Re: 新世界への神話 4スレ目 ( No.1 ) |
- 日時: 2020/01/12 22:00
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24
- どうも、RIDEです。
スレを立ち上げて一年ほど間が開いてしまいましたが、本日から更新再開です。
ここから駆け足で更新していく予定です。
それではどうぞ
第38話 刃に秘める勇気
1 闘の間を抜け、ハヤテたちは第八の間の前に。
門には、刃の間と刻まれていた。
「刃、か…」 「この中にいるのは、むやみやたらに刃物振り回す危ない人ってわけじゃないよな…」
物騒な発想をしてしまう。
「けど、それならここはヒナギクさんに任せましょうか」
ハヤテはヒナギクの方を見て言った。
「なんで私なの?」
自分が選ばれた理由がわからず、ヒナギクは尋ねる。
「だって、ヒナギクさんは剣の達人ですし、うってつけかと」
それを聞き、ヒナギクは思ってしまう。
自分のイメージが、まず剣だということはどういうことなのか。
確かに、自分は剣道部に入っている。自分でもそれなりに腕っ節が強いと思っている。
しかし、女の子に対して真っ先に思い浮かぶというのが強いというのはどうだろう。なんだか野蛮そうでいい気がしない。
「どうかしましたか?」
顔に出ていたのだろう。ハヤテが怪訝そうに顔を覗き込んだ。
「なんでもないわ」
そっぽを向く。こんな態度をしたら益々怪しまれるだろう。
何をやっているのだろう。自分でそう思ってしまった。
「大丈夫?」
軽い自己嫌悪に陥っていると、花南が声をかけてきた。
「心配してくれるの?」
普段は冷たいくせに、こんなときに気にかけてくれるなんて。いいところあるではないか。
「あんたも一応頭数に入っているんだからね。足引っ張るなんてことになったらこっちが困るのよ」
前言撤回。やっぱりこの女は口も性格も悪い。
「余計なお世話よ!」
つい、ケンカを買う調子で返してしまう。すると花南はそれに満足したようだ。
「その意気よ。あんたは頭の中でいろいろ悩んだって解決できないんだから。何も考えずに体動かせば自然と解決できるわよ」
この、相手を見下すような口調はどうにかならないのか。
苛立ちが募り、思わずこぶしを握ってしまう。
怒鳴りたいところだが、ここはこらえる。彼女の言うとおり、考えこんでもしょうがない。ここは行動で示さなければ。
それに、これが花南なりの励ましだということも、彼女と衝突したからわかっている。
礼は言わないが、彼女が驚くような活躍で応えたい。
「見ていなさい」
それだけ言い、ヒナギクは前へと進む。彼女に続いて、他の者たちも刃の間へと入っていった。
「てっきり鎧の間と同じように、刃がたくさん飾られているかと思ったけど」
達郎は刃の間を見渡していた。
「すっきりとしているな」
刃の間は、派手な装飾といったものはなく素朴なものであった。視界を遮るものはなく、一面を見渡せる。
罠の類も、見当たらない。
「まさか、ここの番人もいないってことは…」 「そううまい話はないようだ」
氷狩が達郎に前を指し示す。
彼らの先には、一人の女が待ち構えていた。
しかし、何か様子がおかしい。こちらに向かず、何かブツブツとつぶやいている。
「あなたがここの間を守る黄金の使者?」
ヒナギクが尋ねてみるが、それにも気付かず腕組みしながら悩んでいる。
侵入者が来たというのにこの体たらく。ここを守る気があるのだろうか。
「このまま通り過ぎてもいいかな」
そんなことを考えていた時だった。
「ん、おまえたちは誰だ?」
タイミング悪く、女はこちらに気づいたようだ。
「もしかして、先程から噂されている明智天師への反逆者か?」
ここで嘘をついてもしょうがないし、嘘が通じる相手とも思えない。
「そうだ」
ハヤテたちの緊張感が高まる。
黄金の使者との八回目の戦闘が始まるのか。
しかし、女は動く気配を見せない。何をするのかと身構えているが、こちらに対してまるでいないかのような対応を見せる。
しばらくして、女は腕組みをして考え込んだ。
「ちょっと!」
全員突っ込まずにはいられなかった。
「それが反逆者への対応!?」
自分の預かる間に人が来たのだから、それなりの対応はするのだろう。
何より自分たちは反逆者なのだ。討伐行動に出るべきではないのか。
「おお、そうだったな」
女は、何かを思い出したようだ。
「私の名はユラ。刃のレイズオンの使者であり、この刃の間を守る黄金の使者だ」 「あ、これはどうもご丁寧に」
とりあえず頭を下げてしまう。
「自己紹介は済んだな」 「ああ…って、呑気すぎるだろ!」
ユラとのやり取りで、調子が乱されてしまう。
この人は、この間を守る気があるのか。
「いや、おまえたちと戦っていいのか悩んでしまってな」 「悩みすぎでしょ!」
当人が来たのに煮え切らないその優秀不断な態度に、ツッコミと同時に海は呆れてしまった。
「まあまあ、何故そんなに悩むのでしょうか」
海を宥め、風は疑問を投げかけた。
「…確かに私は黄金の使者として、この間を守らなくてはならない」
ユラの言葉には、使命感が込められている。それはハヤテたちにも伝わっていた。
「しかし、同時に迷っている。改革が必要なのはわかるが、明智天師に加担しても良いのかどうか」
つまり彼女も、明智天師を疑っているのだ。
「なら、僕たちを通してもらえませんかね?」
拓実はこれを好機だと思った。
「こんな美人に憂い顔は似合わない。僕たちが明智天師のもとへ行き、必ずやその疑念を晴らしてみせましょう」
いつもの、女性へアプローチでもするかのように語りかける。
ここでユラから信頼を得れば、無傷でこの間を通り抜けることができる。
「だが、私はおまえたちも信用できない」
更にユラはこう言った。
「特におまえのような、軟派な男は信じられない」 「これは手厳しい」
やはり、簡単にはいかないようだ。
ユラは、言葉で丸めこめる人間ではない。行動で示すしかないと拓実は実感した。
「はっきりしないなぁ」
達郎は苛立ちを募らせていく。単純な性格の彼からすれば、決断しきれないその態度は好ましくないのだろう。
他の者たちも、達郎ほどじゃないが煮え切らないものを抱いている。
「だったら、その悩みをたち切ってやりましょう」
ヒナギクがユラに向けて一歩前に出た。
「私の剣を見て、それではっきりさせてもらいますから」
ユラは剣士であるという推測から、手合わせを願うヒナギク。剣道をやっているから、剣を振るえば解決できると思ったのだ。
「あら、やる気になったの?」
刃の間に入る前は渋々だったのだが、この変わり様に花南は少し目を見張る。
「ウジウジと悩むなんてじれったいもの」
とにかく、行動あるのみ。悩むよりも実行に。
「…本当におてんばね」 「けど、これが私だから」
女の子とは思えない活発さ。眉をひそめる者もいるし、時々自分も困る時があるが、今のヒナギクはそれを受け止めていた。
ユラはそんなヒナギクをまじまじと見ていた。
「おまえ、天邪鬼で負けず嫌いだな?」
突然、そんなことを言われてヒナギクは表情をむすっとさせる。しかし、ユラに悪意はない。
「そんな人間は私の好みだ」
そこでユラは天を仰ぐ。
「…あいつと一緒だ」 「あいつ?」
どこか親愛と物憂げな表情をしているのでヒナギクは気になったのだが、当然ユラは答えない。
「見せてもらうぞ、おまえの剣を」
今回はここまで。 続きは来週更新予定です。
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