんだ。生き残るために。

「どうしたの?」

 彼女は不思議そうな顔をして僕を見る。
 彼女なら、協力してくれるだろうか。
 僕は、ずっと考えていた。もし今、僕が攻略組になったとして、僕が入るポジションはあるだろうか?
 今はあるだろう。頑張って強くなれば現状数に余裕があるうちは置いてもらえる。
 しかし、もっと先では?
 僕は弱い。とても弱い。そんな僕がいつまでもボス攻略に役立つとは限らない。むしろ、足を引っ張る可能性すらある。
 なら、僕が居るべきは“外のポジション”だ。でもそれには協力者が必要。でも彼女ならきっと。

「うん。ねえキャシーさん。君は攻略組だって言ってたよね」
「うん。そだよ。あとさん付けはいらない」
「なら、僕とフレンドになってほしい」
「なんで?」
「なんでって……」

 ここで断られるのは予想外だった。彼女……キャシーはこれまでの短い時間ではあるけれど、とても親切で優しい対応をしてくれたから。
 無条件の善意というのを、キャシーに期待している自分がいた。

「ねえコウ。あなたは私にもしかしたら親切で優しい、って印象を抱いてるかもだけど、私は理由もなくフレンドになってあげるほどお人好しでもないよ」

 その言葉は、自分が先ほどまでキャシーに抱いていたものとは、全くの正反対の内容だった。
 キャシーの目つきが、言葉の質が変わる。

「フレンドを交換すればいつでもどこでも相手の場所を確認できる。少なくとも普通のフィールド上であればどこでも。つまりフレンドってのは相手を信用するという前提なわけだ。コウは私を信じているのかもしれないけど、私はコウを自分の場所をバラしてもいい相手だと、この短い時間じゃ思えない」

 それは、僕を襲った二人のプレイヤーの時と同じものだった。
 明確な敵と認識する直前のたいどだった。

「ねえ。君が私を必要とする理由を教えて?」

 恐怖した。
 あの二人のプレイヤーに向けられていたものが、今自分にも向けられている。
 手足が震えていた。
 今、彼女の目には僕はどう見えているのだろう。
 目を逸らしたかった。迂闊なことを言った僕を殴ってやりたかった。
 ……でも

「僕が、君を必要とする、理由は……」

 これは、最初の一歩だ。

「僕が君を通じて攻略組に情報を流したかったから」

 伝えた。僕の意思を。

「……続けて」
「……僕は、弱い。あの二人のプレイヤーに襲われた時、何もできなかった。ゲームとしての強さじゃなくて、心がもうどうしようもないくらい弱いんだ。きっと、ボスを目の前にしてしまったら僕は何もできなくなってしまう」

 自分が情けない。
 こんな事を平気で言えてしまう自分が情けない。
 弱い事を認めてしまう自分が情けない。
 ボスから逃げたい、戦いたくないという魂胆がバレバレの自分が情けない。
 情けなくて、逃げ出したくなる。

「でも、何もせずに籠っているのは絶対に嫌だ」

 でも、逃げ出したくない。
 生きて帰った時、“逃げた自分”ではいたくない。
 野々原に誇れるような、そんな自分になりたいんだ。

「だから僕は《探索者》になる。今はベータテスターの知識があるから必要ないかもしれない。けど、いつか絶対に情報が必要な時がくる。その時に必要な情報、求められたモノを手に入れれる存在が必要だ。その存在に僕はなりたい」

 それが、僕の出した答えだった。

「……つまり君は、私に君の手に入れた情報を攻略組に流してもらいたいって事だね?」
「うん」
「なるほどなるほど。立派だね」

 これなら、納得してもらえただろうか。

「でもダメ」
「なんで!?」

 今のはOKの流れだったじゃん!
 そんな動揺する僕を真っ直ぐ見つめ、

「君。まだ隠してる事あるでしょ」

 と、笑顔で言ってきた。
 ドキリ、とした。
 たしかにある。二つある。
 一つは僕はすでに、攻略組とのパイプがあるということ。
 僕は初日のうちにアインとフレンドを交換しているのだ。もし僕の想像通り、アインたちが今最前線で動いているなら、事情を話してアインに情報を流して貰えばいい。
 しかし、僕はそれをしたくなかった。理由を問われれば簡単。協力してもらえばアインは確実に手伝いにくる。彼が前線から外れるのは僕の望むところではない。
 そしてもう一つは、僕個人が人と接したくないからだ。
 バカな理由かもしれないけど、正直知らない人と話すのは怖い。目の前にいるキャシーのようにずかずか入り込んで来る場合は例外ではあるものの、それだって本当は避けたい。だから情報を流すにしても間接的な方法をとりたい。別の人に代わりに流してもらうような。
 以上二つの理由から彼女に頼んだわけである。

