Re: 新世界への神話Drei 10月22日更新 ( No.52 )
日時: 2012/11/10 21:53
名前: RIDE
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=23

止まり木が出来てから、もうすぐ一カ月。
そして、この小説もようやく再開です。
なかなか忙しくて更新できませんでした。まあ、待っている人は少ないと思いますけど。


まずは、旧ひなゆめで書いてくれた感想の返信を。



キーさんへ

>奏「すみません、ずいぶんと長くかけませんでした。…お詫び申し上げます。m(__)m

お久しぶりです。
感想は書ける時で構いませんよ。

>さて、さすが雷矢さんです。やっぱり雷矢さん頭いいです…というより、陰鬱の使者が使っていた『ネガティブオーガ』を…

第1スレで出てきたネガティブライオーガの再登場。
誰が予想できたでしょうか。

>そして、『憎しみすら武器にする』…ですか、かっこいいです。

雷矢がこれを言うと、カッコよく感じますよね。
共感できてよかったです。

>エーリッヒさんは何処まで悟っているのか…深いですねぇ。雪路の何時かの眠りと同じくらい深いですねぇ。

超能力のせいか、エーリッヒはそんなふうに見られていますね…

>雷矢さんもいつか自分を許せるといいです。

果たしてその日が来るのでしょうか…?

>では、次はいつ来られるかわかりませんが、リクエストが有ればどうぞ。」

それなら、サラさんをお願いします

絶影さんへ

>どうも、絶影です。

今回も感想ありがとうございます

>そうか!ネガティブだったのか!
>これが第一声でした。

納得してもらったようですね。
安心しました。

>私なりに考えていたのですが、思いついたのは幻魔雷光まででした(いや負け惜しみとかじゃ…(汗
>ですが幻魔雷光だけだとエーリッヒには捕らえたという感触がなかったでしょうし
>そもそも黄金の使者にそれが効くのか?ということも邪魔をしてですね〜…(ああ、何言っているのか自分でもわからなくなってきた…

混乱してしまっていますね…。
幻魔雷光は黄金にも効くことは判明しましたけど、期待できるほどの効果は現れません。

>とにかく、雷矢は強いですね!

まあ、その一言に尽きますね。

>憎しみさえ己の武器とする
>雷矢らしい言葉だったと思います。

雷矢だからこそ、重みがありますね。
まさに彼の全てを物語っています。

>次は、第3の間ですか。
>一体どんな強敵が現れるのでしょうか?

第3の間は結構厄介な相手ですよ…

>それでは次回も楽しみにしています。

楽しめるように頑張ります。


キーさん、絶影さん、感想ありがとうございました。


それでは本編です。
第36話、楽しんでください。
止まり木での本格的なスタートとなります。


 第36話 天にも届く憂の心

 1
 山の間を任せられているロクウェルは、新たな来訪者たちの気配を察した。

「来たか」

 ロクウェルは門の方へと目を移す。その門が、外側から開かれた。

 開けたのは当然、ロクウェルが察した来訪者だ。

「おまえがこの山の間を任されている黄金の使者か」

 先頭で立っているのは、綾崎雷矢だ。彼は威風堂々とした様子でロクウェルを見ている。彼の後ろには、緊張な面持ちをしている獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風の三人がいる。

