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想いよ届け 〜病篤き君に
日時: 2014/08/02 21:16
名前: どうふん

 初めまして。
 管理人さん、よろしくお願いします。
 そもそもSSを投稿するのが初めてですので、規約は読みましたが、何かミスや不都合があれば遠慮なく指摘して下さい。

 ハヤテのごとく454話において、ハヤテのため(だけではないにせよ)頑張ったヒナギクさんが、何かに取りつかれてダウン。ここを話の起点にします。
 本作では姉に悪霊を移したようで、元気になっていると思いますが、そうならなかったとしたら・・・。
 ハヤテは兄との再会を無事に終えて仲直りし、石を手に入れ、ナギお嬢様は遺産とお屋敷を取り戻すことができましたが、ヒナギクさんの具合は一向に良くなりません。そんな中、何が起こるか、私なりの視点でSSを書いてみようと思います。

 ストーリーの行方はまだ漠然としていますが、基本的なコンセプトとして、ヒナギクさんには幸せになってほしい、と思っています。本作でヒナギクさんがハッピーエンドを迎えるのは難しいと思いますので、その分も含めて。



                <第1話>

 「まだ、熱が下がらないんですか」ハヤテが心配そうにヒナギクの顔を覗き込む。
 「え、ええ。でも大分楽になってきたし大丈夫よ」
 しかしその声は相変わらず弱弱しく、やつれた顔に生気は感じられなかった。

 ここは海岸近くの病院。7階の病室にヒナギクは寝ていた。
 伊澄も付きっきりで看病しているものの、1週間が過ぎてもヒナギクはベッドで寝込んだままだった。
「もうそろそろ良くなるはずですが・・・。余程たちの悪い悪霊にとりつかれたのでしょうか。私は一旦お家に戻ってもっと効き目のある道具を探してきましょう」
 すぐに発とうとする伊澄を全員で阻止し、千桜とカユラが一緒に家まで送り届けることとなった。

 「他のみんなもずっとここにいるわけにいくまい」
 ハヤテの兄イクサは、ヒナギクに病院を手配しただけでなく、ハヤテとその仲間をずっと自分のホテルに泊めてくれていた。
 「ここは、この賢そうな子だけ残して、後はいったん東京へ帰れ。面倒は俺が見る」

 まだヒナギクの名前を憶えていないイクサの記憶力も恐るべきものがあるが、言っていることはもっともである。全員夏休みの宿題や学校の準備もしなければならないし、ナギやマリアには屋敷に早く戻るようクラウスから催促が届いている。

 「しかし、ここにヒナギクさんを一人で残すわけには・・・。僕のためにこんなことになってしまったんですから。僕は残ります」
 「私にも関係がある。私も残る」ハヤテとナギが口々に言ったが、マリアは首を振った。
 「ハヤテ君は残ってヒナギクさんの面倒を看て下さい。原因は無人島に付き合わせたハヤテ君にあるんですから。ナギは一旦戻ってヒナギクさんのご両親をお呼びしましょう」
 「な、なぜ、ハヤテ一人なのだっ」
 「ナギはヒナギクさんに早く元気になってほしいんでしょう。だったらハヤテ君が一番です。ハヤテ君なら身の回りの世話が誰より上手ですし」

 歩もハヤテとヒナギクを代わる代わる見ていたが、思いつめたような顔で
 「ナギちゃん、そうしよ。ハヤテ君、ヒナさんをお願いします」と言った。
 不承不承ナギは頷いた。
 「まあいい。ハヤテ、ヒナギクは任せたぞ」

 ハヤテは、というと、マリアの先ほどの一言が効いたのか俯いていた。

そのハヤテを、ナギはじっと見ている。
その瞳の中には、困惑とも怒りともつかないものが込められていた。






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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.1 )
日時: 2014/08/03 06:45
名前: どうふん

第2話と第3話、続けて投稿します。
ところで、ヒナギクさんの父親って本編に出てきたことがありましたかね。
私が忘れているだけなら、ごめんなさいです。  


                     <第2話>

 ヒナギクの周りに亡霊とも悪霊ともつかない連中が群がっていた。
 「よくも俺たちの宝を」「今すぐに返せ」「八つ裂きにしてくれる」・・・・
 「待って。これにはわけがあるの。人助けのためにどうしても必要だったのよ」
 当然奴らは聞く耳など持ち合わせていない。じりじりと近寄ってくる。
 「ご、ごめんないさい。あなたたちに必要なものだったら返すわ。だからしばらく待って」その声も届かず、亡霊の一人が飛びかかってきた。ヒナギクは宝剣を召還して身構えたが、もともと悪いのはこちら、という意識が振り下ろすのをためらわせた。
 ヒナギクは四方から押し寄せる亡霊たちに一瞬にして飲み込まれて悲鳴を上げた・・・。

 「ヒナギクさん。ヒナギクさん」目を覚ましたヒナギクをハヤテが心配そうに覗き込んでいた。
 「怖い夢でも見たんですか」
 「ハヤテ君は大丈夫?変な夢を見たりしない?」
 「ヒナギクさん、僕より自分を心配して下さい」ハヤテの目には大粒の涙が浮かんでいた。「ヒナギクさんがこのまま元気にならなかったら、僕は一体どうしたらいいか・・・」「何を言ってるの。私は大分楽になってきたし大丈夫よ」
 昨日も聞いたセリフだと思ったが突っ込みを入れる気にもなれなかった。
 「皆は帰ったのね。」
 「は、はい」
 「ハヤテ君ももう帰ったら」意外なセリフにハヤテは反応できなかった。
 「あたしなら大丈夫だから・・・。ハヤテ君にはやらなきゃいけないことがあるんでしょ。」
 「な、何でそんなことを言うんです。僕の大切な人が、僕のせいで苦しんでいるのに、それを見捨てて帰れと言うんですか」
 取り様によってはかなり際どいセリフであるが、この天然ジゴロにそんな意識はない。
 さらにはヒナギクにも期待というか勘違いする気が起こらない。病気で気力・体力が落ちているのがその原因であるが、無人島でハヤテに繰り返し告白した(つもり)にもかかわらず、全く気付いてもらえなかったことが相当ショックであったからに違いない。
 結局ハヤテ君にとって、私なんてどうでもいいんだ・・・。そんな思いが胸を占めていた。
 その時、バタバタと慌ただしい足音が近づいてきた。


                        <第3話>

 病室に飛び込んできたのはヒナギクの両親だった。ハヤテにとっては、母親とは何度も会っているが、父親と顔を合わせるのは初めてだった。
 「君が、綾崎君か。いったいなぜこんなことに。説明してくれ」その声は怒りに満ちていた。
 「実は・・・(カクカクシカジカ)」
 「そんな危険なところにウチの娘を連れて行ったのか」ハヤテは反論できない。
 「君はヒナギクを何だと思っているんだ。何のつもりだ。恋人をそんなところに連れて行くような男にウチのかけがえのない娘はやれない」
 「へ、あの・・・」それは違うんですけど・・・とハヤテは思ったのだが、ハヤテが口を開くより早く、父親はハヤテの襟首を掴むや懇親の力で突き飛ばした。
 「待って、あなた。それじゃヒナちゃんが可哀想よ」割って入ったのは母親だった。ハヤテのことも良く知っている優しい母親だったが、「ヒナちゃんが」というセリフは意外だった。

 「ヒナちゃんはしっかりした子よ。知っているでしょ。それにオバケが嫌いなヒナちゃんが、そんなところに無理強いされて行くわけない。ヒナちゃんはきっと自分の考えで大好きなハヤテ君の力になりたかったに決まっているわ」
 父親は、ハヤテを突き飛ばしただけでは収まらず、引きずり起こして今まさに殴ろうとしていたのだが、母親の叫び声を聞いてハヤテを放した。

 しかしハヤテにしてみればどう反応していいものか混乱していた。そっとヒナギクの方に目を遣ったのだが、ヒナギクはいつの間にか眠っていた。
 「あ、あの・・・。別に僕はヒナギクさんの恋人というわけでは・・・。大体ヒナギクさんにいつも迷惑かけているだけでして、困らせて怒られてばかりなんです。ただ、ヒナギクさんにはいつも助けてもらっていまして・・・今回もそうです。ヒナギクさんが、手伝ってくれると言ったんで甘えてしまいましたが、あんな所とは思わず・・・。本当に済みませんでし・・・」

 最後までは言えなかった。ヒナギクの母親が強烈な平手打ちをハヤテの顔に食らわせたのだ。
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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.2 )
日時: 2014/08/04 05:20
名前: どうふん

第4話です。
うまくまとまらず少々長くなりました。
ヒナギクさんのご両親によって多少状況がつかめたハヤテです。
しかしハヤテにはクリアしなければならない自分自身の問題があります。
本作でも乗り越えたのかは不明ですが、私なりの解釈でモノローグを入れてみました。



                        <第4話>

 ハヤテは病院を出てとぼとぼと海辺を歩いていた。先ほどから力なく同じことを呟きながら。
 「ヒナギクさんが僕のことを好き・・・?」

 
 ヒナギクのあの優しい母親が目に涙を一杯ためてハヤテに平手打ちを食らわせて言ったのだ。
 「まだ気付かないの。ヒナちゃんとずっと一緒に住んで、傍にいて、それでもヒナちゃんの気持ちに気付いてないの」
 「あ、あの、済みません、何のことでしょう」
 「私が何で、ヒナちゃんがハヤテ君と一緒に住むことに賛成したと思っているの。ヒナちゃんがハヤテ君のことを好きだからに決まっているでしょう」
 「・・・・・」
 「私は反対したんだけどね。妻がどうしてもヒナギクのために、と言い張って押し切ったんだ」
 割り込んできたヒナギクの父親は、母親を押さえて落ち着かせようとした。
 ハヤテは居たたまれず、病室から逃げるように去ったのだ。


 「僕は馬鹿だ。救いようもない馬鹿だ」
 ヒナギクがハヤテのことを好きだとしたら、ヒナギクが必死になってハヤテを助けようとすることも、時々おかしくなることも大体説明がつく。
 だが、最もハヤテに重くのしかかってくるのは、天王州アテネと再会したときのこと。
 あのときハヤテはヒナギクに向かって、「(アテネは)僕の好きな人です」と言い切った。ヒナギクの気持ちに全く気付かずに。

