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対象スレッド 件名: Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised
名前: ネームレス
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised
日時: 2016/02/19 10:52
名前: ネームレス

【番外編:書きたいことがあるから始めたのにちっともストーリーが進まねえ! だから俺は番外編を書く】



 第四十七層フローリア。広場にはたくさんの花が咲き誇り、デートスポットとしても人気なエリア。
 さらにここには多くの植物系のアイテムをドロップする事ができ、ポーションの材料になったりもするため一部のプレイヤーにも人気がある。
 そんな階層であるフローリアには現在、人気の店がある。

 イーストガーデン

 ここにはフローリアだけでなく、最下層から最前線までの幅広いエリアで手に入る植物系アイテムが多種多様に存在する。そこには、情報のみ存在し、入手方法が不明とされているエリクシール__体力や状態異常、部位欠損などのダメージを全て回復する__の原材料となるS級アイテムも存在するため、多くの調合師がその店に足繁く通っていた。
 だが、この店には謎があった。開店以来、誰も店長となるプレイヤーを見た事が無いのだ。
 元々あった店ではなく、ある日急に現れた店であり、品物も週一ほどのペースで更新され続けている。さらに普通は店では買えないようなレアアイテムも存在する事から、確実にここを誰かが経営してるのは間違いない。しかし、毎日のように通うプレイヤーでさえその姿を見た事が無い。いるのは雇われているであろうNPC店員のみ。
 イーストガーデン。多くのギルドがアイテムを優先的に売ってもらおうと店長の姿を探すが、その正体は誰も知ら無い__










 __わけではない。

「あ、あやさ……ウインド。また価格の相談したいんだけど」
「あ、おはようございますコウ。種子ですか? 花ですか? それとも薬草でしょうか」
「今回は花だよ。珍しいのが入ったんだ。栽培に成功して数が増えてきたから売ろうかと思って」
「それはなんという花ですか?」
「《ラックティア》ってアイテムで、見た目もきれいでちゃんと鉢植えに入れておけば一ヶ月ぐらいは持つよ。あと、ちょっとコツがいるんだけど栽培の仕方次第でラックティアから雫が採取できるんだ。その雫は使用すると一定時間レアドロップの確率が上がるんだ。そっちの雫は別売りしようかと思うんだけど」
「幸運の涙、ですか。凄いアイテムじゃないですか。……って、それ情報屋のアイテム名鑑に乗ってたレアアイテムじゃないですか!」
「ははは……。まあそうなんだけど。頼めないかな」
「うーん、そうですね……効果、レアリティ、一日の栽培量、だいたいこのぐらいでは?」

 そうやってウインドが提示してきた値段を見て、ちょっと顔をしかめる。

「少し高くないか?」
「相変わらずですね。僕からしたら喉から手が出るほど欲しいアイテムですよ。花本体の値段はもっと低くてもいいと思いますが、雫単体ならもっと高くていいレベルですよ?」

 そういうものなのだろうか?

「まあ、コウからしてみたらあまりわからない有難さかもしれませんね」

 そう苦笑しながらウインドは言ってきた。なんか失礼じゃないか?

「そりゃあ、僕は使わないけどさ」
「違いますよ。コウにかかれば、大抵の植物系アイテムは量産可能だからという意味です」
「ああ、なるほど」

 ウインドが言うには、僕が栽培する一部のアイテムはボスのLAボーナスを量産してるようなものらしい。言い過ぎな気もするが、それだけの事をしているという事だろう。自覚は無いが。

「まあわかったよ。ありがとう。この値段で売ってみる」
「今度買いに行きますね」
「ウインドたちになら直接売ってもいいんだけど」

 というかただで提供してもいい。別に金目的でやってるわけではない。完全に趣味だ。
 ある日、日々の戦いに疲れ果てた時にミキさんが「スキルスロットに余裕があるなら生活系スキルでも覚えてみたらどうだ?」と言ってきたので、前から気になっていた《園芸》スキルを取ったのだ。
 最初は一度に育てられる量、種類などが多く制限され、唯一育てる事ができたのはNPCショップに売られていた何の効果もないただの花。
 しかし、育っていく過程が意外とリアルだったので__時間は超短縮されていたが__味を占めた僕は一気にはまった。
 それ以来、冒険の合間に熟練度を上げてはやり方を工夫したり、拾った種やドロップした根などから多くの草花を栽培していった。最近は食材なども量産している。
 しかし、作るだけ作って自分じゃ使い切れない状況になってしまい、相談したのがアイン(虎鉄)とウインド(ハヤテ)だった。その結果がイーストガーデンである。
 それが今ではそれなりの人気店になり軽く城を建てれるぐらいの財産が溜まっていたりするのだけど、僕は作っているだけだから店の経営のアドバイスや値段設定は全部アインとウインドのおかげである。だからこの二人になら余った分は上げてもいいもだけど……。
 しかしウインドは少し笑って「お気持ちだけで十分ですよ」と言うだけだ。

