STORMY FESTIVAL

SSの広場へ後編へ進む

豪雨が町を襲っている。どうやら台風が上陸するようだ。

それはまるで何人の進行を妨げようとする強い風にも思えたが、

それでも駅へ向かおうとする雨合羽を纏った二人は、

吹き荒れる風をものともせず駅へと走っていった。

二人とも14・5歳くらいの少年少女だった。

面白いことに、二人は切符を買うときでさえ、手をつないでいた。

二人は駅員に切符を見せて、何も言わずに一瞥すると、二人は急いで電車へと駆け込んだ。

奇妙なことに、二人が乗ろうとしている電車の車両だけは、不思議に人が誰もいなかった。

一安心した二人は雨合羽を脱ぐ。

一人はやや茶色がかかった髪の少年で、長い髪の毛を後ろでリボンで束ねている。

もう一人は紺碧の色をした長い髪をポニーテールにしている、

両耳につけている丸いピアスが印象的な可愛い少女である。

少年は少女に聞いた。

「なあ、電車に乗ったのはいいけど、これからどこへ行くんだ?」

「えっと…とりあえず、西へ…」

「随分漠然としているなあ・・」

少年は半ば呆れながらも、これから起こるであろう未知の世界を楽しみにしていた。

少女は少年と一緒にいられることがうれしいのか、目が合えば必ず笑った。

そして二人はこのときも、手を離すことは無かった。

ちょっと手を離したとしても、それでも少女から少年へ腕を絡めてきた。

何故この二人がそうしているかは、誰にも分からなかった。

そしてとうとう、電車は少女の言う、西へと走り出した。

時計はまだ午前6時4分を指していた。
 
 
 
 
 
 
 

「あ〜あ、明日から夏休みだっていうのによ、何で台風が上陸するかねえ…」

窓外の雨風に向かって黄昏ている茶髪の少年がぼやいた。たかしである。

なぜ彼が夏休みにもかかわらず学校へ来ているかといえば、言ってみれば単なる暇つぶしで来たのだ。

たかしは一応サッカー部に入っているが、ここ最近部活ができない不満もあれば、

湿度の高さゆえの暑さに苛まれていた。

「そうですよねぇ…」

「あれ?花織ちゃん?」

たかしのうしろには一人の少女がいた。

やや緑色がかかった肩までかかった髪をした、眼の大きい少女、花織である。

「花織ちゃん、何で学校なんかにいるの?」

「そういう先輩こそ、どうしてここにいるんですか?」

「いや、俺はただの暇つぶしで…」

「ふーん。ま、私もそうなんですけど…最近七梨先輩とも会わないし…」

花織は雨に向かって不平を漏らした。

「会ってないの?」

たかしは少し意外そうに叫んだ。

といっても、彼もまた最近太助に会っていないのだが…

「先輩は?」

「俺も最近会ってない。」

「僕も会ってないよ。そういえばシャオちゃんやルーアン先生、キリュウちゃんも見かけないね。」

背の低い、大きな丸い眼鏡をした少年、乎一郎が言った。

彼もいつのまにか教室にいた。

「なんだ、乎一郎もいたのか。おまえも暇つぶしで来たのか?」

「違うよ。読書感想文の宿題があったでしょ?そのための本を借りに来たんだよ。」

そう言う乎一郎の手には、一冊の本があった。

「そういえば、宿題やってないなあ…」

たかしが思い出したように言う。

「まだ夏休み半分あるんですからいいじゃないですか!

それより、最近先輩たちに会ってないことのほうが気になりますよ。先輩たちだって会ってないんでしょ?」

「あっ!」

乎一郎は視線の先の“何か“に驚いた。

「どうした?」

「あれ、ルーアン先生の陽天心じゃ…」

乎一郎が指を指すと、そこには街中で暴れまわっている電柱、トラックなどがあった。

「何やってるんだ?ルーアン先生…」

たかしは呆れたようにつぶやく。

「とにかく、行ってみましょう!」

花織は身を翻し、教室を出て行った。それに続いて、たかし、乎一郎も出て行った。
 
 
 
 
 
 
 
 

