Re: 新世界への神話 4スレ目 2月23日更新 ( No.8 ) |
- 日時: 2020/03/01 21:45
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24
- こんばんは。
最近イラスト描く方に熱中しています。
今週から40話を更新します。 ぜひ読んでみてください。
第40話 八色の風
1 エイジを翼の間に残して、ハヤテたちは第十の間を目指す。
残す間はあと3つ。俄然やる気が出てくるものである。
「残りはあと三人。ラナロウ、リツ、それとまだ見ぬ使者が一人」 「ここまで来れたなんて、自分たちのことなのに未だに信じられないよ」 「けど、まだ終わりじゃない。最後まで皆で力を合わせていこう」
少年たちは足を進めながら、決意を固め合う。伝助はそんな彼らを少し離れた所で追いかけていた。
そんな彼に、拓実が歩を合わせてきた。
「少しいいですか?」
拓実がひっそりと声をかけてきた。ハヤテたちには聞かせられないことなのだろう。
伝助は視線で話を進めることを促した。
「皆はああ言っているけど、この先犠牲が一人、二人は必ず出るはずです」
確かに、それは簡単に予想ができた。天の間では雷矢がミークの道連れとなってしまった。犠牲というわけではないが、前の翼の間ではエイジを残して先へと進んでいる。
そして、この先の戦いでもそういう事態が起こるかもしれない。最悪の場合、死人が出てしまうことも…。
「だから、ここから先は誰を先に行かせなければならないか、その優先順位を確認しておきたいんです」
伝助は暫く考えた。いや、考えるふりをした。
出るべき答えは、一つしかないのだから。
「…僕たち二人が命を張ってでも、三千院さんたちを明智天師のもとへ行かせなければならない、ということですね」
スセリヒメであるナギは最優先に明智天師の待つ場所へと行かなければならない。こちらは望んでいるわけではないが、そこで戦いは必ず起こるだろう。そうなれば、彼女を守らなければならないハヤテもいなくてはならない。
また、ヒナギクや佳幸など、マインドを覚醒させた者たちも戦力として必要なのは間違いない。そうやって消去法で選択していくと、残るのは自分たちだ。
「ええ。残る三人の黄金の使者の相手は、僕たちが優先的に引き受けるべきではないかと」 「その意見に俺も賛成です」
二人は驚いた。いつの間にか、二人の背後には氷狩がいたのだ。
「動揺を与えないように二人だけで密かに話していたんでしょうが、俺には筒抜けですよ」
流石は八闘士のリーダーだ。どんな時も冷静で、周囲の変化にも気づける。
「俺たちはまだ無傷な方ですからね。体張って道開く役には適任です」 「けど氷狩君、君はそれでいいんですか?」
伝助と拓実は、出来るだけ自分たちだけが犠牲になるつもりであった。自分たちよりも若く実力もあり、しかも皆をまとめる氷狩まで一緒にさせたくはない。これは、大人である自分たちがやるべきだ。
だが氷狩は、表情をきつくして二人に詰め寄った。
「馬鹿にしないでください。俺も、あいつらも、そうなる時が来ても逃げたりはしませんよ」
もう何があっても逃げない。そう決めたからこそナギについていき、戦っているのだ。気持ちは皆、伝助や拓実と同じだ。
それが伝わった二人は、もう何も言わなかった。
「わかったよ。僕たち三人でやろう」
拓実としては、その時が来るまで氷狩を差し向けるつもりではない。自分でもどうしようもない時は、氷狩の意を汲む。
もっとも、その時が来ないように戦うだけだが。
「おーい、三人ともー」
達郎に呼びかけられ、三人は急いで追いかけるのであった。
「圧の間か」
第十の間の前まで着いたハヤテたち。
警戒しながら中に入るが、静かな空気に一同は首を傾げる。人一人の姿も見当たらない。
「誰もいないね」 「この中には、使者はいないのか?」 「いえ、誰かいます」
ハヤテはいち早く、まだ見ぬ存在を察知していた。
「わ、わかるんですか?」 「ええ。なんとなく敵意というか、気配というか、そういうものを感じるんです」
どこかの暗殺者みたいな能力に、一同は呆れてしまう。
これも執事に必要な能力ということなのだろうか。
「確かに、誰かいるみたいね」