「コウ。あなたの事情には首を突っ込まない。だけどこれだけは言うね。

 情報は凶器だよ。

 嘘の情報を流せば間違った情報を信じたプレイヤーはそれによって命を落とすかもしれない。あなたが今取り扱おうとしているのは、そんな簡単に人に預けても、流してもいいものでもない」
「う……」

 そう言われると、なにも言えない。僕の考え自体、その場の思いつきのようなものだから。
 やっぱりダメか、と諦めかけた。

「でも、発想自体は悪くない」

 そんな僕を前に彼女は続けた。

「私は無理でも、情報屋ならいいと思う。この場合は取引かな。君は情報屋に情報を売り、情報屋は君から買った情報をプレイヤーに売る。情報の真偽は情報屋に証明してもらえばいい。情報は鮮度と正確さが命。君に協力してもらえるなら情報屋も助かると思う」

 情報屋。そうか、そういうのもあるのか。
 たしかに情報屋として動くと決めてる人たちなら僕みたいな思いつきで動く奴とは違ってそういったものの取り扱いに慣れているだろうし、適任だろう。
 だけど、

「僕には」
「情報屋の知り合いがいないなら私が紹介してあげる」

 全部を言う前に言われたし解決策も提示された。どうやらキャシーの中では早くも僕がどういった人種なのか位置付けされてしまったようだ。
 ……悲くなんてない。

「いやぁー、今日は実りのある一日だったよ。これもコウのおかげだね! じゃ、頑張ってね《探索者》のコウ。情報屋は明日には来るように言っておくから! こうなったら急がないと! バイバーイ!」

 一度こうと決めた瞬間、突風のように走り去っていった彼女は嵐のようだった。
 そして、彼女の会話のペースに呑まれスルーしていたけど、

「……結局、知らない人と話すのか」

 動けばいずれはアインにも知られるだろうし、協力を求めるなら遅かれ早かれだ。
 とは言え、幾ら何でも明日には来るって早すぎではなかろうか。

「……はぁ」

 誰が来るかはわからない。けど、心の準備だけはしておかなければ。
 なんというか、明日が来なければいいと心から願った。

 クエストも終わらせなきゃなぁ……。
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised ( No.6 )
日時: 2016/01/10 20:42
名前: ネームレス

【第五話:そろそろ1層クリアしてもいいんじゃね? というかさせたい】


「……はぁ」

 あの後。僕はクエストのキーアイテムを例の親子へ渡し、報酬である《アニールブレード》を入手する事ができた。
 できた、のだが。

「結局、完治はしないか」

 クエストは達成した。しかし、病気の少女が完全に回復する、という事はなかった。
 まあ、当たり前と言えば当たり前だ。
 魔法を限界まで削られた剣だけのファンタジー。リアルな非日常とも称すべきこのゲームでは、ちょっと特殊な素材を使っただけの薬を一回飲ませたぐらいで天から光が降り注ぎ、まるで先ほどまでの病弱さが嘘のように辺りを走り回るぐらいになるまで回復する……なんて事はない。そんな事が起きたら世界観がおかしくなる。
 あの少女は薬を飲み、少しだけ元気になった……ような気がする。本当にその程度の回復だった。
 まあ、所詮はNPC。クエストで報酬を手に入れる過程で少しだけ関わるだけのキャラだ。いちいち気にする事もない。
 けれど。
 少しだけ期待したんだ。自分が持ってきたアイテムのおかげで、劇的に回復することを。自分が何かを成す事が出来たという事を分かりやすい結果で見たかった。相手はNPCではあったけど、助けたという実感が欲しかった。
 そんなぼくの浅ましいにも程がある考えはあっさりと否定され、彼女はこれからも新しく剣を求める人々が現れる度にまた病気になり生死をさまよう事になるだろうし、何れは見向きもされなくなるんだろうけど。
 でも、なんだろう。そんなのは、嫌だな。
 ……時間がある時は、会いに来よう。意味がなくてもいい。ただこのままなのは、嫌だ。

