Kanon SideStory
さゆりん包囲網(前編)
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前編
生徒会役員A「ぬうぅ、久瀬はなにをしておるのだあ!」
役員B「せ、先輩お気を確かに、落ち着いて‥」
役員A「これが落ち着いていられるかあ! 倉田佐祐理ひとりに、いつまでてこずっておるのだぁ!」
役員B「は、はぁ‥久瀬くんもあらゆる手段を弄しておるようですが、状況は芳しくなく‥」
役員A「ぬうぅ、使えぬやつ‥そればかりか、佐祐理ちゃんの人気に反比例して、我が生徒会の評判は地に落ちているではないか! 何をやっておるのだ、あいつは‥」
役員B「さ、佐祐理‥ちゃん?」
役員A「うおぉ、入学式で佐祐理ちゃんを一目見たその日から、彼女の隣に座るのを夢見てきたと言うのに! クラスが別になったと知るや、佐祐理ちゃんが居るという評判だけを頼りに生徒会に入ったと言うのに! なぜだ、なぜ佐祐理ちゃんはいまだに生徒会に入ってこんのだぁ?」
役員B「あ、あのぉ‥」
役員A「気づいてみれば高校生活もあと数ヶ月、こんな土壇場になっても佐祐理ちゃんの手すら握れんとは何事かぁ! お前が不甲斐ないからだ、お前が!」
役員B「痛い、痛いです‥はぁぁ、やっと分かりましたよ。先輩が倉田さんに執念を燃やす理由が‥」
役員A「ぬ、貴様なぜそれを‥まさか、我が心を覗きみたのかぁ!」
役員B「‥さっき先輩が口に出したんじゃないですか」
役員A「な、なにぃ‥よいか、このことは他言無用だぞ、もし誰かに漏らしたら‥」
役員B「い、いえいえ、言いません、絶対‥(あほらしくて言えるかよ、こんなこと)」
役員A「よぉし、今日から我々は同志だ‥力を合わせて、佐祐理ちゃんを我が手に収めようじゃないか。そう、そして放課後の生徒会室‥すべての生徒が帰った夜遅く、二人きりで資料の整理をする我輩と佐祐理ちゃん‥そして、二人の手が偶然に重なり‥」
役員B「はぁ〜(溜め息)」
役員A「とにかくだ、このままでは埒があかん。親愛なる同志よ、昨日命じた倉田佐祐理奪取計画、できているだろうな?」
役員B「は、はぁ、まぁ‥(俺はこんな人のために、夕べ徹夜したのか‥)」
役員A「どうした、早く読め」
役員B「はいはい‥えぇっと、僕の調査によるとですね、倉田さんはほけ〜っとしたところがありながら妙に勘が鋭く、甘い誘いについてくるタイプではないかと」
役員A「当然だろうが! 佐祐理ちゃんをそこらの尻軽女と一緒にするな!」
役員B「厄介なのはですね、倉田さんの親友の川澄さんのことで‥」
役員A「ぬぅ、学年きっての問題児のことだな」
役員B「それがその、倉田さんと川澄さんはたいてい一緒に居るんですが、その川澄さんの発するオーラが尋常ではないそうで‥たいていの人は、近寄っただけで腰が引けてしまうらしいのですよ。そんな中、久瀬くんはよくやっている方ではないかと‥」
役員A「久瀬には任せられんと言っただろうが! もう分析はいい、我々は何をすべきか?」
役員B「それでですね、考えたんです‥倉田さんはサブとはいえ、れっきとしたヒロインの一人。我々のようなぽっと出のキャラが歯の立つ相手ではありません。なにしろ作者の思い入れが違いますから‥」
役員A「解説はいいといったであろうが!」
役員B「そ、そこで‥助っ人を、雇ってはどうかと思うのですが。倉田さんに負けない存在感を持つキャラであれば、倉田さんや川澄さんに対抗できるのではないかと」
役員A「‥そう言うからには、目星をつけてあるんだろうな?」
役員B「ええまぁ‥生徒会会計の権限を持ってすれば、体育会のひとつやふたつは‥」
役員B「ああ、その‥水瀬君、だったかな。陸上部部長の」
水瀬名雪「あ、はい‥」
役員B「ちょっと、力を貸してもらいたいのだがね」
名雪「あ、あのぉ‥今からすぐ、部活に行かなきゃいけないので‥」
役員B「そんなつれないこと言うなよ。言う通りしてくれたら、陸上部の部費、割り増ししてやってもいいんだぞ」
名雪「あの‥部費なら足りてますから‥」
役員B「グラウンドを使える時間を長くしてあげよう」
名雪「わたし、朝弱くて‥ごめんなさい、もう行かないと‥」
役員B「‥仕方ない、君にだけサービスだ。食堂のAランチ1週間分、どうだ?」
名雪「‥話、聞きます。なんでも言ってください♪」
役員B「一人、確保しました」
役員A「ほぉ、陸上部の部長か‥だが、あの子は速く走ることしか取り柄が無いからなぁ。佐祐理ちゃんを攻略するには、もう少し、何とか‥」
役員B「でしたら、お任せください。通称“四次元ポケットの魔女”にも目はつけてあります」
役員B「すまない‥ちょっと、話があるのだが」
美坂栞「はいっ? ごめんなさい、昼休みは校舎裏に行くことにしてるんです。急がないと‥」
役員B「すぐ済むから‥どうだろう、1年生のときのノートと宿題、コピーさせてやるということで‥」
栞「要りません、お姉ちゃんが居ますから‥失礼します」
役員B「ええい、こうなったら‥超特大のバニラアイスクリーム、おごってやる!」
栞「‥先輩、私どこまでもついていきます♪」
役員B「‥という次第です」
役員A「病人を連れてきてどうする! もっと頼りになるやつはおらんのか」
役員B「まぁ、心当たりが無いわけでは‥“うしみつどきの女狐”と“炎のタックル天使”にも、いちおう声を掛けてみますか‥」
役員B「話を聞いてくれないか? この肉まんをあげるから」
沢渡真琴「うん、聞く♪ ねぇ、早く肉まんちょうだい!」
役員B「どうだろう、力を貸してくれないかな」
月宮あゆ「うん、ボクで良ければいいよ。このたいやき美味しいね♪」
役員A「ここの生徒でないものを呼んできてどうする!」
役員B「‥待ってくださいよ、こんなにうまく行くということは‥ひょっとしたら」
役員B「ねぇ、川澄さん」
川澄舞「‥‥‥‥‥」
役員B「あの、ちょっとお話が‥」
舞「‥佐祐理をいじめたら、許さないから」
役員B「や、やだなぁ、僕がそんなことする男に見えます? ほら、これあげますから」
舞「‥‥‥‥‥」
役員B「ほぅら、タコさんウィンナー、お好きでしょう?」
舞「‥嫌いじゃない」
役員B「‥冗談のつもりだったのに」
役員A「でかしたぞ、貴様! あの川澄を手なずけるとはな。これで倉田佐祐理は孤立無援だ。見ていろ佐祐理ちゃん、もうすぐきみの唇を奪ってみせるぞ!」
役員B「まぁ、役者は出そろいましたね‥あとは、シチュエーションを設定して倉田さんを誘い込むだけか‥」
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