「なにか欲しいものがあれば店の方に出向かせてもらいます。探索の役にも立ちますしね」
「うーん、わかった」

 アインにも同じような感じに断られた。でもまあ、二人が納得してるならいいか。

「あ、じゃあせめて野菜はもらってくれないか? あれは店売りにするにしても長期間は置けないし、僕は料理スキル持ってないしさ」
「もう園芸っていうより農業ですよね」

 そこにはツッコまないでほしい。

「うーん……わかりました。食材関係はこちらで買い取らせていただきます」
「別にタダでも」
「ダメです」

 そこだけは譲れないとばかりに語気を強めて言ってくる。こうなったら絶対に折れないだろう。

「それじゃあ後でホームに来てくれ。そこで確認するから」
「わかりました。じゃあお金持ってきますね」

 そう言ってウインドは足早に去っていった。ウインドは何故か金銭トラブルが多発しているため、同じくログインしてる三千院……キャラネーム《マスク・ザ・レジェンド》__本人曰く、本来はマスク付けて謎キャラロールプレイをして楽しむはずだったとかなんとか__が管理しているらしい。
 普段から買うには身内の許可がいるなんて、大変だなぁ。

『坊っちゃま! お金があるからって無駄に使ってはいけません!』
『いいじゃんかよ! 野々原のケチ!』

「……主従、か」

 ぽつり、と呟く。
 その呟きは誰に届くでもなく空間に拡散し、溶けて消える。
 先ほどまでの楽しい気分が嘘のように冷めていくのがわかった。どうやら、自分のメンタルはこのSAOでそれなりの修羅場をくぐった程度じゃ全然成長していないらしい。
 堪えろ、漏らすな。何度も自分に言い聞かせ、溢れ出そうになる何かを必死に心の中でせき止める。
 そうやって少しの間、その場に立ち尽くしてからホームでウインドを待っていようと移動を始める。
 突然、ポーンと新着メッセージの通知が届く。

【ミキ:明日最前線の転移門前広場で集合。】

 ミキさんと組んでからもう何度も見たメッセージだ。恐らくは迷宮区のマッピングだろう。【了解。】と打ち込み返信。今のうちに準備しておかなきゃ。

「さ、頑張るぞ!」

 言い聞かせるように声を出す。
 東宮康太郎がkouとして生きて既に1年以上が経過した。
 最初は慣れなかった剣の重みも、戦闘も、世界観も、今ではすっかり日常となっている。
 いつか帰れるのか? 何度も思い、そしてそんな思考を振り払うように何度も頭を振る。
 帰るんだ。絶対に。そのために頑張ってる人たちがこの世界にはいるんだ。なのに、前に進むと決めた自分が止まるわけにはいかない。
 たとえ、傷だらけになるとしても。
















【オマケ】
 誰もが寝静まるような時間。闇が深まり、昼間であれば恋人同士が語らっているフローリアの広場にはだ人っ子ひとりいない。
 ……いや、たった一人だけ存在していた。
 鍛え上げられた隠密スキルにより姿を闇夜に隠し、同じく高熟練度だと思われる忍び足スキルによって音もなく動く。
 その身には夜の色、とでも言うべき色の外套を着て、迷うことなきその動きは視覚補助の効果もある索敵スキルのレベルの高さと普段からこの道を使う者独特の“慣れ”を感じさせた。
 もしこの者を見つけようとするのなら、索敵スキルをマスターするだけでは足りないだろう。今まさに、この者はこの世界の者からは認知することが出来ないほどにその存在を薄めていた。
 例え、イーストガーデンの店長を見つけるため、日夜イーストガーデンの前を張っている者がいて、その者のすぐ隣を横切ったとしても気づかれる事はないだろう。

「えーと、今週の収入は……うわ。すごい事なってるな〜。在庫はまだ余裕があるな。ラックティアだけ入荷して今日は帰るか」

 この東宮康太郎、kouの存在は。
 最初は普通に入荷していた。普通に夜中に入って、普通に消費した分を補充して収入を回収し、普通に帰った。
 スキルもアイテムも使わず、人目を機にする事なく通っていた。
 しかし、イーストガーデンがある程度の人気が誇ってからは何故かイーストガーデンの前に怪しげな人物__大手ギルドの団員。スカウト目的__が現れ始めたのだ。
 当然のようにコミュ症を発揮させ、持ち得る手段全てを使い、全力で姿を隠し、こっそりと入荷するようにした。
 そしたら、何故かイーストガーデンの店長、つまりは自分の事が七不思議扱いされるようになり、さらには事実を知るのが自分含め三人で、うち二人が最前線でも最優と呼ばれるギルドに所属している事からも、ギルド間の関係も考え秘密を明かす事が出来なくなってしまった。
 それ以来、コウは入荷の際には神経を極限にまで尖らせ、驚異的な集中力でイーストガーデンに出入りしなければいけない羽目になった。

「はぁ、ただ枯らすのが勿体無いから始めたのに、どうしてこんな事になったんだろう……」

 一人文句を言っても答えなど帰ってくるはずもない。
 灯りのない部屋を灯すのは、窓から僅かに入る月光のみ。
 そんな救いのないこの状況に、コウはただため息を吐くのであった。

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本編で使う予定はなかったけど妄想が膨らみ書きたかったものシリーズ第一弾。正直本編書くより楽しく書けてしまった。まあ楽しく書けたからといって文章のクオリティは上がらないんだけどね!
本編未登場の綾崎ハヤテの登場と三千院ナギのキャラネームをさらっと置いていくスタイル。さて、この物語どこまで続くかなあ?