 ヒナギクはどんな思いをして、うじうじと躊躇うハヤテの背中を押したのか・・・。
 そして、今さらではあるが、気付いた。アテナを助けるために一緒に戦ったあのヒーローのコスプレをした女性(声でわかる)はヒナギクだったに違いない。


 「ヒナギクさん・・・。あなたはいつも自分より周りのことばかり・・・。少しくらいワガママ言わなくっちゃ、ってあなたが教えてくれたんですよ・・・。」


 もっとも今考えてみると、あの時、ヒナギクに言ったことは正しかったのだろうか。

 アテネと会えなくなって十年の間、いろいろなことがあった。
 ずっと悲惨と不幸が続き、人に愛されることもなかった自分が、ナギお嬢様に助けてもらった後は、概ね仲間と幸せな時間を過ごしている。
 マリアさんやヒナギクさんにちょっとときめいたこともある。
 しかしそれでもアテネの笑顔や最悪な別れを思い出してはしばしば気持ちが沈んだ。
 アテネは元気でいるんだろうか。せめて会って謝りたい。これができないと、僕はいつまでたっても・・・、そう思っていた。
 
 実際そうだった。
 ほんの数か月前、アテネに再開して相手にされなかった時、僕は周囲に憂鬱な雰囲気をまき散らしていた。
 だからこそ、僕にとって他の人とは違う存在であり、「好きな人」と言った。
 嘘なもんか。僕はアテネが大好きだった。
 その時から僕の時間は動いていなかったんだ。

 しかしアテネを闇から助け出すことができた後では、当のアテネから別れを告げられると、自分でも驚くくらいあっさりと受け容れることができた。
 その時から、僕の時間はようやく動き出したんじゃないだろうか。


 だからと言って、今ハヤテはヒナギクが好きなのか、と言えば違うような気がした。
 恋愛対象ではないにせよ、ナギお嬢様に現在も未来も僕が守る、と誓ったことも忘れていない。
 「いったい僕はどうしたら・・・」
 考えが何一つまとまらないまま、ハヤテは当てもなく海岸を彷徨っていた。


 「どうした、ハヤテ。さっきから」現れたのはイクサであった。
 「兄さん。僕は、僕はどうしたら・・・」ハヤテは縋るようにイクサに事情を話した。
 「お前は幸せ者だな。そんなことで悩めるお前が羨ましい」
 「でも、でも、僕は悩むよ、兄さん。僕のせいでヒナギクさんが・・・」
 「お前はあの賢そうな子が好きなのか」
 「・・・わかりません」
 「でも、その子はお前を好きで、お前はその子を助けたい」
 「そうです」
 「だったら何を悩む?傍にいて看病してやればいいじゃないか」
 「・・・そうだよね。・・・・・ありがとう、兄さん」
 
 それしかない。何としてもヒナギクさんには元気になってもらわないと。
 重い足を引き摺るようにして病室に戻ったハヤテは、ヒナギクの両親を見つけるなり土下座した。せずにはいられなかった。

 「お願いします。ヒナギクさんの看病をさせて下さい。こうなったのも僕のせいです。だからその償いだけでも」
 ヒナギクの父親は椅子に座ったまましばらくハヤテを見下ろしていたが、口を開こうとした母親を手で制してただ一言「男が簡単に土下座なんてするもんじゃない」と意外にあっさりと頷いた。
 「あ、ありがとうございます」
 「土下座はやめろといったろう」
 「は、はい」
 「では、私たちはしばらく休むから、ヒナギクを見てやっていてくれ。」

 ヒナギクの両親は去り、後に沈黙が残った。


 5分後、ヒナギクの両親は病院の休息スペースにいた。
 「あのヒナギクがあれだけムキになって綾崎君を庇うとはね」
 「あの鈍感さには呆れるけど、だけど綾崎君はいい子なのよ。わかったでしょ」
 「俺にわかったのは、『恋は盲目』ということだ」








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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.3 )
日時: 2014/08/06 22:00
名前: どうふん

前回のヒナギクさんのお義父さんのキャラは私が勝手に作ったものです。
しかし、父親の立場から言えば、ヒナギクさんのような娘に、今のハヤテみたいな彼氏ではがっかりするでしょうね。
ハヤテにはもうちょっとしっかりしてもらわないと。
ハヤテをどうやって成長させるか考えている最中です。



            <第5話>

 ヒナギクの両親が病室を出て行ってからしばらくして、ヒナギクが動いたような気がした。
 「あ、ヒナギクさん、起きたんですか」
 「ごめんね、ハヤテ君。親が迷惑を掛けちゃった。」
 「め、迷惑だなんて。ご両親のおっしゃる通りです・・・。え、ヒナギクさん、まさか全部聞いていたんですか」
 「全部かどうかは知らないけど・・・」ヒナギクは顔を反対側に向けたまま言った。ハヤテの方を見ない。
 「実はね、お母さんが、ハヤテ君のこと、勝手に私の彼氏だってお義父さんに説明していたみたいなの。ごめんなさい。ハヤテ君には迷惑よね」
 「そ、そうなんですか。でも別に迷惑なんて、迷惑かけているのは僕のほうですし」

 ヒナギクがまた口を開こうとした時、重い物を引き摺るような音が近づいてきて、二人は会話を止めた。
 現れたのは伊澄を連れた千桜と咲夜だった。二人とも汗と埃に塗れ、髪はばさばさとなっていた。
 「に、日本を半周してきたぞ・・・」
 その元凶と思われる伊澄は、なぜか全くやつれた様子もなく、悪びれもせず、淡々と、懐ろから古代の鏡、いわゆる銅鏡をおもむろに取り出した。

 「それを使えば、ヒナギクさんの病気が治るんですか?」勢い込んでハヤテが尋ねる。
 「いえ、治りません。これは病気の原因を探る道具です」
 「でも原因はもうわかっているんじゃあ」
 「病気に掛かった原因ならわかります。しかし、会長さんに憑りついている悪霊はタチが悪くはありますが決して強力なものではありません。会長さんの身体力に精神力ならとっくに治って当然です。それが治る気配がないというのは、悪霊とは別に精神的な病にかかっているからとしか考えられません。」
 「・・・。で、どう使うんですか、その古い鏡」
 「これを会長さんに翳すと、会長さんの偽りのない心の中が映し出されます。少々覗き見しているみたいで行儀が悪いですが・・・・」

 「やめて、やめて」おそらくは聞き耳をたてていたであろうヒナギクが悲鳴を上げた。
 声こそ弱弱しいが、ぶんぶんと首を振り、必死に拒否を示している。
 無理に使うと、ヒナギクの病が余計に悪化しそうなので、使用は諦めた。


 ため息をつきながら病室を出たハヤテは、海岸を千桜と歩いていた。
 というより千桜がハヤテについてきたのだ。
 今のハヤテには、すぐ後ろにいる千桜の視線が痛かった。

 ハヤテは耐えきれず、千桜に話しかけた。
 「千桜さん。ヒナギクさんはどうして鏡を使わせてくれなかったのでしょうか」
 「綾崎くん。君はまさか本当に気づかないのか。女の子が重い心の病にかかって、それを絶対に知られたくない理由なんて一つしかないだろう」
 「・・・」
 「本当はわかっているんだろう」
 「・・・」
 「気付かない振りをしているんだとすれば、それは卑怯な行為じゃないか、綾崎君。マンガの主人公やヒーローははそんなことはしないぞ。」 
 千桜はそれだけ言うと踵を返して去って行った。

 ハヤテは一人になった。
 ずっと一人で佇むハヤテの顔には何とも形容しがたい苦悩があった。





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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.4 )
日時: 2014/08/11 21:25
名前: どうふん

                  
 ハヤテは自分の気持ちに未だ整理がつかず、考えがまとまらず、ただ悩んだまま一向に前へ進めないでいます。
 一方で、ハヤテの周囲にとっても時間は同じだけ過ぎているわけで、本作とは異なり、ナギは宝玉を手に入れ、遺産の正当な継承者となりました。
 ハヤテをヒナギクさんの元に置いて帰ることとなったナギの動向を第6話とさせていただきます。


                        <第6話>


 ナギとマリアが海から一度アパートに帰った後、かつて住んでいた屋敷に戻ったのは伊澄が病室に戻ってきたのとほぼ同じ頃であった。
 アパートにつけられたリムジンに乗って屋敷までやってきた二人は、あのとてつもなく大きな門の前で降りた。

 クラウスが大仰に両手を広げて二人を迎えた。
 「おお、お待ちしておりました。お嬢様、マリア様。お二人が早くこのお屋敷に戻ってこられるよう、このクラウス日夜、帝様に申し上げておりました。願い叶ってこれほど嬉しいことは・・・」
 延々と続く口上をナギは手を振って止めた。
 「私たちの部屋はどうなっている?」
 「はっ。いつお嬢様とマリア様が戻ってこられても大丈夫なように、毎日の掃除、点検を欠かしたことはございませぬ。」
 「ハヤテの部屋は?」
 「はい、あの少年の部屋にも一切触れずそのままにしておりますので、一度掃除さえ済ませれば全く支障のないものと・・・」
 「もういい」
 「は、あの・・・。何かお気に召さないようでしたら、今すぐに綾崎の部屋の掃除を始めさせていただきますが・・・・」帰って来たご主人の機嫌を損ねたかとクラウスの額に冷たい汗がじとりと滲む。

 「その必要はない。ハヤテは私と同じ部屋に住まわせる」
 これにはクラウスだけでなくマリアも一瞬言葉を失った。
 「あ、あの、ナギ?」
 「今まで狭い部屋に住んでいたので、いきなり広い部屋になっては勝手が違ってやりにくい。いいではないか。恋人同士なのだから。」
 マリアはパニックに陥った。
 「い、いえ、それは・・・」
 「違うのか、マリア」