「陽天心召来!!」

腰まで伸びた緑のかかっている長い髪、額の左右の髪の毛の付け根につけている

赤い三角の飾りをつけた女性、ルーアンがまた一つ黒天筒から光を放つ。

ルーアンは雨合羽を着て黒天筒を振り回しては、目に付くありとあらゆるものに陽天心をかけまくっていた。

そんなことが、もうかれこれ一時間ほど続いた。

ルーアンは陽天心を広場に集めた。

集まった陽天心は、ビルぐらいはあろうかというくらいの塊になっていた。

ルーアンはそれらを見上げる。それを見る目は、何者をも焼き尽くすような憎悪の目であった。

だがそれは、決して目の前のものに対して向けているわけではなかった。

「シャオリンめ…今度という今度は許さない!陽天心召来!!」

ルーアンは陽天心全てに、改めて陽天心をかけた。

するとそれは、巨大ロボットとでも言う形になった。

そしてその巨大な陽天心に乗って、満足そうに言う。

「傑作ね。これぞ最強陽天心!!大王アンゴルモア!!よ〜しアンゴルモア!シャオリンを探しに行くわよ!」

巨大陽天心アンゴルモアは頷き、、その大きな体で町を歩いていった。

当然、道行く人に迷惑がかかったことは言うまでも無い。

アンゴルモアが一歩歩くたびに大規模な地響きが起きた。

それに揺さぶられながらも、アンゴルモアヘ向かっていく人達がいた。

たかし、乎一郎、花織である。

「まったく、何てことするんだルーアン先生は…」

たかしは息を切らしてつぶやいた。

だが、走り疲れたのか、たかしはふと足を止めた。

「たかしくん、バテてる時じゃないよ。」

乎一郎が言う。たかしはもう肩で息をしていたが、

不思議なことに乎一郎は息を切らすどころか、汗も出していなかった。

「おいおい、ちょっと待ってくれよ…」

「ホーホッホッホ!絶景ね。それにこれならシャオの星神でさえ…」

ルーアンはアンゴルモアと星神との戦いを想像し、勝つことを確信していた。

そして、頭の中での勝利に浸りかけたその時、

「ルーアン先生!」

ルーアンを呼ぶ声が、彼女の耳に入った。

「ん?」

ルーアンが見ると、そこにはたかし、乎一郎、花織の三人がいた。

「あれ、あんたたち…」

ルーアンは意外そうに呟く。

「ルーアン先生!早く降りてきてくださいよ!それと、これじゃ騒ぎになっちゃうじゃないですか!」

花織が叫んだ。

言われるままにルーアンは降りてきたが、それでも巨大陽天心は解かなかった。

それに不信を抱いたのか、花織は叫んだ。

「先生!なんで陽天心解かなかったんですか?早く解いておかないと、もっと騒ぎになっちゃいますよ!」

花織が叫ぶが、ルーアンも負けじと叫んだ。

「こんな町での騒ぎだなんてどうでもいいのよ!問題はシャオリンとたー様なんだから!」

『へ?』

三人はその言葉に反応し、驚くとともに、何故その二人が話に出てくるのか疑問がわいた。

「あれ?先生・・どういうことです?」

「あの二人が…!」

ルーアンが言いかけたとき、警察のパトカーのサイレンが近づいていることに気が付いた。

数瞬の空白のあと、四人は一瞬にして青くなった。

「先生…警察沙汰にまでなっちゃいましたよ…」

どうやら花織はここまで最悪なケースになると思っていなかったらしい。

「とりあえず、ここから逃げよう!」

四人は裏道をとおって、その場を去った。
 
 
 
 
 
 
 

結局四人が落ち着いたのは、商店街のある喫茶店だった。

四人は雨合羽を脱いでコーヒーを飲んで一息ついた後、改めて本題に入った。

「で、どうしてルーアン先生はあんな事したんですか?」

「だって!シャオリンたら、あんな事するんだもん…だからあの巨大陽天心で、シャオリンを…」

ルーアンは少し涙目で答えた。三人には理由がわからないが、どうやら悔しくて泣いているらしい。

「あんな事?」

たかしは鸚鵡返しに聞き返す。

「これよこれ。今日起きたらこんなものをシャオリンが置いてったのよ。」

ルーアンはそう言って、四つ折にされた一枚の紙を取り出した。

三人はそれを広げ、目を走らせる。

一呼吸置いて、乎一郎が、言った。

「うそ………」

それと同時に、たかしが、言った。

「マジかよ…………………」

最後に、絶叫したのは、花織だった。

な!なんですってーーーーーーーーーー!!!!

