まもって守護月天! SideStory  RSS2.0

わたしの Sweet Lady

初出 2001年10月12日
written by 双剣士 (WebSite)
SSの広場へ第5幕へ戻る第7幕へ進む

第6幕・夏の華がいっぱい


「ひゃっほー!」
「うわぁーいっ!」
「…………」
 ヘリコプターが鈍い衝撃と共に着陸した瞬間、野村たかし・愛原花織・万難地天キリュウの3名は夏の日差しが照りしきるヘリポートへと弾けるように飛び降りた。
 まるで大海原の鼓動を伝えるかのように次々としかも粛々と押し寄せるコバルトブルーの波しぶき。緑の葉の下に黄色い椰子の実をたわわに実らせた海岸の巨大樹の群。そして蒼い海と緑の木々との間に境界線を引くかのように、どこまでも白く連なる足跡1つない砂浜。まるで写真の中から飛び出して自分たちの到着を待っていたかのような、吸い込まれそうな青空と銀色に輝くビーチ。
 3人は新天地の潮風を身体いっぱいに吸い込んだ。自分が映画の主人公になったかのような高揚感が全身を満たしていた。感激はまず眼を丸く開かせ、続いて両手を大きく広げさせ、最後に声となって彼らの小さな身体からあふれ出た。
「す、すごい、すごい、すごい! これでこそ夏の海、この俺さまにふさわしい青春の大舞台! お、俺は今、猛烈に感動しているっ!」
「嘘みたい、信じらんない、夢みたい! うん、あたしが夢見ていたのは、まさにこういうシチュエーション! ここで伝説が作られるんだわ、あたしと七梨先輩の世紀のアバンチュールが!」
 2人は感極まったように、知りうる限りの言葉を尽くして喜びを爆発させた。南海の孤島はまさしく映画の1シーンのように、無限に広がる常夏の舞台を少年少女たちの前に繰り広げてくれていた。彼らは青い島の素晴らしさを口々に絶賛し合った後、手に手を取って自分たちの幸運を確かめ合った。
「いやぁ、俺たちは運がいい! ちょっとしたきっかけから、こんな奇跡のような夏休みを過ごすことになるだなんて! これだよなぁ、やっぱ夏ってのはこうでなくっちゃなぁ!」
「夏ですよ、海ですよ、潮風ですよ! ずぅっと待ちこがれてた甲斐がありました! これならきっと夏休みの思い出に、ううん、人生最高の夏の思い出が作れそうです!」
 しゃべりまくっては踊るように駆け回る感激屋の若い2人。その一方で、数千年の時を越えてきた中国の精霊は冷静に彼らに釘を差した。
「2人とも、今頃なにを言っているのだ? 夏休みなど、とっくに終わっているでは……」


