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泉「兎に角？」（一話完結）（レス返し）
日時： 2014/10/02 01:01
名前： 明日の明後日

こんばんは、明日の明後日です。
「兎に角、って不意に出てくると読み方惑わされるよね」って感じのノリで一話完結を書いてみました。
かなりアホなお話です。一時間ぽっちで書いたので色々と粗があるかと思います。


それではどうぞ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





「ねーねー美希ちゃん、ちょっと訊きたいことがあるんだけど」

「おお、どうした泉」

　ある日の放課後。動画研究部の一員、瀬川泉から何やら相談を持ちかけられた。

「これの読み方、分かる？」

　言いながら泉は一枚の紙を差し出す。それを受け取って、そこに書かれている文字を注視した。

　『兎に角』

　………○○に、つの？

「これは、あれじゃないか。最初の文字の読み方が分からないけど、鬼に金棒、的な意味の言葉じゃないのか」

　私は国語が得意な方ではないので、漢字にはあまり強くない。とはいえ相談を受けた手前、よく分からない、で済ましてしまうのも癪に思えて、
　似たような文字の並びをしている言葉をもとに、意味を推測しようと試みた。

「あー、確かに似てるかも！」

　泉も納得してくれたようだ。これはきっと、鬼に金棒、ヒナに木刀といったように、強いものに武器を与えることで更に強くなる、みたいな感じの言葉に違いない！

「おいおい、何を言ってるんだお前たちは、それは全然意味が違う言葉だぞ」

　と、後ろから不意に声を掛けられる。

「む」

　振り向けば、そこにいたのは同じく動画研究部の一員、朝風理沙。
　しかし、全然意味が違うとは一体どういうことだ？確かに、理沙は私たち三人の中では一番成績がいいが……