花織の絶叫で、居合わせた他の客も驚いた。

何が起こったのか、彼らにはまったく分からなかった。

そしてしばらく、三人は言葉が出なかった。
 
 

その問題の手紙の内容はこうだった。

皆さんには悪いですけれど、太助様と旅に出ます。

数日で戻りますから、あまり心配しないでください。

それと、私たちをどうか、捜さないでください。

                             シャオリン

確かにそれはシャオの字で書かれていた。

「ど!どうするんですかこれ!!これってもしかして、『駆け落ち』ってことじゃ…」

花織は恐る恐る言った。

彼女にとって認めたくないことだった。

「そ!だから騒いでたのよ!」

「もしこれが本当に『駆け落ち』だったら…」

たかしは驚愕しながらつぶやく。

「そう!たー様とシャオリンが今ごろ、

あ〜んなことや、こ〜んなことになってるかもしれないの!」

ルーアンの言葉は、もうすでに暗黙の了解だった。

「そうなるまえに!何とか二人を探し出さないと!」

花織が提案する。

「そうだな。台風がどうのこうの言ってる場合じゃねえ。一大事だよこりゃ…」

それに賛成のたかしは、もう外へ出る準備をしていた。

「下手すると大問題になりかねないよ、これ。」

冷静だが乎一郎も、二人を捜すことに賛成した。

「よし!皆で二人を捜すぞ!」

こうして、四人は太助とシャオの足取りを追うこととなった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

少年と少女は長いこと電車に揺られていたが、とうとう終点へと着いた。

二人は電車を降り、切符を駅員に見せては黙って駅を後にした。

雨が一層強くなったこの時も、二人は相合傘の中で手を離すことは無かった。

「一向に止む気配は無いな…」

このときは、雨の量は多いが、風の勢いは弱まっていた。

「もしかしたら、今日はやらないのかもしれませんね。」

少女は不安そうに言った。

「え?何を…」

「あ、いえ。何でもありません。」

少女は笑ってごまかした。

「なあ…まだ、目的地に着かないのか?」

少年は疲れているはずだが、それでも明るい声で聞いた。

「多分、まだまだだと思います。」

少女の答えで少年はふっと笑い、独り言のようにつぶやいた。

「今夜はどうしよう…」

少年はため息交じりで呟く。

自分の住んでいるところからだいぶ離れたところにいるのだ。

この辺りの地理など分かるはずもなく、

財布の中は電車代しかないので宿を探すなど、もってのほかだった。

「あ!いい考えがあります。」

少女は困っている少年に、ひとつの考えを告げた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

夜、太助とシャオの捜索をしていた四人は、太助の家に集まった。

彼らの疲労がピークに達したので、体勢を立て直すためにここにいるのだ。

四人は居間のテーブルを囲むような形で座って、

テーブルの上に広げてある地図を指差しながら話し合っていた。

「ここからこの辺りは私が捜しましたけど、二人に会ったという人はいませんでした。」

花織は太助の家から、西側の町を指差した。

「俺は花織ちゃんとは逆の方を捜したんだけど、やっぱりいなかった。」

たかしは太助の家から、東側を指差した。

「僕は太助君の家から南側方面を捜したけど、やっぱり見た人はいないって。」

乎一郎は眉間にしわを寄せて呟く。

「残るは北側だけど…多分この町にはもう、いないんじゃないかなあ…」

「だったらどうすんのよ!もしかして今二人が、とってもアブナイ事やっていたら…」

「そうですよ!」

「でも、あんなに捜したのに見つからなかったんじゃ…」

「でもまだ北のほうを捜していないだろ?」

たかしが言う。それを聞いて、思い出したように花織は質問した。

「そういえばルーアン先生はあれからどうしてたんですか?」

「あんたが騒ぎになるとかどうとか言っていたから、あの陽天心を解除してたのよ。

それで疲れちゃったから、捜すにも捜せなくて…」

花織はそれを聞いてむっとした。

ルーアンの回答が癇に触ったらしい。

「それでどうするんですか?もし今先輩たちが先生の言った通り、

アブナイ事になっていたら…先生のせいですよ!」

「な!何でそれだけで私のせいになるのよ!大体それはシャオリンが悪いのよ!」

「おいおい…ここで喧嘩したって始まらないだろ…」

たかしが二人をなだめる。

