【第5話】三千院ナギ ( No.15 ) |
- 日時: 2015/01/18 02:31
- 名前: ロッキー・ラックーン
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=25
- こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
今回は二大金髪美少女の一角、ナギのお話です。 自分でも意外なキャラが活躍してくれました。
それではどーぞ!
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おいーっす、三千院ナギだぞ!ついについについに!私が主人公となる番が来たのだ!! 全世界334億人のナギちゃんファンのみんな、おまたせッ! この私の…新しい恋路の行方をとくと目に焼き付けておくのだぞ!
しあわせの花 Cuties 第5話【 三千院ナギ 】
「よぉし、朝はおめざのナギナギ体操第一だぞアーちゃん!」
「いつでもOKですわ、ナーちゃん!」
「じゃあマリア、ミュージックカモーン!」
「はいはい(ボタンポチー」
おはよう、今日も良い天気だな!休みの日でも、昼過ぎまで寝てたらダメ人間になってしまうというアーちゃんからの提案で、日課の体操を実施中だぞ。早朝の体操は身体にも良いから皆も見習って欲しいと思うのだ。(現在AM11:45) こうして二人で張り切って身体を動かしていると、玄関先に見覚えのある人影が…。
「一樹…一樹じゃないか!」
「え…ナギさん!?」
人影の正体は一樹。いつぞやに私を電車に乗ろうと連れまわした男だ。ついでに言うと、私の事がスキだと…熱烈な告白をしてきたヤツだ…。なんかすごく懐かしい気がするな。
「一体どーしたのだ、こんなトコに?」
「ね、姉ちゃんがこのアパートに住んでいて荷物を届けに…って、ナギさんもココに住んでるんですか!?あんな立派なお屋敷があるのに…」
「私はココのオーナーだからな、屋敷の方は色々ワケあって離れてるんだ…って、姉ちゃんだと!?お前の苗字は西沢とかいったけどひょっとして姉って…」
「うん、西沢歩。姉がいつもお世話になってます」
「し、知らなかった…」
一樹があのハムスターときょうだいだったとは!初耳な上に、何で今まで分からなかったんだ…?まあそんな事はどうだっていい。 一樹の表情がとても嬉しそうになる。それはひょっとして私と会えたからなのかという自意識が出た瞬間、いてもたってもいられなくなってしまった。
キュピーン (ナーちゃん…これは…うふふ♪)
「ナーちゃん、歩さんの荷物は私がお預かりしますから…お茶の一杯でも出して差し上げたらいかがでしょう?」
「えっ!?」
「大家さんなんですから、入居者のご家族におもてなしをするのは当然の務めですわよ。という訳なので一樹さん?」
「ん?えっと…」
「これは申し遅れました。私はアリスでございます。ナーちゃんの『まぶだち』で、歩さんにもいろいろとお世話になっておりますわ」
「これはご丁寧に…西沢一樹です」
トントンと話を進めていくアーちゃんに、戸惑う暇も無い。 これこれ、この慌しさだよ、私が求めていたのは。やっぱり主役って忙しいんだよなぁ。
「さぁ、ナーちゃん。立ち話もナンですので」
「お、おう!一樹、時間は大丈夫か?」
「え…大丈夫も大丈夫!この後ヒマすぎて死にそうなくらいだよっ!」
「じゃあ…私の部屋へ来ないか?茶の一杯でも飲んでけ」
アーちゃんの勧めるがままに一樹を招き入れた。後になって思えば、この時にはもうハメられていたというのが分かるんだよなぁ…。
「その…なんだ、ホントに久しぶりだな、一樹」
「うん、ナギさんもお元気でしたか?」
「まぁ色々あったけど…とりあえず今は元気だぞ」
失恋したり人生に絶望したりそこから這い上がってひとつの事を成し遂げたりと、このスペースだけでは語り尽くせない程の経験を私は積んだ。前に一樹と会ってからこれまで本当に色々とあったけど、家族や友達のおかげで今の私がいる。今いる場所(ここ)というものは、それほど悪くはないと思っている。
「一樹の方は、どうだったか?」
「僕は…ずっとずっと、ナギさんに会いたいと思ってました!」
「え…!?」
そんな、いきなりそんな事をぶっこまれても、心の準備というものが…!こんな風に真正面から言われるだなんて思ってもみなかったし、どーすれば…?