 ナギの目はきっとマリアを見据えていた。マリアはその目を正視できない。
 ナギはマリアの手を取り、強引に自分の部屋に連れ込んだ。
 「マリア、知っているんだろ。私は去年のクリスマスにハヤテに告白されて恋人になった。そして半年以上経ったが、今のハヤテはどうなんだ。まだ私を恋人と見てくれているのか」
 その目が、嘘やごまかしは絶対に許さない、と何より雄弁に物語っていた。

 マリアは大きなため息を吐いた。
 「・・・やはり・・・そうなのか・・・」マリアの返事を予想し、ナギは唇を噛みしめた。
 「ハヤテは私を愛してくれているとばかり思っていた。だから命がけで守ってくれるのだと。ハムスターがハヤテを好きでも気にしてなかった。ルカの時だって、ハヤテがルカを好きとは思わなかったから余裕で塩を送ってやった。ハヤテの気持ちに関係なく同人誌対決にハヤテを賭けたときは焦ったが・・・
 だけど、今、ハヤテがヒナギクの看病をしているのを見ると、ドキッとした。ハヤテの表情が全然違う。ハヤテはヒナギクのことを愛しているんじゃないかって・・・。もう私のことなどどうでもよくなったのか」ナギは涙ぐんでいた。

 「仕方ありませんね。いつかは言わなければと思っていました。でも、いいですか、ハヤテ君は何も悪くないのですよ。いや悪いことは間違いないですが、それはあなたの想像とは全く違う意味です。それをわかってくれるなら教えましょう」
 「何だ。言ってくれ、全部」
 「ハヤテ君は、決してあなたのことを嫌いになったわけでも浮気したわけでもないの。大きな誤解があるのはその前です。ハヤテ君はクリスマスの日にあなたに告白したわけじゃないの。」
 「ど、どういうことだ、それは」そこまでは予想していなかった。

 およそ30分の後、ナギはその日の全ての真相を知った。
 「とんだ・・・とんだ勘違いだな。私は誘拐犯を執事に雇っていたのか。悲劇のヒロインと思いきやとんだピエロだ」ナギは自嘲した。
 「・・・ナギ、あのね」
 「どうでもいい。私は、私は・・・マリア、なぜ教えてくれなかったんだ」
 「ご、ごめんなさい、ナギ・・・」
 「お嬢様と呼べ」さすがのマリアも気圧されていた。

 「お嬢様、クリスマスの真相は今話したとおりです。でもその後はわかりませんよ。ハヤテ君がヒナギクさんを好きかどうか・・・」
 「うるさいうるさい。お前もハヤテもクビだ。ハヤテには退職金もやらん。身一つで出て行ってもらう。借金もチャラだ。金を返しに来ても受け取ってやらん」
 「あの、ナギ・・・」
 「お嬢様だ。とにかくこの部屋から出てけ」

 マリアが部屋からでて、戸を閉めた後、中からは破壊音が数回響いた。
 その後で聞こえてきたのはナギの嗚咽だった。

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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.5 )
日時: 2014/08/14 22:00
名前: どうふん

書いてみるとなかなか難しいものですね。
頭で考えているのとは全然違い、話が進まないで、第7話に入ることになりました。
こんなだらだらした駄文にお付き合い頂いている方には感謝・感謝です。

ハヤテもヒナギクさんも、このままではいけない、と思っています。しかし、お互いの理解は進まず、すれ違ったまま全く別の方向に行きそうな・・・


                         <第7話>


 翌日。
 病室でハヤテはヒナギクの看護をしていた。といって看護士でもないハヤテにできることなど知れており、横に座っているだけの時間が長い。
 昨日、銅鏡のやりとりのあとでもあり、気まずさは拭えない。
 「あ、あのヒナギクさん。喉が渇きませんか」
 「ええ、大丈夫よ」ヒナギクはずっと後ろをむいたまま、ハヤテの顔を見ない。
 昨日と何も変わらない。いや変わらないわけではない。ヒナギクは昨日よりまた一段とやつれているような気がした。

 何とか雰囲気を変えなきゃ・・・
 「・・・ヒナギクさん、外の空気を吸いませんか。」
 「え、でも私は起き上がれないし」
 「車いすを借りられます」
 これにはヒナギクの心も少し動いたように見えた。ハヤテは消極的、いや遠慮がちなヒナギクを強引にお姫様抱っこで車いすに乗せて海辺へと連れ出した。

 「忘れていたわ。外ってホント気持ちいいのね。」こんな弾んだ声を聞くのは久しぶりだな、とハヤテは思う。
 「暑くないですか。ヒナギクさん。日傘、開きましょうか」
 「そのままでいいわ。日光浴なんて久しぶりだもの」
 「そうですか」
 その後の会話が続かない。せっかくヒナギクさんが楽しそうにしてるのに何を言えばいいんだろう。

 先に口を開いたのはヒナギクだった。
 「ハヤテ君。どうしてこんなに私に優しくしてくれるの。」
 「ヒナギクさんの具合が悪くなったのは僕のせいですから。早くヒナギクさんに元気になってほしいんです」
 「そう」ヒナギクは押し黙った。
 その表情を見て、ハヤテはまた落ち込んでいた。
 (僕はまたつまらないことを言ってしまったんだろうか)
 ヒナギクの不機嫌の理由がわからない鈍感執事は、黙って車いすを押している。

 しばらくしてヒナギクが再び口を開いた。
 「ハヤテ君、あのね。あなたが優しいことは良く分かっているし、熱心に看病してくれたことには感謝してるわ。だからもう良いわ。あなたは帰るべきところへ帰りなさい。」
 「嫌です。ヒナギクさんが元気になるまでは僕は帰りません。」
 「私はあなたのお荷物にはなりたくないの」
 「お荷物・・・なんて・・・。僕はいつだってヒナギクさんに迷惑掛けて、助けてもらって、傷つけて・・・。せめてものお返しなのに。そんな、あんまりじゃないですか」
 「それは私が勝手にやってきたことよ。ハヤテ君がお返しとか優しさでやっていることとは全然違うんだから」
 「それは、それは」
 言葉が出ないハヤテを、ヒナギクは寂しそうに見つめた。
 正視できずハヤテは俯いた。

 「ハヤテ君は私を愛しているから、お世話してくれるの?・・・違うでしょ。ハヤテ君はただの友達に十分すぎるくらいのお世話をしてくれたわ。これ以上お友達に甘えるわけにいかない。あとは私が自分の力で元気にならなくちゃ。今までありがとうハヤテ君」
 違うんだ。違うんです。ハヤテは叫びたかったが、しかしどう違うのだろう。
 わからない。

 「ね、帰りましょ」
 結局、ハヤテはそれ以上何も言えず、病院へと戻った。
 「じゃあね、ハヤテ君。色々とありがとう。本当に感謝しているんだから、気にしないでね。私も一足遅れて帰るから、みんなによろしく。気を付けて帰るのよ」
 ヒナギクの弱弱しい笑顔をうつろな目で眺めて、ハヤテは病室を出た。

 ハヤテを見送ったヒナギクは、ベッドの上で繰り返し自分に言い聞かせていた。
 「これで良かったのよね、これで・・・。

  私は自分で気持ちを伝えることもできなかった。
  ハヤテ君は私の気持ちを知っても応えてくれなかった。

  さよなら、ハヤテ君。
  さよなら、私の初恋。

  私は完璧超人とも呼ばれる白皇学園生徒会長 桂ヒナギク。
  何が相手でも絶対に負けたりはしないんだから。病気にも、悪霊にだって。

  あ、ハヤテ君には負けたのかな・・・。

  でも失恋なんかに負けるもんですか。
  そうよ、こんなことで凹んでなんていられないわ。
  負けるなヒナギク、頑張れヒナギク・・」

  抱き締めたその枕はぐっしょりと濡れていた。

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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.6 )
日時: 2014/08/16 20:45
名前: どうふん

 無意識と無自覚による点が多いとはいえ、ハヤテからさんざんな仕打ちを受けてきたヒナギクさんが、とうとうハヤテとの別れを決心しました。
 それは一晩泣き明かす程の悲しみと引き換えですが。
 それでいいのか、ハヤテ。
 早く気づきなさい。今置かれている状況の深刻さに。



                 <第8話>


 ヒナギクの病室から出たハヤテは一人悩んでいた。
 「僕はどうしてこんなダメな奴なんだろう・・・。」
 (僕はヒナギクさんが好きなんだろうか。)
 − 好きなのは間違いない。
 (愛しているんだろうか)
 − わからない。昨日からあれだけ悩んで、まだわからない
 (気持の整理はおいといて、とりあえずヒナギクさんの看病をしようとしたのはまちがっているだろうか)
 − 間違っちゃいない・・・と思う。だけどヒナギクさんにとっては迷惑なんだろうか。
 (ヒナギクさんに「愛しているから看病したい」と言えば問題は解決するだろうか)
 − ヒナギクさんにそんな嘘はつけない。いや嘘じゃないかもしれないが、わからない


 (そうだ、あの伊澄さんが持っていた鏡で僕の心を見れば)
 閃いた、というにはお粗末な話であったが、藁をもつかもうとするハヤテには天啓のような気がした。
 ハヤテは伊澄を探そうとしたが、やめた。日本のどこにいるかわかったもんじゃない。千桜さんなら・・・。急いで千桜の携帯に電話を入れた。
 「ああ、綾崎君、どうした。」
 「実は・・・(カクカクシカジカ)。で、伊澄さんがどこにいるか知っていないかと」
 「それでいいのか?ハヤテ君。」
 「へ?」
 「まだわからないのか。そんなものに頼らなきゃ自分の気持ちすらわからないのか?大事なのは綾崎君がどうしたいか、だろう。逃げてばかりいないで、自分で問題に向き合ってみろ。」電話が切れた。

