Re: 新世界への神話 4スレ目 1月18日更新 ( No.4 )
日時: 2020/02/02 21:42
名前: RIDE
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24

こんばんは。
今週から第39話を更新します
ぜひ読んでください。


 第39話 光へと羽ばたけ

 
1
「懐かしいな…」

 男は、自分が預かっていた間へと帰っていた。
「まさか、ここに帰ってくるとは思わなかったな…」

 中に入り、物思いにふけっていく。見るものすべてに懐かしい目を向ける。まるで故郷に帰ってきたかのように。

 それもそのはず、彼はこの間の主なのだから。

 埃が積もっているのは、長いこと留守にしていたから。彼は理由があって、ここを空けなければならなかったのだ。

 本来ならこのまま放置されるつもりだった。彼自身も、ここから遠く離れた名も無き土地で命果たすはずだった。

 だが、男は運よく生き延びることができた。だからこそ、彼はここに戻り時を待つことにしたのだ。

「さて、彼らはちゃんとここに来るだろうか…」




 しばらくして。

「ここが第九の間か…」

 刃の間を突破したナギたちは、第九の間の前まで来ていた。

「翼の間、か」
「翼ってことは…」

 全員、ある精霊を思い浮かべる。

「その予感は当たっている」

 ナギがある勾玉を取り出す。

 それは、龍鳳と同様ハヤテたちが戦いを始めるきっかけとなった精霊のものであった。それは今ナギの手元で光っている。

「この間に近づくほど、輝きが増しているんだ」

 その精霊は、翼のフェザリオン。十二体しか存在しない黄金の精霊の一つである。

 五年前、明智天師の手から龍鳳を守るため、主であるジュナスと共に霊神宮を離れた。その後、ジュナスとも別れ、龍鳳を守る結界を単身で張り続け、ナギたちと出会った。そしてそのまま彼女の手元にあり、この戦いも連れられてきたのだ。

「じゃあ、この間の主は…」
「ジュナス、でしょうね」

 一同は安心する。

 ジュナスは明智天師に反旗を翻している。ならば自分たちの味方であり、敵対することはないはずだ。

 加えて、ジュナスは今行方知れずだ。つまり、この間は現在無人のはずである。

「さっさと行こう」

 全員は翼の間へ入っていく。敵がいないなら、用はない。ナギたちは止まることなく通り抜けるつもりだった。

 だが、そんな彼女たちの前に立ちはだかる影が一つ。

「待っていたよ」

 誰もいないかと思われた翼の間に一人、ナギたちを待ち構えていた。

「誰だ、おまえは?」

 見知らぬ男を前にして、ナギたちは緊張してしまう。

 この男はいったい何者なのか。

 ここにいるということは、この男はまさか…?

「私の名は…」

 それを聞いたとき、一同は驚愕する。

「ジュナスだ」
「ジュナス…?」

 ナギたちは一瞬、思考を停止してしまう。

「ジュナスって、死んだはずじゃ…」

 高尾山でフェザリオンを発見したとき、傍らには白骨があった。見つけた塁たちはそれがジュナスのものだと思った。だから、てっきりジュナスは死んだものと思い込んでいたのだ。

「信じられないかもしれないが、私は翼のフェザリオンが使者、ジュナスだ」

 困惑しているハヤテたちに、ジュナスは説明する。

「私もあそこで死ぬかと思っていた。それほどの深手を負っていたんだ。だが、ある男と偶然出会い、彼に助けられたんだ」
「その男とは?」

 その名前は、意外なものであった。

「綾崎イクサだ」
「兄さん!?」

 思いもよらぬ名前に、一番衝撃を受けたのはハヤテだった。

「ああ。額に十字傷を負った大男だ」
「間違いない…」

 自身の兄であることを確認したハヤテは、ジュナスに尋ねずにはいられなかった。

「イクサ兄さんは今、どこに?」
「それは私にもわからない。精霊界へ行く前に会うことはできたが、すぐに別れてしまった。神出鬼没なので、どこに行ったかも…」
「そうですか…」

 兄の居場所がわからなかったことは残念だが、少なくとも無事であることが聞けただけでよかった。神出鬼没というところも、兄らしくて逆に心配がなくなってしまう。

「それで、なぜあんたはここに来たのかしら?」

 花南の言葉に、一同はジュナスに注意を戻す。

 生きていたとして、この翼の間に戻ってきた理由は何だろうか。それに、もう一つ気になることがある。

「大体、なんで今になって俺たちの前に現れたんだよ」

 達郎の言うことも最もだった。事情があるにせよ、少なくともこの霊神宮に来てからは自分たちを援助してくれてもよかったのではないか。

 それに対して、ジュナスは答えた。

「私が手を下さなかったのは、君たちを信じてのことだ。龍鳳に選ばれたスセリヒメを真に信じた君たちなら、相手が誰であろうと打ち勝てる意志がある。そう信じていた」

 言い逃れにも聞こえる言葉だが、ジュナスからはそういう逃避というものは感じられない。

 真摯に自分たちのことを思っている。自分たちがやられそうになったら、同じようにその痛みを感じ、応援してくれた。

 そのことが、嬉しかった。それが伝わって、ハヤテたちは心が昂るのを感じていくのだった。

「そして、今君たちの前に現れたのは…」

 突如、ジュナスの纏う空気が一変する。

 ハヤテたちも、自然と緊張する。

「君たちの力を、この私に見せてほしい」

 彼の目は、有無を言わせない迫力を込められていた。




今回はここまでです
続きは来週更新予定です。