コンコン
「失礼いたします。お茶をお持ちしました〜!」
「「ファッ!??」」
なんとも微妙な空気をぶち破ったのは、我が執事ハヤテだった。テキパキとテーブルにティーセットを準備していく姿に、私も一樹もあっけにとられていた。
「一樹さん、ごゆっくりなさっていって下さいね♪それでは失礼いたしました!」
「えと、どうも…」
「お、おいハヤテ!」
足早に去っていくハヤテを扉の外で呼び止めた。さっきの一樹との話を聞かれていたんじゃないかと思ったからだ。
「お嬢様、どうされましたか?」
「さっきの一樹の言葉、聞いてたのか?」
いぶかしげに聞く私の表情などお構いなし、私の質問に対してこの執事がしたリアクションは… 「満面の笑みで親指を立てる」というものだった。
「グッドラックですよ、お嬢様♪…では!」
「おいハヤ…」
テと言い切る間もなく去って行った。…アイツ聞いてたな絶対。 とりあえず、待たせている一樹にも悪いと思ったので部屋に戻る。
「すまん、待たせたな」
「いえいえ、お帰りなさい」
テーブルに目をやると、まだ紅茶には手を付けていないようだった。一樹のヤツ、私の事を待っててくれたのか…。
「せっかくの茶を冷ませてしまって申し訳が無い。粗茶だが、どうぞ召し上がってくれ」
「はい。では頂きます…」
ハヤテの淹れた紅茶だ。まずいはずも無く、絶妙な味と香りが舌を包む。 一樹の方も喜んでくれている様子だ。
「美味しい…すんごく美味しいです!」
「だろう?おかわりもあるぞ」
ハヤテのお茶の香りがさっきの微妙な空気も消し飛ばしてくれたようだった。が、冷静になってみると私の方が一樹の言葉の本心が気になって仕方が無くなってしまった。
「で、一樹。さっきの話に戻ってしまうのだが…」
「え?」
「その…まだ、私の事を…」
「……」
続く言葉が出てこない。一樹の方も、私からの言葉を待っているようだった。そうならないように言葉を選んだはずだったのに、自分から先程の空気を蒸し返してしまった。
コンコン
「ナギ〜、一樹くん〜。クッキー焼いて来たわよぉ〜♪」
という言葉と共に部屋に入って来たのはヒナギク。ハヤテやマリアならまだ分かるが、なんでお前が来るんだよ!?
「ヒナギク!誰が入って良いと言った!?」
「え?アリスからお茶菓子を出すよう頼まれて…。いらっしゃい、一樹くん!」
「こんにちは、桂さん。姉ちゃんがいつもご迷惑を…」
「こちらこそ歩にはいつもお世話になってるわ…どうぞ、ごゆっくり〜!」
「お、おいヒナギク!」
ハヤテの時と同様に、部屋の扉の外で呼び止める。間違いなく聞いていただろうけど、一応聞いておく。
「どうしたの?」
「お前も、私と一樹の話を…」
いぶかしげに聞く私の表情などお構いなし、私の質問に対してこの生徒会長がしたリアクションは… 「満面の笑みで親指を立てる」というものだった。
「私は、いつだってナギの味方だからね!がんばれがんばれ♪」
「そうか、それなら安心…ってオイ!そうじゃないだろ!」
ツッコミを入れた時には去ってしまっていた。コレは間違いなくアーちゃんからの刺客だろうな…。 とりあえず、再び待たせてしまっている一樹のもとへと急ぐ。
「何度もすまない、待たせたな」
「いいえ、お構いなく…」
「ま、まあせっかく作ってくれたんだから頂こうか」
「そうだね、頂きます!」
二人でクッキーを食べ始める。あのヒナギクが作ったクッキーだ。まずいはずも無く、上品な甘みが口の中を満たしていく。
「美味しい…桂さんて料理も上手なんだ。ウチのアホ姉ちゃんとは大違いだ」
「一樹、ヒナギクの事知ってるのか?」
「うん、たまに姉ちゃんと遊びに家に来るんだ。と言っても、ほとんど姉ちゃんが勉強を見てもらってるみたいだけど…」
「そうなのか」
一樹は一樹で、前に私と会った時から新しい人間関係を作っているようだった。
――もしかして、ヒナギクの事を好きに…。
