Re: 新世界への神話Drei 2月12日更新 ( No.85 ) |
- 日時: 2017/04/23 21:15
- 名前: RIDE
- 参照: http://soukensi.net/perch/hayate/subnovel/read.cgi?no=24
- どうも。
お待たせしました。続きです。
3 炎龍斬りとブーストフレイム。二つの必殺技を同時に受け、流石のタイチも倒れてしまった。
「やった!タイチを倒した!」
タイチは攻撃は三度までと言ったが、一度に二発の必殺技を同時に発してはいけないとは言っていない。残り一撃当ててよいという状況の中で、佳幸がブーストフレイム以上の威力を出すには、この方法しかなかった。
「さすが兄貴だぜ!」
弟のエイジはこの活躍に喜ぶ。
一方の佳幸は冷静にタイチの様子を伺っていた。これで倒されて欲しいが、黄金の使者の強さと言うのは嫌というほど見てきた。まだ終わっていない。そう予感していた。
佳幸は注意深くタイチから目を放さなかった。そのタイチが今、起き上がってきた。倒し切れていなかったのだ。
警戒する佳幸だが、その間も与えずタイチが突然消えてしまった。
「!?どこに…」
タイチの姿を探す佳幸。その瞬間、彼は何かを感じ戦慄を覚える。
体が震える中、振り返ると同時に佳幸は殴り飛ばされてしまう。彼の身体は勢いよく飛び、仏像の一つと衝突。衝撃で仏像は粉々に砕け散った。
思わぬ一撃を喰らった佳幸は、よろめきながら起き上がりタイチの姿を確認した。
「うそでしょ…」
タイチを目にした佳幸は思わずそう呟いてしまった。先程までのタイチは強さは秘めていたがそれを表に出さず、仏のような態度で接していた。
だが、今の彼は怒気と言うものを隠さず発している。それは正に、鬼のような出で立ちである。
離れているハヤテたちにも、それがひしひしと伝わっていた。
「な、なにあれ…?」
皆戦き震え上がってしまう。今までの戦いの中でこれ程の怒気というものを感じたことはなかった。それだけに、大きな恐怖を抱いてしまう。
突然の変わり様に、驚きながらも立ち上がる佳幸。
それまで防御に専念していたタイチが、攻撃してきた。遂に本気を出してきたのだ。気を引き締め、奮い立たせようとするが、やはり佳幸もタイチに対する恐怖の方が大きく、戦うことに迷いも生じている。
それと同時に、タイチの変わり様に戸惑いも抱いていた。彼に一体何が起こったというのだ。
「三度目の攻撃でもこの俺を倒せなかったな…」
タイチが発した声にも、先程までの穏やかさが消えていた。
「後悔してもらおう」
そう言って、タイチは金棒を手にした。まさに鬼が使うような、佳幸の青龍刀と同じくらいの大きさの金棒を。
タイチはその金棒を、佳幸目掛けて上から降りおろす。佳幸はそれを青龍刀で受け止めるが…。
なんという重さだ。
受け止めた佳幸は、その一撃に押し潰されそうであった。青龍刀を持つ手、腕だけでなく体全体がその重圧にかかっていて、足の踏ん張りがきかなかった。
身体全体がきしみそうだ。このままでは、全身はちきれてしまう。
危険を感じた佳幸は、剣を放してその場から離れる。あのまま力比べを続けていたら、確実にミンチにされていただろう。
だが佳幸が逃げた先には、またも仏像が飛んできた。すんでのところでかわすことができたが、佳幸の足は止まってしまう。
そこへタイチの追撃が迫ってきた。威力の高い攻撃を受けまいと佳幸は必死でかわすが、かわすのに精いっぱいで攻撃に転じることができない。
「まさに、鬼神だな」
鬼の間を任されている者だと、納得できる威圧と出で立ちであった。
「しかし、何故あんな風に変わったのだ?」
それが謎であった。あのように変貌してしまうのは、どうしてなのか。
ここに来てからわからないことばかりだ。最初は、タイチが言ったあの言葉だ。
「三回以内の攻撃で、倒すようにしろ、か」
戦う前にタイチが口にした言葉。あれが、鍵となっている気がした。
「三度の攻撃を受けると、彼はあのように変わるのではないでしょうか?」
確証はないが、そんな気がする。
そんな考えを抱く中、タイチは今も佳幸への攻撃を続けていた。素早いラッシュを連続で繰り出している。
佳幸はかわすこともガードすることもできず、サンドバックの様に殴られ続けている。ダメージは蓄積され、遂に佳幸は倒れてしまった。
倒れた佳幸を、見下ろすタイチ。彼からは、どこか哀愁のようなものが感じられた。それは佳幸に対しても、自分自身に対するものとも見受けられた。
「できれば、この力は使いたくなかったのだがな…」
その声も、やはり悲しそうに聞こえた。
「この力は強大すぎる。故に私は常に力を抑えている。相手を一方的に痛めつける戦いは、好みではないからな」
倒れている佳幸は、黙って話を聞いている。
「だが人は大切なもののためには牙をむく。そういう者たちには、私は立ち向かう。その意志を汲んで、な」
やはり、そうだったのだ。
このタイチという男は、慈愛の情が深いのだ。戦う敵に対しても、それは変わらないのだ。戦いたくないという言葉は、その表れであろう。
それと共に、敬意も存在している。戦いに対して全力で応じるところを見ても、それがわかる。
ただ、本当に敬意に値するかどうか見極めるために相手からの攻撃を三度受ける必要があるのだろう。そして、尚も立ち向かおうとする者には鬼となって全力で迎え撃つ。敬愛するスセリヒメのために。
その慈愛と鬼のごとき力に、佳幸は敬服する。実際、戦ってみてその実力の違いを痛感させられた。彼は自分より強い。
だがそれでも。
「僕だって、ここで倒れるわけにはいかない…」
ゆっくりと、それでいて力強く立ち上がる佳幸。
「誰かを思って戦っているのは、僕だって同じだから!」
今回はここまでです。
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