Re: 新世界への神話 4スレ目 6月21日更新 ( No.25 )
日時: 2020/06/28 21:42
名前: RIDE
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24

こんばんは
今週の分を更新します。


 3
 龍鳳が杖の先をマサキに向けると、そこから虹色の光線が放たれ、マサキを包み込んでいった。

 攻撃の類ではない。ただ、マサキの心に光を照らしているだけだ。

 それが、勇気を奮い立たせると信じて。

「私は…私は…」

 光に照らされている中で、マサキの身体から黒いオーラがあふれ出てきた。

 詳しいことはわからないが、マサキの闇が光を拒絶しているように見える。

 そして、その時は訪れた。

「私は!」

 絶叫したと同時に、マサキの身体から漆黒のオーラが放出された。マサキ自身が闇を追い払ったかのようだ。

「これが…龍鳳の力…」

 初めて見るその力に、ハヤテはただ呆気にとられていた。巨大な力を持っていたのはわかるが、それが発揮すると大きな威力をもたらすと思っていたのだが、予想と違っていたので拍子抜けしている。

 だが同時に納得もしていた。龍鳳の力にあった神々しさ。あれならば、マサキの心の闇を払い除けるだろうと。

「二度も言うが、私と龍鳳が闇を払い除けたのではない。あいつ自らの力で闇を振り払ったのだ」
「その助けをするのが、龍鳳とスセリヒメということです」

 佳幸の言葉に、ナギは頷きで肯定を示した。

 ナギはスセリヒメとして初の使命を果たしたのだ。目の前にいる、闇を完全に払いきったマサキがその証だ。

 これで、戦いが終わった。誰もがそう思っていた。

 それを引き裂いたのは、天井からの衝撃だった。大きな音と共に天井が崩落していく。

「崩れるぞ!散れ!」

 ダイの呼びかけで、全員が落下していく瓦礫から逃げていく。

 その中でダイは、まず自分の近くにいたナギとマサキを、次いで周囲を見渡して全員の無事を確認する。砂埃が舞う中でも、目が利くのだろう。

「誰の仕業だ…」

 ダイたちは皆上を向く。天井が崩壊したのは、外から何者かが攻撃したからだ。彼らはその犯人の姿を捉える。

 それは、既に倒された者であった。

「艶麗!?」

 間違いない。ヴィルクスと一体化しているが、あの姿は正しく艶麗だ。

「バカな!?」
「何故奴が!?」

 ダイとマサキが驚きに声を上げる。ダイは確実に仕留めたはずの彼女が生きていることが。マサキは傀儡兵として役目を終え、活動停止したはずの道具が動いていることが信じられないのだ。

 艶麗と思われる人物は、こちらを見下ろす。その姿から、凄まじい怒気が発しているのを感じる。

「我は新たに生まれ変わったのだ…」

 口調は変わっているが、その声は間違いなく艶麗のものだ。

「傀儡兵として使われていく中で我に宿った憎しみが、我に力を与えた。そして、今まで酷使してきた奴らに、報いを与えるべく戻ってきたのだ!」

 やはり艶麗は、今までと違って何かがおかしい。

 そう感じさせるのは、やはり艶麗が発している憎しみである。それは、ハヤテたちに身に覚えがあったからだ。

「このオーラ…先程のマサキと同じもの…」
「じゃあ、あいつも誰かに憎しみを植え付けられ、復活したっていうのか!」

 マサキの件と今の艶麗。同一犯の仕業とみて間違いないだろう。

 問題は、誰がということだが、今は考えている場合ではない。

 艶麗が、ナギを標的に定めたからだ。

「まずは新たなスセリヒメ、おまえからだ!」

 しまった。ナギの周囲には身を隠せるものはない。足場も先程の崩落で悪くなっており、ナギの足では逃げきれない。ハヤテも近くにいない。このままでは危険だ。

「お嬢様!」

 ハヤテたちがナギの元へ駆け出すが、それよりも先に艶麗が攻撃した。

 間に合わない。やられる。

 だが、何者かがナギの前に割って入り、その攻撃をその身一つで受け止めた。

 その人物の名前を、ナギたちは叫ばずにはいられなかった。

「マサキ!」

 特にエーリッヒたち黄金の使者は、その声に悲痛をにじませていた。

 ナギの盾となったマサキは、そのまま力なく前のめりに倒れていった。

「艶麗!貴様!」

 ハヤテ以下精霊の使者たちは怒りを艶麗に向け、今にも飛びかかりそうになるが。

「おまえらは下がっていろ!」

 ダイは剣を手にし、彼らより先に前へと飛び出した。

「あいつを討つのは俺の役目だ!」

 ダイは艶麗を討伐してくれと賢明大聖から依頼され、それを承諾した。艶麗を倒すことはダイにとってはやり遂げなければならないことだ。

 それを、予期せぬ何者かが手を出してきたとはいえ、艶麗の復活を許し、このような惨状を招いてしまった。これは自分の責任だ。

 せめてこの女は、自分の手で討たなければならない。自分を解放してくれたナギたちのためにも。

 ダイは瓦礫を跳び渡っていき、艶麗に迫っていく。

「そう言えば、我は一度貴様に倒されたのだったな。その屈辱も、晴らさなくては気がすまんな」

 艶麗はダイを睨むと、そのまま上昇していき龍鳳の間の外へと出ていった。

 ダイもそれを追い、屋根の上に立つ。見ると、艶麗はハイパー化をしていた。更に、その背後には多くの影が控えていた。

 それらに対し、ダイは目を見張った。

「おまえの敵は、我だけではないぞ」




 崩壊した秘密工場から、翼たちは外を眺めていた。

 こちらでも変化を捉えていた。ナギが真のスセリヒメとなったこと。艶麗が復活したこと。そして今、龍鳳の間の方角へと数多の巨大な影が飛来していくのを。

「まずいな…」

 おそらく艶麗たちの相手はダイがやろうとするだろう。彼の性格から考えて、その想像は難しくない。

 だがこれではダイが不利だ。彼の実力を疑っているわけではない。数の上で見れば、ダイが苦戦するのは目に見えている。

 しかしそれ以上に、ダイにはどうしようもないことがある。

「翼さん、ここは私たちが」

 シュウと頷き合い、二人はそれぞれブルー・ジェットとトリプル・ジムに変身する。

「おまえたち、どこか安全なところに隠れるんだ。ここも危なくなるぞ」

 ジェットが威圧をかけて告げるのだから、千桜や歩たちは怯えて従った。

 その辺に身を隠したのを見て、ジェットはとりあえず良しとした。危なくなるとは言ったが、先頭の余波がここまで及ぶとは思えない。だが、色々と問題児な連中だ。勝手に動き回っては困る。

 とはいえ、万が一のためドリルは残しておく。

「ドリル、ここは任せたぞ」
「おう。二人も気をつけてな」

 ドリルに見送られながら、ジェットとジムはダイの元へと飛んで行った。




今回はここまでです。
続きは来週更新予定です。