ふと頭をよぎった考えが、どんどん心の中で増幅していって、身に覚えのある痛みとして私の胸を締め付けた。この痛みは…もう二度と思い出したくない感覚だった。 なんで?どうしてだ?私は私の心に一樹を近づけさせなかったのに…。
「ヒナギクは強くてかっこいいし、何でもできるし、みんなが憧れてるからな…私なんかじゃ敵わない、いい女だ」
「ナギさん?」
「ハムスター…お前の姉だって、凄いヤツだよ。失恋なんかものともせずに自分の道を突っ走って、私なんかじゃ…」
「ナギさん!」
「!?」
急に大声を出す一樹。その目からは、私の言っている事を真っ向から否定しようという気持ちがはっきりと見えた。
「ナギさんだって、素敵です。気品があって、素直で、壮絶にキレーで…そんなナギさんに僕は一目惚れしたんだ!」
「一樹…違う…」
違うんだ…私なんてガサツで、ひねくれ者で、ヒキコモリで、耳年増な勘違いで人を好きになっちゃうマセガキで…お前が言う私なんて…ただの勘違いなんだ…。 そう思っていたけど言葉に出来なかった。口にしたら、それまでガマンしていた何かが爆発してしまいそうな予感がしたからだ。
ドンドン
「ナギちゃん〜、一樹〜!あんたたちいつの間にそんな仲になってたのかな?」
「ハムスター!?」「姉ちゃん!?」
部屋に充満するシリアスムードにもお構いなし。練馬のラヴ・ハンターことハムスターが登場。私と一樹の肩を両腕に抱え、グイグイと揺すってくる。 今度はコイツかよ!もうたくさんだぞ!!
「いいよいいよ〜。人をスキになるってとっても素敵な事だね!ラヴ万歳!」
「なんだよ、ナギさんの部屋に気安く入ってくるんじゃねーよ!」
「弟よ、照れるな照れるな♪あ、味噌煮込みうどんならすぐ作れるけど、ナギちゃん食べる?」
「あ、じゃあ頂きます…って、オイイイイイイ!!もういい!一樹早くそれを飲め!出かけるぞ!!」
堪忍袋の緒が切れた…というほど怒ってはいないけど、もううんざりだ!どいつもこいつも私の主役を邪魔して!普段からあんなにハヤテとヒナギクの引き立て役を買ってやってるんだからたまには譲れというのだ!
「え?ナギさん?」
「ココじゃ真面目に話が出来ないと言ってるのだ!どーせこの後はマリアが控えているんだろう、ハムスター!?」
「え"っ?何故それを…」
「ほうら見ろ。そーゆーワケだ一樹、早くしろ!」
「ハイっ!ごちそうさまでした!」
一樹にカップの半分くらい残っていた紅茶を一気に飲み干させている間に、ご丁寧に用意してあった袋にクッキーを詰めた。私がこう言う事を見越していたかのような周到さに、この時は気付けなかった。
「ではハムスター、私たちはこれから出かけるが…ついて来るなよ?絶対ついて来るなよ!?」
「それは逆について来てって事なんじゃ…」
「ちがーう!!行くぞ一樹!!」
「ハイッ!」
手早く上着を羽織り、一樹の手を引っ張って部屋を後にした。部屋にはハムスターのヤツを残してしまったが…特に見られて困るようなものなんて…。(無いとは言ってない
「アレ、お嬢様。お出かけですか?」
「珍しいわね、ナギが休みの日に外に出るなんて」
「しらじらしいぞ、バカップルどもが!」
玄関で靴を履いていると、やっぱり現れた刺客その1・その2。ミュージカルのようにセリフにポーズを付けて来る様子は、明らかに誰かの訓練を受けているのを確信させた。
「え、ハヤテ。ナギが私たちにヤキモチを焼いちゃうくらいお似合いカップルだなんて言ってるわよ」
「お嬢様がそこまで僕たちの事を祝福して下さってるんですよ、ヒナ!愛してます!」
「ハヤテ…私も愛してる…!!」
「あー!もー!なんなのだコイツら!!」
「まあまあナギさん。あ、お二人ともお茶とクッキーご馳走様でした。」
「「いえいえ、お粗末様でした♪」」
ホントに感心してしまうくらい息ピッタリの二人。一樹の受け答えのはずなのに…ハッ、まさか一樹すらも仕掛け人だなんて事…無いよな?
