Re: 小説の書き方を議論するスレ ( No.2 )
日時: 2013/03/19 00:21
名前: ロッキー・ラックーン
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
なにやら非常に面白そうなスレをピアノフォルテさんが立てられたので、参加致します。
他の方々の書き方も是非参考にしたいですね。



さてさて、私自身の書く文章は、もっぱら一人称小説です。
一人称とは、その物語の主人公が語り手となって進めていくかたちです。
その特徴としては…

・主人公の思った事をモノローグ(=登場人物が相手無しに一人で語るセリフ)にする。
 →読者に、自分の主人公がどんな事を思って行動しているのかをストレートに伝える事が出来る。

・モノローグなので、「」のついてない文章(地の文)もそのキャラクターの口調が中心となる。

・基本的に、語り手以外のキャラクターの思っている事は文章として出ない。
 →読者には謎な部分を残す事が出来る。

・最初に書くとき、キャラになりきってるので「何を書いてんだ俺…」状態になる。特に異性のキャラ。笑


…なんて感じになりますかね。
抽象的な説明よりも、実際に文章にしてみた方が分かりやすいですね。
という訳で、原作1巻第3話のナギがハヤテを執事にするシーンでやってみます。


※文章のレイアウト(見た目)に関しては、「本とPCのモニタとは別物」という考え方のもと、改行多めで追いやすくといったものを目指しています。






【@三人称】

まずは、通常の文章。
ハヤテ的に言えば天の声ポジションですね。
それでは、どーぞ。


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「どうだ?身体の具合は?」

「うん…もう平気…ありがとう」


世界が誇るスーパーお金持ち、三千院家の次期当主の少女――ナギの見舞いの言葉に、借金一億円プレーヤー――綾崎ハヤテは、開いた傷もなんのそのと言わんばかりに気丈に振舞う。
あれだけの出血をしておいて、「もう平気」とはよくも言ったものである。


「でも…さっきはゴメン。公園で…あんなこと…」

「ん…いや、その…驚いたけど…嫌ではなかったし…。ただ私達はお互いの事をよく知らないから…やっぱりすぐにってのはよくないというか…」

「うん…そうだね…」


これまでの経緯をご存知の読者であればお分かりであろう、この二人の食い違いを。
ハヤテは誘拐未遂の罪悪感から出た言葉であり、対してナギは生まれて初めて受けた愛の告白にとまどっているのである。
顔を伏しているハヤテには、ナギの照れている様子が目に入らない事もあり、食い違いは加速していくばかり。


「……」


三千院家の超絶美人のハウスメイド――マリアだけが、この場の空気の違和感を察知出来ているのであった。


「で…私もあれから考えたのだが…。お前、住み込みの仕事を探していただろう?」

「え?うん…」


急な話題の転換に、ハヤテは伏していた顔をナギへと向ける。


「だったらこの家で…私の執事をやらないか?」

「…執事?」


ナギはその大きな瞳を輝かせ、その小さな両手を胸の前に組む。
「執事」…貧乏暮らしのハヤテの耳には――いや、貧乏暮らしとは無縁の大概の一般庶民の耳にも聞きなれない言葉だ。
執事、それは仕える者。執事、それはかしずく者。執事、それは主の生活全てをサポートする、フォーマルな守護者である。


「あの、お嬢さま…そういうのはよく事情を聞いてからの方が…」

「けど、姫神の後任は必要だぞ。姫神の後任がいないから誘拐されるわけだし…!」


お互いの事情を知るマリアは冷静かつ慎重な意見を主人に提案する。
が、ハヤテと一緒にいたいナギにはそんな事お構いなしだ。


「執事…」

「でもハヤテ君は…執事ってどんな仕事なのかもわからな――」

「やります!!」

「……」


ハヤテもハヤテであり、罪を犯した自分を許し、あまつさえ家と仕事まで与えてくれるという少女の言葉に対して感動しっぱなし。二つ返事で快諾である。
すれ違い、食い違いはとどまる事を知らない。
こうなってしまっては、流石のマリアももうお手上げだ。


「お任せくださいお嬢さま!!何があろうとこの僕が命をかけて…あなたをお守りいたします!!」

「ば、ばか…マリアの前で照れるような事を言うな…」


こうして、まったくもって不毛の方向に、二人の想いがカラ回るなか…ただ一人、すべての事情を理解しているメイドさんは…


「とりあえず…お夜食でも食べます?」

「はい!!」

「うむ!頼む!!」


軽く流すことにした…。
こうして、一人の少女の為に命をかけて闘う少年の、超バトルコンバットストーリーが幕を開けたのだった。


◆おわり◆


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三人称の文章なら、ハヤテとナギの言い分が食い違ってる事が分かりやすく表現できます。
マリアの様子が分かるというのもメリットになるかと…。
私の文章力の無さはおいといて。笑









【A一人称(ハヤテ主人公の目線)】

では、↑の文章をハヤテの立場から書いてみます。
ハヤテの立場なので、ナギがハヤテの言葉を告白として受け取っている事が分からない状態になります。


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「どうだ?身体の具合は?」

「うん…もう平気…ありがとう」


僕を見舞いに来てくれたちびッ子、たしかナギちゃんとかいったかな…。
正直、身体はかなりキツいけど、彼女を心配させたくないから適当な言葉を口にした。


「でも…さっきはゴメン。公園で…あんなこと…」


あんなこと…借金を押し付けられたからとはいえ、無関係な小さい子を誘拐しようだなんて、我ながらひどい事をしてしまった。


「ん…いや、その…驚いたけど…嫌ではなかったし…。ただ私達はお互いの事をよく知らないから…やっぱりすぐにってのはよくないというか…」

「うん…そうだね…」


誘拐未遂だもんな。一度助けたぐらいで許してもらおうだなんて、僕はなんて甘いんだ…
これはサンタからの真のプレゼントなのかもしれない。僕はどんな罰も甘んじて受ける覚悟だ。


「で…私もあれから考えたのだが…。お前、住み込みの仕事を探していただろう?」

「え?うん…」

「だったらこの家で…私の執事をやらないか?」

「…執事?」


この子は一体何を言っているんだ?
執事って、マンガとかによくあるセバスチャン的な付き人の事だよね…?


