Re: 新世界への神話 4スレ目 3月1日更新 ( No.9 ) |
- 日時: 2020/03/08 21:28
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24
- こんばんは
今週の分を更新します。
2 「おまえひとりで勝てると思うなよ」
ラナロウはそう言い、指鉄砲を伝助に向ける。その瞬間、伝助は何かに体を弾かれた。
ちょうど鉄砲玉のようなものを喰らった衝撃を受け、体が吹っ飛んでしまったのだ。
「い、今のは…?」
立ち上がる伝助だが、何が起きたのかわからなかった。そんな彼に、ラナロウは攻撃の手を緩めない。
しかしそう続けてやすやすと打たれる伝助ではない。次々と飛び交う攻撃を見事にかわしながら、反撃を試みる。
「ウイングトルネード!」
背中の翼を起こし、風を生じて相手にぶつけようとする。しかし、その風はラナロウの手前で何かによってかき消されてしまう。
「これが攻撃か?手ぬるいな」
ラナロウとプテラクスの力がよくわからない。圧ということなのでそれに関わるものということは理解できる。先ほどの指鉄砲は空気の圧縮弾のようなものを放っていると思われるので、空気を操っているのではないだろうか。
「攻撃とは、こういうものを言うのだ」
そう言い、伝助に向けて手刀を振るった。伝助とラナロウの間に距離がかなりとれているため、手刀は当たるわけがないと一見するとそう予想するだろう。
しかし、伝助は危機を察して回避行動をとった。しかし、かわし切れず伝助の胸に大きな切り傷が生じてしまう。
「今のは…」
斬りつけられたような実感はない。かわりに、何か力によって押し開かれたように感じた。空気を操っている素振りも見えない。
これらの攻撃を受け、伝助は理解した。
「そうか、圧。彼は圧力に干渉することができるのか」 「いかにも」
ラナロウは床を拳で殴り、握りこぶしサイズの礫を作る。
その礫を、空中に向けて放り投げた。ラナロウがそれに集中すると、その礫は粉々となってしまった。まるで何かの力に耐え切れず、内部から破裂したかのように。
「俺の精霊、プテラクスは圧力そのものを操ることができる。それによって空気、水だけではなく、電気や磁力までも影響を及ぼせる」
そう言い、指先を伝助に向けた。
「先程は圧力を一点に集中させて、空気の弾丸を作り出し、それを放ったのだ」
空気弾は、伝助の頬を掠めた。自分の力を見せ付けるため、ラナロウがわざと外したのだ。
「そして」
次にラナロウは、またも手刀の構えをとり、腕を上げる。
「点から線へと変えることで、切れ味の鋭い刀へと変わる」
その腕を振り下ろし、圧力によってできた空気の刃を伝助に向けて飛ばしてきた。今度は確実に当てるために。
回避した伝助。だが、ラナロウは本気となっている。
「これで終わりではないぞ!」
攻撃の手を緩めず、次々と手刀を繰り出すラナロウ。伝助はかわすのがやっとであり、反撃に転ずることができない。回避し続けても疲労がたまっていくばかりだ。
そしてついに、ラナロウが伝助を捉えた。
伝助の脚が、空気の刃に斬りつけられた。傷はそれほど深くはないが、伝助は膝を着いてしまう。
「これで終わりだ!」
ラナロウはとどめのつもりで手刀を振り下ろした。
やられるわけにはいかない。
伝助は背中の翼をはばたかせ、風で全てを吹き飛ばそうとする。
風と空気の刃が激突する。互角の威力。第三者がいたらそう見えただろう。
だが風が止み、両者がしばらく睨み合った後だった。
伝助の両翼が、地に落ちてしまった。
ラナロウの空気の刃によって、斬り落とされていたのだ。
「か、風の防御壁でさえも突き破るのですか…」
伝助は相手の威力にただ驚愕する。例え相手が黄金クラスでも完全とはいかないが、それでも威力を相殺できる自信が彼にはあった。