「そのラブラブユニゾンはやめろ…」
「まあまあナギさん。行きましょう」
「そうだな、お前ら絶対ついて来るなよ!」
「え、ナギ。それって、ついて来てビデオ撮影してくれっていう…?」
「ちがーう!行くぞ、一樹!!」
「ハイ、お邪魔しました」
「「いってらっしゃーい♪」」
あのウブな二人があんなバカみたいな返しが出来るはずが無い…アーちゃんの仕業に違いないな。あの短時間でどんだけ仕込むんだよ…「ガ●使の笑っては●けない」かよっての!
「それで…ナギさんはどこに行きたいの?」
「うーん、コレと言って無い。アパートだと話せないからっていうだけだったし。どこでもいいぞ!」
「ん、今どこでもいいって言ったよね?じゃあ、僕に任せて!」
「うむ。…で、どーするんだ?」
「そうだね…じゃあこないだは電車だったし、今度は路線バスに乗ろう!」
「おおっ、バスは学校とかで乗った事はあるが路線バスは初めてだぞ!乗ろう乗ろう!」
それからの行動は全て一樹にプランを任せた。路線バスに乗ったけど、停留所に着くたびにラブラブの刺客が乗り込んでくるなどという事は…無かったぞ。一応。 終始嬉しそうな笑顔を私に向けてくる一樹。その表情を見てると、さっきまでカリカリしていた自分が妙に馬鹿らしく思えてきて、純粋に楽しいと思えた。
「いやぁ、路線バスというのもなかなかだったぞ!」
「ナギさんに喜んでもらって僕も嬉しいよ」
「途中『パチンコ』の『パ』の字だけ電飾が壊れてたのはドキッとしたけどな」
「それはなんともツッコミづらいネタだね…」
初めての経験だったバスツアーはやっぱり刺激的で、私の興奮もしばらく醒めなかった。
「あ、ナギさん。そこに喫茶店があるからちょっと休憩にする?」
「うむ、そうだな」
「さっきのお話の続きも…そこで聞かせてもらえばと…」
「…うむ」
先程の興奮とは別のベクトルでのドキドキが胸を襲った。 一樹に促され立ち寄った喫茶店。入ってすぐ左側にポツンと一つだけあるボックス席、他の客席は入口から右側にしかない。込んだ話や他人には聞かれたくない話をするには最適な空間のようだった。なんか見覚えのあるような喫茶店だったけど、そんな事を気にしている余裕はこの時の私には無かった。
◆
「と、とりあえずなんか頼むか?」
「うん…」
なんとも落ち着かない気持ちを抑えるべくエスプレッソを注文。ストローでカフェオレをすする一樹は物珍しそうに私のカップを眺める。
「やっぱりナギさんは大人だなぁ。僕はそんな苦いの飲めないや」
「なぁに、人前だからカッコつけてるだけだ」
「そーゆー事をサラッと言えちゃうのも僕にはできないな」
舌を襲う強い苦みと、なんともいえない良い香りが脳みそを醒まさせる。ようやく落ち着いて話せそうだ。 一樹は私が話を切り出すタイミングをずっと待ってくれていたようだった。
「…以前私は、先約がいるなどとお前に言った」
「……」
唐突に話を切り出した。「さぁ私の失恋話を始めますよ」などと宣言はしたくなかったのが正直なところだ。 あの時の私は、ハヤテと両想いだと信じて疑わなかった。だから、自信満々に自分の心の一番奥には一樹の想いは届かないと言い切った。ハヤテの心の一番奥に自分の想いが届いてない事にも気付かずに。 勘違いなのも知らずに一樹の想いを寄せ付けようともしなかった自分がどうにも滑稽に思えて悔しくなった。一樹の事だからきっと気にするなと言ってくれるのは分かっていたが、それを分かりながらも甘えてしまうであろう自分にさらに悔しさが増した。
