Re: 新世界への神話Drei 1月30日更新 ( No.84 )
日時: 2017/02/12 21:22
名前: RIDE
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24

どうも。
今年は月一更新目指して頑張ります。

 2
 ハヤテたちの意志が固いことを知り、タイチは少し顔を俯かせた。なんだか、本当に戦いたくなくて心を痛めているようだ。

「なら、一つ言っておこう」

 気持ちを早く切り替えたタイチは、ハヤテたちに向けて言った。

「鬼のゴヨーダと一体化した私に対して、三度目までの攻撃で倒すようにな」

 奇妙なことを言う。

 アドバイスのつもりだろう。敵側から送られてきたということもそうだが、三度まで攻撃を許すとはどういうことなのだろうか。困惑が増すばかりだ。

 しかしタイチは既にゴヨーダと一体化しており、準備万端と言った様子で待ちかまえていた。

 こちらとしてはどういくか。

 三度までの攻撃で倒さなければならないとなると、慎重になろうとするあまりどうしても尻込みしてしまう。

「僕がいこう」

 そんな中で、佳幸が自ら名乗り出てきた。

「あの人は戦いたくないのに、僕たちは戦わせようとしているんだ。その気持ちが僕にはわかるから、僕が出なきゃと思うんだ」

 なんとも責任感にあふれる言葉である。

 それに、攻撃回数が限られているのなら佳幸がうってつけだ。佳幸のムーブランは仲間内の中では一番攻撃力が高い。一撃の威力が大きいほど、この状況では有利だ。

 ムーブランと一体化し、タイチと対峙する佳幸。

 しばらくの間睨み合っていたが、佳幸が青龍刀を構え、タイチに向かって駆け出していった。

「あの剣…」

 ヒナギクは佳幸の剣が変わっていることに気づく。

「今までの物に比べて、大きくなっていない…?」

 他の皆も見てわかる。佳幸の持つ刀は元から身の丈ほどの大きさを誇っていたが、今はそれよりも更に、佳幸の身体を超えているのだ。

「佳幸もパワーアップしたってことね」

 前の間で達郎が佳幸と一緒に特訓したという話をしたことを思い出し、これもその結果だと理解した。

 タイチに迫っていく佳幸だが、対するタイチは動こうとしない。

 このまま動かないつもりか?

 ならば、と佳幸は決めた。このまま自分の必殺技を叩きこむ。

 佳幸の青龍刀に炎が纏い、龍を象っていく。

「炎龍斬り!」

 その剣を佳幸は、タイチ目掛けて振りおろした。

 刀身がタイチを捉え、彼を斬りつけた。しかし、タイチについた傷は浅く、大したダメージは与えられなかったようだ。

 自身の必殺技が微かな傷しかつけられなかったことに佳幸はショックを受けた。だが、それを引きずるほど佳幸は弱くない。

 自分の必殺技が効果がないのなら、もっと効果のある技を出せばいい。もっと強い威力のある技を叩きこめばいい。

 再び佳幸は動く。だが今度はタイチも動き出した。

「大した傷でもないのに、脅威に感じましたか?」
「全力で向かってくる相手には、それ相応の対応をしないとな」

 そう言い、タイチは佳幸と一定の距離を保っていく。佳幸の次の手を窺っているのだ。

 佳幸の攻撃は全て相手に近づいて行うもの。こう距離を取られては、佳幸は攻撃をすることができない。

 とはいえ、タイチはこちらに攻撃してくる気配がない。不意打ちを狙っているわけでもなさそうだ。反撃の心配をせず、安心して攻撃が繰り出せる。

 一気にタイチに迫り、佳幸は自身の最大の必殺技を放つ。

「ブーストフレイム!」

 拳と共に、そこから発する火炎をタイチに叩きこんだ。タイチはその威力を押し切れずに、身体がわずかに後退してしまう。

「思った以上のパンチだな」

 タイチは佳幸の拳が当たった箇所をさする。そこは、拳の後が焼けただれたように残っていた。

 だが、決定打には至っていない。そして、佳幸に許された攻撃回数は1回。

「佳幸はどう攻める気だ?」

 優馬は心配する。炎龍斬りとブーストフレイム、この二つが佳幸の持っている必殺技だ。タイチを倒せるような技はもうない。決め手となる必殺技がない以上、佳幸にはどうすることもできないはず。

 当の本人も、追い詰められた様子が伝わってきた。最も、それも覚悟していたことだろうが。

 佳幸は、どう打っていくのか。

「…よし!」

 どうやら、何かを決めたようだ。

 佳幸は右手を拳として構え、左手で剣を上げる。体勢としては隙が多いが、タイチの方から攻撃してくることはないので、多少問題はない。しかし、どのような攻撃をするつもりか。

 ハヤテたちが見守る中、佳幸の持つ青龍刀に再び炎が纏われる。

「炎龍斬り!」

 そして、その刀を左手だけで振るった。あの巨大な刀を片手だけで扱えるのを見ても、ムーブランがパワータイプだということが確認できる。

 振るった刀から炎が離れ、龍を模って空中を舞い始める。

 それと同時に、佳幸がタイチに向かって駆け出した。炎の龍もそれに合わせてタイチに迫っていく。

 そのまま彼らは、タイチと至近距離まで詰めていった。そこから、佳幸は攻撃を繰り出した。

「ブーストフレイム!」

 再び必殺技を叩きこむ。それと同時に炎の龍がタイチを飲みこんだ。





今回はここまでです