***(しばらくお待ちください)***


「ひゃっほー!」
「うわぁーいっ!」
 ヘリコプターが鈍い衝撃と共に着陸した瞬間、野村たかし・愛原花織の2名は夏の日差しが照りしきるヘリポートへと弾けるように飛び降りた。
 まるで大海原の鼓動を伝えるかのように次々としかも粛々と押し寄せるコバルトブルーの波しぶき。緑の葉の下に黄色い椰子の実をたわわに実らせた海岸の巨大樹の群。そして蒼い海と緑の木々との間に境界線を引くかのように、どこまでも白く連なる足跡1つない砂浜。まるで写真の中から飛び出して自分たちの到着を待っていたかのような、吸い込まれそうな青空と銀色に輝くビーチ。
 2人は新天地の潮風を身体いっぱいに吸い込んだ。自分が映画の主人公になったかのような高揚感が全身を満たしていた。感激はまず眼を丸く開かせ、続いて両手を大きく広げさせ、最後に声となって彼らの小さな身体からあふれ出た。
「す、すごい、すごい、すごい! これでこそ夏の海、この俺さまにふさわしい青春の大舞台! お、俺は今、猛烈に感動しているっ!」
「嘘みたい、信じらんない、夢みたい! うん、あたしが夢見ていたのは、まさにこういうシチュエーション! ここで伝説が作られるんだわ、あたしと七梨先輩の世紀のアバンチュールが!」
 2人は感極まったように、知りうる限りの言葉を尽くして喜びを爆発させた。南海の孤島はまさしく映画の1シーンのように、無限に広がる常夏の舞台を少年少女たちの前に繰り広げてくれていた。彼らは青い島の素晴らしさを口々に絶賛し合った後、手に手を取って自分たちの幸運を確かめ合った。
「いやぁ、俺たちは運がいい! ちょっとしたきっかけから、こんな奇跡のような夏休みを過ごすことになるだなんて! これだよなぁ、やっぱ夏ってのはこうでなくっちゃなぁ!」
「夏ですよ、海ですよ、潮風ですよ! ずぅっと待ちこがれてた甲斐がありました! これならきっと夏休みの思い出に、ううん、人生最高の夏の思い出が作れそうです!」
 しゃべりまくっては踊るように駆け回る感激屋の若い2人。彼らの邪魔をするものは誰もいなかった。夏の日差しと打ち寄せる波の響きは、夏を信じて疑わない素直な2人をどこまでも優しく祝福してくれていた。
「夏だ!」
「夏ですよ!」
 妙に“夏”を強調している2人。日本の将来は安泰である。
「気に入ってもらえたみたいね」
 熱狂する2人の耳に、鈴のように涼やかな声が不意に飛び込んできた。彼らは一斉にヘリの方に顔を向けると、ここまでヘリを操縦してきてくれた親切そうな1人の女性の元へ我先にと駆け寄った。
「気に入りました! ええ、最高です! 本当にここ、借りていいんですか、おばさん!」
「ええ、いいわよ。喜んでもらえてお姉さんも嬉しいわ。欲しいものがあったら何でも言ってね」
 中年女性は笑顔を浮かべながらがっちりと野村たかしを抱きしめ、全身で喜びを分かち合った。彼女のこめかみにはわずかに筋が浮かび、たかしの背骨がミシミシと悲鳴を上げたが、それでも2人の表情は満面の笑みと呼ぶにふさわしかった。
「ぐ……そ、そうですね、や、優しいお姉さん……」
「まぁ、なんていい子♪」
 女性は抱きしめた腕をほどくと、優しく少年の頬をなでた。それに代わって口を開いたのは、輝く眼をした13歳の少女であった。
「ねぇねぇ、七梨先輩たちはもう来てるんですか、おばさん?」
「……なんですって?」
「……あ、いやその、他の人はどうしたのかなぁって、お、お姉さん……」
 なぜかトーンダウンした少女の口調に優しく応じるパイロットの女性。だがその口から飛び出したのは、少女たちが予想もしない言葉だった。
「まぁ、友達思いなのね♪ 心配しないで、他の人たちは別の島に行ってるわ。明日になったら会わせてあげるから」
「ええっ?! 七梨先輩、ここに来てないんですか? なんで、どーして?」
「だって、あれだけの人数ですもの。全員連れだって動いてたら、開放感なんか味わえないでしょう?」
 さも当然のことのように、パイロットの女性は言い放った。
「まだ夏は始まったばかりなのよ。全員で同じところを回るより、最初だけバラバラに行動して後で情報交換したほうが楽しいと思わない? もし気に入ったところがあったら、また改めて誰かと一緒に来れば良いんだし。そうでしょう?」
「そ、そう、ですね……」
 愛原花織は真っ赤になりながら、ちらちらと隣の少年に視線を向けた。せっかく燃え上がった2人のテンションは、予定外の事態を前にしてすっかりしぼんでしまっていた。あーあ、これで隣にいる人が別の人だったら言うこと無かったのになぁ……本番は明日以降、かぁ……。
 そんな少女の思いが伝わったのか、少年の方も複雑な表情を浮かべた。少年と少女の視線は一瞬だけ絡み合い、そして
「ふんっ!!」
「ふんっ!!」
と声を揃えて互いにそっぽを向き合った。パイロットの女性はそんな2人に温かく声を掛けた。
「ずいぶん仲がいいのね」
「なんで!」
「違いますよぉ!」
 口々に反発する若い2人。笑顔を浮かべたままそれを受け止めながら、その女性は顔を上げて青い空を見つめ、空の向こうに思いを馳せた。
《翔子ちゃん、今日は頑張るのよ……ママは陰ながら、翔子ちゃんを応援しているわ。きっとあなたは気づいてないでしょうけどね》

