Re: 新世界への神話 4スレ目 6月28日更新 ( No.26 ) |
- 日時: 2020/07/05 21:05
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24
- こんばんは。
今週の分を更新します。
4 襲い掛かる機影の数々に、ダイは身を守るのに精一杯であった。
敵は艶麗だけではなかった。多数の戦闘機やらロボットやらが、ダイを挑発するように飛行している。どれもダイにとってみたことのある機体ばかりだ。
クワガタムシと翼竜を合体させたようなオレンジの機体は、キメラブロックスに分類されるゾイドだ。BZ-005、フライシザースは格闘能力を向上させた空戦ゾイドであり、特に目が引くクワガタムシのようなはさみなど、相手を切り倒すための武器を装備している。
ライフルを下部に取り付けた黒い戦闘機が、正確無比な動きで翻弄していく。このOZ−01MDトーラスは、実はMSという人型形態に変形可能な機体である。また、MD(モビルドール)システムという無人機として運用もできる。このトーラスも動きからして、無人機であろう。
フライシザースとトーラスの機体群に、ダイはどうすることもできなかった。フライシザースもトーラスも、スペックではバイカンフーはおろかケンリュウにも歯が立たないだろう。だが、ケンリュウにもバイカンフーにもできないことがある。
「こっちも飛べれば…」
そう。ケンリュウもバイカンフーも空を飛ぶことはできない。ここに至るまでの激闘で霊神宮はボロボロで、足場には悪いしこれ以上の崩壊はなるべく防ぎたい以上、ジャンプの連続はなるべく避けたい。
それに、飛び道具も持っていない。となれば近づいてきたところを剣で切り倒すしかないのだが、何機もたかって襲い掛かれば太刀打ちできない。
故にダイはケンリュウと合身しなかった。そうすればただのいい的になるだけである。しかしこのままでは埒も明かない。
打つ手がなくて代は困っていた。そんな彼に、救援が現れる。
ブルー・ジェットがフライシザースやトーラスらを次々と切り倒しながら、ダイの元へと飛来してくる。
「無事のようだな、ダイ」
ジェットの声はいつものように冷静であったが、ダイが助かったことに対する喜びが含まれているように感じた。
「見ての通りだ。ジェット、やっぱり来てくれたか」 「ダイ様!私もいますよ!」
忘れられていると思ったのか、あわてたようにヘリコプター形態のジムが飛び出してきた。対して、ダイの対応は冷ややかであった。
「なんでおまえがいるんだ?ジム」 「だ、ダイ様…」 「まあ、ちょうどいい。乗らせてもらうぞ」
泣きそうになるジムを無視して、ダイはヘリコプターの彼の中へと乗り込んでいった。
「よし、二人とも行くぞ」
ダイのこの一声で、ジェットとジムは感情を戦闘へと素早く切り替える。この辺りは戦士の性と言ってもよかった。
ヘリコプターのジムがガトリング砲で牽制しながら、ジェットが剣で敵を切り裂いていく。敵も砲撃で迎えてくるが、ジェットとジムも難なくかわしていく。
一機、また一機と撃墜していき、艶麗を除いて敵はわずかとなった。
「俺たちの手にかかれば、こんなものだ」 「ダイ様…あなたほとんど何もしていないでしょう」
大半はジェットの手柄だというのに、我がことのように得意気となっているダイにジムは呆れてしまう。
とはいえ、敵の数は減った。しかし、艶麗には動揺する様子は見られなかった。
「我が用意した戦力はこれだけではないぞ」
そう言うと、今まで姿を隠していたのか新たな機影が次々と現れた。しかも、フライシザースや戦闘機形態のトーラスとは違い、皆人型形態のロボットである。
BZ−011、ロードゲイルはフライシザースが別のキメラブロックスと合体したゾイドだ。フライシザースの翼とはさみに、牙がついた恐竜型ブロックスの頭部、槍となった角などを装備している。格闘能力を高めるために、二足歩行も可能にしている。
MSの量産機の一つである、GAT−04ウィンダムも多く存在している。単体では飛行できないが、背部にジェットストライカーパックという飛行用の装備をしているため、こうして滞空しているのだ。
そして、多数のウィンダムやロードゲイルの先頭に立つのは、一機のMSだ。
「あれは…確かストライクノワールだったか?」