「しかし中々やるな。ああでもしなければ翼どころかおまえの体はバラバラとなっていたからな」
だがもう、伝助には身を守る手段がない。
「次はそのリングを狙おうか!」
ラナロウはイーグルリングに向けて空気弾を放った。咄嗟に伝助はそれをかわす。
そこから再びラナロウの猛攻が始まった。翼が斬り落とされたこともあり、伝助は今までの機敏さは失われ、攻撃を受け続けてしまう。それでもリングを守っているのは意地によるものであろう。
「しかし、なんて威力なんだ…」
伝助の体力は限界に近かった。数々の攻撃を受け続けているので当然といえば当然だが、それにしてもよく戦っていたほうである。それでも劣勢は覆せず、伝助はもう普通には戦えない。
それでも。
「これでとどめだ!」
ラナロウは最後となる一撃を伝助に向けて打ってきた。
ところが、驚くべきことに伝助はそれを紙一重で避け、ラナロウの顔面に拳を入れたのだ。
ラナロウは言葉を失ってしまう。初めて自分の顔面に一発入れられたこと、伝助がまだ動けたことに。
「僕だって、そう簡単に終わらせるわけにはいかないんですよ」
自分にも、戦う理由があるのだから。
「それがどうした!」
ラナロウには、伝助の事情など知ったことではない。
空気弾をもって、次々と伝助に攻撃を仕掛けていく。かわすことも防ぐこともできない伝助は、それらを甘んじて受けてきた。
しかし、今度は足を止めない。むしろ、伝助は今の状態からは出せるとは思えないほどのスピードでラナロウに接近していく。
そして、ラナロウに打撃を与えていく。パンチ、キックの応酬により、伝助はラナロウを怯ませ、後退させている。
「こ、この男…!ここまでやるなんて…!」
先程とは一転し、守勢に回されたラナロウはただ驚愕していた。伝助にはもう、反撃できる力などないはずだ。なのに、何故。
半ば混乱しているラナロウに、伝助の蹴りが胴に見事に入った。思わぬ一撃を喰らったラナロウは倒れてしまう。
「おまえ、何故ここまでできる。おまえの実力では俺に敵わないのはわかり切っているはずだ」 「約束しましたからね」
伝助はまっすぐにラナロウを見据えている。その様は、威風堂々という言葉が正に合っていた。
「皆を先に行かせて、僕もここであなたに勝って後で追いつくと」
そこでラナロウは気付いた。
伝助の背後に、大きな鷲のオーラが浮かび上がっていた。
「この男、マインドを解放させているのか…!」
それで先程からの反撃が、自分を圧倒できるほどの力になっていることがわかった。
務めを果たそうとする思い、仲間たちのために自らの力を奮おうとする心。そんな伝助の誠実な心が、マインドのトリガーとなったのだ。
それにしても、とラナロウは伝助の人となりを思った。
最初は物静かな印象だった。物腰も丁寧で、とても戦いに似合わない男だった。来ている服装も、役所勤めを思わせるものであった。
それが、戦っていくうちに力強さが増していった。態度は変わらないが、勢いを強くしていき、現在このラナロウをも吹き飛ばそうとしている。
まるで、そよ風が段々と激しい嵐へと変わっていくように。
そして、その勢いはまだ止まらない。
「ワイステインが使者、風間伝助最大の必殺技、受けてもらいます」
伝助は拳を構え、必殺技を放とうとする。
マインドを解放した必殺技。威力は今までの比ではないはず。
伝助がラナロウに向かって駆け出した。
彼の必殺技を喰らうわけにはいかない。ラナロウは圧力を操作して伝助の行く手を阻もうとする。しかし、伝助の足は止まらない。
「嵐鷲滑空拳!」
そして、伝助最大の拳がラナロウに叩き込まれた。その威力によってラナロウは吹っ飛ばされてしまう。
今週はここまでです。 続きは来週更新します。
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