                 **
《お袋たちは、絶対この島に着いてきてる》
 一方、驚愕から脱したこの物語の主人公は、灰色の脳細胞をフル回転させていた。彼女の綿密な事前調査は『真砂子ママ in A国』という情報を一点の曇りもなく指し示していたが、現在では彼女の勘がそれに異を唱えていた。このように理性と感性が相反するときには、都合の悪い方を信じて備えるのが彼女のやり方だった。それは14年の人生を経て、身につけざるを得なかった悲しくも貴重な知恵の1つだった。
「どうしたんですか、翔子さん?」
「さっきから何か変だぞ、山野辺」
 彼女の後を歩く2人が不審の声をあげる。なんでもないよ、と翔子は手を振り、自分のことを心配してくれる友人2人に作り笑いを向けた。2人はほっとしたように笑顔を返すと、再び見知らぬ島の光景をあれこれと眺めながら楽しそうな話を始めた。
《そうだよ、あんたたちは互いのことだけ想ってりゃいいんだ》
 翔子はそう口の中でつぶやいた。彼女には密かな計画があった。親友のシャオリンとその主人にして恋人未満な七梨太助とを、この夏休みに急接近させる作戦。沢山いるお邪魔虫たちを一時的に分断し、2人っきりの状況をお膳立てしてやってから……それから先にも綿密な作戦が立てられていた。彼女は計画を煮詰めるために今日まで徹夜を繰り返し、あらゆる状況に対応できるよう準備を進めてきた。そのつもりだった。
《だけど、お袋たちが来ることまでは計算に入ってない》
 燃えるような焦燥感が翔子の胸を焦がした。計画がばれて七梨に怒られるだけならまだいい。あの2人は勝手に誤解したまま、嬉々としてこの計画にくちばしを突っ込んでくるだろう。そんなことになったら、下手をすればシャオの気持ちを傷つけることに……。
「翔子さんっ」
「山野辺?」
「翔子お嬢様?」
 翔子の物思いはまとまらないまま中断させられた。意識を外に向けると、親友2人と双子の姉妹が、自分を取り囲むように心配そうな表情を浮かべていた。周りの景色は森の一角へと変わっていた。翔子はそこが、彼女の計画に基づく最初の目的地であることに気が付いた。
「あ、ああ、大丈夫、なんでもないよ……着いたの、ひょっとして?」
「はい♪」
「こちらです、お嬢様♪」
 先導してきた双子の姉妹はにっこりと微笑むと、左右に分かれて前方の建物を指し示した。そこには写真で見たとおりの、豪快にして壮大な建造物が立ちはだかっていた。顔を上げた太助とシャオリンが息をのむ様子が気配として伝わってくる。
「な、なんなんだ、これ?」
「空中庭園だよ」
「くうちゅう、ていえん?」
「バビロンの空中庭園。2500年ほど前に、バビロニアの王様だったネブなんとか言う人が作ったお城さ」
「ネブカドネザル2世です。お嬢様」
「い、いいんだよ細かいことは」
 このあたり、翔子にも太助の姉の性格が伝染してきているのかも知れない。
「今じゃ遺跡すら残ってない伝説の建物らしいんだけど、外国のお客さんを驚かせるためにってね、派手好きのお袋が作らせたらしいんだ」
「まあ、あのお母様が?」
「ああ」
 翔子はあらためて建造物を見上げた。直径70メートル、高さ105メートルに及ぶ長大な天空の城。その建物の中は何層にも仕切られ、各階層には花壇と噴水がしつらえてある。そして最上階である王の間からは、下の光景がパノラマのように一望できる。古代の王が王妃の無聊を慰めるためだけに造らせたという、他には類を見ない伝説の立体迷宮。
 翔子の正面はぽっかりと空間が空いていた。建造物の最下層の床の高さは、地上20メートル。太い柱4本と周囲に張り巡らせた太い綱で、辛くもこの人造の4足獣は森の中に直立していられる。古代の人たちが『空中に浮かぶ城』と称したのも、むべなるかな。
 その空いた空間の中央に、これだけは現代の産物と言えるエレベータが1台ぽつんと設置されていた。翔子は2人の友人に向き直ると、そのエレベータを指さして見せた。
「さぁシャオ、入り口はあそこ。七梨と2人で行って来な」
「えっ、翔子さんは?」
「あの空中庭園さ、中がちょっとした迷路になってるんだよ。ぐるぐる回りながら上に上がっていって、最上階に来たら庭園全体が見通せるってわけ。正解の道を知ってるあたしが先導したら面白くないだろ?」
 翔子はいたずらっぽく笑いながら大嘘を吐いた。もちろん彼女だってこの城に来るのは初めてである。パンフレットで見て面白そうだと思ったからコースに組み入れただけ……だがこの城で太助とシャオリンを2人っきりにする事が、翔子の作戦の第一歩であった。
「お袋も意地の悪いところがあるからさ。3次元の迷路ってだけでも大変なのに、あちこちにトラップやら隠し扉やらが仕掛けてあるらしくて。2人で頑張ってきなよ」
「太助様」
 翔子の説明を聞いたシャオリンは、表情を険しくすると太助の右腕をしっかりと抱え込んだ。
「私が、太助様をお守りします」
「あ、ありがとうシャオ……だけど山野辺、いくらなんでも大げさなんじゃないか?」
「いーや、下手すりゃ大怪我するかもな、マジで」
 今度は明らかに嘘と分かる口調で、翔子は太助をにやりと見つめた。
「ま、キリュウの試練を毎日受けてるお前なら大丈夫だと思うよ。シャオのこと、しっかりエスコートしてやんな」
「あ、ああ……」
「それからシャオ」
 翔子は親友に顔を近づけた。そして耳を寄せる月の精霊に、ある重大な条件を告げた。
「この城の中では、星神に頼るの、禁止な」
「えっ? でもそれじゃ太助様に何かあったとき、私……」
「平気平気、七梨ならクリアできるって。シャオは安心して七梨の後に着いてけばいいんだよ……考えてもみな、3次元の迷路なんだぜ。軒轅で飛んだりしたら面白くも何ともないだろ?」