「理沙ちん、もしかしてこれの読み方、知ってるの！？」

　問う泉に、理沙はチッチッチッ、と指を振って、

「いや、悪いが読み方までは分からない。しかし、意味を推測することならできるさ」

　何やら無性に腹が立つ振る舞いではあったが、しかし、意味を推測するというのなら、私の推測だってそれなりに的を射てるはずと思うのだが。　

「お前たち、変だとは思わないのか？漢字の中に、一文字だけ平仮名が混じっていることを」

「「…ハッ！！」」

　た、確かに！『兎に角』、この言葉は最初が『兎』、最後が『角』という漢字で書かれているにもかかわらず、真ん中の『に』は平仮名で書かれている！！

「い、泉！確かに、この言葉は、この書き方で間違いないのか！？」

　逸る私に、泉は「えっとぉー」とこめかみの辺りに指を当てながら考えている。この言葉を見た場面を思い出そうとしているのだろう。

「昨日、2○ゃんで小説を読んでるときに出てきた言葉で、確かに、この字だったと思うよ？」

　それを聞いて、理沙は「ハッ」と鼻を鳴らす。

「その作者はきっと変換ミスをしたんだろうな。一つの単語で、平仮名が漢字に挟まれるなどあるはずがない」

　な、なんという説得力…！確かに、理沙の言う通りだ、現に私の知っている言葉の中で、漢字の中に唯一つだけ平仮名が混じっている言葉なんてありはしない！！

「この言葉はな、正しくはこう書くんだよ、きっと」

　理沙は私の手から紙を奪い去ると、もともと書いてあった『兎に角』という文字を二重線で消して、その横にこう書いた。

「『兎煮角』……どういう意味だ？」

「ふっ、逆から呼んでみれば分かるさ」

「えーっと、つの、にる、なんとか」

　見慣れない言葉を目に、問う私。答える理沙。素直に逆から読み上げる泉。

「つの、にる…角、煮る…角煮」

「角煮、角煮か！！」

　豚肉なんかをブロック状に切り分けて、甘めのタレでとろとろになるまで煮込む、あの料理のことか！！

「そうだ！この言葉はきっと、読み方が分からんが、『兎』という動物の肉の角煮を意味しているんだ！！そうに違いない！！」

　完璧だ、完璧すぎる…！

　漢字の間に平仮名が挟まれるような単語がある訳がない、という推測から始まり、『に』に『煮』を当てはめ、

　後に続く『角』とあわせて『角煮』まで連想するとは……

「て、天才だ…天才がここに光臨した…！」

「さすがだよ理沙ちんっ。これで動画研究部は安泰だね、美希ちゃん！」

「ま、私にかかればこんなものさ。後はこの『兎』という字がどんな動物を表しているかさえ分かれば、この問題は解決だな」

　言いながら、理沙はスマートホンを起動する。なるほど、読み方が分からないなら手書きで文字を入力して、

　グ○グル先生に読み方を訊けばいい、という寸法だな？まったくこの女、やることに隙の欠片もない。完璧すぎて溜息が出てしまうというものだ。










「あれ？あんたたちまだ帰ってなかったの？」

　と、理沙が『兎』の読み方を検索している最中に、我らが担任教師がやってきた。見回り、というほどの時間でもないから、忘れ物でも取りに来たのだろうか。

「おお、雪路か。何、ちょっと調べごとをな」

「ふーん。ま、いいけど。それよりあんたたち、来週の試験、大丈夫なんでしょうね？今度赤点取ったらいくらなんでも庇い立てできないんだからね？」

「任せろ雪路、我々もそろそろ本気を出してもいい頃合だからな」

「“とにかく”、赤点さえ取らなければいいんだよね！！」

　理沙には検索に集中させるべく、雪路は私と泉で相手取ることにした。それにしても、もうすぐ中間試験か、まったく嫌なことを思い出してしまったことだ。

　しかし、泉の言うとおり、赤点さえ取らなければいいのだ。そしてそのためには、一問一答の問題を落とさないこと。

　要は暗記だ。それだけに意識を集中すれば、さして難しい問題ではない。範囲を考えると一夜漬けでは厳しいが、一週間もあればなんとかなるだろう。

「まったくあんた達は、意識が低いんだから……“とにかく”、あんた達の点数が低いと、私がヒナに怒られるんだからね、しっかり勉強しなさいよ」

　言いながら雪路は教壇から出席簿を取って教室を出て行った。しかし、出席簿って朝に提出しないといけないのではないだろうか…？

「よし、分かったぞ！」

　と、理沙が大声上げて立ち上がる。どうやら、『兎』の読み方が分かったらしい。

「『兎』という字は、どうやら『うさぎ』と読む様だぞ！！」

「おお！」

　ということはつまり、

「そう、『兎に角』とはウサギの肉の角煮のことだったのさ！！」

「「おお〜〜〜！！」」

　パチパチパチ、と泉と二人で拍手をしながら理沙を讃える。
　昔はうさぎを食べるような習慣があったとどこかで聞いたことがあるし、きっとウサギの調理法の代表的なものが角煮なのだろう。

「ありがとう、理沙ちん！！これで謎はすべて解けたよ！！」

　目を輝かせ、理沙の手を取りながら感謝の意を示す泉。

「何、この程度のことならお安い御用さ。また、いつでも頼ってくれて構わないぞ、泉」

　理沙は得意げな顔で言ってのける。確かに、今日の理沙は嫉妬するほどに冴え渡っていたな。

「よし、泉の疑問が晴れたところで、次のターゲットは中間試験だな、準備はいいか、二人とも！！」

　しかし、今日の勝利に酔いしれていては明日の勝利はない。勝って兜の緒を締めよ。上を目指すためには、油断している暇など、ありはしないのだ！

「もちろんだよ美希ちゃん！」

「ああ、これから三人で勉強会だ！応用問題は諦めるとして“とにかく”簡単なところから覚えて覚えて覚えまくるぞ！」

　理沙が吼える。これからの三人の方針を、たった一声で決定してしまった。まったくどうしたっていうのか、今日の理沙は絶好調だな。

　私も負けていられない。前回の試験では総合得点で理沙に敗北を喫したが、いつまでも負けてばかりはいられない。次は必ず勝ってやるぞ！！

「よし、そうと決まれば生徒会室へダッシュだ！行くぞー！！」

「「おー！！！」」

　私たちは、三者三様、明日の勝利へと向けて、走り出した。

　生徒会室にはヒナや千桜を始めとした成績優秀組がいるだろう。

　きっと怒られるだろうけれど、“とにかく”彼女たちに勉強会の監督をお願いするところから始めなければ。



　-　おわり　-






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Re: 泉「兎に角？」（一話完結） ( No.1 )
日時： 2014/10/02 08:17
名前： ロッキー・ラックーン
参照： http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。

大変ご無沙汰しております。と言っても、本家ひなゆめ消滅前に一度だけ感想を送っただけのアレですが…。『太陽と月』からのファンです（2度目
ずっとずっと待ってました。もうお目にかかれないと思ってました。

