Re: 新世界への神話 4スレ目 1月12日更新 ( No.2 )
日時: 2020/01/18 21:09
名前: RIDE
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24

こんばんは。

今週の分を更新します


 2
 ユラはレイズオンと一体化して剣を構える。

「負けないわ」

 ヒナギクもヴァルキリオンと一体化し、剣を取り出した。

 その手にしている剣は…

「白桜か」

 その剣こそが、ヒナギクが本気であることを物語っていた。

 一方のユラは白桜を見て感心している。

「まさか、その名刀を目の前にするとは思わなかったな」

 ユラは、益々やる気になったようだ。

「その剣に恥じぬような使い手であることを祈っているぞ」

 その言葉が、戦闘開始の合図となった。

 ヒナギクとユラの剣が、互いにぶつかり合う。

 相手を切りつけるために素早く振るわれた剣が、相手のそれと結びあう。互いにその応酬を繰り返す。

 もちろんこれは、小手調べに過ぎない。

「この程度はまだ及第点だ。これだけでは実力があるとは言えないぞ!」

 そう言い、一旦距離を取ったユラは一層素早さを増して剣を振るった。

 ヒナギクは咄嗟に飛び退くが、かわし切れず剣の切っ先に捕らえられてしまう。彼女の身に、傷がつけられた。

「速い…!」

 完全に見切れなかったことに、ヒナギクは衝撃を受ける。

「放心している場合かな?」

 ユラは剣撃を次々と繰り出していく。ヒナギクは受ける一方で、自身の剣で防ぐことしかできない。

 しかし、やられるばかりが桂ヒナギクではない。

 剣撃が止む隙を見て、攻勢に転じた。

「今度はこっちの番よ!」

 流れを自分のものにするため、ヒナギクは必殺技を放つ。

「氷華乱撃!」

 斬り、薙ぎ、払いを次々と繰り出す。当たった箇所は凍結してしまう、ヒナギクの自信ある必殺技である。

 白桜がユラを捉える。ユラの頭が、胴が、足が凍りつく。

「やった!」

 しかし、その喜びも一瞬であった。

 ユラの身体から、氷の破片が次々と飛び散っていった。

「自ら凍結を破った?」

 動きを止めたところに重い一撃を見舞わせるつもりだったのだが。やはり一筋縄ではいかないということだ。

 それでも、何度でも放てば。そう思った時だった。

 突然、ヒナギクの身体に痛みが走った。

 それほど大きいものではない。だが、何故。

「隙だらけだったのでな。反撃させてもらった」

 ユラの言葉に、ヒナギクは自分の身体を確認する。

 なんと、いつの間にか彼女の身体には切り傷がつけられていた。それも、一つだけじゃなく、複数も。

 恐らくヒナギクが必殺技を放った時、ユラも反撃していたのだ。ヒナギクの目にもとまらぬ速さで。

「驚いている暇はないぞ」

 ユラは今度は剣で突いてきた。

 高速の剣さばき。ヒナギクはこれにもかわせず体を貫かれてしまう。だが、この傷も大した痛みではない。

 致命傷を外れるような腕ではないのは最初に剣を合わせた時にわかっている。手を抜いているのなら、どういうつもりなのか。

「ここで終わらせるわけにはいかない」

 ユラはゆっくりと、しかし隙を見せずに剣を構え直す。

「おまえの剣を見せてもらうまでは、早々に決着をつけるつもりはないからな」

 彼女はヒナギクの実力を測っているのだ。戦う前に二人は悩みを断ち切るとか言っていた。それだけの実力をもっているかどうか、またその力を引き出すために。

「…もしかして、あれが全力か」
「…まだよ!」

 ヒナギクは白桜を手にユラに斬りかかろうとする。

「意気込みはいいが、それだけのようだな」

 ユラはそれを軽くいなしていき、反撃を加えていく。

 その度、ヒナギクは傷をつけられていく。小さな痛みでも、積み重なっていけば大きなダメージへと変わっていく。

 しかし、それでもヒナギクは剣を振り続けた。諦めることなく。

「…ならば、この一太刀で終わらせてやろう」

 ユラは剣を構え直す。それと同時に彼女が纏う空気が一層張り詰めていく。

「受けてもらおう!この必殺の一太刀を!」

 一気にヒナギクへと迫り、剣を振るう。

「ブレイテッドレイザー!」

 ユラの力が込められた刃が、ヒナギクを切り裂く。ヒナギクはその場で倒れてしまった。

「所詮はこの程度か…」

 ユラは少し残念そうに顔を俯かせた。

「結局、私の悩みを断ちきることはできなかったか…」
「けど、悩む暇はないわよ」

 その声を聞き、ユラは驚く。

 なんと、ユラの必殺技を受けたはずのヒナギクが立ち上がっていたのだ。剣を杖代わりにしてだが。

「私の必殺剣を受けてなお立ち上がるとはな…」

 驚きはあったが、ユラはすぐに気持ちを切り替える。

「ならば、もう一度受けてもらおう」
「あら、それであの必殺技が放てるのかしら?」

 不敵な態度を見せるヒナギク。

 劣勢なのは彼女の方である。なのに、あの余裕は一体何故。

「…これは!」

 そしてユラは気づいた。

 なんと、自身の剣が凍りついているではないか。いや、剣だけではない。ユラの身体が半分、氷で覆われていた。

「い、いつの間に…」
「今まで闇雲に剣を振るっていたんじゃないのよ」

 ヒナギクの狙いはそれにあった。

 彼女はユラに斬りかかると同時に微かだが凍気を放っていたのだ。それを何回も繰り返すうちにユラを凍結させるに至ったのだ。ユラ自身が気づかないうちに。

 ブレイテッドレイザーを受けてもヒナギクが立ち上がってこれたのもこれが理由だった。体の半分も凍りついた状態で必殺技を放っても完全に決まるわけがなく、半分程の威力しか出せなかったのだ。

 逆に、ヒナギクの方は必殺技を繰り出す絶好のチャンス。ユラは防御もとれないし、かわすことだってできない。

「今度こそ受けてもらうわよ、私の必殺技を!」

 ヒナギクは再び必殺技を放った。

「氷華乱撃!」

 斬り、薙ぎ、払いがユラを襲う。ユラを覆う氷を砕き、彼女の身体を宙に舞わせた。

「なるほど。必殺技と言うだけのことはあるな。だが…」

 ユラは華麗に着地してみせる。

「私の剣を受け続けたダメージで、おまえも威力の全てを出せなかったようだな」

 ヒナギクは悔しそうにユラを睨む。

「せめて、万全の力が出せていれば…」

 必殺技が効かない、負っているダメージは大きい。その状態で、ユラを倒せるとは見込めない。

 ヒナギクの負けが、濃厚であった。




今週はここまで。
続きは来週更新します。