                 **

 七面鳥の丸焼き、超巨大なフォアグラ、山盛りの餃子に南米風ピラニア料理。次から次へと運ばれてくる山海の珍味を、数千年の時を越えてきた食欲大魔王は一心不乱に口に放り込んでいった。ヘリコプターの中で我慢していた鬱憤を晴らすかのように彼女は手と口を動かし、その豪快な食べっぷりは料理を運ぶメイドたちに羨望のため息を吐かせていた。
 しかし、彼女が世界の珍味フルコースを満喫しながらも不機嫌そうな表情を浮かべている理由は、彼女の目の前に置かれたコンパクトにあった。
「あーもう、シャオリンのやつぅ、あんなにたー様にくっついてぇ!」
 コンパクトの鏡には、手に手を取って空中庭園の中を歩いてゆく七梨太助とシャオリンの姿が映っていた。見るからに危なかしそうに足を運ぶシャオリンと、その手を引きながら軽快に飛び石や段差を乗り越えていく太助。その顔には小憎らしいまでの優しさが滲んでいた。
「きぃーっ、覚えてなさいよ、そんなふうにたー様とベタベタ出来るのも今日だけなんだから! 明日になったら、あんたなんかにたー様を貸してあげないんだから! 遠藤君お茶ちょうだい」
 ルーアンにお茶のお代わりを運びながら、遠藤乎一郎はふっと頬をゆるめた。ルーアン先生、だいぶ機嫌が直ったみたい。明日まで太助君たちと合流できないって聞いたときには半狂乱になりかけてたのに、今はあんなに楽しそうにお料理を食べてる。良かった、ルーアン先生が元気になってくれて。
「まったく、こんな時によく食べられますね……」
 彼なりに幸せを感じていた乎一郎とは対照的に、ルーアンの向かいに座った宮内出雲は不機嫌そうにお茶をすすっていた。彼の前にも山海の珍味は並べられていたが、半分くらいしか箸がつけられていない。スマートな体形の維持に注意を怠らない彼としては、愛しのシャオリンとの出会いを明日に控えている今、本能のままに食欲に身を任せるわけには行かないのだ。むろんコンパクトの画像を見せられて胸の奥に忸怩たるものを溜め込みつつあるせいもあるが。
 そんな三者三様の食事風景が一段落した頃。
「みなさん、お味はいかがでしたでしょうか?」
「あ、はい、とっても美味しかったです」
「いやぁ、さすがはリゾート地の自慢料理ですね。十分に堪能させていただきましたよ」
「あ〜ん、離れなさいったらシャオリン!」
 にこにこしながら登場した三船和津絵に、少年は行儀良く、青年はリップサービス含みに南海の料理への讃辞を述べた。だが意外なことに、最後に答えた礼儀知らずの精霊の返事の方に和津絵の注意は引きつけられた。
「まぁ、何をご覧になってらっしゃいますの?」
「あ、いやその、別に……」
 口ごもる乎一郎。彼らは和津絵に、ルーアンが精霊であることを説明していない。何処にいても主人の太助を映し出せるコンパクトの存在を知られたら面倒なことになる……そう焦った乎一郎であったが、
「まぁ素敵♪ とっても便利そうですわね、これ」
「そうでしょ? まったく油断も隙もありゃしない、シャオリンの奴と来たら!」
 世界を股に飛び回る敏腕専務と数千年の時を生き続けてきた太陽の精霊は、あっさりと意気投合した。なんで驚かないんだ?……1週間前に真砂子とシャオリンに対して翔子が感じたのと全く同種の疑問を乎一郎が抱いたそのとき、
「そういうことでしたら、ぜひお見せしたいものがありますの。カーテンを閉めてよろしいでしょうか?」
 問いかけておきながら返事も待たず、三船和津絵はメイドたちに向かって頷いた。部屋の隅に控えていたメイドたちはささっと動いて窓をカーテンで覆い、壁にあるスイッチを押す。すると正面の白い壁が上下に開き……その奥から5列4段にずらりと並べられた、テレビモニタの群が姿を現した。そしてそのモニタ画面には……。
「し、シャオちゃん?!」
「きゃー、たー様すてきっ♪」
「……ほほう、これはこれは」
 3人がそれぞれの反応を示すのを三船和津絵は満足そうに見つめていた。そう、モニタ画面の1枚1枚には、それぞれ異なるアングルから撮影された太助とシャオリンの生の映像が、くっきりと映し出されていたのだ。テレビカメラは太助たちを追いかけるようになっているらしく、足元を写すカメラ、2人の表情を写すカメラ、繋いだ手を集中的に追い続けるカメラ……それぞれのカメラからの映像が所狭しと並べられている。つまりあの2人は、20台ものテレビカメラに追われ続けていることになる。
「……面白い趣向ですね。あまり趣味の良い仕掛けとは言えませんが」
「あのお2人は、いま空中庭園の中におりますの」
 常識人らしく冷ややかに批判した宮内出雲の言葉を、和津絵は完璧に無視して説明を続けた。
「お客様に楽しんでいただくための、ちょっとした迷路のアトラクションでしてね♪ お客様が迷子になったりするといけませんから、こうして監視できるようになってるんですのよ」
「……なんだか、やだ……」
「きゃー、ねぇねぇ、それじゃここからたー様と話すことも出来たりするの?」
 小声で眉をひそめる乎一郎を尻目に、慶幸日天ルーアンは嬉しそうに和津絵に聞いた。和津絵はゆっくりと頭を振った。
「いいえ、それじゃ監視してることがバレてしまうじゃありませんの♪ そういうときは、こうするんです」
 和津絵が取り出したリモコンのコントローラに、3人の視線が集中した。家庭用ゲーム機のコントローラに似たそれを両手で支えると、和津絵は左手のボタンの1つを無造作に押した。
「きゃ〜っ!!」
 その瞬間、画面から響く黄色い声。遠藤乎一郎は慌てて画面に眼を戻し、和津絵が何をしたのかに気づいて……自分はとんでもないところに来たのかも知れないと、心の底から震え上がった。