「だがそれは私の勘違いだったんだ。そう、私の一方的な勘違いで「僕は今でもずっとナギさんが好きだ」
私のネガティブ街道まっしぐらなセリフにとんでもない言葉をかぶせてきやがった一樹。 その表情はハムスターのヤツが恋の話をする時のものとよく似ていた。
「その先約というのが誰の事だったのかは僕には分からない。けど、大事なのは今ナギさんがどうしたいかって事なんじゃないかと思うよ。過去は過去、思い出として胸に残しても、それにこれからの未来を縛られる事は無いよ。ナギさんは、僕の事…どう思ってる?」
「どうって…その…言わなきゃダメか…?」
「今すぐじゃなくても良いよ。ナギさんが言ってくれる気持ちになるまで、ずっと待つから…!!」
今いる場所(ここ)はそれほど悪くはない。それは確かだ…。ただ、自分の気持ちに関しては、時間が止まってしまっている。ハヤテが好きだった時と今とで、自分のいる場所は変わらない。 でも、一樹は今を精一杯生きている。自分の気持ちと向き合って、前に進み続けている。こんな私のために人生の大切な時間を止めるとまで言っている。 ならば私も…少しずつで良いから、前に進まなくっちゃな。
「ははっ、やっぱりきょうだいだ。ハムスターのヤツと同じような事を言うんだな」
「えっ、姉ちゃんと同じ…ちょっと恥ずかしいよ…」
「照れる事じゃないぞ。家族ってのはいいものなんだ。ただ、いつもそこにあると思うとありがたさを忘れてしまうだけだ」
「ナギさん…」
家族に関する話は…また今度にしよう。ただ、これもハムスターからの受け売りがほとんどだ。
「ありがとう一樹。少し気持ちが楽になったよ。で、その、一樹さえ良ければなんだが…またこうして一緒に出かけたりしたいと思ってるんだが…良いだろうか?」
「も、もちろん!ナギさんがそう言ってくれるなんてメチャクチャ嬉しいよ!!」
期待と違わぬ反応にこそばゆい感覚を覚えた。が、これから一樹と仲良くしていく上で一つだけ勇気を出してみたい事がある。
「ナギだ」
「!?」
「いい加減、そんな他人行儀な呼び方もいいだろう?友達なんだし。…なんなら『ナーちゃん』でもいいぞ?」
「ナーちゃん…?」
「ああ、この呼び方は特別なヤツにしか許してない。私にとって一樹がそうなって欲しいと思っているんだ」
自分としてはかなり勇気を出したと思う。この私が再び前に進みだす一歩目を一樹に託してみようと決めたのだ。
「そんな…僕が…」
「ははっ、光栄に思うがいいぞ」
「じゃあ…『ナーちゃん』って呼ばせて頂きます!」
「うむ!恥ずかしがるんじゃないぞ!」
めでたく、私の勇気が身を結んだ。呼び方だけじゃない、これから幾度と無く勇気を出す時が来るだろうけどくじけずに頑張ろうと思う。一樹と一緒に今を精一杯過ごしたい。
「では帰るか!良い店だったな…あっ」
「ん、どうしたの?」
「いや、なんでもない。人生というのは実に奇妙だと思ってな」
「??」
心がひと段落してからようやく思い出した事実は、なんとも皮肉で滑稽だとも思ったが、それも人生の一部として楽しんでおこうと思う。自分で言うのもなんだが、少し大人になれたんじゃないだろうか?