「……さて、と」

 とりあえずはつぎのもんだにでも取り掛かろう。
 ……今日の宿はどうしようかな。



「そういえば待ち合わせとかどうするんだろう」

 昨日、キャシーが言っていた情報屋。もうこの際会うのはしょうがない。僕が望んだことだし。しかし、キャシーと結局フレンドが交換できなかった今、合流の方法がわからない。

「もしかして、からかわれたのかな」

 最悪の想像が浮かぶ。
 口では共感したようなことを言って、内心はとても呆れていたのではなかろうか? それで会話を打ち切る口実として情報屋を紹介すると言って、早々に立ち去った?

「……有り得る」
「何が有り得るのか聞きたいところだが、君がキャシーの言っていた自称《探索者》か?」
「ビョァアアアアア!?」

 ごめんなさいごめんなさい僕みたいな奴が人を疑うなんて最低の行いをしてごめんなさい出来心だったんですだって僕に親切にしてくれる女の子ってそれだけでもうレアっていうかキャシーほどの美少女なら各方面から引っ張りだこだろうしなんで僕なんかに親切してくれるのかって疑う気にもなっちゃうじゃないですかだからこれは本当に出来心で……

「……て、あ、あれ? あなたは?」
「こちらではリアルネームは厳禁だから先に自己紹介をさせてもらう。私は《miki☆nyan》……まあ普通にミキでいい」
「……あ、僕は《kou》。コウでいいです」

 それはもう本名なんじゃ。
 喉元にまで出かかった言葉を飲み込み自己紹介をする。
 しかしというかなんというか、これはいったいどういうことだろう。
 いやだって、目の前で顔にデカデカと「不本意だ」とでも書いてそうなぐらい苦々しい顔で自己紹介をしてくれたのは、僕も知ってる人だから。
 花菱美希。
 生徒会に所属し朝風理沙、瀬川泉とよく一緒にいる僕と同じ白皇学院の二年生。政治家の娘で情報収集を趣味としている少女。
 それがまさか、

「ミキにゃんという名前でゲームを始めるなんて」
「わ、私だってもう少し普通なのをと思った」

 あ、声に出ていたっぽい。

「しかし、ゲームみたいなものでイズ……あー、エロ担当に付けられたんだ」

 なんて酷い紹介の仕方だろうか。幾らリアルネームは厳禁だからって。

「えーと、いつもの三人でお互いに名前をつけあったとか、そんな感じ?」
「だいたいその通りだ」

 もしこのゲームが普通のゲームであれば、それでも良かったのだろう。ちょっと恥ずかしいかもしれないが、仲間内で少しネタになるぐらいだ。
 それがこのデスゲームで容姿までリアルの自分のものを引っ張り出されてしまえば、この名前はとても恥ずかしいだろう。しかもほぼ本名だ。

「あ、あー。それで、キャシーからどれくらい聞いてる?」
「……」

 冷たい視線が刺さる。話題を露骨に避けたのはバレバレだ。
 正直、僕が白皇学院で交流があるのは綾崎ぐらいで、アイン……虎鉄くんともリアルじゃ登山の時に少し一緒になったぐらいだ。あの時は綾崎絡みで若干不仲になったり大変だった。
 ぶっちゃけほぼ交流が無い。桂さんとも少し剣道で関わるぐらいで日常生活における関わりはゼロだ。
 まあ、何が言いたいかというと、キャシーの時もそうだったがそこまで親しいわけでもない女子に睨まれ現在僕は吐きそうである。

「……キャシーからは君がキャシーに話した内容については聞いてる」

 が、彼女の方もあんまり続けたい話題では無かったようで会話に乗ってもらった。
 ……助かった。

「コウは自称《探索者》で、主に情報収集にアイテム収集。他には未踏破エリアの探索などをメインに活動し、手に入れた情報は情報屋である私と取引する。この内容であっているか?」
「う、うん」
「で、ボス攻略に積極的に参加する気はない」
「……うん」
「さらには知り合いにはできれば会いたくない」
「……」