 千桜は宿泊しているホテルの部屋で、目の前にちょこなんと座っている伊澄に向かってぼやいていた。
 「どこまで世話がやけるんだ、あの鈍感執事は」


 ハヤテは一睡もできないまま、朝を迎えた。
 「帰る、しかない」ハヤテの出した結論はそれだった。
 「いつまでもお嬢様を放っておけない。何度電話してもつながらないし。一旦帰って、その後でもう一度、ヒナギクさんの見舞いに来よう。その時までに僕の気持ちを整理しよう」
 ハヤテはホテルを出て、駅に向かって歩き出した。その足取りは途轍もなく重かった。
 その悄然とした後ろ姿を千桜は呼び止めようとしたのだが、隣に立っていたイクサは千桜の肩を押さえ、静かに首を振った。

 駅のプラットフォームに立つハヤテの前に、東京へと帰る電車が滑り込んできた。
 扉が開く。乗り込もうとして、後ろ髪を引かれるように振り向いた。
見えはしないが、その方向にヒナギクの入院している病院がある。

 一歩前に出れば列車に乗れる。しかし、ハヤテの足は動かない。
 その頭の中をヒナギクとの思い出が走馬灯のように駆け巡っていた。

  −初めて見たとき高い木がら降りられず震えていたヒナギクさん
  −生徒会長で天才で、誰よりも優しくて正義の味方だったヒナギクさん
  −そうかと思えば乙女チックでちょっとした勘違いで落ち込んだりするヒナギクさん
  −遊園地で「ハヤテ君と一緒だから楽しい」と言ってくれたヒナギクさん
  −そして、そして、こんな僕のことを好きになってくれたヒナギクさん
  −いつも僕を助けてくれたヒナギクさん

 そして昨日ヒナギクが言ったこと。
 「ハヤテ君は私を愛しているから、お世話してくれるの?・・・違うでしょ」
「ただの友達に十分すぎるくらいの0お世話をしてくれたわ」
 「気を付けて帰るのよ」

  −僕にとってヒナギクさんは「ただの友達」・・・?
  −僕はなぜヒナギクさんのお世話をしているんだろう?
  −ヒナギクさんはなぜ僕に帰りなさいって言ったんだろう?
  −何で・・・何で僕はこんなに苦しいんだろう?

 (ヒナギクさんは僕に別れを告げたんだ。そういう意味だったんだ。
 今帰ったら、今度こそヒナギクさんの心は戻らない。嫌だ。それだけは絶対に嫌だ)


 電車は走り去っていった。
 そしてハヤテは改札を駆け抜けて、病院へ向かって走っていた。

 (何でこんなことに気付かなかったんだ。
 僕はヒナギクさんを愛しているんだ。やっとわかったよ。愛しているとも。
 今さら遅いかもしれないけど、それだけは伝えるんだ)

 全力で荷物を抱えたまま走り続けるハヤテの目に病院が見えてきた。
 ハヤテはそのまま病院の敷地へと駆け込んだ。


 さすがに息が切れた。

 荷物は放り出した。

 病棟のエントランスを走り抜けた。窓口の警備員が何か叫んでいる。

 ヒナギクさんの部屋は7階だ。一気に階段を7階分駆け上がった。いやここは8階だ。
向きを変えようとした足がもつれて踊り場まで転がり落ちた。
 体のあちこちを強く打った。膝が痺れて感覚がない。額からは血が流れていた。
 こんな痛みが何だ。ヒナギクさんに比べれば。

 よろめきながら、残り半分の階段を下りて廊下に出た。
 3つ先のあの部屋にヒナギクさんはいる・・・はずだ。
 「ヒナギクさん!」叫んだつもりだが喉はかすれて声にならない。
 壁を伝わりながらヒナギクさんの部屋へ近づいていく。

 この部屋だ。
 いた、ヒナギクさん。呆気にとられた顔をしてこちらを見ている。
 僕はもう一度、ヒナギクさんの名前を呼んだ。少し息が戻ってきた。今度ははっきりと声が出せた。

 今なら聞こえるはずだ。言うんだ、ハヤテ。
 「ヒナギクさん。愛してます!」
 ヒナギクさんは動かない。
 届いただろうか、僕の想いは。ヒナギクさんの心に。
 

 ヒナギクさんの目に涙が溢れだすのが見えた。






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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.7 )
日時: 2014/08/19 23:22
名前: どうふん

 ひょんなことから投稿を開始し、20日近く経ちます。
 思いもよらずこの短期間に500件近くの参照をいただくことができました。
 こんな駄文に目を通して頂いた方、誠にありがとうございます。

 もともとは、ヒナギクさんの純粋な想いが想い人に伝わり報われる、そんな話を作れたら、と考えていました。
 実のところ、ハヤテがヒナギクさんへの愛情を自覚し、告白するところ、つまり前回投稿あたりでの完結が当初構想です。

 しかし書きながら次第に話が膨らんでいき、ここで終わらせては中途半端も甚だしいことになりそうです。
 あと2〜3話お付き合い頂ければ幸いです。



                  <第9話>

 夜、面会時間の終了まであと30分。ヒナギクの病室には、ベッドに半身起こしたヒナギクの隣でハヤテが椅子に腰かけていた。
 「いよいよ明日退院ですね。よかったですね、ヒナギクさん」
 「ハヤテ君の衝撃の告白から1週間か、現金なものね。まあ、ハヤテ君のお蔭よ」

 

*****************************


 
 額から流れる血に塗れ、壁に寄りかかって荒い息を吐きながら、僕が「ヒナギクさん、愛してます!」と叫んだのが一週間前のことになる。

 しばらくの間をおいて−
 ヒナギクさんの目に涙が溢れるのが見えた。
 だが、その後に聞こえてきたセリフは僕の心臓に突き刺さった。
 
 「バカ・・・意地悪。
  ・・・今さら・・・今さら・・・。
  お別れしたつもりだったのに・・・。
  諦めたつもりだったのに・・・」
 「ヒ、ヒナギクさん・・・。僕が馬鹿でした。済みません。
  でも僕は本当にあなたを愛してます。やっと気づきました。だからあなたの力になりたいんです」

 「そんな・・・わかっているの・・・?
  今のが嘘だったら・・・もう私は立ち直れないわよ」
 「大丈夫です。僕がずっと付いてます。僕が支えます」
 「ハヤテ君・・・」後は言葉にならなかった。

 この後、僕は病院の事務局に呼び出されてこっぴどく怒られたが、ヒナギクさんの潤んだ瞳を思い出してぼーっとしてたので何を言われたのかほとんど覚えていない。

 今までの僕とは違うんだ。ちょっとは自信が付いたような気がした。
 思い出しても誇らしい。

 しかし、こっぱずかしいことも確かだ。この1週間、ヒナギクさんから何回「ハヤテ君の告白」と強調されたことか。その度に赤面しているらしく、ヒナギクさんやお義母さんにからかわれている。
 あ、僕が告白した時、ヒナギクさんのお義母さんもその場にいた。僕の目には入っていなかったが。
 今では二人きりの時間を取るようにしてくれているのがわかる。

 お義父さんは、3日ほど前に僕には何も言わず帰っていったが、その背中はいつかと違いすごく優しく見えた。


*********************************


 「と、とにかくもうお休みになりますか。ヒナギクさん」
 「ええ」ヒナギクは横になって、ハヤテにそっと右手を差し出した。

 1週間前に意味がわからず、「何を渡せばいいんですか」と大真面目に聞いて怒られたハヤテだが、今は差し出されたその手を優しく握ることができる。
 ヒナギクは満足げに目を閉じた。
 「こんな生活・・・ヒナギクさんのお世話しながら二人っきりで過ごす時間も終わっちゃうんだな」少々惜しい気がした。


 実のところハヤテとヒナギクの現在のスキンシップは、純粋な看護行為は別としてその程度である。
 しかし今日は何となく名残惜しくて、ハヤテは空いている手でヒナギクの髪をそっと撫でた。
 (こんなに柔らかくてさらさらしているんだ、ヒナギクさんの髪)

 ハヤテは手を離すことができず、恍惚としてヒナギクの髪を撫でつづけていた。

 ふと気づくと、いつの間にか、ヒナギクの目が半分開いて、ハヤテを見つめていた。
 「あ、ヒナギクさん?す、済みません。そろそろ面会時間も終わりますので・・・」
 慌てふためきながら部屋を飛び出そうとするハヤテをヒナギクは呼び止めた。
 「ハヤテ君、取り消すなら今のうちよ」口調が変わっていた。
 「へ、何を・・・ですか」

 「ハヤテ君の告白・・・。私嬉しくて舞い上がって・・・だけどあれ本気なの」ハヤテは全身の血が逆流するような気がした。
 「・・・。そんな・・・。そんなに僕が信用できないんですか」
 叫ぶような声だった。これだけハヤテが声を荒げるのを初めて見た。

 「ハヤテ君は信じてるわ。だけどね・・・」口を濁すヒナギク。
 「だけど何ですか。はっきり言って下さいよ」
 「・・・じゃあはっきり言うわ。アリスつまり天王洲さん、ナギ、歩のことはどうするの」

 ハヤテの顔が苦渋に溢れ、口が重くなる・・・かとヒナギクは思ったのだが、意外にもハヤテはきっぱりと言った。
 「わかりました、ヒナギクさんはそれが気になるんですね。僕もこの点ははっきり答えておきます。実は僕もこの1週間、正確には昨日までずっと悩んでいたんです。」

 「大きな声を出してすみません。無理もないですよね。ヒナギクさんは全部知っているわけですから・・・。

 まずあーたんとは、アテネで(あ、町の名前ですよ)はっきりと別れました。そのあーたんが、アリスとして戻ってきた事情は僕も知りません。
 だけど昨日あーたんからはっきりと言われました。
 『ハヤテ、あなたは私の元カレではありますが、それ以上ではありません。あなたが私に縛られる必要はなく、私もあなたに縛られたりはしない。あなたがヒナを好きならヒナを大事にしなさい』と。

 西沢さんからも言われました。
 『私はハヤテ君が好きだけど、ヒナさんも大好きだから、ハヤテ君とヒナさんの幸せそうな顔を見られるならいいよ。その代わり、ヒナさんを泣かせたら承知しないよ』

 (水蓮寺)ルカさんは、
『なんだ、ヒナギクさんだったの。それは私がアタックしても落ちないわけね。安心なさい、恩師の恋路を邪魔したりしないわよ。結婚式には私がミニコンサートやってあげるからありがたく思いなさい』と言ってくれました。」