ストライクノワール。GAT−X105EストライクEにノワールストライカーを装備した機体だ。以前戦ったライゴウガンダムの兄弟機であり、その特徴的な頭部からガンダムタイプに分類される機体だ。
「まずいな…ジムは役立たずだし、ジェット一人だけで奴らの相手をしろというのは酷だ」 「人に乗っといて、役立たず呼ばわりですか!」
この言い様には弱気で温厚なジムも怒らずにはいられなかった。
とはいえ、状況はこちらが不利なのは明らかだ。こちらの戦力はジェット一人に等しい。お世辞にも、ジムは戦闘向きとは言えない。対して、相手は艶麗、ストライクノワール、それに多数のロードゲイルとウィンダムだ。艶麗以外は無人機のようだが、フライシザースやトーラスより高性能だ。ジェット一人だけでは苦しい。
こちらも味方が欲しい。そう思った時だった。
突如、この場に時空の歪みが発生した。それも、今までのものに比べ巨大なものが。
「なんだ、突然に!?」
艶麗も面食らっている様子から、これは彼女が起こしたものではないだろう。
時空の歪みは、何かを飲み込もうとしない。むしろ歪みの中から何かが出てくる。巨大なものが。
「あれは…戦艦か?」
ダイの予想通り、それは巨大な戦艦だった。白亜に輝き、腕のように前方へと突き出た左右側面のブレード状のパーツがついており、独特のフォルムを持っていた。
「ナデシコ?」
戦艦に見覚えがあるダイは、その名を口にする。
「いや、まさか…」
まさか、ここに現れるはずはない。そう思ったダイだが、ジムに入ってきた通信がそれを否定した。
「ジムさん、お久しぶりです」 「ルリ?ホシノ・ルリか?」
計器から聞こえてきた声は、ナデシコの艦長ホシノ・ルリのものだった。
「ダイさんもいるのですか。なら、そのままナデシコに着艦してください。渡すものがあります」 「!そうか、あれが直ったのか!」
言葉の意味を察したダイは、すぐに行動を移す。
「なら急いで行く!お互い話はあるだろうが、今は…」 「ええ。向こうはこっちも敵としてみているようですし」
敵は、ナデシコにも武器を向け始めている。
「エステバリスサブロウタ機以下、空戦可能な機動兵器は各機出撃してください」
ジムがナデシコへと向かって飛行する。その中でダイは、ナデシコのハッチからロボットが飛んでいくのを確認する。
青い人型兵器が真っ先に出る。肩部に砲塔を装備しているその機体は、ルリが言っていたエステバリスだ。
それに続く機体は、ダイの目を引くことになる。まずは、赤い小型の恐竜型ロボットだ。
「サウロナイツに、飛行用のパーツをつけたのか」
ブロックスにはフライシザースやロードゲイルのようなキメラとは別種が存在している。サウロナイツはその中の一種だ。キメラと共通して合体が可能であり、今のサウロナイツは飛行用ブロックスと組み合わせて飛行能力を持たせている。
「続くのは純製のインパルスと…試験機か?ディスティニーの武器をつけているな」
上半身と下半身、戦闘機の三機が合体して一機のMSとなった。さらに四基の翼が付けられた赤いバックパック、フォースシルエットを背部に装着することで空戦能力を得る。ZGMF−X56S、インパルスガンダムは機体の合体分離とバックパックによる換装が特徴だ。
もう一機、インパルスがいるがこちらはカラーも細部も違う。バックパックも、二枚の大きな翼に長身の砲塔と体験がそれぞれ二本一対ずつ備わっている。この武器を見て、ダイはディスティニーというガンダムタイプのMSを想起していた。ディスティニーはインパルスの発展期であると聞いたから、これは両者の間を繋ぐ試験機なのだろう。
これらの機体を操縦しているパイロットが誰なのか、ダイは皆想像がついた。何故彼らがどうしてと思うが、それも後で聞けばいい。
考えていると、ジムはナデシコのハッチ内へと入り、機動兵器の格納庫へと着いていた。
「ダイ!」
ジムから降りたダイを迎えたのは、彼と同年代の女性だった。
「ミサキ、おまえも来たのか」 「あれの整備ができるメカニックなんて、私ぐらいしかいませんよ」 「俺もいるぜ!」
横から顔を出してきたのは、眼鏡をかけた目つきの怪しい男だった。
「あ、あんたは…」 「俺はウリバタケ・セイヤ。いつかはあの機体に触れてみたいと願っていたが、ついに、ついにそれが叶うとは!」
一人勝手に盛り上がるウリバタケに、ダイは若干引き気味となってしまう。ミサキはそんな彼らを見て苦笑する。
「ダイはウリバタケさんとは初対面でしたね。大丈夫、性格はこうでもメカニックの腕は優秀ですから」 「ああ。そういえばナデシコはそんな連中の艦だったんだな…」