◆
一樹はアパートまで送ってくれた。帰ってきた私を出迎えたのはさらなる刺客…ではなく、そのプロデューサーであろう美少女だった。
「おかえりなさい、ナーちゃん。縁側でお茶でもご一緒しませんか?」
「ただいまアーちゃん。では是非頂こうか」
今日の一連の刺客のドコからツッコんでやろうか迷いながら座り、差し出された湯飲みの緑茶に口をつけた。 おそらくマリアが淹れたのであろうお茶は、絶妙な苦味と香りで私の舌を踊らせた。
「あーあ、ナーちゃんの一番の特別は私だと思っておりましたのに…。アリス寂しいですわ…」
「アーちゃん!?そそ、そんな事無いぞ!アーちゃんだって私の大事な親友だ!一樹は一樹だ!」
私の方からズバっと行こうと思っていたのに先を越された…慌てて返したため、日本語が良く分からない感じになってしまった。 てゆーか、なんで呼び方の件を知ってるんだよぉ!?
「ジトー、ムキになるところがますます怪しいですわ」
「そんなこと無いって!」
「うふふっ、冗談ですわよ。良かったですわね♪微力ながら私も応援してますわよ(ニヤリ」
「ゲゲゲ…それって、ハヤテとヒナギクみたいな…?」
コレまで私はあいつら二人を煽ってくっつける側だったのが…一気に逆転してしまう!やってる自分で言うのもなんだが、アレはかなーりえげつないぞ…!
「ナーちゃんがお望みとあらば♪」
「や、やりすぎはイカんと思うぞ!」
「あらあらうふふ…素敵な恋になると良いですわねぇ〜」
「アーちゃん…こうして見るとなんて恐ろしい子なのだ…!!」
なにはともあれ、新しい恋が芽生えそうで今回のところはめでたしめでたしだ。 うーん、やっぱり私が主役だと話に華があるというものだぞ! さて次回は、「しあわせの花 Cuties」から「ナギナギカーニバル」にタイトル変更、乞うご期待なのだ!
…え、ダメ? ちぇ〜、ケチ。
◆
「あの〜アリスさん。私の出番はもう来ないのでしょうか?あと、この服はやっぱり恥ずかしいのですが…」
「大丈夫ですわマリアさん!『鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホーホケキョ』ですわ。あとその服はとってもハイセンスですからご安心ください。ヒナは絶対着てくれないので嬉しいですわ♪」
「こんなオチに使われる私の存在って一体…」
刺客控え室で大きいアテネのコスプレをして待ちぼうけのマリアさんでした。
【つづく】
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【あとがき】
久々の主役となったナギの新しい恋のお話でした。 最初の段階では「ハヤテとの関係が勘違いだったと知って絶望する話」だったのですが、ナギにネガティブなセリフばかり言わせてしまう事になるのでやめました。まさかハヤヒナ以外でカップルが誕生してしまうとは…と自分でも思っております。
一樹くん…いいキャラだとは思うんですが、原作での出番がありませんねぇ。あんまりにも出番が無さ過ぎて、歩と姉弟なのをナギに知られてなかったんじゃないかと思います。(うろ覚え ナギのロマンス展開を一向に進めないのが一番の原因で、ハヤテとの誤解とかがポンポン進んでいけば出てくるんじゃないだろうかと勝手に予想しています。このSSでハヤヒナがくっついて一番得をしたキャラかもしれませんね。
そしてハヤヒナ、ついに脇の盛り上げ役に。笑 ナギにも言わせていますが、年末恒例の「笑ってはいけない」の刺客をイメージしています。今までやられた分という事で、かなり張り切っていた模様です。
マリアさんは…ごめんなさい。今度きっと活躍する時が…!(来るとは言ってない
さて、カップルとは言いましたがまだまだ友達以上恋人未満の第一歩にしか過ぎません。が、この一歩がこれまで「ハヤテが好きだった」で止まっていたナギの心を動かす大きな力としたいと思って書きました。今後の活躍があるのでしょうか?乞うご期待。
最後に小ネタとして、喫茶店を出る際のナギのセリフ・モノローグについて特に明記しておりませんが、ピーンと来て頂けたらすんごく嬉しいです。
次回は、アリスちゃんに出番を奪われまくっているあの縦ロールキャラのお話を予定しています。また時間がかかりますがどうぞよろしくです。 ご感想・ご質問等お待ちしております。 では、ここまでありがとうございました!
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