 「・・・まさかハヤテ君、みんなに話したの」
 「この3人だけですよ。ヒナギクさんにお付き合いしてもらう以上は、今までのこと、全部自分で決着をつけたかったんです。」

 ヒナギクは赤面を通り越して、意識が吹っ飛びそうだった。
 頭からは蒸気が噴き出しているのでは、というくらい体温が上昇している。

 「僕だって・・・いつまでもヒナギクさんに甘えてばかりじゃいられないですから」ハヤテが眩しいくらいの笑顔を見せた。
 「ハヤテ君・・・」


 「綾崎さん、まだいたんですか。もう面会時間はとっくに終わっていますよ」看護士の声が響いた。
 「ス、スミマセン」
 ハヤテは、部屋から飛び出した。
 「もう、病院の中を走らないでくださ−い」
 その看護士の声がハヤテの耳に届いたかどうか。走り去る足音はペースが衰えないまま次第に遠くなった。
 ハヤテが慌てているのは看護士に見つかったからだけではなかっただろう。


 「いつからこんなに私は泣き虫になったんだろう」ベッドの上でヒナギクは呟いた。
 「あの天然ジゴロのハヤテ君が、私のために・・・」
 嬉しかった。涙が出るくらい。

 しかし一つ、ヒナギクの心にのしかかって来たもの。
 「私の幸せは、親友や大切な仲間の涙や我慢の上に成り立っているんだ」
 これは幸せに満ちていても拭いきれない鉛のような感情であった。


 そしてヒナギクは、ハヤテがナギのことに触れなかったことには気付かなかった。

 
 


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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.8 )
日時: 2014/08/21 23:58
名前: どうふん

 ところでアリスが天王洲理事長であることに気づいているのは何人くらいいるんでしょうね。
 私の知る限りではハヤテと伊澄さんくらいですが。
 しかしアリスの母親のはずでありながらヒナと呼ばれているヒナギクさんも知っているんじゃないかと思います。
 前回のヒナギクさんのセリフはその設定によるものです。



<第10話>

 ヒナギクにとって、ハヤテが少し頼もしく見えた翌日、ヒナギクは退院した。
 ヒナギクのお義母さんは一足先に帰ったが、これは気を利かせてのことだろう。

 駅に向かって軽やかに歩くヒナギクのすぐ後を、ほとんど全ての荷物を抱えたハヤテが続く。

 電車は空いていた。
 「ヒナギクさん、こちらへどうぞ」恋人というより姫と騎士の様な二人だが、
 座席の方は恋人らしく、二人掛けのシートに並んで座った。

 2週間ほど前、海に来るときは大勢で騒ぎながら電車に乗っていた。
 今は二人で、景色を眺めたり、会話をして過ごしている。
 二人ともそれほどお喋りのほうではないため、ややもすると会話は止み、景色を眺めることになる。そして何か変わったものが見つかると思い出したように会話が始まる。

 しかし、それが二人にとって心地よい空間であった。
 かつて・・・二人が恋人同士になる前は、沈黙が怖かった。
 何か話さないと、とプレッシャーに追われていた。
 今は違う。会話が途切れても、傍に恋人がいてくれる、というだけで安心できた。

 電車がカーブで揺れて、その拍子にヒナギクがハヤテに寄りかかった。
 電車の揺れはすぐ戻ったが、ヒナギクはハヤテから離れようとはしない。
 頬を朱く染め、ちょっと俯きながらハヤテに体を預けている。

 そんなヒナギクが堪らなく可愛い。
 ハヤテはヒナギクの髪に手を伸ばした。ヒナギクの髪は昨日と変わることなくさらさらとハヤテの手から零れ落ちていく。
 二人はやや遠慮がちにお互いを感じ、至福の時間を過ごしていた。


 しかし・・・、ふとハヤテは気がかりなことが一つ残っていることを思い出した。
 何度も電話やメールをナギに送ったものの連絡がつかなかった。
 仕方なくマリアに電話したのだが、特に変わったことはないようで、帰りの電車の到着時刻を聞かれただけだった。

 「どうしたんだろう・・・」マリアによると、ナギとマリアは荷物をアパートに残したまま、身の回りのものだけ持ってお屋敷に戻っているらしい。
 しかし、ナギが電話にも出てこないのはなぜだろう。
 「あまり長いこと屋敷に戻らなかったからお嬢様が機嫌を悪くしているのかな?」ハヤテに考えられるのはそのくらいだった。
 マリアに聞いてもはぐらかされるばかりだし、お嬢様に会って話をするしかない。ずっとほったらかしになってしまったことについては謝ろう。そう思った。
 それに・・・お嬢様には心からお礼を言いたいことがあった。

 二人が電車から降りると、三千院家のSPたちが駅に出迎えに来ていた。
 「お待ちしておりました。リムジンをご用意しておりますのでお二人を三千院家までお送りします。」
 「あ、いや、別に待たせるつもりなんて・・・。それに僕もヒナギクさんもまず荷物をアパートに置かないと」
 「いえ、お嬢様がお待ちかねですので、すぐお越し下さい。
  せめてこのくらいはさせて下さい」
 「はあ・・・。(確かにこの人たち役に立ったことがないしな・・・。それに早くお嬢様には会わないと。)宜しいですか、ヒナギクさん」
 「仕方ないわね。まあ良いわ。ナギにも会って話をしなきゃいけないし」
 「あ、ヒナギクさんも何か御用が?」
 「・・・何がって。ハヤテ君、私たちのことナギにも連絡したんでしょ」
 「はあ、実は、全然連絡が取れなくて・・・。それにお嬢様には報告だけすればいいと思いまして・・・」
 ということは・・・。

 アリスや歩そしてルカにまで連絡しておきながら、ナギを忘れているとは。
 いや、忘れていたわけではなさそうだ。連絡はしたようだし。

 しかしお見受けしたところハヤテ君は御主人様の想いさえ気づいていなかったのか・・・。鈍感もここまで来ると驚異的だわ。

 それにしても、ナギが愛するハヤテの電話に出ないのは只事じゃない。何かが起こっているに違いない。
 「ヒナギクさん、どうかしたんですか?」
 「い、いや、何でもないわ・・・」

 このままSPに拉致され機関銃の一斉掃射でも受けるんじゃないだろうか・・・。
 猛烈な悪い予感に襲われるヒナギクだった

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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.9 )
日時: 2014/08/25 22:49
名前: どうふん

 誰よりも優しくて他人を気遣う、という点で、ヒナギクさんはハヤテと同レベルかと思います。
 そんなヒナギクさんが、ハヤテと付き合うにあたり、ハヤテを好きな友達のことが気にならないわけはありません。
 ハヤテを譲る気はなくとも抱え込まざるを得ない罪悪感にも似た感情、第9話で「鉛のような感情」と表現しましたが、適切かどうかは自信ありません。ご意見が頂ければ幸いです。

 また、その友達がヒナギクの「朗報」に対し、どう反応するか、考えてみました。



第11話

 久し振りにみる三千院家のお屋敷は、やはり凄かった。
 ハヤテとヒナギクは圧倒されつつもSPに一室に案内された。
 「へ、ここ?ここ会議室ですよね」それも大勢が集まる大会議室。
 ハヤテが聞き返すのとほとんど同時に部屋の扉が開き、クラッカーが鳴り響いた。

 「おめでとう、ヒナさん」
 「ハヤテ君、お疲れ様」

 大勢の声が響いた。
 そこにいたのはマリア、アパートの住人やルカ、ワタル、サキ、生徒会三人組といった、二人の友人たちだった。雪路や薫もいる。

 正面には「祝 ご退院。お帰りなさい、ヒナギクさん」と横断幕が掛かっていた。
 普段の会議室はさながらクリスマスパーティ会場のように飾り付けられ、所狭しとごちそうが並んでいる。

 やっとわかった。SPが迎えに来たことも、わざわざ会議室に連れてこられたことも、このサプライズパーティのためだったのだ。
 普段の舞踏会などに利用される会場を使わず、わざわざ会議室を会場に仕立て上げたのはサプライズ効果を上げるためか、人数の関係か。

 ヒナギクもハヤテもしばらく言葉が出ない。特に何が起こるかと悪い予想(妄想と言うべきか)ばかりしていたヒナギクは全身の力が抜けてハヤテに寄りかかって腕に掴まった。

 「ヒューヒュー」
 「お熱いことで」会場のあちこちから歓声が飛んだ。

 慌ててハヤテから離れたヒナギクに向かい、真っ先に駆け寄ってきたのは歩だった。
 歩は飛びつくような勢いでヒナギクの首にしがみついた。
 「ヒナさん、良かったね、良かったね」それが単に退院を意味しているのではないことは明らかだった。

 「歩、私は・・・」
 「いいのよ、ヒナさん。
  ヒナさん、今まであれだけ頑張って苦しんできたんだから。
  ヒナさんがやっと報われたのなら親友の立場として私も満足かな」
 「でも、それは・・・」
 「ヒナさんだってそうするでしょ。
  ハヤテ君が私を好きだとしたら親友を祝福してくれるでしょ」

 自分の想いを仕舞い込んで、他人を祝福する、応援するという行為がどれほど苦しいものか、ヒナギクは身をもって知っている。

しかし、ヒナギクの元に集まってきたのは歩だけではなかった。

 「そんな仮定の話をすることはありませんわ。
  現に私はその状況でヒナに助けてもらったのですから」
 いつの間にか足元にアリスが来ていた。

 「今までずっとヒナギクさんは周りのみんなを助けて幸せにしてきたんだから。
  今度はヒナギクさん、あなたが幸せになる番よ。
  あたしたちのことが気になるなら、あたしたちの分まで幸せになりなさい」
 ルカもいた。

 「まあ、そうでないと、身を引いた私たちが馬鹿みたいですわ」
 「あ、私は諦めたわけじゃないから、隙あらば奪っちゃうからね」
 「歩ったら諦めが悪いわね。こんなにかわいいアイドルちゃんも身を引くって言ってるのに」