「あの、お嬢さま…そういうのはよく事情を聞いてからの方が…」

「けど、姫神の後任は必要だぞ。姫神の後任がいないから誘拐されるわけだし…!」

「執事…」


ナギちゃんと、倒れていた僕を看病してくれた美人メイドさん――マリアさんの会話は僕の耳には入らなかった。
誘拐しようとした僕を許して、住み込みの仕事をくれるなんて…なんて優しいちびッ子だ…


「でもハヤテ君は…執事ってどんな仕事なのかもわからな――」

「やります!!」


マリアさんの言葉をさえぎって叫んだ。
僕は今、猛烈に感動している。
あまりにも大きな器で僕を許してくれるナギちゃん――いや、お嬢さまの心意気に、なんとしても応えたい!


「お任せくださいお嬢さま!!何があろうとこの僕が命をかけて…あなたをお守りいたします!!」

「ば、ばか…マリアの前で照れるような事を言うな…」


やってやる、僕はやってやるぞ!
この小さな身体に太平洋よりも広い心を持つお嬢さまに精一杯の奉仕をしてみせるんだ!
サンタさん、遠い空からきっと見ててくださいね…


「とりあえず…お夜食でも食べます?」

「はい!!」

「うむ!頼む!!」


腹が減っては戦はできぬ。
マリアさんの絶品のお夜食を召し上がるお嬢さまの隣にいる事が、僕の執事としての最初の仕事になったのだった。


◆おわり◆


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ハヤテ目線なので、3人称の時のマリアさんの沈黙「……」もカット。
地の文よりも、ナギへの忠義を感じられる文章になってるかと思います。








【B一人称(ナギ主人公の目線)】

次に、同じ文章をナギ視点で書いてみます。
コレが一人称の便利なところで、同じシーンを「●●編」「××編」という感じに使いまわせる(表現が悪いですが)という利点があります。


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「どうだ?身体の具合は?」

「うん…もう平気…ありがとう」


流石はハヤテ、私の執事になるに相応しい男だ。
きっと、あの赤い彗星と戦うような事になったとしても、こいつは倒れる事は無いだろう。


「でも…さっきはゴメン。公園で…あんなこと…」


あんなこと…「君が欲しいんだ」って…うわぁぁあああああ!
欲しいって、ココにはマリアもいるし、まだ私達は出会ったばかりだし…!!
落ち着け落ち着け、まだ慌てるような時間じゃない。素数を数えるのだ、ナギ。


「ん…いや、その…驚いたけど…嫌ではなかったし…。ただ私達はお互いの事をよく知らないから…やっぱりすぐにってのはよくないというか…」

「うん…そうだね…」


ハヤテのやつ、少し落ち込んでるな。でも心配はいらないぞ。
これから長い時間をかけてゆっくりと二人の愛情を育めば良いのだ。
そのために…


「で…私もあれから考えたのだが…。お前、住み込みの仕事を探していただろう?」

「え?うん…」

「だったらこの家で…私の執事をやらないか?」

「…執事?」


我ながら良いアイデアが浮かんだものだ。
ハヤテが執事になれば、いつでも一緒にいられるし、あのタフネスであれば私の警護も出来るはずだから、マリアや口うるさいクラウスにも文句は言わせないぞ。
こんなウルトラCが浮かぶ自分が恐ろしい…


「あの、お嬢さま…そういうのはよく事情を聞いてからの方が…」

「けど、姫神の後任は必要だぞ。姫神の後任がいないから誘拐されるわけだし…!」

「執事…」

「でもハヤテ君は…執事ってどんな仕事なのかもわからな――」

「やります!!」


マリアの言葉を遮り、ハヤテの叫びが響く。
待っていた、その言葉を待っていたのだぞ、ハヤテ!


「お任せくださいお嬢さま!!何があろうとこの僕が命をかけて…あなたをお守りいたします!!」

「ば、ばか…マリアの前で照れるような事を言うな…」


ハヤテは私を求める一匹の餓狼。
OKするとなるとスグに関係がトントン拍子になってしまうのは目に見えてるぞ。
ここはオトナの私がリードしていかないといけないんだろうな…。


「とりあえず…お夜食でも食べます?」

「はい!!」

「うむ!頼む!!」


流石はマリア。ハヤテとの距離が近すぎるのを見てのはからいだ。
待っていろハヤテ、お前を私色に染め上げて愛してやるからな!!



◆おわり◆


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こんな感じで、「あのキャラがこうしていた所の裏側は!?」みたいな展開にできるので、ストーリーにボリューム感も出てくるのかなと思います。
ただ、ボリュームは単純計算で2倍になるので、ソコが大変になるのかも…。





とまあ、そんなこんなで雑多に書いていきました。
参考になるのかな…して頂けたのであれば幸いです。
とにかく、キャラになりきるのでそのキャラへの思い入れが作品の質やら更新頻度やらに繋がります、というのが個人的見解です。

スレッドの活性化をお祈りしております。
それでは失礼しました。