Re: 新世界への神話Drei 約1年ぶりの更新 ( No.87 ) |
- 日時: 2018/10/13 16:39
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=23
- お待たせしました。
39話ラストを更新します。
5 「これで決めてみせる!」
何を思ったのか、佳幸は青龍刀を上に向けて放り投げた。
その瞬間、佳幸はまた青の形態へと変わり一気にタイチへと肉薄した。
そこからはまた連続攻撃を繰り出す。高速による数々の攻撃は流石にタイチも見切ることができない。
「いいぜ!佳幸がこのまま押していけば…」 「けど、青の形態は一撃の威力が低い。ダメージの期待値に達せられるかどうか…」
その懸念が当たるのか、タイチが倒れる気配はない。
もうすぐ十秒が経ってしまう。やはりだめなのか。
そう思った時だった。先程佳幸が投げた青龍刀が弧を描きながら佳幸の頭上にまで落下してきた。
「!?まさか!」
タイチが気づいた時には遅かった。
頭上にまで刀が降りてきた時、佳幸はその柄を両手でつかむ。その瞬間、青龍刀の刀身に炎が纏わる。いつもとは違う、蒼い炎が。
「蒼炎龍斬り!」
赤の形態の時と同じ必殺技。しかし赤の形態より素早く刀を振るったため、威力が増している。
その必殺技を受け、タイチは吹っ飛ばされた。
そこで、ちょうど十秒が経った。
タイチは驚愕していた。まさか自分が倒されるなんて思っていなかったのだ。予想外のことに、ゴヨーダとの一体化が解かれてしまう。
だがすぐに、彼の気持ちは感心へと変わっていた。
「見事なものだ」
タイチは起き上がると、佳幸へ素直に称賛を贈った。
「一点突破を完全に達成させるとは。この私を相手に、な」
実のところ佳幸は攻撃を集中させていた。一番最初に攻撃した炎龍斬りから、傷をつけたところを重点にして狙っていた。青の形態の時も、闇雲に連続攻撃しているように見えていたが、全て一か所へと攻め続けていたのだ。
その結果、佳幸はタイチを倒すことができた。格上の相手に、一点突破を達成させたというのは、タイチの言うとおり見事だ。
しかし佳幸はその称賛を素直に受け取らなかった。
「あなたが本気を出せば、僕は瞬殺されていましたよ」
戦いの中で佳幸は察していた。タイチの実力はこの程度ではない。彼は鬼と呼ばれる力と気性を全て明かしていない。まだ隠している。
するとタイチが笑顔でこう返した。
「君もそうであろう。君の心の中に、黒龍が潜んでいるのが見えた」
それを聞き、佳幸に緊張の色が表れた。
「最も、君はまだそれを自分で制御できていないようだが」 「…できても、それはあまり使いたくないですけどね」
苦笑することで、場の雰囲気を和ませようとする。周囲を気遣ってのことだろう。皆を不安にさせる力だということは理解できた。
それに、佳幸たちは殺し合いを望んでいない。
「君たち、この先へ向かいたいのだろう」
ならば、とタイチは安心して信じることができた。
「えっ、いいんですか?」 「ああ、行きたまえ」
それを聞き、遠慮なしにハヤテたちはタイチを後にしていった。
タイチはそれを見送りながら、毒気を抜かれた気分だった。
戦いの中でもそうであった。こちらが鬼の気性を見せているのに佳幸は恐怖せず、自分の思いを貫こうとした。こちらの思いを受け止めようとして。
実力が遥かに上の相手に、そんな姿勢でいようとしたのだ。呆れてしまう。あるいは、大物になる器の片鱗か。
なんにせよ、敵の心まで気にするその姿は、真の使者と言えよう。
「これで何かが変わるという訳ではないが、何が起こるか楽しみだな」
「兄貴はやっぱり凄いな」
先を行く佳幸の背を見ながら、エイジはそう呟いた。
一体化ができ、ようやく肩を並べたと思ったのだが、兄はその上を行っていた。
そんな兄は、振り返ってこう言った。
「おまえが僕を追い越せるわけないだろ」 「な、なんだと!?」
あからさまな挑発的な態度に、思わずカチンときたエイジだが、そこに花南が口を挟んだ。
「佳幸だって、女の私に支えられたじゃない」 「おっと、そうだったね」
苦笑する佳幸。双方の間には怒りや蔑みはなく、互いの身を思う心があった。
守りたいと思う。彼女だけでなく、仲間の皆を。人を思う愛情が大きいのが、佳幸だ。
氷狩や塁など戦いでは強い者たちはいるが、八闘士の中で佳幸が注目されるのはその愛情によるところが大きい。
敵に対しても変わらない心。それは使者として大きな力となり、仲間にも力を与える。
立ちはだかる難問も半分くらいまで来た。残りも油断できないが、そこでも佳幸は皆の力になるだろう。
これで39話は終わりです。
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