性格にアクがあっても、一流の腕前を持つ人物たち。ナデシコのスタッフたちの共通項がそれであるとダイはどこかで聞いたのを思い出していた。
「それはともかく、急ぎましょう」
ミサキの先導で、ダイは一機の人型ロボットの前へと行く。
「時空の歪みに呑まれかけてあちこち破損していたのが、直っているな」 「当然です。私、ミサキ・アクハルが手掛けたのですから」
完全な状態のロボットを見て、ダイは笑みを浮かべた。
「ケンリュウもバイカンフーもいい機体だが、俺はやっぱり慣れ親しんだこいつが一番だな」
そう言って、ダイはミサキに告げた。
「じゃ、行ってくる」
そして、ロボットのコクピットへと乗り込んだ。慣れた手つきで計器に灯をつけ、立ち上がったのを確認する。
世界を渡ると同時にこの機体は修理に預けた。それから数か月、久しぶりに乗る機体だが体の感覚ははっきりと覚えている。まるで自分の体のようにこの機体を動かすことができる。
整備員らに誘導され、ダイは機体を重力カタパルトへと乗り込ませる。
ハッチが開き、発信の許可が出る。
「ダイ・タカスギ、ウィンガード行くぞ!」
ダイの機体、ウィンガードが勢いよく射出され、ナデシコの外へと飛んでいった。
ジェットたちが戦っている戦場を、ウィンガードは高速で飛んでいく。事前に空戦用のパーツを装備させていたウィンガードは、空中で自在に舞っていた。
ディスティニーインパルスがストライクノワールと戦うのを横目に確認したダイは、艶麗との距離を詰め寄っていく。
ウィンガードを見つけた艶麗は九本の尾が変化した銃を撃つ。九つの光線を、ダイは全てかわし切る。反撃に、ウィンガードが腰部に着けていたライフルを手にし、銃口を艶麗に向けた。気づいた艶麗は回避行動をとろうとするが一歩遅く、ライフルから放たれたビームが艶麗の右肩に当たった。
しかし、表面に大きな傷を与えただけで、大したダメージには至らなかった。
「まあ、たった一撃で終わらせるような相手じゃないよな」
それでも、ビームの出力に問題はない。機動力も、空戦用装備でのウィンガードの水準値が出ている。
改めて、ウィンガードが納得のいくように直っていることを実感するダイ。ならばもう問題はなかった。
自分の腕前が、この女に劣ることなどないという自信があるからだ。
戦闘による衝撃が、秘密工場にも伝わってくる。
千桜は、人ひとりはいれるような瓦礫の隙間を見つけ、そこに隠れていた。瓦礫に埋もれてしまう心配はあるが、戦闘による恐怖には勝てなかった。
体を縮ごませて身を抱える千桜。時折聞こえてくる爆音には恐れを感じるが、彼女の胸中にはもう一つ、親友たちの身を案じていた。
ナギは大丈夫だろうか。綾崎君やヒナがいるから心配はないだろうが、皆今どうしているだろうか。
それに、高杉君は…。
千桜の脳裏に、ダイの顔が浮かんできた。
ゴールデンウィークでの件以降、千桜はダイのことが気になっていた。理由はうまく言葉にすることはできないが、とにかく気になっていた。ダイが石像になったと聞いた時も、とても焦燥してしまった。
だからここに来れたのはよかったと思っている。こうして戦闘で怖気づいてしまっているが、それでも後悔はしてなかった。
そんなことを考えていると、再び衝撃が襲ってきた。しかも、今まで以上に強い揺れだ。その揺れに、千桜は横へと倒れこんでしまう。
その時、小さな電子音が鳴ったのが聞こえた。何事かと思った次の瞬間には、周囲で明かりが次々と点いていく。
「こ、これは…?」
今まで暗くてよくわからなかったが、千桜は自分が今いるのは様々な計器に囲まれたシートの上であることを理解した。
まるで、何かの乗り物のコクピットのようである。
「一体、何なんだ…?」
混乱する千桜をよそに、それまで開かれていた天井が閉まり、全方位に周囲の状況が映し出される。
それがモニターであることを千桜が理解する前に、シートが、いや千桜がいるこの空間がゆっくりと動き出す。
「ま、まさか!?」
おそらく倒れこんだ時、こいつの起動スイッチか何かを押してしまったのだろう。急いで降りようとしたが、時すでに遅し。
瓦礫の中から、千桜を乗せた戦闘機が勢いよく飛んで行った。
今回はここまでです。 次回は来週更新予定です。
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