                 **

「た、太助様ぁ〜」
「手を離すなシャオ、大丈夫、大丈夫だから」
 突然に現れた落とし穴。シャオリンが深い深い穴の底に身を投げ出すのを、七梨太助は間一髪で手を伸ばして食い止めた。意外に軽いシャオリンの体重が彼の右腕に掛かる。キリュウの試練で反射神経を鍛えていなかったら間に合わなかったかも知れない……そんなことを思いながら太助は体勢を整え、愛しい自分だけの精霊を穴の縁へと引っ張り上げた。
「ごめんなさい太助様、私、太助様に迷惑ばかり掛けてしまって……」
「大丈夫、そんなの気にしないでいいよ。シャオ、怪我はない?」
「はい」
 ひたすら恐縮するシャオリンを慰めながら、太助は床に座り込んで上を見上げた。翔子に言われてシャオリンと2人で入ってみたバビロンの空中庭園。たいした障害物も分岐もなく、距離は長いが思ったより簡単にクリアできそうだと思った矢先の出来事だった。まさか落とし穴がいきなり現れるとは、山野辺が言ってたのはこのことか……考えてみれば3次元の迷路なんだもんな、上下方向に強制移動って言うトラップがあったっておかしくない。
「太助様、やっぱり私……」
「よせよシャオ」
 胸元から支天輪を取り出そうとするシャオリンを、太助は優しく制止した。
「山野辺に止められてるだろ。大丈夫、俺がシャオのこと守ってやるから」
「でもそれじゃ……私、守護月天なのに……」
「平気だよ、普段からキリュウに鍛えられてるのが思ったより役に立ってるみたいだしさ。それに俺っていつもシャオに守ってもらってばかりだろ。たまには俺にも、シャオのこと守らせてくれよ」
「そんな、私は……」
 守護月天ではなく普通の女の子として扱われていることに強い戸惑いを覚えるシャオリン。そんな彼女に、少年は優しく手をさしのべた。
「さぁ、シャオ行こう。俺と一緒に」
「…………」
「なっ?」
《私、太助様に頼っちゃって……いいのかな……》
 苦しいような甘酸っぱいような気持ち。それを胸の奥に感じながら、守護月天シャオリンはおずおずと右手を伸ばして、自分が守るべき少年の手に重ねた。

                 **

「きぃ〜っ、惜しいっ!」
「なかなかやりますわね、あの男の子」
 空中庭園から離れた島の一室では、ルーアンと和津絵が地団駄を踏んでいた。そんな光景を遠藤乎一郎は背筋の凍る思いで眺めていた。
「いかがです? あの迷路を組み替えるのもトラップを作動させるのも、こちらの思いのままですのよ♪」
「……なんでまた、そんな仕掛けを?」
 当然すぎる出雲の質問に、三船和津絵はまったく悪びれることなく答えた。
「当社のお客様には年輩の方もいらっしゃいますし、お子さまをお連れの方もおられますからね。全てのお客様に満足していただこうと思ったら、元気な方にはやり甲斐のあるルートを、お疲れの方には簡単なルートを通っていただけるよう、歩いている様子を見ながら難易度を調整したりする必要がありますの」
「あ、あの落とし穴が、難易度調節の一環、ですか……」
「大丈夫です♪ もしあのまま穴に落ちたとしても、下にはクッションがちゃんとありますし。決して行き止まりにはならないように設計してありますから」
「はあ……」
 宮内出雲は今日何度目かの溜め息を吐いた。サービス精神が旺盛なのは結構だが、この三船和津絵という女性は無邪気に爆弾を放り投げるようなところがある。まぁシャオリンは普通の女の子ではないわけだし、多少のことがあったって星神を使って自力で脱出できるだろうから無用な心配かも知れないが……この分だと『翔子お嬢様に内緒で』この島にやってきた彼女がこの先どんな騒動を引き起こすか、想像するだに恐ろしい。
「ねぇねぇ、あたしにも触らせて♪」
「はい♪ こちらが庭園内を確認できる画面でしてね、このボタンで場所とアイテムを選んで、ここを押すと……」
 すっかり意気投合した2人は、子供のような無邪気さで迷路の組み替えに没頭していった。出雲はシャオリンと太助に心の底から同情しながら、どこかにいるはずの知恵者のことを頭の隅で思い浮かべた。
《翔子さん、あの2人が危険な目に会ってるって時に、あなたは一体いま何をやってるんです?》

