Re: 新世界への神話Drei 11月5日更新 ( No.89 )
日時: 2018/11/18 22:09
名前: RIDE
参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=23

どうも。

続きを更新します


 2
 第七の間の中は、武器や防具が飾られていた。

「鎧の間って刻まれていたけど…」

 この内装を見れば、それも納得できる。

「この間を預かる使者は…?」

 少し先を進んでところで、その姿を確認できた。

「おまえたちが、十二の間を進んでいる奴らか」

 腕を組み、仁王立ちでハヤテたちのことを待ち構えていた。彼の後ろには、鎧をまとったとらがこちらの様子を伺っていた。

 そのいで立ちから、かなり年季の入った戦士だとわかった。

「私の名はトキワ。黄金の精霊の一つ、鎧のアムドライが使者だ」

 こちらが警戒しているのを察したのだろう。アムドライはハヤテたちに向かって唸りだした。

 それは、トキワ自身も感じていた。
「いい意気だ。これは楽しめそうだ」

 彼は楽しそうにハヤテたちを見た後、アムドライと一体化した。その姿は、様々な武具を装備した黄金の鎧であった。

「さあ、どこからでもかかってくるがいい!」

 鎧の見た目もさることながら、自身のある態度。打ち破ることは困難だろう。

「ようし」

 一行の中で、一歩前に出たのはエイジだった。

「その武器がどれだけの威力をもっているか、勝負だ!」

 同じ武具を纏うもの同士、どちらが勝っているか戦おうというのだ。対抗心を燃やしやすいエイジの考えはわかりやすい。

「チェーンファング!」

 エイジはウェンドランと一体化し、牙のついた鎖をトキワに向かって振るった。これに対して、トキワは盾を投げつけ相殺した。

 するとエイジは鎖を捨てた。絡み合った武器をいつまでも持っていても仕方がない。武器の一つを封じたのは上出来だろう。

 そこへトキワが迫り、短剣を突きたてようとする。間一髪盾で払いのけたエイジはファイブラスターを撃つ。

 バスターモードでの至近距離発射。煙が立ち込める中、エイジは少々でもダメージを与えられたはずだと見当ついていた。

 だがトキワは無傷であった。彼は斧をエイジに向けて振りおろした。盾で防ごうとしたエイジだが、斧によってたては砕かれ、エイジ自身も吹っ飛ばされてしまう。

「選手交代、だな」

 エイジと入れ替わるように、シャーグインと一体化した達郎が飛び出していった。

 トキワは斧を手にしたまま達郎に攻撃していくが、達郎はそれを全て見切っていく。

 闘の間での経験が、うまく活かされている証だ。

「ハイドロスプラッシュ!」

 隙を見て、達郎は必殺技を放つ。狙いはトキワの持っている斧。

 その目論見通り、見事斧を弾き飛ばした。今が攻撃の好機である。

「スクリュートーピード!」

 達郎の必殺技が、トキワに叩きこまれた。

 しかし、鎧には傷一つつかず、トキワを一歩後退させただけであった。

「か、硬すぎでしょこの鎧…」

 あまりの防御力に、苦言をこぼしてしまう。

 と、そこへ素早い蹴りが達郎に襲いかかってきた。間一髪で達郎はかわしたが、その蹴りにあるものを感じた。

「この蹴り…」

 既視感のようなものだが、ゆっくりと考えている暇はない。

 トキワは今度は槍を手にし、達郎に矛先を次々と突きつけてくる。

 それを柔軟さを利用してかわす達郎だが、続いてトキワが繰り出した拳はかわせずその身に受けてしまう。

「痛た…けど、やっぱりこの拳…」

 何度も受けた達郎だから、気づけた。

「シェルドと同じだ」
「ほう。では、シェルドに勝ったのはおまえか」

 達郎を確認して、トキワは言った。

「あいつと同じと思わない方がいいぞ。私はシェルドの師だからな」

 自らシェルドの師であることを明かした。

 確かにトキワの武芸は達人レベルである。僅かに見ただけでも、シェルドより上である可能性がわかる。

「師か…」

 達郎は立ち上がる。彼は弱腰にはなってはおらず、むしろやる気を燃やしていた。

「なら、尚更俺がやらなきゃな」

 シェルドの師ということは、彼と戦法や思考、癖などがいくつか共通しているに違いない。そうなれば攻略法も共通してくる。

 ならば、シェルドを破った自分が戦うのが適任だ。

「ドルフィンフォームをもう一度…」
「ちょっと待った!」

 そこで制止をかけたのは、エイジだった。

「俺が先にやったんだ。横から入ってこないでよ」

 やられっぱなしというのが性に合わないのか、エイジは意地を張っていた。同じ武器使いとして負けるわけにはいかない、と。

「今度こそ、一撃喰らわせてやる」
「無理すんな。大人しく引き下がれよ」
「嫌だ!」

 互いに譲らず、睨み合いをはじめてしまう。達郎は仲間を無闇に傷つけまいという思いからだが、エイジがそれに気づかず、意固地になっているので妥協できなくなっている。

「ちょっと待った、二人とも」

 そんな中、塁が二人の間に入った。

「悪いが、あいつは俺がやる」
「ええっ?」

 不満そうな声を上げるエイジ。そんな彼に塁は言った。

「俺は闘の間でシェルドと戦いたかったが、達郎に持っていかれちったからな」

 先の戦い、シェルドの格闘センスを思い返しては残念がっていた塁。せめてもう少しだけでも手合わせを願いたかったのだ。

 だが今、目前には彼の師であるトキワがいる。恐らくはシェルドと同等、いやそれ以上の実力を秘めているに違いない。

「だから、ここで戦うのは俺だ」

 塁の表情は、先程鎧の間で見せていたものと同じだった。

 強敵と戦いたい。自分の力を試したい。その気持ちが入るまえと同様、いやそれ以上に高ぶっていた。

「…わかったよ」

 その心を察した達郎は、大人しく引き下がった。

「塁さん、負けちゃダメっすよ」
「ちょ、ちょっと待って。まだ俺は…」

 尚も食い下がろうとするエイジ。その彼の首根っこを、達郎が掴んだ。

「いいから、さがれって!」
「えっ?わっ、ちょっと!」

 そのまま、エイジを引きずり下ろす達郎。

「は、放せよ!俺はまだ…」
「大人しく戻って来い!」

 抵抗するエイジに、佳幸の一喝が鎧の間全体に響いた。

 兄の一言となると、エイジは大人しくなるしかなかった。渋々といった様子でエイジは引きずられていくのだった。




今回はここまでです