 否定できないのが辛い。いや、ある意味知り合いにはもう会っているけれど。目の前に。
 聞きたいことは聞き終えたのか、質疑応答、というよりは確認作業が終わると、少しミキは考え込む。というかほぼ交流の無い女の子を本名で呼ぶのって凄い違和感が……いやキャラネームでもあるから不自然では無いんだけれど。

「ひとつ提案がある」
「は、はい」
「情報の取引についてだが、やはり私はできるなら自分の目で確認したい」
「はい」
「だからどうだろう。君は私のボディガードのような立場になるというのは」
「ぼ、ボディガード? それはつまり僕がみ、ミキ……さん、の護衛をするってこと?」
「呼びにくいなら呼びやすいように呼んでくれ。まあそういうことだ。君だって、いきなり知ら無いエリアに投げ出されてなんのノウハウもなく情報集めるのは嫌だろう?」

 確かに嫌だ。

「えっと、じゃ、じゃあお願いします?」
「そうか。じゃあ行こうか」
「……え?」
「今日は迷宮区の攻略に行くぞ? まだボス部屋までのマッピングが終わってい無いんだ」

 迷宮区。
 全ての層に存在し、階層主(ボス)がいる場所。こいつを倒すことで次への階層への道が解放される。そして、その階層における最終ステージのようなものでもあり、その時点で最も強いMobが設置されているって攻略本に……。

「……いや。無理でしょ」





 このゲーム《ソードアート・オンライン》は全100層のステージで構成されている。
 1層1層がとてつもない大きさで、従来のゲームの常識をぶち破る、恐らくあらゆる意味で伝説に残るゲームだ。
 そして、それぞれの層にはきちんとテーマが設定され、そのテーマに沿ったステージ構成、Mobの設定がされている。
 現在、僕が今いる第1層のテーマは言うなれば《チュートリアル》だ。全ての階層のなかでも最も広い階層であり、存在するMobも多種多様。戦闘の練習にはもってこいだ。
 第1層迷宮区を守護するMobはコボルド、と呼ばれる種類だ。たしか妖精や精霊の類だったはず。妖精、と聞くとあまり強そうに聞こえない。
 しかし、まあ、当然というかなんというか。
 ゲームが始まって三日間。何もせず引きこもり、やっとか行動起こしてクエスト一つ消化するもののレベル上げの類はしていない。そんな僕が迷宮区に入ればどうなるか。
 少し想像すれば想像もつくと思う。





「うわああああああああああ!!! 死ぬ! 死ぬ!」
「三連撃の後に必ず隙が出来るからソードスキル一本撃ってすぐに下がれ。大して速くないからよく見れば初見の対処も容易いぞ。弱点は首。ホリゾンタルなら狙いやすい。複数体が相手の場合は常に囲まれないように立ち回ればいい」
「言ってないで助けてください!」
「私は敏捷に振ってるから攻撃力が無いんだ。少し攻撃して経験値だけ貰うから後は頑張ってくれ」

 なんて横暴な!
 そんなこと思ってる間にも三連撃の最後の一撃をギリギリで避ける。あ、掠った。HPが5%ぐらい減った。

「っ!」

 剣を構え、光を帯びたのを確認してから思い切り踏み込み、全身を使って剣を振るう。片手直剣系ソードスキル《ホリゾンタル》。水平に振り抜かれた剣が敵の首を……あ、やばっ!
 ガキーン! と金属同士がぶつかった音が酷く反響する。僕が放った《ホリゾンタル》が狙っていた首の位置より上の部分に振られ、コボルドが装備していた兜に当たり、弾かれてしまった。致命的な隙が生まれる。

「キシャアア!」
「ごふっ!」

 かなり大振りの一撃が僕の腹にヒット。硬直していた僕に抵抗が出来るはずもなくホームラン。二度ほどバウンドし地に伏せる。HP3割減少。

「ぷはぁっ!? 死ぬ! 本気で死にますってこれ!」
「はぁ。これから君はたくさんの未開地に赴くのだぞ? そうなればMobも今みたいに情報ありで戦えるとも限らない。というか、まず無しで戦うことになる。なぜなら君がその情報を得なければならないからだ」
「うぐっ」
「もしぬるい覚悟で来たのなら悪いことは言わない。最前線からは引いたほうがいい」

 その言葉には呆れとか期待外れといった感情はなく、僕の心配をしての言葉だというのはすぐに分かった。
 彼女の言うことも最もだ。これから僕は一人でこのクソッタレな世界で戦わないといけない。戦うと決めたんだ。なのに、情報まで与えられてこの始末。さらには文句まで……。