「あっ!そういえば、ルーアン先生は確かコンパクト持っていましたよね。あれは、どうしたんですか?」

ルーアンははっとする。今の今までその存在を忘れていたのだ。

「そうだ!コンパクトがあったじゃない!」

「先生…」

一同、ジト目でルーアンを見る。でもルーアンは気にもせず、自分の部屋へと向かった。

遅れて三人も部屋へ向かう。

「確か私の部屋の、鏡台の上に置いておいたはず…」

ルーアンは部屋へ入った。そして鏡台のところに来たが…

「え!無い?」

「え?」

いつのまにか三人も部屋に来ていた。

「そんな…いつもここに置いてるのに…」

「無くしたんですか?」

「ちょっと三人とも!探すの手伝って!」

結局三人は太助たちを捜す前に、コンパクトを探すことになってしまった。

しかし、彼らは絶対に見つけることはできないだろう。

なぜならそのコンパクトは今、ある女性の手の中に隠されているからだ。

その女性は物陰で四人がそれを探す様を見て、微笑した。

女性はそこから立ち去った後、自分の部屋に入り、鍵を閉めた。

そしてコンパクトを開き、二人の様子を観察することにした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

二人は町から少し離れた、目立たないところに、小さな家を建てた。

それは彼女の星神の作品である。

二人はその家に入って、一息ついた。

このときでも、二人の手は離れていない。

「これなら今夜は大丈夫です。」

「そうだな…」

少年は苦笑いをした。

朝から手をつないでいたときは、特に気にしていなかったが、

さすがに夜になると、少年は意識し始めた。そのためである。

二人は疲れたのか壁にもたれかかって、座った。

「椅子も作ってもらいましょうか。」

「そうだね。頼むよ。」

少女は工具を持った小人、羽林軍にお願いした。

小人はうなずいた後、材料を探しに外へ行った。

ドアが閉まった後、一瞬静寂が訪れたような気がした。

家の外は絶えず、雨が降っている。

小さな家の中はしばらく、二人の吐息の音だけがこだましていた。

朝から張りきっていた少女も、さすがに疲れが出たようだ。

いつのまにか小さな寝息を立てて少年の肩へともたれかかった。

寝ているのにもかかわらず、少女の手は少年の手から離れていなかった。

絡めているわけではない。少年の手にそっと手を乗せている形である。

少年の鼓動は高鳴っている。夜だからだろうか。
 
 

コンパクト越しに見ている女性は、その様をじれったく思っていた。

「…すっごい良い状況じゃないか。ほら、やっちゃえやっちゃえ!」

女性ははやしたてる。

それが少年に実際聞こえているわけではない。が!

まるで聞こえたかのように、少年は何を思ったか動き出した。

しかし!そのとき扉が開いた。少年は咄嗟に振り返る。

そこには、羽林軍がいた。どうやら先ほど頼んだ椅子が出来たらしい。

少年はほっとした。

いや、ほっとしたような、がっかりしたような、そんな表情だった。

そして少年は、羽林軍に一つ注文した。

「羽林軍、悪いんだけどさ…」
 
 
 
 

女性は残念そうな表情で、コンパクトを閉じた。

「あーあ。あいつも本当にタイミングが悪いな…」

女性は不平を漏らしてベッドに寝転んだ。

そしてルーアンのコンパクトを枕の下に隠した後、

彼女も寝ることにした。

四人はまだコンパクトを探していた。
 
 
 
 
 

少年が羽林軍に頼んだのは、簡単な個室を作ってもらうことだった。

少年はさすがに夜中も、少女とゼロ距離でいることに耐えられなかったようだ。

少女を個室に寝かせた後、少年も眠気がさして、寝ることにした。

少年は寝る前に一言、こんな言葉を呟いた。

「父さん…理性は大切です…」
 
 
 
 
 

夜はふけ、そして朝が来た。

太助宅では、ルーアン、たかし、乎一郎、花織が部屋でいつの間にかのびていた。

徹夜でコンパクトを捜索していたが結局見つからず、その場で寝てしまったのだ。

その様子を珍しく早く起きた、緋色の髪の毛をし、薄着のパジャマを来た少女が呆れ顔で見た。

「やれやれ、夏だからとはいえ皆生活スタイルが悪いな…」

そう言ってキリュウは短天扇を広げて仰ぎながら、その場を立ち去った。

外はまだ雨が降っている。しかし風は殆ど無かった。

雨が止もうとしているのかもしれない。
 
 
 
 
 

少年と少女は、昨日よりは遅く起床したが、それでも朝一番の電車には間に合った。

二人はまだ西を目指している。二人の手は昨日と同じく、固くつながれていた。
 
 
 
 
 