                 **

 そのころ、山野辺翔子は空中庭園の最上階から、階下の様子を眺めていた。
「よしよし、七梨けっこうやるじゃないか……だけどこの迷路、思ったよりも危ない仕掛けがあるもんだったんだな。並の人間なら大怪我するぜ」
 古代の王が下々を眺めて楽しむために作り上げた空中庭園。下から上がってくる者にとっては先の見えない迷路そのものだが、最上階からは階下が隅々まで見渡せ、太助たちが上がってきた道程も手に取るように分かる。もし軒轅で飛んで上がってきてしまったら、この空中庭園の面白さは半分も理解できなかったに違いない。自分が高速エレベータで一気に上がってきたことを棚に上げて、翔子は事前にシャオリンに約束させておいて良かったと改めて思った。
 シャオリンの手を引いた太助は、次から次へと障害を乗り越えてゆく。道はアップダウンを繰り返し、梯子があったり滑り台があったりでなかなか上には進めない。それでも2人は手に手を取って前進していった。太助が頼もしい男の子の顔に、シャオリンが不安げな女の子の顔に変わっていくのを遠隔モニタで確認しながら、翔子は心の中で祝杯を挙げた。
「翔子お嬢様、とっても楽しそうですわね♪」
 傍らで翔子を見守る双子の片割れは、自分のことのように嬉しそうにそう言った。翔子は慌てて笑みを消すと、面倒くさそうに手を振った。
「悪いけど、しばらくあたしの方に用事はないよ。それより他の島に行った連中のこと、調べといてくれないかな」
「はい、ただいま姉が様子を見に向かっております♪」
 とりあえず今のところ、母親や和津絵が干渉してきている様子はない。でもいつかは現れるだろうから、計画は早めた方が得策かな……迷路の遠隔組み替えシステムのことなど想像もしていない山野辺翔子は、ひとまず安堵の溜め息を吐くと下を歩く2人の方に視線を戻した。力を合わせて難題をクリアしていく太助とシャオリンを優しく見守りながら、翔子は心のどこかで焦れたものを感じていた。
《いい感じなんだけど……七梨、あんまり頑張りすぎるなよ。あんたたちには、ここで離ればなれになってもらうことになってるんだから》

                 **
 舞台は変わって。
 うち寄せる大波、誰もいない砂浜。サーフボードも簡易ボートも使い放題。申し分のない海遊びの環境でありながら、愛原花織の心は沈んでいた。水着に着替えもしないまま、海の家の一角で座り込んだままの彼女に、1人の少年が声を掛けた。
「花織ちゃ〜ん、せっかく来たんだからさ、泳ごうぜ?」
「……ふんっ、野村先輩だけ1人で泳げばいいでしょっ!」
 つまらない意地の張り合い。そのことは双方が分かっていた。2人しかいない夏の海で「シャオちゃんがいないと意味がないっ」と叫ぶほど野村たかしは無神経ではなかったし、花織も太助のことを口にしたりはしない。口にしたところで仕方ない。明日にならないと意中の相手との再会は果たせないのだから。
 だがそれと、目の前にいる相手と仲良くするかどうかは別の問題だった。せっかく楽しみにしていた夏の海には好きな相手と入りたい、というのは2人の偽らざる本心だった。互いに相手の気持ちがよく分かるだけに強く誘うことも出来ず、かといって貸し切りに近いビーチを1人で泳いだって詰まらない。2人の沈黙の間には、出口のない膠着状態が横たわっていた。
「……なぁ、花織ちゃん」
 それでも。年上としての責任感からか、野村たかしは何度目かのアプローチを試みた。花織はそっぽを向いたまま微動だにしなかった。何も聞きたくないし言われたくない……空の青さに似合わない鬱屈した感情が、このときの花織を包んでいた。
「……ずっとそうやって座ってるつもりかよ」
「……野村先輩には関係ないでしょ」
 理屈では分かっている。野村先輩が正しいと分かってるし、誘ってくれたことを感謝もしてる。それでも花織は動き出そうとしなかった。馬鹿なことをしてると分かってても止められないのが、意地の意地たる所以であった。……そして、そうやって花織が目と耳を塞いでいるうち、気が付くとたかしの気配が背後から消えていた。
「あっ……?」
 花織は顔をあげた。ちょっと躊躇ってから、おそるおそる後ろを振り返る。野村たかしの姿はすでにそこにはなかった……それに気づいた瞬間、重い後悔と喪失感が、思いもよらず彼女の胸にこみあげてきた。
《野村先輩、きっとあたしに愛想をつかしちゃったんだ。意地ばっかり張ってるあたしを置いて、1人でどこかへ行っちゃったんだ……文句が言えるわけ、ないよね。悪いのはあたしなんだし……》
 急に重いものを背負ったかのように、花織は肩を落とした。打ち寄せる波の音が急に大きくなったように感じた。水着の入った足元の荷物を見下ろしながら、花織はこの島に来たことを少しだけ後悔し始めていた……そのとき。
「花織、ちゃ〜ん!」
《えっ?》
「こっち、見てみろよ〜」
 懐かしい少年の声が、海の方から確かに聞こえてきた。花織は思わず小走りになって海の家から飛び出した……すると海の上でサーフボードにしがみつきながら、大波と格闘する元気な少年の姿が見えた。
「花織ちゃ〜ん!」
《せ、先輩……》
「結構面白いぜ〜っ、花織ちゃんもやろうよぉ〜っ、ぶはっ」
《あっ危ないっ……あらら、ひっくり返っちゃった……全くもう、格好悪いんだから、先輩ったら》
 くすりと笑みを漏らす花織。もう彼女は眼を逸らしたりはしなかった。彼女の想い人とは似ても似つかぬ元気で騒々しい少年は、おそらく初めてであろう海のサーフィンに挑戦しながら、怒濤のような大波に何度も叩きつけられ、その度に笑顔で花織の方に手を振った。
「……しょうがないな、もうっ」
 諦めたような口調で、でもどこか楽しそうな表情を浮かべながら、花織がたかしに手を振りかえそうとした、その瞬間。
 どざわわわああぁぁっ!!!
「の、のおおぉぉ〜〜っ!!」
 これまでとは比較にならない、とてつもない大波がたかしを襲った。たかしの身体は空中に10メートル以上も舞い上がり、そして大波の谷間に吸い込まれるように墜落した。南海の波間に花織の悲鳴がこだました。