 「みんな・・・」ヒナギクは涙ぐんでいた。

 ハヤテが三人に話をしたことは聞いている。
 しかし、それはハヤテが言ったようなあっさりとした話ではなかったはずである。
 三人それぞれ、あるいは涙を流し、あるいは迸りそうになる想いをこらえたのだろう。
 
 それでも、皆自分の想いや感情を抑え、こうしてヒナギクの幸せを祝ってくれている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 私は、いや私とハヤテ君は二人だけじゃないんだ。こんな素晴らしい仲間たちの想いを背負っているんだ。

 この仲間たちのためにも、私はハヤテ君と今から本物の愛を育まなきゃ。

 私とお付き合いしてハヤテ君が不幸になったら、それこそみんなに申し訳ない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この状況でも、自分よりハヤテのことを考えるヒナギクだった。


 あ、そういえばナギは・・・?ハヤテ君もいない。

 しかしヒナギクは、入れ替わり立ち替わり押し寄せてくる友人たちに遮られ、人探しができる状態ではなかった。
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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.10 )
日時: 2014/08/27 20:50
名前: どうふん

 サプライズパーティには意表を突かれたハヤテとヒナギクさん。
 何だかんだといっても天然ジゴロのハヤテは女性陣のアイドル的存在。
 それを勝ち取ったヒナギクさんは、歓喜の絶頂にあっても友の失意を思いやれる人でした。
 
 誰からも愛されるヒナギクさんは、予想外の仲間の祝福に感涙を流しています。
 でも、あと一人、気に掛ける相手が残っています。



                         第12話

 一方のハヤテはパーティの主催者であるはずのナギの姿を探していた。

 (お嬢様はどこにいるんだろう)

 「何をきょろきょろしているのだ」
 その声に振り向くとナギはパーティの隅っこに手と足を組んで座っていた。
 見るからに不機嫌オーラが漂っている。

 「お嬢様、ご挨拶が遅れました。只今戻りました。長いこと留守にして申し訳ありませんでした」
 「まったく、ヒナギクにばかりかかりきりで。
  お前の主人は私だということを忘れていないか」
 「いえ、決してそのような。ただヒナギクさんに早く元気になってほしい一心で、長いこと留守にしてしまいました。すみません。」
 「ふーん・・・。まあ、ヒナギクに比べれば、私などどうでもいいからな」
 ずいぶんと突っかかるナギにハヤテはちょっと困惑していた。

 「それと。私に言うことは他にもあるんじゃないのか」
 「あ、忘れていました。今日はヒナギクさんのためにこんな盛大なパーティを開いてくれて御礼の申し上げようもありません」
 ナギは、血管がブチ切れそうになるのを押さえ「他には」と聞いた。

 「お嬢様、本当にありがとうございました。」
 「・・・?何のことだ?」
 「お嬢様は知っていたんですね。僕がヒナギクさんのことが好きなのに自分で気づいていなかったということを」
 「・・・???」
 「だから、チャンスをくれたんでしょう。僕がヒナギクさんを看病しているうちに自分の気持ちに気づくように」


 「・・・ 。で、どうだったのだ」
 「僕は馬鹿ですから、凄く時間が掛かっちゃいました。
  実はその時ヒナギクさんも僕に愛想が尽きかけていたそうでして、後で背筋が寒くなりました、あはは。

  それでも、ぎりぎり間に合ったみたいで、告白した時、ヒナギクさんにはちょっと怒られましたけど涙を流して喜んでくれました。

  もうとにかくその時のヒナギクさんが可愛くて可愛くて・・・」

 いい加減目の前の相手の顔色を見ればいいものを、ハヤテはすっかり自分の世界に入りこんでいた。


 盛大な打撃音とともに、ハヤテは床に這いつくばった。
 「全く、主を放り出して色恋に現を抜かすばかりか、目の前でのろけまくるとは言語道断の極みだ。
  成敗してやろうと思っていたが、そんな呆けた顔を見ていると腹も立たんわ」
 「い、今、思い切りぶん殴られたような気がするんですが・・・」
 「気のせいだ」
 「・・・そ、そうでしょうか」

 「もうお前はクビと言いたいところだが、そんな簡単に私と離れられるとは思うなよ。
  お前は私の執事としてまだまだこき使ってやる。そのつもりで覚悟しておけ」
 「い、いえっさー」

 「ただし・・・、たまには休みをやるからヒナギクとはデートしてやれ」
 「お、お嬢様」

 後は何も言わず、ナギはハヤテに背を向けて会場から立ち去っていった。

 「ナギ。ナギー」
 まだ周囲を囲まれていたヒナギクは、会場を離れようとするナギに気づき、呼び掛けたがナギは足早に去って行った。





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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.11 )
日時: 2014/08/29 04:47
名前: ロッキー・ラックーン
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25

はじめまして、ロッキー・ラックーンです。

面白い作品だと思いました。
ハヤヒナをやる上で難しい課題となるハヤテのヒナギクへの心移りの様子を上手く表現されてると感じました。告白シーンも実に情熱的で…ステキでした。
あと、意外だったのがナギです。てっきりクビ展開かと思いきや…ここらへんの心情の変化の原因をこの先見られるのでしょうかね。楽しみです。

次回も楽しみにしております。
では、失礼しました。
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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.12 )
日時: 2014/08/29 23:27
名前: どうふん

ロッキー・ラックーンさん、感想ありがとうございます。
当方も、ロッキーさんの「しあわせの花」シリーズは愛読しておりますので、光栄です。
また、気が付いたことがあればコメントして下さい。

で、ご明察のとおり、今回はナギの心情について触れたいと思います。
ご期待に添えれれば幸いです。



                       第13話

 ナギは自室に戻った。
 パーティの喧噪が聞こえてくる。
 あの歌声はカラオケパーティかルカのゲリラライブか。
 どちらにしても興味はない。

 「ちょっとカッコをつけすぎたか・・・」
 ナギはしばらくぼんやりしていたが、寝っ転がったままゲームのスイッチを入れた。

 部屋に戻ったナギをマリアが追いかけてきたのだが、部屋には入れなかった。
 無性に一人になりたかった。



**************************************

 クリスマスの「真実」を知ったのが10日程前だった。
 しばらく部屋に引き籠っていた。今まで以上に。

 マリアの顔も見なかった。
 食事の時も部屋の外に出なかったが、マリアは部屋まで運んでくれた。
 食べ終わった食器と盆を外に出しておくといつの間にか片付いていた。

 その5日くらい後だったと思う。マリアのメモが食事に添えられていた。
 「ヒナギクさんが快方に向かっており、間もなく退院できる」とのことだった。

 「良かった」これだけは本当にそう思った。
 しかし、ヒナギクが退院すればハヤテも戻ってくる。
 どうする。クビにするか。

 同様にクビを宣告したマリアとはまだ口を利いていないが、自分の心情を思い遣り、ワガママを許してくれているマリアへの怒りは失せている。
 「マリアには悪いことをした」という程度には反省もしている。
 だが、問題はハヤテだ。

 思いがまとまらないまま食事を頬張るナギの携帯が鳴った。
 あの着信音はハムスターだ。
 「またあいつか」

 あの日以来、誰の電話にも出ていなかったが、あんまりしつこく掛けてくるハムスターに根負けして出たところ、ヒナギクの退院パーティに誘われた。
 会場は「どんぐり」ということだったが、
 「どうせやるなら屋敷でやれ。広すぎてうんざりしている」
 なぜあの時あんな答えをしたのか自分でもわからない。

 ヒナギクが元気になったのは嬉しかった。しかしそれだけではないだろう。
 自分から黒いオーラが出ているのは気づいていた。
 会場を提供し、主催者となったのはハヤテへの精一杯の嫌味だったのかもしれない。
 ちょっとは針のムシロに坐ってみやがれ。


 しかし今日、当のハヤテは悪びれるどころか、あのザマだ。
 私の意地悪を受け流し、というより素直に好意と受け取り、喜んでいた。

果ては、告白のお膳立てをしてくれたと本気で考え、私に向かって感謝を繰り返し述べていた。

 考えてみれば当たり前か。
 そもそもハヤテは私を愛するどころか、私の気持ちにすら気付いていないのだから。
 意地悪される理由も思いつかないのだろう。

 「結局は恥の上塗りだった・・・のか。ハヤテ、お前は本物の馬鹿だ・・・。
  一体何をやっているんだ、私は」


 ***************************************

 
 ナギは自分の愚行に悪寒を覚える一方で、その馬鹿を憎めない自分が不思議だった。
 しかし、一年にも満たない間、これを長いとみるか短いとみるかはともかく、自分がどれだけハヤテを頼りにし、救われてきたのか、それを忘れることはできなかった。 

 
 ノックの音がした。
 今度は誰だ。ハヤテか。あいつに言うべきことはもう言った。
 ヒナギクとのデートだって許してやった。

 相変わらずデリカシーのないやつめ。
 今は一人にしろ、ハヤテ。

 しかし聞こえてきたのは違う声だった。
 「ナギ、開けて」その声を聞いたナギは、跳ね起きた。

 「ヒナギク」



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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.13 )
日時: 2014/08/31 22:42
名前: どうふん

 ヒナギクさんにとっても、ナギにとってもお互いが最後の決着をつけなければいけない相手です。
 それがわかっているからこそ、ヒナギクさんはナギの元を訪れ、ナギはヒナギクさんを部屋に入れました。

 いつかも書いた通り、本来ならハヤテの告白+後日談少々で終わっていたはずのSSですが、後日談が延々と続いたのは、私にとっても計算外でした。

 しかし、それだけ重要な部分だと思っています。
 これが最後の山場となりますが、目を通してくれた方々が納得できる結末にできたでしょうか。



第14話

 「何の用だ、ヒナギク」
 膨れっ面で横を向いているナギに、ヒナギクはぎこちない笑顔を浮かべた。
 「何言ってるのよ。退院パーティを開いてくれた人にお礼を言いに来たのよ」
 「私が言い出したことではない。ハムスターや泉から誘われたから場所を提供してやっただけだ」
 「だったらそのことにお礼を言うわ」
 「・・・どういたしまして」
 ヒナギクはしばらくナギの顔を見つめていた。ナギもヒナギクを追い出そうとはしない。