結局四人が起きたのは、昼を過ぎたときであった。

「で、今日はどうするんですか?コンパクトがない以上、捜すのは困難だし…」

「なんか手がかりみたいなのがあれば・…」

四人が頭を悩ませ始めたとき、キリュウが二階から降りてきた。

「さっきから一体何をしているのだ?」

彼女も事の異常さに気付いたらしい。

「キリュウさん、先輩どこに行ったか知りませんか?」

「ああ、主殿か。そういえば昨日から見かけないが…どうかしたのか?」

「あいつがシャオちゃんと駆け落ちしたんだよ。」

「駆け落ち?」

キリュウは目を丸くして驚いた。その言葉に乎一郎は反論する。

「たかしくん、そうとはまだ言い切れないって…」

「いーや、絶対そうだ!」

たかしはあくまで断言する。

「そんなの嫌です!」

「そーよ!」

「あ・・あの、今はそんなことをしているときでは・・・」

キリュウは四人を抑えようとしたが、それでもおさまる事はなかった。

いつの間にか四人はキリュウをはさんで口喧嘩が始まった。

それは夕食の時間まで、終わることがなかった。

このときにはもう、雨は止んでいた。
 
 
 
 
 
 

少女が電車に揺られながら窓外の風景を気にしていた。

彼女は雨がやみかけている事に気がついたのだ。

彼女ははやく止んでほしい、と痛切に空へと願っていた。

少年はそれに気づいて、彼女に聞いた。

「なあ、なんでさっきから外を気にしてるんだ…」

「え、あ、いや、その…雨がはやく止んでほしいなあって…」

「ふーん・・・もうすぐ止むだろ?」

少年は笑っていった。

「あの、雨が止んだら次の駅で降りましょう。」

「え?いいけど…一体…」

少年は腑に落ちない表情で彼女を見ていた。もう雨は止んでいた。

二人は少女の言葉どおり、次に止まった駅で降りた。

時計は午後6時を指している。夕焼けがまぶしかった。

二人は手をつなぎながら駅を後にした。

「なあ、降りたのはいいけど、ここが目的地なのか?」

少年は怪訝そうに聞いた。

「そのはずですけど・・・」

少女は不安そうに答える。

「はず?どういうこと?」

「・・・実は、ここにお祭りがあるはずなんです。」

「祭り?」

意外な回答に少年は驚いた。

「ええ。台風に向かってくぐった先には、お祭りがあるそうなんです。

そのお祭りに参加した人は、その年とても幸せになれるそうなんです。

って、聞きました。」

少年は少し呆れながらも、彼女に笑みを浮かべた。

誰が少女にそれを吹き込んだかは大体予想ができたのだ。

少年は呆れながらも、彼女のやろうとしていることに付き合うことにした。

「よし、じゃあ、そのお祭りを探そうか!」

「はい!」

二人はあてもなく、あるかも分からない祭りを探して歩き出した。
 
 
 

それから一時間が経った。

もう陽は沈み、辺りは暗くなっていた。

二人に見えるのは暗い道だけだった。

聞こえるのはコオロギと、蛙の鳴き声によるオーケストラだった。

このとき少年は、祭りのことを少し諦めかけていた。

「なかなか見つからないな…」

少年がふと呟いた。そのときだった。

コオロギと蛙の鳴き声に混じって、笛の音が聞こえたのだ。

「あ!」

少女はそれを聞いてその音のしたほうへと駆け出す。

少年もまた駆け出した。

その視線の先には、暗い夜の中で大きく光るものが見えた。

それは屋台の照明であった。

よく見るとそこは神社のようだった。

本当に、そこにはお祭りがあった。

「ありましたよ太助さま!行きましょう!」

「本当だ・・・・よし!行こう!」

二人はそこへ向かって走り出した。
 

続く



ども、ユイです。

久しぶりの守護月天の小説です。

しかし、ついにやってしまいました・・・「駆け落ち」ネタ・・・

でもま、こんな話があってもいいと思うので、そういう気持ちで読んで頂ければ幸いです。

今回はできるだけ守護月天初心者でも読めるように、

あまりこういう小説に少ないキャラクターの外見を書き加えてみました。たかしが一番困りましたけど・・・

(これってめちゃくちゃ小説家としての技量が問われるものですね。)

今回は、昨年の夏に発売されたスゥイートサマーアゲインと、

梅雨の言い伝えをミックスさせたような作品にしてみました。

といっても、まだ完結ではありません。次の話で終わりになっていますです。

次の話は、回想シーンを折り込んだ、暖かいお祭りの話にしようと思っています。

期待していただければうれしいです。

それでは!



 
 

後半へ続く

SSの広場へ