                 **

 野村たかしが目を覚ましたのは、海の家の一室だった。ぼんやりする頭の上から、意外な少女の声が降ってきた。
「気がつかれたか、野村殿」
「う〜ん……あれ、キリュウ、ちゃん……?」
 全身がけだるくて動かない。頭の下からは、なにやら柔らかい感触が伝わってくる。徐々にはっきりしてくる彼の視界の中央には、心配そうにのぞき込む大地の精霊の顔が映っていた。
「キリュウちゃん、どうして……」
「すまない。大家さんがなかなか思い出してくれなくてな」
「……いいから、答えなくていいよキリュウちゃん……また出番がなくなっちゃうだろ」
 海の家に涼しい風が吹き抜けた。たかしの耳には遠い波の音と、高鳴る自分の鼓動だけが聞こえてきた。しばらく経った頃だろうか、不意にキリュウが謝罪の言葉を口にした。
「すまない、野村殿。私のせいだ」
「…………?」
「野村殿を跳ね飛ばした大波は、私のせいなのだ。主殿に与える試練を研究しようと思って、沖合で試しに作ってみたものなのだ。野村殿に迷惑を掛けるつもりは全然なかった。許してくれ」
「あ、あれね……」
「責めてくれ、なじってくれ。主以外の人間に累を及ぼすなど、試練の精霊として失格だ。私は……」
 たかしの頭を載せた膝が小刻みに震え、たかしの頬に熱い滴がこぼれ落ちた。たかしはようやく動くようになった右手を伸ばして、目の前にあるキリュウの頬に触れた。
「もういいよ、キリュウちゃん」
 その途端、激高するキリュウの言葉が止まった。口を真一文字に結び、きらきらと光るキリュウの瞳を下から見上げながら、たかしは静かに口元をゆるめた。
「大丈夫だから、もう謝らないでよ。もともとサーフィンをやってたんだからさ、波が来たくらいで文句は言わないって。それに俺、どうせ下手くそだし」
「……優しいんだな、野村殿は」
 伸ばした手を包む暖かい感触が伝わってきた。キリュウは空いた手で目元を拭うと、母親がするように膝の上のたかしの頭をそっとなでた。
「……なんだか謝ってばかりだな、このSSでの私は」
「言うなって」