 ややあって、
 「ナギ・・・、ごめんね」
 「・・・ヒナギクが謝ることではないだろう。私がピエロだったというだけの話だ」
 「ピエロなんて思わないわよ、ナギ。私だってそうだったんだから」
 この一言にナギは顔色を変えた。

 「ヒナギクがピエロ?ヒナギクだってそう?
  私はハヤテの言葉を自分勝手に解釈して、その気がないのに恋人と思い込んで、当の相手には気づいてさえもらえなかったんだぞ。
  そんなことがお前にあったのか。

  さっきハヤテが何と言ったと思う?『お嬢様、ありがとうございます』、だ。
  『お嬢様は知っていたんですね。だから、チャンスをくれたんでしょう』、だ。
  ハヤテは本気で私をキューピッドかなんかと思い込んでいるんだ。

  ハヤテは、私が電話に出なかったことさえ、サプライズパーティのためだと思っているんだろう。
  あんまり腹が立ったから思い切りぶん殴ってやった。
  あいつはもうクビにするからお前が執事でも同棲でも勝手にすればいい」
 押さえていた感情が堰を切ったようにナギはまくしたてた。目には涙を一杯に浮かべながら。

 「やっぱりピエロよ、私も。もしかしたらナギ以上に」
 意外な発言にナギは固まった。
 「そんな・・・。ヒナギクが?」

 「私はね、ナギ。
  初めて会った時、一方的にハヤテ君を好きになったことはあなたと同じだけど、自分で気付かなかった。
  気付いたのは、ハヤテ君を好きだという子に『応援する』とまで言った後。
  それを結局は我慢できなくなって裏切ったの。その子は許してくれたけど。

  その後も自分の気持ちを伝えることもできなかった。
それどころかハヤテ君は私に嫌われている、と思っていた。
思い当たる節なんて幾つもあったわ。なぜだと思う?
  ハヤテ君の方から告白されようなんて虫のいいことを考えて空回りを続けたてたのよ。

  全く通用しないから思い直して必死の思いで告白したのがついこの前。
  だけど、気付いてもらえなかった。告白してさえね。

  ハヤテ君が私の気持ちを知ったのは、私のお義母さんが暴走してぶちまけてしまったからで、私は何もできなかったの。
  それがなかったら今でも何も変わっていないかもしれないわ」

 「それでも、それでも・・・最後はお前の元にハヤテは行ってしまった。
  結局私は何をやってもお前には敵わないんだ!」
 「ナギはハヤテ君の命の恩人よ。そして今はご主人様。
  ハヤテ君はあなたを一生懸命に守ろうとしている。これからもきっとそうでしょ・・・。

  あなたのために、と言って私と戦ったことだってあるじゃないの。
  これだけは私が敵わない。私はいつもヤキモチをやいていたのよ」

 ナギしばらく何も言わなかった。
 あのヒナギクが・・・。

 独り言のように呟いた。
 「お前も・・・、それほど完璧ではないんだな・・・。」


 しばらくして、ナギは何を思いついたかニヤリと笑い、
 「ところで一つ気になるんだが、お前は何て告白したのだ」
 「え、それは・・・」
 「ここまで言ったんだ。全部教えてくれてもいいだろう」
 「え、ええと・・・。『月がきれいですね』って」

 これにはナギも噴き出した。
 「お前はいつの時代の人間だ」
 「な、何よ。私は真剣だったんだから」

 狼狽するヒナギクを尻目に、ナギは腹を抱え涙を流して笑い転げた。
 「いいかげんにしてよ」怒声を発しようとしてヒナギクは思いとどまった。
 その涙が笑いによるものだけではないことに気づいたから。

 「もういい。ハヤテといいヒナギクといい、全く以て愉快な奴らだ。
  まあやっていることは不愉快だが。
  ここまで馬鹿とは思わなかった。ムキになった私の方が馬鹿みたいだ」

 ナギは、まだ真っ赤になって涙目で睨みつけているヒナギクの手を取って、
 「ああ、これだけ笑ったらすっきりした。よし、会場に戻るぞ」
 「え、ええ」
 「あ、一つ失敗したな」
 「え」
 「パーティの名前だ。どうせならお前たちの婚約披露パーティにすれば良かった。今から横断幕を取り換えるか」
 「ちょ、ちょっと」
 ナギは本気でうろたえるヒナギクを眺めながら、多少溜飲が下がったような気がしていた。
 地上においてナギがヒナギクより優位に立ったのは生まれて初めてだったのかもしれない。
 (まあ、このくらいは勘弁してくれ、幸せ者め)
 
 主役と主催者の再登場で、宴は再び盛り上がった。
 マリアが柱の傍らに立って、ナギを限りなく優しい目で見守っていた。

 ほぼ同時に「お酒もうないのー!お次、お次―」という叫び声が響き、懸命に一升瓶を探して駆けまわっていた人影が一つ。

 もっとも当日、消費された大量のアルコールドリンクが全てお一人様によるものであったのかは定かでない。
 さながら酔っぱらっているような未成年者がいたという噂もあるが、恐らくはパーティが盛り上がりすぎて、一部の浮かれた振舞いが酔っ払いに見えただけであろう。


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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.14 )
日時: 2014/09/04 23:06
名前: どうふん

 ナギは、自らをハヤテの恋人と信じており、ハヤテの主人でもあります。
 ハヤテに対し、最も純粋な愛情を持っているのはおそらくナギではないかなと思います。

 しかし、このSSにおいていきなりの悲喜劇に襲われたナギは、愛するハヤテに対する
ambivalenceな感情を抱え、苦悶しました。
 ナギの言動には一貫性も整合性もありませんが、それだけナギの心は大いに乱れています。

 ただ、泣いてハヤテをあきらめるのではなく、ヤケになってハヤテを追い出すのでもなく、笑ってハヤテを見送ることで、ナギにも明日が見えてくるのでは、と思っています。

 苦しい笑いではあっても、もともとが逞しい子ですから。


 とうとう最終話となりました。
 話のヤマは前回で終わっておりますので、文字通りの後日譚となります。
 以下、第15話をエピローグとして締めくくりたいと思います。



                  第15話(エピローグ)

 夏休みも終わろうとしている。
 ヒナギクの退院パーティの翌日、ナギとマリアはアパートに残っていた荷物を全て屋敷に運び込み、名実共に屋敷に戻った。

 残りの住人も千桜とカユラを除き、夏休みの間に皆それぞれの家に帰っていく。

 ハヤテは、ナギの指示でずっと夏休みの間はアパートに残って皆の面倒を見ていた。
 これは、ハヤテだけでなくヒナギクも意外だったのだが、マリアはそっとヒナギクに耳打ちした。
 「わかってあげて下さい。ナギにも気持ちを整理する時間が必要なんですよ」

 そのハヤテも夏休みの終了と同時にナギの執事として屋敷に戻る。
 今後、このアパートは、ハヤテに代わりクラウスが執事として住み込むことになった。
 「有り難き幸せ」と言ったクラウスは涙を流して喜んでいた、ようには見えなかったが。


****************************************


 8月30日、夏休み最終日の前日の夜。
 家に戻る住人の中では最後の一人となったヒナギクの部屋も、引越しの準備はほとんど終わった。

 ヒナギクは押入れを開けた。
 アリスがもうそこにいないことはわかっているのだが。

 戸を叩く音がした。
 「やっとノックを覚えたみたいね、ハヤテ君」
 「このドアの向こうに愛しい人がいると思うと、そうなりますよ」

 昔からきわどいセリフを無意識に話すハヤテだが、今は似たようなセリフに想いを込めて喋っている。
 その一言で真っ赤になるヒナギクの方が進歩が遅いのかもしれない。
 
 いつもの様に二人は壁にもたれて床に腰かけながら寄り添った。
 ベッドかソファくらいあればいいのに、という気もするが二人にはこれで十分なのだ。

 「ねえ、ハヤテ君・・・」
 ヒナギクが上目づかいにハヤテを見て、甘えるような声で話し掛けた。
 「は、はい、何でしょう」どぎまぎしながらハヤテが応える。

 「明日でもうハヤテ君とはお別れね」
 意表を突かれてハヤテはむせこんだ。
 
 「お、お別れって、ヒナギクさん。お別れするのはこのアパートで僕ではないでしょ。また学校で会えるじゃないですか。」
 「学校だけ?」
 「い、いえ。少しでも時間を作ってヒナギクさんの元へ通います」
 「夜這いをかける気?」
 「え、いや決してそんなことは」
 「何だ、してくれないんだ」
 ハヤテの狼狽ぶりは可笑しいほどだった。

 「夜這いどころか、僕たち、まだ、キスだってしてませんし」
 「そうよねえ。ハヤテ君の告白以来、まだキスもしてないのよね・・・。
  せいぜいこうやって並んだり、手をつないだりするくらいで。
  恋人同士で一緒に住んで、デートも何回もしているのに・・・」
 ヒナギクが幾分そわそわ、もじもじしていることにようやくハヤテは気付いた。

 さすがのハヤテも苦笑せざるを得ない。
 しかしそれ以上に、素直ではないが純粋で真っ正直なヒナギクが愛おしい。

 「ヒナギクさんは本っ当に素敵ですね。可愛すぎます」
 「な、何を言っているのかしら?」
 「夏の思い出、一つ作りませんか」
 「あら、何かしら」

 「ヒナギクさん・・・」ハヤテはヒナギクの顎にそっと右手を添えて持ち上げ、ヒナギクの瞳をじっと見つめた。
 間近で見つめられたヒナギクがうっとりと瞳を閉じる。
 来るべき瞬間を待っている。

 そんなヒナギクを前にハヤテは頭がくらくらした。
 ハヤテは、吸い込まれるようにゆっくりと顔を近づけそっと唇を合わせた。


 どれくらい時間が経っただろうか・・・。


 「ハヤテ君・・・。私のファーストキスを奪ったんだから責任はとりなさいよ」
 声はきつめだが、上気した顔を逸らしながらでは効果はない、というか、ハヤテをますます痺れさせる。