「……いや」

 ダメだ。これは僕がやると決めたんだ。僕が自分の意思で決めたのに、みっともない姿は見せられない。
 もう、“弱虫東宮”は卒業したいんだ。

「やります!」

 ポーチからポーションを取り出しぐびっと飲む。これでじわじわとHPは回復していく。が、回復を待つ暇は無い。
 もう一度剣を構え、目の前のコボルドに剣を振るった。

「行くぞ!」



 *




 今私の目の前で戦う見た目に頼りない少年は懸命に剣を振るっていた。
 何度も攻撃をくらい、その度に立ち上がる。そして、次の攻防にはほんの少しだけ、先ほどよりも上手く動く。
 何度も傷を負い、傷の数だけ成長する。
 あの人外どもと比べると明らかに劣っている。しかし、倒れてもすぐに立ち上がるその姿は見ているものに勇気を与える。

「東宮康太郎。思ったより骨がありそうだ」

 ようやくコボルドを倒し、大の字で寝転がる少年に目を向けて、言葉をこぼす。
 労いの言葉でもかけようと近づき、彼の顔を見下ろす。彼は私を見ると達成感からかふにゃっとした笑顔を浮かべた。私はそれに返すように笑みを浮かべて、

「ヒナはやらんぞ」
「くぁwせdrftgyふじこl」

 意味不明な叫びを上げ、のたうち回るコウを放置し、マップの確認をする。
 私の情報網はヒナに恋する全ての野郎どもを把握している。ゆめゆめヒナに色目を使おうとは思わ無いことだ。
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised ( No.7 )
日時: 2016/02/19 10:52
名前: ネームレス

【番外編:書きたいことがあるから始めたのにちっともストーリーが進まねえ! だから俺は番外編を書く】



 第四十七層フローリア。広場にはたくさんの花が咲き誇り、デートスポットとしても人気なエリア。
 さらにここには多くの植物系のアイテムをドロップする事ができ、ポーションの材料になったりもするため一部のプレイヤーにも人気がある。
 そんな階層であるフローリアには現在、人気の店がある。

 イーストガーデン

 ここにはフローリアだけでなく、最下層から最前線までの幅広いエリアで手に入る植物系アイテムが多種多様に存在する。そこには、情報のみ存在し、入手方法が不明とされているエリクシール__体力や状態異常、部位欠損などのダメージを全て回復する__の原材料となるS級アイテムも存在するため、多くの調合師がその店に足繁く通っていた。
 だが、この店には謎があった。開店以来、誰も店長となるプレイヤーを見た事が無いのだ。
 元々あった店ではなく、ある日急に現れた店であり、品物も週一ほどのペースで更新され続けている。さらに普通は店では買えないようなレアアイテムも存在する事から、確実にここを誰かが経営してるのは間違いない。しかし、毎日のように通うプレイヤーでさえその姿を見た事が無い。いるのは雇われているであろうNPC店員のみ。
 イーストガーデン。多くのギルドがアイテムを優先的に売ってもらおうと店長の姿を探すが、その正体は誰も知ら無い__










 __わけではない。

「あ、あやさ……ウインド。また価格の相談したいんだけど」
「あ、おはようございますコウ。種子ですか? 花ですか? それとも薬草でしょうか」
「今回は花だよ。珍しいのが入ったんだ。栽培に成功して数が増えてきたから売ろうかと思って」
「それはなんという花ですか?」
「《ラックティア》ってアイテムで、見た目もきれいでちゃんと鉢植えに入れておけば一ヶ月ぐらいは持つよ。あと、ちょっとコツがいるんだけど栽培の仕方次第でラックティアから雫が採取できるんだ。その雫は使用すると一定時間レアドロップの確率が上がるんだ。そっちの雫は別売りしようかと思うんだけど」
「幸運の涙、ですか。凄いアイテムじゃないですか。……って、それ情報屋のアイテム名鑑に乗ってたレアアイテムじゃないですか!」
「ははは……。まあそうなんだけど。頼めないかな」
「うーん、そうですね……効果、レアリティ、一日の栽培量、だいたいこのぐらいでは?」

 そうやってウインドが提示してきた値段を見て、ちょっと顔をしかめる。

「少し高くないか?」
「相変わらずですね。僕からしたら喉から手が出るほど欲しいアイテムですよ。花本体の値段はもっと低くてもいいと思いますが、雫単体ならもっと高くていいレベルですよ?」

 そういうものなのだろうか?