「そうだ。私の名はロクウェル」

 ロクウェルは、目を巡らせて雷矢をじっくりと観察する。

「おまえが綾崎雷矢だな。念の間を抜けてきたのか」
「俺がこの場にいることを考えれば、聞くまでもないだろう」

 平然として返すが、実際念の間での戦いはそんな余裕あるものではなかった。エーリッヒには一撃当てるだけで精一杯あり、終始雷矢は赤子の手を捻るかのように扱われていた。

 今雷矢たちの目の前にいるロクウェルも、黄金の使者である。エーリッヒと同等の実力を持っているに違いないため、またも苦戦となるだろう。

 それでも、黄金の使者にも攻撃は通用する。全く勝ち目がないわけではない。

 だから、戦うという気になれるのだ。

 自らの魂の資質である闘志を奮い立たせ、雷矢はロクウェルと対峙する。

 一方のロクウェルは、相も変わらず雷矢を品定めするかのように見ている。

「いい態度だな…」

 臆していない彼に、うんうんと満足そうに頷いている。

「よし、おまえたち先に行っていいぞ」

 あっさりと言い放ったので、雷矢の背後にいる光、海、風の三人はずっこけてしまう。

「ちょ、ちょっと、あなたはここを守るためにいるんでしょ?」

 脱力しながら海が尋ねる。てっきりエーリッヒの時と同様に、戦わなければこの間は通ることはできないという話になると思っていたため、肩の落ち方も大きい。

 もしかして、冗談のつもりなのだろうか。

 そう思いロクウェルの顔色を除きこむが、彼女は至って真剣な表情をしていた。

「確かに、私はこの山の間を守らなければならない」

 ロクウェルが話し出したので、光たちは耳を傾けながら気を取り直す。

「だがおまえたちは、先にここを抜けた三千院ナギたちと同じ目をしている。そんなおまえたちは、私が阻もうとしてもここを必ず突破するに違いない」

 自分と戦った美野花南は、彼女が持つ信念で自分の心を動かした。雷矢たちも、同じような想いというものを感じるのだ。

 エーリッヒもそれを感じて念の間を通したに違いない。ナギやハヤテたちと違い、雷矢たちに対しては手加減する理由はない。本気を出してっ戦っただろうに、それでも雷矢たちはここにいる。

 そのことを、考える必要はない。

「おまえたちなら、三千院ナギの力になれるだろう。必ずな」

 だが、ナギの名前が出てきた時から雷矢は浮かない顔をしていた。

「俺は別に、あの女たちと仲間になるつもりはない」

 そう言って、顔を背ける雷矢。どうも彼はナギたちに対して気が引いてしまい、このような頑なな態度をとってしまうようだ。

 無理もない。つい最近まで死闘を繰り広げ、しかも雷矢は本気で憎しみを抱いていた。そんな相手を、今は殺意がないとはいえどう向き合えばいいかわからないのだ。

 光たちも、雷矢を元気づけたりはあえてしなかった。彼女たちは雷矢が何をしたのかは聞かされていたが、ナギたちがどういう人物かは知らない。ナギたちが何を思っているかわからないので、下手なフォローなどできなかった。

 それでも、ロクウェルが明るい調子で話すのだ。悪い人間ではないはずだから、仲間になれるという希望は持てた。

「とにかく、先へ進もう」

 ナギたちのことは、会ってから考えるべきだ。自分たちの先にいるのだから、いずれは追いつける。話はその時だ。

 次の間へと向かい、雷矢たちは走り出す。その後ろ姿を見送るロクウェルは、不意にその口を開いた。

「だが、次の間で待つ黄金の使者は私やエーリッヒよりも手強いぞ」

 本当は、こんなことを言うつもりはなかった。ナギたちもそうだが、雷矢たちはまだ敵とも味方ともはっきりとは分からない。明智天師から討てとの命令が出ているだけでは判断できなかったからこそ行かせたが、立ち位置が不明な以上、助言の類はなるべく避けるべきであった。

 それでも、彼らに抱く思いが口を動かしていた。

「どういうことだ?」

 雷矢たちは足を止めてロクウェルを振り返る。

「私の次に待つ黄金の使者は、明智天師が自らの黄金の精霊を授けた、明智天師の愛弟子なのだ」

 重々しい口調で語るロクウェル。彼女の真剣身に圧されたが、雷矢たちは黙って聞き入る。

「あいつも、精霊の使者として鍛えさせてもらった明智天師のことを全面的に信じている。明智天師の命令ならば必ずやり遂げようとするに違いない」

 明智天師の直弟子。

 かなり厄介な相手であることを察するのは、簡単なことであった。

「内容はどうあれ、命令ならば私やエーリッヒのように迷うことはない。どんなことでも、な」

 緊張のあまり、光、海、風の三人は喉を鳴らす。

 一体、次の間で待つ黄金の使者は何者なのだろうか。




次回の舞台は第3の間です。