Re: 新世界への神話Drei 11月18日更新 ( No.90 )
日時: 2018/12/02 21:31
名前: RIDE
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=23

どうも。

続きを更新します。



 3
 邪魔が去ったこところで、塁とトキワは対峙し合う。

「おまえ、中々やりそうだな」

 一目見ただけで、トキワは塁の強さを見抜いていた。

「それはどうも」

 塁もトキワの実力を感じていた。互いに伝わる実力のレベル同士の戦いになることと、格上であるということがひしひしと伝わるトキワの実力に思わず武者震いし、強張った笑みを浮かべてしまう。

 いざとなると、やはり緊張してしまう。

 それさえも、塁は闘志に変える。コーロボンブと一体化し、戦闘態勢を整えた。

「…見たところ、拳での戦いを得意とするようだな」

 コーロボンブと一体化した塁の姿、立ち振る舞いを見た。そこから、経験に基づいて判断した。

「私も、どちらかと言えば拳でやり合う方が好きでね」

 すると、それまで持っていた槍や斧を全てその身から離した。

「これで私の得物は全て手から離れた。残ったのは拳のみ」

 それはつまり、拳同士の戦いに持ち込むということだ。けど、どうしてわざわざこちらに合わせてくれたのだろうか。

「おまえと、拳を突き合わせてみたくなった」

 どうやらトキワも塁と同じなようだ。

「言っておくが、私は負けるつもりはない」
「上等」

 塁の方はとっくに覚悟を決めていた。

「俺は勝つ!」

 気合と共に、塁はトキワに挑みかかった。対してトキワはシェルドと同様の高速の拳を繰り出した。

 トキワの拳は塁に直撃するかと思われた。だが、塁の姿が突然消えてしまった。

「!?どこへ…」

 トキワはすぐに見つけた。塁が自分の足目掛けてスライディングしている。

 この意表をついた塁の攻撃は成功した。塁の蹴りがトキワの足に見事当たり、トキワのバランスを崩すことができた。

 すかさず塁は起き上がり、トキワに向けてアッパーを打った。これも確実に入り、トキワをのけ反らせた。

「中々やるな」

 塁の攻撃は次々と決まった。しかし、トキワにダメージを与えらえた様子はなかった。

「やっぱり固ぇな、その鎧」

 あれだけの攻撃を受けても、トキワの鎧には傷一つついていなかった。

 もちろん塁もそのことは想定内で、先程の攻撃も様子見である。

 あの鎧を打ち破るには、全力を込めた一撃でなければならないようだ。

 しかし、塁は攻撃ばかりを考えるわけにはいかなかった。

「今度はこっちからいくぞ」

 トキワは再び高速の拳を繰り出した。今度はかわせない。

 咄嗟に塁は両腕を前で交差してガードを取った。ガードは間に合い、その身を大きく押されながらも、大きなダメージを受けずに済んだ。

「くぅ、腕がしびれるぜ…」

 ガードした腕を振るう塁。結構こたえたようだ。

 そうしながら心を落ち着かせる。集中し、感性を研ぎ澄まし、相手の拳を見切るために。

 そして、再び放たれる高速の拳。

 その拳を、塁は完全に避けた。

「何!?」

 驚くトキワに対して、塁は冷静だった。

「おまえの拳も速いが、シェルドよりは遅い。だからかわせたんだ」

 シェルドの拳は先程の闘の間で十分見てきた。目に焼き付いているからこそトキワの拳が若干遅いことを見抜けた。かわすこともできた。

「まあ、かなり危なかったけどな」
「それでも大したものだ」

 まさか自分の拳がかわされるなんて思いもしなかった。

「確かに、拳の速さ、闘気の練度に関しては私よりシェルドの方が達者だ。あいつは闘気の扱いにかけては天才的だからな」

 もっとも、才能があっても鍛錬がなければ開花させることもできない。トキワはシェルドを師事していたころを思い出す。シェルドは熱心に自分の指導を受けていた。その成果が実ったということだ。

 弟子は見事に師を超えた。

 そのことをトキワは嬉しく思えた。

「おっと、今は戦いの時だったな」

 トキワは戦いに集中を戻し、塁と向き直る。

「先程は私の拳をかわしたが、これはどうかな?」

 次にトキワは高速の拳を連続で繰り出した。前方一面に迫ってくる。全てかわすことは難しい。

「それでも、やってみせる!」

 致命傷を避けることだけを優先し、回避と防御を取っていく。

 その結果、ボロボロになりながらも立ち続けることができた。

「耐えきったぜ」
「ほう」

 そう簡単に終わっては面白くはない。

 二人とも、奇しくもそう思っていた。

 そして、今度は塁の番だ。

「サンダーボルトナックル!」

 塁の自信ある必殺技だ。

 まず、彼の拳から稲妻の拳、電撃がトキワに向って放たれた。

 今のトキワは得物を手にしていない。佳幸の時と同様何かを避雷針がわりにすることはできない。

 稲妻の拳が、トキワに直撃した。鎧なので電流は確実に伝わっている。トキワの体は痺れたはずだ。

 動きを止めたところへ、塁は雷鳴の拳、実体の拳をトキワに叩きこんだ。

 拳は真っ直ぐに叩きこまれた。見事に命中したのだから、誰もが決まったとそう思っていた。

「つぅ…」

 しかし、痛みに声を上げたのは塁の方だった。しかも、トキワの鎧にはかすり傷すらついていない。

「サンダーボルトナックルも効かないなんて…」

 塁の自信ある必殺技を受けても傷がつかない。

 やはりあの鎧は、相当な硬さのようだ。

「どうやらおまえは、それが限界みたいだな」

 言いながら、トキワは拳を振り上げる。その拳に、炎が宿る。

「炎神剛斧!」

 その拳を、塁目掛けて勢いよく振りおろした。身の危機を察した塁は急いでその必殺技をかわした。

 自分の必殺技が通用しなかったことで、塁に若干焦りが生じていた。それが思慮を欠き、攻撃の手を早めてしまった。

「ショックサンダー!」

 塁の手から電撃が放たれた。並の相手なら痺れるこの電撃、鎧となっているトキワには防ぎようがない。

 だが、相手が格上の実力者であることを忘れてはいけない。

 トキワは気合を一つ入れると、身体のしびれを一瞬で吹き飛ばした。

「これがサンダー……雷か?」

 トキワは塁の必殺技を受けて、落胆の様子を浮かべた。

「この程度で雷の名をつけられては困る」

 トキワの雰囲気が変わった。迫力が増したのを感じ、塁は若干怖気ついてしまう。

「雷の名を冠するには、これぐらいの威力をもたなければな」

 トキワが構えに入る。彼の周囲で放電が起こる。

 強大な威力を察する塁。今からではかわせないことも悟っていた。

「雷神槍雨撃!」

 無数の光の束、電撃が塁に命中した。まるで無数の槍に突き刺されたような痛みを受ける。

 それ程、トキワの電撃の威力が凄まじいのだ。

 まるで、雷神の槍であるかのように。

 トキワの必殺技を受け、塁はズタズタにされてしまう。先程のラッシュの時とは違い、ダメージが大きすぎて膝をついてしまう。

 そのまま倒れこんでしまう。誰もがみんな、もう立てないとそう思っていた。

 だが。

「負けねぇ…」

 なんと、塁がたちあがってきたのだ。

 トキワの雷神槍雨撃を受け、立ち上がる力もないはずだ。

 だが、塁は立ち上がってきた。

「このまま倒れるわけにはいかないんだよ…」





今回はここまでです。