「まあ、コウからしてみたらあまりわからない有難さかもしれませんね」

 そう苦笑しながらウインドは言ってきた。なんか失礼じゃないか?

「そりゃあ、僕は使わないけどさ」
「違いますよ。コウにかかれば、大抵の植物系アイテムは量産可能だからという意味です」
「ああ、なるほど」

 ウインドが言うには、僕が栽培する一部のアイテムはボスのLAボーナスを量産してるようなものらしい。言い過ぎな気もするが、それだけの事をしているという事だろう。自覚は無いが。

「まあわかったよ。ありがとう。この値段で売ってみる」
「今度買いに行きますね」
「ウインドたちになら直接売ってもいいんだけど」

 というかただで提供してもいい。別に金目的でやってるわけではない。完全に趣味だ。
 ある日、日々の戦いに疲れ果てた時にミキさんが「スキルスロットに余裕があるなら生活系スキルでも覚えてみたらどうだ?」と言ってきたので、前から気になっていた《園芸》スキルを取ったのだ。
 最初は一度に育てられる量、種類などが多く制限され、唯一育てる事ができたのはNPCショップに売られていた何の効果もないただの花。
 しかし、育っていく過程が意外とリアルだったので__時間は超短縮されていたが__味を占めた僕は一気にはまった。
 それ以来、冒険の合間に熟練度を上げてはやり方を工夫したり、拾った種やドロップした根などから多くの草花を栽培していった。最近は食材なども量産している。
 しかし、作るだけ作って自分じゃ使い切れない状況になってしまい、相談したのがアイン(虎鉄)とウインド(ハヤテ)だった。その結果がイーストガーデンである。
 それが今ではそれなりの人気店になり軽く城を建てれるぐらいの財産が溜まっていたりするのだけど、僕は作っているだけだから店の経営のアドバイスや値段設定は全部アインとウインドのおかげである。だからこの二人になら余った分は上げてもいいもだけど……。
 しかしウインドは少し笑って「お気持ちだけで十分ですよ」と言うだけだ。

「なにか欲しいものがあれば店の方に出向かせてもらいます。探索の役にも立ちますしね」
「うーん、わかった」

 アインにも同じような感じに断られた。でもまあ、二人が納得してるならいいか。

「あ、じゃあせめて野菜はもらってくれないか? あれは店売りにするにしても長期間は置けないし、僕は料理スキル持ってないしさ」
「もう園芸っていうより農業ですよね」

 そこにはツッコまないでほしい。

「うーん……わかりました。食材関係はこちらで買い取らせていただきます」
「別にタダでも」
「ダメです」

 そこだけは譲れないとばかりに語気を強めて言ってくる。こうなったら絶対に折れないだろう。

「それじゃあ後でホームに来てくれ。そこで確認するから」
「わかりました。じゃあお金持ってきますね」

 そう言ってウインドは足早に去っていった。ウインドは何故か金銭トラブルが多発しているため、同じくログインしてる三千院……キャラネーム《マスク・ザ・レジェンド》__本人曰く、本来はマスク付けて謎キャラロールプレイをして楽しむはずだったとかなんとか__が管理しているらしい。
 普段から買うには身内の許可がいるなんて、大変だなぁ。

『坊っちゃま! お金があるからって無駄に使ってはいけません!』
『いいじゃんかよ! 野々原のケチ!』

「……主従、か」

 ぽつり、と呟く。
 その呟きは誰に届くでもなく空間に拡散し、溶けて消える。
 先ほどまでの楽しい気分が嘘のように冷めていくのがわかった。どうやら、自分のメンタルはこのSAOでそれなりの修羅場をくぐった程度じゃ全然成長していないらしい。
 堪えろ、漏らすな。何度も自分に言い聞かせ、溢れ出そうになる何かを必死に心の中でせき止める。
 そうやって少しの間、その場に立ち尽くしてからホームでウインドを待っていようと移動を始める。
 突然、ポーンと新着メッセージの通知が届く。