スミマセン、興奮してました。感想移ります。
とてもアホっぽくて三人娘の残念さが際立っています。そしてツッコミの不在が（明後日の方向への）疾走感を倍増しているように覚えます。さすがは「よほどの事」で留年しそうな面々といった所でしょうか。さらには連呼しながらも「兎に角」の意味にたどり着けないオチなのがもう…間に合わなそうですね（白目
兎にも角煮も、明日の明後日さんのキャラの魅力の引き出し方を久々に感じた次第です。

さてさて、今後も明日の明後日さんのSSを期待しちゃってもよろしいのでしょうか？新作でなくとも、特にハヤヒナの旧作をココで再UPして頂けると止まり木から参加している方々への良い刺激になるのではないかと思います。（私は旧ひなゆめからHTMLで保存してる位好きですので）
加えて勧誘になるのですが、このサイトのチャットルームでの活動にも一度顔を出していただけませんか？小説板トップの【小説板の豆知識】を何度もF5更新してると出てきます。
土曜には定例の茶会を、平日でもとっても個性的で優しい常連さんが何人もいらっしゃるので、このサイトについていろいろお話が聞けるかと思います。自分はまだまだ新参ですが、管理人さんはじめとする皆さんのおかげで非常に楽しい時間を過ごさせてもらってるんで、良かったら是非にと。

なんやかんや書き連ねましたが、私自身が色々お話を聞かせて頂きたいというのに尽きます。本当にずっと待ってましたので…。

ではまた、お目にかかれる時を楽しみにしております。
失礼しました。
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Re: 泉「兎に角？」（一話完結） ( No.2 )
日時： 2014/10/02 22:54
名前： 明日の明後日

こんばんわ。
大変ありがたいことに、知ってる方から感想を貰えましたのでレス返しに来ました。
いや、初めましての方でもちゃんと返しますけども。



ロッキー・ラックーンさん

お久し振りです、一度感想を頂いたことはしっかりと覚えています。どの作品にもらったかまでは忘れちゃったけど（汗
僕の方からも一度感想を送ったことがあるような気がしないでもないでもないような…という感じですが、ともかく、ずっと待ってくださっていたということで、どうもありがとうございます。


> とてもアホっぽくて三人娘の残念さが際立っています。そしてツッコミの不在が（明後日の方向への）疾走感を倍増しているように覚えます。さすがは「よほどの事」で留年しそうな面々といった所でしょうか。さらには連呼しながらも「兎に角」の意味にたどり着けないオチなのがもう…間に合わなそうですね（白目

最初は西沢さんも登場させて更に迷走させようと思ってたのですがネタが思いつかないのと長くなりそうなのとで三人娘のみでのお話となりました。きっと彼女たちの日常はこんなんなんでしょう（笑）
ツッコミ人気質のヒナギクはいつもこんな三人の相手をさせられて大変ですね（苦笑
基本的に純粋なツッコミ役と言えるのはヒナギク、千桜、咲夜程度しかいないと思ってますが、この三人は逆に純粋なボケ役ってことなんですかね。
お話の根幹が「アホなお話」ということなので、アホっぽいとか残念とかいう感想を頂けて幸いです。


> 兎にも角煮も、明日の明後日さんのキャラの魅力の引き出し方を久々に感じた次第です。

理沙をべた褒めする形になってしまったあたりに気持ち悪さを感じていたんですが、キャラの魅力が引き出せていた、ということで安心しました。
すごくどうでもいいですが私のPCはアホの子なので「角煮」を一発で変換できなくて打つのがめんどかったです。


> さてさて、今後も明日の明後日さんのSSを期待しちゃってもよろしいのでしょうか？新作でなくとも、特にハヤヒナの旧作をココで再UPして頂けると止まり木から参加している方々への良い刺激になるのではないかと思います。（私は旧ひなゆめからHTMLで保存してる位好きですので）

んー、どうでしょう（汗
一話完結をぽつぽつ投下していけたらとは思いますが。ハヤヒナは今の原作見てるテンションだと書ける気がしないです、申し訳ない。コミックス読み直してみるかなぁ…
旧作改訂にしても、テキストで残ってるのは『桜の樹』の他は一話完結ばっかだし（汗
どちらかというと、書く書く詐欺で結局スレ立てすらしなかった『名もなき慕情』の方をなんとかしたいなぁ。