ハヤテに同意した白皇学院生徒会長に、おまえもか!と心の中で突っ込んだ。
「よくわかったな」
そして、姿を消していた黄金の使者が現れる。
その顔に、ハヤテたちは見覚えがあった。
「おまえは!」 「ラナロウ!」
間違いない。ダイを捕えた使者の一人、ラナロウである。
そのラナロウは、ハヤテたちを見て感心していた。
「十二の間に入る前に比べると、たくましい顔になったな」
何処か嬉しそうに話すラナロウ。その心境がわからないこともあってか、ハヤテたちはより警戒を強める。
「見事な快進撃だが、それもここまでだ」
瞬間、ラナロウは上へと高く飛び上がった。
それを見た伝助は瞬時に悟った。攻撃が来る。それも大規模な。
このままでは皆が巻き込まれてしまう。
「皆、前へと逃げるんです!」
幸い、タイハが飛んだため前が空いている。この方向へと逃げれば圧の間を突破できる。
ハヤテたちが足を動かしたと同時に、タイハの攻撃が襲ってきた。
華麗に回避する者、何とか逃げられた者、転んだナギを寸前で抱えて助けるハヤテなど、各々様々なアクションを見せた。
「皆、無事か?」
氷狩が仲間たちの安否を確認する最中、攻撃を受けた床を見て絶句してしまう。
床には、大きな窪みが出来上がっていた。爆発による産物ではない。なにか大きな手によって直接押し潰されたかのような惨状であった。一体、どんな攻撃をしたのだろうか。
ラナロウが着地する。その姿は、精霊と一体化したそれであった。
「どうだ。俺の精霊プテラクスの力は」
そして、ハヤテたちに追撃を加えようとする。ハヤテたちはまだ急な回避行動から体勢を整えていない。
やられる!
だが、ラナロウは追撃の手を途中で止めた。
何故。そう思った時だった。伝助が、ラナロウの背後をとっていることに気がついたのは。
「伝さん?」 「いつの間に?」
ラナロウが攻撃した時しか思いつかない。皆に前進するように促した伝助だが、自分はそれとは逆に後退したのだ。そのおかげで、伝助は上手くラナロウの背後をつくことができたのだ。
これでラナロウはハヤテたちに追い討ちができなくなってしまった。もしそれを行おうとすれば、彼は背後から伝助の攻撃を無防備で受けてしまうことになる。
しかしこれでは、伝助が孤立した形となっていた。
「伝さん!」 「皆さんは先に進んでください!」
救援に向かおうとする佳幸たちを、伝助は止める。
ラナロウが挟まれている位置にいる今、ハヤテたちの前を妨げるものはいない。ハヤテたちは今、圧の間を突破できる絶好のチャンスを与えられているのだ。
伝助一人を囮にすること、で。
「皆、行こう」
伝助を救うか、このまま先へ進むか。迷っているハヤテたちに、氷狩が声をかける。
「ここで俺たちが立ち止まっていては、伝助さんの行為が無駄になってしまう」
伝助は自分たちのために自らラナロウを釘付けする役目を受けたのだ。自分たちの目的である、明智天師のもとへ行くために。
「そうだね…」
伝助のことは心配だ。だが、彼も自分たちと一緒に戦う仲間である以上、伝助の戦いを邪魔してはいけない。
この場を伝助に任せ、ハヤテたちは圧の間を去っていく。最後尾にいた拓実は、ふと振り返り伝助を見る。
その目は、伝助を信じていると訴えていた。伝助はそれに頷いて答えた。確認した拓実もその場を後にする。
圧の間に残ったのは、伝助とラナロウだけとなった。
「一人でこの俺を食い止め、仲間たちを先に行かせたか」
ハヤテたちを追うのは危険だと判断したラナロウは、伝助と向き直る。彼までこの間を抜けさせまいと、戦いを仕掛ける気だ。
「それだけじゃありません」
伝助もワイステインと一体化して、戦う構えを取った。
「ここであなたに勝って、皆の後を追いかけます!」 「俺に、勝つ?」
それを聞いたラナロウは笑い出した。
自分に勝つ。本気でそう思っているのか?目の前にいる彼はそんな心中なのだろうと伝助は思った。
確かに、彼と自分では実力が大きくかけ離れている。結果の見えている勝負になるかもしれない。だが…。
「勝ちますよ」
目の前の相手に向けて、強い意志を込めてきっぱりと言い放った。
今回はここまでです。 続きは来週更新予定です。
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