【ミキ:明日最前線の転移門前広場で集合。】

 ミキさんと組んでからもう何度も見たメッセージだ。恐らくは迷宮区のマッピングだろう。【了解。】と打ち込み返信。今のうちに準備しておかなきゃ。

「さ、頑張るぞ!」

 言い聞かせるように声を出す。
 東宮康太郎がkouとして生きて既に1年以上が経過した。
 最初は慣れなかった剣の重みも、戦闘も、世界観も、今ではすっかり日常となっている。
 いつか帰れるのか? 何度も思い、そしてそんな思考を振り払うように何度も頭を振る。
 帰るんだ。絶対に。そのために頑張ってる人たちがこの世界にはいるんだ。なのに、前に進むと決めた自分が止まるわけにはいかない。
 たとえ、傷だらけになるとしても。
















【オマケ】
 誰もが寝静まるような時間。闇が深まり、昼間であれば恋人同士が語らっているフローリアの広場にはだ人っ子ひとりいない。
 ……いや、たった一人だけ存在していた。
 鍛え上げられた隠密スキルにより姿を闇夜に隠し、同じく高熟練度だと思われる忍び足スキルによって音もなく動く。
 その身には夜の色、とでも言うべき色の外套を着て、迷うことなきその動きは視覚補助の効果もある索敵スキルのレベルの高さと普段からこの道を使う者独特の“慣れ”を感じさせた。
 もしこの者を見つけようとするのなら、索敵スキルをマスターするだけでは足りないだろう。今まさに、この者はこの世界の者からは認知することが出来ないほどにその存在を薄めていた。
 例え、イーストガーデンの店長を見つけるため、日夜イーストガーデンの前を張っている者がいて、その者のすぐ隣を横切ったとしても気づかれる事はないだろう。

「えーと、今週の収入は……うわ。すごい事なってるな〜。在庫はまだ余裕があるな。ラックティアだけ入荷して今日は帰るか」

 この東宮康太郎、kouの存在は。
 最初は普通に入荷していた。普通に夜中に入って、普通に消費した分を補充して収入を回収し、普通に帰った。
 スキルもアイテムも使わず、人目を機にする事なく通っていた。
 しかし、イーストガーデンがある程度の人気が誇ってからは何故かイーストガーデンの前に怪しげな人物__大手ギルドの団員。スカウト目的__が現れ始めたのだ。
 当然のようにコミュ症を発揮させ、持ち得る手段全てを使い、全力で姿を隠し、こっそりと入荷するようにした。
 そしたら、何故かイーストガーデンの店長、つまりは自分の事が七不思議扱いされるようになり、さらには事実を知るのが自分含め三人で、うち二人が最前線でも最優と呼ばれるギルドに所属している事からも、ギルド間の関係も考え秘密を明かす事が出来なくなってしまった。
 それ以来、コウは入荷の際には神経を極限にまで尖らせ、驚異的な集中力でイーストガーデンに出入りしなければいけない羽目になった。

「はぁ、ただ枯らすのが勿体無いから始めたのに、どうしてこんな事になったんだろう……」

 一人文句を言っても答えなど帰ってくるはずもない。
 灯りのない部屋を灯すのは、窓から僅かに入る月光のみ。
 そんな救いのないこの状況に、コウはただため息を吐くのであった。

−−−−−−−−−−
本編で使う予定はなかったけど妄想が膨らみ書きたかったものシリーズ第一弾。正直本編書くより楽しく書けてしまった。まあ楽しく書けたからといって文章のクオリティは上がらないんだけどね!
本編未登場の綾崎ハヤテの登場と三千院ナギのキャラネームをさらっと置いていくスタイル。さて、この物語どこまで続くかなあ?
この作者は、誤字脱字の連絡を歓迎しています。連絡は→[チェック]/修正は→[メンテ]
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised ( No.8 )
日時: 2017/05/14 00:29
名前: RIDE
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24

どうも、RIDEです。

ネームレスさんの作品読ませていただきました。



東宮が主人公という珍しい物語、結構面白かったです。
見知ったような気がする人たちもちらほら見えていて、シュールさが出ているような気がしました。


それとは対照的にキャラの心情をうまく語るシリアスな文章にも引きこまれました。
これだけの文章が書けるのも、ネームレスさんの熱意の表れですね。


これからもがんばってください。
どこまで続けられるか楽しみにしています。


それでは。
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