> 加えて勧誘になるのですが、このサイトのチャットルームでの活動にも一度顔を出していただけませんか？小説板トップの【小説板の豆知識】を何度もF5更新してると出てきます。
> 土曜には定例の茶会を、平日でもとっても個性的で優しい常連さんが何人もいらっしゃるので、このサイトについていろいろお話が聞けるかと思います。自分はまだまだ新参ですが、管理人さんはじめとする皆さんのおかげで非常に楽しい時間を過ごさせてもらってるんで、良かったら是非にと。

チャットですか…
実はひなゆめで活動していた当時にも茶会には参加したことがなかったり（汗
せっかくお誘い頂いたので一回顔を出してみようかな…



ではこのあたりで失礼します。
明日の明後日でした。
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Re: 泉「兎に角？」（一話完結）（レス返し） ( No.3 )
日時： 2015/12/14 22:37
名前： 瑞穂

明日の明後日さんへ

こんにちは、瑞穂です。感想スレッドではご無沙汰していますね。
チャットではいつもお世話になっています。


感想につきましてですが、
恥ずかしながら実は私も最初は読み方が分からず、単語を読んだときに「うさぎにつの」と読んでしまいました。(オイ)(苦笑)　ＧＯＯＧ○Ｅで検索して「とにかく」と読むと分かりましたが。

しかし無意識な発言では正解を言っているにもかかわらず、全然読めないというのはなんだか可笑しな話だと思います。(笑)　ロッキーさんも仰っていましたが流石「余程のことで」留年しそうな面々といったところですね。ヒナギクさんや千桜さんのような頭脳明晰なツッコミ役がいるうちはいいですが、卒業していなくなってしまうと瀬川さんたちは一体どうなってしまうのでしょうか、心配です。

話の繋ぎ方につきましては、ヒナギクさんやナギちゃんのような頭脳明晰で強気なキャラクターが入っていなかったので混乱したりお話が壊れなくてよかったと思いますし、心理面というよりキャラクターにつきましても瀬川さんが自信が、記憶力がなく、朝風さんがふんぞり返っている描写は、一般人と違う行動や考え方はお話に特殊な味を出していると感じました。（表現が雑で申し訳ありません）

私にはこのような表現というか味付けはすぐには思いつきません。様々なSSや小説を読んで表現方法や展開を身に付け、書けるように頑張りたいですね。
明後日さん、今回のSSを読ませていただきどうもありがとうございました。


また感想を書く機会があればその時はよろしくお願いします。次回のSSも楽しみにしていますので。私もバレンタイン有志合同本を書こうと考えています。ネタはまだありませんが。(笑)

明後日さんも心身共に健康でいてくださいね。
それでは、失礼します。
瑞穂でした。
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Re: 泉「兎に角？」（一話完結）（レス返し） ( No.4 )
日時： 2015/12/20 20:19
名前： 明日の明後日

明後日です。寒いですね。


瑞穂さん

感想ありがとうございました。返信が遅れまして、申し訳ありません。

> しかし無意識な発言では正解を言っているにもかかわらず、全然読めないというのはなんだか可笑しな話だと思います。

言葉自体は知っていても漢字での書き方を知らなかったり、読み方は知っていてもパッとは思い出せなかったりと、こういうことって身近にも意外とある気がしますけどね（笑）
「漸く」「生憎」とかがそれに当たりますかね。


> 話の繋ぎ方につきましては、ヒナギクさんやナギちゃんのような頭脳明晰で強気なキャラクターが入っていなかったので混乱したりお話が壊れなくてよかったと思います

そら（壊れないようにお話を作ってるんだから）そう（話が壊れてないのは当たり前だ）よ。
と簡単に言ってみたものの、掌編だから言えることというかなんというか。
長編書くときはプロットをしっかり組まないと、収拾がつかなくなることも多いでしょうし、きちんとお話が収束するように気を遣うことは大事なんだよだなぁと。


> 心理面というよりキャラクターにつきましても瀬川さんが自信が、記憶力がなく、朝風さんがふんぞり返っている描写は、一般人と違う行動や考え方はお話に特殊な味を出していると感じました。

泉ちゃんの頭が悪いのは様式美（爆）
理沙がアホなことしか言ってないのに自信満々なのも（ｒｙ
正直このお話での三人娘の行動言動思考にはツッコミどころが満載なので、間違い探し的な楽しみ方もあるかもしれません（楽しめるとは言ってない


簡単ですが、以上を以ってレス返しとさせていただきます。
それでは失礼します。

明日の明後日でした。
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