 (だめだ、ヒナギクさんには敵わない)
 「はい、喜んで」

 ハヤテは両腕を回してヒナギクを抱き締めた。
 ヒナギクは、まだ夢見心地でハヤテの胸に顔を埋めた。

 ハヤテの全身に、ヒナギクの柔らかい感触が伝わってくる。
 ヒナギクの頬に、ハヤテの心臓の鼓動が響いてくる。
 そしてお互いの温もりが。

 「ハヤテ君、大好き・・・。これからもずっと」
 「覚悟して下さいよ、ヒナギクさん。僕はこれからもっともっとヒナギクさんのこと好きになりますから」

 もはや言葉も要らない。
 二人は、アパートで過ごす最後の夜を、時が経つのを忘れて抱き合っていた。


                 「想いよ届け 〜病篤き君に」完



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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.15 )
日時: 2014/09/05 00:07
名前: タッキー
参照: http://hayate/nbalk.butler

どうも、初めまして。タッキーです。

まずは完結おめでとうございます。完結できるということはとてもいいことだと思うので、またSSを書く予定があるなら、これからも頑張って下さい。

それでは感想なのですが・・・ええですなぁ。
個人的にはこういう話、というか他の人の気持ちも大切にしている話はとても好きです。あと、ヒナギクさんが理由はともかく泣くところとか(殴
自分もこんな感じにしたいと思っているので凄く参考になりました。とくにナギ。自分としては結構受け止めてくれるイメージがあるので、こういうのもあるんだなぁ、と目からウロコな状態で読ませていただきました。ありがとうございます。

あと、最終話はとくに良かったと思います。なんというか、ハヤテとヒナさんが適度にイチャついていて。これからも末永く爆発してほしいです。

最後にもう一度、完結おめでとうございます。そしてありがとうございます。

それでは。
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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.16 )
日時: 2014/09/06 00:37
名前: どうふん

タッキーさん、感想ありがとうございます。
お祝いまでいただきまして(あ、完結の、ですよ)恐縮です。

私にはタッキーさんのような長編を書き上げるエネルギーはありませんが、応援しておりますので、執筆中の作品、頑張って下さい。


後書きを書くつもりで開いたパソコンですが、折角感想をいただいたのでタッキーさん、それと少々前になりますがロッキー・ラックーンへのお返事を先にします。

****************************************************************************

まずロッキー・ラックーンさんへ
 
 ハヤテの心の動きと告白シーンを褒められたのは嬉しいです。何と言っても苦労したところですから。
 ハヤテがヒナギクさんを好きになる、あるいは好きだと気付くまでを、当初はもっと簡単に考えていたのですが、書いてみると、予想以上にハヤテは鈍感で優柔不断でした。

 私がSSを書くにあたり、意識していたのは、以下の2点です。
 @登場人物のキャラを勝手に変えないこと(ヒナギクさんのお義父さんは別です)
 Aストーリーの展開は不自然さを極力減らし、読者が納得できるものとすること(まあ、不満は残るでしょうが)

 その中で、ハヤテに告白しようと決意させることがなかなかできず、
 結局ハヤテが告白するには、ヒナギクさんが別れを決意して一刻の猶予もない中で、ぼろぼろになってやっとヒナギクさんに辿り着いた、というだけのシチュエーションが必要でした。

 ロッキー・ラックーンさんは御自分の作品で、ヒナギクさんを成長させ、ハヤテの告白を引き出していましたが、私の作品はその分泥臭くなったかな、と思います。

 ナギの意外な言動については、感想をいただいた後で種明かしをしたつもりですが、ご納得いただけるものになっていたでしょうか。



タッキーさんへ

 私の作品中のナギの言動には賛否両論あると思います。
 ただ、私はハヤテのために全財産を投げ出したことがあるナギは、ハヤテへの純粋な想いは誰にも負けないと思います。
 ナギはハヤテの主人、姉とも慕うヒナギクさんの友人として立派に振る舞おうとしますが、それでも物わかりが良くはなれない、なれるはずがない。
 ナギがハヤテを諦めるにはそれなりの葛藤を乗り越えなければおかしい、と思って書いたのが物語の最終部分です。

 ちょっと意外だったのが、エピローグが特に良かった、と評されたことですね。
 私としては、エピローグについて少々思うところがあります。
 それについては、改めて後書きで書くことにいたしましょう。


 ロッキー・ラックーンさん、タッキーさん
 私の作品に真剣に対応してくれてありがとうございました。
 改めて、御礼申し上げます。

                                  どうふん
 




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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.17 )
日時: 2014/09/06 21:02
名前: どうふん


あとがき

 私が言うのもなんですが、「完結」を謳っておきながら、中途半端かな、とも思っています。
 二人に恋人らしい時間を過ごしてもらおうと思って書いた最終話ですが、ただでさえ周囲の喧噪に巻き込まれ勝ちな環境で、不器用な上、異性の憧れの的である二人が、ここから先、波風立てずに順調な交際を続けることはまずないと思います。

 「そして○年後、二人は教会で・・・」といったエンディングにすれば、一応の決着にはなると思いますが、当の私に今後二人がどのように交際して、プロポーズをして、結婚するのか、というイメージがまとまっておりません。
 最後は二人がいろいろな障害を乗り越えて結ばれること自体を疑ってはおりませんが。
 (「だったら、それを描け」、なんて声が聞こえてきそうですが)

 そうしたことを考え、未来を描くのはやめて、現在のお話をもって完結させることにしました。

 
 書き上がるまで1か月ちょっとかかりました。
 書きながら当初構想とは大きくズレてきたことは何度か書いた通りです。
 そのためか、今、改めて読み返してみると、説明が足りなかったり、つじつまが合わない箇所も結構あるようです。
 今さらではありますが、気付いたところには若干加筆修正を加えたいと考えております。


 今、個人的には、書いていて楽しかったな、と思います。
 これが自己満足だけではなく、目を通してくれた方々にもそう感じてもらえたのなら、幸いです。
 管理人さん、皆様、本当にありがとうございました。


                                  どうふん
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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.18 )
日時: 2014/10/10 23:15
名前: どうふん


ロッキー・ラックーンさん
その他関係する皆様へ


 暫く投稿を休止しているどうふんです。
 本作品を完結させて以来、専ら閲覧する側に回っておりましたが、この程、私の
投稿に大きな問題があることに気づきましたので、皆様に報告、およびお詫びをさせていただきます。

 本作品の第10話冒頭において、ヒナギクさんが退院するにあたり、ハヤテがヒナギクさんのお義母さんにからかわれる場面を書きました。

>ヒナギクにとって、ハヤテが少し頼もしく見えた翌日、ヒナギクは退院した。
 ヒナギクのお義母さんは一足先に帰ったが、これは気を利かせてのことだろう。別れ際に、ハヤテに向かい、
 「私のことは、ママと呼んでもいいからね」
 「いや、それはちょっと・・・」


ここで、ヒナギクさんのお義母さんとハヤテの会話ですが、全く同じ会話がロッキー・ラックーンさんの旧作に記載されていることに気づきました。

これは、以前読んだロッキー・ラックーンさんの作品のフレーズが頭に残っていたところ、それを自分で思いついたと勘違いしてそのまま記載してしまったものです。

決して意図的なものではありませんが、盗作・パクリと言われても仕方ない話であり、ロッキー・ラックーンさんには大変失礼なことをしてしまいました。

また、私の作品を呼んでくれた方々にも合わせてお詫びいたします。

当該箇所は削除いたしました。
誠に申し訳ありませんでした。


                                    どうふん

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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.19 )
日時: 2014/10/10 23:43
名前: 双剣士◆gm38TCsOzW.
参照: http://soukensi.net/ss/

どうふんさん、こんばんは。止まり木管理人の双剣士です。
まずは完結おめでとうございます。

感想すら書かずに意見するのも何なのですが、>>18のお詫び文を拝見して一言。


    盗作・パクリと言われることを懸念してらっしゃいますが、
    当サイト管理人としては本件を『無問題』と考えます。


どうふんさんが頭に残っていたフレーズとは、ここのシーンのことでしょう。
http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?mode=view2&f=25&no=62

どうふんさんが削除する前の文章と比較してみましたが、該当の場面に至るまでの導入シーンが作者によって全く違ううえに、
似たニュアンスとはいえヒナママの台詞自体も完全一致にはほど遠い内容だと感じました。

【元の台詞を真似して(あるいは一部を改変して)自分の作品に取り込んだ】のではなく
【2次創作という枠内で「そのキャラらしい振る舞い」をさせたら、たまたま旧作に似たシーンがあった】
という経緯であることが明らかに読み取れますので、心配は要りません。

消してしまったものはもう仕方ありませんが、あまり深刻に思われませんよう。
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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.20 )
日時: 2014/10/11 05:28
名前: ロッキー・ラックーン
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。

今回の件に関してコメントしといた方がどうふんさん自身、安心できるかと思ったので口を出させて頂きます。
私個人としても、指摘されてるシーンに特に問題は無いと思っております。その主旨としては管理人さんが書いて下さってるものと同様なので、とやかく語るつもりはありません。

私の作品を読んで感じて下さった事が、作品に反映されていると思うと逆に嬉しくも思います。
かくゆう私も、最近復帰された明日の明後日さんの作品に多いに感化された上で作ったものですので…。またお目にかかれて嬉しいです。(話が逸れました
気にする事は全く無いかと存じます。

関係無いですが、自分の作品をこうして管理人さんに載せられるというのは非常にこそばゆい感覚を覚えます。あぁ、恥ずかP。

てなワケで、今後ともお互い精進して参りましょう。
では、失礼しました。
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Re: 想いよ届け 〜病篤き君に ( No.21 )
日時: 2014/10/15 23:10
名前: どうふん

管理人さん
ロッキー・ラックーンさん

 お心遣いありがとうございました。

 肩の荷が下りた感はありますが、今回の件、私の不手際は否めませんので、今後の私自身への戒めとして精進したいと思います。

 いずれ、改めて作品を投稿させていただきますので、その節は叱咤鞭撻の程よろしくお願いします。

                                     どうふん

 
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