                 **

 愛原花織は不機嫌だった。突然現れたキリュウが溺れた野村たかしの看病を買ってでたため、また独りぼっちで夏の海辺に放り出されてしまった彼女。いまさら1人で泳ぐ気にもなれない彼女は、ふらふらと辺りを散策しているうち、いつしか海に突き出す崖の突端へと向かっていた。
「……つまんない」
 小さな声で花織はそうつぶやいた。こんなことになるんなら、豪華なリゾート地に居ること自体がかえって残酷に思えるというものだった。もっと幼い年頃だったら1人きりでも陽が暮れるまで遊んでいられただろう。だが運命の人を知ってしまった恋する乙女は、もう独りぼっちで無邪気に楽しむことなど出来なかった。かろうじて心の隙間を埋めてくれそうな気がした少年も、今では彼女の手の届かないところに行ってしまっていた。
「七梨先輩がいてくれたら、きっと楽しかったのになぁ」
 かなわぬと知りつつも漏らしてしまう溜め息。瞳が焦点を結ばぬまま、花織は暗い顔をしてとぼとぼと機械的に足を進めていた……すると突然、花織は背後から羽交い締めにされ宙へと舞った。
「駄目よ、行っちゃ駄目、早まっちゃ駄目!」
 背中から聞こえる金切り声で我に返った花織。彼女の足元には、黒々と輝く岩の顎が大きな口を開けており、その奥では轟音と共に砕ける波の白い煙が漂っていた。自分が海の藻屑になる一歩手前だったという事実が、冷たい汗と共に彼女の背筋に染み渡ってきた。
「駄目よ、おとなしくして、じっとしてて!」
 全身を凍り付かせる花織。だが背後の人物はその様子に気づかぬかのように、宙に浮いた花織の身体をブンブンと何度も何度も左右に振り回した。黒い岩肌と冷たい波のしぶきが、右から左から花織の顔に殺到する。頭をグラグラと揺らされた花織は視界がだんだん白くなっていくのを感じた……やがて身体の揺れが止まり膝に堅い感触が戻ってきたとき、花織はまさに失神する一歩手前だった。
「はあ、はあ……し、死ぬかと思った……」
 四つん這いになって荒い息を吐く花織。
「はあ、はあ、はあ……だ、駄目じゃない、命を粗末にしちゃあ」
「あ……ヘリの操縦をしてた、おばさん……」
「眼をしっかり開けなさい、お姉さんでしょ、お・ね・え・さ・ん!」
 両手でほっぺたを引っ張られて、花織は力づくで現実へと引き戻された。花織の目の前には髪を振り乱した“通りすがりのお姉さん”が、荒い息を吐きながら怖い顔で彼女を睨み付けていた。
「気をしっかり持って。身投げなんかしちゃ駄目でしょ、あなたの人生はこれからじゃないの」
「あ、あたし、身投げなんかしてません! ちょっとうっかりしてただけで……」
「いいの、いいの。隠さなくてもいいわ、私にはちゃんと分かってるから……辛かったのよね、寂しかったのよね」
 花織の弁解を全く聞かずに“お姉さん”は自分で何度も頷いた。そして次の瞬間、花織は思わず耳を疑った。
「可哀想にね。せっかくの夏休みだっていうのに、好きな人と一緒にいられなくて」
「……えっ?」
「すぐにでも彼の胸に飛び込みたいのに、彼のそばには別の女の子がいて。彼とその子が仲良くしてるのを見ると、そこに割り込んでいくだけの勇気が出せなくて。ああっ、なんて不憫な子なのかしら」
 花織は眼をまん丸に見開いた。
「すっごーい! どーして、なんで分かっちゃうんですか?」
「ほぉら、やっぱりそうなんでしょう?」
「そうです、そうなんです! 嘘みたい、そんなにあたしの気持ちって分かりやすいんですか?」
「心配しなくていいわ、なんとなく分かるの。私にも、あなたと同じ年頃の娘がいますからね」
 慈母神のように優しく微笑む“通りすがりのお姉さん”を、愛原花織は感激と尊敬を込めた瞳で見上げた。
「そんなに思い詰めちゃって……お嬢ちゃん、初恋なの? その人のことは」
「はい! そうです!」
「そうだったのね、可哀想に……分かったわ、私が協力してあげる。絶対その彼に振り向いてもらえるよう、手伝ってあげるから」
「本当? 本当に? 嬉しいっ!!!」
 花織は思わず“お姉さん”の首にすがりついた。“お姉さん”はそんな花織を優しく抱きしめると、励ますように軽く花織の背中を叩いた。
「だから約束して、もう無茶なことはしないって。彼と一緒の夏を過ごすために、精一杯頑張るって」
「うん! あたし頑張る! ありがとう、おばさん」
「お・ね・え・さ・んっ!」
 2人は堅い堅い抱擁を交わした。そしてその瞬間、締め付けられた花織のウエストは15センチも細くなった。

第5幕へ戻る  第7幕へ進む


次回予告:

「よおーし、予告読みも2周目に突入だっ! 山野辺の別荘編もますます好調、ガンガン行くぜっ!」
「……暑っ苦しい兄ちゃんだよな、毎度ながら」
「おっ、今回の相棒はお前か、虎賁! おお俺は猛烈に嬉しいぞ、なんたって俺たちはマブダチだもんなっ!」
「……多分あり得ないとは思うけどさ、もしお前が月天さまにちょっかいを出すことがあったら、オイラは止めなきゃならない立場なんだよな、一応」
「堅いこと言うなよ。今に見てろ、俺は夏の似合ういい男になって、シャオちゃんをびっくりさせてやるからなぁ! あ〜あ〜、燃えろぉ〜、俺の熱いぃ〜〜た〜ま〜しぃ〜」
「あ〜あ、あっちの世界に行っちまった……ま、機嫌がいいのも分かるけどな。熱血兄ちゃん、今回は結構いい役もらってるもん」
「おおっ、分かるかね虎賁くんっ!(がしっと虎賁の肩を掴む)」
「ああ、気は乗らないけど認めざるを得ないよな。本編じゃ兄ちゃんってボケ役専門なのに、このSSじゃ2枚目役に突っ込み役、大活躍だもん。大家さん、こんなののどこが気に入ったんだか……」
「ふっふっふっ、見る人は見てくれてるものなのだよ。さぁて、次回はいよいよシャオちゃんがフリーになる番だっ! 悪く思うなよ太助、この夏の想い出はそっくり俺が頂くぜっ!」
「……まぁ、こいつに今回しゃべらせて正解だったかもな。こんな調子のいい話が、そう何回も続くとは思えないし……待てよ、もうすぐ月天さまが1人になるってことは、いよいよあいつの出番ってことか? きっと喜ぶぞ、早く知らせてやろうっと(ごそごそと支天輪に戻る)」
「あ〜あ〜、燃えるぅ〜、熱くぅ〜〜、も〜え〜るぅ〜〜(以下、省略)」

SSの広場へ